(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】皮膚美白活性を持つペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20230523BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230523BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230523BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230523BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K8/64
A61Q19/02
A61K38/08
A61P17/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077557
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2020508339の分割
【原出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101880
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ミ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンディ・キム
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508488(JP,A)
【文献】特表2019-524635(JP,A)
【文献】特表2018-513114(JP,A)
【文献】特表2017-536375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドのN-末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択されるいずれか一つの保護基と結合されたものである請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドのC-末端は、アミノ基(-NH
2)、三級アルキル基及びアジド基(-NHNH
2)からなる群から選択されるいずれか一つの保護基と結合されたものである請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、下記の特性から選択されるいずれか一つ以上を示すものである請求項1に記載のペプチド:
(a)メラニン生成の抑制;
(b)チロシナーゼ活性の抑制;及び
(c)Rab27a、Mlph、myosin VA、MITF、チロシナーゼ、またはTRP1発現の抑制。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含む皮膚美白用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の皮膚美白用組成物を含む化粧料組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の皮膚美白用組成物を含むメラニン色素過多沈着疾患の予防または治療用の薬剤学的組成物。
【請求項8】
前記メラニン色素過多沈着疾患は、シミ、そばかす、老人性色素斑、または日光黒色腫である請求項7に記載の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚美白活性を持つペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚色を決定する因子としては、基本的に人種と地域、性別、年齢による差を除けば、シミ、そばかす、および紫外線露出による日焼けがあり、その他にも全体的な色素沈着、にきび、傷、角質の分布状態と血液の循環、ストレス、および健康状態などがある。前記の因子のうち色素沈着は、皮膚の色を定める主要な因子として知られている。
【0003】
皮膚の色に影響を与える色素としては、メラニン、メラノイド、カロチン、ヘモグロビン、およびカロチノイドなどがあり、皮膚、毛髪及び目の多様な色がこれら色素によって決定される。これらのうち皮膚色を決定する最も重要な色素はメラニンであって、具体的に、メラニンの量及び分布によって色が決定される。メラニンは、皮膚表皮の下にメラニン形成細胞と呼ばれる細胞で生成され、皮膚の新陳代謝によって角質表面に移動して離れる。皮膚の色にかかわらずメラニン形成細胞の数はほとんど同一であるが、但し、メラニンの生成量及び種類、分布が異なるため、皮膚の色に差がある。
【0004】
皮膚でチロシンがチロシナーゼという人体酵素によってドーパ(DOPA)に転換され、続く一連の酸化過程を通じて最終的に黒褐色の重合体であるメラニンが生成される。メラニンが必要以上に多く生じれば、シミやそばかす、ほくろなどの過色素沈着症を引き起こして美容上に良くない結果をもたらす。一方、最近レジャー人口の増加によって外部で活動することを楽しむ人々が多くなりつつ、紫外線によるメラニン色素沈着を防ごうとする要求が増えている実情である。
【0005】
このような技術的背景下で、メラニン形成細胞の活性阻害、チロシナーゼの活性阻害などのメカニズムを通じて、過度なメラニン生成を阻む美白剤の開発についての多角的な研究が進められているが(韓国公開特許第10-2019-0109722号)、まだ不備な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを提供することである。
【0007】
他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む皮膚美白用組成物を提供することである。
【0008】
さらに他の様相は、前記皮膚美白用組成物を含む化粧料組成物を提供することである。
【0009】
さらに他の様相は、前記皮膚美白用組成物を含むメラニン色素過多沈着疾患の予防または治療用の薬剤学的組成物を提供することである。
【0010】
本出願の他の目的及び利点は添付した特許請求の範囲及び図面と共に下記の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野または類似した技術分野内で当業者であれば、十分に認識して類推できるために、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本出願の範ちゅうに属する。また、下記の具体的な敍述によって本出願の範ちゅうが制限されるとはいえない。
【0012】
一様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0013】
