IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】窒化物を用いた3次元物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20230523BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230523BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230523BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230523BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020555843
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019059359
(87)【国際公開番号】W WO2019197587
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】62/656,617
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18177863.0
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー, ナンシー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマール
(72)【発明者】
【氏名】ゲルシック, タナー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509163(JP,A)
【文献】特開2016-037571(JP,A)
【文献】特表2016-505409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムを使用して3次元(3D)物体を製造する方法であって、部品材料を押し出して前記3D物体の層を印刷することを含み、前記部品材料は、前記部品材料の総重量に基づいて、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料と、
- 少なくとも1つの窒化物(N)と
を含む方法。
【請求項2】
前記部品材料は、前記部品材料の総重量に基づいて、少なくとも1重量%の少なくとも1つの窒化物(N)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部品材料は、前記部品材料の総重量に基づいて、10重量%未満の少なくとも1つの窒化物(N)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記部品材料はまた、前記部品材料の総重量に基づいて、45重量%までの、充填材、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、流動促進剤及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤も含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記部品材料は、前記部品材料の総重量に基づいて、少なくとも80重量%の、
- PAEK、
- PAEKとPPSUのブレンド、
- PAEKとPEIのブレンド、又は
- PAEK、PPSU、及びPEIのブレンド
からなる群から選択される前記ポリマー材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PAEKは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
PEEKは、少なくとも95モル%の式(J’’-A):
の繰り返し単位(R PEEK )を含むポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
PEEKは、全ての繰り返し単位が式(J’’-A):
の繰り返し単位(R PEEK )であるポリマーを示す、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
PPSUは、少なくとも50モル%の式(L’’):
の繰り返し単位(R PPSU )を含むポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
PPSUは、全ての繰り返し単位が式(L’’):
の繰り返し単位(R PPSU )であるポリマーを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記部品材料は、円筒形状及び0.5~5mm±0.2mmに含まれる直径を有するフィラメントの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
円筒形状及び0.5~5mm±0.2mmに含まれる直径を有し、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)と、
- 少なくとも1つの窒化物(N)と
を含むフィラメント。
【請求項13】
フィラメントの総重量に基づいて、少なくとも1重量%の少なくとも1つの窒化物(N)を含む、請求項12に記載のフィラメント。
【請求項14】
フィラメントの総重量に基づいて、10重量%未満の少なくとも1つの窒化物(N)を含む、請求項12又は13に記載のフィラメント。
【請求項15】
フィラメントの総重量に基づいて、45重量%までの、充填材、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、流動促進剤及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤も含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項16】
フィラメントの総重量に基づいて、少なくとも80重量%の、
- PAEK、
- PAEKとPPSUのブレンド、
- PAEKとPEIのブレンド、又は
- PAEK、PPSU、及びPEIのブレンド
からなる群から選択されるポリマー材料を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項17】
前記PAEKは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である、請求項12~16のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項18】
PEEKは、少なくとも95モル%の式(J’’-A):
の繰り返し単位(R PEEK )を含むポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく、請求項17に記載のフィラメント。
【請求項19】
PEEKは、全ての繰り返し単位が式(J’’-A):
の繰り返し単位(R PEEK )であるポリマーを示す、請求項17又は18に記載のフィラメント。
【請求項20】
PPSUは、少なくとも50モル%の式(L’’):
の繰り返し単位(R PPSU )を含むポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく、請求項12~19のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項21】
PPSUは、全ての繰り返し単位が式(L’’):
の繰り返し単位(R PPSU )であるポリマーを示す、請求項12~20のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項22】
3次元物体の製造のための、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料と、
- 少なくとも1つの窒化物(N)と
を含む部品材料の使用。
【請求項23】
前記部品材料は、円筒形状及び0.5~5mm±0.2mmに含まれる直径を有する、フィラメントの形状である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
3次元物体の製造における使用のための、円筒形状及び0.5~5mm±0.2mmに含まれる直径を有するフィラメントの製造のための、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料と、
- 少なくとも1つの窒化物(N)と
を含む部品材料の使用。
【請求項25】
50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料を含む、円筒形状及び0.5~5mm±0.2mmに含まれる直径を有するフィラメントを調製するための、窒化物(N)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年4月12日出願の米国仮特許出願第62/656,617号、及び2018年6月14日出願の欧州特許出願公開第18177863.0号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の各々の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、付加製造システムを使用して3次元(3D)物体を製造する方法に関し、この場合、3D物体は、50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料と、少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)とを含む部品材料から印刷される。特に、本開示は、3D物体を印刷するための付加製造システムで使用するためのフィラメント、及びこれから得られる3D物体に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造システムは、1つ以上の付加製造技術を使用して3D部品のデジタル表現から3D部品を印刷又は他の方法で構築するために使用される。商業的に利用可能な付加製造技術の例としては、押出ベースの技術、選択的レーザー焼結、粉末/バインダー噴射、電子ビーム溶融、及びステレオリソグラフィプロセスが挙げられる。これらの技術の各場合、3D部品のデジタル表現は、最初に複数の水平層にスライスされる。各スライスされた層に対して、続いて工具経路が生成され、これは、所与の層を印刷するように特定の付加製造システムに命令を与える。
