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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20230523BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20230523BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/20 550
A61M5/32 510K
A61M5/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020554866
(86)(22)【出願日】2019-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 DK2019000120
(87)【国際公開番号】W WO2019192662
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】PA201800144
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】520383278
【氏名又は名称】シェイリー エンジニアリング プラスチックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHAILY ENGINEERING PLASTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】SURVEY No. 364/366, AT & PO RANIA, TA. SAVLI, VADODARA GUJARAT-391780 INDIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】メラー,クラウス シュミット
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-533752(JP,A)
【文献】特表2012-506745(JP,A)
【文献】国際公開第2017/007850(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111569192(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/32
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸を規定する自動注射器であって、
中空の針を備えたカートリッジ10と、プランジャと、注射される薬剤と、を含むシリンジ組立体1と、
前記シリンジ組立体1を移動可能に収容して、前端から前記針が露出可能であるハウジング2と、
第一のばね手段14と、
駆動部7と、
ねじ6と、
作動後に自動注射器の機能シーケンスを開始するようになっているトリガー4と、を含み、
前記機能シーケンスは、前記針をアクセス可能な位置に露出させるために前記シリンジ組立体1を前記ハウジング2の前記前端側前進移動させることと、該針を通して前記薬剤を排出することと、該針を前記ハウジング2内のアクセス不可能な位置に後退させるために該シリンジ組立体1を前記前端側と反対側に移動させることを含み、
前記第一のばね手段14は、前記駆動部7を回転させるねじりばねであり、
前記ねじ6は、注射の間、前記薬剤を排出させるために、前記第一のばね手段14および前記駆動部7の前記回転によって前記カートリッジ10内の前記プランジャを移動させるようになっており
記第一のばね手段14の一方の端部が前記シリンジ組立体1に固定されると共に他方の端部が前記駆動部7に固定されていることを特徴とする自動注射器。
【請求項2】
前記ねじ6と前記駆動部7が、一緒に回転するが、相対的に摺動して伸縮できるように、かつ該ねじ6が第一のねじ山係合19,39で回転して前記前端側に向かって移動するように回転的に接続されている請求項1に記載の自動注射器。
【請求項3】
前記ねじ6と前記駆動部7が第一のねじ山係合で係合し、該第一のねじ山係合において該駆動部7が該ねじ6に対して相対的に回転移動することにより、前記プランジャが移動する請求項1に記載の自動注射器。
【請求項4】
前記駆動部7が、少なくとも前記薬剤の排出中に第二のねじ山係合25,31において前記ハウジング2と係合しており、該薬剤の排出終了時に該第二のねじ山係合25,31が係合解除されることにより、該駆動部7および前記シリンジ組立体1が第二のばね手段13によって前記前端側から離れて前記針にアクセス不可能な位置に移動する請求項2または3に記載の自動注射器。
