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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】一体型注射器を有する輸液装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
A61J1/20 314
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021559811
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 IL2020050362
(87)【国際公開番号】W WO2020208626
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】62/831,214
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】デネンバーグ・イゴール
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211873(JP,A)
【文献】特表平11-503627(JP,A)
【文献】米国特許第05466220(US,A)
【文献】国際公開第2011/25719(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/9746(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/140511(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈内(IV)ポートを有する注入液容器、バイアル栓によって封止されたバイアル、及びIVポートへの挿入を封止するためのIVスパイクを含む注入セットの各々と共に使用するように構成された輸液装置であって、
前記輸液装置は、
三叉状コネクタ本体であって、その第1の端部にバレル、その第2の端部にIVスパイク、及びその第3の端部にバイアルアダプタルーメンを画定し、
前記バレルが、開放近位端を有する内部チャンバを画定し、
前記IVスパイクが、遠位に配置された第1の開口部を有する内部IVスパイクルーメンを画定し、前記IVスパイクが、前記注入液容器の前記IVポートに封止的に挿入するように構成されており、
前記バイアルアダプタルーメンが、前記IVスパイクルーメンから分岐している、三叉状コネクタ本体と、
前記バイアルアダプタルーメンに固定され、前記バイアルに取り付けられるように構成されたバイアルアダプタであって、前記バイアルアダプタルーメンに流体接続され、前記バイアルアダプタを前記バイアル上に取り付ける際に前記バイアル栓を穿刺するように構成されているカニューレを含む、バイアルアダプタと、
前記バレルの前記開放近位端を介して前記バレルの内部チャンバと摺動可能に係合するプランジャであって、
前記バレルに対して横断方向に配向され、かつ前記バレルと封止係合するピストン面、
前記ピストン面から近位に突出し、前記注入セットの前記IVスパイクを封止的に受容するように構成されたIVポートで終端するチューブであって、その内部に内部プランジャルーメンを画定する、チューブ、及び
前記ピストン面から前記IVスパイクルーメン内に遠位に突出するプランジャロッドであって、前記プランジャロッド及び前記IVスパイクルーメンが、それらの間に流体流路を画定し、前記流体流路が前記バイアルアダプタルーメンから封止されている、プランジャロッド、を含むプランジャと、
前記バレルの前記内部チャンバの遠位端と前記IVスパイクルーメンの近位端との間に挿入され、前記流体流路と位置合わせされて、前記流体流路を前記バレルの前記内部チャンバと流体接続するための、第2の開口部と、を備え、
前記プランジャの前進位置では、前記プランジャロッドが、前記IVスパイクルーメンと流体連通することから前記バイアルアダプタルーメンを封止し、前記バレルの前記内部チャンバが、前記流体流路及び前記第2の開口部を介して前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通し、
前記プランジャの後退位置では、前記プランジャロッドが、前記バレルの前記内部チャンバを、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通することから封止し、前記バイアルアダプタルーメンが、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通している、輸液装置。
【請求項2】
前記IVスパイクルーメンが、前記IVスパイクルーメンの周辺部に、前記バレルに近接して前記第1の開口部まで延在する少なくとも1つの細長い溝付きチャネルを含み、前記プランジャロッドが、前記プランジャロッドの周囲に、前記プランジャロッドの前記ピストン面から前記遠位ヘッドまで延在する、対応かつ対向する少なくとも1つの細長い溝付きチャネルを含み、前記IVスパイクルーメンの前記周辺部にある前記少なくとも1つの細長い溝付きチャネルと、前記プランジャロッドの前記周辺部にある前記対応かつ対向する少なくとも1つの細長い溝付きチャネルとが、前記流体流路を形成する、請求項1に記載の輸液装置。
【請求項3】
前記プランジャロッドが、前記少なくとも1つの細長い溝付きチャネルに沿っていない、前記IVスパイクルーメンの断面に対する相補的な断面を画定し、それにより、前記プランジャロッドが、前記流体流路に沿っていることを除いて、前記IVスパイクルーメンの前記周辺部に実質的に封止係合している、請求項2に記載の輸液装置。
【請求項4】
前記プランジャロッドの前記遠位ヘッドが、前記プランジャの前記後退位置にある前記バイアルアダプタルーメンの近位に位置付けられ、それによって、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通するために前記バイアルアダプタルーメンをクリアする、請求項2又は請求項3に記載の輸液装置。
【請求項5】
前記第2の開口の下側に隣接する前記IVスパイクルーメン内に位置付けられた軸受筒を更に備え、前記軸受筒の外周が、前記IVスパイクルーメンの前記周辺部と封止するように構成されており、前記軸受筒の内部開口部が、前記プランジャロッドの前記軸受筒を通る摺動を可能にするように、かつ前記プランジャロッドの前記遠位ヘッドをその前記後退位置で係合するように構成されており、これにより、前記バレルの前記内部チャンバを、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通することから封止する、請求項2~4のいずれか一項に記載の輸液装置。
