(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】使い捨て3Dプリンタカートリッジ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/124 20170101AFI20230523BHJP
B29C 64/259 20170101ALI20230523BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20230523BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20230523BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/259
B29C64/321
B29C64/25
(21)【出願番号】P 2020546484
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 CH2019050003
(87)【国際公開番号】W WO2019169511
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518196435
【氏名又は名称】コーブクス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ディーター
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-89649(JP,A)
【文献】特表2020-535033(JP,A)
【文献】特開2002-178496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/124
B29C 64/259
B29C 64/321
B29C 64/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光デバイスに挿入することによって、付加層で構成される物体(33)を製造するための、使い捨て3Dプリンタカートリッジ(11)であって、前記カートリッジ(11)は少なくとも1つの重合性液体(21a、21b、21c)を内包するか、又は重合性液体を前記カートリッジ(11)に充填でき、
前記カートリッジ(11)は:
‐第1の下側ハウジング部分(13)、
‐前記第1の
下側ハウジング部分(13)から取り外すことができる第2の上側ハウジング部分(15)、
‐前記第2の
上側ハウジング部分(15)の下面を形成する支持プラットフォーム(31)であって、付加層で構成される前記物体(33)は、前記物体の構成中、前記支持プラットフォーム(31)の外側に配設可能である、支持プラットフォーム(31)、及び
‐前記第1の
下側ハウジング部分(13)の基部に対応する構成要素(35)であって、前記物体(33)の層を前記構成要素(35)の内面上で重合させることができ、前記構成要素(35)の前記内面は非粘着性コーティングを有する、構成要素(35)
を備える、カートリッジ(11)において、
前記第2の
上側ハウジング部分(15)は、前記物体(33)を製造するための前記カートリッジを開けるために、前記第1の
下側ハウジング部分(13)から分離可能であり、前記第1の
下側ハウジング部分(13)は、上部は開放されて前記第2の
上側ハウジング部分(15)を受け入れる容器である、ことを特徴とする、カートリッジ(11)。
【請求項2】
液体リザーバ(19a)は、前記第2の
上側ハウジング部分(15)上に形成され、前記少なくとも1つの重合性液体(21a、21b、21c)で充填されることを特徴とする、
請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
挿入空間(49)は前記第2の
上側ハウジング部分(15)上に設けられ、前記挿入空間(49)に液体リザーバ(19b)を挿入できることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記液体リザーバ(19a)は、第1の重合性液体(21a)及び第2の重合性液体(21b)が充填された少なくとも第1及び第2の受入空間(23)を有し、
前記受入空間の下端は混合チャンバ(27)内に向かって開放され、
前記支持プラットフォーム(31)は、前記混合チャンバ(27)と流体連通する少なくとも1つの入口チャネル(29)によって中断され、
前記入口チャネル(29)は前記第1の下側ハウジング部分(13)内に向かって開放され、これによ
り液体混合物(37)を前記第1の下側ハウジング部分(13)へと移すことができることを特徴とする、請求項2又は3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記カートリッジ(11)は1つの部品として設計され、前記第1の