本明細書で使われる用語「ペプチド」は、ペプチド結合によってアミノ酸残基が互いに結合して形成された線形の分子を意味する。前記ペプチドは当業界で公知の化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phase synthesis techniques;Merrifield、J.Amer.Chem.Soc.85:2149-54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd.ed., Pierce Chem.Co.:Rockford,111(1984))または液相合成技術(US登録特許第5,516,891号)によって製造される。本発明者らは、生物学的に有効な活性を持つペプチドを開発しようと鋭意努力した結果、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを究明した。ここで、前記生物学的に有効な活性は、(a)メラニン生成の抑制、(b)チロシナーゼ活性の抑制、及び(c)Rab27a、Mlph、myosin VA、MITF、チロシナーゼ、またはTRP1の発現抑制などの特性から選択されるいずれか一つ以上を示すものである。よって、前記ペプチドは、皮膚美白のための用途、メラニン色素過多沈着疾患の予防または治療のための用途として活用される。
【0014】
前記ペプチドは、化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸水性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトル)、減少した抗原性を獲得するために、ペプチドのN-またはC-末端に保護基が結合してもいる。一具体例において、前記ペプチドのN-末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択されるいずれか一つの保護基と結合され、及び/または前記ペプチドのC-末端は、アミノ基(-NH2)、三級アルキル基及びアジド(-NHNH2)からなる群から選択されるいずれか一つの保護基と結合される。また、前記ペプチドは選択的に、標的化配列、タグ、標識された残基、半減期またはペプチド安定性を高めるための特定の目的で製造されたアミノ酸配列もさらに含む。
【0015】
本明細書で使われる用語「安定性」は、生体内のタンパク質切断酵素の攻撃から前記ペプチドを保護する生体内の安定性だけではなく、保存安定性(例えば、常温保存安定性)も意味する。
【0016】
他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む化粧料組成物、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む薬剤学的組成物、及び化粧料または薬剤学的組成物を製造するか、または化粧料または薬剤学的組成物として使うための配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチドの用途を提供する。
【0017】
他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む皮膚美白用組成物を提供する。
【0018】
前記ペプチドについての説明で言及された用語または要素のうち、既に言及されたものと同じものは、前述した通りである。
【0019】
本明細書で使われる用語「皮膚美白」は、メラニン色素の合成を阻害することで皮膚トーンを明るくするだけではなく、紫外線、ホルモンまたは遺伝に起因した皮膚の色素過多沈着を改善するものとして解釈される。ここで、前記皮膚の色素過多沈着は、そばかす、シミ、高齢者の黒色ほくろ、茶色の斑点や肝班などを含むが、これに制限されるものではない。
【0020】
本明細書で使われる用語「改善」は、状態の緩和または治療に係るパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも低減させるすべての行為を意味する。
【0021】
従来の機能性ペプチドは、有効な生物学的活性にもかかわらず、ペプチド自体のサイズのため、標的組織または細胞に効果的に流入されないか、または半減期が短くて短期間に体内で消滅するという短所を示す。一方、一実施形態による美白用組成物は、10個以下のアミノ酸からなるペプチドを有効成分として含み、これによって、有効成分の皮膚浸透率などが非常に優秀であり、例えば、局所的に皮膚に塗布する場合、有効な皮膚美白効果を得る。
【0022】
一実施形態によれば、前記ペプチドは、メラニンの生成及びチロシナーゼの活性を有意的に抑制する。また、前記ペプチドは、メラニンの生成に係る因子であるRab27a、Mlph、myosin VA、MITF、チロシナーゼ、またはTRP1の発現を抑制する。よって、前記ペプチドは、皮膚美白用化粧料組成物の有効成分として活用される。
【0023】
さらに他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む皮膚美白用組成物を提供する。
【0024】
前記ペプチドについての説明で言及された用語または要素のうち、既に言及されたものと同じものは前述した通りである。
【0025】
前記化粧料組成物は、前記ペプチドの化粧品学的有効量、及び/または化粧品学的に許容される担体を含むものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0026】
本明細書で使われる用語「化粧品学的有効量」は、前記化粧料組成物の皮膚美白効能を達成するのに十分な量を意味する。
【0027】
前記ペプチド及び化粧品学的に許容される担体の重量比は、例えば、500:1ないし1:500であり、一例として、前記重量比は、450:1ないし1:450、400:1ないし1:400、350:1ないし1:350、300:1ないし1:300、250:1ないし1:250、200:1ないし1:200、150:1ないし1:150、100:1ないし1:100、80:1ないし1:80、60:1ないし1:60、40:1ないし1:40、20:1ないし1:20、10:1ないし1:10、8:1ないし1:8、6:1ないし1:6、4:1ないし1:4、または2:1ないし1:2であるが、これに制限されるものではない。
【0028】
前記化粧料組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤型にも製造され、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション及びスプレーなどに剤型化されるが、これに制限されるものではない。例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォータ、パック、スプレーまたはパウダーの剤型に製造される。
【0029】
前記化粧料組成物の剤型がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが用いられる。
【0030】
