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特許7284178燃料セルスタックに対するカソード流れ場分配
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】燃料セルスタックに対するカソード流れ場分配
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20230523BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20230523BHJP
   H01M 8/0265 20160101ALI20230523BHJP
   H01M 8/0267 20160101ALI20230523BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230523BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/0258
H01M8/0265
H01M8/0267
H01M8/10 101
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020539290
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019014004
(87)【国際公開番号】W WO2019143811
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】62/618,146
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/618,228
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ガンビーニ,フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェット,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ポールバヤ,オルガ
(72)【発明者】
【氏名】ドミット,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】バーガー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】バーンド,パトリック
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016942(JP,A)
【文献】特開2015-164133(JP,A)
【文献】特開2003-092121(JP,A)
【文献】特開2007-165257(JP,A)
【文献】国際公開第98/052242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2465
H01M 8/0258
H01M 8/0265
H01M 8/0267
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気化学セルを備えた電気化学セルスタックであって、各々の電気化学セルは、
カソード触媒層、アノード触媒層、および、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体と、
アノードプレートおよびカソードプレートであって、前記膜電極接合体は、前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に介在させられる、アノードプレートおよびカソードプレートと、
前記カソードプレートと前記カソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、平均孔サイズを有する複数の孔を有する多孔質構造を備えたカソード流れ場と
を備え、
前記複数の電気化学セルは、前記電気化学セルスタックの第1の端部において配置される第1の電気化学セルを含み、
前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し、
前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有する、
電気化学セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズは、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズより%から50%大きい、電気化学セルスタック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造の前記流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より%から50%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造の前記流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より15%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気化学セルスタックであって、前記複数の電気化学セルは、前記第1の電気化学セルに対して前記スタックの反対の端部において配置される最後の電気化学セルを含み、前記最後の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する、電気化学セルスタック。
【請求項6】
請求項5に記載の電気化学セルスタックであって、前記最後の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズは、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズより%から50%大きい、電気化学セルスタック。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電気化学セルスタックであって、前記最後の電気化学セルの前記多孔質構造の流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より%から50%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学セルスタックであって、前記最後の電気化学セルの前記多孔質構造の前記流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より15%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気化学セルスタックであって、前記複数の電気化学セルは、前記第1の電気化学セルに隣接して配置される第2の電気化学セルを含み、前記第1の電気化学セルに隣接して配置される前記第2の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する、電気化学セルスタック。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学セルスタックであって、前記第2の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズは、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズより%から50%大きい、電気化学セルスタック。
【請求項11】
請求項9または10に記載の電気化学セルスタックであって、前記第2の電気化学セルの前記多孔質構造の流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より%から50%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の電気化学セルに隣接して配置される前記第2の電気化学セルの前記多孔質構造の前記流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より15%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気化学セルスタックであって、前記複数の電気化学セルは、前記最後の電気化学セルに隣接して配置される第3の電気化学セルを含み、前記最後の電気化学セルに隣接して配置される前記第3の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する、電気化学セルスタック。
【請求項14】
請求項13に記載の電気化学セルスタックであって、前記第3の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズは、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均孔サイズより%から50%大きい、電気化学セルスタック。
【請求項15】
請求項13または14に記載の電気化学セルスタックであって、前記第3の電気化学セルの前記多孔質構造の流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より%から50%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項16】
請求項15に記載の電気化学セルスタックであって、前記第3の電気化学セルの前記多孔質構造の前記流れ抵抗は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の前記平均流れ抵抗より%小さい、電気化学セルスタック。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の電気化学セルスタックであって、前記複数の電気化学セルのうちの少なくとも1つの前記多孔質構造は、ニッケルおよびクロムを含む、電気化学セルスタック。
【請求項18】
請求項17に記載の電気化学セルスタックであって、ニッケル濃度は、60質量%から80質量%の範囲に及び、クロム濃度は、20質量%から40質量%の範囲に及ぶ、電気化学セルスタック。
【請求項19】
請求項17に記載の電気化学セルスタックであって、前記少なくとも1つの電気化学セルの前記多孔質構造は、反対の第2の表面より高いクロム濃度を伴う第1の表面を有する、電気化学セルスタック。
【請求項20】
請求項19に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の表面の前記クロム濃度は、質量%から50質量%の範囲に及ぶ、電気化学セルスタック。
【請求項21】
