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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/04 20060101AFI20230523BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20230523BHJP
【FI】
B62K25/04
B62J45/40
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022531868
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2021022840
(87)【国際公開番号】W WO2021261350
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020109610
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】諌山 宏幸
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-195194(JP,A)
【文献】特開平01-212686(JP,A)
【文献】特開昭59-023786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/04
B62K 25/20
B62K 25/26
B62J 45/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される駆動輪と、
前記駆動輪を懸架する第1サスペンションと、
車高調整機構と、
を備え、
前記第1サスペンションは、
前記駆動輪が受ける衝撃を吸収する第1バネと、
伸縮可能に設けられ、前記第1バネの振動を減衰させる第1ダンパと、
を備え、
前記車高調整機構は、
作動油を収容する第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に配置される第1ピストンとを備える第1ポンプと、
前記駆動輪と前記第1ピストンに連結され、前記駆動輪の回転によって前記第1ピストンを第1シリンダに対して移動させる変換機構と、
前記第1ポンプに連通接続される油圧回路と、
前記油圧回路に連通接続され、前記第1バネに連結され、前記第1ポンプから供給される作動油によって前記第1バネに荷重を掛ける第1ジャッキと、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記変換機構は、
前記駆動輪と一体に回転するカムと、
前記カムと接触可能に設けられ、前記第1ピストンに連結され、前記カムによって押される第1ロッドと、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗型車両において、
前記カムは、前記駆動輪の回転軸線回りに回転し、
前記カムは、前記駆動輪の前記回転軸線と直交する方向に延びる
鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項2または3に記載の鞍乗型車両において、
前記車高調整機構は、
前記第1ロッドを前記カムに向かって付勢する第1弾性体と、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記第1ポンプは、
前記第1シリンダと前記第1ピストンとによって区画される第1主室と、
を備え、
前記第1主室は作動油を貯留し、
前記カムが前記第1ロッドを押すとき、前記第1主室は収縮し、
前記油圧回路は、
前記第1主室と前記第1ジャッキとを連通する第1流路と、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
前記第1ポンプは、
前記第1シリンダと前記第1ピストンとによって区画される第1副室と、
を備え、
前記第1副室は作動油を貯留し、
前記カムが前記第1ロッドを押すとき、前記第1副室は伸張する
鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項6に記載の鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
前記第1ジャッキと前記第1副室とを連通する第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第1ジャッキが前記第1バネに掛ける荷重が第1閾値まで上昇したときに開く第1弁と、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項7に記載の鞍乗型車両において、
前記車高調整機構は、
前記第1ジャッキが前記第1バネに掛ける荷重を検出する第1センサと、
前記第1センサの検出結果に基づいて、前記第1弁を制御する制御部と、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項7に記載の鞍乗型車両において、
前記第1弁は、作動油の圧力によって操作され、
前記油圧回路は、前記第1流路に連通する第1パイロット管路を備え、
前記第1パイロット管路は、前記第1弁を操作するための作動油の圧力を前記第1弁に付与し、
前記第1パイロット管路が前記第1弁に付与する作動油の圧力が第2閾値以上であるとき、前記第1弁は開く
鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記第1弁が開いた後から前記駆動輪の回転が止まるまで、前記油圧回路は、前記第1主室への作動油の流入、および、前記第1副室からの作動油の流出の少なくともいずれかを禁止する
鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項5または6に記載の鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
作動油を貯留するタンクと、
前記第1主室と前記タンクとを連通する第3流路と、
前記第3流路に設けられる第2弁と、
を備え、
前記第2弁は、前記第1流路の作動油の圧力によって操作され、
前記第1流路の作動油の圧力が第3閾値以上であるとき、前記第2弁は開く
鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記車高調整機構は、
作動油を収容する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に配置される第2ピストンとを備える第2ポンプと、
を備え、
前記変換機構は、前記第2ピストンに連結され、前記駆動輪の回転によって前記第2ピストンを前記第2シリンダに対して移動させ、
前記油圧回路は、前記第2ポンプに連通接続され、
前記第1ジャッキは、前記第2ポンプから供給される作動油によって前記第1バネに荷重を掛ける
鞍乗型車両。
【請求項13】
請求項12に記載の鞍乗型車両において、
前記変換機構が前記第1シリンダに対して前記第1ピストンを第1正方向に移動させるとき、前記変換機構は前記第2シリンダに対して前記第2ピストンを前記第1正方向に移動させない
鞍乗型車両。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記エンジンによって駆動されない従動輪と、
前記従動輪を懸架する第2サスペンションと、
を備え、
前記第2サスペンションは、
前記従動輪が受ける衝撃を吸収する第2バネと、
伸縮可能に設けられ、前記第2バネの振動を減衰させる第2ダンパと、
を備え、
前記車高調整機構は、
前記油圧回路に連通接続され、前記第1ポンプから供給される作動油によって前記第2バネに荷重を掛ける第2ジャッキと、
を備える
鞍乗型車両。
【請求項15】
請求項14に記載の鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
前記第1ポンプと前記第2ジャッキとを連通する第4流路と、
前記第4流路に設けられ、前記第4流路を分離可能なジョイントと、
を備える
鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動二輪車を開示する。以下では、特許文献1に記載される符号を、括弧書きで表記する。自動二輪車(1)は、リアサスペンション(10)を備える。リアサスペンション(10)は、ダンパ(10A)とスプリング(13)を備える。ダンパ(10A)は、ダンパチューブ(11)とピストンロッド(12)を備える。ピストンロッド(12)は、ダンパチューブ(11)に対して移動する。
【0003】
自動二輪車(1)は、車高調整装置(40)を備える。車高調整装置(40)は、油圧ジャッキ(41)と油圧ポンプ(50)を備える。油圧ジャッキ(41)は、スプリング(13)の一端を支持する。油圧ポンプ(50)は、油圧ジャッキ(41)に作動油を供給する。ダンパ(10A)の伸縮運動によって、油圧ポンプ(50)は駆動される。具体的には、自動二輪車(1)が走行するとき、路面の凹凸に応じて、ピストンロッド(12)はダンパチューブ(11)に対して移動する。ダンパチューブ(11)に対するピストンロッド(12)の移動は、油圧ポンプ(50)を駆動する動力に変換される。
【0004】
特許文献2は、車高調整装置を開示する。以下では、特許文献2に記載される符号を、括弧書きで表記する。車高調整装置(1)は、油圧ダンパ(2)およびバネ(3)に適用される。車高調整装置(1)は、油圧ジャッキ(4)とポンプ(5)を備える。油圧ジャッキ(4)はバネ(3)の一端を支持する。油圧ポンプ(5)は油圧ジャッキ(4)に作動油を供給する。油圧ポンプ(5)は、モータ(53)によって、駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-058294号公報
【文献】特開2014-148205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車高調整装置(40)では、油圧ポンプ(50)を駆動する動力は、ダンパ(10A)の伸縮運動である。ダンパ(10A)の伸縮運動は、車高調整の動力として、十分に大きいとは言えない。このため、車高調整をするために、自動二輪車(1)は比較的に長い距離を走行する必要がある。車高調整をするために、自動二輪車(1)は比較的に長い時間、走行する必要がある。このように、特許文献1の車高調整装置(40)の場合、自動二輪車(1)が発進した後、車高を速やかに調整することは困難である。
【0007】
さらに、車高調整に要する走行距離および走行時間は、自動二輪車(1)が走行する路面の状態に大きく依存する。例えば、自動二輪車(1)が平坦な路面を走行する場合、車高調整に要する走行距離は、さらに長くなる。例えば、自動二輪車(1)が平坦な路面を走行する場合、車高調整に要する走行時間は、さらに長くなる。このように、自動二輪車(1)が平坦な路面を走行する場合、自動二輪車(1)が発進した後、車高を速やかに調整することは一層困難である。
【0008】
特許文献2の車高調整装置(1)では、ポンプ(5)を駆動する動力は、モータ(53)の出力である。モータ(53)は、電力によって駆動される。ここで、車両に搭載可能な電力源(例えば、バッテリーや発電機)の容量は、車高調整に要する電力に比べて、十分に大きいとは言えない。このため、車高調整に要する電力をモータ(53)に短時間で供給することは、困難である。よって、車高調整をするために、比較的に長い時間を要する。したがって、特許文献2の車高調整装置(1)の場合、自動二輪車(1)が発進した後、速やかに車高を調整することは、極めて困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発進した後、車高を速やかに調整できる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、
鞍乗型車両であって、
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される駆動輪と、
前記駆動輪を懸架する第1サスペンションと、
車高調整機構と、
を備え、
前記第1サスペンションは、
前記駆動輪が受ける衝撃を吸収する第1バネと、
伸縮可能に設けられ、前記第1バネの振動を減衰させる第1ダンパと、
を備え、
前記車高調整機構は、
作動油を収容する第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に配置される第1ピストンとを備える第1ポンプと、
前記駆動輪と前記第1ピストンに連結され、前記駆動輪の回転によって前記第1ピストンを第1シリンダに対して移動させる変換機構と、
前記第1ポンプに連通接続される油圧回路と、
前記油圧回路に連通接続され、前記第1バネに連結され、前記第1ポンプから供給される作動油によって前記第1バネに荷重を掛ける第1ジャッキと、
を備える鞍乗型車両である。
【0011】
鞍乗型車両は、エンジンと駆動輪と第1サスペンションを備える。駆動輪は、エンジンによって駆動される。第1サスペンションは、駆動輪を懸架する。第1サスペンションは、第1バネと第1ダンパを備える。第1バネは、駆動輪が受ける衝撃を吸収する。第1ダンパは、伸縮可能に設けられる。第1ダンパは、第1バネの振動を減衰させる。
【0012】
鞍乗型車両は、車高調整機構を備える。車高調整機構は、第1ジャッキを備える。第1ジャッキは、第1バネに連結される。第1ジャッキは、第1バネに荷重を掛ける。よって、車高調整機構は、鞍乗型車両の車高を好適に調整できる。
【0013】
車高調整機構は、第1ポンプと変換機構を備える。第1ポンプは、第1シリンダと第1ピストンを備える。第1シリンダは、作動油を収容する。第1ピストンは、第1シリンダの内部に配置される。変換機構は、駆動輪と第1ピストンに連結される。変換機構は、駆動輪の回転によって第1ピストンを第1シリンダに対して移動させる。言い換えれば、変換機構は、駆動輪の回転運動を、第1ピストンの移動に変換する。上述のとおり、駆動輪は、エンジンによって駆動される。したがって、変換機構は、エンジンの動力の一部を、第1ポンプの駆動力に変換する。よって、第1ポンプに入力される駆動力は、大きい。
【0014】
車高調整機構は、油圧回路を備える。油圧回路は、第1ポンプに連通接続される。油圧回路は、第1ジャッキに連通接続される。第1ジャッキは、第1ポンプから供給される作動油によって第1バネに荷重を掛ける。上述の通り、第1ポンプに入力される駆動力は、大きい。したがって、駆動輪が回転し始めた後、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重を、速やかに増大できる。すなわち、鞍乗型車両が発進した後、車高調整機構は、鞍乗型車両の車高を速やかに調整できる。
【0015】
さらに、車高調整機構が第1バネに掛ける荷重は、鞍乗型車両の走行距離によって決まる。すなわち、車高調整機構が鞍乗型車両の車高を調整するために要する走行距離は、鞍乗型車両が走行する路面の状態に依存しない。したがって、鞍乗型車両が走行する路面の状態に関わらず、鞍乗型車両が発進した後、車高調整機構は、鞍乗型車両の車高を速やかに調整できる。
【0016】
以上のとおり、鞍乗型車両が発進した後、鞍乗型車両は鞍乗型車両の車高を速やかに調整できる。
【0017】
上述した鞍乗型車両において、
前記変換機構は、
前記駆動輪と一体に回転するカムと、
前記カムと接触可能に設けられ、前記第1ピストンに連結され、前記カムによって押される第1ロッドと、
を備えることが好ましい。
変換機構は、カムと第1ロッドを備える。第1ロッドは、カムと接触可能に設けられる。第1ロッドは、カムに押される。ここで、カムは、駆動輪と一体に回転する。よって、カムは、第1ロッドを効率良く押すことができる。さらに、第1ロッドは、第1ピストンに連結される。よって、変換機構は、第1ピストンを効率良く移動させることができる。
【0018】
上述した鞍乗型車両において、
前記カムは、前記駆動輪の回転軸線回りに回転し、