【請求項5】
前記針の露出中に前記シリンジ組立体1と前記駆動部7が第三のねじ山係合21,27において係合しており、該シリンジ組立体1と該駆動部7が相対的に回転移動することにより、該針の露出中に該シリンジ組立体1が軸方向に移動する請求項1~4のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項6】
前記トリガー4による開始後の前記シリンジ組立体1が、圧縮可能なばねである第三のばね手段によって前記ハウジング2の前記前端側に向かって移動する請求項1~4のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項7】
前記針の露出中および後退中に、前記第一のねじ山係合19,39における前記ねじ6の回転によって前記カートリッジ10内の前記プランジャが移動しないように、該ねじ6上のねじ山19の長さおよび位置が決められている請求項2に記載の自動注射器。
【請求項8】
前記自動注射器の前記機能シーケンスが、前記トリガー4によって開始される前記駆動部7の前記シリンジ組立体1に対する軸方向の相対移動の後に始動する請求項1~7のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項9】
前記トリガー4が、前記ハウジング2の外側に移動可能に配置されたスリーブである請求項1~8のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項10】
前記自動注射器の前記機能シーケンスの開始を可能にするために、前記トリガー4は、前記ハウジング2に対して相対的な角度で回転される必要があり、その後、該トリガー4の軸方向の移動により該機能シーケンスが開始される請求項1~9のいずれか1項に記載の自動注射器。
【請求項11】
前記シリンジ組立体1の内部に回転可能に配置された制動器9が、前記薬剤の排出終了時またはそれに近い時期に前記ねじ6に回転的に接続され、該ねじ6を摩擦によって減速させる請求項1~10のいずれか1項に記載の自動注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己治療として一定量の薬剤を注射することができる自動注射器であって、自動注射器が作動した後、アクセス可能な位置への針の露出、薬剤の注射、およびアクセス不可能な位置への針の後退を連続したシーケンスとして自動的に実行する自動注射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過去20年間を通じて、自動注射器の使用は毎年大幅に増加している。これは、患者が医師や看護師を必要とすることなく薬を服用することができるという利点があるからである。自動化された針の挿入、注射、針の後退は、このタイプの自動注射器の最先端技術であり、新しい自動注射器が市場に定期的に参入している。このタイプの自動注射器の使用者は、初めての使用者であることが多いため、自動注射器は使いやすく、操作がスムーズで信頼性が高いことが不可欠であるが、残念ながら、市場に出回っている多くの自動注射器には当てはまらない。
【0003】
初めての使用者にとっては、自分の体に薬剤を注射する行為は非常にストレスになる可能性がある。従って、ストレスを感じる状況は、自動注射器の誤った使用につながり、誤った治療をしてしまうリスクを伴う可能性があるため、自動注射器が理解しやすく、扱いやすいことが非常に重要である。また、注射が痛みを伴うことや不必要に傷跡を残すことを防ぐために、注射がスムーズに、正しい注射速度で、高音や傷跡を残すような音を伴うことなく行われることも重要である。そして最後に、このタイプの自動注射器が不確実性と誤信を連想させることを防ぐため、自動注射器は、毎回機能するべきである。
【0004】
自動注射器の最も一般的な問題は、非直感的な取扱いと複雑な説明書、針が正しい深さに挿入される前に薬の排出が始まってしまうこと、薬剤の注射が速すぎること、針の後退後、自動注射器がある機能シーケンスから別の機能シーケンスに移行する際に大きな音がすること、そして自動注射器の誤動作、特に針の後退に関連するもの、が挙げられる。
【0005】
自動注射器に関する特許分野には非常に多くの出願があるが、国際公開第95/35126号、欧州特許第0516473号、国際公開第2005/115509号、国際公開第2005/115511号、国際公開第2005/115513号、国際公開第2005/115516号、国際公開第2007/066152号、国際公開第2008/005315号、国際公開第2011/101377号、欧州特許公開第2468329号、および欧州特許公開第2129416号の文献には、当該分野の先行技術が好適に説明されている。以下、これらの文献のうちのいくつかについて、更に説明する。
