(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】フッ素化ブロックコポリマー及びそれらの適用
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20230523BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20230523BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20230523BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20230523BHJP
【FI】
C08F293/00
H01M50/409
H01G11/52
H01G11/84
(21)【出願番号】P 2020533134
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018085169
(87)【国際公開番号】W WO2019121494
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カレッラ, セレーナ
(72)【発明者】
【氏名】オリアーニ, アンドレーア ヴィットーリオ
(72)【発明者】
【氏名】ギエルミ, アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】マッツォラ, ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】モレーナ, エレナ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/007862(WO,A1)
【文献】特開平04-202303(JP,A)
【文献】特表2018-515635(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179697(WO,A1)
【文献】特表2016-501950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
H01M 50/409
H01G 11/52
H01G 11/84
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの第1のブロック[ブロック(A)]であって、前記配列が、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)に由来する繰り返し単位と
、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合と-COOH及び-OHから選択される少なくとも1つの官能基とを含む少なくとも1つのモノマー[モノマー(M)]に由来する繰り返し単位と、からなる、少なくとも1つの第1のブロック[ブロック(A)]と、
- 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの第2のブロック[ブロック(B)]であって、前記配列が、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)、少なくとも1つのパーハロゲン化モノマー[モノマー(PF)]に由来する繰り返し単位
と、上で定義した少なくとも1つのモノマー(M)
に由来する繰り返し単位と、からなる、少なくとも1つの第2のブロック[ブロック(B)]とを含む
、フッ素化ブロックコポリマー[コポリマー(F
b)]であって、
前記コポリマー(F
b)が、
-- 前記コポリマー(F
b)100モル%に基づいて1.5モル%~15モル%未満の総量の、前記少なくとも1つのモノマー(PF)に由来する繰り返し単位と、
-- 前記コポリマー(F
b)100モル%に基づいて0.05モル%~2モル%の総量の、前記モノマー(M)に由来する繰り返し単位とを含み、
100モル%までの残りの量が、VDFに由来する繰り返し単位である、フッ素化ブロックコポリマー[コポリマー(F
b)]。
【請求項2】
前記コポリマー(F
b)が、前記コポリマー(F
b)100モル
%に基づいて0.5モル%~1.9モル%の量の、前記モノマー(M)に由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのモノマー(PF)が、
- C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
- クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C
2~C
6フルオロオレフィン;
- CF
2=CFOX
0
(式中、X
0は、C
1~C
12パーフルオロアルキル基
;1個以上のエーテル基を有するC
1~C
12パーフルオロオキシアルキル基;-CF
2OR
f2(式中R
f2は
、C
1~C
6パーフルオロアルキル
基である)から選択される);
- パーフルオロジオキソール;
を含む
、群の中から選択され、
及び/又は
前記少なくとも1つのモノマー(M)が、式(I):
(式中、
- 互いに等しいか若しくは異なる、R
1、R
2及びR
3は独立して、水素原子及びC
1~C
3炭化水素基から選択され、
- R
OHは、水素原子であるか又は少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部分である)
に適合する少なくとも1つの(メタ)アクリル系モノマー[モノマー(MA)]である、請求項1に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのモノマー(PF)がC
2~C
8パーフルオロオレフィ
ンである、請求項1又は3に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項5】
前記コポリマー(F
b)が、前記コポリマー(F
b)100モルに基づいて2モル%~12モル%未満の量の、HFPに由来する繰り返し単位を含む、請求項4に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項6】
前記モノマー(MA)が、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、及びそれらの混合物を含む