【請求項6】
前記プランジャロッドの前記遠位ヘッドが、のない断面を画定する、請求項2~5のいずれか一項に記載の輸液装置。
【請求項7】
前記ピストン面が、前記内部プランジャルーメンの遠位端に第3の開口部を画定し、前記第3の開口部が、前記第2の開口部と整列しており、
前記プランジャの前記前進位置では、前記内部プランジャルーメンはまた、前記第3の開口部、前記第2の開口部、及び前記流体流路を介して、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部とも流体連通しており、
前記プランジャの後退位置では、前記プランジャロッドはまた、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通することから前記内部プランジャルーメンを封止する、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の輸液装置。
【請求項8】
前記流体流路が、前記バイアルアダプタルーメンから角度的にオフセットされている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の輸液装置。
【請求項9】
前記IVスパイクが、前記バレルと共方向である、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の輸液装置。
【請求項10】
前記プランジャに取り付けられたプランジャハンドルアセンブリを更に備え、前記プランジャを前進及び後退させるために、前記プランジャハンドルアセンブリが前記バレルの外側に位置付けられている、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の輸液装置。
【請求項11】
前記プランジャハンドルアセンブリが、ハンドルと、前記ハンドルから遠位に突出する一対のアームとを備え、前記アームは、それぞれのフランジ付き端部で終端し、
前記バレルが、前記バレルの外壁上に配置され前記アームの前記フランジ付き端部の間に位置合わせされた停止タブと、前記バレルの前記開放近位端から近位に突出する一対の可撓性指状部と、を含む、請求項10に記載の輸液装置。
【請求項12】
前記プランジャが、前記輸液装置の第1の構成において前記バレルの前記内部チャンバ内で遠位に押し下げられ、前記一対の可撓性指状部が前記ハンドルの下側と係合し、前記プランジャ及び前記一対の可撓性指状部の更なる押し下げが、前記ハンドルのそれぞれの遠位に突出するフックによって偏向するのを防止する、請求項11に記載の輸液装置。
【請求項13】
前記バレルが、前記バレルの前記外壁から延在する停止機構を更に含み、前記プランジャは、前記バレルの前記内部チャンバ内で、前記輸液装置の第2の構成へと近位に後退可能であり、前記輸液装置の前記第2の構成が、前記バレルの前記内部チャンバ内の前記プランジャの最大後退に概ね対応しており、前記プランジャハンドルアセンブリの前記アームの前記フランジ付き端部が、前記停止機構と係合する、請求項12に記載の輸液装置。
【請求項14】
前記バレルの前記一対の可撓性指状部が、前記輸液装置の前記第2の構成において前記ハンドルの前記遠位に突出するフックから係合解除され、前記一対の可撓性指状部が、前記プランジャの後続の遠位押し下げの間に前記ハンドルの前記下側から離れる方向に偏向され、これにより、前記輸液装置の前記第1の構成を越えて、かつ前記輸液装置の第3の構成へと、前記バレルの前記内部チャンバ内の前記プランジャの遠位押し下げを可能にし、前記プランジャハンドルアセンブリの前記アームの前記フランジ付き端部が、前記停止タブの上に跳ね返り、それによって前記輸液装置を前記第3の構成にロックし、前記輸液装置の前記第3の構成が、前記バレルの前記内部チャンバ内の前記プランジャの最大押し下げに概ね対応する、請求項13に記載の輸液装置。
【請求項15】
バイアル内に含有されバイアル栓で封止された薬剤添加剤を、輸液装置を用いて注入液容器内に含有された注入液と混合して、薬剤注入液を形成する方法であって、
前記方法は、
前記輸液装置のIVスパイクを前記注入液容器のIVポートに封止的に挿入することであって、前記輸液装置が、
三叉状コネクタ本体であって、その第1の端部にバレル、その第2の端部に前記IVスパイク、及びその第3の端部にバイアルアダプタルーメンを画定し、
前記バレルが、開放近位端を有する内部チャンバを画定し、
前記IVスパイクが、遠位に位置する第1の開口部を有する内部IVスパイクルーメンを画定し、
前記バイアルアダプタルーメンが、前記IVスパイクルーメンから分岐している、三叉状コネクタ本体と、
前記バイアルアダプタルーメンに固定されたバイアルアダプタであって、前記バイアルアダプタルーメンと流体接続されたカニューレを含むバイアルアダプタと、
前記バレルの前記開放近位端を介して前記バレルの前記内部チャンバと摺動可能に係合するプランジャであって、
前記バレルに対して横断方向に配向され、かつ前記バレルと封止係合するピストン面、
前記ピストン面から近位に突出し、IVポートで終端するチューブであって、その内部に内部プランジャルーメンを画定する、チューブ、及び
前記ピストン面から前記IVスパイクルーメン内に遠位に突出するプランジャロッドであって、前記プランジャロッド及び前記IVスパイクルーメンが、それらの間に流体流路を画定し、前記流体流路が前記バイアルアダプタルーメンから封止されている、プランジャロッド、を含む、プランジャと、
前記バレルの前記内部チャンバの遠位端と前記IVスパイクルーメンの近位端との間に挿入され、前記流体流路と位置合わせされて、前記流体流路を前記バレルの前記内部チャンバと流体接続するための、第2の開口部と、を備え、
前記プランジャの前進位置では、前記プランジャロッドが、前記IVスパイクルーメンと流体連通することから前記バイアルアダプタルーメンを封止し、前記バレルの前記内部チャンバが、前記流体流路及び前記第2の開口部を介して前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの第1の開口部と流体連通し、
