(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】支援システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230523BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61B5/00 102B
A61B5/16 130
(21)【出願番号】P 2022095035
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2018114384の分割
【原出願日】2018-06-15
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】長岡 浩
(72)【発明者】
【氏名】永易 武
(72)【発明者】
【氏名】前澤 宏暢
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-316915(JP,A)
【文献】特開2017-023671(JP,A)
【文献】特開2011-028583(JP,A)
【文献】特開2011-120874(JP,A)
【文献】特開2011-237856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/16
A61G 12/00
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストサーバと、
前記ホストサーバと通信可能な端末機と
を備える支援システムであって、
前記端末機には、第1使用者及び第2使用者の覚醒信号、呼吸信号、及び心拍信号が入力され、
前記支援システムは、
前記第1使用者の前記覚醒信号を受信した場合、前記第1使用者に対する支援の要否を決定し、
前記第1使用者に対する支援を決定したとき、前記第2使用者の状況に応じて、前記第1使用者に対する
第1支援内容及び
第1支援方法を決定
し、
前記第1使用者に対する前記第1支援内容と前記第2使用者に対する第2支援内容とを一括して支援可能と判断した場合、前記第1支援内容と前記第2支援内容とを一括して支援する、
支援システム。
【請求項2】
前記支援システムは、前記第2使用者が就寝中のとき、前記第2使用者が覚醒時のときよりも音量を小さく設定して前記第1使用者と会話をするよう決定する、
請求項1記載の支援システム。
【請求項3】
前記支援システムは、前記第2使用者の場所を把握し、前記場所に応じて
前記第1支援内容を実行する際に実行される前記第2使用者に対する
前記第2支援内容を決定する、
請求項1または請求項2記載の支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院及び介護施設等では、患者または要介護者等からの呼び出し要求(以下、「ナースコール」と表記する)があると、看護師または介護士等は、要求の内容を確認するために患者または要介護者等の元に駆けつけ、要求に対応する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者の要求及び容体に対応して使用者を支援できる支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る支援システムは、ホストサーバと、ホストサーバと通信可能な端末機とを含む。端末機には、第1使用者及び第2使用者の覚醒信号、呼吸信号、及び心拍信号が入力される。支援システムは、第1使用者の覚醒信号を受信した場合、第1使用者に対する支援の要否を決定し、第1使用者に対する支援を決定したとき、第2使用者の状況に応じて、第1使用者に対する支援内容及び支援方法を決定する。
【発明の効果】
【0006】
本実施形態によれば、支援システムは、使用者の要求及び使用者の容体を確認して支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る支援システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る支援システムにおける端末機の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る支援システムにおける支援動作のフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る支援システムにおける支援動作のフローチャートである。