、群の中から選択される、請求項1に記載のコポリマー(Fb)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのモノマー(MA)が、下記:
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
- 式:
のどちらかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
- 式:
のアクリル酸(AA)
- 及びこれらの混合物
から選択される、請求項6に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項8】
前記コポリマー(F
b)が、交互に配列したブロック(A)及びブロック(B)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項9】
1つのブロック(A)が2つのブロック(B)の間に挟まれ、且つ前記コポリマー(F
b)が以下の式:B-A-Bに適合するか;又は
1つのブロック(B)が2つのブロック(A)の間に挟まれ、且つ前記コポリマー(F
b)が以下の式:A-B-Aに適合する、請求項1~8のいずれか一項に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項10】
- 前記ブロック(A)が、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)に由来する繰り返し単位及び請求項6又は7のいずれかに定義される通りのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の配列からなり
;又は
- 前記ブロック(B)が、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)に由来する繰り返し単位、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び請求項6又は7のいずれかに定義される通りのモノマー(MA)の配列からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載のコポリマー(F
b)。
【請求項11】
少なくともコポリマー(F
b)の一次粒子を含む水性分散体の形態の組成物[組成物(C1)]であって、前記コポリマー(F
b)が請求項1~10のいずれか一項に定義される通りである、組成物[組成物(C1)]。
【請求項12】
前記コポリマー(F
b)の前記粒子が、ISO 13321に従って測定されるとき1マイクロメートル未満の平均一次径を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項11及び12のいずれかに定義される通りの組成物(C1)で少なくとも部分的にコートされる基材層[層(S
C)]を含む電気化学セルのためのセパレーター。
【請求項14】
以下の工程:
i)コートされていない基材層[層(LS)]を提供する工程と;
ii)請求項11及び12のいずれかに定義される通りの組成物(C1)を提供する工程と;
iii)工程(ii)の前記組成物(C1)を前記基材層(LS)の少なくとも一部の上に少なくとも部分的に適用して、このように、少なくとも部分的にコートされる基材層[層(S
C)]を提供する工程と;
iv)工程(iii)の前記層(S
C)を乾燥させる工程とを含む、請求項13に定義される通りの電気化学セルのためのセパレーターの製造方法。
【請求項15】
請求項13に定義される通りの少なくとも部分的にコートされるセパレーターを含む
、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月19日出願の欧州特許出願公開第17208375.0号からの優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、交互の硬質ブロック及び軟質ブロックを含むフッ素化ブロックコポリマーに関し、ここで前記硬質及び軟質ブロックの両方がフッ化ビニリデン(VDF)を含む。本発明はさらに、リチウム電池のための用途における前記ブロックコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ化ビニリデン(VDF)及び少なくとも1つの他の部分的に又は完全にフッ素化されたコモノマーに由来する繰り返し単位を含むコポリマー、及びそれらの使用が本技術分野に開示されている。
【0004】
例えば、2004年10月の28日公開の米国特許出願公開第2004/0211943号明細書(HITACHI POWDERED METALS CO.)には、導電コーティングから得られたコーティングフィルムとセパレーターのベース材料との間の接着性問題を解決することを目指した、燃料セルのセパレーター用のコーティングが開示されている。この問題を解決するために、黒鉛が導電材料として使用され、VDFとヘキサフロオロプロピレン(HFP)とのコポリマーがコーティングのバインダーとして10重量%以上で含有され、バインダーとの相溶性がある有機溶媒が媒体として使用される、コーティングが提供される。
【0005】
しかしながらこの文献は、VDFをベースとしたブロックコポリマーを開示していない。
【0006】
欧州特許第2455408A号明細書(DAIKIN INDUSTRIES,LTD.)には、硫黄化合物の存在下でフルオロポリマー(A)とラジカル重合性モノマー(M)との反応を含む含フッ素ブロックコポリマーを製造するための方法が開示されている。好ましくは、フルオロポリマー(A)は、フッ化ビニリデンポリマー鎖の構造を有し、ラジカル重合性モノマー(M)は、フッ化ビニルモノマー、非フルオロエチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー及びビニルエステルモノマーからなる群から選択される。45:55モル%~85:15モル%、より好ましくは50:50モル%~80:20モル%の組成を好ましくは有する、VDF/HFPコポリマーが開示される(言い換えれば、HFPモノマーは、15~55モル%、好ましくは20~50モル%の量で使用される)。
【0007】
したがって、この文献は、HFPがVDFのモル%と比べて15モル%未満のモル量であるVDF/HFPコポリマーを開示していない。
【0008】