請求項20に記載の電気化学セルスタックであって、前記反対の第2の表面は、質量%未満のクロム濃度を有する、電気化学セルスタック。
【請求項22】
請求項17に記載の電気化学セルスタックであって、クロム濃度は、3質量%から6質量%の範囲に及び、ニッケル濃度は、74質量%から87質量%の範囲に及ぶ、電気化学セルスタック。
【請求項23】
請求項22に記載の電気化学セルスタックであって、スズをさらに含む電気化学セルスタック。
【請求項24】
請求項23に記載の電気化学セルスタックであって、スズ濃度は、10質量%から20質量%の範囲に及ぶ、電気化学セルスタック。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記カソードプレートに面する前記多孔質構造の前記表面内へとスタンピングされた、複数の相互嵌合させられたフィードチャネルおよび排出チャネルを有し、前記フィードチャネルは、第1のカソード分配チャネルにおいて開始し、前記第1のカソード分配チャネルと流体連通し、第2のカソード分配チャネルの方に延び、前記排出チャネルは、前記第2のカソード分配チャネルにおいて終了し、前記第2のカソード分配チャネルと流体連通し、前記第1のカソード分配チャネルの方に延びる、電気化学セルスタック。
【請求項26】
請求項25に記載の電気化学セルスタックであって、前記フィードチャネルおよび前記排出チャネルの幅および深さの一方または双方は、前記多孔質構造の長さに沿って変動する、電気化学セルスタック。
【請求項27】
請求項26に記載の電気化学セルスタックであって、前記フィードチャネルの前記幅は、前記第1のカソード分配チャネルから離れて前記第2のカソード分配チャネルの方に延びると狭くなり、前記排出チャネルの前記幅は、前記第1のカソード分配チャネルから離れて前記第2のカソード分配チャネルの方に延びると広くなる、電気化学セルスタック。
【請求項28】
請求項26に記載の電気化学セルスタックであって、前記フィードチャネルの前記深さは、前記第1のカソード分配チャネルから離れて前記第2のカソード分配チャネルの方に延びると減少し、前記排出チャネルの前記深さは、前記第1のカソード分配チャネルから離れて前記第2のカソード分配チャネルの方に延びると増大する、電気化学セルスタック。
【請求項29】
請求項26に記載の電気化学セルスタックであって、前記フィードチャネルの断面積は、前記第1のカソード分配チャネルから離れて前記第2のカソード分配チャネルの方に延びると減少し、前記排出チャネルの断面積は、前記第1のカソード分配チャネルから離れて前記第2のカソード分配チャネルの方に延びると増大する、電気化学セルスタック。
【請求項30】
請求項29に記載の電気化学セルスタックであって、前記フィードチャネルの前記断面積は、酸化剤が、前記フィードチャネルの外に流れ、前記多孔質構造内へと拡散するレートにほぼ等しいレートで減少し、前記排出チャネルの前記断面積は、酸化剤が、前記多孔質構造の外に前記排出チャネル内へと流れるレートにほぼ等しいレートで増大し、それによって、前記フィードチャネルおよび前記排出チャネルを通る酸化剤のほぼ一定の速度を維持する、電気化学セルスタック。
【請求項31】
請求項25に記載の電気化学セルスタックであって、前記多孔質構造は、前記フィードチャネルと前記排出チャネルとの間に形成される、1つまたは複数のランドセクションを含み、前記1つまたは複数のランドセクションの厚さは、前記多孔質構造の長さに沿って変動する、電気化学セルスタック。
【請求項32】
長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを備えた電気化学セルスタックであって、各々の電気化学セルは、
カソード触媒層、アノード触媒層、および、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備えた膜電極接合体と、
アノードプレートおよびカソードプレートであって、前記膜電極接合体は、前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に介在させられ、前記アノードプレートは、前記アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートと、
前記カソードプレートと前記カソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を備えたカソード流れ場と
を備え、
前記アノード流れ場を形成する前記複数のチャネルは、概して正方形の形状の、波形にされたチャネルであり、前記複数のチャネルは、前記アノード触媒層を横断する燃料の流れを導くように構成された、アノード側に対し開放のアノードチャネルを含み、前記複数のチャネルは、さらには、冷却剤流れを導くように構成された、逆の側に対し開放の冷却剤チャネルを含み、
前記複数の電気化学セルは、前記電気化学セルスタックの第1の端部において配置される第1の電気化学セルを含み、
前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し、
前記第1の電気化学セルの前記多孔質構造は、前記複数の電気化学セルの前記多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有する、
電気化学セルスタック。
【請求項33】
請求項32に記載の電気化学セルスタックであって、前記冷却剤チャネルは、各々、Aの冷却剤チャネル幅を有し、前記アノードチャネルは、各々、Bのアノードチャネル幅を有し、前記アノードチャネル幅Bに対する前記冷却剤チャネル幅Aの比率は、より大であり、未満である、電気化学セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、2018年1月17日に出願された、米国仮出願第62/618,146号、および、2018年1月17日に出願された、米国仮出願第62/618,228号に対する優先権の利益を主張するものであり、それらの米国仮出願の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[002]本開示は、電気化学セルおよび電気化学セルスタック、より詳細には、電気化学セルスタックに対するカソード流れ場分配を対象とする。
【背景技術】
【0003】
[003]普通は燃料セルまたは電解セルと分類される電気化学セルは、化学反応から電流を発生させる、または、電流の流れを使用して化学反応を誘導するために使用されるデバイスである。例えば、燃料セルは、燃料(例えば、水素、天然ガス、メタノール、ガソリン、その他)および酸化剤(空気または酸素)の化学エネルギーを、電気、ならびに、熱および水の廃棄生成物へと変換する。基本的な燃料セルは、負帯電アノードと、正帯電カソードと、電解質と呼ばれるイオン伝導材料とを備える。
【0004】
[004]異なる燃料セル技術は、異なる電解質材料を利用する。プロトン交換膜(PEM)燃料セルは、例えば、電解質として高分子イオン伝導膜を利用する。水素PEM燃料セルにおいて、水素原子が、アノードにおいて電子およびプロトン(水素イオン)へと電気化学的に分けられる。電子は、次いで、回路を通ってカソードに流れ、電気を発生させ、一方で、プロトンは、電解質膜を通ってカソードに拡散する。カソードにおいて、水素プロトンは、電子および酸素(カソードに供給される)と組み合わさって、水および熱を生成する。
【0005】
[005]電解セルは、逆に動作させられる燃料セルを表す。基本的な電解セルは、外部電位が付与されるときに、水を水素および酸素ガスへと分解することにより、水素発生器として機能する。水素燃料セルまたは電解セルの基本的な技術は、電気化学的水素圧縮、精製、または膨張などの電気化学的水素操作に応用され得る。電気化学的水素操作は、水素管理に対して従前から使用される機械的システムに対する存立可能な代替案として出現した。エネルギー担体としての水素の成功裏の商業化、および、「水素経済」の長期の持続可能性は、主として、燃料セル、電解セル、および他の水素操作/管理システムの、効率およびコスト有効度に依存する。
【0006】
[006]動作において、単一の燃料セルは、一般的には、約1ボルトを発生させることができる。所望される量の電力を得るために、個々の燃料セルは、燃料セルスタックを形成するために組み合わされ、燃料セルは、順次的に一体に積層される。各々の燃料セルは、カソードと、電解質膜と、アノードとを含み得る。カソード/膜/アノード接合体は、典型的にはバイポーラプレートにより両方の側で支持される、「膜電極接合体」すなわち「MEA」の構成物である。反応物ガス、すなわち、燃料(例えば、水素)および酸化剤(例えば、空気または酸素)が、流れ場を通してMEAの電極に供給される。機械的支持を提供することに加えて、バイポーラプレート(さらには流れ場プレートまたはセパレータプレートとして知られている)は、スタック内の個々のセルを物理的に分離し、一方で、それらのセルを電気的に接続する。典型的な燃料セルスタックは、燃料および酸化剤を、アノードおよびカソード流れ場それぞれに導くための、マニホールドおよび入口ポートを含む。燃料セルスタックは、さらには、過剰燃料および酸化剤を駆逐するための、排気マニホールドおよび出口ポートを含む。燃料セルスタックは、さらには、燃料セルスタックにより発生させられる熱を駆逐する助けとなる冷却剤流体を循環させるためのマニホールドを含み得る。
【0007】
[007]上記で説明されたように、水が、電気への燃料および酸化剤の変換の副生成物としてカソードにおいて発生させられる。この水は、典型的には、反応物ガス、例えば、酸素の流れによって、電気化学セルから除去される。水の非効率的な除去は、電気化学セルのフラッディングを招き得る。電気化学セルのフラッディングは、反応物ガス流れの低減または完全な停止を招き得る。水の過剰蓄積は、個々の電気化学セルの故障を招くことがあり、そのことは、次いで、電気化学セルスタックの不安定性および/または故障を招くことがある。
【0008】
[008]典型的な電気化学セルスタックにおいて、端部電気化学セルは、中間に配置される電気化学セルとは異なる動作温度を有し得る。典型的には、これらの端部電気化学セルの動作温度は、端部電気化学セルの中間に配置される電気化学セルの動作温度より小であり、そのことは、端部電気化学セルは、1つの熱生成近隣電気化学セルを有するのみであり、しかるに、中間に配置される電気化学セルは、2つの熱生成近隣電気化学セルからの熱に遭遇するという事実によるものである。端部セルが1つの熱生成近隣電気化学セルのみからの熱にまさに遭遇するのみではなく、それらの端部セルは、さらには、電気化学セルスタックを収容する、電流抽出プレートおよび端部プレートなどの、電気化学セルスタック接合体の端部構成要素を通して雰囲気とより直接的に接触し、かくして、伝導性冷却を受けさせられる。
【0009】