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る支援システムにおける支援動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0009】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る支援システムについて説明する。以下では、例えば病院において、支援システム1が用いられ、支援システム1の端末機30が、入院患者一人につき1台与えられている場合について説明する。なお、支援システム1の端末機30は、複数人、例えば同じ病室に入院している複数の患者に対して1台与えられていてもよい。
【0010】
1.1 支援システムの全体構成
まず、支援システム1の全体構成について、
図1を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、支援システム1は、ホストサーバ10、中継器(AP)20、及び複数の端末機30を含む。
【0012】
ホストサーバ10は,支援システム1全体を制御する。ホストサーバ10は、各端末機30との情報の送受信を司る。ホストサーバ10は、端末機30の稼働状態を管理する。また、ホストサーバ10は、ネットワーク等を介して他の設備との通信を司る。例えば、ホストサーバ10は、ネットワークを介してナースコールの管理システム、クラウドコンピュータ、外部データベース、病院の医療システム、または医療用情報端末機等と通信を行う。
【0013】
中継器20は、例えば、病院等の施設内で複数の端末機30が用いられている場合などに設置され、ホストサーバ10と複数の端末機30との間で通信する際の中継基地として機能する。また、中継器20は、複数の端末機30間で通信する際の中継基地として機能する。なお、例えば、自宅で治療中の患者(以下、「在宅患者」と表記する)が端末機30を使用する場合、端末機30は、中継器20を介さずに、電話回線あるいはネットワーク回線等を介してホストサーバ10と通信を行ってもよい。
【0014】
端末機30は、使用者から取得した生体情報、または使用者との会話により得られた会話情報等に基づいて、使用者の容体及び使用者の要求等を確認し、使用者の支援を行う。
【0015】
1.2 端末機の構成
次に、端末機30の構成について、
図2を用いて説明する。
【0016】
図2に示すように、端末機30は、無線通信回路31、会話スイッチ32、マイクロフォン33、スピーカー34、入力回路35、出力回路36、制御回路37、及びメモリ38を含む。なお、端末機30は、例えば、対話機能を有するロボット等に搭載されていてもよい。
【0017】
無線通信回路31は、入力回路35及び出力回路36に接続され、ホストサーバ10、中継器20、または外部機器との無線通信に用いられる。より具体的には、例えば、無線通信回路31は、ナースコール(以下、単に「NC」とも表記する)の管理システム、患者の生体情報のモニタリング装置、病室またはベッド脇まで物品(飲料水、車椅子、カート、IVポール等)を搬送する自動搬送装置、周辺機器(病室内に設置された照明、カーテン、及びテレビ等)、外部データベース、クラウドコンピュータ、医療用情報端末機、医療設備、または他の端末機30(例えば、病室内に他の患者がいる場合、他の患者が利用している端末機30)等と、ホストサーバ10及び中継器20を介して、または上記機器と直接信号の送受信を行う。また、無線通信回路31は、例えば在宅患者等が端末機30を使用する場合に、電話回線またはネットワーク回線等を介して端末機30とホストサーバ10とが通信する際に用いられる。生体情報のモニタリング装置の1つとして、例えば、ベッドに在床している患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする「眠りSCANTM」がある。以下、本実施形態では、無線通信回路31が、眠りSCANTMから覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号を受信する場合について説明する。なお、無線通信回路31は、眠りSCANTMに限定されず、例えば患者に装着されたウェアラブル端末機等の他のセンシングデバイスから生体情報に関する信号を受信してもよい。
【0018】