【0004】
例えば、押出ベースの付加製造システムにおいて、3D部品は、部品材料のストリップを押し出し、隣接させることによって層ごとに3D部品のデジタル表現から印刷され得る。部品材料は、システムの印刷ヘッドにより運ばれる押出チップを通して押し出され、x-y面の印字版上に一連の道として堆積される。押し出された部品材料は、前に堆積された部品材料に融合し、温度の降下時に固化する。そのとき、基材に対する印刷ヘッドの位置は、(x-y面に垂直の)z軸に沿ってインクリメントされ、次いで、このプロセスは、デジタル表現に類似する3D部品を形成するために繰り返される。フィラメントから出発する押出ベースの付加製造システムの一例は、溶融フィラメント製造(FFF)と呼ばれ、これは熱溶解積層法(FDM)としても知られる。
【0005】
公知の付加製造方法に関連した基本的な制限の1つは、許容できる機械的特性を有する得られる3D部品の取得を可能にするポリマー材料の識別の欠如に基づいている。
【0006】
従って、FFF付加製造システムで使用されるポリマー部品材料が必要であり、これにより、一連の機械的特性(例えば、弾性率、引張り特性、延性、及び着色性)が改善された3D物体の製造が可能になる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、付加製造システムを用いて3次元(3D)物体を製造する方法に関し、この方法は、50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)と、任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)とを含むポリマー材料と、少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)とを含む部品材料から3次元物体の層を印刷することからなる工程を含む。
【0008】
一実施形態によれば、本方法はまた、溶融フィラメント製造技術(FFF)としても知られる、押出ベースの付加製造システムでの、部品材料の押出をも含む。
【0009】
本発明の別の態様は、50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)と、任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)とを含むポリマー材料と、少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)とを含むフィラメント材料に関する。
【0010】
本発明の更に別の態様は、3次元物体の製造のための、又は3次元物体の製造に使用するフィラメントの製造のための、本明細書で記載される部品材料の使用に関する。
【0011】
出願人は、窒化物を使用することにより、機械的特性(例えば、弾性率、延性及び引張り強度)が改善された3D物体の製造が可能になることを見出した。
【0012】
このような製造方法によって得られる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品、並びに自動車産業におけるアンダーフード部品に言及することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、3次元(3D)物体を押出ベースの付加製造システム(例えばFFF)などの付加製造システムで製造するための方法に関する。
【0014】
本発明の方法は、3次元(3D)物体の層を部品材料から印刷する工程を含む。
【0015】
出願人の利点は、驚くべきことに、窒化物、例えば窒化ホウ素をポリマー成分PAEKに添加し、任意選択的にPPSU及び/又はPEIとブレンドして、良好な機械的特性プロファイル(即ち、引張り強度、延性、及び弾性率)を有する3D物体の製造を可能にすることを特定したことであった。
【0016】
「ポリマー」又は「コポリマー」という表現は、本明細書では、同じ繰り返し単位を実質的に100モル%含むホモポリマー及び同じ繰り返し単位を少なくとも50モル%、例えば、少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%を含むコポリマーを意味するために用いられる。
【0017】
「部品材料」という表現は、本明細書では、3D物体の少なくとも一部を形成することを意図される、材料、とりわけポリマー化合物のブレンドを意味する。部品材料は、本発明に従って、3D物体又は3D物体の部品の製造のために使用される供給原料として使用される。
【0018】
本出願において:
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれる且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本出願で明示的に企図される関連実施形態において、要素又は成分はまた、別の列挙された要素又は成分のいずれか1つであることができ、或いは、明示的にリストアップされた要素又は成分の任意の2つ以上からなる群から選択することもでき、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 端点による数値範囲の本明細書でのいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数、並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0019】
一実施形態によれば、部品材料は、フィラメントの形態にある。「フィラメント」という表現は、本発明に従ってポリマー(P1)とポリマー(P2)とを含む材料又は材料のブレンドから形成される糸状物体又は繊維を意味する。
【0020】
フィラメントは、円筒形状又は実質的に円筒状の形状を有し得、又はリボンフィラメント形状などの、非円筒形状を有し得、更に、フィラメントは、中空形状を有し得、又はコア-シェル形状を有し得、別のポリマー組成物がコア又はシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、3次元物体を付加製造システムで製造する方法は、部品材料を押し出しすることからなる工程を含む。この工程は、例えば部品材料のストリップ又は層を印刷する又は堆積させるときに生じ得る。3D物体を押出ベースの付加製造システムで製造する方法は、溶融フィラメント製造技術(FFF)としても知られている。
【0022】
FFF 3Dプリンターは、例えば、Apiumから、Hyrelから、Robozeから、NVBotsから、AON3Dから、又はStratasys,Inc.から(商品名Fortus(登録商標)で)市販されている。
【0023】
部品材料
本発明の方法で使用される部品材料は、
- 50~99重量%のポリマー材料と、
- 少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)と
を含む。
【0024】
本発明の部品材料は、他の成分を含み得る。例えば、部品材料は、少なくとも1つの添加剤(A)、特に、充填材、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、流動促進剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(A)を含み得る。これに関連して充填材は、本質的に強化性又は非強化性であり得る。
【0025】
部品材料は、例えば、部品材料の総重量に基づいて、45重量%までの少なくとも1つの添加剤(A)を含み得る。
【0026】
充填材(F)を含む実施形態では、部品材料の総重量に対して、部品材料の充填材の濃度は、0.1重量%~45重量%、好ましくは0.5~30重量%、更により好ましくは1~20重量%の範囲である。好適な充填材としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノファイバー、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレン、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭化ケイ素、タングステン酸ジルコニウム、窒化ホウ素及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
一実施形態によれば、本開示の部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのPAEKと、任意選択的に少なくとも1つのPPSUとを含むポリマー材料と、
- 少なくとも1重量%の少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは少なくとも1重量%の窒化ホウ素(BN)と
を含む。
【0028】