下側ハウジング部分(13)から前記第2の
上側ハウジング部分(15)への移行部に所定の破壊点(17)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記カートリッジ(11)は2つの部品として設計され、前記第1の
下側ハウジング部分(13)及び第2の
上側ハウジング部分(15)は互いに着脱可能に接続されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記第1の下側ハウジング部分(13)及び前記第2の上側ハウジング部分(15)は、前記第1の下側ハウジング部分(13)から前記第2の上側ハウジング部分(15)へ
の移行部の領域において、伸縮式接続要素によって接続されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記第1の
下側ハウジング部分(13)の前記基部の外側は、第1の取り外し可能な保護カバー(45)で覆われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記第2の
上側ハウジング部分(15)の上部は、第2の取り外し可能な保護カバー(47)で覆われることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記液体リザーバ(19a、19b)は少なくとも1つの栓(25)を有し、前記栓(25)により、前記液体(21a、21b、21c)を押し出すことができ、また前記液体リザーバ(19a、19b)の充填用開口を閉鎖できることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記第1の
下側ハウジング部分(13)は第1の保持要素(39)を有し、前記第1の保持要素(39)によって前記第1の
下側ハウジング部分(13)を前記露光デバイス上に保持でき、また前記第1の保持要素(
39)により前記構成要素(35)を前記露光デバイス上に固定できることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記第2の
上側ハウジング部分(15)は第2の保持要素(41)を有し、前記第2の保持要素(41)により、前記第2の
上側ハウジング部分(15)を前記露光デバイス上に保持できることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のカートリッジ
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の使い捨て3Dプリンタカートリッジ(11)と、第1の
下側ハウジング部分(13)及び第2の
上側ハウジング部分(15)を挿入できる露光デバイスとからなるシステムであって、
付加層で構成される物体(33)は、支持プラットフォーム(31)上の前記第1の
下側ハウジング部分(13)と前記第2の
上側ハウジング部分(15)との間において製造できる、システム。
【請求項14】
付加層からなる物体(33)を製造するためのプロセスであって、以下のプロセスステップ:
‐第1の下側ハウジング部分(13)を第2の上側ハウジング部分(15)から分離することにより、請求項1~12のいずれか1項に記載の使い捨て3Dプリンタカートリッジ(11)を開放するステップ、
‐露光デバイス内で前記第1の
下側ハウジング部分(13)及び前記第2の
上側ハウジング部分(15)を固定するステップ、
‐前記露光デバイス上に設けられた少なくとも1つのプランジャを用いて、少なくとも1つの重合性液体(21a、21b、21c)を前記第2の
上側ハウジング部分(15)から前記第1の
下側ハウジング部分(13)へと押し出すステップ、並びに
‐光への曝露によって層を硬化させる度に、前記第1の
下側ハウジング部分(13)と前記第2の
上側ハウジング部分(15)との間の距離を漸増させることにより、前記物体(33)の前記付加層を漸進的に構成するステップを含む、プロセス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの重合性液体(21a、21b、21c)を押し出す前記ステップは、前記物体(33)の構成前に完全に実施されるか、又は前記物体(33)の前記層の構成中に同期的に実施されることを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光デバイスに挿入することによって、付加層で構成される物体を製造するための、請求項1の前提部分による使い捨て3Dプリンタカートリッジ、使い捨て3Dプリンタカートリッジと露光デバイスとからなるシステム、及び請求項16の前提部分による付加層からなる物体を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造デバイス(3Dプリンタ)は、ますます多くの産業において使用される。これは、他の製造プロセスと比べて、製品の複雑な造型が単純化される、又は初めて可能となるという事実によるものである。