会話スイッチ32は、入力回路35に接続される。会話スイッチ32は、端末機30の使用者(例えば患者や看護師等)が端末機30と会話を開始させたい場合、または端末機30との会話を終了させたい場合に、使用者により操作される。なお、会話スイッチ32を廃して、使用者の音声操作により会話の開始及び終了の操作が行われもよい。また、端末機30は、会話スイッチ32の操作の有無に関わらず、他の入力情報に応じて自動的に会話を開始または終了させる場合もある。
【0019】
マイクロフォン33は、入力回路35に接続され、使用者と会話をする際に用いられる。
【0020】
スピーカー34は、出力回路36に接続され、使用者と会話する際、あるいは、必要な情報を使用者に音声で知らせる場合に用いられる。
【0021】
入力回路35は、制御回路37に接続される。入力回路35は、無線通信回路31、会話スイッチ32、及びマイクロフォン33等と制御回路37とにおける信号のインターフェース処理を実行する。
【0022】
出力回路36は、制御回路37に接続される。出力回路36は、無線通信回路31及びスピーカー等と制御回路37とにおける信号のインターフェース処理を実行する。
【0023】
メモリ38は、制御回路37に接続される。メモリ38には、各種入力情報(例えば、患者の個人情報、生体情報、及び会話情報等)、患者と会話する際に利用される会話文(フレーズ)、あるいは患者の支援を行う際の実行プログラム等が記憶される。なお、会話文として、一般的な定型文(例えば、「おはようございます」または「おやすみなさい」等)と合わせて、患者毎に異なる会話文が登録されてもよい。
【0024】
制御回路37は、例えば、中央演算処理装置(CPU:central processing unit)から構成され、端末機30全体を制御する。
【0025】
より具体的には、制御回路37は、例えば、入力回路35を介して入力された情報等に基づいて複数の会話文の優先順位付けを行い、使用者との会話の内容を選択する。そして、制御回路37は、入力情報または使用者との会話の結果等に基づいて、各種支援を実行する。
【0026】
制御回路37は、患者の識別機能を有する。例えば、制御回路37は、患者を識別して、患者に適した会話文の優先順位付けを行う。また制御回路37は、患者毎に分類して情報(個人情報、生体情報、会話情報等)をメモリ38に記憶する。更に、制御回路37は、例えば、外部データベース等にアクセスして、患者に関する情報のダウンロードあるいはアップロードを行ってもよい。
【0027】
制御回路37は、過去に行った会話の内容や支援の内容に基づく学習機能を有していてもよく、学習結果に基づいて会話文の優先順位づけや支援内容の推測を行うようにしてもよい。更に、制御回路37は、使用者の音声、病院関係の専門用語を認識するための学習機能を有していてもよい。例えば、高齢者の場合、言語認識ソフトによる認識率が低い傾向にあるので、学習機能を用いて、認識率を高めてもよい。
【0028】
また、制御回路37は、端末機30が例えば介護用ロボットに搭載されている場合、会話または支援の内容に合わせてロボットの動作を制御してもよく、または、ロボットの制御システムに動作を指示してもよい。
【0029】
なお、制御回路37が行う処理の一部を、ホストサーバ10にて行ってもよい。
【0030】
更に、端末機30は、表示部を有していてもよい。例えば、端末機30は、会話が困難な患者に対しては、表示部に会話の内容を表示して情報の入出力を行ってもよい。また、端末機30は、例えば、問診の際に看護師に要求に応じて、患者の情報を表示部に表示するようにしてもよい。
【0031】
更に、端末機30は、ナースコールの発報スイッチを有していてもよい。
【0032】
更に、端末機30は、映像受信回路及びカメラを有していてもよい。例えば、端末機30が複数の患者に対応する場合、カメラで撮影した画像情報による顔認識により患者の識別をおこなってもよい。
【0033】
1.3 支援動作の流れの一例
次に、支援システム1による使用者への支援動作の流れの一例について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0034】
図2に示すように、まず、制御回路37は、端末機30に信号が入力される(ステップS10)と支援動作を開始する。より具体的には、制御回路37は、例えば、ナースコールの管理システムから患者がナースコールを発報させた旨を知らせる信号(以下、「NC信号」と表記する)を受信した場合、眠りSCAN
TMから患者の覚醒信号及びベッドからの起き上がり信号を受信した場合、眠りSCAN