前記カムは、前記駆動輪の前記回転軸線と直交する方向に延びることが好ましい。
カムは、第1ロッドに効率良く動力を伝達できる。
【0019】
上述した鞍乗型車両において、
前記車高調整機構は、
前記第1ロッドを前記カムに向かって付勢する第1弾性体と、
を備えることが好ましい。
第1ロッドがカムと接触した状態を好適に保つことができる。よって、カムは、第1ロッドを好適に押すことができる。
【0020】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1ポンプは、
前記第1シリンダと前記第1ピストンとによって区画される第1主室と、
を備え、
前記第1主室は作動油を貯留し、
前記カムが前記第1ロッドを押すとき、前記第1主室は収縮し、
前記油圧回路は、
前記第1主室と前記第1ジャッキとを連通する第1流路と、
を備えることが好ましい。
第1主室は、第1シリンダと第1ピストンとによって区画される。第1主室は、作動油を貯留する。カムが第1ロッドを押すとき、第1主室は収縮する。したがって、カムがロッドを押すとき、第1ポンプは、第1主室から作動油を吐出する。カムが第1ロッドを押すときに第1ポンプが吐出する作動油は、比較的に高い圧力を有する。油圧回路は、第1流路を備える。第1流路は、第1主室と第1ジャッキとを連通する。よって、第1流路は、比較的に高い圧力の作動油を第1主室から第1ジャッキに送る。したがって、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重を、速やかに増大できる。
【0021】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1ポンプは、
前記第1シリンダと前記第1ピストンとによって区画される第1副室と、
を備え、
前記第1副室は作動油を貯留し、
前記カムが前記第1ロッドを押すとき、前記第1副室は伸張することが好ましい。
第1副室は、第1シリンダと第1ピストンとによって区画される。第1副室は作動油を貯留する。カムが第1ロッドを押すとき、第1副室は伸張する。よって、第1主室の圧力および第1副室の圧力によって、第1ピストンの移動を容易に制御可能である。
【0022】
上述した鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
前記第1ジャッキと前記第1副室とを連通する第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第1ジャッキが前記第1バネに掛ける荷重が第1閾値まで上昇したときに開く第1弁と、
を備えることが好ましい。
第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重が第1閾値まで上昇したとき、第1ジャッキの作動油は、比較的に高い圧力を有する。油圧回路は、第2流路と第1弁を備える。第2流路は、第1ジャッキと第1副室とを連通する。第1弁は、第2流路に設けられる。第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重が第1閾値まで上昇したとき、第1弁は開く。このため、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重が第1閾値まで上昇したとき、第2流路は、比較的に高い圧力の作動油を第1ジャッキから第1副室に送る。第1副室は伸張する。第1副室は、第1ピストンおよび第1ロッドを移動させる。その結果、第1ロッドはカムから離れる。第1ロッドがカムから離れた後、変換機構は第1ピストンを移動させない。このため、車高調整機構が消費する動力を効果的に抑制できる。
【0023】
上述した鞍乗型車両において、
前記車高調整機構は、
前記第1ジャッキが前記第1バネに掛ける荷重を検出する第1センサと、
前記第1センサの検出結果に基づいて、前記第1弁を制御する制御部と、
を備えることが好ましい。
車高調整機構は、第1センサと制御部を備える。よって、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重が第1閾値まで上昇したとき、制御部は第1弁を適切に開くことができる。
【0024】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1センサは、前記第1ジャッキのストローク量を検出することが好ましい。
第1ジャッキのストローク量は、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重のみを反映する。このため、第1センサが第1ジャッキのストローク量を検出することによって、第1センサは、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重を、精度良く、検出できる。さらに、第1センサは、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重を、容易に検出できる。
【0025】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1弁は、作動油の圧力によって操作され、
前記油圧回路は、前記第1流路に連通する第1パイロット管路を備え、
前記第1パイロット管路は、前記第1弁を操作するための作動油の圧力を前記第1弁に付与し、
前記第1パイロット管路が前記第1弁に付与する作動油の圧力が第2閾値以上であるとき、前記第1弁は開くことが好ましい。
第1弁は、作動油の圧力によって操作される。油圧回路は、第1パイロット管路を備える。第1パイロット管路は、第1弁を操作するための作動油の圧力を第1弁に付与する。第1パイロット管路が第1弁に付与する作動油の圧力が第2閾値以上であるとき、第1弁は開く。ここで、第1パイロット管路は、第1流路に連通する。よって、第1パイロット管路は、第1流路の作動油の圧力を利用して、第1弁を操作できる。さらに、第1流路の作動油の圧力は、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重を反映する。よって、第1弁が作動油の圧力によって操作される場合であっても、第1弁は適切なタイミングで開くことができる。さらに、第1弁の構造を簡素化できる。第1弁の制御を簡素化できる。
【0026】
上述した鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
前記第1パイロット管路と第1流路との間に設けられる圧力保持管路と、
前記圧力保持管路と第1流路との間に設けられる第1逆止弁と、
を備え、
作動油が前記第1流路から前記圧力保持管路に流れることを、前記第1逆止弁は許容し、かつ、作動油が前記圧力保持管路から前記第1流路に流れることを、前記第1逆止弁は阻止することが好ましい。
第1パイロット管路は、圧力保持管路および第1逆止弁を介して、第1流路に連通する。圧力保持管路は、第1逆止弁を介して、第1流路に連通する。このため、第1流路の作動油の圧力が第2閾値よりも高い圧力から第2閾値よりも低い圧力に変化した後も、圧力保持管路は第2閾値よりも高い圧力を好適に保持できる。よって、第1流路の作動油の圧力が第2閾値よりも低くなる場合であっても、圧力保持管路は、第2閾値よりも高い作動油の圧力を、第1パイロット管路に供給できる。第1流路の作動油の圧力が第2閾値よりも低くなる場合であっても、第1パイロット管路は、第2閾値よりも高い作動油の圧力を、第1弁に付与できる。したがって、第1流路の作動油の圧力が第2閾値よりも低くなる場合であっても、第1弁は、開いている状態を好適に保持できる。
【0027】
上述した鞍乗型車両において、
前記第1弁が開いた後から前記駆動輪の回転が止まるまで、前記油圧回路は、前記第1主室への作動油の流入、および、前記第1副室からの作動油の流出の少なくともいずれかを禁止することが好ましい。
油圧回路が第1主室への作動油の流入を禁止する場合、第1主室の伸張を好適に規制できる。油圧回路が第1副室からの作動油の流出を禁止する場合、第1副室の収縮を好適に規制できる。いずれの場合であっても、第1ピストンの移動方向を好適に制限できる。いずれの場合であっても、第1ロッドがカムに向かって移動することを、好適に規制できる。その結果、第1弁が開いた後から駆動輪の回転が止まるまで、第1ロッドはカムと接触しない。すなわち、第1ロッドが一旦、カムから離れた場合、第1ロッドは、カムが回転している間に、カムと再び接触しない。
【0028】
上述した鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
作動油を貯留するタンクと、
前記第1主室と前記タンクとを連通する第3流路と、
前記第3流路に設けられる第2弁と、
を備え、
前記第2弁は、前記第1流路の作動油の圧力によって操作され、
前記第1流路の作動油の圧力が第3閾値以上であるとき、前記第2弁は開くことが好ましい。
油圧回路は、タンクと第3流路と第2弁を備える。第1流路の作動油の圧力が第3閾値以上であるとき、第2弁は開く。このため、第1流路の作動油の圧力が第3閾値以上であるとき、作動油は、第3流路を通じて第1主室からタンクに流れる。これにより、第1ポンプの負荷を効果的に低減できる。すなわち、第1ポンプが消費する動力を効果的に抑制できる。
【0029】
上述した鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、第1流路に連通する第2パイロット管路を備え、
前記第2パイロット管路は、第1流路の作動油の圧力を、第2弁に付与することが好ましい。
油圧回路は第2パイロット管路を備える。このため、第1流路の作動油の圧力によって、第2弁を好適に操作できる。
【0030】
上述した鞍乗型車両において、
前記車高調整機構は、
作動油を収容する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に配置される第2ピストンとを備える第2ポンプと、
を備え、
前記変換機構は、前記第2ピストンに連結され、前記駆動輪の回転によって前記第2ピストンを前記第2シリンダに対して移動させ、
前記油圧回路は、前記第2ポンプに連通接続され、
前記第1ジャッキは、前記第2ポンプから供給される作動油によって前記第1バネに荷重を掛けることが好ましい。
【0031】
車高調整機構は、第1ポンプに加えて、第2ポンプを備える。第2ポンプは、第2シリンダと第2ピストンを備える。変換機構は、第2ピストンに連結される。変換機構は、駆動輪の回転によって第2ピストンを第2シリンダに対して移動させる。言い換えれば、変換機構は、駆動輪の回転運動を、第2ピストンの移動に変換する。上述のとおり、駆動輪は、エンジンによって駆動される。したがって、変換機構は、エンジンの動力の一部を、第2ポンプの駆動力に変換する。よって、第2ポンプに入力される駆動力は、大きい。
【0032】
油圧回路は、第2ポンプと第1ジャッキとを連通接続する。このため、第1ジャッキは、第1ポンプおよび第2ポンプから供給される作動油によって第1バネに荷重を掛ける。よって、第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重を、一層速やかに増大できる。すなわち、鞍乗型車両が発進した後、車高調整機構は、鞍乗型車両の車高を一層速やかに調整できる。
【0033】
上述した鞍乗型車両において、
前記変換機構が前記第1シリンダに対して前記第1ピストンを第1正方向に移動させるとき、前記変換機構は前記第2シリンダに対して前記第2ピストンを前記第1正方向に移動させないことが好ましい。
車高調整機構が消費する動力が脈動することを好適に抑制できる。その結果、駆動輪は、円滑に回転できる。
【0034】
上述した鞍乗型車両において、
前記エンジンによって駆動されない従動輪と、
前記従動輪を懸架する第2サスペンションと、
を備え、
前記第2サスペンションは、
前記従動輪が受ける衝撃を吸収する第2バネと、
伸縮可能に設けられ、前記第2バネの振動を減衰させる第2ダンパと、
を備え、
前記車高調整機構は、
前記油圧回路に連通接続され、前記第1ポンプから供給される作動油によって前記第2バネに荷重を掛ける第2ジャッキと、
を備えることが好ましい。
鞍乗型車両は、従動輪と第2サスペンションを備える。従動輪は、エンジンによって駆動されない。第2サスペンションは、従動輪を懸架する。第2サスペンションは、第2バネと第2ダンパを備える。第2バネは、従動輪が受ける衝撃を吸収する。第2ダンパは、伸縮可能に設けられる。第2ダンパは、第2バネの振動を減衰させる。
【0035】
車高調整機構は、第2ジャッキを備える。第2ジャッキは、第2バネに連結される。第2ジャッキは、第2バネに荷重を掛ける。よって、車高調整機構は、鞍乗型車両の車高を一層好適に調整できる。
【0036】
第2ジャッキは、油圧回路に連通接続される。第2ジャッキは、第1ポンプから供給される作動油によって第2バネに荷重を掛ける。上述の通り、第1ポンプに入力される駆動力は、大きい。したがって、駆動輪が回転し始めた後、第2ジャッキが第2バネに掛ける荷重を、速やかに増大できる。すなわち、鞍乗型車両が発進した後、車高調整機構は、鞍乗型車両の車高を速やかに調整できる。
【0037】
上述した鞍乗型車両において、
前記油圧回路は、
前記第1ポンプと前記第2ジャッキとを連通する第4流路と、
前記第4流路に設けられ、前記第4流路を分離可能なジョイントと、
を備えることが好ましい。
油圧回路は、第4流路とジョイントを備える。このため、第4流路を、第1ポンプ側の流路と、第2ジャッキ側の流路に分離できる。よって、車高調整機構を容易に製造できる。車高調整機構を容易に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両が発進した後、鞍乗型車両の車高を速やかに調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態に係る鞍乗型車両の左側面図である。
図2】第1実施形態の車高調整機構の構成を示す図である。
図3図3(a)、3(b)は、鞍乗型車両の車高を模式的に示す図である。
図4図4(a)、4(b)、4(c)はそれぞれ、第1ジャッキの動きを説明する図である。
図5】油圧回路の流路を模式的に説明する図である。
図6】第1実施形態の車高調整機構を模式的に示すブロック図である。
図7】鞍乗型車両と車高調整機構の動作の手順を例示するフローチャートである。
図8】鞍乗型車両が発進したときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図9】鞍乗型車両が発進したときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図10】ロッドをカムから離すときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図11】ロッドをカムから離すときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図12】鞍乗型車両の車高を下げるときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図13】ロッドをカムに再び接触させるときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図14】第2実施形態の車高調整機構の構成を示す図である。
図15】第2実施形態の車高調整機構を模式的に示すブロック図である。
図16】鞍乗型車両が発進したときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図17】ロッドをカムから離すときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図18】ロッドをカムから離すときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図19】ロッドをカムから離すときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図20】鞍乗型車両の車高を下げるときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図21】ロッドをカムに再び接触させるときの車高調整機構を模式的に示す図である。