【0006】
国際公開第2005/115516号(特許文献1)には、中空針を備えたシリンジを受容するハウジングを含む自動注射器が記載されている。ハウジングは、針がハウジングから延出した延出位置から、針がハウジング内に収容された格納位置にシリンジを付勢するための手段を含む。自動注射器は更に、圧縮可能なばねと、ばねによって作動されるとシリンジに作用して、シリンジの内容物を針から排出する駆動部と、駆動部が公称結合解除位置まで前進すると作動して、注射器の第一の構成要素が第二の構成要素に対して移動できるようにする結合解除機構と、解放機構であって、第一の構成要素が第二の構成要素に対して公称解放位置に達すると作動して、シリンジをばねの作用から解放し、それによって付勢手段がシリンジを格納位置に戻す解放機構と、を含む。高粘度流体が第一の構成要素の第二の構成要素に対する動きを減衰させて、シリンジの解放を、結合解除機構の作動後に遅延させ、シリンジが格納のために解放される前にシリンジの残りの内容物が排出されるようになっている。
【0007】
国際公開第2008/005315号(特許文献2)には、物質を使用者に皮下注射するための別の自動注射器が記載されている。自動注射器は、ハウジングと、シリンジであって、物質を保持する円筒部と、ハウジングに移動可能に配置された針とを備え、円筒部を密閉し、物質を選択的に加圧して、針を通して物質を押し出すためのプランジャとを含むシリンジと、針が露出するように、ハウジングの第一の端部に向かってまずシリンジを移動させ、続いてプランジャを加圧するためのシリンジ作動部と、ハウジングの近位端部に向かってシリンジ作動部を付勢するための圧縮可能なばねであって、シリンジ作動部のフランジとハウジングの遠位端部との間に配置されているばねを含む。
【0008】
上述の自動注射器は両方とも、針の挿入および後退のためと、注射を行うために圧縮ばねを使用している。これは結果として、異なる操作シーケンスの間を移行するために多数の連結器および係止/係止解除機能を必要とし、したがって、誤動作のリスクを増加させる。また、両方の自動注射器では、シリンジを前方に移動させるためにプランジャを押圧する。これは、針が完全に挿入される前に注射が開始されてしまうというリスクを増加させる。更に、圧縮ばねは、操作が非常にスムーズでないという傾向がある。
【0009】
国際公開第2011/101377号(特許文献3)に記載の自動注射器は、針の挿入および後退のためと、注射のためにねじりばねを使用している。自動注射器は、中空針とプランジャを備えたシリンジを収容するように配置された細長い外側ハウジングを含み、外側ハウジングは、遠位端と、注射部位に対して適用されるように意図されたオリフィスを備えた近位端を有する。シリンジは、外側ハウジングに対して摺動可能に配置されている。自動注射器は、更に、起動時に、1)オリフィスを通して針を前進位置に押し込み、2)薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作し、最後に、3)薬剤を送達した後、そしてシリンジが前進位置から係止解除された後、針を備えたシリンジを被覆位置へと後退させることが可能なねじりばねを含む。起動手段は、手動操作前に、ばねを加圧された状態で係止するように配置され、手動操作時には、注射のためにねじりばねを解放することが可能であり、ねじりばねは、一方の端部が外側ハウジング内に、他方の端部が縦軸の周りに回転可能な第一の歯車部材内に基礎が置かれている。第一の歯車部材は、回転時に、第二の歯車部材を近位端に向かって並進的に移動させるように配置されており、そこで、第二の歯車部材は近位端に向かってプランジャを押すために回転を防止されてプランジャに連結され、第一の歯車部材は、手動操作前に回転を防止されるように起動手段と係合され、手動操作時に、起動手段から係合解除される。
【0010】
この自動注射器は、ねじりばねによって、上述の他の自動注射器と比較してスムーズな注射が行えるが、依然として係止/係止解除機能を含んでおり、結果として、異なる機能シーケンスの間の誤動作のリスクを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2005/115516号
【文献】国際公開第2008/005315号