さらに、この文献はVDFとラジカル重合性モノマー(M)としての(メタ)アクリル系モノマーとのコポリマーを提供することを提案しておらず、何モル量で(メタ)アクリル系モノマーが使用されるのがよいかも開示していない。
【0009】
米国特許出願公開第US2014/0154611号明細書(ARKEMA FRANCE;ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DE CHIMIE DE MONTPELLIER)には、キサンテート又はトリチオカーボネート化合物の存在下で、フッ素化モノマー(フッ化ビニリデン型)とその誘導体のアルファ-トリフルオロメタクリル酸モノマーとの共重合の工程を含むフッ素化コポリマーを調製するための方法が開示されている。
【0010】
国際公開第2016/149238号パンフレット(ARKEMA INC.)には、フルオロモノマー単位とモノマーの総量に基づいて0.1~25重量パーセントの官能残基とを含む改質フルオロポリマー(ここで前記官能残基は1つ又は複数の低分子量ポリマー官能性連鎖移動剤に由来する)が開示されている。改質フルオロポリマーは、電極、電池用のセパレーター又はキャパシタ、多孔性膜又は中空繊維膜から選択される物品を作製するために;物品の少なくとも1つの表面をコートするために;又は前記改質フルオロポリマーが、フルオロポリマー層と、前記フルオロポリマーに不相溶であるポリマー層との間のタイ層を形成する複数層構造を提供するために有用であると言われている。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、電池の、とりわけリチウム電池の技術分野において、セパレーターのベース材料への良い優れた接着性を提供し得ると共に同時に電解液溶媒との接触による膨潤を示さないコーティングを含むセパレーターを提供するという問題はまだ解決されていないと気づいた。
【0012】
したがって、本出願人は、電気化学セルのためのセパレーターのベース材料をコートするために適した組成物であって、セパレーターのベース材料への優れた接着性を提供すると同時に電解液溶媒に浸漬した時に膨潤しないようなものであり、したがって電池の長期性能を改良する組成物を提供するという問題に直面した。
【0013】
驚くべきことに、本出願人は、電気化学セルのためのセパレーターが、軟質ブロックと交互に並ぶ硬質ブロックを含む主鎖を有する少なくとも1つのフッ素化ブロックコポリマーを含む組成物で少なくとも部分的にコートされるとき、同時にセパレーターのベース材料への良い接着性並びに膨潤の低下が得られることを発見した。
【0014】
このように、第1の態様において、本発明は、
- 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの第1のブロック[ブロック(A)]であって、前記配列が、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合と-COOH及び-OHから選択される少なくとも1つの官能基とを含む少なくとも1つのモノマー[モノマー(M)]に任意選択的に由来する繰り返し単位からなる、少なくとも1つの第1のブロック[ブロック(A)]と、
- 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1つの第2のブロック[ブロック(B)]であって、前記配列が、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)、少なくとも1つのパーハロゲン化モノマー[モノマー(PF)]に由来する繰り返し単位、及び上で定義した少なくとも1つのモノマー(M)に任意選択的に由来する繰り返し単位からなる、少なくとも1つの第2のブロック[ブロック(B)]とを含む、
但し、前記ブロック(A)及び前記ブロック(B)のうちの少なくとも1つが前記モノマー(M)に由来する繰り返し単位を含むことを条件とする、フッ素化ブロックコポリマー[コポリマー(Fb)]に関し、
ここで、前記コポリマー(Fb)は、
-- 前記コポリマー(Fb)100モル%に基づいて1.5モル%~15モル%未満の総量の、前記少なくとも1つのモノマー(PF)に由来する繰り返し単位と
-- 前記コポリマー(Fb)100モル%に基づいて0.05モル%~2モル%の総量の、前記モノマー(M)に由来する繰り返し単位とを含み、
100モル%までの残りの量が、VDFに由来する繰り返し単位である。
【0015】
第2の態様において、本発明は、上で定義した少なくともコポリマー(Fb)の一次粒子を含む水性分散体の形態の組成物[組成物(C1)]に関する。
【0016】
好ましくは、前記組成物(C1)中の前記コポリマー(Fb)の一次粒子は、ISO 13321に従って測定されるとき1マイクロメートル未満の平均一次径を有する。
【0017】
第3の態様において、本発明は、上で定義した組成物(C1)で少なくとも部分的にコートされる基材層[層(SC)]を含む電気化学セルのためのセパレーターに関する。
【0018】
第4の態様において、本発明は、以下の工程:
i)コートされていない基材層[層(LS)]を提供する工程と;
ii)上に定義されたような、組成物(C1)を提供する工程と;
iii)工程(ii)の前記組成物(C1)を前記基材層(LS)の少なくとも一部の上に少なくとも部分的に適用して、このように、少なくとも部分的にコートされる基材層[層(SC)]を提供する工程と;
iv)工程(iii)の前記層(SC)を乾燥させる工程とを含む、上で定義した電気化学セルのためのセパレーターの製造方法に関する。
【0019】
第5の態様においては、本発明は、前述で定義された少なくとも部分的にコーティングされたセパレーターを含む、二次電池又はキャパシタなどの電気化学セルに関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書及び続く特許請求の範囲内で使用される場合、
- 例えば「ポリマー(P)」のような表現などにおける、式を特定する記号又は数字の前後における括弧の使用は、本文の残部と記号又は数字とをより良く区別するという目的を有するにすぎず、故に上記の括弧は省略することもでき、
- 用語「1,1-ジフルオロエチレン」、「1,1-ジフルオロエテン」及び「フッ化ビニリデン」は同義語として用いられ、
- 用語「ポリ-(1,1-ジフルオロエチレン)」及び「ポリフッ化ビニリデン」は同義語として用いられ、