図22】変形実施形態の車高調整機構の構成を示す図である。
図23】変形実施形態の車高調整機構の構成を示す図である。
図24】変形実施形態の車高調整機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明に係る鞍乗型車両1について説明する。
【0041】
1.鞍乗型車両1の概略構成
図1は、第1実施形態に係る鞍乗型車両1の左側面図である。
【0042】
図1は、鞍乗型車両1の前後方向X、幅方向Yおよび上下方向Zを示す。前後方向X、幅方向Yおよび上下方向Zは、鞍乗型車両1に乗車した運転者(ライダーともいう)を基準として定義される。前後方向X、幅方向Yおよび上下方向Zは互いに直交する。前後方向Xおよび幅方向Yは、水平である。上下方向Zは、鉛直である。
【0043】
「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「右方」、「左方」はそれぞれ、鞍乗型車両1に乗車した運転者にとっての「前方」、「後方」、「上方」、「下方」、「右方」、「左方」を意味する。本明細書において特に断らない限り、「前方」および「後方」は、前後方向Xと平行な方向のみならず、前後方向Xに近い方向も含む。前後方向Xと近い方向は、例えば前後方向Xとのなす角度が45度以下の方向である。同様に、特に断らない限り、「右方」および「左方」は、幅方向Yと平行な方向のみならず、幅方向Yに近い方向も含む。特に断らない限り、「上方」および「下方」は、上下方向Zと平行な方向のみならず、上下方向Zに近い方向も含む。各図では、参考として、前、後、上、下、右、左を適宜に示す。
【0044】
鞍乗型車両1はオフロード車両である。鞍乗型車両1は、車体フレーム2を備える。
【0045】
鞍乗型車両1は、フロントサスペンション3を備える。フロントサスペンション3は、鞍乗型車両1の前部に配置される。フロントサスペンション3は、車体フレーム2に支持される。フロントサスペンション3は、フロント軸線A1を有する。フロント軸線A1は、車両側面視において、前方かつ下方に延びる。
【0046】
鞍乗型車両1は、前輪4を備える。前輪4は、鞍乗型車両1の前部に配置される。前輪4は、フロントサスペンション3に支持される。フロントサスペンション3は、前輪4を懸架する。
【0047】
鞍乗型車両1は、ハンドル5とシート6を備える。ハンドル5は、フロントサスペンション3に連結される。シート6は、車体フレーム2に支持される。
【0048】
鞍乗型車両1は、エンジン7を備える。エンジン7は、車体フレーム2に支持される。エンジン7は、車体フレーム2に固定される。エンジン7は、内燃機関である。エンジン7は、動力を発生する。
【0049】
鞍乗型車両1は、リアサスペンション8と後輪9を備える。リアサスペンション8は、鞍乗型車両1の後部に配置される。リアサスペンション8は、フロントサスペンション3よりも後方に配置される。リアサスペンション8は、車体フレーム2に支持される。後輪9は、鞍乗型車両1の後部に配置される。後輪9は、リアサスペンション8に支持される。リアサスペンション8は、後輪9を懸架する。
【0050】
リアサスペンション8は、スイングアーム11を備える。スイングアーム11は、車体フレーム2に支持される。スイングアーム11は、車体フレーム2に対して揺動可能である。スイングアーム11は、後輪9を支持する。
【0051】
リアサスペンション8は、ショックアブソーバ12を備える。ショックアブソーバ12は、車体フレーム2に支持される。ショックアブソーバ12は、スイングアーム11を支持する。ショックアブソーバ12は、リア軸線A2を有する。リア軸線A2は、例えば、下方に延びる。
【0052】
鞍乗型車両1は、従動スプロケット18とチェーン19を備える。チェーン19は、従動スプロケット18に巻かれる。チェーン19は、さらに、不図示の駆動スプロケットに巻かれる。駆動スプロケットは、エンジン7の動力を出力する。エンジン7の動力は、チェーン19を介して従動スプロケット18に伝達される。従動スプロケット18に伝達される動力によって、従動スプロケット18は回転する。従動スプロケット18は、回転軸線A3回りに回転する。回転軸線A3は、幅方向Yに延びる。
【0053】
後輪9は、従動スプロケット18に連結される。後輪9は、従動スプロケット18と一体に回転する。後輪9は、回転軸線A3回りに回転する。このように、エンジン7の動力は、従動スプロケット18を介して、後輪9に伝達される。後輪9は、エンジン7によって駆動される。
【0054】
エンジン7の動力は、前輪4に伝達されない。前輪4は、エンジン7によって駆動されない。
【0055】
後輪9は、本発明における駆動輪の例である。リアサスペンション8は、本発明における第1サスペンションの例である。前輪4は、本発明における従動輪の例である。フロントサスペンション3は、本発明における第2サスペンションの例である。
【0056】
図2を参照する。ショックアブソーバ12は、第1バネ13を備える。第1バネ13は、後輪9が受ける衝撃を吸収する。第1バネ13は、リア軸線A2の方向に延びる。第1バネ13は、第1端14を有する。第1バネ13の第1端14は、例えば、第1バネ13の上端である。第1バネ13は、伸縮可能である。第1バネ13は、コイルバネである。
【0057】
ショックアブソーバ12は、第1ダンパ15を備える。第1ダンパ15は、伸縮可能である。第1ダンパ15は、第1バネ13の伸縮を収束させる。第1ダンパ15は、第1バネ13の振動を減衰させる。
【0058】
第1ダンパ15は、ダンパチューブ16を備える。ダンパチューブ16は、車体フレーム2に支持される。第1ダンパ15は、不図示のピストンロッドを備える。ピストンロッドは、ダンパチューブ16に接続される。ピストンロッドは、ダンパチューブ16から下方に延びる。ピストンロッドは、スイングアーム11を支持する。ダンパチューブ16は、第1バネ13の第1端14を支持する。ピストンロッドは、第1バネ13の第2端(不図示)を支持する。ピストンロッドは、ダンパチューブ16に対して、リア軸線A2の方向に移動可能である。ピストンロッドがダンパチューブ16に対して移動することによって、第1ダンパ15はリア軸線A2の方向に伸縮する。
【0059】
2.車高調整機構20の概要
図2を参照する。鞍乗型車両1は、車高調整機構20を備える。車高調整機構20は、第1ジャッキ21を備える。第1ジャッキ21は、第1バネ13に連結される。第1ジャッキ21は、例えば、第1バネ13の第1端14に連結される。第1ジャッキ21は、ダンパチューブ16に支持される。第1バネ13の第1端14は、第1ジャッキ21を介して、ダンパチューブ16に支持される。
【0060】
第1ジャッキ21は、第1バネ13に荷重を掛ける。本明細書では、第1ジャッキ21が第1バネ13に掛ける荷重を、「荷重L」と略記する。荷重Lは、プリロードとも呼ばれる。荷重Lは、例えば、車体フレーム2が第1バネ13に掛ける荷重を含まない。荷重Lは、例えば、運転者Eが第1バネ13に掛ける荷重を含まない。
【0061】
第1ジャッキ21は、荷重Lを変える。具体的には、第1ジャッキ21は、ダンパチューブ16に対して第1バネ13の第1端14をリア軸線A2の方向に移動させる。
【0062】
荷重Lが大きくなるにしたがって、第1バネ13は圧縮され、かつ、第1ダンパ15は伸張する。荷重Lが小さくなるにしたがって、第1バネ13は伸張し、かつ、第1ダンパ15は収縮する。荷重Lが変わることによって、鞍乗型車両1の車高は変わる。
【0063】
図3(a)、3(b)は、鞍乗型車両1の車高を模式的に示す図である。図3(a)、3(b)は、便宜上、鞍乗型車両1を簡素化して示す。このため、図3(a)、3(b)に示す鞍乗型車両1の形状は、図1に示す鞍乗型車両1の形状と異なる。
【0064】
図3(a)では、荷重Lは、第1荷重L1である。第1荷重L1は、比較的に小さい。このため、第1ダンパ15(ショックアブソーバ12)は、比較的に短い。鞍乗型車両1の車高は、比較的に低い。便宜上、図3(a)に示す鞍乗型車両1の車高を、「低位置BL」と呼ぶ。鞍乗型車両1の車高が低位置BLであるとき、鞍乗型車両1に乗車する運転者Eは、運転者Eの足を路面Gに容易に付けることができる。
【0065】
図3(b)では、荷重Lは、第2荷重L2である。第2荷重L2は、第1荷重L1よりも大きい。第1ダンパ15は、比較的に長い。鞍乗型車両1の車高は、比較的に高い。便宜上、図3(b)に示す鞍乗型車両1の車高を、「高位置BH」と呼ぶ。鞍乗型車両1の車高が高位置BHにあるとき、鞍乗型車両1は、走行に適切な姿勢をとる。
【0066】
シート6の高さHは、路面Gからシート6までの上下方向Zの距離である。鞍乗型車両1の車高が低位置BLであるとき、シート6の高さHは第1高さH1である。鞍乗型車両1の車高が高位置BHにあるとき、シート6の高さHは第2高さH2である。第2高さH2は、第1高さH1よりも高い。
【0067】
図2を参照する。車高調整機構20は、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bを備える。第1ポンプ23aは、第1シリンダ24aと第1ピストン25aを備える。第1シリンダ24aは、作動油を収容する。第1ピストン25aは、第1シリンダ24aの内部に配置される。第2ポンプ23bは、第2シリンダ24bと第2ピストン25bを備える。第2シリンダ24bは、作動油を収容する。第2ピストン25bは、第2シリンダ24bの内部に配置される。
【0068】
車高調整機構20は、油圧回路27を備える。油圧回路27は、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bと第1ジャッキ21とに連通接続される。油圧回路27は、第1ポンプ23aから第1ジャッキ21に作動油を送る。油圧回路27は、第2ポンプ23bから第1ジャッキ21に作動油を送る。第1ジャッキ21は、第1ポンプ23aおよび第2ポンプ23bから供給される作動油によって、第1バネ13に荷重Lを掛ける。
【0069】
車高調整機構20は、変換機構29を備える。変換機構29は、第1ピストン25aと第2ピストン25bに連結される。変換機構29は、後輪9に連結される。変換機構29は、後輪9の回転によって、第1ピストン25aを第1シリンダ24aに対して移動させる。変換機構29は、後輪9の回転によって、第2ピストン25bを第2シリンダ24bに対して移動させる。すなわち、変換機構29は、後輪9の回転を、第1ピストン25aの移動および第2ピストン25bの移動に変換する。
【0070】
以下、車高調整機構20の各要素を説明する。
【0071】
3.変換機構29
変換機構29は、カム31を備える。カム31は、後輪9と一体に回転する。カム31は、従動スプロケット18と一体に回転する。カム31は、回転軸線A3回りに回転する。
【0072】
カム31は、例えば、不図示の軸部材に取り付けられる。軸部材は、従動スプロケット18と後輪9を連結する。カム31は、軸部材を介して、従動スプロケット18および後輪9に連結される。
【0073】
カム31は、回転軸線A3と直交する方向に延びる。言い換えれば、カム31は、回転軸線A3の径方向に延びる。カム31は、平板形状を有する。カム31は、周縁部32を有する。周縁部32は、1つ以上(例えば、12個)の山部32aと、1つ以上(例えば、12個)の谷部32bを有する。山部32aと回転軸線A3との間の距離は、谷部32bと回転軸線A3との間の距離よりも、大きい。山部32aと谷部32bは、周方向に交互に並ぶ。
【0074】
変換機構29は、第1ロッド35aと第2ロッド35bを備える。第1ロッド35aと第2ロッド35bはそれぞれ、カム31と接触可能に設けられる。第1ロッド35aと第2ロッド35bはそれぞれ、カム31に押される。
【0075】
第1ロッド35aと第2ロッド35bはそれぞれ、例えば、カム31の前方に配置される。第1ロッド35aと第2ロッド35bは、例えば、上下方向Zに並ぶ。
【0076】
第1ロッド35aは、第1端36aと第2端37aを有する。第2ロッド35bは、第1端36bと第2端37bを有する。第1ロッド35aの第1端36aと第2ロッド35bの第1端36bはそれぞれ、カム31の周縁部32と接触する。
【0077】
第1ロッド35aが谷部32bから山部32aまで登るとき、カム31は、第1ロッド35aを押す。第1ロッド35aが山部32aから谷部32bまで下るとき、カム31は、第1ロッド35aを押さない。第2ロッド35bも、第1ロッド35aと同じように、カム31に対して移動する。
【0078】
ここで、カム31は、第1ロッド35aと第2ロッド35bを交互に押す。具体的には、カム31が第1ロッド35aを押すとき、カム31は第2ロッド35bを押さない。カム31が第2ロッド35bを押すとき、カム31は第1ロッド35aを押さない。すなわち、カム31は、第1ロッド35aと第2ロッド35bを同時に押さない。例えば、第1ロッド35aが山部32aと接触するとき、第2ロッド35bは谷部32bと接触するように、第1ロッド35aと第2ロッド35bは、カム31に対して配置される。
【0079】
4.第1ポンプ23aおよび第2ポンプ23b
第1ポンプ23aの構造を説明する。第1シリンダ24aは、筒形状を有する。第1シリンダ24aは、第1端41aと第2端42aを備える。第1シリンダ24aの第1端41aと第2端42aはそれぞれ、閉塞される。
【0080】
第1ロッド35aは、第1シリンダ24aの第2端42aを貫通する。第1ロッド35aの第1端36aは、第1シリンダ24aの外部に配置される。第1ロッド35aの第2端37aは、第1シリンダ24aの内部に配置される。第1ロッド35aの第2端37aは、第1ピストン25aに連結される。
【0081】
第1ピストン25aは、第1シリンダ24aの内部を、第1主室43aと第1副室44aに仕切る。第1主室43aおよび第1副室44aはそれぞれ、第1シリンダ24aと第1ピストン25aによって区画される。第1主室43aは第1端41aと第1ピストン25aの間に配置される。第1副室44aは第2端42aと第1ピストン25aの間に配置される。第1主室43aおよび第1副室44aはそれぞれ、作動油を貯留する。第1主室43aおよび第1副室44aはそれぞれ、作動油で満たされている。
【0082】
第1ピストン25aは、第1シリンダ24aに対して移動可能である。カム31が第1ロッド35aを押すとき、第1ピストン25aは第1シリンダ24aに対して移動する。
【0083】
ここで、カム31が第1ロッド35aを押すときに第1ピストン25aが第1シリンダ24aに対して移動する方向を、適宜に「第1正方向D1p」と呼ぶ。第1正方向D1pとは反対の方向を、適宜に「第1負方向D1n」と呼ぶ。第1ピストン25aが第1正方向D1pに移動するとき、第1主室43aは収縮し、第1副室44aは伸張する。第1ピストン25aが第1負方向D1nに移動するとき、第1主室43aは伸張し、第1副室44aは収縮する。第1ピストン25aが第1負方向D1nに移動するとき、第1ロッド35aはカム31に向かって移動する。
【0084】
第1ポンプ23aは、第1主ポート45aと第1副ポート46aを有する。第1主ポート45aおよび第1副ポート46aは、第1シリンダ24aに取り付けられる。第1主ポート45aは、第1主室43aと連通する。第1副ポート46aは、第1副室44aと連通する。
【0085】
第1ポンプ23aは、第1弾性体47aを備える。第1弾性体47aは、第1ピストン25aを第1負方向D1nに付勢する。このため、第1弾性体47aは、ピストン25aを介して、第1ロッド35aを付勢する。第1弾性体47aは、第1ロッド35aをカム31に向かって付勢する。具体的には、第1弾性体47aは、第1ロッド35aからカム31に向かう力を、第1ロッド35aに作用させる。
【0086】