【文献】国際公開第2011/101377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、自動注射器の異なるシーケンスを能動的に有効化および/または無効化するための能動的な状態移行要素を含まず、針挿入注射と針後退との間が時間的に明確に区別され、かつシーケンスの重なりがない自動注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、主軸を規定する自動注射器に関するものであり、自動注射器は、
ハウジングと、
シリンジ組立体であって、中空の針を備えた容器と、プランジャと、注射される薬剤と、を含むシリンジ組立体と、
第一のばね手段と、
駆動部と、
ねじと、
作動後に自動注射器の機能シーケンスを開始するようになっているトリガーと、を含み、
機能シーケンスは、針をアクセス可能な位置に露出させるためにシリンジ組立体をハウジング内で移動させることと、針を通して薬剤を排出することと、針をアクセス不可能な位置に後退させるためにシリンジ組立体をハウジング内で移動させることを含み、ねじは、注射の間、薬剤を排出させるために、第一のばね手段および駆動部によって容器内のプランジャを移動させるようになっており、第一のばね手段は、駆動部に作用し、少なくとも薬剤の排出中および針の後退中に、駆動部をハウジングの針側から離れてハウジング内で上方に移動させるねじりばねである。
【0014】
駆動部を自動注射器内で上に移動させることによって、特定の状態移行機構が必要とされない、針の後退のための新しい選択肢が提供される。
【0015】
別の実施形態では、本発明に従う自動注射器は、一方の端部がシリンジ組立体に固定され、他方の端部が駆動部に固定されたばね手段を有する。このようにして、針をアクセス不可能な位置に後退させるためにシリンジ組立体が移動する間、ねじりばねの収縮または圧縮が防止される。
【0016】
更に別の実施形態では、ねじと駆動部が、一緒に回転するが、相対的に摺動して伸縮できるように、かつ、ねじが第一のねじ山係合においてシリンジ組立体に対して相対回転することによりプランジャが移動するように回転的に接続されている。あるいは、ねじと駆動部がねじ山係合で係合し、第一のねじ山係合において駆動部がねじに対して相対的に回転移動することによりプランジャが移動する。別の要素とのねじ山係合においてねじを下方に回転させることにより、ねじの軸方向の移動が、よりスムーズで正確なものとなる。
【0017】
更に別の実施形態では、駆動部は、少なくとも薬剤の排出中に第二のねじ山係合においてハウジングと係合しており、第二のねじ山係合は、排出の直後に係合を解除して、駆動部およびシリンジ組立体が、第二のばね手段によって、ハウジング内の、針にアクセスできない位置まで移動することを許容する。針の後退がねじ山の係合解除によって開始されることで、後退動作に関与する構成要素が詰まりを起こさないことが保証される。
【0019】
更に別の実施形態では、針の露出中にシリンジ組立体と駆動部が第三のねじ山係合において係合しており、シリンジ組立体と該駆動部が相対的に回転移動することにより、シリンジ組立体が移動する。回転移動とねじ山がシリンジ組立体を移動させることによって、速度と速度の変動は、ねじ山のピッチによって、また場合によっては、ねじ山を可変ピッチのねじ山として設計することによって制御可能である。
【0020】
更に別の実施形態では、トリガーによる開始後のシリンジ組立体が、圧縮可能なばねによってハウジングの針側に向かって移動する。このようにして、要望があれば、より急速に針を挿入することができる。
【0021】
更に別の実施形態では、針の露出中および後退中に、第一のねじ山係合におけるねじの回転によってカートリッジ内のプランジャが移動しないように、ねじ上のねじ山の長さおよび位置が決められている。このようにして、自動注射器の各機能シーケンスの間に明確な区切りがあり、針の露出中および後退中に薬剤の排出が行われないことが保証される。
【0022】
更に別の実施形態では、自動注射器の機能シーケンスが、駆動部のシリンジ組立体に対する軸方向の相対移動の後に始動し、トリガーによって開始される。シリンジ組立体を駆動部との回転的な接続から単に押し出すだけで、極めて簡易なトリガーシステムを提供することができる。
【0023】
更に別の実施形態では、トリガーは、ハウジングの外側に移動可能に配置されたスリーブである。また、自動注射器の機能シーケンスの開始を可能にするために、トリガーは、ハウジングに対して相対的な角度で回転される必要があり、その後、トリガーの軸方向の移動により機能シーケンスが開始される。これにより、自動注射器が誤って発射されないことを保証するための追加の別個の有効化機構の必要性がなくなる。