[009]いかなる個別の理論にも束縛されることなく、端部セルの増大される冷却は、水の蓄積を招き得るものであり、そのことは、個々のセルおよび電気化学セルスタックの性能に有害に影響を及ぼし得る。この問題点に対処する試行は、電気化学セルのすべての全体を通して均一な動作温度を維持するための取り組みで、端部セルに隣接して配置されるヒータを追加することを含む。しかしながら、そのようなヒータの追加は、電気化学セルスタック接合体に、不必要な複雑さ、重量、寄生エネルギー、および空間消費を加える。よって、電気化学セル内の、特に端部電気化学セル内の水蓄積の量を制御する、改善された電気化学セルスタック設計に対する必要性が実在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[010]前に述べられた電気化学セルスタック設計考慮事項を考慮して、本開示は、上記のことに対して定められる問題、および/または、既存の技術に関する他の問題のうちの、1つまたは複数を克服することを対象とする、電気化学セルスタックを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[011]1つの態様において、本開示は、電気化学セルスタックを対象とする。電気化学セルスタックは、複数の電気化学セルを含み得る。各々の電気化学セルは、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体を含み得る。各々の電気化学セルは、さらには、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられる、アノードプレートおよびカソードプレートと、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、平均孔サイズを有する複数の孔を有する多孔質構造を含む、カソード流れ場とを含み得る。一部の実施形態において、複数の電気化学セルは、スタックの第1の端部において配置される第1の電気化学セルを含み得る。一部の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造のものより大である流れ寸法(すなわち、厚さ)を有し得る。
【0012】
[012]一部の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大である。他の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小である。なおも他の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約15%小である。
【0013】
[013]一部の実施形態において、複数の電気化学セルは、第1の電気化学セルに対してスタックの反対の端部において配置される最後の電気化学セルを含み、最後の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する。一部の実施形態において、最後の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大である。一部の実施形態において、最後の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小である。一部の実施形態において、最後の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約15%小である。
【0014】
[014]一部の実施形態において、複数の電気化学セルは、第1の電気化学セルに隣接して配置される第2の電気化学セルを含み、第1の電気化学セルに隣接して配置される第2の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する。一部の実施形態において、第2の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大である。一部の実施形態において、第2の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小である。一部の実施形態において、最後の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約15%小である。
【0015】
[015]一部の実施形態において、複数の電気化学セルは、最後の電気化学セルに隣接して配置される第3の電気化学セルを含み、最後の電気化学セルに隣接して配置される第3の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する。一部の実施形態において、第3の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大である。一部の実施形態において、第3の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小である。一部の実施形態において、第3の電気化学セルの多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%小である。
【0016】
[016]一部の実施形態において、複数の電気化学セルのうちの少なくとも1つの多孔質構造は、ニッケルおよびクロムを含む。一部の実施形態において、ニッケル濃度は、約60質量%から約80質量%の範囲に及び、クロム濃度は、約20質量%から約40質量%の範囲に及ぶ。一部の実施形態において、少なくとも1つの電気化学セルの多孔質構造は、反対の第2の表面より高いクロム濃度を伴う第1の表面を有する。一部の実施形態において、第1の表面のクロム濃度は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶ。一部の実施形態において、反対の第2の表面は、約3質量%未満のクロム濃度を有する。一部の実施形態において、クロム濃度は、約3質量%から約6質量%の範囲に及び、ニッケル濃度は、約74質量%から約87質量%の範囲に及ぶ。
【0017】
[017]一部の実施形態において、複数の電気化学セルのうちの少なくとも1つの多孔質構造は、スズをさらに含む。一部の実施形態において、スズ濃度は、約10質量%から約20質量%の範囲に及ぶ。
【0018】
[018]一部の実施形態において、多孔質構造は、カソードプレートに面する多孔質構造の表面内へとスタンピングされた、複数の相互嵌合させられたフィードチャネルおよび排出チャネルを有し、フィードチャネルは、第1のカソード分配チャネルにおいて開始し、第1のカソード分配チャネルと流体連通し、第2のカソード分配チャネルの方に延び、排出チャネルは、第2のカソード分配チャネルにおいて終了し、第2のカソード分配チャネルと流体連通し、第1のカソード分配チャネルの方に延びる。一部の実施形態において、フィードチャネルおよび排出チャネルの、幅および/または深さは、多孔質構造の長さに沿って変動する。一部の実施形態において、フィードチャネルの幅は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると狭くなり、排出チャネルの幅は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると広くなる。一部の実施形態において、フィードチャネルの深さは、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると減少し、排出チャネルの深さは、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると増大する。
【0019】
[019]一部の実施形態において、フィードチャネルの断面積は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると減少し、排出チャネルの断面積は、第1のカソード分配チャネルから離れて第2のカソード分配チャネルの方に延びると増大する。一部の実施形態において、フィードチャネルの断面積は、酸化剤が、フィードチャネルの外に流れ、多孔質構造内へと拡散するレートにほぼ等しいレートで減少し、排出チャネルの断面積は、酸化剤が、排出チャネル内へと、多孔質構造の外に流れるレートにほぼ等しいレートで増大し、以て、フィードチャネルおよび排出チャネルを通る、酸化剤のほぼ一定の速度を維持する。
【0020】
[020]一部の実施形態において、多孔質構造は、フィードチャネルと排出チャネルとの間に形成される、1つまたは複数のランドセクションを含み、1つまたは複数のランドセクションの厚さは、多孔質構造の長さに沿って変動する。
【0021】
[021]別の態様において、本開示は、電気化学セルスタックを対象とする。電気化学セルスタックは、複数の電気化学セルを含み得る。各々の電気化学セルは、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体を含み得る。各々の電気化学セルは、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられ、アノードプレートが、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、アノードプレートおよびカソードプレートも含み得る。各々の電気化学セルは、さらには、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含む、カソード流れ場を含み得る。一部の実施形態において、アノード流れ場を形成する複数のチャネルは、概して正方形の形状の、波形にされたチャネルであり、複数のチャネルは、アノード触媒層を横断する燃料の流れを導くように構成される、アノード側に対し開放のアノードチャネルを含み、複数のチャネルは、さらには、冷却剤流れを導くように構成される、逆の側に対し開放の冷却剤チャネルを含む。一部の実施形態において、複数の電気化学セルは、電気化学セルスタックの第1の端部において配置される第1の電気化学セルを含む。一部の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有する。一部の実施形態において、第1の電気化学セルの多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有する。
【0022】
[022]一部の実施形態において、冷却剤チャネルは、各々、Aの冷却剤チャネル幅を有し、アノードチャネルは、各々、Bのアノードチャネル幅を有し、アノードチャネル幅Bに対する冷却剤チャネル幅Aの比率は、約1より大であり、約6未満である。
【0023】
[023]上述の全体的な説明、および、後に続く詳細な説明の両方は、請求される際、本開示について、単に例示的および解説的であり、限定的ではないということが理解されるべきである。