一実施形態によれば、本開示の部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのPAEKと、任意選択的に少なくとも1つのPPSUとを含むポリマー材料と、
- 1~10重量%の少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは1~10重量%の窒化ホウ素(BN)、例えば2~9重量%の又は3~8重量%の少なくとも1つの窒化物(N)と
を含む。
【0029】
別の実施形態によれば、本開示の部品材料は、
- 少なくとも1つのPAEK、任意選択的に少なくとも1つのPPSU、
- 少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)、
- 任意選択的に、充填材、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、流動促進剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(A)
から本質的になる。
【0030】
窒化物(N)
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの窒化物(N)」は、1つ以上の窒化物(N)を示す。窒化物(N)の混合物を、本発明の目的のために使用することができる。
【0031】
更に、窒化物(N)は、例えば、元素周期表のIIIa、IVa、IVb、Va、Vb、VIa、VIb、VIIb及びVIII族から選択される元素の窒化物から、より好ましくは元素周期表のIIIa族の元素の窒化物から選択される。
【0032】
本発明の文脈における好ましい窒化物(N)は、窒化ホウ素(BN)である。
【0033】
窒化物(N)の平均粒径は、有利には30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0034】
窒化物(N)の平均粒径は、好ましくは0.05μmに等しい又は少なくとも0.05μm、0.1μmに等しい又は少なくとも0.1μm、より好ましくは0.2μmに等しい又は少なくとも0.2μm、1μmに等しい又は少なくとも1μmである。
【0035】
窒化物(NI)の平均粒径は、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは1.5~5μmである。
【0036】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
本明細書で使用される場合、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、Ar’-C(=O)-Ar*基(式中、Ar’及びAr*は、互いに等しい又は異なり、芳香族基である)を含む繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。繰り返し単位(RPAEK)は、以下の式(J-A)~式(J-D)の単位からなる群から選択される:
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)。
【0037】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、繰り返し単位(RPAEK)においてR’とは異なる他の部位への1,2-、1,4-又は1,3-結合を有し得る。好ましくは、フェニレン部位は、1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくは、1,4-結合を有する。
【0038】
繰り返し単位(RPAEK)において、フェニレン部位がポリマーの主鎖を連結するもの以外の他の置換基を有さないように、j’は、好ましくは、各位置においてゼロである。
【0039】
本発明の部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、50~99重量%又は55~98重量%、例えば、60~95重量%又は65~90重量%の範囲の量のPAEKを含み得る。
【0040】
一実施形態によれば、PAEKは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である。
【0041】
本明細書で使用される場合、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づいて、式(J-A)の繰り返し単位(RPEEK)を含む任意のポリマーを示す:
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
J’は、各R’について、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3、又は4)である)。
【0042】
式(J-A)によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各芳香環は、1~4つのラジカル基R’を含み得る。j’が0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基R’も含まない。
【0043】
繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部位は、互いに独立して、他のフェニレン部位への1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。一実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部位は、互いに独立して、他のフェニレン部位への1,3-又は1,4-結合を有する。更に別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部位は、他のフェニレン部位への1,4-結合を有する。
【0044】
一実施形態によれば、R’は、上の式(J-A)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含む、C1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0045】
一実施形態によれば、j’は、各R’についてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)は、式(J’-A):
による。
【0046】
本開示の別の実施形態によれば、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)は、少なくとも10モル%の繰り返し単位を含む任意のポリマーを示し、式(J’’-A):
の繰り返し単位(RPEEK)であり、
モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、PEEK中の繰り返し単位の少なくとも10モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づいて)、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(J-A)、(J’-A)及び/又は(J’’-A)の繰り返し単位(RPEEK)である。
【0048】
従って、PEEKポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。PEEKポリマーがコポリマーである場合、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0049】
PEEKがコポリマーである場合、繰り返し単位(R*PEEK)からなり得、繰り返し単位(RPEEK)とは異なり、更に、式(J-D)の繰り返し単位からなり得る:
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、各R’について、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)。
【0050】
式(J-D)によれば、繰り返し単位(R*PEEK)の各芳香環は、1~4つのラジカル基R’を含み得る。j’が0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基R’も含まない。
【0051】
一実施形態によれば、R’は、上の式(J-D)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含む、C1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0052】
一実施形態によれば、j’は、各R’についてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R*PEEK)は、式(J’-D):
による。
【0053】
本開示の別の実施形態によれば、繰り返し単位(R*PEEK)は、式(J’’-D):
による。
【0054】
本開示の一実施形態によれば、PEEK中の繰り返し単位の90モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)未満、少なくとも80モル%未満、70モル%未満、60モル%未満、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満、又は全てが、式(J-D)、(J’-D)、及び/又は(J’’-D)の繰り返し単位(R*PEEK)である。
【0055】