【0024】
更に別の実施形態では、シリンジ組立体の内部に回転可能に配置された制動器が、薬剤の排出終了時または直後にねじに回転的に接続し、ねじを摩擦によって減速させる。これにより、プランジャが完全に弛緩し、針が後退する前に薬剤が完全に排出されることが、極めて簡易で信頼性の高い方法で保証される。
【0025】
本発明の目的は、薬剤の挿入および注射のための駆動ばねとしてのねじりばねを有する自動注射器によって達成することができる。中空の針を有し、薬剤を含むカートリッジは、ハウジングに対して回転的に固定されたシリンジ組立体内に収容されている。シリンジ組立体は、カートリッジの開口部の上に配置されたねじ山を備えたオリフィスを有するカートリッジ担持部を含み、ここで、ねじは、カートリッジ内のプランジャに対して第一のねじ山係合においてねじ込まれ、カートリッジ内のプランジャを下方に移動させ、針を通じて薬剤を押し出すことができる。駆動部は、ねじと回転的に接続されているが軸方向には接続されておらず、ねじと駆動部は、互いに相対的に摺動して伸縮することができる。駆動部は、更に、針と反対側で、第二のねじ山係合においてハウジングと係合している。ねじりばねは、一方の端部がシリンジ組立体に固定され、他方の端部が駆動部に固定されている。シリンジ組立体は、カートリッジ担持部に固定された接続筒部を更に含み、接続筒部と駆動部は、自動注射器が作動する前に、キー/溝接続で互いに係合し、次いで、自動注射器が作動した後に、第三のねじ山係合および第四のねじ山係合において互いに係合し、ここで、第二のねじ山係合および第四のねじ山係合を形成するねじ山のピッチは同じであり、第三のねじ山係合におけるねじ山のピッチは、第二のねじ山係合および第四のねじ山係合におけるねじ山のピッチよりも高い。ハウジングを取り囲むトリガースリーブは、自動注射器が注射部位に押し付けられ、トリガースリーブがハウジングに対して相対的に移動したときに、接続筒部を駆動部とのキー/溝係合から押し出すことができるようになっている。
【0026】
使用者が自動注射器を皮膚に押し付けることによって作動させ、それによって接続筒部と駆動部の間のキー/溝接続が係合から押し出された後、接続筒部は駆動部との第三のねじ山係合に入り、ねじりばねが駆動部を回転させ、ねじ山係合によって接続筒部を、ひいてはシリンジ組立体を前方に移動させ、針を露出させて皮下組織に挿入する。その後、接続筒部と駆動部は第四のねじ山係合に入る。ハウジングとの第二のねじ山係合によって駆動部が上に移動すると、第二のねじ山係合と第四のねじ山係合のねじ山が同じピッチを有することから、シリンジ組立体は移動しない。しかし、ねじは、カートリッジ担持部との第一のねじ山係合によりカートリッジ内で下に回動し、薬剤が注射される。カートリッジの内容物が注射されると、駆動部とハウジングとの間の第二のねじ山係合が回転して係合から外れ、シリンジ組立体がトリガースリーブによって停止されて針が完全に後退するまで、戻りばねがシリンジ組立体を自動注射器内に押し戻す。
【0027】
針が後退する前に完全な内容物が排出されることを確実にするために、ねじは制動器に回転的に接続し、それにより、駆動部がハウジングのねじ山から係合解除される前に、ねじと駆動部の回転速度が落ちる。制動器はカートリッジ担持部の内部に配置され、高粘度グリースまたは他の摩擦性化合物もしくは材料が制動器とカートリッジ担持部との間に塗布されている。
【0028】
トリガースリーブによって自動注射器を発射可能にするには、トリガースリーブを係止位置から有効位置に、自動注射器に対して相対回転させる必要がある。これは、自動注射器が取り扱い中に誤って発射されないことを保証するためである。
【0029】
以下、本発明について、図面を参照しつつ更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に従う自動注射器の斜視図である。
図2】本発明に従う自動注射器の分解図である。
図3】本発明に従うシリンジ組立体の一部が断面図とされた斜視図である。
図4】本発明に従うハウジング組立体の斜視図である。
図5】本発明に従う使用準備が整った自動注射器を概略的に示す縦断面図である。
図6】本発明に従う自動注射器の、トリガーが作動し、針が露出している状態を概略的に示す縦断面図である。
図7】本発明に従う自動注射器の、薬剤が注射された状態を概略的に示す縦断面図である。
図8】本発明に従う自動注射器の、針が露出位置から後退した状態を概略的に示す縦断面図である。
図9】本発明に従うカートリッジ担持部の斜視図である。
図10】本発明に従うトリガースリーブの斜視図である。