【0024】
[024]本明細書に組み込まれ、本明細書の部分の構成物である、添付図面は、本開示の実施形態を例解し、説明とともに、本開示の原理を解説するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】[025]例示的な実施形態による、一体に積層される複数の電気化学セル(例えば、燃料セル)の側面概略図である。
図2】[026]例示的な実施形態による、図1の隣接する燃料セルの一部分の側面斜視図である。
図3】[027]例示的な実施形態による、燃料セルを通る燃料の流れ経路を例解する、図2の側面斜視図である。
図4】[028]例示的な実施形態による、燃料セルを通る酸化剤の流れ経路を例解する、図2の側面斜視図である。
図5】[029]例示的な実施形態による、隣接する燃料セルを通る冷却剤流体の流れ経路を例解する、図2の側面斜視図である。
図6A】[030]例示的な実施形態による、図2のカソード流れ場の正面図である。
図6B】[031]例示的な実施形態による、カソード流れ場の別の実施形態の正面図である。
図6C】[032]例示的な実施形態による、カソード流れ場の別の実施形態の正面図である。
図6D】[033]例示的な実施形態による、図6Cの断面A-Aに沿った断面図である。
図6E】[034]例示的な実施形態による、図6Cの断面B-Bに沿った断面図である。
図6F】[035]例示的な実施形態による、カソード流れ場の別の実施形態の正面図である。
図7】[036]例示的な実施形態による、一体に積層される複数の電気化学セル(例えば、燃料セル)の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[037]本開示の本例示的な実施形態に対する言及が、今から詳細に為されることになり、それらの実施形態の例が、添付図面において例解される。可能である場合はいつでも、同じ参照番号が、同じまたは類する部分を指すために、図面の全体を通して使用されることになる。電気化学セル、特に、水素、酸素、および水を用いる燃料セルとの関係において説明されるが、本開示のデバイスおよび方法は、電解セル、水素精製器、水素エキスパンダ、および水素圧縮器を含むが、それらに制限されない、様々なタイプの燃料セルおよび電気化学セルによって用いられ得るということが理解される。
【0027】
[038]図1は、例示的な実施形態による、燃料セルスタック11の少なくとも一部分を形成するために、長手方向軸5に沿って一体に積層される複数の電気化学セル、例えば、燃料セル10の側面概略側面図である。燃料セル10は、一括して膜電極接合体(MEA)18と呼称され得る、さらには本明細書においてカソードと呼称され得るカソード触媒層12と、さらには本明細書においてアノードと呼称され得るアノード触媒層14と、カソード触媒層12とアノード触媒層14との間に配設されるプロトン交換膜(PEM)16とを備えることができる。PEM16は、純粋な高分子膜、または、他の材料を伴う複合膜を含むことができ、例えば、シリカ、ヘテロポリ酸、層状金属リン酸塩、リン酸塩、およびリン酸ジルコニウムが、高分子マトリクス内に埋め込まれ得る。PEM16は、プロトンに対して透過性であり得るものであり、一方で、電子を伝導しない。カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、触媒を内包する多孔質炭素電極を含むことができる。触媒材料、例えば白金、白金コバルト合金、または非白金族金属(非PGM)が、酸素および燃料の反応を増大し得る。一部の実施形態において、カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、約1μmの平均孔サイズを有し得る。
【0028】
[039]燃料セル10は、2つのバイポーラプレート、例えば、カソードプレート20およびアノードプレート22を備えることができる。カソードプレート20は、カソード触媒層12に隣接して配置され得るものであり、アノードプレート22は、アノード触媒層14に隣接して配置され得る。MEA18は、カソードプレート20とアノードプレート22との間に介在させられ、それらのプレートの間で囲繞され得る。カソード区画19が、MEA18とカソードプレート20との間に形成され得るものであり、アノード区画21が、MEA18とアノードプレート22との間に形成され得る。カソードプレート20およびアノードプレート22は、電流コレクタの役割を果たし、それぞれの電極表面(例えば、アノード触媒層14およびカソード触媒層12)への燃料および酸化剤に対するアクセス流れ通路を提供し、燃料セル10の動作の間に形成される水の除去のための流れ通路を提供することができる。カソードプレート20およびアノードプレート22は、さらには、冷却剤流体(例えば、水、グリコール、または、水グリコール混合物)に対する流れ通路を規定することができる。例えば、隣接する燃料セル10のカソードプレート20とアノードプレート22との間に、冷却剤区画23が形成され得るものであり、その冷却剤区画23は、隣接する燃料セル10の間で冷却剤流体を循環させるように構成される。燃料セル10により発生させられる熱は、冷却剤流体に伝達され、冷却剤流体の循環により別のところに搬送され得る。カソードプレート20およびアノードプレート22は、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni-Cr合金、グラファイト、または、任意の他の適した電気伝導性材料から作製され得る。
【0029】
[040]一部の実施形態において、例えば、図1において例解されるように、燃料セル10は、さらには、MEA18の各々の側で、燃料セル10の中に、電気伝導性ガス拡散層(例えば、カソードガス拡散層24およびアノードガス拡散層26)を含み得る。ガス拡散層24、26は、セルの中でのガスおよび液体の輸送を可能にする拡散媒体として働き、電気的にカソードプレート20、アノードプレート22と、MEA18との間の伝導を提供し、燃料セル10からの熱およびプロセス水の除去において助力となり、一部の事例において、PEM16に対する機械的支持を提供し得る。ガス拡散層24、26は、PEM16に面する側にコーティングされるカソード触媒層12およびアノード触媒層14を伴う、織布または不織布の炭素布を含むことができる。一部の実施形態において、カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、隣接するGDL24、26またはPEM16のいずれか上へとコーティングされ得る。一部の実施形態において、ガス拡散層24、26は、約10μmの平均孔サイズを有し得る。
【0030】
[041]燃料セル10は、MEA18の各々の側に配置される流れ場をさらに含み得る。例えば、燃料セル10は、本明細書においてさらに説明されるように、カソードプレート20とGDL24との間に配置される多孔質構造を含み得るカソード流れ場28と、アノードプレート22により形成され得るアノード流れ場30とを含み得る。流れ場は、MEA18の各々の側の燃料および酸化剤が、MEA18を通って流れる、および、MEA18に達することを可能にするように構成され得る。これらの流れ場は、カソードおよびアノード触媒層12、14への、燃料および酸化剤の均一な分配を手助けし得る。触媒層12、14への、燃料および酸化剤の均一な分配は、燃料セル10の性能を増大し得る。GDL24は、カソード流れ場28からのカソード触媒層12の機械的保護を提供し得る。
【0031】
[042]図1においての1つの燃料セル10のみが、カソード触媒層12、アノード触媒層14、プロトン交換膜16、膜電極接合体(MEA)18、カソード区画19、カソードプレート20、アノード区画21、アノードプレート22、冷却剤区画23、ガス拡散層24、ガス拡散層26、カソード流れ場28、およびアノード流れ場30に対する参照番号を含むが、スタック11の他の燃料セル10は、同じ要素を含み得るということが理解されるべきである。
【0032】
[043]燃料セルスタック11は、さらには、燃料セル10の積層されるカソードプレート20およびアノードプレート22の系列により規定される長手方向軸5に沿って延びる複数の流体マニホールド31A、31Bを含み得る。流体マニホールド31A、31Bは、燃料(例えば、水素)および酸化剤(例えば、酸素)を各々の燃料セル10のMEA18にフィードし、反応物生成物(例えば、未反応の燃料、未反応の酸化剤、および水)を各々の燃料セルのMEA18から排出するために構成され得る。流体マニホールド31A、31Bは、さらには、冷却剤流体を、冷却剤区画23を通してフィードおよび排出するために構成され得る。流体マニホールド31A、31B、カソード区画19、アノード区画21、および冷却剤区画23を通る流れの方向は変動し得る。例えば、一部の実施形態において、マニホールドおよび区画を通る流れは並流であり得るものであり、一方で、他の実施形態において、流れ経路のうちの1つまたは複数は向流であり得る。例えば、一部の実施形態において、アノード区画21を通る燃料の流れは、カソード区画19を通る酸化剤の流れに対して向流であり得る。流体マニホールド31A、31Bは、通路およびポートを介してMEA18に流体接続し得る。特定のマニホールド、通路、およびポートが、本明細書において「フィード」または「排出」、および、「入口」または「出口」として識別されることがあるが、これらの名称は、流れの方向に基づいて決定され得るものであり、流れの方向は、切り替えられ得るということが理解されるべきである。流れの方向を変化させることは、これらの名称を変化させ得る。
【0033】
[044]図2は、隣接する燃料セル10の一部分の部分的に分解された側面斜視図を示す。例えば、図2は、1つの燃料セル10のMEA18、GDL24、およびアノードプレート22、ならびにさらには、隣接する燃料セル10のカソードプレート20、カソード流れ場28、MEA18、およびGDL24を示す。アノード区画21は、隣接するMEA18とアノードプレート22との間に形成され得る。冷却剤区画23は、隣接するアノードプレート22とカソードプレート20との間に形成され得る。カソード区画19は、隣接するカソードプレート20とMEA18との間に形成され得る。カソード区画19は、カソード流れ場28を内包し得る。図2において示されるように、燃料セル10は、さらには上部および下部流体マニホールドと呼称され得る、流体マニホールド31A、31Bを含み得る。流体マニホールド31A、31Bは、図2において示されるように、長手方向軸5に沿って延び得る。
【0034】