前記化粧料組成物の剤型がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはポリアミドパウダーが用いられ、例えば、スプレーである場合には、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどの推進体を含む。
【0031】
前記化粧料組成物の剤型が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルを含む。
【0032】
前記化粧料組成物の剤型が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エチルアルコールまたはプロピレングリコールなどの液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁液剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラカントなどが用いられる。
【0033】
前記化粧料組成物の剤型が界面-活性剤含有のクレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコール硫酸、脂肪族アルコールエーテル硫酸、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテル硫酸、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられる。
【0034】
前記化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのペプチドと担体成分以外に、化粧料組成物に通常的に用いられる成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料などの通常的な補助剤を含む。
【0035】
さらに他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む化粧料組成物を、個体の皮膚に塗布する段階を含む、皮膚美白方法を提供する。
【0036】
前記化粧料組成物についての説明で言及された用語または要素のうち、既に言及されたものと同じものは前述した通りである。
【0037】
本明細書で使われる用語「適用する」、「投与する」、及び「塗布する」は、相互交換的に使われ、一実施形態による組成物の所望の部位での少なくとも部分的局所化をもたらすこと、または投与経路によって個体内に一実施形態による組成物を配置することを意味する。
【0038】
さらに他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、メラニン色素過多沈着疾患の予防または治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0039】
前記ペプチドについての説明で言及された用語または要素のうち、既に言及されたものと同じものは前述した通りである。
【0040】
本明細書で用語「予防」は、前記組成物の投与で疾病の発病を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0041】
本明細書で用語「治療」は、疾病を患うか、または発病の危険がある個体に、前記個体の状態(例えば、一つ以上の症状)の改善、疾病進行の遅延、症状発生の遅延または症状進行の鈍化などを含む効果を提供する任意の形態の治療を意味する。よって、前記「治療」及び「予防」は、症状の治癒または完全な除去を意味するように意図されない。
【0042】
前記「個体」は、疾病の治療を要する対象を意味し、さらに具体的には、ヒトまたはヒトではない霊長類、マウス、犬、猫、馬、及び牛などの哺乳類を意味する。
【0043】
前記薬剤学的組成物による予防または治療対象疾病である「メラニン色素過多沈着疾患」は、メラニン色素が過多に生成されて皮膚に沈着する疾患を総称するものであり、例えば、シミ、そばかす、老人性色素斑、または日光黒色腫(solar lentigines)であるが、これに制限されるものではない。
【0044】
前記薬剤学的組成物は、前記ペプチドの薬剤学的有効量(pharmaceutically effective amount)、及び/または薬剤学的に許容される担体を含むものであるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本明細書で使われる用語「薬剤学的有効量」は、前記薬剤学的組成物のメラニン色素過多沈着疾患の予防または治療効能を果たすのに十分な量を意味する。
【0046】
前記ペプチド及び薬剤学的に許容される担体の重量比は、例えば、500:1ないし1:500であり、一例として、前記重量比は、450:1ないし1:450、400:1ないし1:400、350:1ないし1:350、300:1ないし1:300、250:1ないし1:250、200:1ないし1:200、150:1ないし1:150、100:1ないし1:100、80:1ないし1:80、60:1ないし1:60、40:1ないし1:40、20:1ないし1:20、10:1ないし1:10、8:1ないし1:8、6:1ないし1:6、4:1ないし1:4、または2:1ないし1:2であるが、これに制限されるものではない。
【0047】
前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、燐酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。好適な、薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0048】
前記薬剤学的組成物は、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などをさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0049】
前記薬剤学的組成物は、経口または非経口、望ましくは、非経口で投与でき、非経口投与である場合には、筋肉注入、静脈内注入、皮下注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などで投与できるが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記薬剤学的組成物の投与量は、1日当り0.0001ないし1000ug(マイクログラム、0.001ないし1000ug、0.01ないし1000ug、0.1ないし1000ug、または1.0ないし1000ugであるが、これに制限されるものではなく、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性などの要因によって多様に処方される。
【0051】