- 用語「セパレーター」は、電気化学セル中の反対極性の電極を電気的及び物理的に分離し、且つそれらの間を流れるイオンに対して透過性である、多孔性単層又は複数層ポリマー材料を表すことが意図される。
- 「基材層」という表現は、単一層からなる単層基材又は互いに隣接した少なくとも2つの層を含む複数層基材のどちらかを表すことが意図される。
- 「複合セパレーター」という表現は、少なくとも1つの非電気活性無機充填剤材料がポリマーバインダー材料に混合される、上で定義したセパレーターを表すことが意図される。
- 「電気化学セル」という用語は、正極、負極及び液体電解質を含む電気化学セルであって、単層又は複数層のセパレーターが前記電極の一方の少なくとも1つの表面に付着している電気化学セルを表すことが意図される。電気化学セルの非限定的な例としては、とりわけ、電池、好ましくは二次電池及び電気二重層キャパシタが挙げられる。
- 「二次電池」という表現は、再充電可能電池を表すことが意図される。二次電池の非限定的な例としては、とりわけ、アルカリ又はアルカリ土類二次電池が挙げられる。
【0021】
好ましくは、前記少なくとも1つのモノマー(PF)は、
- とりわけテトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC2~C8パーフルオロオレフィン;
- とりわけクロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのクロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C2~C6フルオロオレフィン;
(式中、X0が、C1~C12パーフルオロアルキル基;パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基などの1個以上のエーテル基を有するC1~C12パーフルオロオキシアルキル基;-CF2ORf2(式中Rf2が、CF3、C2F5、C3F7などのC1~C6パーフルオロアルキル基又は-C2F5-O-CF3などの1個以上のエーテル基を有するC1~C6(パー)フルオロオキシアルキル基である)から選択される)
- パーフルオロジオキソール
を含む、より好ましくはそれらからなる群の中から選択される。
【0022】
好ましい実施形態によると、前記少なくとも1つのモノマー(PF)は、C2~C8パーフルオロオレフィン;さらにより好ましくはHFPである。
【0023】
好ましくは、前記コポリマー(Fb)は、前記コポリマー(Fb)100モルに基づいて2モル%~12モル%未満の量の、より好ましくは3モル%~約10モル%の量の、HFPに由来する繰り返し単位を含む。
【0024】
好ましくは、前記コポリマー(Fb)は、前記コポリマー(Fb)100モルに基づいて0.5モル%~1.9モル%の量の、モノマー(M)に由来する繰り返し単位を含む。
【0025】
好ましくは、前記少なくとも1つのモノマー(M)は少なくとも1つの(メタ)アクリル系モノマー[モノマー(MA)]である。
【0026】
好ましくは、前記モノマー(MA)は、アクリル酸に構造的に由来するか又はメタクリル酸に構造的に由来する、且つ式(I):
(式中、
- 互いに等しいか若しくは異なる、R
1、R
2及びR
3は独立して、水素原子及びC
1~C
3炭化水素基から選択され、
- R
OHは、水素原子であるか又は少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部分である)に適合するモノマーである。
【0027】
好ましくは、モノマー(MA)は、式(II):
(式中、
- R’
1、R’
2、及びR’
3は、水素原子であり、
- R’
OHは、水素原子であるか又は少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)に適合する。
【0028】
モノマー(MA)の非限定的な例には、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、及びそれらの混合物が含まれる。
【0029】
好ましくは、前記コポリマー(Fb)は、前記コポリマー(Fb)100モルに基づいて0.5モル%~1.9モル%の量の、モノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0030】
モノマー(MA)は、下記:
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
- 式:
のどちらかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
- 式:
のアクリル酸(AA)
- 及びこれらの混合物
から、より好ましくは選択される。
【0031】
(メタ)アクリルモノマー(MA)は、更により好ましくはアクリル酸(AA)又はヒドロキシエチルアクリレート(HEA)である。
【0032】
好ましくは、前記コポリマー(Fb)の前記ブロック(A)と前記ブロック(B)との間の重量比は、20~50の間、より好ましくは25~45の間に含まれる。
【0033】
有利には、前記コポリマー(Fb)は、交互に配列したブロック(A)及びブロック(B)を含む。言い換えれば、本発明によるコポリマー(Fb)は、不規則に分布されたブロック(A)及び/又は(B)を含まない。
【0034】
或る実施形態によると、1つのブロック(A)が2つのブロック(B)の間に挟まれ、すなわちコポリマー(Fb)が以下の式:B-A-Bに適合する。
【0035】
別の実施形態によると、1つのブロック(B)が2つのブロック(A)の間に挟まれ、すなわちコポリマー(Fb)が以下の式:A-B-Aに適合する。
【0036】
より好ましい実施形態によると、前記ブロック(A)及び前記ブロック(B)の両方が前記モノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0037】
好ましくは、前記ブロック(A)は、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)に由来する繰り返し単位及びモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の配列からなる。
【0038】
好ましくは、前記ブロック(B)は、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びモノマー(MAに由来する繰り返し単位の配列からなる。