[045]図3~5は、1つの例解的な実施形態による、燃料セル10を通る燃料、酸化剤、および冷却流体の流れ経路を例解する。しかし、他の実施形態に対して、流れ経路のうちの1つまたは複数の方向は、例えば、流れの方向を逆にすることにより切り替えられ得るということが理解されるべきである。図3は、燃料セル10のMEA18のアノード側を通して循環させられる燃料に対する流れ経路を例解し、図4は、燃料セル10のMEA18のカソード側を通して循環させられる酸化剤に対する流れ経路を例解し、図5は、隣接する燃料セル10の間で循環させられる冷却剤流体に対する流れ経路を例解する。
【0035】
[046]今から図3を参照すると、第1の流体マニホールド31Aは、少なくとも1つのアノードフィードマニホールド32を含み得るものであり、そのアノードフィードマニホールド32は、流体接続し、燃料を、少なくとも1つのアノード入口通路34を通し、少なくとも1つのアノード入口ポート36を通し、アノード区画21内へと導き得る。アノード区画21からの燃料(例えば、未反応の燃料)は、アノード区画21から、少なくとも1つのアノード出口ポート38を通り、少なくとも1つのアノード出口通路40を通り、少なくとも1つのアノード排出マニホールド42内へと導かれ得る。アノード入口通路34およびアノード出口通路40は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。アノード入口通路34およびアノード出口通路40、ならびに、アノードフィードマニホールド32およびアノード排出マニホールド42の周辺部は、図3において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0036】
[047]図4において示されるように、第2の流体マニホールド31Bは、少なくとも1つのカソードフィードマニホールド44を含み得るものであり、そのカソードフィードマニホールド44は、流体接続し、酸化剤を、少なくとも1つのカソード入口通路46を通し、少なくとも1つのカソード入口ポート48を通し、カソード区画19内へと導き得る。カソード区画19からの酸化剤は、カソード区画19から、少なくとも1つのカソード出口ポート50を通り、少なくとも1つのカソード出口通路52を通り、少なくとも1つのカソード排出マニホールド54内へと導かれ得る。カソード入口通路46およびカソード出口通路52は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。カソード入口通路46およびカソード出口通路52、ならびに、カソードフィードマニホールド44およびカソード排出マニホールド54の周辺部は、図4において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0037】
[048]図5において示されるように、第1の流体マニホールド31Aは、少なくとも1つの冷却剤フィードマニホールド56を含み得るものであり、その冷却剤フィードマニホールド56は、流体接続し、冷却剤流体を、少なくとも1つの冷却剤入口通路58を通し、冷却剤区画23の中の冷却剤流れ場86に導き得る。冷却剤区画23の中で、冷却剤流体は、本明細書においてさらに説明されることになるように、アノードプレート22により規定される複数の冷却剤チャネルから成り立つ冷却剤流れ場86を通って、アノードプレート22とカソードプレート20との間で流れ得る。隣接する燃料セル10により発生させられる熱は、冷却剤流体に伝達され、冷却剤流体の循環により燃料セル10から除去され得る。冷却剤区画23からの冷却剤流体は、少なくとも1つの冷却剤出口通路60を通り、少なくとも1つの冷却剤排出マニホールド62内へと導かれ得る。冷却剤入口通路58および冷却剤出口通路60は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。冷却剤入口通路58および冷却剤出口通路60、ならびに、冷却剤フィードマニホールド56および冷却剤排出マニホールド62の周辺部は、図5において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0038】
[049]図6Aは、例示的な実施形態による、カソード流れ場28の正面図である。図6Aにおいて可視の側は、隣接するカソードプレート20に面するように構成される側である(図2を確認されたい)。カソード流れ場28は、多孔質構造、例えば、一部の実施形態において、多孔質3次元ネットワーク構造を有する多孔質金属製発泡体構造を含み得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、スクリーン、エキスパンデッドメタルメッシュ、および、3次元的に形成され穴あけ加工された金属シートから選定され得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、ステンレス鋼、NiCr、NiSnCr、およびチタンから選定される材料から作製され得る。多孔質構造は、2つの反対向きの表面を伴うシート形状のものであり得る。一部の実施形態において、多孔質金属製発泡体構造は、約50μmから約500μmの範囲に及ぶ平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、多孔質金属製発泡体構造は、約100μmの平均孔サイズを有し得る。カソード流れ場28は、カソードプレート20に面する多孔質金属製発泡体構造の表面内の凹所に据えられる、第1のカソード分配チャネル90と、第2のカソード分配チャネル92とを含み得る。カソード流れ場28は、約0.2mmから約1.5mmの範囲に及ぶ厚さを有し得、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92は、厚さの約10%から約75%の間の深さで、カソード流れ場内の凹所に据えられ得る。
【0039】
[050]第1のカソード分配チャネル90は、カソード流れ場28の底部縁部に沿って、カソード流れ場28の一方の側から他方の側に概して延び得る。第2のカソード分配チャネル92は、カソード流れ場28の頂部縁部に沿って、カソード流れ場28の一方の側から他方の側に概して延び得る。カソード流れ場28がカソードプレート20に隣接して配置されるとき、カソード入口ポート48は、第1のカソード分配チャネル90と位置合わせされ得るものであり、カソード出口ポート50は、第2のカソード分配チャネル92と位置合わせされ得る。
【0040】
[051]カソード流れ場28は、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92の全体を通して形成される複数の支持特徴部94を含み得る。支持特徴部94は、概して円柱形、ディンプル形状のもの、または、他の適した形状であり得る。1つまたは複数の支持特徴部94の高さは、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92の凹所深さにほぼ等しくあり得る。第1のカソード分配チャネル90、第2のカソード分配チャネル92、および支持特徴部94は、カソード流れ場28を形成する多孔質金属製発泡体構造を、スタンピングする、圧延加工する、または、他の形で塑性変形させることにより形成され得る。
【0041】
[052]第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92は、酸化剤が多孔質金属製発泡体構造の孔内へと流れる前に沿って流れるための開放流れ経路を提供することにより、カソード流れ場28の幅に沿った酸化剤の一様な流れ分配を助長するように構成され得る。支持特徴部94は、第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92内へのカソードプレート20の変形またはたわみを、防止または低減することにより、燃料セル10が圧縮されるときに、第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92により提供される開放流れ経路を維持するために、機械的圧縮の間の、およびさらには、動作の間の適切な支持を提供するように構成され得る。
【0042】
[053]図6B、6C、および6Fは、カソード流れ場28’、28’’、28’’’の追加的な実施形態の正面図である。一部の実施形態において、カソード流れ場28’、28’’、28’’’は、カソード流れ場28に代えて燃料セル10内で利用され得る。カソード流れ場28’、28’’、28’’’は、本明細書において説明されるようなカソード流れ場28のすべての特徴部、および、下記で説明されるような追加的な特徴部を含み得る。図6B、6C、および6Fにおいて可視の側は、隣接するカソードプレート20に面するように構成される側、または、隣接するMEA18に面するように構成される側であり得る。
【0043】
[054]カソード流れ場28’、28’’は、複数のフィード(または第1の)チャネル101と、複数の排出(または第2の)チャネル102とを含み得る。フィードチャネル101および排出チャネル102は、カソードプレート20に面する表面上で、カソード流れ場28’内で、スタンピングされ、切り込み加工され、成形され、または、他の形で形成され得る。図6Bおよび6Cにおいて示されるように、フィードチャネル101は、第1のカソード分配チャネル90において開始し、第1のカソード分配チャネル90と流体連通し、第2のカソード分配チャネル92の方に延び得る。排出チャネル102は、第2のカソード分配チャネル92において終了し、第2のカソード分配チャネル92と流体連通し、第1のカソード分配チャネル90の方に延び得る。フィードチャネル101および排出チャネル102は、図6Bにおいて示されるように、相互嵌合させられ得るものであり、そのことによって、排出チャネル102は、隣接するフィードチャネル101の間に配置され得る。一部の実施形態において、フィードチャネル101および排出チャネル102は、改善された酸化剤分配を可能にするために、流体流れに対する障害物が実質的にないことがある。一部の実施形態において、フィードチャネル101および排出チャネル102は、第1および第2のカソード分配チャネル90、92において見出されるディンプル94と同様のディンプル(図示せず)を含み得る。
【0044】
[055]所定の実施形態において、複数のフィードチャネル101および排出チャネル102は、異なる配置構成、形状、および/または断面積を有し得るということが思索される。例えば、図6Bにおいて、フィードおよび排出チャネル101、102の幅は、カソード流れ場28’の長さに沿って変動し得る。図6Bにおいて、フィードチャネル101は、第1のカソード分配チャネル90において、または、第1のカソード分配チャネル90の付近で広く開始し、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると狭くなって点になり、一方で、排出チャネルは、点において開始し、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると広くなる。一部の実施形態において、フィードチャネル101の遠位端は、図6Bにおいて示されるような点よりむしろ平坦であり得る。同様に、一部の実施形態において、排出チャネル102の近位端は、図6Bにおいて示されるような点よりむしろ平坦であり得る。この配置構成によって、フィードチャネル101と排出チャネル102との間の直接的な流体連通は存しない。むしろ、第1のカソード分配チャネル90によりフィードチャネル101に分配される酸化剤は、複数のフィードチャネル101を通って流れ得るものであり、カソード流れ場28’の多孔質構造を通って、隣接する排出チャネル102に拡散することを強制され得る。