TMから受信している呼吸信号または心拍信号の変化を検知した場合、または会話スイッチ32の信号を受信した場合等に、支援動作を開始する。
【0035】
制御回路37は、覚醒信号を受信した場合、すなわち患者が覚醒している場合(ステップS11_Yes)、呼吸信号に基づいて患者の呼吸が正常か確認する。他方で、制御回路37は、患者が覚醒していない場合(ステップS11_No)、すなわち睡眠中の場合、支援動作を終了させる。
【0036】
制御回路37は、患者の呼吸が正常である場合(ステップS12_Yes)、心拍信号に基づいて患者の心拍が正常か確認する。
【0037】
制御回路37は、患者の呼吸が正常ではない場合(ステップS12_No)または、患者の心拍が正常ではない場合(ステップS13_No)、NC信号の受信の有無を確認し、ナースコールが発報されているか確認する。
【0038】
制御回路37は、ナースコールが発報されていない場合(ステップS14_No)、管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信する(ステップS15)。
【0039】
制御回路37は、ナースコールが発報されている場合(ステップS14_Yes)、または、ナースコールの発報を指示した(ステップS15)後、患者に看護師を呼んでいる旨を通知し(ステップS16)、支援動作を終了させる。また、このとき、制御回路37は、例えば、看護師または管理システムに、呼吸または心拍が正常ではない旨を通知する。すなわち、制御回路37は、緊急度が比較的高いナースコールである旨を通知する。なお、
図2の例では、患者が覚醒している場合に、制御回路37が呼吸及び心拍を確認する場合を示しているが、覚醒の有無に関わらず、呼吸または心拍等に患者の異常を検知した場合、制御回路37は、例えば、患者の覚醒を促し、ナースコールの発報を指示してもよい。
【0040】
制御回路37は、患者の心拍が正常である場合(ステップS13_Yes)、患者に必要な支援を推測する。より具体的には、制御回路37は、看護師が各病室を巡回する頻度及びタイミング、看護師の処置内容(容体急変の対応、排泄の補助、車椅子等の用意、飲料水等の用意等)、周辺機器(例えば、照明、カーテン、またはテレビ等)の状態、他の患者の状態(例えば、同室の患者が睡眠状態にあるか覚醒状態にあるか)、または各種センサーの値(覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、または心拍信号等)等を元に必要な支援の内容(例えば、容体急変への対応、排泄の補助、飲料水の供給、周辺機器の制御、または話し相手となる等)を推測する。
【0041】
制御回路37は、支援の推測が困難な場合(ステップS17_No)、患者と会話をするか否か決定する。
【0042】
制御回路37は、患者と会話をしない場合(ステップS18_No)、支援動作を終了させる。例えば、患者は、夜中に覚醒してもそのまま眠りにつく場合がある。このような場合、制御回路37は、時間から判断して、患者に不要な声掛けを行わないようにしてもよい。
【0043】
制御回路37は、患者と会話をする場合(ステップS18_Yes)、入力情報等に基づいてメモリ38に記憶されている複数の会話文に優先順位をつけて(ステップS19)、患者との会話の内容を決定する。より具体的には、患者が覚醒した時間、過去の会話や支援の内容、及び患者の状態(覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号等)等から優先順位が高い会話文を決定する。例えば、過去の会話の実績から覚醒後に飲料水を要求される可能性が高い場合、飲料水が必要か確認する会話文の優先順位を高くする。また、例えば、患者が起き上がってベッドの端に移動している場合、時間帯あるいは排泄センサー等の結果から排泄しようとしている可能性が高い場合、看護師の補助、車椅子またはIVポールの手配等が必要か確認する会話文の優先順位を高くする。なお、制御回路37は、時間帯や同じ病室の他の患者の状態等に基づいて、会話文または音量を決定してもよい。より具体的には、例えば、他の端末機30とアクセスして他の患者が就寝中であることが確認できた場合、制御回路37は、病室外への移動を促す会話文を選択してもよく、会話の音量を小さく設定してもよい。
【0044】
図3に示すように、端末機30は、優先順位付けした会話文に基づいて患者と会話をする(ステップS20)。
【0045】
制御回路37は、会話の内容を確認する(ステップS21)。