【0003】
付加製造デバイスは、複雑な形状を有する物体を製造するために、医療分野においても使用される。これらの物体としては例えば、歯科クラウン、インプラント等が挙げられる。
【0004】
付加製造デバイスによって製造される物体が高い衛生要件を満たさなければならない場合、製造が開放された容器中で行われるため、問題が生じる。製造に必要な重合性液体は、貯蔵容器から取り出される。複数の液体を使用する場合、これらの液体は、開放された状態で混合される。従って、付加製造中の無菌条件は、遵守するのが困難であるか又は不可能である。付加製造デバイスはまた、衛生要件を満たすために、使用の度に入念に清掃しなければならない。
【0005】
上記物体は、重合性液体から製造される。未使用の重合性液体は、処分又は再利用されることが多い。しかしながら、経済的及び衛生的観点から、この手順は不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術の欠点は、改善された衛生的及び経済的条件下で物体を製造できるように付加製造を改善するという、本発明の起点となる課題をもたらす。別の目的は、複数の層で構成される物体の製造のために、短い加工時間で多成分印刷材料を加工できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、露光デバイスに挿入することによって、付加層で構成される物体を製造するための、使い捨て3Dプリンタカートリッジによって達成され、上記カートリッジは:
‐第1の下側ハウジング部分、
‐上記第1のハウジング部分から取り外すことができる第2の上側ハウジング部分、
‐上記第2のハウジング部分の下面を形成する支持プラットフォームであって、付加層で構成される上記物体は、上記物体の構成中、上記支持プラットフォームの外側に配設可能である、支持プラットフォーム、及び
‐上記第1のハウジング部分の基部に対応する構成要素であって、上記物体の層を上記構成要素の内面上で重合させることができ、上記構成要素の上記内面は非粘着性コーティングを有する、構成要素
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記カートリッジは、付加層で製造される物体に課される通常の衛生要件を全て満たすことができる。これは医療製品に関して特に重要である。このような医療製品としては、インプラント、歯科補綴物、又はクリーンルームクラスを達成しなければならないチップ産業の製品が挙げられる。インプラントに関する全ての医学的仕様を満たすことができる。上記カートリッジは、付加層で構成される物体、即ち三次元物品の製造に必要な全ての必須要素を内包する。カートリッジに内包される全ての要素は、カートリッジの内部に適切に封止され、物体の製造時にのみアクセスが提供される。上記カートリッジは、第1のハウジング部分から第2のハウジング部分を分離することによってのみ開放される。
【0009】
構成要素を第1のハウジング部分内に設けることにより、物体をカートリッジ内で良好に保護された状態で構成できる。構成要素は、3D印刷において通例の材料から製造できる。構成要素は好ましくは、非粘着性材料製の分離膜を含み、上記分離膜から、硬化した重合物体層を容易に取り外すことができる。分離膜は、テトラフルオロエチレンプロピレン(FEP)からなることが特に好ましい。というのは、この材料は多数の重合性樹脂に対して非粘着効果を有するためである。樹脂は好ましくは、光源、特にUV光源を用いた照射により硬化できる。
【0010】
本発明のある好ましい実施形態では、第1のハウジング部分は、上部が開放されて第2のハウジング部分を受け入れる容器である。従って、カートリッジが保管及び封止される間、第2のハウジング部分の全ての要素は第1のハウジング部分によって良好に保護される。カートリッジを開けた後の物体の製造中であっても、第1のハウジング部分は第2のハウジング部分を取り囲み、製造中に物体を汚染及び機械的影響から保護する。
【0011】
本発明の特に好ましい実施形態では、液体リザーバは第2のハウジング部分上に形成され、上記液体リザーバは少なくとも1つの重合性液体で充填される。カートリッジは、必要な量及びタイプの少なくとも1つの重合性液体で充填されすぐに使用できる状態となり、上記少なくとも1つの液体は、カートリッジ内で長時間保管され、良好に保護される。従って、物体の構成に必要な量の液体混合物のみを活性化できる。カートリッジの非衛生的な繰り返し使用は、このような液体の量の限定によって防止される。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、第2のハウジング部分上に挿入空間が設けられ、上記挿入空間に液体リザーバを挿入できる。上記挿入空間には、外部液体リザーバを挿入できる。外部液体リザーバは例えば、使用前に穿孔されるブリスターバッグであり得る。挿入空間を設けることにより、カートリッジは、多種多様な液体に適したものとなり、その用途において特に柔軟となる。