その結果、例えば、第1ロッド35aが山部32aから谷部32bまで下るときであっても、第1ロッド35aは、カム31と接触した状態を保つことができる。第1ロッド35aがカム31と接触した状態でカム31が回転するとき、第1ピストン25aは第1シリンダ24aに対して往復移動する。ここで、第1ロッド35aがカム31と接触する状態で第1ピストン25aが移動可能な範囲を、通常領域と呼ぶ。
【0087】
第1弾性体47aは、例えば、第1主室43aに配置される。第1弾性体47aは、例えば、第1端と第2端を有する。第1弾性体47aの第1端は、第1シリンダ24aに連結される。第1弾性体47aの第2端は、第1ピストン25aに連結される。第1弾性体47aは、例えば、バネである。
【0088】
第1ポンプ23aは、第1ストッパ48aを備える。第1ストッパ48aは、第1ピストン25aの限界位置を、規定する。限界位置は、第1ピストン25aが第1シリンダ24aに対して第1正方向D1pに移動可能な限界の位置である。第1ピストン25aが限界位置に位置するとき、第1ストッパ48aは第1ピストン25aと接触する。これにより、第1ピストン25aが限界位置から第1正方向D1pに移動することを、第1ストッパ48aは禁止する。第1ストッパ48aは、例えば、第1主室43aに配置される。第1ストッパ48aは、例えば、第1シリンダ24aに固定される。
【0089】
限界位置は、通常領域から、第1正方向D1pにシフトした位置に設定される。よって、第1ピストン25aが限界位置に位置するとき、第1ロッド35aはカム31と接触しない。
【0090】
第1ポンプ23aと第2ポンプ23bは、例えば、積層される。第2シリンダ24bは、例えば、第1シリンダ24aと接触する。
【0091】
第2ポンプ23bは、第1ポンプ23aと略同じ構造を有する。第2シリンダ24bは、第1端41bと第2端42bを備える。第2ポンプ23bは、第2主室43bと第2副室44bを備える。第2シリンダ24bは、第2主ポート45bを備える。ここで、第2シリンダ24bの第1端41bおよび第2端42bはそれぞれ、第1シリンダ24aの第1端41aおよび第2端42aに対応する要素である。第2主室43b、第2副室44bおよび第2主ポート45bはそれぞれ、第1主室43a、第1副室44aおよび第1主ポート45aに対応する要素である。
【0092】
第2ポンプ23bは、第1副ポート46aに対応する要素を備えない。その代わり、第2副室44bは、第1副室44aと連通している。例えば、第1副室44aと第2副室44bは、連通路49によって、直接的につながっている。
【0093】
第2ポンプ23bは、第2弾性体47bを備える。第2ポンプ23bは、第2ストッパ48bを備える。第2弾性体47bおよび第2ストッパ48bはそれぞれ、第1弾性体47aおよび第1ストッパ48aに対応する要素である。
【0094】
ここで、変換機構29は、第1ピストン25aと第2ピストン25bを交互に、第1正方向D1pに移動させる。具体的には、変換機構29が第1ピストン25aを第1シリンダ24aに対して第1正方向D1pに移動させるとき、変換機構29は第2ピストン25bを第2シリンダ24bに対して第1正方向D1pに移動させない。変換機構29が第1ピストン25aを第1シリンダ24aに対して第1正方向D1pに移動させないとき、変換機構29は第2ピストン25bを第2シリンダ24bに対して第1正方向D1pに移動させる。すなわち、変換機構29は、第1ピストン25aと第2ピストン25bを第1正方向D1pに、同時に移動させない。
【0095】
5.第1ジャッキ21
第1ジャッキ21は、油室51を備える。油室51は、作動油を貯留する。油室51は、作動油で満たされる。油室51は、伸縮可能である。
【0096】
第1ジャッキ21は、固定壁52と可動壁53を備える。固定壁52は、例えば、ダンパチューブ16に固定される。可動壁53は、固定壁52に取り付けられる。可動壁53は、固定壁52に対して摺動可能である。固定壁52と可動壁53は、油室51を区画する。油室51は、例えば、リア軸線A2を中心とする環形状を有する。
【0097】
第1ジャッキ21は、1つのポート54を備える。ポート54は、第1ジャッキ21の油室51に連通する。ポート54は、例えば、可動壁53に取り付けられる。
【0098】
第1ジャッキ21は、バネ受け部55を備える。バネ受け部55は、例えば、可動壁53に固定される。バネ受け部55は、第1バネ13と接続する。バネ受け部55は、第1バネ13の第1端14と接続する。
【0099】
図4(a)、4(b)、4(c)はそれぞれ、第1ジャッキ21の動きを説明する図である。油室51が伸縮するとき、可動壁53は、固定壁52に対して移動する。バネ受け部55は、可動壁53と一体に移動する。油室51が伸縮するとき、バネ受け部55はリア軸線A2の方向に移動する。油室51が伸縮するとき、バネ受け部55はダンパチューブ16に対して移動する。
【0100】
ここで、油室51が伸張するときにバネ受け部55がダンパチューブ16に対して移動する方向を、適宜に「第2正方向D2p」と呼ぶ。第2正方向D2pとは反対の方向を、適宜に「第2負方向D2n」と呼ぶ。
【0101】
荷重Lの向きは、第2正方向D2pである。バネ受け部55が第2正方向D2pに移動するとき、荷重Lは増加する。バネ受け部55が第2正方向D2pに移動するとき、第1バネ13は圧縮される。バネ受け部55が第2負方向D2nに移動するとき、荷重Lは減少する。バネ受け部55が第2負方向D2nに移動するとき、第1バネ13は伸張する。
【0102】
図4(a)では、荷重Lは、第1荷重L1である。荷重Lが第1荷重L1であるとき、バネ受け部55は位置Q1に位置する。
【0103】
図4(b)では、荷重Lは、第2荷重L2である。第2荷重L2は、第1荷重L1よりも大きい。荷重Lが第2荷重L2であるとき、バネ受け部55は位置Q2に位置する。位置Q2は、位置Q1から、第2正方向D2pにシフトした位置である。
【0104】
図4(c)では、荷重Lは、第3荷重L3である。第3荷重L3は、第2荷重L2よりも大きい。荷重Lが第3荷重L3であるとき、バネ受け部55は位置Q3に位置する。位置Q3は、位置Q2から、第2正方向D2pにシフトした位置である。
【0105】
上述の通り、第1ジャッキ21は、リア軸線A2の方向に、ストロークする。ばね受け部55が位置Q3に位置するとき、第1ジャッキ21は、例えば、フルストロークである。ここで、第1ジャッキ21がフルストロークであるとき、第1ジャッキ21のストローク量は最大である。
【0106】
車高調整機構20は、さらに、第1センサ57を備える。第1センサ57は、荷重Lを検出する。例えば、第1センサ57は、第1ジャッキ21のストローク量を検出する。ここで、第1ジャッキ21のストローク量は、荷重Lのみを反映する。よって、第1センサ57が第1ジャッキ21のストローク量を直接的に検出することによって、第1センサ57は荷重Lを間接的に検出できる。
【0107】
第1ジャッキ21のストローク量は、例えば、バネ受け部55の位置である。具体的には、ストローク量は、ダンパチューブ16または固定壁52に対するばね受け部55の位置である。ここで、バネ受け部55の位置は、荷重Lを反映する。例えば、荷重Lが大きくなるにしたがって、バネ受け部55は第2正方向D2pに移動する。よって、第1センサ57がバネ受け部55の位置を直接的に検出することによって、第1センサ57は荷重Lを間接的に検出できる。
【0108】
例えば、第1センサ57は、ばね受け部55が位置Q3に位置するか否かを判別する。例えば、第1センサ57は、第1ジャッキ21がフルストロークであるか否かを判別する。例えば、第1センサ57は、第1ジャッキ21のストローク量が最大であるか否かを判別する。
【0109】
第1センサ57は、例えば、ダンパチューブ16に取り付けられる。第1センサ57は、例えば、ストロークセンサである。ストロークセンサは、第1ジャッキ21のストローク量を好適に検出できる。ストロークセンサは、例えば、接触センサである。接触センサは、ばね受け部55が位置Q3に位置するか否かを好適に検出できる。
【0110】
6.油圧回路27
図2を参照する。油圧回路27は、タンク61を備える。タンク61は、作動油を貯留する。タンク61に貯留される作動油は、所定の圧力に保たれる。
【0111】
タンク61は、油室62aとガス室62bとセパレータ62cを備える。油室62aは、作動油で満たされている。ガス室62bは、ガスおよび空気の少なくともいずれかで充填されている。セパレータ62cは、油室62aとガス室62bを仕切る。セパレータ62cは、移動可能に設けられる。
【0112】
タンク61は、第1ポート63と第2ポート64を備える。第1ポート63と第2ポート64はそれぞれ、タンク61の油室62aに連通する。
【0113】
油圧回路27は、弁66a、66b、67、68、69を備える。弁66a、66b、67-69はそれぞれ、例えば、2ポート2位置である。弁66a、66b、67-69はそれぞれ、オープン(開)とクローズ(閉)の間で切りかわる。弁66a、66b、68、69のノーマル位置はそれぞれ、オープンである。弁67のノーマル位置は、クローズである。弁66a、66b、67-69はそれぞれ、例えば、電磁弁である。
【0114】
油圧回路27は、逆止弁71a、71b、72a、72b、73を備える。
【0115】
油圧回路27は、管路75a、75b、75c、75d、75e、75f、75gを備える。管路75aは、第1主ポート45aと、弁66aと、逆止弁71a、72aとに接続される。管路75bは、第2主ポート45bと、弁66bと、逆止弁71b、72bとに接続される。管路75cは、第1ジャッキ21(ポート54)と、弁67、68と、逆止弁71a、71bとに接続される。管路75dは、第1ポート63と、弁66a、66b、69と、逆止弁72a、72bとに接続される。管路75eは、第1副ポート46aと、弁69と、逆止弁73とに接続される。管路75fは、弁67と、逆止弁73とに接続される。管路75gは、弁68と、第2ポート64とに接続される。
【0116】
図2、5を参照する。図5は、油圧回路27の流路を模式的に説明する図である。以下では、第1主室43aと第2主室43bを、適宜に、主室43と総称する。第1副室44aと第2副室44bを、適宜に、副室44と総称する。第1主ポート45aと第2主ポート45bを、適宜に、主ポート45と総称する。第1副ポート46aを、適宜に、副ポート46と呼ぶ。逆止弁71aと逆止弁71bを、適宜に、逆止弁71と総称する。逆止弁72aと逆止弁72bを、適宜に、逆止弁72と総称する。弁66aと弁66bを、適宜に、弁66と総称する。作動油の流れを説明するとき、第1ジャッキ21の油室51を、適宜に、第1ジャッキ21と略記する。
【0117】
上述した配管75a-75gは、流路F1-F6を構成する。すなわち、油圧回路27は、流路F1-F6を備える。流路F1は、主室43と第1ジャッキ21とを連通する。流路F2は、主室43とタンク61とを連通する。流路F3は、主室43と副室44とを連通する。流路F4は、副室44とタンク61とを連通する。流路F5は、副室44と第1ジャッキ21とを連通する。流路F6は、第1ジャッキ21とタンク61を連通する。流路F1-F6は、相互に、部分的に重複する。
【0118】
流路F2、F4はそれぞれ、タンク61の第1ポート63に接続される。流路F6は、タンク61の第2ポート64に接続される。
【0119】
流路F1は、管路75a、75b、75cによって、構成される。逆止弁71は、流路F1に設けられる。主室43から第1ジャッキ21に作動油が流れることを、流路F1は許容する。第1ジャッキ21から主室43に作動油が流れることを、流路F1は阻止する。
【0120】
流路F2は、管路75a、75b、75dによって、構成される。弁66と逆止弁72は、流路F2に設けられる。弁66と逆止弁72は、並列に設けられる。弁66がオープンのとき、タンク61と主室43との間で作動油が双方向に流れることを、流路F2は許容する。弁66がクローズのとき、主室43からタンク61に作動油が流れることを、流路F2は阻止し、かつ、タンク61から主室43に作動油が流れることを、流路F2は許容する。
【0121】
流路F3は、管路75a、75b、75d、75eによって、構成される。弁66、69と逆止弁72は、流路F3に設けられる。弁66と逆止弁72は、並列に設けられる。弁66、69は、直列に設けられる。弁69と逆止弁72は、直列に設けられる。弁69がクローズのとき、主室43と副室44との間で作動油が流れることを、流路F3は禁止する。弁66、69がともにオープンのとき、主室43と副室44との間で作動油が双方向に流れることを、流路F3は許容する。弁69がオープンであり、かつ、弁66がクローズのとき、主室43から副室44に作動油が流れることを、流路F3は阻止し、かつ、副室44から主室43に作動油が流れることを、流路F3は許容する。
【0122】
流路F4は、管路75d、75eによって、構成される。弁69は、流路F4に設けられる。弁69がオープンのとき、副室44とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F4は許容する。弁69がクローズのとき、副室44とタンク61との間で作動油が流れることを、流路F4は禁止する。
【0123】
流路F5は、管路75c、75e、75fによって、構成される。弁67と逆止弁73は、流路F5に設けられる。弁67と逆止弁73は、直列に設けられる。弁67がオープンのとき、第1ジャッキ21から副室44に作動油が流れることを、流路F5は許容し、かつ、副室44から第1ジャッキ21に作動油が流れることを、流路F5は阻止する。弁67がクローズのとき、副室44と第1ジャッキ21との間で作動油が流れることを、流路F5は禁止する。
【0124】
流路F6は、管路75c、75gによって、構成される。弁68は、流路F6に設けられる。弁68がオープンのとき、第1ジャッキ21とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F6は許容する。弁68がクローズのとき、第1ジャッキ21とタンク61との間で作動油が流れることを、流路F6は禁止する。
【0125】
図6は、車高調整機構20を模式的に示すブロック図である。以下では、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bを、適宜に、ポンプ23と総称する。第1シリンダ24aと第2シリンダ24bを、適宜に、シリンダ24と総称する。第1ピストン25aと第2ピストン25bを、適宜に、ピストン25と総称する。第1ロッド35aと第2ロッド35bを、適宜に、ロッド35と総称する。
【0126】
上述した通り、エンジン7の動力は、後輪9と変換機構29に分配される。変換機構29は、エンジン7の動力の一部を利用して、ピストン25を移動させる。ポンプ23は、作動油を吐出する。油圧回路27は、ポンプ23と第1ジャッキ21との間で作動油を流す。第1ジャッキ21は、ポンプ23から供給された作動油によって、第1バネ13に荷重Lを掛ける。
【0127】
車高調整機構20は、さらに、速度センサ78を備える。速度センサ78は、鞍乗型車両1の走行速度を検出する。例えば、速度センサ78は、前輪4および後輪9の少なくともいずれかの回転速度を検出する。
【0128】
車高調整機構20は、制御部79を備える。制御部79は、弁66-69、第1センサ57および速度センサ78と電気的に接続される。制御部79は、第1センサ57の検出結果および速度センサ78の検出結果を取得する。制御部79は、第1センサ57および速度センサ78の検出結果に基づいて、弁66-69を制御する。
【0129】
制御部79は、CPU(中央演算処理装置)とメモリを含む。メモリは、例えば、ROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を含む。ROMは、システムプログラムおよびCPUの制御プログラム等を記憶する。RAMは、CPUの作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。CPUは、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより種々の機能を実現する。