図11】本発明に従うハウジングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の説明において、主軸という用語は、主に筒状の部品と自動注射器全体の共通の回転軸を定義している。「上」および「下」、「上側」および「下側」、並びに「上方へ」および「下方へ」という用語は、図面に言及したものであり、必ずしも使用状況に対応するものではない。
【0032】
図1には、本発明に従う自動注射器の斜視図が示されている。自動注射器の上側部分には上側ハウジング11が見え、下側部分には上側ハウジング11に至るまで突出した下側ハウジング3が見える。また、カートリッジ10の内容物を見るための窓部46も見ることができる。下側ハウジング3の外側には、自動注射器の機能シーケンスが開始されるトリガースリーブ4を見ることができ、トリガースリーブ4の周囲を把持して自動注射器を注射部位に押し当てることにより、自動注射器が操作される。自動注射器は、トリガースリーブ4を係止位置から有効位置までの角度で回転させることによって注射のための準備が行われ、その後、下側ハウジング3に対するトリガースリーブ4の軸方向の相対移動が可能となり、その結果、針を露出させ、薬剤を注射し、針を後退させるシーケンスが開始される。あるいは、自動注射器は、ハウジングの下側部分およびカートリッジ10を覆う図示しないキャップを取り外すことによって係止を解除され、キャップは、同時に、図示しない針保護部を取り外すようになっていても良い。
【0033】
図2は、本発明に従う自動注射器の全ての部品が見える状態での分解図である。これらの部品は、機能的な説明の間、特に断面図では説明された特徴が明確に示されていない場合に参照される。自動注射器のいくつかの部品は、一つの部品として機能するように共に固定されている。例えば、カートリッジ担持部12、カートリッジ位置合わせ部8、接続筒部5、および針を備えたカートリッジ10や、プランジャおよび薬剤がこれに該当し、これらの部品は、ねじ6、プランジャ最下部15および制動器9とともに、シリンジ組立体1を形成している。これは、図3に示されている。また、下側ハウジング3と上側ハウジング11は共に固定されて一つの部品として機能し、以下の説明においては、まとめてハウジング2と呼ぶ。これは、図4に示されている。これらの組立体は、実際には、自動注射器がどのように組み立てられることになっているかに応じて、分割の仕方が異なる場合や、分割されてより多くの、またはより少ない部品を形成する場合もあることが理解されるべきである。更に、カートリッジ10は、ガラス製またはプラスチック製であっても良いし、シリンジ組立体1の他の部品と別体の部品とされる、または一体化されていても良いことが理解されるべきである。
【0034】
図5は、本発明に従う自動注射器の断面図である。薬剤、中空針および可動プランジャを有するカートリッジ10は、シリンジ組立体1の内部に保持されている。シリンジ組立体1は更に、カートリッジ担持部12に固定されてカートリッジ10をしっかりと囲むカートリッジ位置合わせ部8と、カートリッジ担持部12に固定された接続筒部5と、ねじ6と、プランジャ最下部15と、制動器9と含む。ねじ山19を有するねじ6は、カートリッジ担持部12のオリフィス32を通って延び、第一のねじ山係合においてねじ山39と係合し、同時に、ねじ6と相対回転するプランジャ最下部15を介してカートリッジ10内のプランジャに当接している。制動器9は、針が後退する前にねじ6の回転速度を落として、確実に内容物が完全に排出されるようにする。これについては、後に更に説明する。
【0035】
駆動部7は、ねじ6に設けられたキー20(図2参照)と駆動部7の内部に設けられた溝43によって、ねじ6と回転的に接続されているが軸方向には接続されておらず、駆動部7とねじ6は互いに相対的に摺動して伸縮可能とされている。カートリッジ担持部12と駆動部7の外側に配置されているのは、一方の端部がカートリッジ担持部12のフランジ33に固定され、他方の端部が駆動部7のフランジ30に固定された第一のばね手段としての予引張ねじりばね14である。上側ハウジング11の上板部からは、ねじ山25を有する筒状突起24が下方に突出しており、駆動部7の上側部分の内側のねじ山31と第二のねじ山係合において係合している。シリンジ組立体1は、接続筒部5を介して、駆動部7と以下のように接続される。駆動部7のキー21および接続筒部5内のスロット41(図2参照)を介して第一の軸方向範囲で接続され、キー21と螺旋面27との間で第三のねじ山係合において部品が回転する第二の軸方向範囲で高ピッチで接続され、駆動部7の外側のねじ山22と接続筒部5内のねじ山部分26との間で第四のねじ山係合において部品が回転する第三の軸方向範囲で接続される。第三のねじ山係合21,27における駆動部7の回転中、ねじ山部分26は、駆動部7上の螺旋部分23の間の領域内を移動するが、螺旋部分には接触しない。第二のねじ山係合と第四のねじ山係合のピッチは同じであり、第三のねじ山係合のピッチよりも低くされている。