【0013】
液体リザーバは便宜上、第1及び第2の重合性液体が充填された少なくとも第1及び第2の受入空間を有し、上記受入空間の下端は混合チャンバ内に向かって開放され、支持プラットフォームは、混合チャンバと流体連通する少なくとも1つの入口チャネルによって中断され、上記入口チャネルは第1の下側ハウジング部分内に向かって開放され、これにより液体混合物を下側ハウジング部分へと移すことができる。液体リザーバのこれらの要素により、液体を、液体の加工の直前に混合し、完成した混合物としてハウジングの下側部分へと押し出すことができる。下側ハウジング部分の中では、構成要素は液体混合物で完全に覆われる。複数の入口チャネルを設けることも考えられる。これにより重合性液体を、用途に応じて混合していない状態又は部分的に混合した状態で、支持プラットフォームと構成要素との間の下側ハウジングへと移すことができる。
【0014】
カートリッジは便宜上、1つの部品として設計され、第1のハウジング部分から第2のハウジング部分への移行部に所定の破壊点を有する。カートリッジは、所定の破壊点を破壊することにより、更なる準備を要することなくすぐに使用できる状態に即座になり、2つのハウジング部分を露光デバイスに挿入できる。
【0015】
カートリッジが2つの部品として設計され、第1及び第2のハウジング部分が互いに着脱可能に接続されることも考えられる。この接続は着脱可能であるものの、保管中にカートリッジの要素が良好に保護されるように十分に封止される。
【0016】
本発明の特に好ましい実施形態では、第1及び第2のハウジング部分は、第1のハウジング部分から第2のハウジング部分への移行部の領域において、伸縮式接続要素によって接続される。この接続要素により、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間の内部空間は、カートリッジが開放されて物体が内部空間で製造(印刷)されているときでさえ、環境から閉鎖されたままである。伸縮式接続要素は、2つのハウジング部分が印刷中に引き離されたとしても、2つのハウジング部分を接続する。好ましくは、伸縮式接続要素は、互いに対面する2つのハウジング部分の縁部に取り付けられるベローズである。第2のハウジング部分が第1のハウジング部分に対して上向きに移動する間に、ベローズを長さ方向に引き離すことができる。
【0017】
本発明の更なる好ましい実施形態では、第1のハウジング部分の基部の外側は、第1の取り外し可能な保護カバーで覆われる。従って構成要素は良好に保護され、必要があれば光源による照射のためにだけ解放される。
【0018】
第2のハウジング部分の上部が第2の取り外し可能な保護カバーで覆われると有利であることが分かった。結果として、液体リザーバ、特にその栓又は挿入空間は、カートリッジが挿入されていない間、汚染及び損傷から保護される。
【0019】
液体リザーバは便宜上少なくとも1つの栓を有し、この栓により、液体を押し出すことができ、また液体リザーバの充填用開口を閉鎖できる。栓により、液体空間を上から閉鎖でき、また液体空間から液体を完全に取り除くことができる。
【0020】
また、本発明は好ましくは、第1のハウジング部分は第1の保持要素を有し、この第1の保持要素によって第1のハウジング部分を露光デバイス上に保持でき、また第1の保持要素により構成要素を露光デバイス上に固定できることを特徴とする。第1のハウジング部分は好ましくは、第1の保持要素に嵌合によって接続される。例えば、第1の保持要素は、露光デバイスの溝に押し込むことができる突出部である。構成要素は、構成要素にプレテンションを付与することによって、支持プラットフォームに対して位置合わせ又は調整される。更に、構成要素にプレテンションを付与することにより平坦な印刷表面が得られ、構成要素から物体の硬化層をより容易に取り外すことができる。カートリッジを使用した後、嵌合によりカートリッジを露光デバイスからより容易に取り外すことができる。
【0021】
第2のハウジング部分が第2の保持要素を有していると有利であり、この第2の保持要素により、第2のハウジング部分を露光デバイス上に保持できる。第2のハウジング部分は、第2の保持要素により持上デバイスに固定される。持上デバイスは、物体の付加層を構成する間、第2のハウジング部分を第1のハウジング部分に対して持ち上げる。第1のハウジング部分と同様、第2のハウジング部分は好ましくは、持上デバイス上に嵌合によって保持される。結果として、第2のハウジング部分は、持上デバイスに迅速に固定され、持上デバイスから同様に迅速に取り外すことができる。
【0022】