前記プランジャの後退位置では、前記プランジャロッドが、バレルの内部チャンバを、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通することから封止し、前記バイアルアダプタルーメンが、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部と流体連通している、挿入することと、
前記バイアル上に前記バイアルアダプタを取り付け、前記バイアルと前記バイアルアダプタルーメンとの間の流体連通のために、前記バイアル栓を穿刺することと、
前記プランジャを、前記バレルの前記内部チャンバを通して、その前記前進位置からその前記後退位置に向かって近位に引き抜き、次いで、前記注入液の体積を前記バレルの前記内部チャンバ内に引き込むことと、
前記プランジャの前記後退位置に到達すると、前記バレルの前記内部チャンバを、前記IVスパイクルーメン及び前記IVスパイクの前記第1の開口部との流体連通から封止することと、
薬剤注入液を形成するために、前記プランジャが前記後退位置にあるときに、前記バイアル内に含有されている前記薬剤添加剤を、前記バイアルアダプタルーメンと、前記IVスパイクルーメンと、前記IVスパイクの前記第1の開口部との間の流体連通を介して、前記注入液容器内の前記注入液と組み合わせることと、
前記内部チャンバを通って前記プランジャを遠位に押し下げることであって、これにより、前記IVスパイクルーメンと流体連通することから前記バイアルアダプタルーメンを再封止し、前記IVスパイクルーメンと前記IVスパイクの前記第1の開口部とを再連通させ、前記内部チャンバ内の前記注入液の前記体積を、前記IVスパイクルーメンを通して前記第1の開口部から前記注入液容器内に押し出す、押し下げることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記輸液装置が、前記プランジャに取り付けられ、前記バレルの外側に配置されたプランジャハンドルアセンブリを更に備え、前記引き抜く工程が、前記プランジャハンドルアセンブリを介して引き抜くことを含み、前記押し下げる工程が、前記プランジャハンドルアセンブリを介して押し下げることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プランジャハンドルアセンブリが、ハンドルと、前記ハンドルから遠位に突出する一対のアームとを備え、前記一対のアームが、それぞれのフランジ付き端部で終端し、前記バレルが、前記バレルの外壁上に配置された停止タブを含み、前記一対のアームの前記フランジ付き端部と、前記バレルの前記外壁から延在する停止機構と、前記バレルの前記開放近位端から近位に突出する一対の可撓性指状部との間で整列され、前記引き抜く工程が、
前記プランジャハンドルアセンブリの前記一対のアームの前記フランジ付き端部が、前記バレルの前記内部チャンバ内の前記プランジャの最大後退に対応する前記停止機構と係合するまで、前記プランジャを、前記バレルの前記内部チャンバを通って近位方向に引き抜くことと、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記押し下げ工程の後に、その後続の動きを防止するために前記プランジャを前記バレルに対して定位置にロックすることを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ロックする工程が、前記プランジャハンドルアセンブリの前記一対のアームの前記フランジ付き端部が前記停止タブの上に跳ね返るまで、前記プランジャを遠位方向に押し下げることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ピストン面が、前記内部プランジャルーメンの遠位端に第3の開口部を画定し、前記第3の開口部が、前記第2の開口部と位置合わせされ、前記内部プランジャルーメンを前記流体流路と流体接続され、
前記方法が、
注入セットのIVスパイクを、前記押し下げる工程の後に前記プランジャの前記IVポート内に封止的に挿入し、次いで、前記注入セットを、前記IVスパイクの前記第1の開口部、前記流体流路、前記第2の開口部、前記第3の開口部、及び前記内部プランジャルーメンを介して、前記注入液容器内の前記薬剤注入液と流体連通させる工程を更に含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年4月9日に出願された「Liquid Transfer Device With Integrated Syringe」と題される米国仮特許出願第62/831,214号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示の背景
【0002】
(発明の分野)
本開示は、一般に輸液装置を対象とする。
【背景技術】
【0003】
患者に送達される注入液を収容する従来の注入液容器は、一般に、注入液バッグや注入液ボトルなどの形態をとる。一般に、薬剤充填済み注射器又はバイアルを使用して、輸液装置を介して高濃度の薬物を注入液内容物に添加し、希釈された薬剤注入液を形成する。その後、IVスパイクを含む注入セットは、一般に、薬剤注入液内容物を患者に注入するために、輸液装置のIVポートに挿入される。
【0004】
患者が未希釈の高濃度形態で薬物の一部を受容することを防止するための追加手段として、注入液内容物に液体薬物を添加/混合する工程と、薬剤注入液内容物を患者に投与する工程との間で、IVポートと薬剤注入液内容物に接続されたポートとの間の流路を洗い流すことが可能な輸液装置を製造することが有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