一実施形態によれば、PEEKポリマーは、PEEK-PEDEKコポリマーである。本明細書で使用される場合、PEEK-PEDEKコポリマーは、式(J-A)、(J’-A)及び/又は(J’’-A)の繰り返し単位(RPEEK)と、式(J-D)、(J’-D)又は(J’’-D)の繰り返し単位(R*PEEK)(本明細書では繰り返し単位(RPEDEK))とも呼ばれる)とを含むポリマーを示す。PEEK-PEDEKコポリマーは、95/5~5/95、90/10~10/90、又は85/15~15/85の範囲の繰り返し単位の相対モル比(RPEEK/RPEDEK)を含み得る。繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)の合計は、例えば、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%のPEEKコポリマー中の繰り返し単位を表すことができる。また、繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)の合計は、100モル%のPEEKコポリマー中の繰り返し単位を表すこともできる。
【0056】
欠陥、末端基及びモノマーの不純物は、ポリマー組成物(C1)中のポリマーの性能に望ましくない影響を与えることなく、本開示のポリマー(PEEK)に非常にわずかな量で組み込まれてもよい。
【0057】
PEEKは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからKetaSpire(登録商標)PEEKとして市販されている。
【0058】
PEEKは、当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。例えば、塩基の存在下での4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンとの縮合から生じることができる。モノマー単位の反応は、求核性芳香族置換によって起こる。分子量(例えば、重量平均分子量Mw)は、モノマーのモル比を調節して、重合の収率を測定すること(例えば、反応混合物を撹拌するインペラのトルクの測定)によって制御することができる。
【0059】
本開示の一実施形態によれば、PEEKポリマーは、(ポリスチレン標準を使って、160℃でフェノール及びトリクロロベンゼン(1:1)を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるように)65,000~105,000g/モル、例えば、77,000~98,000g/モル、79,000~96,000g/モル、81,000~95,000g/モル、又は85,000~94,500g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0060】
本発明の部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、50~99重量%、又は55~98重量%、例えば、60~95重量%、又は65~90重量%の範囲の量のPEEKを含み得る。
【0061】
本発明によれば、PEEKのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って2.16kgの荷重下にて400℃での)(MFR又はMFI)は、1~60g/10分、例えば、2~50g/10分又は2~40g/10分であり得る。
【0062】
別の実施形態では、PAEKは、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)である。
【0063】
本明細書で使用される場合、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)は、50モル%超の式(J-B)及び(J-B)の繰り返し単位を含むポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく:
(式中、
及びRは、各場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
i及びjは、各場合に、0~4の範囲の独立して選択される整数である)。
【0064】
一実施形態によれば、R及びRは、上の式(J-B)及び(J-B)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含む、C1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0065】
別の実施形態によれば、i及びjは、各R及びR基についてゼロである。この実施形態によれば、PEKKポリマーは、少なくとも50モル%の式(J’-B)及び(J’-B):
の繰り返し単位を含み、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。
【0066】
本開示の一実施形態によれば、PEKK中の繰り返し単位の少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(J-B)及び(J-B)の繰り返し単位である。
【0067】
本開示の一実施形態によれば、PEKKポリマーにおいて、繰り返し単位(J-B)又は/及び(J’-B)対繰り返し単位(J-B)又は/及び(J’-B)のモル比は、少なくとも1:1~5.7:1、例えば少なくとも1.2:1~4:1、少なくとも1.4:1~3:1又は少なくとも1.4:1~1.86:1である。
【0068】
PEKKポリマーは、好ましくは、濃HSO(最小96重量%)中の0.5重量/体積%溶液に関して30℃でASTM D2857に従って測定されるように、1グラム当たり少なくとも0.50デシリットル(dL/g)、例えば少なくとも0.60dL/g又は少なくとも0.65dL/g、及び例えば多くとも1.50dL/g、多くとも1.40dL/g、又は多くとも1.30dL/gの固有粘度を有する。
【0069】
本発明の部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、50~99重量%、又は55~98重量%、例えば、60~95重量%、又は65~90重量%の範囲の量のPEEKを含み得る。
【0070】
PEEKは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからNovaSpire(登録商標)PEEKとして市販されている。
【0071】
任意のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)
本発明の部品材料は、PAEKポリマーに加えて、少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマーを含み得る。
【0072】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマーは、ビフェニル部位を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)としても知られており、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合の結果として生じる。
【0073】
本開示の目的のために、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)は、少なくとも50モル%の式(L)の繰り返し単位(RPPSU)を含む任意のポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の総モル数に基づく:
(式中、
- Rは、各位置で、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され、
- hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)。
【0074】
一実施形態によれば、Rは、上の式(L)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含む、C1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0075】
一実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(RPPSU)は、式(L’):
の単位である。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L)及び/又は式(L’)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0077】
本発明の別の実施形態によれば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、少なくとも50モル%の式(L’’):
の繰り返し単位(RPPSU)を含む任意のポリマーを示す。(モル%は、ポリマー中の合計モル数に基づく)。
【0078】
従って、本発明のPPSUポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。コポリマーである場合、これは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L’’)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0080】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)がコポリマーである場合、これは、繰り返し単位(RPPSU)とは異なる、繰り返し単位(R*PPSU)、例えば式(M)、式(N)及び/又は式(O)の繰り返し単位からなり得る:
(式中、
- Rは、各位置で、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され、
- iは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)。