本発明の別の態様は、上の記載による使い捨て3Dプリンタカートリッジと、第1及び第2のハウジング部分を挿入できる露光デバイスとからなるシステムに関し、付加層で構成される物体は、支持プラットフォーム上の第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間において、製造できる。従って、物体を製造するために必須の部品は、カートリッジに内包される。物体の層を硬化させるために必要な光源は、露光デバイスによって提供される。露光デバイスは持上デバイスも備え、この持上デバイスにより、上側ハウジング部分を下側ハウジング部分に対して持ち上げることができる。露光デバイスは少なくとも1つのプランジャも備え、この少なくとも1つのプランジャにより、液体を液体リザーバから下側ハウジング部分へと押し出すことができる。上記システムにより、露光デバイスを汚すことなく、付加層で構成される物体の衛生的な製造が可能となる。
【0023】
本発明の別の態様は、構成要素を有する露光デバイスに挿入することによって、付加層で構成される物体を製造するための、使い捨て3Dプリンタカートリッジに関し、ここでは液体リザーバがカートリッジ上に形成され、上記液体リザーバは少なくとも1つの重合性液体で充填されるか、又はカートリッジ上に挿入空間が設けられ、上記挿入空間には液体リザーバを挿入でき、上記カートリッジにはカートリッジの下面を形成する支持プラットフォームが形成され、付加層で構成される物体は、支持プラットフォームの外側に配設できる。この実施形態では、カートリッジは第2のハウジング部分のみからなる。第1のハウジング部分の要素、特に開放された容器及び容器の基部を形成する構成要素は、露光デバイスの一部である。この実施形態により、未使用の液体混合物を、衛生要件が比較的低い別の物体を構成するために使用できる。3Dプリンタにより、この実施形態は、第2のハウジング部分において重合性液体を混合することにより、均質な印刷材料を提供できる。
【0024】
本発明の別の態様は、付加層からなる物体を製造するためのプロセスに関し、上記プロセスは以下のプロセスステップを含む:
‐第1の下側ハウジング部分を第2の上側ハウジング部分から分離することにより、上の記載による使い捨て3Dプリンタカートリッジを開放するステップ、
‐露光デバイス内で第1及び第2のハウジング部分を固定するステップ、
‐露光デバイス上に設けられた少なくとも1つのプランジャを用いて、少なくとも1つの重合性液体を第2のハウジング部分から第1のハウジング部分へと押し出すステップ、並びに
‐光への曝露によって層を硬化させる度に、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間の距離を漸増させることにより、物体の付加層を漸進的に構成するステップ。
【0025】
上記プロセスにより、付加層で構成される物体を、2つのハウジング部分内で保護された状態で、製造できる。光の照射により硬化させることができる必要な液体が上側ハウジング部分に既に充填されているため、液体の充填又は環境に対してオープンである他のプロセスステップによる物体の汚染は、確実に回避される。カートリッジは、物体を製造するために1度だけ使用されるよう構成される。カートリッジは、使用後に処分しなければならない。従って、これもまた物体の汚染につながるカートリッジの再利用は防止される。
【0026】
本発明のある好ましい実施形態では、少なくとも1つの重合性液体を押し出す上記ステップは、物体の構成前に完全に実施されるか、又は物体の層の構成と同時に、同期されて実施される。ほとんどの場合、少なくとも1つの重合性液体はまず、容器として使用される下側ハウジング部分へと押し出される。好ましくは、液体の量はちょうど、物体を構成できるのに十分な量である。しかしながら、混合された液体が短い加工時間を有し、下側ハウジング部分に入った直後に加工されることになる場合、液体を「ジャストインタイム(just in time)」で下側ハウジング部分へと移すと有利である。これは、重合性液体の部分的供給が、上側ハウジング部分の下側ハウジング部分に対する漸進的な持ち上げに関連していることを意味する。
【0027】
更なる利点及び特徴は、概略図を参照した本発明の2つの例示的な実施形態の以下の説明から明らかとなる。図面は正確な縮尺で示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明による使い捨て3Dプリンタカートリッジの第1の実施形態の長手方向断面図
【
図2】
図2は、本発明による使い捨て3Dプリンタカートリッジの第2の実施形態の長手方向断面図
【
図3】
図3は、付加層で構成される物体を製造した後の
図1のカートリッジの長手方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1、3は、全体として参照符号11で示される使い捨て3Dプリンタカートリッジの第1の実施形態を示す。
【0030】