簡潔に述べると、本開示の一態様は、静脈内(IV)ポートを有する注入液容器、バイアル栓によって封止されたバイアル、及びIVポートへの挿入を封止するためのIVスパイクを含む注入セットの各々と共に使用するように構成された、輸液装置に関する。輸液装置は、バレルをその第1の端部に画定する三叉状コネクタ本体と、その第2の端部にあるIVスパイクと、その第3の端部にバイアルアダプタを有するバイアルアダプタルーメンとを含む。バレルは、開放近位端を有する内部チャンバを画定する。IVスパイクは、遠位に配置された第1の開口部を有する内部IVスパイクルーメンを画定し、IVスパイクが注入液容器のIVポートに封止的に挿入するように構成されている。バイアルアダプタルーメンは、IVスパイクルーメンから分岐している。バイアルアダプタは、バイアルアダプタルーメンに固定され、バイアル上に取り付けられるように構成される。バイアルアダプタルーメンに流体接続されたカニューレを含み、バイアルアダプタをバイアル上に取り付ける際にバイアル栓を穿刺するように構成されている。プランジャは、その開放近位端を介して、バレルの内部チャンバと摺動可能に係合する。プランジャは、バレルに対して横方向に配向され、かつバレルと封止係合するピストン面と、ピストン面から近位に突出し、注入セットのIVスパイクを封止的に受容するように構成されたIVポートで終端するチューブと、を含む。チューブは内部に内部プランジャルーメンを画定する。プランジャロッドは、ピストン面からIVスパイクルーメン内に遠位に突出している。プランジャロッド及びIVスパイクルーメンは、それらの間に流体流路を画定し、流体流路は、バイアルアダプタルーメンから封止される。第2の開口部は、バレルの内部チャンバの遠位端とIVスパイクルーメンの近位端との間に挿入され、流体流路と位置合わせされて、流体流路をバレルの内部チャンバと流体接続する。プランジャの前進位置では、プランジャロッドがIVスパイクルーメンと流体連通するバイアルアダプタルーメンを封止し、バレルの内部チャンバが、流体流路及び第2の開口部を介してIVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1の開口部と流体連通する。プランジャの後退位置では、プランジャロッドが、バレルの内部チャンバを、IVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1の開口部と流体連通することから封止し、バイアルアダプタルーメンが、IVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1開口部と流体連通している。
【0006】
簡潔に述べると、本開示の別の態様は、バイアル内に含有されバイアル栓で封止された薬剤添加剤を、輸液装置を用いて注入液容器内に含有された注入液と混合して、薬剤注入液を形成する方法を目的とする。輸液装置は、バレルを第1の端部に画定する三叉状コネクタ本体と、その第2の端部にあるIVスパイクと、その第3の端部にあるバイアルアダプタルーメンとを含み、バレルは、開放近位端を有する内部チャンバを画定する。IVスパイクは、遠位に位置する第1の開口部を有する内部IVスパイクルーメンを画定し、バイアルアダプタルーメンは、IVスパイクルーメンから分岐する。バイアルアダプタは、バイアルアダプタルーメンに固定され、バイアルアダプタルーメンと流体接続されたカニューレを含む。プランジャは、その開放近位端を介して、バレルの内部チャンバと摺動可能に係合する。プランジャは、バレルに対して横方向に配向され、かつバレルと封止係合するピストン面と、ピストン面から近位方向に突出し、IVポートで終端するチューブとを含む。チューブは内部に内部プランジャルーメンを画定する。プランジャロッドは、ピストン面からIVスパイクルーメン内に遠位に突出している。プランジャロッド及びIVスパイクルーメンは、それらの間に流体流路を画定し、流体流路は、バイアルアダプタルーメンから封止される。第2の開口部は、バレルの内部チャンバの遠位端とIVスパイクルーメンの近位端との間に挿入され、流体流路と位置合わせされて、流体流路をバレルの内部チャンバと流体接続する。プランジャの前進位置では、プランジャロッドがIVスパイクルーメンと流体連通するバイアルアダプタルーメンを封止し、バレルの内部チャンバが、流体流路及び第2の開口部を介してIVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1の開口部と流体連通する。プランジャの後退位置では、プランジャロッドが、バレルの内部チャンバを、IVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1の開口部と流体連通することから封止し、バイアルアダプタルーメンが、IVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1開口部と流体連通している。本方法は、
(i)輸液装置のIVスパイクを、注入液容器のIVポートに封止的に挿入する工程と、
(ii)バイアル上にバイアルアダプタを取り付け、バイアルとバイアルアダプタルーメンとの間の流体連通のために、バイアル栓を穿刺する工程と、
(iii)プランジャを、バレルの内部チャンバを通して、その前進位置から後退位置に向かって近位に引き込む工程と、次いで、注入液の体積をバレルの内部チャンバ内に引き込む工程と、
(iv)プランジャの後退位置に到達すると、IVスパイクルーメン及びIVスパイクの第1の開口部と流体連通からバレルの内部チャンバを封止する工程と、
(v)薬剤注入液を形成するために、プランジャが後退位置にあるときに、バイアル内に含有されている薬剤添加剤を、バイアルアダプタルーメンと、IVスパイクルーメンと、IVスパイクの第1の開口部との間の流体連通を介して、注入液容器内の注入液と組み合わせる工程と、
(vi)内部チャンバを通ってプランジャを遠位に押し下げる工程であって、これにより、IVスパイクルーメンと流体連通することからバイアルアダプタルーメンを再封止し、IVスパイクルーメンとIVスパイクの第1の開口部とを再連通させ、内部チャンバ内の注入液の体積を、IVスパイクルーメンを通して第1の開口部から注入液容器内に押し出す工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の態様の以下の説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。しかしながら、その開示は、図示される配置及び手段に正確に一致するものには限定されないということを理解されたい。図面において、
【0008】
図1A】本開示による輸液装置と共に使用可能な、注入バッグの正面立面図である。
【0009】
図1B】本開示による輸液装置と共に使用可能な、IVボトルの正面立面図である。
【0010】
図1C】本開示による輸液装置と共に使用可能な、薬剤充填済み無針注射器及びバイアルの正面立面図である。
【0011】
図1D】本開示による輸液装置と共に使用可能な、注入セットの正面立面図である。
【0012】
図2】本開示による輸液装置の、注射器ランジャ及びIVポートの斜視図である。
【0013】
図3A】部分的にロックされた予混合構成にある、本開示による輸液装置の一構成の斜視図である。
【0014】