【0081】
一実施形態によれば、Rは、上の式(M)~(O)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含む、C1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0082】
一実施形態によれば、iは、式(M)、(N)又は(O)の各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R*PPSU)は、式(M’)、(N’)及び/又は(O’):
の単位である。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満又は全てが、式(M)、(N)、(O)、(M’)、(N’)及び/又は(O’)の繰り返し単位(R*PPSU)である。
【0084】
本発明の別の実施形態によれば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、コポリマーであり、繰り返し単位(RPPSU)とは異なる、繰り返し単位(R*PPSU)、例えば、式(M’’)、(N’’)及び/又は(O’’):
の繰り返し単位を有する。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の45モル%未満、40モル%未満、35モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満又は全てが、式(M’’)、(N’’)及び/又は(O’’)の繰り返し単位(R*PPSU)である。
【0086】
本発明の実施形態によれば、部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、1~50重量%のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)、例えば、2~40重量%、又は5~40重量%のPPSUを含む。
【0087】
本発明によれば、PPSUの重量平均分子量Mwは、30,000~80,000g/モル、例えば、35,000~75,000g/モル又は40,000~70,000g/モルであり得る。
【0088】
本発明によれば、PPSUのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って5kgの荷重下にて365℃での)(MFR又はMFI)は、1~60g/10分、例えば5~50g/10分又は10~40g/10分であり得る。
【0089】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、PPSUホモポリマーと、上に記載されたとおりの少なくとも1つのPPSUコポリマーとのブレンドであることもできる。
【0090】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。これは、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合によって生じることができる。モノマー単位の反応は、脱離基としてのハロゲン化水素の1単位の脱離を伴う求核芳香族置換によって起こる。しかしながら、得られるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の構造は、脱離基の性質に依存しないことに留意されるべきである。
【0091】
欠陥、末端基及びモノマーの不純物は、本発明の(コ)ポリマー(PPSU)中に、有利にはそれの性能に悪影響を及ぼさないように、極めて微量に組み込まれてもよい。
【0092】
PPSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRadel(登録商標)PPSUとして市販されている。
【0093】
一実施形態によれば、部品材料は、1.3~19、好ましくは1.8~17、更により好ましくは2~15又は2.5~10の範囲の重量比PAEK/PPSUを含む。
【0094】
一実施形態によれば、部品材料は、1.3~19、好ましくは1.8~17、更により好ましくは2~15又は2.5~10の範囲の重量比PEEK/PPSUを含む。
【0095】
任意のポリ(エーテルイミド)(PEI)
本発明の部品材料は、PAEKポリマーに加えて、少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含み得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、少なくとも1つの芳香環、少なくとも1つのイミド基(それ自体及び/又はそのアミド酸の形態)、並びに少なくとも1つのエーテル基を含む繰り返し単位(RPEI)を、ポリマー中の総モル数に基づいて、少なくとも50モル%含む任意のポリマーを示す。繰り返し単位(RPEI)は、イミド基のアミド酸の形態に含まれない少なくとも1つのアミド基を任意選択的に更に含み得る。
【0097】
一実施形態によれば、繰り返し単位(RPEI)は、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及びこれらの混合物からなる群から選択される:
(式中、
- Arは、四価の芳香族部位であり、5~50の炭素原子を有する置換又は非置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択され、
- Ar’は、三価の芳香族部位であり、5~50の炭素原子を有する置換、非置換の、飽和、不飽和の、芳香族単環式及び芳香族多環式の基からなる群から選択され、
- Rは、例えば、
(a)6~20の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びこれらのハロゲン化誘導体、
(b)2~20の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレンラジカル、
(c)3~20の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル、並びに
(d)式(VI):
(式中、
- Yは、1~6の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH及び-C2n-(nは1~6の整数である)、1~6の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF及び-C2n-(nは1~6の整数である)、4~8の炭素原子のシクロアルキレン、1~6の炭素原子のアルキリデン、4~8の炭素原子のシクロアルキリデン、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-からなる群から選択され、
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数であり、
但し、Ar、Ar’及びRのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とする)の二価ラジカルからなる群から選択される置換及び非置換の二価有機ラジカルからなる群から選択される)。
【0098】
一実施形態によれば、Arは、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’又は4,4’位に二価の結合を有する二価の部位であり、1~6の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH-及び-C2n-(nは、1~6の整数である)、1~6の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば、-C(CF-及び-C2n-(nは、1~6の整数である)、4~8の炭素原子のシクロアルキレン、1~6の炭素原子のアルキリデン、4~8の炭素原子のシクロアルキリデン、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-からなる群から選択され、
或いはXは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50の炭素原子を有する置換又は非置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部位である)の基である)からなる群から選択される。
【0099】
一実施形態によれば、Ar’は、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’又は4,4’位に二価の結合を有する二価の部位であり、1~6の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH-及び-C2n-(nは、1~6の整数である)、1~6の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF-及び-C2n-(nは、1~6の整数である)、4~8の炭素原子のシクロアルキレン、1~6の炭素原子のアルキリデン、4~8の炭素原子のシクロアルキリデン、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-からなる群から選択され、
或いはXは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50の炭素原子を有する置換又は非置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部位である)の基である)からなる群から選択される。
【0100】