【0130】
例えば、鞍乗型車両1がECUを備える場合、ECUが制御部79の機能の少なくとも一部を実行してもよい。ここで、ECUは、エンジン制御ユニット(Engine Control Unit)である。例えば、鞍乗型車両1がSCUを備える場合、SCUが制御部79の機能を実行してもよい。ここで、SCUは、サスペンション制御ユニット(Suspension Control Unit)である。
【0131】
7.動作例
図7は、鞍乗型車両1と車高調整機構20の動作の手順を例示するフローチャートである。鞍乗型車両1および車高調整機構20の動作例を説明する。
【0132】
ステップS1:メインスイッチ オフ
メインスイッチは、オフである。ここで、メインスイッチは、鞍乗型車両1の要素である。メインスイッチは、オンとオフの間で、切りかわる。メインスイッチは、例えば、運転者によって操作される。
【0133】
鞍乗型車両1は停止している。エンジン7は、停止している。後輪9は、回転していない。制御部79は起動していない。
【0134】
図2は、メインスイッチがオフであるときの車高調整機構20を示す。弁66-69はそれぞれ、ノーマル位置にある。
【0135】
弁66は、オープンである。主室43は、タンク61に開放される。具体的には、タンク61と主室43との間で作動油が双方向に流れることを、流路F2は許容する。弁69は、オープンである。副室44は、タンク61に開放される。具体的には、副室44とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F4は許容する。副室44は、主室43に開放される。具体的には、主室43と副室44との間で作動油が双方向に流れることを、流路F3は許容する。主室43から第1ジャッキ21に作動油が流れることを、流路F1は許容する。第1ジャッキ21から主室43に作動油が流れることを、流路F1は阻止する。よって、主室43の伸縮、および、副室44の伸縮はそれぞれ、許容される。シリンダ24に対するピストン25の移動は、許容される。すなわち、ポンプ23は、運転可能である。例えば、鞍乗型車両1を押し歩きするとき、ポンプ23は後輪9の回転を妨げない。鞍乗型車両1を押し歩きするとき、後輪9およびカム31は回転し、ピストン25はシリンダ24に対して移動し、主室43は作動油を吐出する。ここで、「鞍乗型車両1を押し歩きする」とは、例えば、エンジン7が停止している状態において、運転者Eの力のみで鞍乗型車両1を移動させることである。
【0136】
弁68は、オープンである。第1ジャッキ21は、タンク61に開放される。具体的には、第1ジャッキ21とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F6は許容する。このため、第1ジャッキ21を加圧することはできない。鞍乗型車両1を押し歩きするときであっても、ポンプ23は第1ジャッキ21を加圧できない。
【0137】
弁67は、クローズである。副室44は、第1ジャッキ21から遮断される。具体的には、副室44と第1ジャッキ21との間で作動油が流れることを、流路F5は禁止する。
【0138】
バネ受け部55は、位置Q1に位置する。荷重Lは、第1荷重L1である。鞍乗型車両1の車高は、低位置BLである。
【0139】
ステップS2:メインスイッチ オン
メインスイッチは、オフからオンに切りかわる。鞍乗型車両1は停止している。エンジン7は、停止している。後輪9は、回転していない。制御部79は起動する。
【0140】
制御部79は、弁66-69を操作する。弁66、68、69は、オープンを保つ。弁67は、クローズを保つ。すなわち、ステップS2における弁66―69の条件は、ステップS1における弁66―69の条件と同じである。
【0141】
ステップS3:エンジン7 始動
エンジン7は始動する。鞍乗型車両1は停止している。後輪9は、回転していない。
【0142】
制御部79は、弁66-69を操作する。弁66は、オープンからクローズに切りかわる。流路F2は、主室43からタンク61に作動油が流れることを、阻止する。流路F3は、主室43から副室44に作動油が流れることを、阻止する。弁68は、オープンからクローズに切りかわる。第1ジャッキ21は、タンク61から遮断される。これにより、主室43から吐出された作動油は、第1ジャッキ21のみに流入する。さらに、第1ジャッキ21から作動油が流出することは、禁止される。このため、ポンプ23は、第1ジャッキ21を加圧できるようになる。弁67は、クローズを保つ。弁69は、オープンを保つ。
【0143】
ステップS4:発進/車高が上がる
鞍乗型車両1は、発進する。後輪9は、回転し始める。
【0144】
図8は、鞍乗型車両1が発進したときの車高調整機構20を模式的に示す図である。図8は、作動油の流れを模式的に示す。
【0145】
ステップS4における弁66―69の条件は、ステップS3における弁66―69の条件と同じである。
【0146】
変換機構29は、ピストン25を移動させ始める。ポンプ23は、作動油を吐出し始める。油圧回路27は、ポンプ23から第1ジャッキ21に作動油を送り始める。荷重Lは、増加し始める。鞍乗型車両1の車高は、上がり始める。以下、具体的に説明する。
【0147】
図8では、カム31は第1ロッド35aを押す。第1ピストン25aは、第1弾性体47aの弾性力に抗って、第1正方向D1pに移動する。第1主室43aは収縮する。第1主室43aの圧力は、上昇する。第1ポンプ23aは、第1主室43aから作動油を吐出する。作動油は、流路F1を通じて、第1主室43aから第1ジャッキ21に流れる。
【0148】
第1ジャッキ21の油室51の圧力は、上昇する。第1ジャッキ21の油室51は、第1バネ13の反力に抗って、伸張する。バネ受け部55は、位置Q1から第2正方向D2pに移動する。荷重Lは、第1荷重L1から増大する。鞍乗型車両1の車高は、低位置BLから高くなる。
【0149】
第1副室44aは伸張する。作動油は、第1副室44aに流入する。例えば、作動油は、連通路49を通じて、第2副室44bから第1副室44aに流れる。例えば、作動油は、流路F4を通じて、タンク61から第1副室44aに流れる。
【0150】
第2ピストン25bは、第2弾性体47bの弾性力にしたがって、第1負方向D1nに移動する。第2主室43bは伸張する。作動油は、第2主室43bに流入する。例えば、作動油は、流路F2を通じて、タンク61から第2主室43bに流れる。例えば、作動油は、流路F3を通じて、副室44から第2主室43bに流れる。
【0151】
第2副室44bは収縮する。作動油は、連通路49を通じて、第2副室44bから第1副室44aに流れる。
【0152】
図9は、鞍乗型車両1が発進したときの車高調整機構20を模式的に示す図である。図9では、カム31は第1ロッド35aを押さない。第1ピストン25aは第1負方向D1nに移動する。第1主室43aは伸張する。作動油は、第1主室43aに流入する。例えば、作動油は、流路F2を通じて、タンク61から第1主室43aに流れる。例えば、作動油は、流路F3を通じて、副室44から第1主室43aに流れる。
【0153】
第1副室44aは収縮する。作動油は、第1副室44aから流出する。例えば、作動油は、連通路49を通じて、第1副室44aから第2副室44bに流れる。例えば、作動油は、流路F4を通じて、第1副室44aからタンク61に流れる。
【0154】
カム31は第2ロッド35bを押す。第2ピストン25bは、第1正方向D1pに移動する。第2主室43bは収縮する。第2ポンプ23bは、第2主室43bから作動油を吐出する。作動油は、流路F1を通じて、第2主室43bから第1ジャッキ21に流れる。
【0155】
第1ジャッキ21の油室51は、さらに、加圧される。第1ジャッキ21の油室51は、さらに、伸張する。バネ受け部55は、さらに、第2正方向D2pに移動する。荷重Lは、さらに、増大する。鞍乗型車両1の車高は、さらに、高くなる。
【0156】
図8、9に示すとおり、カム31がロッド35を押すとき、主室43は作動油を吐出する。流路F1は、主室43から第1ジャッキ21に作動油を送る。よって、ポンプ23は第1ジャッキ21を好適に加圧できる。すなわち、ポンプ23は第1ジャッキ21を好適に駆動できる。
【0157】
流路F1は、本発明における第1流路の例である。
【0158】
鞍乗型車両1の走行距離が増加するにしたがって、カム31がロッド35を押す回数は増加する。カム31がロッド35を押す回数が増加するにしたがって、ポンプ23が第1ジャッキ21に供給する作動油の量は増加する。ポンプ23が第1ジャッキ21に供給する作動油の量が増加するにしたがって、荷重Lは増加する。荷重Lが増加するにしたがって、鞍乗型車両1の車高は上がる。このように、鞍乗型車両1の車高は、鞍乗型車両1の走行距離によって決まる。
【0159】
ステップS5:荷重Lが所定値か?
制御部79は、第1センサ57の検出結果を取得する。制御部79は、第1センサ57の検出結果に基づいて、荷重Lを判定する。具体的には、制御部79は、荷重Lが第3荷重L3であるか否かを判定する。
【0160】
例えば、制御部79は、第1センサ57の検出結果に基づいて、バネ受け部55が位置Q3に位置するか否かを判断する。バネ受け部55が位置Q3に位置すると制御部79が判断する場合、荷重Lが第3荷重L3であると制御部79は判定する。バネ受け部55が位置Q3に位置すると制御部79が判断しない場合、荷重Lが第3荷重L3であると制御部79は判定しない。
【0161】
荷重Lが第3荷重L3であると制御部79が判定しない場合、ステップS5は、再び、実行される。これにより、制御部79は荷重Lを監視する。荷重Lが第3荷重L3であると制御部79が判定する場合、ステップS6に進む。
【0162】
ステップS6:ロッド35をカム31から離す
図10は、ロッド35をカム31から離すときの車高調整機構20を模式的に示す図である。制御部79は、弁66-69を操作する。弁66は、クローズからオープンに切りかわる。弁67は、クローズからオープンに切りかわる。弁68は、クローズを保つ。弁69は、オープンからクローズに切りかわる。ここで、弁67がクローズからオープンに切りかわるタイミングは、弁66がクローズからオープンに切りかわるタイミングと同じである。弁69がオープンからクローズに切りかわるタイミングも、弁66がクローズからオープンに切りかわるタイミングと同じである。
【0163】
副室44は主室42から遮断される。副室44はタンク61から遮断される。第1ジャッキ21と副室44は、流路F5を通じて連通する。具体的には、第1ジャッキ21から副室44に作動油が流れることを、流路F5は許容する。副室44から第1ジャッキ21に作動油が流れることを、流路F5は阻止する。第1ジャッキ21の油圧によって、副室44の圧力は上昇する。主室43とタンク61は、流路F2を通じて連通する。具体的には、タンク61と主室43との間で作動油が双方向に流れることを、流路F2は許容する。主室43の圧力は、副室44の圧力よりも低くなる。第1ピストン25aは、第1弾性体47aの弾性力に抗して、第1正方向D1pに移動する。第2ピストン25bも、第2弾性体47bの弾性力に抗して、第1正方向D1pに移動する。副室44は、伸張する。作動油は、流路F5を通じて第1ジャッキ21から副室44に流れる。主室43は、収縮する。作動油は、流路F2を通じて主室43からタンク61に流れる。
【0164】
第1ジャッキ21の油室51は、収縮する。バネ受け部55は、位置Q3から第2負方向D2nに移動する。荷重Lは、第3荷重L3から減少する。鞍乗型車両1の車高は、低くなる。
【0165】
図11は、ロッド35をカム31から離すときの車高調整機構20を模式的に示す図である。ピストン25は、限界位置まで移動する。第1ピストン25aと第2ピストン25bはそれぞれ、第1ストッパ48aと第2ストッパ48bに接触する。ピストン25の移動は限界位置で止まる。作動油の流れは止まる。
【0166】
ピストン25が限界位置に到達した後も、弁69はクローズを保つ。副室44から作動油が流出することを、弁69と逆止弁73は禁止する。副室44の収縮は規制される。ピストン25が第1負方向D1nに移動することは、規制される。ピストン25は、限界位置で静止する。副室44は、主室43の圧力よりも高い圧力を保つ。主室43の圧力は、タンク61の圧力と等しい。
【0167】
ロッド35は、カム31から離れる。カム31がロッド35と接触しない状態で、カム31は回転する。カム31は、ロッド35を押さない。カム31は、無負荷で回転する。変換機構29は、ピストン25を移動させない。
【0168】
第1ジャッキ21の油室51の収縮は、止まる。バネ受け部55は、位置Q2で静止する。荷重Lは、第2荷重L2に保たれる。
【0169】
鞍乗型車両1の車高は、高位置BHに保たれる。鞍乗型車両1の車高が高位置BHに保たれた状態で、鞍乗型車両1は走行を続ける。
【0170】
このように、荷重Lが第3荷重L3まで上昇したとき、弁67は開く。言い換えれば、バネ受け部55が位置Q3に到達したとき、弁67は開く。これにより、ピストン25を移動させ、ロッド35をカム31から離す。
【0171】
弁67は、本発明における第1弁の例である。第3荷重L3は、本発明における第1閾値の例である。流路F5は、本発明における第2流路の例である。
【0172】
ステップS7:止まる直前か?
制御部79は、速度センサ78の検出結果を取得する。制御部79は、速度センサ78の検出結果に基づいて、鞍乗型車両1が止まる直前であるかを判定する。例えば、制御部79は、所定時間の経過時に鞍乗型車両1が止まるか否かを推測する。ここで、所定時間は、比較的に短い。所定時間は、例えば、5秒以下である。
【0173】
例えば、制御部79は、速度センサ78の検出結果に基づいて、鞍乗型車両1の速度と鞍乗型車両1の加速度を算出する。鞍乗型車両1の速度が第1条件を満たすか否かを、制御部79は判定する。第1条件は、例えば、鞍乗型車両1の速度が5[km/h]以下であることである。鞍乗型車両1の加速度が第2条件を満たすか否かを、制御部79は判定する。第2条件は、例えば、鞍乗型車両1の加速度が負の値であることである。鞍乗型車両1の加速度が負の値であることは、鞍乗型車両1が減速していることに相当する。第1条件と第2条件の両方が満たされていると制御部79が判断したとき、鞍乗型車両1が止まる直前であると制御部79は判定する。第1条件と第2条件の両方が満たされていると制御部79が判断しないとき、鞍乗型車両1が止まる直前であると制御部79は判定しない。
【0174】
鞍乗型車両1が止まる直前であると制御部79が判定しない場合、ステップS7は、再び、実行される。これにより、鞍乗型車両1が止まる直前であるか否かを制御部79は監視する。鞍乗型車両1が止まる直前であると制御部79が判定する場合、ステップS8に進む。
【0175】
ステップS8:車高が下がる
図12は、鞍乗型車両1の車高が下がるときの車高調整機構20を模式的に示す図である。制御部79は、弁66-69を操作する。弁66は、オープンを保つ。弁67は、オープンを保つ。弁68は、クローズからオープンに切りかわる。弁69は、クローズを保つ。
【0176】
作動油は、流路F6を通じて第1ジャッキ21からタンク61に流れる。第1ジャッキ21の油室51は、収縮する。バネ受け部55は、位置Q2から位置Q1に移動する。荷重Lは、第2荷重L2から第1荷重L1に低下する。
【0177】
鞍乗型車両1の車高は、高位置BHから低位置BLに下がる。
【0178】
荷重Lが第2荷重L2から第1荷重L1に減少するとき、副室44から作動油が流出することを禁止した状態を、弁69と逆止弁73は保つ。したがって、ピストン25は、限界位置で静止する。ロッド35は、カム31から離れた位置で静止する。カム31がロッド35と接触しない状態で、カム31は回転する。
【0179】
ここで、鞍乗型車両1が止まるタイミングと、鞍乗型車両1の車高が低位置BLになるタイミングが、同時であることが好ましい。
【0180】
ステップS9:止まったか?