図3B図3Aの切断線3B~3Bに沿って取られた、図3Aの輸液装置の断面立面図である。
【0015】
図3C図3Aの切断線3C~3Cに沿って取られた、図3Aの輸液装置の部分断面立面図である。
【0016】
図3D図3Aの切断線3D~3Dに沿って取られた、図3Aの輸液装置の断面立面図である。
【0017】
図3E図3Aの切断線3E~3Eに沿って取られた、図3Aの輸液装置の断面の底面立面図である。
【0018】
図4A】即時混合可能な(ready-to-mix)構成の、本開示による輸液装置の斜視図である。
【0019】
図4B図4Aの切断線4B~4Bに沿って取られた、図4Aの輸液装置の断面立面図である。
【0020】
図4C図4Aの切断線4C~4Cに沿って取られた、図4Aの輸液装置の部分断面立面図である。
【0021】
図4D図4Aの切断線4D~4Dに沿って取られた、図4Aの輸液装置の断面立面図である。
【0022】
図5A】完全にロックされた、混合後の構成にある、本開示による輸液装置の斜視図である。
【0023】
図5B図5Aの切断線5B~5Bに沿って取られた、図5Aの輸液装置の断面立面図である。
【0024】
図5C図5Aの切断線5C~5Cに沿って取られた、図5Aの輸液装置の部分断面立面図である。
【0025】
図5D図5Aの切断線5D~5Dに沿って取られた、図5Aの輸液装置の断面立面図である。 本開示の詳細な説明
【発明を実施するための形態】
【0026】
特定の専門用語は、便宜上、以下の説明において使用され、限定するものではない。「下方の」、「底部の」、「上方の」及び「上部の」という語は、参照する図面の方向を示す。「内向きに」、「外向きに」、「上方に」、及び「下方に」という語は、本開示による輸液装置の幾何学的中心及びその指定部分に、向かう方向及びそれから離れる方向を指す。本明細書に具体的に記載されない限り、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、1つの要素に限定されるものではなく、代わりに、「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。用語は、上記の単語、その派生語、及び同様の意味の語を含む。
【0027】
本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、本開示の構成要素の寸法又は特性を指すときに使用され、記載された寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に類似しているそれらからのわずかな変動を除外しないことを示すことも理解されたい。最低限、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において認められている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、少なくとも有意な桁は変化しない。
【0028】
全体を通して同様の符号が同様の要素を示している、図面を詳細に参照すると、図2図5Dには、注入液を含有する注入液容器と添加剤移送装置との組み合わせと共に使用することを意図した、輸液装置30の構成を示す。図示される実施形態では、輸液装置30は、注入液バッグ10(図1A)の形態の注入液容器と共に使用することを意図している。当業者には理解されるように、従来の注入液バッグ10は、静脈内(intravenous、IV)又は投与ポート14及び添加剤ポート16と流体連通する、注入液を含有するリザーバ12を含む。注入液バッグ10は、注入液を注入液バッグから投与すると圧潰可能である。輸液装置30は、しかしながら、注入液ボトル18(図1B)などの形態の注入液容器と共に使用することを意図する、異なる構成をとることもできる。図示された実施形態の輸液装置30はまた、封止されたバイアル20(図1C)の形態の添加剤輸送装置と共に使用することも意図されている。バイアル20は、一般に、患者への投与前に再構成を必要とする、すなわち、患者に投与される薬剤注入液を形成するためにバッグ10内の注入液との混合を必要とする、薬剤液体添加剤又は凍結乾燥粉末薬剤を含有する。したがって、バイアル20の内容物は、(以下に更に詳細に記載されるように)輸液装置30を介して注入液バッグ10に導入される。ただし、輸液装置30は、注射器22(図1C)と共に使用することを意図した異なる構成をとることもできる。
【0029】
輸液装置30は、三叉状コネクタ本体32を含む。図示された構成では、三叉状コネクタ本体32は、その第1の端部にバレル34、その第2の端部にIVスパイク36、及びその第3の端部にバイアルアダプタ38を含むが、本開示はそのように限定されない(以下で更に記載するように)。バレル34は、プランジャ40を摺動可能に受容するための開放近位端34bを有する内部チャンバ34aを画定する(以下で更に説明する)。三叉状本体32の第2の端部にあるIVスパイク36は、輸液装置30を注入液バッグ10と共に使用する、すなわち、バッグ10のIVポート14内にIVスパイク36を封止的に挿入することを可能にする。IVスパイク36は、例えばポリカーボネートなどの適切な剛性金属、ポリマー又はプラスチック材料から作製され得る。図3B図3C図4B図4C図5B及び図5Cに最もよく示されるように、IVスパイク36は、バレル34と共方向であり、チャンバ34aと流体連通する内部液体ルーメン36aを含む。遠位開口部36bは、そのスパイク端部36cに近接して周辺に配設される。フランジ33は、バッグ10のIVポート14への挿入深さを制限するために、その対向する端部に近接してIVスパイク36から横方向に延在する。一実施形態では、バレル34は、射出成形されたモノリシック構造体としてフランジ33と一体的に形成されるが、本開示はそのように限定されない。スパイクキャップ35(図3D)は、IVスパイク36が使用されていないときに、取り外し可能にIVスパイク36を覆うことができる。
【0030】
バイアルアダプタルーメン37は、IVスパイクルーメン36aから角度的に分岐し、すなわち、分枝され、バイアルアダプタ38に繋がる。バイアルアダプタ38はバイアル20上に取り付けられて、バイアル20の形態の添加剤移送装置を用いて装置30を使用できるように構成されている。図示された構成では、バイアルアダプタ38はコネクタ本体32の第3の端部に一体的に形成されるが、本開示はそのように限定されない。バイアルアダプタ38は、バイアル20上に(標準的な方法で)入れ子式のスナップ嵌めを取り付けるための可撓性スカート38aと、バイアル瓶20を、例えばその栓を通って穿刺してバイアル20と流体連通する、カニューレ38bとを含む。穿刺カニューレ38bは、バイアルアダプタルーメン37と流体連通し、ひいてはIVスパイクルーメン36aと流体連通するルーメン38cを含む。