【0039】
前記ブロック(A)及び前記ブロック(B)の両方に前記モノマー(MA)を含む本発明によるコポリマー(Fb)は、以下の工程を含む乳化重合方法で有利には合成され得る:
(Ia)VDFモノマーの第1の部分をモノマー(M)の少なくとも第1の部分及び水性媒体と接触させて、第1の混合物[混合物Ma1)]を提供する工程;
(IIa)前記混合物(Ma1)を重合させる工程;
(IIIa)工程(II)の重合した混合物(Ma1)をVDFとモノマー(PF)とを含む混合物の少なくとも第1の部分並びにモノマー(M)の第2の部分と接触させて、第2の混合物[混合物(Ma2)]を提供する工程;
(IVa)前記混合物(Ma2)を重合させて、このように、式B-A-Bに適合する前記コポリマー(Fb)を提供する工程;
又は
(Ib)VDFとモノマー(PF)とを含む混合物の少なくとも第1の部分をモノマー(M)の少なくとも第1の部分及び水性媒体と接触させて、第1の混合物[混合物(Mb1)]を提供する工程;
(IIb)前記混合物(Mb1)を重合させる工程;
(IIIb)工程(II)の重合した混合物(Mb1)を少なくともVDFモノマーの第1の部分及びモノマー(M)の第2の部分と接触させて、第2の混合物[混合物(Mb2)]を提供する工程;
(IVb)前記混合物(Mb2)を重合させて、このように、式A-B-Aに適合する前記コポリマー(Fb)を提供する工程。
【0040】
本発明の乳化重合方法は好ましくは、典型的に10~70バールの間、好ましくは15~50バールの間の重合圧力で実施される。
【0041】
重合温度は、使用されるモノマーに基づき当業者が適切に選択することができる。好ましくは、本発明の乳化重合方法は70℃~150℃の温度で実施される。
【0042】
好ましくは、VDFモノマー及びモノマー(PF)をガスの形態の反応環境に供給する。
【0043】
本発明の方法、とりわけ工程(Ia)及び工程(Ib)は有利には、少なくとも1つのラジカル開始剤の存在下で実施される。ラジカル開始剤の選択肢は特に限定されないが、水性乳化重合プロセスに好適なラジカル開始剤は、重合プロセスを開始及び/又は促進する能力のある化合物から選択され、これとしては、過硫酸ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムなどの過硫酸塩;特にアルキル過酸化物、ジアルキル過酸化物(ジ-tert-ブチル過酸化物-DTBPなど)、ジアシル過酸化物、ペルオキシジカーボネート(ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート及びジイソプロピルペルオキシジカーボネートなど)、ペルオキシエステル(tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート及びコハク酸ペルオキシドなど)を含む有機過酸化物;並びにそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されないことが理解される。
【0044】
好ましくは、前記工程(Ia)は連鎖移動剤の存在下で行われる。好適な連鎖移動剤であって、好適な鎖-鎖移動剤は典型的には、式Rf(I)x(Br)y(式中、Rfは、1~8個の炭素原子を含有する(パー)フルオロアルキル又は(パー)フルオロクロロアルキルであり、一方、x及びyは、1≦x+y≦2で、0~2の整数である)のものである。
【0045】
本発明の目的のために、「平均一次粒子径」は、水性乳化重合に由来するコポリマー(Fb)の一次粒子を意味することが意図される。
【0046】
従って、前記ポリマー(Fb))の一次粒子は、コポリマー(Fb)の水性ラテックスを濃縮及び/又は凝固すること、並びにその後に乾燥及び均質化してそれぞれの粉末を生じることなどのこうしたポリマー/コポリマー製造の回収及び調整工程によって得られ得る凝集物(すなわち一次粒子の集合体)と区別できることが意図される。
【0047】
従って、本発明のセパレーターをコーティングするために使用される組成物(C1)の水性ラテックスは、水性媒体においてポリマー又はコポリマーの粉末を分散させることによって調製された水性スラリーと区別されることができる。水性スラリー中に分散したポリマー又はコポリマーの粉末の平均粒径は、典型的には、ISO13321に従って測定して1μmより大きい。
【0048】
好ましくは、前述で定義されたコポリマー(Fb)の一次粒子の平均粒径は、ISO 13321に従って測定して、10nm超、より好ましくは15nm超、更により好ましくは20nm超、及び/又は600nm未満、より好ましくは400nm未満、又は300nm未満である。
【0049】
好ましくは、組成物(C1)の全固形分は組成物(C1)の全重量に対して20重量%~60重量%、より好ましくは45重量%~55重量%である。
【0050】
組成物(C1)は任意選択的に、前記コポリマー(Fb)の一次粒子の他に少なくとも1つの他の成分を含み得る。
【0051】
好ましくは、前記少なくとも1種の任意選択の成分は、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、充填剤及びそれらの混合物を含む群の中から選択される。
【0052】
典型的には、このような任意選択の成分は、存在する場合、ラテックスの固形分の重量に対して、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、又は7重量%未満の量である。
【0053】
本発明の電気化学セル用セパレーターは、有利には、電気化学セルに使用するのに適した電気絶縁複合セパレーターであり得る。電気化学セルにおいて使用される場合、一般的には、複合セパレーターは、有利には、電気化学セル内のイオン伝導を可能にする電解質で充填される。好ましくは、前述の電解質は、液体又は半液体である。
【0054】
好ましい実施形態によると、本発明のセパレーターは2つの表面を有し、ここで、少なくとも1つの表面は、その中に均一に分散される前記上で定義した組成物(C1)及び非電気活性無機充填剤材料を含む組成物[組成物(C2)]で少なくとも部分的にコートされる。
【0055】
別の好ましい実施形態によると、本発明のセパレーターは2つの表面を有し、ここで、少なくとも1つの表面は、