制御部79は、速度センサ78の検出結果を取得する。制御部79は、速度センサ78の検出結果に基づいて、鞍乗型車両1が止まったか否かを判定する。具体的には、制御部79は、鞍乗型車両1の速度が零であるか否かを判断する。
【0181】
鞍乗型車両1が止まったと制御部79が判定しない場合、ステップS9は、再び、実行される。これにより、鞍乗型車両1が止まったか否かを制御部79は監視する。鞍乗型車両1が止まったと制御部79が判定する場合、ステップS10に進む。
【0182】
ステップS10:ロッド35をカム31に再び接触させる
図13は、ロッド35をカム31に再び接触させるときの車高調整機構20を模式的に示す図である。後輪9の回転は止まる。カム31の回転も止まる。
【0183】
制御部79は、弁66-69を操作する。弁66は、オープンからクローズに切りかわる。弁67は、オープンからクローズに切りかわる。弁68は、オープンからクローズに切りかわる。弁69は、クローズからオープンに切りかわる。
【0184】
主室43からタンク61に作動油が流れることを、流路F2は阻止する。タンク61から主室43に作動油が流れることを、流路F2は許容する。主室43から副室44に作動油が流れることを、流路F3は阻止する。副室44から主室43に作動油が流れることを、流路F3は許容する。副室44とタンク61は、流路F4を通じて連通する。具体的には、副室44とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F4は許容する。第1ジャッキ21はタンク61から遮断される。第1ピストン25aは、第1弾性体47aの弾性力にしたがって、限界位置から第1負方向D1nに移動する。第2ピストン25bも、第2弾性体47bの弾性力にしたがって、限界位置から第1負方向D1nに移動する。副室44は、収縮する。主室43は、伸張する。作動油は、副室44から流出する。作動油は、主室43に流入する。例えば、作動油は、流路F4を通じて、副室44からタンク61に流れる。例えば、作動油は、流路F3を通じて、副室44から主室43に流れる。例えば、作動油は、流路F2を通じて、タンク61から主室43に流れる。副室44の圧力は、タンク61の圧力と等しくなる。
【0185】
ロッド35は、カム31に向かって移動する。カム31が回転していない状態で、ロッド35は、カム31と再び接触する。
【0186】
このように、鞍乗型車両1が止まったとき、車高調整機構20は、ロッド35をカム31に自動的に接触させる。
【0187】
ステップS10の終了後、ステップS4に戻る。なお、ステップS10の油圧回路27は、ステップS3における油圧回路27と同じである。したがって、鞍乗型車両1が再び発進する場合、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を自動的に上げることができる。
【0188】
8.効果
鞍乗型車両1は、エンジン7と後輪9とリアサスペンション8を備える。後輪9は、エンジン7によって駆動される。リアサスペンション8は、後輪9を懸架する。リアサスペンション8は、第1バネ13と第1ダンパ15を備える。第1バネ13は、後輪9が受ける衝撃を吸収する。第1ダンパ15は、伸縮可能に設けられる。第1ダンパ15は、第1バネ13の振動を減衰させる。
【0189】
鞍乗型車両1は、車高調整機構20を備える。車高調整機構20は、第1ジャッキ21を備える。第1ジャッキ21は、第1バネ13に連結される。第1ジャッキ21は、第1バネ13に荷重Lを掛ける。よって、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を好適に調整できる。
【0190】
車高調整機構20は、第1ポンプ23aと変換機構29を備える。第1ポンプ23aは、第1シリンダ24aと第1ピストン25aを備える。第1シリンダ24aは、作動油を収容する。第1ピストン25aは、第1シリンダ24aの内部に配置される。変換機構29は、後輪9と第1ピストン25aに連結される。変換機構29は、後輪9の回転によって第1ピストン25aを第1シリンダ24aに対して移動させる。言い換えれば、変換機構29は、後輪9の回転運動を、第1ピストン25aの移動に変換する。上述のとおり、後輪9は、エンジン7によって駆動される。したがって、変換機構29は、エンジン7の動力の一部を、第1ポンプ23aの駆動力に変換する。よって、第1ポンプ23aに入力される駆動力は、大きい。
【0191】
車高調整機構20は、油圧回路27を備える。油圧回路27は、第1ポンプ23aに連通接続される。油圧回路27は、第1ジャッキ21に連通接続される。第1ジャッキ21は、第1ポンプ23aから供給される作動油によって第1バネ13に荷重Lを掛ける。上述の通り、第1ポンプ23aに入力される駆動力は、大きい。したがって、後輪9が回転し始めた後、第1ジャッキ21は、荷重Lを速やかに増大できる。すなわち、鞍乗型車両1が発進した後、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を速やかに調整できる。具体的には、鞍乗型車両1が発進した後、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を速やかに上げることができる。
【0192】
さらに、荷重Lは、鞍乗型車両1の走行距離によって決まる。すなわち、車高調整機構20が鞍乗型車両1の車高を調整するために要する走行距離は、鞍乗型車両1が走行する路面Gの状態に依存しない。したがって、鞍乗型車両1が走行する路面Gの状態に関わらず、鞍乗型車両1が発進した後、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を速やかに調整できる。
【0193】
以上のとおり、鞍乗型車両1が発進した後、鞍乗型車両1は鞍乗型車両1の車高を速やかに調整できる。
【0194】
変換機構29は、カム31と第1ロッド35aを備える。第1ロッド35aは、カム31と接触可能に設けられる。第1ロッド35aは、カム31に押される。ここで、カム31は、後輪9と一体に回転する。よって、カム31は、第1ロッド35aを効率良く押すことができる。さらに、第1ロッド35aは、第1ピストン25aに連結される。よって、変換機構29は、第1ピストン25aを効率良く移動させることができる。したがって、変換機構29は、第1ポンプ23aを効率良く駆動できる。
【0195】
カム31は、後輪9の回転軸線A3回りに回転する。カム31は、後輪9の回転軸線A3と直交する方向に延びる。よって、カム31は、第1ロッド35aに効率良く動力を伝達できる。
【0196】
車高調整機構20は、第1弾性体47aを備える。第1弾性体47aは、第1ロッド35aをカム31に向かって付勢する。このため、第1ロッド35aがカム31と接触した状態を好適に保つことができる。よって、カム31は、第1ロッド35aを好適に押すことができる。
【0197】
第1ポンプ23aは、第1主室43aを備える。第1主室43aは、第1シリンダ24aと第1ピストン25aとによって区画される。第1主室43aは、作動油を貯留する。カム31が第1ロッド35aを押すとき、第1主室43aは収縮する。したがって、カム31がロッドを押すとき、第1ポンプ23aは第1主室43aから作動油を吐出する。カム31が第1ロッド35aを押すときに第1ポンプ23aが吐出する作動油は、比較的に高い圧力を有する。油圧回路27は、流路F1を備える。流路F1は、第1主室43aと第1ジャッキ21とを連通する。よって、流路F1は、比較的に高い圧力の作動油を第1主室43aから第1ジャッキ21に送る。したがって、第1ポンプ23aは、第1ジャッキ21を好適に駆動できる。第1ジャッキ21は、荷重Lを速やかに増大できる。
【0198】
第1ポンプ23aは、第1副室44aを備える。第1副室44aは、第1シリンダ24aと第1ピストン25aとによって区画される。第1副室44aは作動油を貯留する。カム31が第1ロッド35aを押すとき、第1副室44aは伸張する。よって、第1主室43aの圧力および第1副室44aの圧力によって、第1ピストン25aの移動を容易に制御できる。
【0199】
荷重Lが第3荷重L3まで上昇したとき、第1ジャッキ21の作動油は、比較的に高い圧力を有する。油圧回路27は、流路F5と弁67を備える。流路F5は、第1ジャッキ21と第1副室44aとを連通する。弁67は、流路F5に設けられる。荷重Lが第3荷重L3まで上昇したとき、弁67は開く。このため、荷重Lが第3荷重Lまで上昇したとき、流路F5は、比較的に高い圧力の作動油を第1ジャッキ21から第1副室44aに送る。第1副室44aは伸張する。第1副室44aは、第1ピストン25aおよび第1ロッド35aを移動させる。その結果、第1ロッド35aはカム31から離れる。第1ロッド35aがカム31から離れた後、変換機構29は第1ピストン25aを移動させない。すなわち、第1ロッド35aがカム31から離れた後、変換機構29は第1ポンプ23aに動力を伝達しない。このため、車高調整機構20が消費する動力を効果的に抑制できる。よって、鞍乗型車両1は、本来の走行性能を発揮できる。さらに、鞍乗型車両1の燃費が低下することを効果的に抑制できる。さらに、第1ピストン25aの動作時間を抑制でき、第1ピストン25aの耐久性を向上できる。さらに、第1ロッド35aをカム31から切り離すために、第1ジャッキ21の油圧を利用する。このため、第1ロッド35aをカム31から切り離すための制御を簡素化できる。
【0200】
車高調整機構20は、第1センサ57と制御部79を備える。第1センサ57は荷重Lを検出する。制御部79は、第1センサ57の検出結果に基づいて、弁67を制御する。よって、荷重Lが第3荷重L3まで上昇したとき、弁67は適切に開くことができる。
【0201】
第1センサ57は、第1ジャッキ21のストローク量を検出する。第1ジャッキ21のストローク量は、荷重Lのみを反映する。このため、第1センサ57が第1ジャッキ21のストローク量を検出することによって、第1センサ57は荷重Lを、精度良く、検出できる。さらに、第1センサ57は、荷重Lを、容易に検出できる。
【0202】
第1センサ57は、バネ受け部55の位置を検出する。ここで、バネ受け部55の位置は、荷重Lを反映する。このため、第1センサ57は、荷重Lを好適に検出できる。
【0203】
弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、油圧回路27は、第1副室44aからの作動油の流出を禁止する。このため、第1副室44aの収縮を好適に規制できる。よって、第1ピストン25aが第1負方向D1nに移動することを、好適に規制できる。したがって、第1ロッド35aがカム31に向かって移動することを、好適に規制できる。その結果、弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、第1ロッド35aはカム31と接触しない。すなわち、第1ロッド35aが一旦、カム31から離れた場合、第1ロッド35aは、カム31が回転している間に、カム31と再び接触しない。よって、変換機構29を損傷から好適に保護できる。
【0204】
具体的には、弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、弁69はクローズを保つ。よって、弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、弁69と逆止弁73は第1副室44aからの作動油の流出を禁止する。よって、回転するカム31に第1ロッド35aが再び接触することを、好適に防止できる。
【0205】
荷重Lが第3荷重L3から低下した後も、弁67はオープンを保持する。弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、弁67は、開いた状態を保持する。弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、第1ジャッキ21から副室44に作動油が流れることを、弁67は許容する。後輪9の回転が止まった後に、弁67は閉じる。よって、弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、副室44は、高い圧力を容易に保つことができる。このため、第1ロッド35aが回転するカム31に再び接触することを、確実に防止できる。
【0206】
車高調整機構20は、第1ポンプ23aに加えて、第2ポンプ23bを備える。第2ポンプ23bは、第2シリンダ24bと第2ピストン25bを備える。変換機構29は、第2ピストン25bに連結される。変換機構29は、後輪9の回転によって第2ピストン25bを第2シリンダ24bに対して移動させる。言い換えれば、変換機構29は、後輪9の回転運動を、第2ピストン25bの移動に変換する。上述のとおり、後輪9は、エンジン7によって駆動される。したがって、変換機構29は、エンジン7の動力の一部を、第2ポンプ23bの駆動力に変換する。よって、第2ポンプ23bに入力される駆動力は、大きい。
【0207】
油圧回路27は、第2ポンプ23bと第1ジャッキ21とを連通接続する。このため、第1ジャッキ21は、第1ポンプ23aおよび第2ポンプ23bから供給される作動油によって第1バネ13に荷重Lを掛ける。よって、第1ジャッキ21は、荷重Lを一層速やかに増大できる。すなわち、鞍乗型車両1が発進した後、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を一層速やかに調整できる。
【0208】
変換機構29が第1シリンダ24aに対して第1ピストン25aを第1正方向D1pに移動させるとき、変換機構29は第2シリンダ24bに対して第2ピストン25bを第1正方向D1pに移動させない。よって、変換機構29から第1ピストン25aおよび第2ピストン25bに伝達される動力の時間的な変動幅を、好適に抑制できる。このため、車高調整機構20が使用する動力が脈動することを好適に抑制できる。その結果、後輪9は、円滑に回転できる。
【0209】
変換機構29は、第1ロッド35aに加えて、第2ロッド35bを備える。第2ロッド35bは、カム31と接触可能に設けられる。第2ロッド35bは、第2ピストン25bに連結される。カム31が第1ピストン25aを押すとき、カム31は第2ピストン25bを押さない。このため、カム31の負荷が脈動することを好適に抑制できる。その結果、後輪9は、円滑に回転できる。
【0210】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る鞍乗型車両1は、車高調整機構20の構成の点で、第1実施形態の鞍乗型車両1と異なる。第1実施形態と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。以下では、第1実施形態の構成と異なる第2実施形態の構成を説明する。
【0211】
1.第1ジャッキ21
図14は、第2実施形態の車高調整機構20の構成を示す図である。第1ジャッキ21は、ストッパ59を備える。ストッパ59は、バネ受け部55の限界位置を、規定する。限界位置は、バネ受け部55がダンパチューブ16に対して第2正方向D2pに移動可能な限界の位置である。ストッパ59は、バネ受け部55が限界位置から第2正方向D2pに移動することを禁止する。バネ受け部55が限界位置に位置するとき、第1ジャッキ21のストローク量は最大である。バネ受け部55の限界位置は、例えば、位置Q3である。
【0212】
例えば、ストッパ59は、可動壁53に固定される。例えば、バネ受け部55が位置Q3に位置するとき、ストッパ59は固定壁52と接触する。ストッパ59が固定壁52と接触するとき、ストッパ59が位置Q3から第2正方向D2pに移動することを、固定壁52は禁止する。
【0213】
2.油圧回路27
タンク61の作動油の圧力は、初期圧力に保たれる。
【0214】
油圧回路27は、電磁弁81、82を備える。電磁弁81、82はそれぞれ、例えば、2ポート2位置である。電磁弁81、82はそれぞれ、オープンとクローズの間で切りかわる。電磁弁81のノーマル位置は、オープンである。電磁弁82のノーマル位置は、クローズである。
【0215】
油圧回路27は、パイロット弁83a、83b、84、85を備える。パイロット弁83a、83b、84、85はそれぞれ、作動油の圧力によって操作される。以下では、パイロット弁83a、83b、84、85を操作する作動油の圧力を、パイロット圧と呼ぶ。
【0216】
パイロット弁83aのパイロット圧が所定値P3未満である場合、パイロット弁83aを通る作動油の一方向の流れのみを、パイロット弁83aは許容する。パイロット弁83aのパイロット圧が所定値P3以上である場合、パイロット弁83aはオープンである。パイロット弁83bも、パイロット弁83aと同様に、作動する。
【0217】
パイロット弁84のパイロット圧が所定値P4未満である場合、パイロット弁84はクローズである。パイロット弁84のパイロット圧が所定値P4以上である場合、パイロット弁84はオープンである。
【0218】
パイロット弁85のパイロット圧が所定値P5未満である場合、パイロット弁85はオープンである。パイロット弁85のパイロット圧が所定値P5以上である場合、パイロット弁85はクローズである。