【0031】
図2に最も良く示されるように、プランジャ40は、バレルチャンバ34a内に配置された横断方向のピストン面42を含み(図3B図3C図4B図4C図5B及び図5C)、バレルチャンバ34aの内側側壁に形状が相補的であり、側壁と実質的に気密であるシールを作成しながら、その中で摺動することを可能にする。プランジャロッド44は、ピストン面42からIVスパイクルーメン36aへと遠位に延在する。直立プランジャチューブ46は、ピストン面42から近位方向に突出し、その内部にプランジャルーメン46aを有し、かつ開放端部48aを有する棘付き嵌合部材48で終端する。
【0032】
IVポート50は、棘付き嵌合部材48を介してプランジャチューブ46と流体接続される。図2図3A図3D図4A図4D図5A、及び図5Dに最もよく示されるように、IVポート50は、ポート50の周辺の自由近位端に近接するツイストオフ部材50aと、ツイストオフ部材50aから遠位に突出し、内部ルーメン52aを有しこれを通って延在し、開放端52c(ツイストオフ部材50aから対向する端部)で終端する、細長い接続部材52とを含む。IVポート50の内部ルーメン52aは、プランジャルーメン46aと共方向に延在する。一実施形態では、IVポート50は、例えばPVCなどの適切な可撓性ポリマー又はプラスチック材料から作製されてもよい。IVポート50は、細長い接続部材52内に配置された隔壁50bを含み(図3B図4B図5Bを参照)、ルーメン52aを横切って封止する。したがって、ツイストオフ部材50aは、隔壁50bを越えて流体連通することなく除去され得る。隔壁50bを越えた流れ連通、すなわち、プランジャルーメン46aとの及びそれを超えた流れ連通は、隔壁50bを完全に貫通する場合にのみ達成される(以下に更に詳細に記載される)。ツイストオフ部材50aは、使用するまで隔壁50bを無菌状態に保つ。
【0033】
棘付き嵌合部材48は、細長い接続部材52の内径及び材料に対して、開放端52cを通って内部ルーメン52a内に前進し、それらの間に嵌合する有棘、摩擦、すなわち干渉を形成するように、すなわちサイズ、寸法、材料が構成される。当業者には理解されるように、棘付き嵌合部材48は、その内部ルーメン52a内への前進を可能にし、プランジャチューブ46上に、IVポート50を共方向に封止的かつ確実に取り付ける。また、細長い接続部材52及び棘付き嵌合部材48のうちの少なくとも1つを損傷することなく、棘付き嵌合部材48の引き抜きを実質的に防止する。すなわち、図示されるように、棘付き嵌合部材48は円錐台形であり、開放端部48aから離れる方向に向かって次第に直径が大きくなる。棘付き嵌合部材48の対向端部は、下にあるプランジャチューブ46からのより大きな直径を画定し、その結果、細長い接続部材52から棘付き嵌合部材48を引き抜こうとすると細長い接続部材52の内側側壁に食い込む、環状リブ48bをもたらす。したがって、棘付き嵌合部材48は、組み立て中に細長い接続部材52の内部ルーメン52aに前進可能であり、その後、損傷を引き起こすことなく容易に引き抜かれることはできない。
【0034】
図2に最も良く示されるように、その開放端部52cを画定する細長い接続部材52のリムは少なくとも1つの切り欠き52dを含み、プランジャチューブ46は、プランジャチューブ46の外周に沿って対応する少なくとも1つのリブ46bを含み、対向する切欠き52dと嵌合するように構成されている。図示される実施形態では、リブ46bは細長いが、代替的にタブなどの形態をとってもよい。図示される実施形態では、細長い接続部材52は、複数の角度的に離間された切り欠き52dを含み、プランジャチューブ46は、対応する複数の角度的に離間されたリブ46bを含む。リブ46bは、棘付き嵌合部材48上にIVポート50を取り付けている間に切り欠き52dと嵌合して、プランジャチューブ46に対して、それにより輸液装置30の残りの部分IVポート50に対して、棘付き嵌合部材48を封止的かつ回転して固定する。しかしながら、当業者には理解されるように、IVポート50は、追加的に又は代替的に、プランジャチューブ46に接着結合(又は同様に)されてもよい。
【0035】
IVスパイク36とプランジャ40との間の関係を見ると、IVスパイクルーメン36aは、フランジ33に近接して遠位開口部36bまで延在する、少なくとも1つの細長い溝付きチャネル36d(図3E)を有する概ね円形の断面を画定する(図3C図4C図5Cを参照)。図示される実施形態では、溝付きチャネルは、断面が実質的に半円形/月形であるが、本開示はそのように限定されない。IVスパイクルーメン36a内で摺動可能なプランジャ40のプランジャロッド44は、IVスパイクルーメン36aの断面に対して概ね相補的な断面を画定し、その周囲に、ピストン面42からプランジャロッド44の遠位ヘッド44bまで延在し、IVスパイクルーメン36aの溝付きチャネル36dに面する/対向する、対応する少なくとも1つの細長い溝付きチャネル44aを含む(図3C図3E図4C図5Cを参照)。対向する溝付きチャネル36d及び44aは、相互に囲まれた流体流路45をそれらの間に画定する。したがって、プランジャロッド44は、流体流路45を除いて、IVスパイクルーメン36aの周辺部に実質的に封止係合する。図示される実施形態では、IVスパイクルーメン36aは、直径方向に対向する2つの溝付きチャネル36dを含み、プランジャロッド44は、直径方向に対向する2つの溝付きチャネル44aを含み、これにより、プランジャロッド44とIVスパイクルーメン36aとの間に2つの直径方向に対向する流体流路45を画定するが、本開示は、そのように(流体流路45の数又は直径方向に対向することに)限定されない。フランジ33内の開口部33aは、流体流路45と位置合わせされ、流体流路45をバレルチャンバ34aと流体連通させる。遠位ヘッド44bは、完全に円形の(溝のない)断面を画定する。図3C図4Cに示されるように、流体流路45は、バイアルアダプタルーメン37と位置合わせされていない。したがって、プランジャロッド44は、以下で更に詳細に説明するように、バイアルアダプタルーメン37の開口部37aを、IVスパイクルーメン36aと流体連通して封止することができる。当業者には理解されるように、IVスパイクルーメン36aは、プランジャロッド44がIVスパイクルーメン36aの周辺部に実質的に封止係合している間は、異なる断面形状を画定してもよく、プランジャロッド44も異なる断面形状を画定してもよい。但し、流体流路45及び流体流路45がバイアルアダプタルーメン37と位置合わせされていない場合を除く。