- バインダーと非電気活性無機充填剤材料とを含む組成物[組成物(C3*)]から得られ得る前記少なくとも1つの表面に付着された第1の層、及び
- 上で定義した組成物(C1)を含む第2の層を含む。
【0056】
「非電気活性無機充填材料」という用語は、本明細書においては、電気化学セル用電気絶縁セパレーターの製造に適する電気非伝導性の無機充填材料を意味することを意図する。
【0057】
本発明によるセパレーターにおける非電気活性無機充填材料は、典型的には、ASTM D257に従って20℃で測定される場合、少なくとも0.1×1010Ωcm、好ましくは少なくとも0.1×1012Ωcmの電気抵抗率(p)を有する。適切な非電気活性無機充填材料の非限定的な例としては、特に天然及び合成シリカ、ゼオライト、アルミナ、チタニア、金属炭酸塩、ジルコニア、リン酸ケイ素及びケイ酸塩などが挙げられる。典型的には、非電気活性無機充填材料は、ISO 13321に従って測定される場合、0.01μm~50μmの平均サイズを有する粒子の形態である。典型的には、非電気活性無機充填材料は、組成物(C1)の10重量%~90重量%、好ましくは50重量%~88重量%、又は70重量%~85重量%の量で存在する。
【0058】
非電気活性無機充填材料は、組成物(C1)のポリマーマトリックスに均一に分散され、0.1μm~5μmの平均直径を有する孔を形成することができる。本発明のプロセスから得られる複合セパレーターの孔体積分率は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも40%である。本発明のプロセスから得られる複合セパレーターは、典型的には、2μm~100μm、好ましくは2μm~40μmに含まれる総厚さを有する。
【0059】
層(LS)は、非多孔質の基材層又は多孔質の基材層のどちらかであることができる。基材層が複数層基材である場合、前述の基材の外層は、非多孔質の基材層又は多孔質の基材層であることができる。「多孔質の基材層」という用語は、本明細書においては、有限寸法の孔を含む基材層を意味することを意図する。
【0060】
層(LS)は、典型的には、有利には少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、又は少なくとも40%、及び有利には多くとも90%、好ましくは多くとも80%の気孔率を有する。
【0061】
層(LS)の厚さは、特に限定されないが、典型的には3~100マイクロメートル、好ましくは5~50マイクロメートルである。
【0062】
層(LS)は、有利には1組以上のポリマー繊維から作製される布地である。
【0063】
本発明の目的においては、「布地」という用語は、1組以上のポリマー繊維を織り合わせ、多数の孔をもたらすことによって得られることができる平面織物構造を意味すると理解される。
【0064】
布地は、1組以上のポリマー繊維から作製される織布、又は1組以上のポリマー繊維から作製される不織布であることができる。
【0065】
「織布」とは、2組以上のポリマー繊維を互いに直交して織り合わせ、これにより、布地の縦方向に伸びる経糸及び布地の横方向に伸びる緯糸を与えることによって得られることができる平面織物構造を意味することを意図する。「不織布」とは、1組以上のポリマー繊維を、機械的、熱的、又は化学的に不規則に連結又は結合し、多数の孔をもたらすことによって得られることができる平面織物構造を意味することを意図する。
【0066】
布地は、ポリマー繊維の大部分が一方向に伸びる一方向性布地、又は2組以上の連続繊維が異なる方向に伸びる多方向性布地であることができる。
【0067】
層(LS)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、及びポリプロピレン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、電気化学デバイスのセパレーターに一般的に使用される任意の多孔質の基材又は布地によって作製されることができる。
【0068】
好ましくは、層(LS)はポリエチレン又はポリプロピレンである。
【0069】
コーティングの重量と層(SC)の重量との間の比は好ましくは3:1~0.5:1、より好ましくは2:1、1.5:1、1:1又は0.75:1である。
【0070】
好ましくは、工程(iii)は、キャスティング、吹付コーティング、ロールコーティング、ドクターブレーディング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング及びスクリーン印刷、ブラシ、スキージー、フォームアプリケーター、カーテンコーティング、真空めっき、回転ディスク吹付コーティングから選択される技術によって行われる。
【0071】
好ましくは、工程(iv)は、55℃未満、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満の温度で行われる。
【0072】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0073】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0074】
材料及び方法
Solef(登録商標)PVDF75130粉末:懸濁重合で製造される、VDF-AA及びVDF-HFP-AAランダムコポリマー(2.3モル%のHFP及び0.7モル%のAAを含有する)をSolvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から得た。
【0075】
Solef(登録商標)PVDFXPH884ラテックス:乳化重合で製造される、VDF-AA及びVDF-HFP-AAランダムコポリマー(2.8モル%のHFP及び0.6モル%のAAを含有する)をSolvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から得た。
【0076】
溶媒及び反応体を購入し、そのままで使用した。
【0077】
ポリマー1(一般構造B-A-Bに適合する)の合成
HFP最終含有量は2.9モル%であった。
【0078】