【0046】
制御回路37は、会話の内容が不明確な場合(ステップS22_Yes)、すなわち、会話が聞き取れなかった場合、ステップS20に戻り、再度患者と会話して、会話の内容を再確認する。
【0047】
制御回路37は、会話の内容が明確な場合(ステップS22_No)、すなわち、会話が聞き取れた場合、会話の内容から患者に支援を行うか否かを決定する。
【0048】
制御回路37は、会話の内容から患者に支援不要の意思表示がある場合(ステップS23_Yes)、支援動作を終了させる。
【0049】
制御回路37は、患者に支援不要の意思表示がない場合(ステップS23_No)、すなわち患者が支援を必要としている場合、支援内容を決定(ステップS24)した後、支援の緊急度を判定する(ステップS25)。例えば、患者が体調不良の場合、緊急度は比較的高く、患者が話し相手を必要としている場合、緊急度は比較的低い。
【0050】
制御回路37は、支援内容及び支援の緊急度に応じて、支援を実施する(ステップS26)。より具体的には、例えば、看護師の支援が必要な場合、制御回路37は、看護師に支援内容と緊急度を報告する。
【0051】
例えば、看護師は、複数の患者からナースコールがあった場合に、支援システム1の報告結果に基づいて、患者対応の優先順位付けを行ってもよい。また、例えば、支援システム1が看護師の巡回コース、頻度等の編成を行うシステムと通信可能な場合、編成システムは、支援システム1からの情報に基づいて、巡回コース及び頻度の再編成を行ってもよい。すなわち、支援システム1からの情報に基づいて、看護師の業務の動線の見直しが行われてもよい。
【0052】
また、看護師の支援が不要な場合、支援システム1は、例えば、看護師に補助が不要である旨を通知し、必要な支援を実施する。例えば、車椅子、カート、IVポール等の自動搬送が必要な場合、支援システム1は、自動搬送装置に制御信号を送信し、自動搬送装置を操作する。例えば、飲料水が必要な場合、支援システム1は、飲料水の自動搬送装置に制御信号を送信し、飲料水を搬送させる。例えば、照明、カーテン、テレビ等の操作が必要な場合、支援システム1は、これらの機器に制御信号を送信する。例えば、患者が話し相手を必要としている場合、端末機30が患者の話し相手となる。
【0053】
また、例えば使用者が看護師であり、問診のための患者の情報を必要としている場合、支援システム1は、メモリ38に記憶されている患者の情報を音声で報告する、または無線通信等により看護師が携帯している医療用情報端末機等に提供する。
【0054】
支援が終了すると、支援システム1は、支援動作を終了する。
【0055】
1.4 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、支援システム1は、端末機30を含み、端末機30により患者(使用者)の容体、要求内容、及び要求の緊急度を確認して、患者を支援できる。これにより患者に対応する看護師(応対者)の負担を軽減し、看護師の業務効率を改善させることができる。以下、本効果につき詳述する。
【0056】
例えば病院において、看護師は、患者からのナースコールがあると、その都度、病室に行き、患者の要求に応えている。しかし、例えば、夜間のように待機している看護師が少ない時間帯ではナースコールが多発すると看護師の人数が足りないため、看護師がすぐに患者に対応できない可能性が高くなる。
【0057】
また、患者からの要求には、容体の急変といった緊急度の比較的高いものから、水が欲しいといった緊急度の比較的低いものまで多種多様にある。更に、患者の要求には看護師ではなくても対応ができるものもあるが、看護師はそういった要求にも対応しているため、看護師の負担は比較的大きい。
【0058】
また、看護師は、一旦患者の元に行き、患者の容体や要求を確認してから、患者が要求する物(例えば飲料水、車椅子、カート、またはIVポール等)を取りに戻る場合がある。このため、一人の患者の対応に時間を要し、看護師の業務効率が悪くなる場合がある。
【0059】
更に、複数の患者から同時にナースコールがあった場合に各患者の容体や要求を確認できないと、看護師は業務の優先順位付けをすることができない。
【0060】