【0036】
図2図3A図3B図3D図4A図4B図4B図5A図5B及び図5Dに示されるように、輸液装置30は、プランジャ40に固定的に装着されたプランジャハンドルアセンブリ54を含む。図示される実施形態では、プランジャハンドルアセンブリ54は、ピストン面42の上面から近位方向に延在し、その自由な近位端にハンドル54aを有する。一実施形態では、プランジャハンドルアセンブリ54は、ピストン面42と一体的に、すなわちモノリシックに形成されるが、本開示はそのように限定されない。図示される実施形態では、プランジャハンドルアセンブリ54は、プランジャチューブ46及びIVポート50と実質的に平行に延在するが、本開示はそのように限定されない。任意選択的に、プランジャハンドルアセンブリ54は、ハンドル54aから横方向に(又はハンドル54aに近接して)延在し、IVポート54と係合する支持体54bを含み、これは例えば、細長い部材52上にスナップ嵌めされるか又は細長い部材52を受けて、プランジャハンドルアセンブリ54の更なる支持を提供する。
【0037】
図3D図4D、及び図5Dに最もよく示されるように、プランジャハンドルアセンブリ54は、プランジャハンドル54a(バレル34の外側)から下向きに(遠位に)突出し、それぞれのフランジ付き端部56aで終端する、平行して延在する一対のアーム56を含む。バレル34は、その開放近位端34bから直立し、ハンドル54aと係合する一対の可撓性指状部34cを含む。バレル34は、アーム56のフランジ付き端部56a間に、その外壁上に位置付けられた停止タブ34eを更に含む。
【0038】
使用中、輸液装置30は、図3A図3Dに示されるように、部分的にロックされた予混合構成でユーザに送達される。予混合構成では、プランジャ40は、ピストン面42が停止タブ34eと実質的に同じ高さになるまで、バレル34内で押し下げられる。この構成では、プランジャ40は、バレル34内の底部に近接しており、送達中に輸液装置30の設置面積が低減される。部分的にロックされた、
予混合構成では、指状部34cは、偏向されていない配向で位置付けられ、ハンドル54aの下側に当接し、ハンドル54a及びプランジャ40の更なるくぼみ(すなわち、完全な押し下げ)を防止する。指状部34cは、ハンドル54aの下側から突出する対応する下向き及び横方向内向きのフック54cと係合する、横方向外側に直接掛止された末端部34dを含む(図3D)。フック54cとフック付き末端部34dとの間の係合は、予混合構成においてプランジャ40を安定化させる(部分的にロックする)。部分的にロックされた予混合構成では、アーム56のフランジ付き末端部は、それらの間に位置付けられた停止タブ34eに当接する。
【0039】
部分的にロックされた予混合構成では、輸液装置30は、IVスパイク36を介して(前述のように)注入液バッグ10に連結され、バイアルアダプタ38を介して(前述のように)バイアル20と連結されてもよい。その後、図4A図4Dに示されるように、ユーザは、プランジャ40を、ハンドル54を介して(注入液バッグ10から離れる方向に)引き抜く。プランジャ40の引き抜きは、引き抜き中にフック54cが指状部34cを横方向内側に(互いに向かって)偏向させ、そこから摺動可能に外れるように、十分な力で実施される必要がある。プランジャ40は、停止機構に到達すると完全に引き抜かれ、バレル34からのプランジャ40の不注意による取り外しを防止する。図示される実施形態では、停止機構は、バレル34からその開放端部34bに隣接して横方向に延在する、壁57を含む(図3A、4A、5Aを参照)。図4Dに最もよく示されるように、壁57は、平行して延在する一対のアーム56がこれを通って摺動可能となるように、かつフランジ付き末端部56aがこれを通ることを阻止するように寸法決めされた、開口部57aを含む。したがって、プランジャ40は、フランジ付き末端部56aと壁57の下側との接触時に、更に引き抜きかれないよう停止される。しかしながら、理解されるように、停止機構は、現在既知の他の形態をとることができるか、又は、本明細書に記載される停止機構の同じ機能を実行することができる他の形態をとることができる。
【0040】
IVスパイク開口部36bがバッグ10内の注入液に浸漬された状態でプランジャ40が引き抜くと、流体が、バッグ10から開口部36bを通って、流体流路45を通って、すなわち、対向する溝付きチャネル36dと44aとの間を通って、かつ開口部33aを介して、バレルチャンバ34aに引き込まれる。当業者には理解されるように、プランジャ40を引き抜くと、バレルチャンバ34a内に真空が生成され、注入液バッグ10に対して圧力差がもたらされ、これによって流体がバレルチャンバ34a内に引き込まれる。図3C図4C、及び図5Cに最もよく示されるように、軸受筒58が、フランジ33の下側に隣接するIVスパイクルーメン36a内に位置付けられる。軸受筒58の外周は、IVスパイクルーメン36aの外縁と封止するように構成される(サイズ決定され、成形され、寸法決めされる)。軸受筒58の内部開口部は、プランジャロッド44の摺動を可能にし、かつプランジャ40が完全に引き抜かれたときにプランジャロッド44の遠位ヘッド44bと中間ばめまたは圧入によって係合するように構成される(サイズ決定され、成形され、寸法決めされる)。バレル34、IVスパイク36、プランジャロッド44、及び軸受筒58の長さは、プランジャ40の完全な引き抜きが、プランジャロッド44の遠位ヘッド44bと軸受筒58との係合と一致するように、停止機構の位置と組み合わされて構成されている(図4C)。これにより、プランジャロッド44の細長い溝付きチャネル44aを、IVスパイクルーメン36aの細長い溝付きチャネル36dから密封し、次いで、注入液をバレルチャンバ34a内に封止する。
【0041】