【0045】
[056]図6Cは、カソード流れ場28’’に対するフィードチャネル101および排出チャネル102の別の配置構成を示し、フィードおよび排出チャネル101、102の幅は、カソード流れ場28’’の長さに沿ってほぼ同じままである。フィードおよび排出チャネル101、102の幅はほぼ同じままであるが、フィードおよび排出チャネル101、102の深さは、カソード流れ場28’’の長さに沿って変動し得る。例えば、図6Dは、フィードチャネル101を通る断面A-Aに沿ったカソード流れ場28’’の断面図を示す。図6Dにおいて示されるように、フィードチャネル101は、第1のカソード分配チャネル90において、または、第1のカソード分配チャネル90の付近で最も深く(すなわち、最大深さfd)開始し得るものであり、深さは、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると減少し得る。図6Dにおいて示されるように、深さは、一定のレートで(例えば、線形に)減少し得るものであり、または、一部の実施形態において、深さは、可変のレートで(例えば、非線形に、指数関数的に)減少し得る。図6Dにおいて示されるように、フィードチャネル101は、最小深さ(fd)を伴う遠位端において平坦に行き止まり得る。他の実施形態において、フィードチャネル101は、ゼロ最小深さfdを伴う遠位端において行き止まり得る。
【0046】
[057]図6Eは、排出チャネル102を通る断面B-Bに沿ったカソード流れ場28’’の断面を示す。図6Eにおいて示されるように、排出チャネル102は、第1のカソード分配チャネル90において、または、第1のカソード分配チャネル90の付近で最も浅く(すなわち、最小深さdd)開始し得るものであり、深さは、第2のカソード分配チャネル92の方に延びると増大し得る。排出チャネル102は、第2のカソード分配チャネル92において、または、第2のカソード分配チャネル92の付近で最も深くあり得る(すなわち、最大深さdd)。図6Eにおいて示されるように、深さは、一定のレートで(例えば、線形に)増大し得るものであり、または、一部の実施形態において、深さは、可変のレートで(例えば、非線形に、指数関数的に)増大し得る。図6Eにおいて示されるように、排出チャネル102は、最小深さ(dd)を伴う近位端において平坦に開始し得る。他の実施形態において、排出チャネル101は、ゼロ最小深さddを伴う近位端において開始し得る。
【0047】
[058]フィードおよび排出チャネル101、102の、幅を変動させること(例えば、図6Bを確認されたい)、または、深さを変動させること(例えば、図6C~Eを確認されたい)により、カソード流れ場28’、28’’に沿った酸化剤の流れに対して利用可能な断面積は変動(例えば、排出チャネル102において増大、または、フィードチャネル101において減少)し得る。カソード流れ場28’、28’’の長さに沿ったフィードおよび排出チャネル101、102においての利用可能な流れ面積の増大または減少は、フィードチャネル101および排出チャネル102に沿った酸化剤の流れ速度がほぼ一定のままであるように、フィードチャネル101から多孔質構造内へと拡散し、多孔質構造から排出チャネル102内へと拡散した酸化剤の体積と対応するように構成され得る。換言すれば、フィードチャネル101の断面積は、酸化剤の速度がほぼ一定のままであるように、酸化剤が、フィードチャネル101の外に流れ、多孔質構造内へと拡散するレートに等しいレートで減少し得る。同様に、排出チャネル102の断面積は、酸化剤の速度がほぼ一定のままであるように、酸化剤が、排出チャネル102内へと、多孔質構造の外に流れるレートに等しいレートで増大し得る。一部の実施形態において、フィードおよび排出チャネル101、102の、幅および深さは、両方が変動し得る。例えば、一部の実施形態において、図6Dおよび6Eは、図6Cに加えて、図6Bの断面を表し得る。
【0048】
[059]図6Bおよび6Cにおいて示されるように、ランドセクション104と呼称され得る、フィードチャネル101と排出チャネル102との間に形成される分離セクションが存し得る。フィードチャネル101と排出チャネル102との間のランドセクション104の厚さは固定され得るものであり、または、一部の実施形態において、厚さは変動し得る。例えば、厚さは、第1のカソード分配チャネル90に最も近いと(例えば、フィードチャネル101の近位端と、排出チャネルの遠位端との間で)最も大であり得るものであり、厚さは、第2のカソード分配チャネル92の方で減少し得る。他の実施形態において、厚さは、第1のカソード分配チャネル90に最も近いと最も薄くあり得るものであり、厚さは、第2のカソード分配チャネル92の方で増大し得る。他の実施形態において、ランドセクション104の厚さは、第1のカソード分配チャネル90と、第2のカソード分配チャネル92との間のほぼ中程で、最も厚く、または、最も薄くあり得る。
【0049】
[060]一部の実施形態において、複数のマイクロチャネル106が、ランドセクション104内に、カソード流れ場28’、28’’内に形成され得る。マイクロチャネル106は、ランドセクション104の全体長さ、または、一部分だけに沿って形成され得る。マイクロチャネル106は、カソード流れ場28’、28’’により提供される多孔質ネットワークと比較して、酸化剤に対する好まれる流れ経路を生み出すために、フィードチャネル101を排出チャネル102と流体接続するように構成され得る。これらの実施形態に対して、拡散することと連関して、または、拡散することよりむしろ、酸化剤は、マイクロチャネルを通ってフィードチャネル101から排出チャネル102に流れ得る。マイクロチャネル106は、他の形ではカソード流れ場28’、28’’のランドセクションにより陰にされることになる、触媒サイトの大部分に対する酸化剤利用可能性を提供するような手立てで、サイズ設定および隔置され得る。
【0050】
[061]フィードおよび排出チャネル101、102の数は、例えば、カソード流れ場28’、28’’の幅、フィードチャネル101の幅、排出チャネル102の幅、燃料セル10の用途、酸化剤に対する意図もしくは設計される動作圧力、酸化剤に対する意図もしくは設計される動作流れレート、燃料セル10に対する意図もしくは設計されるパワー出力、または、これらのパラメータの任意の組合せを含む、1つまたは複数の異なるパラメータに基づいて調整され得る。
【0051】
[062]カソード流れ場28’、28’’は、いくつかの利益を提示し得る。例えば、フィードチャネル101および排出チャネル102は、酸化剤が通って流れることができる、より大きい断面積を提供し、そのことは、他の多孔質流れ場構造と比較して、多孔質流れ場にわたる圧力降下を低減することができる。フィードチャネル101および排出チャネル102に加えて、マイクロチャネルが、さらには、酸化剤ガスがフィードチャネル101と排出チャネル102との間で通って流れることができる、増大された断面積を提供し得るものであり、そのことは、多孔質流れ場にわたる圧力降下をさらに低減することができる。圧力降下を低減することにより、酸化剤を加圧するために要されるエネルギー(例えば、ブロワパワー)の量が低減され得るものであり、そのことが今度は、燃料セル10の総体的な性能および効率を改善する(例えば、パワー密度を改善し、寄生負荷を低減する)ことができる。加えて、カソード流れ場28’、28’’の特徴部は、カソード流れ場の出口の付近で酸素濃度を増大するために、多孔質流れ場の中で新鮮な酸化剤を、より一様に分配し得る。(例えば、フィードチャネル101、排出チャネル102、およびマイクロチャネル)。このことは、酸化剤の入来する流れが、例えば、流れが多孔質体を通して分配されるまで、酸素に富んだままであることを可能にすることができ、そのことは、より良好なセル電圧、および、潜在的には、より高い電流密度を結果的に生じさせることができる。
【0052】
[063]カソード流れ場28’’’は、図6Fにおいて示されるように、その表面内へと形成される(例えば、プレス加工される、エンボス加工される、または、切り込み加工される)複数のチャネル110を含み得る。複数のチャネル110は、第1のカソード分配チャネル90において始まり、第2のカソード分配チャネル92の方にほぼ中途まで延びる、第1のセットのチャネル110Aを含み得る。第1のセットのチャネル110Aは、新鮮な酸化剤(例えば、まだ消費されていない酸化剤)が、より低い酸素濃度を酸化剤がしばしば有することがあるカソード流れ場28’’’の第2の半分体まで直接的に進行することを可能にするように構成される。第1のセットのチャネル110Aは、それらがランドセクションの頂部上にあるように寸法設定され得る。他のチャネル110は、総体的な圧力降下を低減し、混合、および/または、一様な分配を手助けするように構成され得る。一部の実施形態に対して、カソード流れ場28’’’に対して使用される、ありふれた材料は、非一様な圧力降下および流れ特性を結果的に生じさせることになる非一様性を伴い得る。チャネル110は、より一様な圧力降下および流れ特性を可能にすることにより、この問題点に対処する助けとなるように設計される。第1のセットのチャネル110Aは、さらには、活性区域の前縁部においての流れレート、およびかくして流れ速度を低減する助けとなり、そのことが今度は、その領域内の水分の除去を低減して、乾燥状況においてのより良好な動作および性能を提供する。このことは、さらには、カソード流れ場28’’’の流れ経路に沿って湿度および酸素濃度分布のバランスをとる助けとなり、そのことは、電気化学反応の結果として、活性区域にわたって電流および温度分布のバランスをとる。このことは、燃料セルおよびスタックの、耐久性および信頼性を改善する。一部の実施形態において、第1のセットのチャネル110Aは、強め合って干渉し、セルが潜在的にドライアウトすることのリスクを増大する、高速度効果に対する潜在的可能性を回避するために、燃料セルのアノードまたは冷却剤側の任意の流れチャネルの反対に配置され得る。
【0053】