これに対し、本実施形態に係る構成であれば、支援システム1は、例えば、ナースコールに関するNC信号、または、患者の生体情報等が入力されると、これらの入力情報及び患者との会話を通じて必要な支援の内容を確認し、患者の支援を行うことができる。例えば、支援システム1は、患者の容体の急変といった緊急度の高い要求に対しては、看護師に患者の容体及び緊急度といった情報を送信することができる。これにより、看護師は、例えば、処置に必要な物を予め準備して病室に向かうことができ、効率よく処置を行うことができる。また、看護師は、支援システム1の情報に基づいて業務の優先順位付けを行うことができる。
【0061】
また、例えば、支援システム1は、飲料水等の搬送または周辺機器の操作等、看護師の代わりに支援の一部を行うことができる。これにより、看護師による処置の機会を削減し、看護師の負担を軽減できる。
【0062】
更に、本実施形態に係る構成であれば、支援システム1は、過去の会話や支援の内容、及び入力情報等に基づいて複数の会話文の優先順位付けを行い、その結果に基づいて患者と会話を進めることができる。これにより、患者は、支援システム1により早く要求を伝えることができる。また、患者は、不要な会話によるストレスが軽減される。
【0063】
なお、本実施形態では、病院内において支援システム1を用いる場合について説明したが、例えば介護施設の要介護者あるいは在宅患者が支援システム1を用いる場合も同様である。支援システム1に使用状況に応じた支援内容及び会話文等が予め登録されていればよい。
【0064】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、支援システム1による支援動作について5つの具体例を示す。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0065】
2.1 第1例
まず、第1例について説明する。第1例では、看護師が、問診の際に支援システム1を利用する場合について説明する。
【0066】
第1例に係る端末機30は、看護師を認識するための機能を有している。より具体的には、例えば、端末機30は、ボタンを押すと患者の情報を提供する問診モードに移行する問診ボタンを有していてもよく、看護師による音声データ等の入力、あるいは、病室に設けられたカメラからの画像情報等により看護師を認識し、問診モードに移行する機能を有していてもよい。
【0067】
次に支援動作の流れについて説明する。
【0068】
端末機30は、問診モードに移行した後、看護師の要求により、例えば、患者の情報(例えば、昨日の睡眠時間や睡眠中の呼吸、心拍、排泄の頻度等の情報)を看護師に提供する。看護師は、端末機30から提供された患者の情報により、患者との会話からでは取得できない情報を得る。
【0069】
また、例えば、端末機30は、問診モードに移行した後、看護師からの指示に基づいて、患者と会話を進める。看護師は、患者を問診する場合、患者と会話して体調の変化等を確認する。このときに、看護師は、患者の緊張を解いて会話をスムーズに進めるために端末機30を介して患者と会話をしてもよい。
【0070】
2.2 第2例
次に、第2例について説明する。第2例は、端末機30が就寝中の患者に対して排泄を促す場合について説明する。
【0071】
端末機30は、例えば、患者に取り付けられた排泄センサーからの入力信号、または時間等に応じて、就寝中の患者に声掛けを行い、トイレに行くように促す。
【0072】
2.3 第3例
次に、第3例について説明する。第3例は、患者が端末機30を用いて言語障害のリハビリテーションを行う場合について説明する。
【0073】
第3例に係る端末機30は、例えば、画像認識機能を有している。より具体的には、端末機30は、カメラを含み、言語障害のリハビリテーションに用いられるカードをカメラで識別する機能を有している。また、端末機30は、患者のリハビリテーションを支援するリハビリテーションモードを有している。
【0074】
次に支援動作の流れについて説明する。
【0075】
端末機30は、患者に会話スイッチ32を操作されると、患者と会話を開始し、患者からの要求に応じてリハビリテーションモードに移行する。
【0076】
例えば、リハビリテーションモードでは、端末機30は、患者がカードに描かれている物の名前を発音すると、カメラに映ったカードを認識して患者が発音した名前の正誤を判定する。そして、回答が不正解であった場合、または発音が不明瞭だった場合、音声でサポートして患者が正しい発音をできるように促す。また、例えば、端末機30は、リハビリテーションの結果を取りまとめる。例えば、端末機30は、過去のリハビリテーションの結果と比較して、患者の回復状況を確認できるようにしてもよい。