前記薬剤学的組成物は、当業者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することで、単位容量の形態に製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造される。
【0052】
前記剤型は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤及び/または安定化剤をさらに含む。
【0053】
さらに他の様相は、治療学的有効量の配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む薬剤学的組成物を個体に投与する段階を含む、メラニン色素過多沈着疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0054】
前記薬剤学的組成物についての説明で言及された用語または要素のうち、既に言及されたものと同じものは、前述した通りである。
【0055】
さらに他の様相は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む皮膚美白用食品組成物を提供する。
【0056】
前記ペプチドについての説明で言及された用語または要素のうち、既に言及されたものと同じものは、前述した通りである。
【0057】
前記食品組成物に含有されている有効成分としてのペプチドの含量は、食品の形態、所望の用途などによって適当に非制限的に選択され、例えば、全体食品重量の0.01ないし15重量%で添加できる。さらに、例えば、健康飲料組成物は、100mlを基準として0.02ないし10g、望ましくは0.3ないし1gの割合で添加できる。
【発明の効果】
【0058】
一様相によるペプチドによれば、メラニンの生成及びチロシナーゼ活性を有意的に抑制するだけではなく、メラニン生成関連因子の発現を抑制することで、優れた皮膚美白効果を示す。
【0059】
一様相によるペプチドによれば、メラニンの生成及びチロシナーゼ活性を有意的に抑制するだけではなく、メラニン生成関連因子の発現を抑制することで、皮膚のメラニン色素過多沈着疾患を緩和または改善するところに適用できる。
【0060】
よって、一様相によるペプチドは、皮膚美白用組成物またはメラニン色素過多沈着疾患の予防または治療用の薬剤学的組成物の有効成分として活用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニンの生成減少を確認した結果を示す図面である。
【
図2】配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニンの生成減少を確認した結果を示す図面である。
【
図3】配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニンの生成減少を確認した結果を示す図面である。
【
図4】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、チロシナーゼの活性減少を確認した結果を示す図面である。
【
図5】配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、チロシナーゼの活性減少を確認した結果を示す図面である。
【
図6】配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、チロシナーゼの活性減少を確認した結果を示す図面である。
【
図7】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニン生成関連遺伝子であるRab27a、myosin VA、MITF、TRP1、及びチロシナーゼの発現抑制を確認した結果を示す図面である。
【
図8】配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニン生成関連遺伝子であるMlph、MITF、及びチロシナーゼの発現抑制を確認した結果を示す図面である。
【
図9】配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニン生成関連遺伝子であるRab27a、myosin VA、Mlph、MITF、チロシナーゼ、及びTRP1の発現抑制を確認した結果を示す図面である。
【
図10】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニン生成関連タンパク質であるMlph、チロシナーゼ、及びMITFの発現抑制を確認した結果を示す図面である。
【
図11】配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニン生成関連タンパク質であるチロシナーゼ、TRP-1、及びMITFの発現抑制を確認した結果を示す図面である。
【
図12】配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをB16F10細胞に添加した後、メラニン生成関連タンパク質であるMlph、Rab27a、チロシナーゼ、及びMITFの発現抑制を確認した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
<実施例1> ペプチドの合成
自動ペプチド合成器(Milligen 9050,Millipore、アメリカ)を用いて、下記の[表1]に記載の配列番号1のアミノ酸配列を持つペプチドを合成し、C18逆相の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)(Waters Associates、アメリカ)を用いて、これらの合成されたペプチドを純水分離した。カラムは、ACQUITY UPLC BEH300 C18(2.1mmX100mm,1.7um,Waters Co、アメリカ)を用いた。
【0064】
【0065】
<実施例2> メラニン生成抑制効果の確認
マウス黒色腫細胞であるB16F10細胞を6-ウェルプレートに、5×104 cells/wellの密度でシーディングした後、これを16時間培養した。次いで、培養培地を、2%血清の含まれている培地に入れ替えた後、これに、メラニンの生成を促進するために、200ng/mlのα-MSH(α-melanocyte-stimulating hormones)を添加し、これと共に、配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドそれぞれを10μM、50μM、100μM、または200μMで添加した後、これを72時間培養した。次いで、培養された細胞を1NのNaOHで溶解させた後、450nmでの吸光度を測定した。一方、対照群として、未処理群(Con)を使い、陰性対照群として、α-MSHのみを添加した群、陽性対照群として、皮膚美白剤として知られているArbutin(200μM、500μM)及びα-MSHを添加した群を使った。
【0066】
その結果、
図1ないし