本開示の一実施形態によれば、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、上記定義された、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又はこれらの混合物の繰り返し単位(RPEI)である。
【0101】
一実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、ポリマー中の総モル数に基づいて、少なくとも50モル%の式(VII)の繰り返し単位(RPEI)を含む任意のポリマーを示す:
(式中、
- Rは、例えば、
(a)6~20の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びこれらのハロゲン化誘導体、
(b)2~20の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレンラジカル、
(c)3~20の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル、並びに
(d)式(VI):
(式中、
- Yは、1~6の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH及び-C2n-(nは1~6の整数である)、1~6の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF及び-C2n-(nは1~6の整数である)、4~8の炭素原子のシクロアルキレン、1~6の炭素原子のアルキリデン、4~8の炭素原子のシクロアルキリデン、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-からなる群から選択され、
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数であり、
但し、Ar、Ar’及びRのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とし、
- Tは、
-O-又は-O-Ar’’-O-
のいずれかであることができ、
ここで、-O-又は-O-Ar’’-O-基の二価の結合は、3,3’、3,4’、4,3’、又は4,4’位にあり、
ここで、Ar’’は、5~50の炭素原子を有する置換又は非置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式基、例えば、置換又は非置換のフェニレン、置換又は非置換のビフェニル基、置換又は非置換のナフタレン基、又は2つの置換又は非置換のフェニレン基を含む部位からなる群から選択される芳香族部位である)の二価ラジカルからなる群から選択される置換及び非置換の二価有機ラジカルからなる群から選択される)。
【0102】
本開示の一実施形態によれば、Ar’’は、上に詳述されたような、一般式(VI)のものであり、例えばAr’’は、式(XIX):
である。
【0103】
本発明のポリエーテルイミド(PEI)は、HN-R-NH(XX)(式中、Rは、前に定義された通りである)のジアミノ化合物と、式(XXI):
(式中、Tは前に定義された通りである)の任意の芳香族ビス(エーテル無水物)との反応を含む、当業者に周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0104】
一般に、この調製は、20℃~250℃の範囲の温度で、溶媒、例えばo-ジクロロベンゼン、m-クレゾール/トルエン、N,N-ジメチルアセトアミド中で実施することができる。
【0105】
或いは、これらのポリエーテルイミドは、式(XXI)の任意の二無水物と式(XX)の任意のジアミノ化合物とを、同時に混合してこれらの成分の混合物を高温で加熱しながら溶融重合させることによって調製することができる。
【0106】
式(XXI)の芳香族ビス(エーテル無水物)としては、例えば:
2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;
2,2-ビス[4(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物;
及びこのような二無水物の混合物が挙げられる。
【0107】
式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニル-メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミン並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0108】
一実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、イミドの形態、又はこれらの相当するアミド酸の形態及びこれらの混合物での、ポリマー中の総モル数に基づいて、少なくとも50モル%の式(XXIII)又は(XXIV):
の繰り返し単位(RPEI)を含む任意のポリマーを示す。
【0109】
本発明の好ましい実施形態では、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全てが、イミドの形態、又はこれらの相当するアミド酸の形態及びこれらの混合物での、式(XXIII)又は(XXIV)の繰り返し単位(RPEI)である。
【0110】
このような芳香族ポリイミドは、とりわけ、ULTEM(登録商標)ポリエーテルイミドとしてSabic Innovative Plasticsから市販されている。
【0111】
本発明の部品材料は、更なるポリマーとして1つのPEIを含み得る。或いは、更なるポリマーとして幾つかのPEI、例えば2つ、3つ、又は更には3つを超えるPEIを含み得る。
【0112】
特定の実施形態では、PEIポリマーは、標準ポリスチレンを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるように、10,000~150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0113】
特定の実施形態では、PEIポリマーは、25℃でm-クレゾール中で測定される1グラム当たり0.2デシリットル(dl/g)超の、有利には0.35~0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0114】
本発明によれば、PEIのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って6.6kgの荷重下にて337℃での)(MFR又はMFI)は、0.1~40g/10分、例えば2~30g/10分又は3~25g/10分であり得る。
【0115】
特定の実施形態では、PEIポリマーは、ASTM D3418に従って示差走査熱量法(DSC)により測定されるように、160~270℃の範囲の、例えば170~260℃、180~250℃の範囲のTgを有する。
【0116】
このような部品材料は、有利には、ニート樹脂と比較して、3D物体を製造するために使用される場合、良好な機械的特性プロファイル(即ち引張り強度及び弾性率)を示すことを本出願人は見出した。
【0117】
部品材料
本発明の部品材料は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、このような方法には、溶融混合プロセスが含まれるが、これらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも上にポリマー成分を加熱し、これにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態では、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~440℃、約300~430℃又は約310~420℃の範囲である。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダ、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投与するための手段を備えた押出機が使用される。部品材料の調製プロセスにおいて、部品材料の成分、即ち、PAEK、及び任意選択的にPPSU、PEI及び添加剤は、溶融混合装置に供給され、その装置で溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給されてもよいし、又は別々に供給されてもよい。
【0118】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態では、成分は、所望量の各成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態では、最初のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1つ以上の残りの成分を、更なる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、各成分の全所望量が単一量として混合される必要はない。例えば、1つ以上の成分について、一部の量を最初に添加し、混合し、続いて、残りのいくらか又は全てを添加し、混合することができる。
【0119】
フィラメント材料
また、本発明は、上記のように、部品材料を含むフィラメント材料に関する。部品材料に関して上に記載された実施形態の全てが、フィラメント材料に等しく適用される。
【0120】
一実施形態によれば、フィラメントは、
- 50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料と、
- 少なくとも1つの窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)と、