【0219】
油圧回路27は、逆止弁86a、86b、87、88を備える。
【0220】
油圧回路27は、逆止弁89を備える。逆止弁89が受ける作動油の圧力が所定値P9未満であるとき、逆止弁89はクローズである。逆止弁89が受ける作動油の圧力が所定値P9以上であるとき、逆止弁89を通る作動油の一方向の流れのみを、逆止弁89は許容する。
【0221】
上述した所定値P3-P5、P9はそれぞれ、初期圧力よりも高い。
【0222】
油圧回路27は、管路91a、91b、91c、91d、91e、91f、91g、91hを備える。管路91aは、第1主ポート45aと、パイロット弁83aと、逆止弁86aとに接続される。管路91bは、第2主ポート45bと、パイロット弁83bと、逆止弁86bとに接続される。管路91cは、逆止弁86a、86b、87、89に接続される。管路91dは、第1ジャッキ21と、電磁弁81と、逆止弁87、88とに接続される。管路91eは、第1ポート63と、パイロット弁83a、83b、85とに接続される。管路91fは、第1副ポート46aと、パイロット弁84、85とに接続される。管路91gは、パイロット弁84と、逆止弁88とに接続される。管路91hは、第2ポート64と、電磁弁81、82とに接続される。
【0223】
油圧回路27は、圧力保持管路92を備える。圧力保持管路92は、電磁弁82と、逆止弁89とに接続される。
【0224】
油圧回路27は、パイロット管路93、94を備える。パイロット管路93、94は、パイロット圧を供給する。パイロット管路93は、圧力保持管路92から分岐する。パイロット管路93は、パイロット弁84、85に接続される。パイロット管路93は、パイロット弁84、85にパイロット圧を付与する。パイロット管路94は、管路91fから分岐する。パイロット管路94は、パイロット弁83a、83bに接続される。パイロット管路94は、パイロット弁83a、83bにパイロット圧を付与する。
【0225】
以下では、第1主室43aと第2主室43bを、適宜に、主室43と総称する。第1副室44aと第2副室44bを、適宜に、副室44と総称する。逆止弁86aと逆止弁86bを、適宜に、逆止弁86と総称する。パイロット弁83aとパイロット弁83bを、適宜に、パイロット弁83と総称する。作動油の流れを説明するとき、第1ジャッキ21の油室51を、適宜に、第1ジャッキ21と略記する。
【0226】
上述した配管91a-91hは、流路F1-F6を構成する。すなわち、第2実施形態においても、油圧回路27は、流路F1-F6を備える。流路F1-F6は、相互に、部分的に重複する。
【0227】
主室43と第1ジャッキ21との間の流路F1は、管路91a-91dによって、構成される。逆止弁86、87は、流路F1に設けられる。逆止弁86、87は、直列に設けられる。主室43から第1ジャッキ21に作動油が流れることを、流路F1は許容する。第1ジャッキ21から主室43に作動油が流れることを、流路F1は阻止する。
【0228】
圧力保持管路92は、流路F1から分岐する。逆止弁89は、流路F1と圧力保持管路92との間に設けられる。流路F1の油圧が所定値P9未満であるとき、作動油が流路F1から圧力保持管路92に流れることを、逆止弁89は阻止し、かつ、作動油が圧力保持管路92から流路F1に流れることを、逆止弁89は阻止する。流路F1の油圧が作動圧力P9以上であるとき、作動油が流路F1から圧力保持管路92に流れることを、逆止弁89は許容し、かつ、作動油が圧力保持管路92から流路F1に流れることを、逆止弁89は阻止する。
【0229】
電磁弁82は、圧力保持管路92とタンク61との間に設けられる。電磁弁82がオープンのとき、圧力保持管路92は、タンク61に開放される。電磁弁82がクローズのとき、圧力保持管路92は、タンク61から遮断される。
【0230】
電磁弁82が閉じている状態で流路F1の圧力が逆止弁89の所定値P9以上になった場合、圧力保持管路92は、流路F1の圧力の最大値と等しい圧力を保持する。電磁弁82が開くとき、圧力保持管路92の圧力は基準圧力にリセットされる。
【0231】
主室43とタンク61との間の流路F2は、管路91a、91b、91eによって、構成される。パイロット弁83は、流路F2に設けられる。パイロット弁83のパイロット圧が所定値P3未満であるとき、主室43からタンク61に作動油が流れることを、流路F2は阻止し、かつ、タンク61から主室43に作動油が流れることを、流路F2は許容する。パイロット弁83がオープンであるとき、主室43とタンク61との間で双方向に作動油が流れることを、流路F2は許容する。
【0232】
主室43と副室44との間の流路F3は、管路91a、91b、91e、91fによって、構成される。パイロット弁83、85は、流路F3に設けられる。パイロット弁83、85は、直列に設けられる。パイロット弁85がクローズのとき、主室43と副室44との間で作動油が流れることを、流路F3は禁止する。パイロット弁85がオープンであり、かつ、パイロット弁83のパイロット圧が所定値P3未満であるとき、主室43から副室44に作動油が流れることを、流路F3は阻止し、かつ、副室44から主室43に作動油が流れることを、流路F3は許容する。パイロット弁83、85がともにオープンであるとき、主室43と副室44との間で双方向に作動油が流れることを、流路F3は許容する。
【0233】
副室44とタンク61との間の流路F4は、管路91e、91fによって、構成される。パイロット弁85は、流路F4に設けられる。パイロット弁85がオープンのとき、副室44とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F4は許容する。パイロット弁85がクローズのとき、副室44とタンク61との間で作動油が流れることを、流路F4は禁止する。
【0234】
第1ジャッキ21と副室44との間の流路F5は、管路91d、91f、91gによって、構成される。パイロット弁84と逆止弁88は、流路F5に設けられる。パイロット弁84と逆止弁88は、直列に設けられる。パイロット弁84がオープンのとき、第1ジャッキ21から副室44に作動油が流れることを、流路F5は許容し、かつ、副室44から第1ジャッキ21に作動油が流れることを、流路F5は阻止する。パイロット弁84がクローズのとき、副室44と第1ジャッキ21との間で作動油が流れることを、流路F5は禁止する。
【0235】
第1ジャッキ21とタンク61との間の流路F6は、管路91d、91hによって、構成される。電磁弁81は、流路F6に設けられる。電磁弁81がオープンのとき、第1ジャッキ21とタンク61との間で作動油が双方向に流れることを、流路F6は許容する。電磁弁81がクローズのとき、第1ジャッキ21とタンク61との間で作動油が流れることを、流路F6は禁止する。
【0236】
図15は、第2実施形態の車高調整機構20を模式的に示すブロック図である。車高調整機構20は、第1実施形態で説明した第1センサ57を備えていない。制御部79は、油圧回路27を制御する。具体的には、制御部79は、電磁弁81、82を制御する。
【0237】
3.動作例
第2実施形態の鞍乗型車両1および車高調整機構20の動作例を説明する。第2実施形態の動作の手順は、第1実施形態の動作の手順からステップS5を省いたものに相当する。よって、便宜上、図7のフローチャートを参照する。なお、第1実施形態の動作例と同じ動作については、適宜に説明を省略する。
【0238】
ステップS1:メインスイッチ オフ
図14は、メインスイッチがオフであるときの車高調整機構20を示す。電磁弁81、82は、ノーマル位置にある。
【0239】
主室43、副室44はそれぞれ、初期圧力である。各流路F1-F6および圧力保持管路92も、初期圧力である。パイロット管路93、94も、初期圧力である。パイロット弁83のパイロット圧は、所定値P3未満である。パイロット弁84のパイロット圧は、所定値P4未満である。パイロット弁85のパイロット圧は、所定値P5未満である。流路F1の圧力は、逆止弁89の所定値P9未満である。
【0240】
流路F1は、主室43から第1ジャッキ21への流れ方向のみ、開放される。流路F2は、タンク61から主室43への流れ方向のみ、開放される。流路F3は、副室44から主室43への流れ方向のみ、開放される。流路F4は、双方向に開放される。流路F5は、閉じられる。流路F6は、双方向に開放される。圧力保持管路92は、流路F1およびタンク61から遮断される。
【0241】
第1ジャッキ21は、初期圧力である。バネ受け部55は、位置Q1に位置する。荷重Lは、第1荷重L1である。鞍乗型車両1の車高は、低位置BLである。
【0242】
ステップS2:メインスイッチ オン
エンジン7は停止している。鞍乗型車両1の速度は零である。制御部79は起動する。制御部79は、エンジン7が停止しているか否かを監視する。制御部79は、鞍乗型車両1の速度を監視する。
【0243】
制御部79は、電磁弁81、82を操作する。電磁弁81はオープンを保つ。電磁弁82はクローズを保つ。
【0244】
ここで、制御部79は、エンジン7の状態と鞍乗型車両1の速度に基づいて、電磁弁82を制御する。具体的には、エンジン7が停止しているとき、制御部79は、電磁弁82をクローズにする。エンジン7が稼働し、かつ、鞍乗型車両1の速度が零であるとき、制御部79は電磁弁82をオープンにする。エンジン7が稼働し、かつ、鞍乗型車両1の速度が零よりも大きいとき、制御部79は電磁弁82をクローズにする。本ステップS2ではエンジン7が停止しているので、制御部79は電磁弁82をクローズにする。
【0245】
ステップS3:エンジン始動
エンジン7は稼働し始める。鞍乗型車両1の速度は零である。制御部79は、エンジン7の状態、および、鞍乗型車両1の速度を監視する。制御部79は、電磁弁81、82を操作する。
【0246】
電磁弁81は、オープンからクローズに切りかわる。流路F6は、閉じられる。第1ジャッキ21を加圧することが可能になる。
【0247】
エンジン7が稼働し、かつ、鞍乗型車両1の速度が零であるので、制御部79は電磁弁82をオープンにする。電磁弁82は、クローズからオープンに切りかわる。圧力保持管路92は、タンク61と連通する。
【0248】
ステップS4:発進/車高が上がる
鞍乗型車両1は、発進する。後輪9は、回転し始める。鞍乗型車両1の速度は、零よりも大きくなる。制御部79は、エンジン7の状態、および、鞍乗型車両1の速度を監視する。
【0249】
図16は、鞍乗型車両1が発進したときの車高調整機構20を模式的に示す図である。制御部79は、電磁弁81、82を操作する。電磁弁81は、クローズを保つ。エンジン7が稼働し、かつ、鞍乗型車両1の速度が零よりも大きいので、制御部79は電磁弁82をクローズにする。電磁弁82は、オープンからクローズに切りかわる。圧力保持管路92は、タンク61から遮断される。
【0250】
カム31はロッド35を押す。ピストン25は、シリンダ24に対して移動する。主室43の圧力は、基準圧力から上昇する。ポンプ23は、主室43から作動油を吐出する。作動油は、流路F1を通じて、主室43から第1ジャッキ21に流れる。
【0251】
第1ジャッキ21の油室51の圧力は、基準圧力から上昇する。バネ受け部55は、位置Q1から第2正方向D2pに移動する。荷重Lは、第1荷重L1から増大する。鞍乗型車両1の車高は、低位置BLから高くなる。
【0252】
ステップS6:ロッド35をカム21から離す
図17は、ロッド35をカム21から離すときの車高調整機構20を模式的に示す図である。バネ受け部55は、限界位置に到達する。バネ受け部55は、例えば、位置Q3に到達する。荷重Lは、例えば、第3荷重L3まで上昇する。ストッパ59は、固定壁52と接触する。第1ジャッキ21の油室51の伸張は、止まる。バネ受け部55の移動は、止まる。
【0253】
主室43は作動油の吐出を継続する。第1ジャッキ21の油室51の圧力は、さらに上昇する。流路F1の圧力も、さらに、上昇する。
【0254】
流路F1の圧力は、逆止弁89の所定値P9以上になる。作動油は、逆止弁89を通じて、流路F1から圧力保持管路92へ流れる。圧力保持管路92の圧力は、上昇する。圧力保持管路92の圧力は、流路F1の圧力と等しくなる。パイロット管路93の圧力も、流路F1と等しくなる。パイロット弁84、85の各パイロット圧はそれぞれ、上昇する。
【0255】
ここで、所定値P9は、荷重Lが第3荷重L3であるときの流路F1の作動油の圧力よりも、高い。このため、荷重Lが第3荷重L3未満であるとき、流路F1の作動油の圧力は、所定値P9よりも低い。よって、荷重Lが第3荷重L3未満であるとき、作動油が流路F1から圧力保持管路92へ流れることを、逆止弁89は阻止する。少なくとも第1受け部55が限界位置に到達するまでは、作動油が流路F1から圧力保持管路92へ流れることを、逆止弁89は阻止する。
【0256】
図18は、ロッド35をカム21から離すときの車高調整機構20を模式的に示す図である。パイロット弁85のパイロット圧は、所定値P5以上になる。パイロット弁85は、パイロット弁85のパイロット圧によって、オープンからクローズに切りかわる。流路F3、F4は閉じられる。副室44は、主室43およびタンク61から遮断される。
【0257】
パイロット弁84のパイロット圧は、所定値P4以上になる。パイロット弁84は、パイロット弁84のパイロット圧によって、クローズからオープンに切りかわる。流路F5は、第1ジャッキ21から副室44への流れ方向のみ、開放される。
【0258】
ここで、パイロット弁85がオープンからクローズに切りかわり、その後、パイロット弁84がクローズからオープンに切りかわることが好ましい。例えば、所定値P4は、所定値P5よりも高い値に設定されることが好ましい。
【0259】
管路91fおよび副室44の圧力は、基準圧力から上昇する。パイロット管路94の圧力も、基準圧力から上昇する。パイロット弁83のパイロット圧は、所定値P3以上になる。パイロット弁83は、パイロット弁83のパイロット圧によって、オープンに切りかわる。主室43とタンク61との間で双方向に作動油が流れることを、パイロット弁83は許容する。主室43とタンク61との間の流路F2は、開放される。
【0260】
ピストン25は、第1正方向D1pに移動する。主室43は、収縮する。作動油は、流路F2を通じて主室43からタンク61に流れる。副室44は、伸張する。作動油は、流路F5を通じて第1ジャッキ21から副室44に流れる。
【0261】
第1ジャッキ21の油室51の圧力は、低下する。第1ジャッキ21の油室51は、収縮する。バネ受け部55は、位置Q3から、第2負方向D2nに移動する。荷重Lは、第3荷重L3から減少する。
【0262】
第1ジャッキ21の油室51の圧力の低下によって、流路F1の圧力が所定値P9よりも低くなる。逆止弁89は閉じる。作動油が流路F1から圧力保持管路92に流れることを、逆止弁89は阻止する。圧力保持管路92は、流路F1から、遮断される。
【0263】
圧力保持管路92は、比較的に高い圧力を保持する。圧力保持管路92は、所定値P4、P5のいずれよりも高い圧力を保持する。パイロット管路93は、所定値P4、P5のいずれよりも高いパイロット圧を、パイロット弁84、85に付与する。パイロット弁84、85の各パイロット圧は、所定値P4、P5のいずれよりも高い圧力に保たれる。パイロット弁85は、クローズを維持する。パイロット弁84は、オープンを維持する。
【0264】
図19は、ロッド35をカム21から離すときの車高調整機構20を模式的に示す図である。ピストン25は、限界位置で止まる。副室44の伸張は止まる。主室43の収縮は止まる。作動油の流れは止まる。
【0265】
副室44から作動油が流出することを、パイロット弁85および逆止弁88は禁止する。副室44の収縮は規制される。ピストン25は、限界位置で静止する。
【0266】
副室44は、基準圧力よりも高い圧力を保持する。主室43は、基準圧力と等しい圧力を有する。
【0267】
ロッド35は、カム31から離れる。カム31がロッド35と接触しない状態で、カム31は回転する。カム31は、ロッド35を押さない。変換機構29は、ピストン25を移動させない。
【0268】
第1ジャッキ21の油室51の収縮は、止まる。バネ受け部55は、位置Q2で静止する。荷重Lは、第2荷重L2に保たれる。
【0269】
鞍乗型車両1の車高は、高位置BHに保たれる。鞍乗型車両1の車高が高位置BHに保たれた状態で、鞍乗型車両1は走行を続ける。
【0270】
このように、荷重Lが第3荷重L3まで上昇したとき、パイロット弁84は開く。言い換えれば、バネ受け部55が限界位置(位置Q3)に到達したとき、パイロット弁84は開く。これにより、ピストン25を限界位置まで移動させ、ロッド35をカム31から離す。
【0271】
流路F1は、本発明における第1流路の例である。流路F5は、本発明における第2流路の例である。パイロット弁84は、本発明における第1弁の例である。第3荷重L3は、本発明における第1閾値の例である。パイロット弁84の所定値P4は、本発明における第2閾値の例である。パイロット管路93は、本発明における第1パイロット管路の例である。逆止弁89は、本発明における第1逆止弁の例である。
【0272】
ステップS7:止まる直前か?