カートリッジ11は、第1の下側ハウジング部分13、及び第2の上側ハウジング部分15を備える。カートリッジ11が露光デバイス(図示せず)に挿入される前に、2つのハウジング部分13、15を互いから分離させなければならない。カートリッジ11は、露光デバイスの中で使用されるまで気密封止され、従って無菌条件下での使用に特に適している。
【0031】
2つのハウジング部分13、15は、所定の破壊点17において互いに接続され、カートリッジ11をすぐに使用できる状態とするためにこの点において分離できる。所定の破壊点17は、1つの部品として製造されたカートリッジ11に設けることができる。カートリッジ11は好ましくは、射出成形によって製造される。第1及び第2のハウジング部分13、15が別個に製造される場合、これらは互いに着脱可能に接続され、これにより、カートリッジの内容物が封止される。
図1、2に示すように、下側ハウジング部分13は、上側ハウジング部分15が受け入れられる、上部が開放された容器である。
【0032】
カートリッジの第1の実施形態(
図1、3)によると、液体リザーバ19aが第2の上側ハウジング部分15上に形成される。図面では、液体リザーバ19aの実施形態が示されており、ここでは光への曝露により重合可能な3つの異なる液体21a、21b、21cが、液体リザーバ19aの受入空間23に充填されている。
【0033】
液体21a、21b、21cを、栓25によって、これらを混合することにより活性化できる混合チャンバ27へと押し出すことができる。混合チャンバ27内に、液体21を均質に混合する静的ミキサを設けることができる。液体21a、21b、21bは、入口チャネル29を通って下側ハウジング部分13に入ることができる。従って下側ハウジング部分13は、活性化された液体混合物のための槽として機能できる。
【0034】
上側ハウジング部分15の下面は、支持プラットフォーム31で形成される。下側ハウジング部分13に対面する支持プラットフォーム31の外側には、製造対象の物体33が構成される。
【0035】
下側ハウジング部分13の基部は構成要素35として設計され、この上で物体33を重合できる。構成要素35、又は少なくとも第2のハウジング部分15に対面するその内面は、非粘着性コーティングを有する。結果として、光への曝露によって重合した層は、各層が硬化したときに構成要素35から取り外すことができる。
【0036】
カートリッジ11について、支持プラットフォーム31及び構成要素35の両方を備えると特に有利であることが分かった。物体33は、支持プラットフォーム31と構成要素との間に層として構成される。従って物体は、カートリッジ11内の下側ハウジング部分13と上側ハウジング部分15との間において、いわゆるボトムアッププロセスにより製造される。これは、構成されることになる物体層が、液体表面(樹脂表面)上ではなく下側ハウジング部分13の基部上に構成されることを意味する。物体は、上側ハウジング部分15が下側ハウジング部分13の基部から上向きに離れるように移動することにより構成されるため、少量の混合された液体(樹脂)37が下側ハウジング部分13に存在していれば十分である。基部又は構成要素35は、層を構成するために、樹脂が基部と物体33との間をいつでも流れることができるように、樹脂で覆われていなければならない。光源は基部の下方に配設されるため、基部又は構成要素35は光透過性でなければならない。光源35は好ましくはUV光源である。
【0037】
物体33の製造中に上側ハウジング部分15が下側ハウジング部分13から離れるように移動できるようにするために、ハウジング部分13、15の両方を露光デバイス内で固定できる。この目的のために、第1の保持要素39が第1の下側ハウジング部分13上に形成され、第2の保持要素41が第2の上側ハウジング部分41上に形成される。
【0038】
構成要素35が光源43によって上向きに押圧されてプレテンションを付与されるように、第1の保持要素39を用いて下側ハウジング部分13を露光デバイス内で保持できる。構成要素35にプレテンションを付与することにより、構成要素35が支持プラットフォーム31に対して位置合わせ又は調整される。構成要素35の正確な位置合わせにより、寸法公差が極めて小さい物体33が可能となる。プレテンションを付与することにより、光の照射後の、構成要素35からの各硬化層の取り外しを容易にすることもできる。
【0039】
構成要素35は好ましくは分離膜を備える。分離膜は非粘着性材料で構成され、物体の硬化済みの重合層は、この分離膜から容易に取り外すことができる。分離膜がテトラフルオロエチレンプロピレン(FEP)からなることが特に好ましい。というのは、この材料は多数の光硬化性樹脂に対して非粘着効果を有するためである。
【0040】