を含む。
【0121】
一実施形態によれば、フィラメント材料のポリマー成分はまた、部品材料の総重量に基づいて、45重量%までの、充填材、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、流動促進剤及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤も含む。
【0122】
このフィラメント材料は、3次元物体の製造方法において使用するのに好適である。
【0123】
例として、本発明のフィラメント材料は、他の成分を含み得る。例えば、フィラメント材料は、少なくとも1つの添加剤、とりわけ充填材、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、流動促進剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。
【0124】
フィラメントは、円筒形状又は実質的に円筒状の形状を有し得、又はリボンフィラメント形状などの、非円筒形状を有し得、更に、フィラメントは、中空形状を有し得、又はコア-シェル形状を有し得、本発明の支持材料は、コア又はシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0125】
フィラメントが円筒形状を有する場合、その直径は、0.5mm~5mm、例えば0.8~4mm又は例えば1mm~3.5mmで変動し得る。フィラメントの直径は、特定のFFF 3Dプリンターに供給するために選択することができる。FFFプロセスにおいて広範囲にわたって使用されるフィラメント直径の例は、1.75mm又は2.85mm直径である。
【0126】
一実施形態によれば、フィラメントは、円筒形状及び0.5~5mm±0.2mm、好ましくは1~3.5mm±0.15mmからなる直径を有する。
【0127】
一実施形態によれば、フィラメントは、0.1未満、例えば、0.08未満又は0.06未満の楕円値(真円度とも呼ばれる)を有する。フィラメントの楕円値は、フィラメントの大径及び小径の差を2つの直径の平均で割った値として定義される。
【0128】
本発明のフィラメントは、溶融混合プロセスなどの、しかしこれらに限定されない方法によって部品材料から製造することができる。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの最高溶融温度及びガラス転移温度よりも上にポリマー成分を加熱し、これにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態では、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~440℃、約300~430℃又は約310~420℃の範囲である。
【0129】
フィラメントの調製プロセスは、溶融混合装置で実施することができ、このため、溶融混合によりポリマー組成物を調製する技術における当業者に公知の任意の溶融混合装置を使用することができる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダ、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投与するための手段を備えた押出機が使用される。フィラメントの調製プロセスにおいて、部品材料の成分、即ち、少なくともPAEK、並びに任意選択でPPSU、PEI及び添加剤が、溶融混合装置に供給され、その装置で溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給されることができる、又は別々に供給されることができる。
【0130】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態では、成分は、所望量の各成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態では、最初のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1つ以上の残りの成分を、更なる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、各成分の全所望量が単一量として混合される必要はない。例えば、1つ以上の成分について、一部の量を最初に添加し、混合し、続いて、残りのいくらか又は全てを添加し、混合することができる。
【0131】
フィラメントを製造する方法は、例えば、ダイを使用する押出工程も含む。この目的のために、任意の標準的な成形技術を用いることができ、溶融/軟化形態のポリマー組成物を成形することを含む標準的な技術を有利に適用でき、又、これにはとりわけ圧縮成形、押出成形、射出成形、トランスファー成形などが挙げられる。押出成形が好ましい。例えば物品が円筒形状のフィラメントである場合は環状のオリフィスを有するダイなどのダイを用いて物品を成形することができる。
【0132】
方法は、異なる条件下での溶融混合又は押出のいくつかの連続工程を任意選択的に含み得る。
【0133】
プロセス自体、又は関連する場合、プロセスの各工程は、溶融混合物を冷却することを含む工程を更に含んでもよい。
【0134】
支持材料
本発明の方法は、別のポリマー成分を使用して組立中の3D物体も支持し得る。3D物体を作るために使用される部品材料と同様の又は異なるこのポリマー成分は、本明細書では支持材料と呼ばれる。支持材料は、高温部品材料(例えば、約320~400℃の処理温度を必要とするPPSU)にとって必要とされるより高い運転条件において垂直方向及び/又は横方向支持を提供するために3D印刷中に必要とされ得る。
【0135】
本方法との関連で場合により使用される、支持材料は、有利には、高温用途に耐えるために、高い溶融温度(即ち260℃超)を有する。支持材料はまた、湿気への暴露時に十分に膨潤する又は変形するために、110℃よりも低い温度で吸水挙動又は水への溶解性を有し得る。
【0136】
本発明の実施形態によれば、3次元物体を付加製造システムで製造する方法は、
- 支持構造物の層を支持材料から印刷する工程と、
- 支持構造物の少なくとも一部を3次元物体から取り除く工程と
を更に含む。
【0137】
様々なポリマー成分を支持材料として使用することができる。とりわけ、支持材料は、例えば、特許出願国際公開第2017/167691号パンフレット及び国際公開第2017/167692号パンフレットに記載されているものなどの、ポリアミド又はコポリアミドを含み得る。
【0138】
用途
また、本発明は、3次元物体の製造のための上述のようなポリマー成分(PAEK、任意選択的にPPSU及び/又はPEI)を含む部品材料の使用に関する。
【0139】
また、本発明は、3次元物体の製造において使用するためのフィラメントの製造のための、上述のようなポリマー成分を含む部品材料の使用に関する。
【0140】
部品材料及びフィラメントに関して上記に記載された実施形態の全てが、用途に等しく適用される。
【0141】
また、本発明は、3次元物体の製造のための上述のようなポリマー成分を含むフィラメント材料の使用に関する。
【0142】
また、本発明は、本明細書で記載される部品材料を使用して、少なくとも部分的に本発明の製造方法から得ることができる3D物体又は3D物品に関する。これらの3D物体又は3D物品は、射出成形物体又は物品に匹敵する密度を示す。また、同等の又は改善された機械的特性、特に剛性(弾性率として測定)、延性(破断伸びとして測定)、及び引張り強度を示す。
【0143】
このような製造方法によって得られる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品、並びに自動車産業におけるアンダーフード部品に言及することができる。
【0144】
また、本発明は、円筒形状及び0.5~5mm±0.2mm、好ましくは1~3.5mm±0.15mmからなる直径を有し、50~99重量%の、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー(PAEK)、及び任意選択的に少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)及び/又は少なくとも1つのポリ(エーテルイミド)ポリマー(PEI)を含むポリマー材料を含むフィラメントを調製するための窒化物(N)、好ましくは窒化ホウ素(BN)の使用にも関する。
【0145】
本明細書に参照として組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が、用語に不明瞭さを与える範囲において、本明細書の記載と対立する場合は、本明細書の記載が優先するものとする。
【実施例
【0146】
本発明はこれから、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図されない、以下の実施例に関連してより詳細に説明される。
【0147】
出発原料
以下のポリマーを使用して、フィラメントを調製した:
窒化ホウ素、Boronid(登録商標)S1-SF、2.5μmのD50粒径を有し、3M Technical Ceramics、以前のESK Ceramics Gmbh&Co KGから市販(CAS#10043-11-5)。
炭素繊維、Sigrafil(登録商標)C30 S006 APS、SGL TECHNIC Ltdから市販。
タルク、Mistron(登録商標)Vapor粒径1.6~2.8μmのタルク、Lintech Internationalから市販。
安定剤:Hostanox(登録商標)P-EPQ(登録商標)粉末(CAS#119345-01-6)、Clariant Corporationにより提供。