段階1(A)。バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。次いで、連鎖移動剤として6.6gの1,4-ジヨードパーフルオロブタン(C4F8I2)を添加した。温度を90℃にし、VDFガス状モノマーを供給することによって試行全体を通して20バールAssの圧力で一定に維持した。15mlの100g/lの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を5分間かけて添加し(200mL/時)、同時に50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給した。
【0079】
30分後、APS溶液を実行の全継続時間にわたり240ml/時の流動速度で供給した。700gのVDFガス状モノマーが供給されるとき、VDFの流れが遮断され、反応器が室温に冷却され、圧力が12バールに低下した。
【0080】
段階2(B)。ラテックスを反応器内に維持しながら、それぞれ95:5のモル比にVDF/HFPガス状混合物モノマーの供給を変化させた。温度を90℃にし、35バールの圧力を維持した。
【0081】
次いで、50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給し、APS溶液を実行の全継続時間にわたり350ml/時の流動速度で供給した。
【0082】
3150gの混合物が供給されるとき、混合物の供給が遮断され、反応器が室温に冷却され、脱気され、ラテックスが回収された。最終反応時間は150分であった。
【0083】
そのようにして得られたブロックコポリマーは、96.5モル%のVDF、2.9モル%のHFP及び0.6モル%のアクリル酸(AA)モノマーを含有していた。
【0084】
そのようにして得られた水性ラテックスは、21.0重量%の固形分含有率を有していた。
【0085】
ブロックコポリマーは、ISO 13321に従って測定される時に230nmの平均一次径を有する粒子の形態で水性ラテックス中に分散され、(ASTM D3418に従って決定した)158.5℃の融点及び37.0J/gの結晶化のデルタHを有することがわかった。
【0086】
粉末の形態のブロックコポリマーはラテックスを凍結融解すること、粉末を脱塩水(10回×15L)中で洗浄することによって回収され、最終的に80℃のベントオーブン内で一晩乾燥された。
【0087】
ポリマー2(一般構造A-B-Aに適合する)の合成
HFP最終含有量は3.4モル%であった。
【0088】
段階1(B)。バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。次いで、連鎖移動剤として6.6gの1,4-ジヨードパーフルオロブタン(C4F8I2)を添加した。温度を90℃にし、それぞれ95:5のモル比でVDF/HFPガス状混合物モノマーを供給することにより、試行全体を通して35バールAssの圧力で一定に維持した。250mlの100g/lの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を15分間かけて添加し(1L/時)、同時に50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給した。
【0089】
30分後、APS溶液を実行の全継続時間にわたり240ml/時の流動速度で供給した。3150gのVDF/HFPガス状混合物モノマーが供給されるとき、モノマー混合物の流れが遮断され、反応器が室温に冷却され、脱気された。
【0090】
段階2(A)。ラテックスを反応器内に維持しながらVDFガス状モノマーの供給を変化させた。温度を90℃にし、VDFによって圧力を35バールに上げた。
【0091】
50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給し、APS溶液を実行の全継続時間にわたり240ml/時の流動速度で供給した。
【0092】
900gのVDFモノマーが供給されるとき、供給が遮断され、反応器が室温に冷却され、脱気され、ラテックスが回収された。最終反応時間は、121分間であった。
【0093】
そのようにして得られたブロックコポリマーは、96.0モル%のVDF、3.4モル%のHFP及び0.6モル%のアクリル酸(AA)モノマーを含有していた。
【0094】
そのようにして得られた水性ラテックスは、22重量%の固形分含有率を有していた。
【0095】
ブロックコポリマーは、ISO 13321に従って測定される時に310nmの平均一次径を有する粒子の形態で水性ラテックス中に分散され、(ASTM D3418に従って決定した)152.1℃の融点及び35.1J/gの結晶化のデルタHを有することがわかった。
【0096】
粉末の形態のブロックコポリマーは、ラテックスを凍結融解すること、洗浄される粉末を脱塩水(10回×15L)中で洗浄することによって回収され、最終的に80℃のベントオーブン内で一晩乾燥された。
【0097】
ポリマー3(一般構造B-A-Bに適合する)の合成
HFP最終含有量は4.7モル%であった。
【0098】
段階1(A)。バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。次いで、連鎖移動剤として6.6gの1,4-ジヨードパーフルオロブタン(C4F8I2)を添加した。温度を90℃にし、VDFガス状モノマーを供給することによって試行全体を通して20バールAssの圧力で一定に維持した。15mlの100g/lの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を5分間かけて添加し(200ml/時)、同時に50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給した。
【0099】
30分後、APS溶液を実行の全継続時間にわたり240ml/時の流動速度で供給した。700gのVDFガス状モノマーが供給されるとき、VDFの流れが遮断され、反応器が室温に冷却され、圧力が12バールに低下した。
【0100】
段階2(B)。ラテックスを反応器内に維持しながら、それぞれ92:8のモル比にVDF/HFPガス状混合物モノマーの供給を変化させた。温度を90℃にし、35バールの圧力を維持した。
【0101】
次いで、50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給し、APS溶液を実行の全継続時間にわたり350ml/時の流動速度で供給した。
【0102】
3150gの混合物が供給されるとき、混合物の供給が遮断され、反応器が室温に冷却され、脱気され、ラテックスが回収された。最終反応時間は、161分間であった。