[064]カソード流れ場28(または28’’または28’’’)を作り上げる多孔質構造は、1つまたは複数の、金属および/または合金を含み得る。例えば、多孔質構造は、少なくとも、ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)(例えば、NiCr)、または、ニッケル、スズ(Sn)、およびクロム(例えば、NiSnCr)の組合せを含み得る。多孔質構造のNiCr実施形態に対して、クロムの質量による濃縮物は、約20質量%から約40質量%の範囲に及ぶことができ、一方で、ニッケルは、残りの残量 - 約60質量%から約80質量%を占め得る。多孔質構造のNiSnCr実施形態に対して、クロムの濃度は、約3質量%から約6質量%の範囲に及ぶことができ、スズの濃度は、約10質量%から約20質量%の範囲に及ぶことができ、一方で、ニッケルは、残量 - 約74%から約87%を占め得る。
【0054】
[065]一部の実施形態において、多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を含み得る。例えば、カソード流れ場28を形成する多孔質構造の、1つまたは両方の表面のクロム濃度は、約3質量%から約50質量%、約5質量%から約40質量%、または、約7質量%から約40質量%の範囲に及び得る。多孔質金属体の表面のクロム濃度を増大することは有利であり得るものであり、なぜならば、そのことは、酸性環境において多孔質構造の耐食性を増大するからである。例えば、カソード流れ場を形成する多孔質構造の表面のうちの少なくとも1つが、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有するとき、多孔質構造を含むバイポーラプレートは、有利には、カソードにおいての実質的に酸性の環境において高耐食性であり得る。本明細書において説明されるような多孔質構造により提供される、改善された耐食性は、有利には、カソードプレートが、コーティングされたステンレス鋼よりむしろ、コーティングされないステンレス鋼から形成されることを可能にし得るものであり、そのコーティングされたステンレス鋼は、その耐食性特質のために従前から使用されてきたものである。
【0055】
[066]一部の実施形態において、多孔質構造の一方の表面は、多孔質構造の他方の表面より高いクロム濃度を有し得る。そのような実例において、より高いクロム濃度を有する表面は、有利には、より高耐食性であり得る。より高いクロム濃度を有する表面は、MEA18に面するように配置構成され得る。一部の実施形態において、多孔質構造の、より高耐食性の表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有し得るものであり、一方で、金属多孔質構造の、より少ない耐食性表面は、約3質量%クロム未満のクロム濃度を有し得る。
【0056】
[067]本明細書において説明される多孔質構造の様々な実施形態は、1つまたは複数の電気めっきプロセスにより形成され得る。例えば、一部の実施形態において、樹脂成形体が、初期に、3次元ネットワーク構造に対する基板として使用され得る。樹脂成形体は、ポリウレタン、メラミン、ポリプロピレン、ポリエチレン、または類するもののうちの、1つまたは複数を含み得る。樹脂成形体は、その3次元ネットワーク構造内に孔を含み得る。一部の実施形態において、樹脂成形体は、約80%から約98%の範囲に及ぶ空隙率を有し得るものであり、約50μmから約500μmの孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、樹脂成形体は、約150μmから約5,000μm、約200μmから2,000μm、または、約300μmから約1,200μmの厚さを有し得る。
【0057】
[068]多孔質構造を形成するために、金属層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。多孔質構造のNiCr実施形態に対して、例えば、ニッケル層およびクロム層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。多孔質構造のNiSnCr実施形態に対して、例えば、ニッケル層、スズ層、およびクロム層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。樹脂成形体は、ニッケル粒子、スズ粒子、および/または炭素粒子などの伝導性金属の、無電解めっき(自己触媒めっき)、蒸気堆積、スパッタリング、および/または塗布などの電気的伝導処置を受けさせられ得る。次いで、ニッケル層および/またはスズ層が、処置された樹脂成形体の3次元構造またはスケルトンの表面上に電気的にめっきされ得る。例えば、樹脂成形体が伝導性層によってコーティングされるとき、ニッケル層が、引き続いて、電気めっきプロセスによって、樹脂成形体のスケルトン上に形成され得る。ニッケル層が形成される後、スズ層が、引き続いて、別の電気めっきプロセスによって、樹脂成形体のスケルトン上に形成され得る。代替的には、樹脂成形体が伝導性層によってコーティングされるとき、スズ層が最初に電気めっきされ、ニッケル層の電気めっきが後に続き得る。一部の実施形態において、化学蒸気堆積が、クロムを実質的にニッケルの構造に付加するために使用され得る。例えば、一部の実施形態において、クロムは、実質的にニッケルの構造に、約15質量%から約50質量%の範囲に及ぶ濃度で、化学蒸気堆積によって付加され得る。
【0058】
[069]一部の実施形態において、ニッケル層および/またはスズ層などの、1つまたは複数の金属層が、樹脂成形体のスケルトン上へとめっきされる後、クロム層が、電気めっきプロセスによって付加され得る。一部の実施形態において、クロムめっき層は、多孔質構造の少なくとも1つの表面のクロム濃度が、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶように形成され得る。クロムめっき層がめっきされた後、または、ニッケルおよび/もしくはスズめっき層がめっきされる後、多孔質構造は、熱処置により初期の樹脂成形体を除去することにより形成され得る。例えば、多孔質構造は、約900℃から約1300℃の範囲内の温度で、不活性雰囲気、または、還元される雰囲気内で加熱され得る。
【0059】
[070]図7に関して、その図において描写されるのが、本開示の例示的な実施形態による、複数の電気化学セルを含み得る電気化学セルスタック接合体11である。長手方向軸5に沿って配置構成され得るのが、登場の順に、第1の端部112、第1の電気化学セル116、第1の電気化学燃料セルに隣接して配置される第2の電気化学セル120、1つまたは複数の電気化学セル124、最後の電気化学セル118に隣接して配置される第3の電気化学セル122、および、反対の端部114である。上記で説明されたように、図7において説明される複数の電気化学セル(例えば、セル116、118、120、122、および124)の各々は、すべてが膜電極接合体18を協働的に作り上げる、カソード触媒層12と、アノード触媒層14と、プロトン交換膜16と、カソードガス拡散層24と、アノード拡散層28とを含み得る。電気化学セルの各々は、カソード流れ場28と、カソードプレート20と、アノードプレート22とをさらに含み得る。電気化学セルスタック接合体11の中の電気化学セルのうちの1つまたは複数のカソード流れ場28は、多孔質構造であり得るものであり、各々の多孔質構造は、平均孔サイズを有し得るものであり、電気化学セルスタック接合体11の中の複数の電気化学セルは、ともに、平均孔サイズを有し得る。
【0060】
[071]一部の実施形態において、第1の電気化学セル116の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、第1の電気化学セル116の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大であり得る。
【0061】
[072]一部の実施形態において、第1の電気化学セル116の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、第1の電気化学セル116の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小であり得る。一部の実施形態において、第1の電気化学セル116の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、または50%小であり得る。例えば、一部の実施形態において、平均より小である流れ抵抗は、例えば、図6B~6Fにおいて示されるような、カソード流れ場28’、28’’、または28’’’などの、多孔質流れ場にわたる低減された酸化剤圧力降下を結果的に生じさせる、相互嵌合させられたチャネルを有するカソード流れ場を用いることにより達成され得る。
【0062】
[073]一部の実施形態において、第1の電気化学セル116に隣接して配置される第2の電気化学セル120の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズとほぼ同じであり得る。一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である、ただし、第1の電気化学セル116の多孔質構造の平均孔サイズより小である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大であり得る。
【0063】
[074]一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である、ただし、第1の電気化学セル116の多孔質構造の流れ抵抗より大である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小であり得る。一部の実施形態において、第2の電気化学セル120の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、または50%小であり得る。例えば、一部の実施形態において、平均より小である流れ抵抗は、例えば、図6B~6Fにおいて示されるような、カソード流れ場28’、28’’、または28’’’などの、多孔質流れ場にわたる低減された酸化剤圧力降下を結果的に生じさせる、相互嵌合させられたチャネルを有するカソード流れ場を用いることにより達成され得る。
【0064】
[075]一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均サイズとほぼ同じである。一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造は、第1の電気化学セル116および/または第2の電気化学セル120の多孔質構造の平均孔サイズとほぼ同じ平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大であり得る。
【0065】