【0036】
ハウジング2の下側端部には開口部18が設けられており、自動注射器が作動したときに針が露出して挿入され得るようになっている。シリンジ組立体1とハウジング2との間には第二のばね手段としての戻りばね13が配置されている。戻りばね13は、薬剤が注射された後に針を隠すためにシリンジ組立体1を自動注射器内に押し戻し、シリンジ組立体1をハウジング2の上部にある筒状突起24に向けて付勢する。これにより、筒状突起24と駆動部7との間の第二のねじ山係合25,31がシリンジ組立体1の軸方向位置を規定するようになっている。薬剤の注射後、第二のねじ山係合が解除され、針が隠れるように、戻りばね13がシリンジ組立体1を自動注射器内で押し上げる。これについては、後に更に説明する。
【0037】
ハウジング2の外側に配置されたトリガースリーブ4は、主軸に向かって内方に突出する2つの突起36を有しており、2つの突起36は共に、更に主軸に近い小片部分37を備えている(図10参照)。2つの突起36は、ハウジング2の開口部47を通って突出し(図11参照)、自動注射器の組み立てを容易にするために可撓性アーム35(図参照)に配置されたカートリッジ担持部12の2つの突起34と嵌合することにより、ハウジング2に対する相対的な回転に対してシリンジ組立体1を係止する。トリガースリーブ4がハウジング2に対して相対的に下方に動かされると、シリンジ組立体1がそれに沿って動かされ、駆動部7のキー21(図2参照)が接続筒部5のスロット41(図2参照)との係合から外れて動かされる。これにより、2つの部分が第一の軸方向範囲から第二の軸方向範囲に移動し、針の挿入、注射、および針の後退の機能シーケンスが開始される。
【0038】
以下、自動注射器の作動、針の挿入、薬剤の排出、針の後退の機能シーケンスについて、より詳細に説明する。図5には、本発明に従う自動注射器が示されている。トリガースリーブ4はその上側位置にあり、使用者によってまだ作動されていない。駆動部7のキー21は接続筒部5のスロット41と係合しており、それによって駆動部7は回転に対して係止されている。針は開口部18から距離L1だけ後退して隠されており、カートリッジ10は満杯である。駆動部7のねじ山31は、戻りばね13によって筒状突起24のねじ山25に押し付けられ、第二のねじ山係合を形成するこれらの2つのねじ山25,31は、まだ完全に係合していない。また、第三のねじ山係合を形成する、接続筒部5のねじ山部分26と駆動部7のねじ山22も、まだ係合していないことが分かる。
【0039】
使用者は自動注射器を発射する前に、トリガースリーブ4を限定された角度だけ回転させて装置を使用可能にしなければならない。この操作の詳細については、後で更に説明する。
【0040】
図6において、トリガースリーブ4は、針側に向かって下方に動かされ、トリガースリーブ4内の突起36とカートリッジ担持部12の突起34が軸方向で接触することに伴い(図9および図10参照)、シリンジ組立体1も下方に動かされる。その結果、接続筒部5と駆動部7との間のキー/スロット係合21,41が解除されて第一の軸方向の範囲から第二の軸方向の範囲に動かされ、キー21と螺旋面27が第三のねじ山係合において係合される。その結果、予引張ねじりばね14により駆動部7が回転され、高ピッチであることからシリンジ組立体1を急速に前方に移動させ、注射針が露出し、注射部位に挿入される。駆動部7と上側ハウジング11との間の第二のねじ山係合25,31により駆動部7も動かされたが、シリンジ組立体1の反対方向に動かされたものの、第三のねじ山係合のピッチが第二のねじ山係合のピッチよりも更に高いことから、やはりシリンジ組立体1と針が急速に前進移動する結果となる。ねじりばね14による接続筒部5に作用する軸方向の力は、戻りばね13からの反作用力よりも更に大きいことから、戻りばね13は圧縮される。トリガースリーブ4は、駆動部7と接続筒部5との間の係合解除を開始するために短い距離しか移動することができず、ハウジング3の可撓性アーム17と係止歯40によってこの作動位置に係止される(図10参照)。
【0041】
シリンジ組立体1の前進運動の後、駆動部7と接続筒部5は、第二の軸方向範囲から離れて第三の軸方向範囲に入る準備ができており、その結果、接続筒部5上のねじ山部分26は、第四のねじ山係合において駆動部7のねじ山22と係合する準備ができている。