前述したように、流体流路45は、バイアルアダプタルーメン37と位置合わせされず、プランジャロッド44は、プランジャ40の引き抜き中に流体が実質的にバレルチャンバ34aにのみ流入することができるように、バイアルアダプタルーメン37の開口部37aがIVスパイクルーメン36aと流体連通することから封止する。プランジャ40の完全に引き抜かれた位置に到達した時点で、輸液装置30は、即時混合可能な位置にある。図4B及び図4Cに示すように、即時混合可能な位置では、プランジャロッド44の遠位ヘッド44bは、バイアルアダプタルーメン37の開口部37aの近位に位置する。すなわち、完全に引き抜かれた位置に到達すると、プランジャロッド44は、バイアルアダプタルーメン開口部37aをクリアし、それによって、リザーババレル34aを封止しながら、バイアルアダプタルーメン37をIVスパイクルーメン36aと流体連通させる。
【0042】
即時混合可能な位置では、注入液バッグ10内の内容物は、流体接続されたバイアルアダプタルーメン37及びIVスパイクルーメン36aを介して、バイアル20内の内容物と流体接続されかつ混合可能/組み合わせ可能である。次いで、注入液バッグ10内の内容物を、(薬剤注入液を作製するために)バイアル20内の内容物と混合及び/又は混合する。バイアル20が凍結乾燥された粉末薬剤を含有する場合、注入液バッグ10を圧搾して液体を注入液バッグ10からバイアル20に押し込むことによって、薬物を再構成することができる。
【0043】
注入液バッグ10内の内容物とバイアル20内の内容物を混合して/組み合わせて、組み合わされた液体が注入液バッグ10内に流入するように輸液装置30を配向させた後、プランジャ40は、完全にロックされた混合後の構成に完全に押し下げられる(図5A図5Dに示されるように)。プランジャ40を(ハンドル54aを介して)押し下げることにより、プランジャロッド44の遠位ヘッド44bを軸受筒58から外し、プランジャロッド44の細長い溝付きチャネル44aをIVスパイクルーメン36aの細長い溝付きチャネル36dに再接続して、バレルチャンバ34aとIVスパイクルーメン36aとを流体連通させ、再びバイアルアダプタルーメン開口部37aがIVスパイクルーメン36aと流体連通することから封止する。ピストン面42は、バレルチャンバ34a内の流体を押し出し、流体はIVスパイクルーメン36aを通って遠位開口部36bから出てくる。したがって、有利には、注入液バッグ10内の内容物とバイアル20の内容物を混合した後、バイアルアダプタルーメン37内の、実質的に残った任意の未混合の薬剤液体添加剤又は再構成されていない凍結乾燥粉末薬剤は封止され、IVスパイクルーメン36a内の、実質的に残った任意の未混合薬剤液体添加剤又は再構成されていない凍結乾燥粉末薬剤はルーメン36aから洗い流され、注入液バッグ10内にバレルチャンバ34a内の流体によって混合される。
【0044】
プランジャ40を押し下げる間、ハンドル54aの下側から突出する横方向内側に向けられたフック54cは、指状部34cの外側に直接掛止された末端部34dに再び係合し、指状部34cを横方向外側に(互いから離れる方向に)偏向させ(図5Dを参照)、これにより、指状部34cがハンドル54aの下面に当接することが阻まれ、プランジャ40の完全な押下が可能になる。プランジャ40が完全に押下されると(図5B図5Cを参照)、ピストン面42は、バレルチャンバ34a内の底面に達し、プランジャハンドルアセンブリ54は、ロック機構を介して混合後構成に完全にロックされる。図示される実施形態では、ロック機構は、プランジャ40が押下されると、アーム56のフランジ付き端部56aと介在する停止タブ34eとの間の接触によって作動される。フランジ付き端部56a及び停止タブ34eは、停止タブ34eが(プランジャ40の押下の間に)アーム56を互いから離れる方向に偏向させて停止タブ34eを超えるようにし、かつその後、フランジ付き端部56aが停止タブ34eの周りに跳ね返って(図5D)停止タブ34eの下側に掛止するように構成される。フランジ付き端部56aが停止タブ34eの下側に掛止すると、プランジャ40は完全にロックされ、すなわち、プランジャ40は、停止タブ34e、アーム56、又は輸液装置30の別の構成要素に損傷を与えることなく引き抜くことはできない。しかしながら、当業者には理解されるように、現在既知であるか又は後に既知となる他のロック機構が、本明細書に記載されるロック機構の機能を実施するのに採用され得る。
【0045】
図5Cに最も良く示されるように、ピストン面42は、フランジ33内の開口部33aと位置合わせされた少なくとも1つの開口部42aを含む。したがって、輸液装置30の完全にロックされた混合後構成では、プランジャルーメン46aは、開口部42a及び開口部33aを介してIVスパイクルーメン36aと流体連通している(前述のように、バイアルアダプタルーメン37は封止されている)。混合後構成では、ツイストオフ部材50aは除去され、内部ルーメン52aへのアクセスを提供する。その後、注入セット95のIVスパイク96(図1D)は、内部ルーメン52a内に封止的に挿入され、隔壁50bを貫通し、それによって、IVスパイク96を隔壁50aを越えて内部ルーメン52aの任意の残り部と流体接続し、次いで、医療用注入液を患者に投与するために、プランジャルーメン46a及びIVスパイクルーメン36aと流体接続する。従来、注入セット30は、第1のチューブ97a、クランプ97b、ドリップチャンバ97c、第2のチューブ97d、ローラークランプ97e、及び患者への流体投与を制御するための雄ルアーコネクタ97fを追加的に含む。
【0046】
当業者は、その広範な発明概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更を行うことができることが理解されるであろう。例えば、三叉状コネクタ本体32は、その第2の端部に(注入液ボトル18と共に使用するための)バイアルアダプタ、及び/又はその第3の端部に、通常は閉じた(normally closed、NC)無針添加ポート(図示せず)を、(注射器22又はバイアル20と共に使用するか選択し得るために)含むことができる。これは、「Needleless Additive Control Valve」と題された米国特許第8,551,067号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の実施例として、バイアルアダプタ38は、手動で操作される係止コックなどに置き換えてもよい。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲で説明される本開示の趣旨及び範囲内の変更を網羅することが意図されることが理解される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D