【0077】
2.4 第4例
次に、第4例について説明する。第4例は、端末機30が、患者との会話を通して患者の感情分析を行う場合について説明する。
【0078】
端末機30は、会話の受け答え、音声データの大きさ、会話のスピード等により、患者の感情の起伏を分析する。この結果、端末機30は、患者の精神状態が安定するように会話文の優先順位付けを行ってもよい。
【0079】
2.5 第5例
次に、第5例について説明する。第5例は、在宅看護及び在宅介護等において、支援システム1が用いられる場合について説明する。
【0080】
例えば、在宅看護において、端末機30は、患者の生体情報を眠りSCANTM等のモニタリング装置から受信し、信号の変化を検知した場合、または会話に対する患者の応答に変化を検知した場合等に、患者に病院への連絡を促してもよく、または端末機30が直接病院に連絡をしてもよい。また、端末機30は、決められた時間に、患者に対して薬の服用、睡眠、リハビリテーション、または排泄等を促す声掛けを実施してもよい。
【0081】
2.6 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
更に、本実施形態の第1例に係る構成であれば、支援システム1は、看護師が患者と会話をして得られる情報よりも患者に関するより詳細な情報を看護師に提供できる。これにより、看護師は、患者の体調管理がより効果的に行える。
【0083】
更に、本実施形態の第2例に係る構成であれば、支援システム1は、就寝中の患者に対して必要な声掛けを行うことができる。これにより、例えば、患者は排泄等で失敗する可能性が低くなる。
【0084】
更に、本実施形態の第3例に係る構成であれば、支援システム1は、患者のリハビリテーションを支援できる。例えば、支援システム1は、看護師または理学療法士等の補助を必要としていた言語障害に関するリハビリテーションの一部を代わりに行うことができる。これにより、看護師または理学療法士等の負担を低減できる。更に、患者は自分の体調、気分に応じて、より効果的にリハビリテーションを行うことができる。
【0085】
更に、本実施形態の第4例に係る構成であれば、支援システム1は、会話を通して患者の感情の起伏を分析できる。これにより、看護師は、患者の精神状態を把握できる。
【0086】
更に、本実施形態の第5例に係る構成であれば、支援システム1は、在宅患者(または在宅介護者等)の異常の検知、また在宅患者への必要な声掛け等を行うことができる。
【0087】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態では、例えば病室内において一台の端末機30が複数の患者に対応する場合について説明する。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
3.1 支援動作の流れの一例
支援システム1による使用者への支援動作の流れの一例について、
図5を用いて説明する。
【0089】
図5に示すように、制御回路37は、ある一人の患者に対して支援を実施するかしないかを決定する(ステップS30)。より具体的には、第1実施形態の
図3及び
図4で説明したステップS10からステップS24までのフローに従い、支援の要否を決定する。
【0090】
支援実施を決定した場合(ステップS31_Yes)、制御回路37は他の患者の状況を確認し、それに応じて支援内容及び支援方法を決定する(ステップS32)。
【0091】
例えば、制御回路37は、他の患者が就寝中かどうかにより患者との会話の方法を決定する。より具体的には、例えば、他の患者が就寝中の場合、制御回路37は、通常時よりも音量を小さく設定して患者と会話をしてもよい。例えば、端末機30が指向性スピーカーを有している場合、制御回路37は指向性スピーカーを用いて会話をしてもよい。例えば、端末機30がロボットに搭載されている場合、制御回路37はロボットの身振り(動作)で会話の内容を伝えるようにしてもよい。例えば、端末機30が表示部を有している場合、制御回路37は会話の代わりに表示部に会話の内容を表示してもよい。
【0092】
また、例えば、制御回路37は、他の患者の居場所を把握し、居場所に応じて支援方法を決定する。より具体的には、例えば、患者がトイレに行く際に、他の患者が通路を塞いでいる場合、制御回路37は他の患者に対して通路を開けるように声掛けをしてもよい。また、例えば、他の患者を探している場合、制御回路37は該当の患者に対して「○○さんが呼んでいます。」と声掛けをしてもよい。