【0042】
図7では、カートリッジ10のほぼ全ての内容物が排出されている。カートリッジ10内のプランジャが、カートリッジ担持部12との第一のねじ山係合におけるねじ6の回転によりねじ6に押されて、また、駆動部7の回転とねじりばね14によって駆動されて、下へ移動したことは明らかである。カートリッジ10とプランジャによって形成される容積は、ここで大幅に減少する。第二および第四のねじ山係合は同じピッチを有するため、シリンジ組立体1は同じ軸方向位置を有する。図7において、駆動部7は、第二のねじ山係合においてねじ山25とまだ係合しており、係合が解除されるまで約90°の回転が残っている。ねじ6のキー20(図2参照)は、制動器9の真上に位置しており、ねじ6が更に下方へ移動すると、キー20が制動器9内の歯28と係合する。制動器9とカートリッジ担持部12との間の制動性高粘度化合物のために、制動器9はゆっくりとしか回転できず、ねじ6は減速する。結果として、プランジャが完全に弛緩し、針が後退する前にカートリッジの全ての内容物を排出することを可能にする。制動期間中にねじ6がカートリッジ内で下へ進行しないように、ねじ6のねじ山19が、キー20が制動器の歯28と係合した直後に中断されていれば、更に有利である。
【0043】
図8は、本発明に従う自動注射器を示しており、針を備えたシリンジ組立体が自動注射器内に後退してアクセス不可能な位置にある。駆動部7は、第二のねじ山係合における残りの角度を回転完了しており、駆動部7と上側ハウジング11のねじ山25,31は係合解除されている。これにより、駆動部7と、ひいてはシリンジ組立体1は、カートリッジ担持部12上の突起34とトリガースリーブ4内の突起36とが当接するまで、戻りばね13によって押され、自動注射器内で上へ移動している。シリンジ組立体1の後退に関与する移行機構または状態変更要素がなく、単に終了して係合解除するねじ山25,31があるだけである。従って、この後退機構は、後退シーケンスの間に係止して詰まらせてしまう要素がないことから、最先端の自動注射器と比較して大きく改良されている。トリガースリーブ4が発射位置に係止されているので、シリンジ組立体1は、トリガースリーブ4の新しい位置までしか後退することができず、従って、注射前距離L1(図5参照)は、注射後距離L2(図8参照)よりも少し長い。
【0044】
第二のねじ山係合が解除された直後に、駆動部7と接続筒部5との間の第四のねじ山係合は停止に達しており、接続筒部5に対する駆動部7の更なる相対回転が阻止されている。トリガースリーブ4が作動位置に移動して係止されると、トリガースリーブ4と上側ハウジング11との間の隙間によって、下側ハウジングの表面が見えるようになり、この表面上に、例えば記号や合図となる色を付すことにより、自動注射器がもう使用済で廃棄されなければならないことを示すために利用されてもよい。
【0045】
以下では、トリガースリーブ4の軸方向の移動を可能にすることによって自動注射器の係止を解除すること、およびトリガースリーブ4を作動させた後に発射位置で係止することの機能的詳細を説明する。下側ハウジング3には、図11に示されるように、カートリッジ担持部12上の突起34(図9参照)が上下に移動可能な2つの矩形状の開口部47が設けられている。組み立ての間、矩形状の開口部47はトリガースリーブ4内の突起36(図10参照)が、下側ハウジング3の針側から開口部47の上端に移動し、係止位置16まで回転することを許容する。シリンジ組立体1が下側ハウジング3に取り付けられた後は、トリガースリーブ4内の突起36は、カートリッジ担持部12上の突起34の垂直面35のために、もはや下側ハウジング内の開口部47内に完全に移動することができず、これらは、現時点で、トリガースリーブ4の回転止めとして機能する。自動注射器の発射を可能にするために、トリガースリーブ4は、突起36が突起34上の垂直面35に当接するまで回転される。その後、注射器を発射させるためにトリガースリーブ4を下方に移動させることで、下側ハウジング3上の、歯40を備えたアーム17が主軸に向かって内方に曲げられ、突起36上にパチンとはまり、スロット44内の歯40が捕捉される。これにより、トリガースリーブ4は上下の移動を阻止される。自動注射器が発射された後、突起36の深部領域37がスロット45内に位置し、トリガースリーブ4は、ここで回転移動および軸方向の移動の両方を阻止される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11