第2の保持要素41を用いて、露光デバイス上に上側ハウジング部分15上を固定できる。露光デバイスは持上デバイスを備え、この持上デバイスにより、第2のハウジング部分15を、第1のハウジング部分に対して、好ましくは持続的に持ち上げることができ、また再び降下させることもできる。物体33の層が光源の付近で照射によって硬化するたびに、上側ハウジング部分15は、物体33が構成要素35から取り外された後に、1層の厚さ分だけ持ち上げられる。
【0041】
露光デバイスは少なくとも1つのプランジャも有し、この少なくとも1つのプランジャを用いて栓25を押し下げることができ、これによって、液体21a、21b、21cを受入空間23から下側ハウジング部分13へと押し出すことができる。
【0042】
物体は、カートリッジ11が物体33の製造時にのみ開放され、必要な量の液体21a、21b、21cが既に添加されており、物体がカートリッジ11内で製造されるという点で、特に衛生的な条件下で製造できる。カートリッジ11は使い捨てカートリッジとして提供される。物体33の製造及びカートリッジ11からの物体33の取り外し後、カートリッジ11は処分される。
【0043】
2つのハウジング部分13、15はそれぞれ、開放されている側に第1及び第2の取り外し可能な保護カバー45、47を備える。これにより、カートリッジ11は使用時まで気密封止される。第1の保護カバー45及び第2の保護カバー47は、使用前に外さなければならない。第1の保護カバー45は構成要素35を保護し、第2の保護カバー47は液体リザーバ19a又は栓25を保護し、これにより、これらが使用前に偶発的に押圧される又は汚染されることがなくなる。
【0044】
図2は、カートリッジ11の第2の実施形態を示し、ここでは液体リザーバ19bは第2のハウジング部分15の一部ではなく、第2のハウジング部分15上に設けられた挿入空間49に挿入できる別個の部品である。結果として、この第2の実施形態によるカートリッジ11は、別個に利用できる液体リザーバと共に使用できる。
【0045】
カートリッジ11による物体33の製造は、以下のプロセスステップで実施される:まず、上側ハウジング部分15を下側ハウジング部分13に対してねじることにより所定の破壊点17を破壊することで、カートリッジ11を開放する。結果として、既に気密接続されていた2つのハウジング部分13、15は互いから分離される。第1の保護カバー45及び第2の保護カバー47をハウジング部分13、15から外すことにより、カートリッジ11がすぐに使用できる状態となる。
【0046】
カートリッジ11を露光デバイスに挿入する際、上側ハウジング部分15は下側ハウジング部分13に受け入れられたままであり、ほんのわずかだけ持ち上げられる。従って、支持プラットフォーム31及び構成要素35は、カートリッジ11の挿入中、保護され続ける。持ち上げることにより、第2の保持要素が持上デバイスに接続されるため、上側ハウジング部分15を持上デバイスに接続できる。下側ハウジング部分13は、第1の保持要素39によって露光デバイスに接続される。このようにして、構成要素35は光源43によって位置合わせされる。
【0047】
次に、液体21a、21b、21c(光硬化性樹脂)は、プランジャを用いて、液体リザーバ19a又は19bから下側ハウジング部分13へと押し出される。プランジャは、露光デバイス上に設けられ、受入空間23の数、及び栓25の必要な変位経路に適応できる。
【0048】
混合された液体37が構成要素35を覆うと、物体33の層の付加構成が始まる。光源43を用いた照射によって層を硬化させた後、上側ハウジング部分15は、持上デバイスによって、1層の厚さ分だけ下側ハウジング部分13から持ち上げられる。従って2つのハウジング部分13、15間の距離は、物体の構成中に増大する。
【0049】
液体リザーバ19a又は19bが、層の構成の前ではなく、層の構成と同期して空になるようにすることも考えられる。これは、液体が加工の直前に混合される場合にのみ意味をなす。
【0050】
使い捨て3Dプリンタカートリッジ11は、物体33の製造の直前にのみ開放され、それ以前は気密封止されているため、極めて高い衛生標準を有する。更に使い捨て3Dプリンタカートリッジ11は、物体33を製造するために必要な量の硬化性液体21a、21b、21cのみを内包する。カートリッジ11は、更なる清掃が必要とならないように、物体33の製造後に処分される。従って、物体33を製造するために、新品の衛生的に完璧なカートリッジ11が常に使用される。
【符号の説明】
【0051】
11 使い捨て3Dプリンタカートリッジ
13 第1の下側ハウジング部分
15 第2の上側ハウジング部分
17 所定の破壊点
19a、19b 液体リザーバ
21a、21b、21c 重合性液体
23 受入空間
25 栓
27 混合チャンバ
29 入口チャネル
31 支持プラットフォーム
33 付加層で構成される物体
35 構成要素
37 混合された液体
39 第1の保持要素
41 第2の保持要素
43 光源
45 第1の保護カバー
47 第2の保護カバー
49 挿入空間