【0148】
PEEK#1:以下のプロセスに従って調製された、71,300g/モルのMwを有するポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)。
攪拌機、N2注入管、反応媒体中に入れられた熱電対付きのクライゼンアダプタ、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを装着した500mLの4口反応フラスコに、128gのジフェニルスルホン、28.6gのp-ヒドロキノン、及び57.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。
反応混合物を150℃までゆっくり加熱した。150℃で28.43gの乾燥NaCOと0.18gの乾燥KCOとの混合物を30分にわたって粉末ディスペンサによって反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。
15~30分後、ポリマーが予想Mwを有したときに、反応器上で窒素パージを維持しながら6.82gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応混合物に導入することによって反応を止めた。5分後、0.44gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後、別の2.27gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。続いて、反応器の内容物を冷却した。
固体を砕いて微粉砕した。塩の濾過、洗浄、及び乾燥によってポリマーを回収した。GPC分析は、数平均分子量Mw=71,300g/モルを示した。
【0149】
PEEK#2:反応をより遅く止めたこと以外にはPEEK#1と同じプロセスに従って調製された、102,000g/モルのMwを有するポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)。
【0150】
PEEK#3:35重量%のPEEK#1と65重量%のPEEK#2とのブレンドであって、91,000g/モルの測定Mwを有するブレンド。
【0151】
PPSU#1:以下のプロセスに従って調製された、45,600g/モルのMwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)。
PPSUの合成は、66.5g(0.481mol)の乾燥KCOを添加した400gのスルホランの混合物中に溶解した83.8gの4,4’-ビフェノール(0.450mol)、131.17gの4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(0.457mol)の1Lフラスコ中での反応によって達成された。
反応混合物を210℃まで加熱し、ポリマーが予想Mwを有するまでこの温度に維持した。次に、過剰の塩化メチルを反応物に添加した。
反応混合物を600gのMCBで希釈した。塩の濾過、凝固、洗浄及び乾燥によってポリ(ビフェニルエーテルスルホン)を回収した。GPC分析は、19,100g/モルの数平均分子量(Mw)、45,600g/モルの平均分子量(Mn)、及び2.39の多分散性(Mw/Mn)を示した。
【0152】
PSU#1:Solvay Speciality Polymers LLCから市販されているUdel(登録商標)P1700。
【0153】
ブレンド配合
各配合物は、直径26mmのCoperion(登録商標)ZSK-26、12のバレルセクション及び48の全体のL/D比を有する二軸同時回転部分噛み合い押出機を使用して溶融配合した。バレルセクション2~12及びダイを、以下の通りの設定点温度に加熱した。
バレル2~6:190~300℃
バレル7~12:300~320℃
ダイ:330℃
各場合において、事前混合した樹脂ブレンドを、30~35ポンド/時の範囲の処理速度で重量測定供給機を用いてバレルセクション1で供給した。押出機を、約165RPMのスクリュー速度で運転した。真空を、約27インチの水銀の真空レベルでバレルゾーン10に適用した。単一孔ダイを配合物の全てについて用いて直径およそ2.6~2.7mmのフィラメントを生じさせ、ダイを出るポリマーフィラメントを水中で冷却し、ペレタイザーに供給して長さおよそ2.7mmのペレットを生成した。フィラメント加工(FFF、本発明による)又は射出成形(IM、比較例)前にペレットを真空下において16時間140℃で乾燥させた。
【0154】
フィラメント調製
0.75” 32L/D汎用シングルスクリュー、フィラメントヘッドアダプター、2.5mmノズル、及び冷却タンク、ベルトプーラー、及びDual Station Coilerを含むESI-Extrusion Services下流機器を備えた、Brabender(登録商標)Intelli-Torque Plasti-Corder(登録商標)Torque Rheometer押出機を使用して、各ブレンド(表1及び2を参照)ごとに直径1.75mmのフィラメントを調製した。Beta LaserMike(登録商標)DataPro1000を使用してフィラメント寸法を監視した。溶融ストランドを空気で冷却した。様々なBrabender(登録商標)ゾーンの処理温度は、330~360℃の範囲であり、押出速度は、30~50rpmの範囲であった。引き手速度は、23~37fpmの範囲であった。
【0155】
溶融フィラメント製造バー(FFFバー)
試験バー(即ち、ASTM D638V型バー)は、直径1.75mmの上記フィラメントから、直径0.5mmのノズルを備えたHyrel 16A 3Dプリンターで印刷された。押出機の温度は380℃であり、ベッドの温度は135℃であった。印刷中、バーをビルドプラットホーム(build platform)上でXY方向に方向付けた。10mm幅の縁及び3つの外周を持った試験バーを印刷した。工具パスは、部品の長軸に対して45°の角度を持ったクロスハッチパターンであった。第1の層の堆積のためのノズルの速度は4.5mm/秒であり、それ以外の場合、速度は10~25mm/秒で変動した。各場合で第1の層の高さは0.4mmであり、後続の層は高さ0.1mm及び充填密度100%で堆積された。
【0156】
IMバー(比較)
また、ASTM D638V型バーが、射出成形により得られた。実施例4cは、110トンのToyo IMMで160℃に調節された型で処理された。
【0157】
試験方法
*PPSUポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
移動相として塩化メチレンを使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2本の5μ混合Dカラムを分離のために使用した。254nmの紫外光検出器を、クロマトグラムを得るために用いた。1.5mL/分の流量及び移動相中の20μLの0.2w/v%溶液の注入量を選択した。校正は、12の狭い分子量のポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を用いて行った。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を報告した。
【0158】
*弾性率
弾性率は、ASTM D638方法に従って決定した。
【0159】
*引張り強度
V型バーを使ってASTM D638方法に従って引張り強度及び弾性率を決定した。
【0160】
試験バー(本発明による又は比較)及びこれらの機械的特性を以下の表1及び2に報告する(5つの試験バー/平均値)。
【0161】
【0162】
印刷品質は、部品の密度の測定によって評価される。
【0163】
実施例3のFFF部品は、比較例2cのBNなしのFFF部品よりも著しく高い弾性率を示している。破断伸びは13%で、BNありが低くなっているが、値は依然延性範囲にある(約5.3%の降伏伸びで降伏が観察される)。
【0164】
比較例1cは、10重量%の炭素繊維を含むFFF部品の延性の完全な喪失を示している。炭素繊維があると、高い弾性率と強度を与るが、結果として、BNを使うことによって、より良好な印刷適性、延性、弾性率、及び着色性を組み合わせた利点を約束することを示している(部品は黒ではなく、顔料又は染料を使用して着色できる)。
【0165】
実施例3の組成物は、FFFプロセスに特に適した溶融レオロジー及び凝固ダイナミクスを有する。比較例1c及び2cの組成は、FFFプロセスで密度の小さな低下を示している。更に、実施例3の組成物で得られた衝撃バーの破断面は、タルク又は炭素繊維を含む他の組成物とは対照的に、多孔性の兆候を示さない。
【0166】
Boronid(登録商標)窒化ホウ素は、板状のミクロンの大きさの鉱物である。Mistron(登録商標)タルクは、形状と大きさが類似している。しかしながら、タルクを有する比較例5cのFFF部品は、窒化ホウ素を有する実施例3のFFF部品と比較して機械的特性が劣っており、非常に低い破断伸びで延性が完全に失われている(降伏は観察されない)。また、組成物5cの引張り弾性率は、PEEKの引張り弾性率よりも低い。
【0167】
【0168】
表2で得られた最も高い密度は、実施例6の組成物である。
【0169】
実施例6のFFF部品は、比較例8cのBNなしのFFF部品よりも著しく高い弾性率及び破断伸びを示している。
【0170】
また、実施例6のFFF部品(PEEK/PPSUブレンド)は、比較例7cのFFF部品(PEEK/PSUブレンド)よりも大幅に高い弾性率と破断伸びも示している。BNがない場合、PEEK/PSUブレンドのFFF処理により、PEEK/PPSUブレンドよりも適度に高い弾性率と延性が得られるため、これは驚くべきことである。