図3に示したように、配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、濃度依存的にメラニンの生成が減少したということが分かった。
【0067】
<実施例3> チロシナーゼ活性抑制効果の確認
マウス黒色腫細胞であるB16F10細胞を6-ウェルプレートに、5×104 cells/wellの密度でシーディングした後、これを16時間培養した。次いで、培養培地を、2%血清の含まれている培地に入れ替えた後、これに200ng/mlのα-MSHを添加し、これと共に、配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドそれぞれを1μM、10μM、20μM、40μM、60μM、80μM、または160μMで添加した後、これを72時間培養した。氷の上に前記6-ウェルプレートを位置させ、冷たいPBSで洗浄した後、これに1% triton X-100が含有されている0.1Mリン酸ナトリウムバッファ(pH6.8、溶解バッファ)を添加して、細胞を溶解させた。次いで、前記ウェルプレートに存在する細胞を破壊して1.5mlのチューブに集めた後、これを撹拌し、15,000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を得た。次いで、上澄み液内のタンパク質を定量して、一定量のタンパク質が含まれるように調整した後、これにバッファを添加し、総90ulの試料を96-ウェルプレート上に分注した。また、前記プレートで、実験試料、Blank試料、陽性対照群の試料は、下記の表2に示したように用意した。
【0068】
【0069】
次いで、それぞれの試料に20μLの10mML-DOPAを添加した後、37℃で1時間培養後、475nmでの吸光度を測定した。一方、対照群として、未処理群(Con)を使い、陰性対照群として、α-MSHのみを添加した群、陽性対照群として、Arbutin(200μM、500μM)及びα-MSHを添加した群を使った。
その結果、
図4ないし
図6に示したように、配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、濃度依存的にチロシナーゼ活性が抑制されたということが分かった。
【0070】
<実施例4> メラニン生成関連遺伝子の発現抑制効果の確認
マウス黒色腫細胞であるB16F10細胞を6-ウェルプレートに、5×104 cells/wellの密度でシーディングした後、これを16時間培養した。次いで、培養培地を、2%血清の含まれている培地に入れ替えた後、これに200ng/mlのα-MSHを添加し、これと共に、配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドそれぞれを10μM、50μM、100μM、または200μMで添加した後、これを72時間培養した。前記培養された細胞からmRNAを抽出した後、cDNA synthesis kit&PCR pre-mix(Intron,Korea)を使って、前記抽出されたmRNAを逆転写させることでそれぞれのcDNAを合成した。次いで、前記cDNAとRab27a、Mlph(Melanophilin)、myosin VA、MITF、Tyrosinase、及びTRP1プライマーを使って、重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)を行った。一方、対照群、音声対照群及び陽性対照群は、実施例2と同じ群を使い、本実施例で使ったプライマーのヌクレオチド配列は、下記表3の通りである。
【0071】
【0072】
その結果、
図7に示したように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、メラニン生成関連遺伝子であるRab27a、myosin VA、MITF、TRP1、及びTyrosinaseの発現が抑制されたということが分かった。また、
図8に示したように、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、メラニン生成関連遺伝子であるMlph、MITF、及びTyrosinaseの発現が抑制されたということが分かった。それと共に、
図9に示したように、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、メラニン生成関連遺伝子であるRab27a、myosin VA、Mlph、MITF、Tyrosinase、及びTRP1の発現が抑制されたということが分かった。
【0073】
実施例5.メラニン生成関連タンパク質の発現抑制効果の確認
マウス黒色腫細胞であるB16F10細胞を6-ウェルプレートに、5×104 cells/wellの密度でシーディングした後、これを16時間培養した。次いで、培養培地を、2%血清の含まれている培地に入れ替えた後、これに200ng/mlのα-MSHを添加し、これと共に、配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドそれぞれを10μM、50μM、100μM、または200μMで添加した後、これを72時間培養した。次いで、培養された細胞を溶解した後、Mlph、Rab27a、Tyrosinase、MITF、及びTRP-1に対する抗体(santacruz biotechnology,USA)を使ってウェスタンブロットを行った。一方、対照群、音声対照群及び陽性対照群は、実施例2と同じ群を使った。
【0074】
その結果、
図10に示したように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、メラニン生成関連タンパク質であるMlph、Rab27a、Tyrosinase、及びMITFの発現が抑制されたということが分かった。また、
図11に示したように、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、メラニン生成関連のタンパク質であるTyrosinase、TRP-1、及びMITFの発現が抑制されたということが分かった。それと共に、
図12に示したように、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドの添加によって、メラニン生成関連タンパク質であるMlph、Rab27a、Tyrosinase、及びMITFの発現が抑制されたということが分かった。
【0075】
前記実験結果を総合すれば、一実施形態による配列番号1、2、または3のアミノ酸配列からなるペプチドは、皮膚の美白効能を持つということが分かった。
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、当業者ならば、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形できるということを理解できるであろう。よって、以上で述べた実施例はすべて例示的なものであり、限定的なものではないと理解せねばならない。
【配列表】