【0103】
そのようにして得られたブロックコポリマーは、94.7モル%のVDF、4.7モル%のHFP及び0.6モル%のアクリル酸(AA)モノマーを含有していた。
【0104】
そのようにして得られた水性ラテックスは、21.2重量%の固形分含有率を有していた。
【0105】
ブロックコポリマーは、ISO 13321に従って測定される時に231nmの平均一次径を有する粒子の形態で水性ラテックス中に分散され、(ASTM D3418に従って決定した)159.2℃の融点及び29.9J/gの結晶化のデルタHを有することがわかった。
【0106】
粉末の形態のブロックコポリマーは、ラテックスを凍結融解すること、粉末を脱塩水(10回×15L)中で洗浄することによって回収され、最終的に80℃のベントオーブン内で一晩乾燥された。
【0107】
ポリマー4(一般構造A-B-Aに適合する)の合成
HFP最終含有量は4.7モル%であった。
【0108】
段階1(B)。バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。次いで、連鎖移動剤として6.6gの1,4-ジヨードパーフルオロブタン(C4F8I2)を添加した。温度を90℃にし、それぞれ92:8のモル比でVDF/HFPガス状混合物モノマーを供給することにより、試行全体を通して35バールAssの圧力で一定に維持した。250mlの100g/lの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を15分間かけて添加し(1L/時)、同時に50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給した。
【0109】
30分後、APS溶液を実行の全継続時間にわたり240ml/時の流動速度で供給した。3150gのVDF/HFPガス状混合物モノマーが供給されるとき、モノマー混合物の流れが遮断され、反応器が室温に冷却され、脱気された。
【0110】
段階2(A)。ラテックスを反応器内に維持しながらVDFガス状モノマーの供給を変化させた。温度を90℃にし、VDFによって圧力を35バールに上げた。
【0111】
50mlのアクリル酸(AA)の溶液(50g/lのアクリル酸水溶液)を、250gのポリマーが合成される毎に供給し、APS溶液を実行の全継続時間にわたり240ml/時の流動速度で供給した。
【0112】
900gのVDFモノマーが供給されるとき、供給が遮断され、反応器が室温に冷却され、脱気され、ラテックスが回収された。最終反応時間は、112分間であった。
【0113】
そのようにして得られたブロックコポリマーは、94.7モル%のVDF、4.7モル%のHFP及び0.6モル%のアクリル酸(AA)モノマーを含有していた。
【0114】
そのようにして得られた水性ラテックスは、22重量%の固形分含有率を有していた。
【0115】
ブロックコポリマーは、ISO 13321に従って測定される時に304nmの平均一次径を有する粒子の形態で水性ラテックス中に分散され、(ASTM D3418に従って決定した)150.9℃の融点及び31.8J/gの結晶化のデルタHを有することがわかった。
【0116】
粉末の形態のブロックコポリマーは、ラテックスを凍結融解すること、洗浄される粉末を脱塩水(10回×15L)中で洗浄することによって回収され、最終的に80℃のベントオーブン内で一晩乾燥された。
【0117】
上に記載されたように調製されるポリマーの特性表示を以下の表1に記載する。
【0118】
【0119】
表1に提供される結果は、本発明による交互の軟質及び硬質ブロックを含むコポリマーが、比較として使用されるランダムコポリマーと比べてより低量の不溶性物質を有することを示した。
【0120】
結果として、本発明によるコポリマーは、リチウム電池における適用のためのスラリーの調製において有利に使用され得る。
【0121】
溶融粘度(MV)値の差は、このような適用におけるコポリマーの挙動に悪影響を与えないことがわかった。
【0122】
実施例1-電解質の膨潤
膨潤挙動は、炭酸塩混合物中への浸漬後にポリマー1及びポリマー2の成形試料の重量増加を測定することによって評価された。
【0123】
試験体は、凝固ラテックスから得られる粉末をステンレス鋼フレームにフラットプレスによって成形することによって得られた。ステンレス鋼フレームは、25mmの直径及び1.5mmの厚さを有する5つの円形試料を得るように設計された。ポリマー試料は、ポリマーの融解温度よりも60℃高い温度でポリマーを溶融すること、次に室温に冷却することによって得られた。
【0124】
円形ポリマー試料(Φ=25mm;厚さ1.5mm)は55℃で一晩乾燥された。それらの乾燥重量及び厚さを測定し、後でそれらをEC(エチレンカーボネート)中に浸漬した:DMC(ジメチルカーボネート)1:1(wt.)。試料の重量を、膨潤剤中に浸漬後に吸収プラトーが達せられるまで定期的に測定した。
【0125】
相対的な重量増加のプラトー値を以下の表1に記載する。
【0126】
実施例2-カソードへの乾燥接着
ポリオレフィンセパレーターをドクターブレードによってDMA、TPG及びPVDFの溶液(重量による成分比:9/9/1)でコートした。コーティング工程後に、セパレーターを70℃の真空下で乾燥させた。
【0127】
このためセパレーターを積層し、コートされた表面をカソード電極に暴露した。
【0128】
カソード組成物は以下の通りであった:
PVDF SOLEF5130(登録商標)(ポリマーバインダー)2重量%
IMERYS製のカーボンブラックsuperC65(電子導電剤)3重量%
L&F製の酸化ニッケルマンガンコバルト(カソード活物質)95重量%
【0129】
カソードの多孔度は40%であった。
【0130】
カソード表面上へのセパレーターの積層を圧力、時間及び温度の以下の条件でハイドロリックフラットプレスを使用して実施した:1MPa、15分及び85℃。
【0131】
積層後にASTMD903に従って180°及び300mm/分で剥離試験を適用して接着強さを評価した。
【0132】
結果を以下の表2に要約する。
【0133】
【0134】
ポリマー1及びポリマー2は、両方の比較例に対して乾燥積層及び膨潤性能の有利な組合せを示した。
【0135】
ポリマー1及びポリマー2は、より低いか又は同等の膨潤指数と組み合わさった比較例よりも確かに高い積層強度を提供した。