【0093】
また、例えば、複数の患者から要求が発生している場合、制御回路37は、それらの要求を把握し、要求の内容に応じて支援方法を決定する。より具体的には、例えば、病室内の複数の患者の要求が一括作業で解決できる場合、制御回路37は看護師さんにその旨を通知してもよい。例えば、おむつの交換と飲料水の搬送とが要求としてある場合、看護師は予め両方の準備をして病室に行けば、1度の訪問で支援を終了できる。
【0094】
ステップS32において支援方法を決定した後、制御回路37は、各患者の支援内容の緊急度を判定する(ステップS33)。
【0095】
制御回路37は、緊急度の高い順に各患者の支援を実施する(ステップS34)。その際、制御回路37は、並行に実施可能な要求に対しては、同時に支援を実施する。
【0096】
より具体的には、例えば、複数の患者に対して看護師の呼び出しが必要な場合、制御回路37は1回のナースコールの発報でその旨を連絡してもよい。例えば、複数の患者が飲料水、車椅子、カート、またはIVポール等の搬送を要求している場合、制御回路37は自動搬送装置にその旨を連絡してまとめて手配をしてもよい。例えば、複数の患者が話し相手を必要としている場合、制御回路37は複数の患者と会話をしてもよい。例えば、看護師の問診において、制御回路37は、看護師に各患者の情報をまとめて報告してもよい。例えば、複数の患者から周辺機器の操作を要求された場合、制御回路37は、照明、カーテン、またはテレビ等の操作を同時に実施してもよい。
【0097】
制御回路37は、各支援が終了したか確認する。そして、制御回路37は、各支援が終了していない場合(ステップS35_No)、ステップS32に戻る。
【0098】
より具体的には、追加の要求があった場合、制御回路37は過去の支援が終了したか確認した後、ステップS32に戻り、支援内容及び支援方法を決定する。例えば、他の支援で既に看護師を呼び出している場合、制御回路37は新たにナースコールを発報させずに、その旨を看護師に連絡してもよい。
【0099】
各支援が終了している場合(ステップS35_Yes)、制御回路37は支援動作を終了させる。
【0100】
なお、本実施形態では病室に1台の端末機30が配置されている場合について説明したが、患者一人につき1台の端末機30が与えられていてもよい。この場合、例えば、ホストサーバ10が、他の患者の状況を確認して支援方法を決定する、または各要求の緊急度を判断する等の処理を行ってもよい。
【0101】
3.2 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、第1及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
更に本実施形態に係る構成であれば、支援システム1は、他の患者の状況に応じて、支援内容、支援方法、及び緊急度を決定できる。更に、支援システム1は、複数の要求を一括で支援することができる。これにより、看護師は、緊急度の高い順に要求に対応することができる。更に、看護師は、複数の要求を一括して処理することができる。このため、看護師の業務効率を改善できる。
【0103】
4.変形例等
実施形態は上記説明した形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0104】
例えば、制御回路37は、患者の要求の緊急度を、何らかの指標を用いて可視化し、看護師に連絡をしてもよい。
【0105】
更に、制御回路37は、例えば、眠りSCANTMから取得できる信号に基づいて、患者が覚醒した際の体調を判定し、判定結果も合わせて看護師に報告するようにしてもよい。
【0106】
更に、制御回路37は、覚醒の頻度、またはバイタル(呼吸、心拍等)の状況等の情報についての学習機能を有していてもよく、制御回路37は、この学習機能の結果に基づいて、患者との会話の有無の判定を行うようにしてもよい。
【0107】
更に、制御回路37は、会話の内容と受け答えのスムーズ差を学習し、会話文の優先度を自動的に変更してもよい。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0109】
1…支援システム、10…ホストサーバ、20…中継器、30…端末機、31…無線通信回路、32…会話スイッチ、33…マイクロフォン、34…スピーカー、35…入力回路、36…出力回路、37…制御回路、38…メモリ。