[076]一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約50%小であり得る。一部の実施形態において、最後の電気化学セル118の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、または50%小であり得る。例えば、一部の実施形態において、平均より小である流れ抵抗は、例えば、図6B~6Fにおいて示されるような、カソード流れ場28’、28’’、または28’’’などの、多孔質流れ場にわたる低減された酸化剤圧力降下を結果的に生じさせる、相互嵌合させられたチャネルを有するカソード流れ場を用いることにより達成され得る。
【0066】
[077]一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズとほぼ同じであり得る。一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である、ただし、最後の電気化学セル118の多孔質構造の平均孔サイズより小である平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造の平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大であり得る。
【0067】
[078]一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より小である、ただし、最後の電気化学セル122の多孔質構造の流れ抵抗より大である流れ抵抗を有し得る。一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約20%小であり得る。一部の実施形態において、第3の電気化学セル122の多孔質構造の流れ抵抗は、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、または50%小であり得る。例えば、一部の実施形態において、平均より小である流れ抵抗は、例えば、図6B~6Fにおいて示されるような、カソード流れ場28’、28’’、または28’’’などの、多孔質流れ場にわたる低減された酸化剤圧力降下を結果的に生じさせる、相互嵌合させられたチャネルを有するカソード流れ場を用いることにより達成され得る。
【0068】
[079]複数のセル(例えば、第1の電気化学セル116、第2の電気化学セル120、第3の電気化学セル122、および/または、最後の電気化学セル118)のうちの1つまたは複数の多孔質構造の増大される平均孔サイズは、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均流れ抵抗より約5%から約20%小の、これらの多孔質構造の中の流れ抵抗を結果的に生じさせ得る。流れ抵抗においてのこの差が、今度は、反応物ガス(例えば、酸素)に対する、これらの多孔質構造を通る、より好都合な流れ経路を結果的に生じさせ得るものであり、そのことは、より高い流れレートを結果的に生じさせ得る。複数のセル(例えば、第1の電気化学セル116、第2の電気化学セル120、第3の電気化学セル122、および/または、最後の電気化学セル118)のうちの1つまたは複数を通る、このより高い反応物ガス流れレートは、有利には、これらのセルにおいての、スタック接合体11の端部においてのそれらのセルの配置から結果的に生じる、それらのセルのより低い動作温度により引き起こされるフラッディングの現出を防止または最小化し得る。これらのセルにおいてのフラッディングの現出を防止または最小化することは、これらの電気化学セル、および、全体としての電気化学セルスタックの安定性を改善し、それらの電気化学セルおよび電気化学セルスタックの寿命を長くすることができる。
【0069】
[080]当業者により察知されることになるように、本明細書において説明される平均孔サイズおよび流れ抵抗においての差は、例示的にすぎず、電気化学セルスタックが設計される対象の個別の用途に基づいて最適化され得る。例えば、高い電流密度が要される用途は、より多くの流れを提供するために、端部セルにおいて、より低い流れ抵抗を要し得るものであり、なぜならば、より高い電流密度は、端部電気化学セルと、中間の複数の電気化学セルとの間の、温度においてのより大きい差を、およびかくして、フラッディングのより高い現出を結果的に生じさせる水のより大である蓄積を招き得るからである。加えて、当業者は、図7において説明される電気化学セルスタック接合体11は、例示的にすぎず、複数の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズより大である平均孔サイズ、および、複数の電気化学セルの平均流れ抵抗より小である流れ抵抗を伴う、複数の電気化学セルの中の追加的な電気化学セルが存し得るということに気付くであろう。
例1:電気化学セル流れ抵抗の測定
[081]接合された電気化学燃料セルは、カソードフィードマニホールドを介して、反応物ガス、例えば、酸素に接続され得る。酸素の流れは、電気化学セルが典型的な電気化学セルスタック接合体において遭遇することになる流れレートをシミュレートするために、生起させられ、増大され、測定され得る。例えば、カソードフィードマニホールドおよびカソード排出マニホールドにおいての圧力は、例えば、マノメータを使用して測定され得るものであり、フィードおよび排出においての圧力においての差が、セルに関するカソード流れ場の多孔質構造の圧力降下を提供し得る。測定量流れレートに対する測定された圧力降下の比率が、次いで、動作においてセルから予測される流れ抵抗を表す。
【0070】
[082]上述の説明は、例解の目的のために提示されたものである。その説明は、網羅的ではなく、開示される寸分違わない形式または実施形態に限定されない。実施形態の修正、適合、および他の応用が、本明細書の考察、および、開示される実施形態の実践から明白であろう。例えば、燃料セル10の説明された実施形態は、種々の電気化学セルによって使用されるために適合させられ得る。例えば、本開示は、主に、アノードチャネル流れ場およびカソード多孔質流れ場を伴う燃料セルに着目するが、これらの特徴部のうちの一部は、アノードおよびカソード流れ場を利用する燃料セル、または、アノードおよびカソード多孔質流れ場を利用する燃料セルにおいて利用され得るということが思索される。同様に、本明細書において説明されるセルおよび電気化学スタックの配置構成は、例示的にすぎず、他の燃料セル構成の範囲に適用され得る。
【0071】
[083]なおまた、例解的な実施形態が本明細書において説明されたが、範囲は、本開示に基づく均等な要素、修正、省略、組合せ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)、適合、および/または改変を有する一切の実施形態を含む。特許請求の範囲においての要素は、特許請求の範囲において用いられる文言に基づいて広範に解釈されるべきであり、本明細書において、または、本出願の手続処理の間に説明される例に限定されるべきではなく、それらの例は、非排他的と解されるべきである。さらに、開示される方法のステップは、ステップを並べ替えること、および/または、ステップを挿入もしくは削除することを含む、任意の様式で修正され得る。
【0072】
[084]本開示の特徴部および利点は、詳細な明細書から明白であり、かくして、添付される特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲の中に収まる、すべてのセルおよびセルスタックを包含するということが意図される。本明細書において使用される際、不定冠詞「a」および「an」は、「1つまたは複数の」を意味する。同様に、複数形用語の使用は、その用語が所与の文脈において曖昧さのないものでない限り、必ずしも複数を表象するとは限らない。「および」または「または」などの単語は、別段に具体的に指図されない限り、「および/または」を意味する。さらに、数多くの修正および変更が、本開示を考究することから、たやすく浮かぶことになるので、本開示を、例解および説明される、そのままの構築物および動作に限定することは所望されず、よって、本開示の範囲の中に収まる、すべての適した修正および均等物が、頼むところにされることがある。
【0073】
[085]本明細書の全体を通して、用語「概して平行な」および「概して垂直な」は、軸、平面、または、他の構成要素との関係において、1つまたは複数の構成要素の配置構成を説明するために使用され得る。「概して平行な」または「概して垂直な」と配置構成を説明するときに許容され得る、平行および垂直からのずれの度は変動し得る。許されるずれは、例えば、約10度未満のずれ、約5度未満のずれ、および、約3度未満のずれ、約2度未満のずれ、および、約1度未満のずれなど、約20度未満の外れであり得る。
【0074】
[086]本明細書において使用される際、用語「約」は、数値的な値を、20%、10%、5%、または1%の相違だけ、説述される値より上および下に緩和するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、10%の相違だけ、説述される値より上および下に緩和するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、5%の相違だけ、説述される値より上および下に緩和するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、1%の相違だけ、説述される値より上および下に緩和するために使用される。
【0075】
[087]本明細書において使用される際、用語「隣接する(toを伴わない)」および「隣接する(toを伴う)」は、互換的に使用され、2つ以上の物体の相対的位置を、隣にある、または隣接すると説明する。例えば、一部の実施形態において、電気化学セル燃料スタックにおいて、2つの電気化学燃料セルが、「隣接する」または「互いに隣接する」と説明されるならば、そのことは、前記電気化学燃料セルの中間に電気化学燃料セルは存しないということを意味すると理解されるべきである。
【0076】
[088]本明細書において使用される際、用語「燃料セル」および「電気化学燃料セル」、ならびに、それらの用語の複数形異形は、互換的に使用され得るものであり、意味合いにおいて同一であると理解される。
【0077】
[089]本開示の他の実施形態が、本明細書の考察、および、本明細書においての本開示の実践から、当業者には明白であろう。本明細書および例は、単に例示的と考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、後に続く特許請求の範囲により指示されるということが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7