制御部79は、鞍乗型車両1の速度を監視する。制御部79は、速度センサ78の検出結果に基づいて、鞍乗型車両1が止まる直前であるかを判定する。鞍乗型車両1が止まる直前であると制御部79が判定しない場合、ステップS7は、再び、実行される。これにより、鞍乗型車両1が止まる直前であるか否かを、制御部79は監視する。鞍乗型車両1が止まる直前であると制御部79が判定する場合、ステップS8に進む。
【0273】
ステップS8:車高が下がる
図20は、鞍乗型車両1の車高を下げるときの車高調整機構20を模式的に示す図である。制御部79は、電磁弁81、82を操作する。電磁弁81は、クローズからオープンに切りかわる。電磁弁82は、クローズを保つ。
【0274】
作動油は、流路F6を通じて第1ジャッキ21からタンク61に流れる。第1ジャッキ21の油室51の圧力は、初期圧力まで低下する。第1ジャッキ21の油室51は、収縮する。バネ受け部55は、位置Q2から位置Q1に移動する。荷重Lは、第2荷重L2から第1荷重L1に低下する。
【0275】
鞍乗型車両1の車高は、高位置BHから低位置BLに下がる。
【0276】
第1ジャッキ21の油室51の圧力に低下に伴い、流路F1の圧力は低下する。流路F1の圧力は、初期圧力まで低下する。
【0277】
ステップS9:止まったか?
制御部79は、速度センサ78の検出結果に基づいて、鞍乗型車両1が止まったか否かを判定する。鞍乗型車両1が止まったと制御部79が判定しない場合、ステップS9は、再び、実行される。これにより、鞍乗型車両1が止まったか否かを、制御部79は監視する。鞍乗型車両1が止まったと制御部79が判定する場合、ステップS10に進む。
【0278】
ステップS10:ロッド35をカム31に再び接触させる
図21は、ロッド35をカム31に再び接触させるときの車高調整機構20を模式的に示す図である。後輪9の回転は止まる。カム31の回転も止まる。
【0279】
制御部79は、弁81、82を操作する。
【0280】
電磁弁81は、オープンからクローズに切りかわる。流路F6は閉じられる。第1ジャッキ21は、タンク61から遮断される。
【0281】
電磁弁82は、クローズからオープンに切りかわる。圧力保持管路92は、タンク61と連通する。作動油は、圧力保持管路92からタンク61に流れる。圧力保持管路92の圧力は、基準圧力まで低下する。パイロット管路93の圧力も、初期圧力まで低下する。
【0282】
パイロット弁84のパイロット圧は、所定値P4よりも低くなる。パイロット弁84は、オープンからクローズに切りかわる。流路F5は、閉じられる。副室44は、第1ジャッキ21から遮断される。
【0283】
パイロット弁85のパイロット圧は、所定値P5よりも低くなる。パイロット弁85は、クローズからオープンに切りかわる。流路F4は開放される。流路F3も開放される。
【0284】
副室44とタンク61は、流路F4を通じて連通する。ピストン25は、限界位置から第1負方向D1nに移動する。副室44は、収縮する。主室43は、伸張する。作動油は、副室44から流出する。作動油は、主室43に流入する。例えば、作動油は、流路F4を通じて、副室44からタンク61に流れる。例えば、作動油は、流路F3を通じて、副室44から主室43に流れる。例えば、作動油は、流路F2を通じて、タンク61から主室43に流れる。副室44の油圧は、タンク61の油圧と等しくなる。副室44の圧力は、初期圧力まで低下する。管路91fの圧力も、初期圧力まで低下する。
【0285】
管路91fおよび副室44の圧力の低下に伴って、パイロット管路94の圧力も初期圧力まで低下する。パイロット弁83のパイロット圧は、所定値P3よりも低くなる。パイロット弁83は、オープンから切りかわる。主室43からタンク61に作動油が流れることを、パイロット弁83は阻止する。主室43から副室44に作動油が流れることを、パイロット弁83は阻止する。流路F2は、タンク61から主室43への流れ方向のみ、開放される。流路F3は、副室44から主室43への流れ方向のみ、開放される。
【0286】
ロッド35は、カム31に向かって移動する。ロッド35は、カム31と再び接触する。カム31が回転していない状態で、ロッド35は、カム31と再び接触する。
【0287】
ステップS10の終了後、ステップS4に戻る。なお、ステップS10の油圧回路27は、ステップS3における油圧回路27と同じである。したがって、鞍乗型車両1が再び発進する場合、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を自動的に上げることができる。
【0288】
4.効果
第2実施形態においても、第1実施形態と同じような効果を奏する。例えば、鞍乗型車両1が発進した後、鞍乗型車両1の車高を速やかに調整できる。さらに、第2実施形態では、以下の効果を奏する。
【0289】
油圧回路27は、流路F5とパイロット弁84を備える。荷重Lが第3荷重L3まで上昇したとき、パイロット弁84は開く。よって、第1ロッド35aをカム31から好適に離すことできる。このため、車高調整機構20が消費する動力を効果的に抑制できる。
【0290】
パイロット弁84は、作動油の圧力によって操作される。油圧回路27は、パイロット管路93を備える。パイロット管路93は、パイロット弁84のパイロット圧をパイロット弁84に付与する。パイロット管路93がパイロット弁84に付与するパイロット圧が所定値P4以上であるとき、パイロット弁84は開く。ここで、パイロット管路93は、流路F1に連通する。よって、パイロット管路93は、流路F1の作動油の圧力を利用して、パイロット弁84を操作できる。例えば、パイロット管路93は、流路F1の作動油の圧力を利用して、パイロット弁84のパイロット圧を高くすることができる。さらに、流路F1の作動油の圧力は、荷重Lを反映する。例えば、荷重Lが大きくなるにしたがって、流路F1の作動油の圧力は大きくなる。よって、パイロット弁84が作動油の圧力によって操作される場合であっても、パイロット弁84は適切なタイミングで開くことができる。さらに、パイロット弁84を採用することで、電磁弁などに比べて、油圧回路27の構成を簡素化でできる。パイロット弁84を採用することで、油圧回路27を安価に構成できる。さらに、パイロット弁84を採用することで、制御部79の機能を簡素化できる。
【0291】
流路F1の作動油の圧力が所定値P4から低下した後も、パイロット弁84はオープンを保持する。パイロット弁84が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、パイロット弁84は、開いた状態を保持する。後輪9の回転が止まった後に、パイロット弁84は閉じる。このため、回転するカム31に第1ロッド35aが再び接触することを、確実に防止できる。
【0292】
油圧回路27は、圧力保持管路92と逆止弁89を備える。圧力保持管路92は、パイロット管路93と流路F1の間に設けられる。逆止弁89は、圧力保持管路92と流路F1の間に設けられる。すなわち、パイロット管路93は、圧力保持管路92および逆止弁89を介して、流路F1に連通する。圧力保持管路92は、逆止弁89を介して、流路F1に連通する。作動油が流路F1から圧力保持管路92に流れることを、逆止弁89は許容し、かつ、作動油が圧力保持管路92から流路F1に流れることを、逆止弁89は阻止する。このため、流路F1の作動油の圧力が所定値P4よりも高い圧力から所定値P4よりも低い圧力に変化した後も、圧力保持管路92は所定値P4よりも高い圧力を好適に保つことができる。よって、流路F1の作動油の圧力が所定値P4よりも低くなった後も、圧力保持管路92は、所定値P4よりも高い作動油の圧力を、パイロット管路93に供給できる。流路F1の作動油の圧力が所定値P4よりも低くなった後も、パイロット管路93は、所定値P4よりも高いパイロット圧を、パイロット弁84に付与できる。したがって、流路F1の作動油の圧力が所定値P4よりも低くなった後も、パイロット弁84はオープンを好適に保持できる。
【0293】
パイロット弁84が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、油圧回路27は、第1副室44aからの作動油の流出を禁止する。このため、第1副室44aの収縮を好適に規制できる。よって、第1ピストン25aが第1負方向D1nに移動することを、好適に規制できる。したがって、第1ロッド35aがカム31に向かって移動することを、好適に規制できる。その結果、パイロット弁84が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、第1ロッド35aはカム31と接触しない。すなわち、第1ロッド35aが一旦、カム31から離れた場合、第1ロッド35aは、カム31が回転している間に、カム31と再び接触しない。このため、変換機構29を損傷から好適に保護できる。
【0294】
具体的には、パイロット弁84が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、パイロット弁85はクローズを保つ。よって、パイロット弁84が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、パイロット弁85と逆止弁88は第1副室44aからの作動油の流出を禁止する。よって、回転するカム31に第1ロッド35aが再び接触することを、好適に防止できる。
【0295】
油圧回路27に含まれる電磁弁81、82の数は、比較的に少ない。よって、油圧回路27を安価に構成できる。
【0296】
制御部79が操作する弁(すなわち、電磁弁81、82)の数は、比較的に少ない。よって、制御部79の演算処理を簡素化できる。
【0297】
第2実施形態の車高調整機構20は、第1センサ57を備えていない。よって、車高調整機構20の構成を簡素化できる。
【0298】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0299】
(1)第1、第2実施形態では、変換機構29は、カム31とロッド35を備える。但し、これに限られない。例えば、変換機構29は、クランク機構を備えてもよい。クランク機構は、後輪9の回転によって第1ピストン25aを第1シリンダ25aに対して移動させてもよい。例えば、変換機構29は、リンク機構を備えてもよい。リンク機構は、後輪9の回転によって第1ピストン25aを第1シリンダ25aに対して移動させてもよい。
【0300】
(2)第1、第2実施形態では、変換機構29は、カム31とロッド35を備える。但し、これに限られない。例えば、変換機構29は、動力の伝達を接続および切断するクラッチを含んでもよい。例えば、クラッチは、カム31が取り付けられる不図示の軸部材と、カム31との間に設けられてもよい。例えば、カム31は、クラッチを介して、後輪9に連結されてもよい。例えば、カム31は、クラッチを介して、従動スプロケット18に連結されてもよい。例えば、クラッチは、カム31とピストン25との間の動力伝達経路に設けられてもよい。ここで、クラッチは、例えば、遠心クラッチや板クラッチである。これらの変形実施形態では、変換機構29からピストン25への動力の伝達を、好適に接続および切断できる。よって、車高調整機構20が消費する動力を好適に抑制できる。
【0301】
(3)第1、第2実施形態では、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bは、上下方向Zに並ぶように配置される。但し、これに限られない。例えば、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bはそれぞれ、カム31の周方向に並ぶように配置されてもよい。例えば、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bはそれぞれ、回転軸線A3に対して放射状に配置されてもよい。
【0302】
(4)第1、第2実施形態では、第1弾性体47aは、第1シリンダ24aの内部に配置される。但し、これに限られない。第1弾性体47aは、第1シリンダ24aの外部に配置されてもよい。第1、第2実施形態では、第1弾性体47aは、第1ピストン25aに連結される。但し、これに限られない。例えば、第1弾性体47aは第1ロッド35aに連結されてもよい。これらの変形実施形態においても、第1弾性体47aは、第1ロッド35aをカム31に向かって好適に付勢できる。第2弾性体47bについても、同様に変更してもよい。
【0303】
(5)第1実施形態では、弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、油圧回路27は、第1副室44aからの作動油の流出を禁止する。但し、これに限られない。例えば、弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、油圧回路27は、第1主室43aへの作動油の流入、および、第1副室44aからの作動油の流出の少なくともいずれかを禁止してもよい。弁67が開いた後から後輪9の回転が止まるまで、油圧回路27が第1主室43aへの作動油の流入を禁止する場合、第1主室43aの伸張を好適に規制できる。これにより、第1ピストン25aが第1負方向D1nに移動することを、好適に規制できる。よって、第1ロッド35aがカム31に向かって移動することを、好適に規制できる。第2実施形態においても、同様に変更してもよい。
【0304】
(6)第1、第2実施形態は、ロッド35をカム31から離す(ステップS6)。但し、これに限られない。ロッド35をカム31から離さなくてもよい。すなわち、鞍乗型車両1が走行している間、ロッド35は常にカム31と接触してもよい。
【0305】
図22は、変形実施形態の車高調整機構20の構成を示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0306】
油圧回路27は、弁101を備える。弁101は、主室43とタンク61との間の流路F2に設けられる。弁101は、流路F1の作動油の圧力によって操作される。流路F1の作動油の圧力が所定値P11以上であるとき、弁101は開く。このため、流路F1の作動油の圧力が所定値P11以上であるとき、流路F2は、第1主室43aから吐出された作動油を、タンク61に逃がすことができる。これにより、ポンプ23の負荷を効果的に低減できる。すなわち、ポンプ23が消費する動力を効果的に抑制できる。
【0307】
具体的には、油圧回路27は、パイロット管路104を備える。パイロット管路104は、流路F1に連通する。パイロット管路104は、弁101を操作するための作動油の圧力を、弁101に付与する。ここで、弁101を操作するための作動油の圧力を弁101のパイロット圧と呼ぶ。弁101のパイロット圧が所定値P11以上であるとき、弁101は開く。
【0308】
より具体的には、油圧回路27は、さらに、逆止弁102を備える。油圧回路27は、管路75c、75gに代えて、管路103a、103b、103cを備える。管路103aは、逆止弁71a、71b、102と、弁101とに接続される。管路103bは、第1ジャッキ21と、弁68と、逆止弁102とに接続される。管路103cは、第2ポート64と、弁68、101とに接続される。パイロット管路104は、管路103bから分岐する。パイロット管路104は、弁101に接続される。弁101のパイロット圧が所定値P11未満であるとき、弁101はクローズである。弁101のパイロット圧が所定値P11以上であるとき、弁101はオープンである。
【0309】
ここで、流路F1は、管路75a、75b、103a、103bによって構成される。流路F2は、管路75a、75b、75d、103a、103cによって構成される。パイロット管路104が弁101に付与するパイロット圧は、流路F1の作動油の圧力に相当する。所定値P11は、例えば、荷重Lが第2荷重L2であるときの流路F1の作動油の圧力と略等しいことが好ましい。弁101は、アンロード弁とも呼ばれる。
【0310】
本変形実施形態では、流路F1の作動油の圧力が所定値P11以上まで上昇したとき、弁101はクローズからオープンに切りかわる。これにより、流路F2は、主室43から吐出された作動油を、タンク61に送り始める。ポンプ23は、第1ジャッキ21を加圧しなくなる。ポンプ23の負荷は低下する。荷重Lは第2荷重L2から増加しない。荷重Lは、例えば、第3荷重L3まで上昇しない。荷重Lは第2荷重L2に保たれる。
【0311】
このように、本変形実施形態では、鞍乗型車両1が走行している期間にわたってロッド35がカム31と接触していても、ポンプ23の消費動力を抑制できる。したがって、第1実施形態の流路F5および弁67を省略することができる。これにより、油圧回路27の構成を一層簡素化できる。さらに、図22に示す副室44、流路F3、F4を省略してもよい。これにより、油圧回路27の構成をさらに一層簡素化できる。
【0312】
流路F1は、本発明における第1流路の例である。流路F2は、本発明における第3流路の例である。弁101は、本発明における第2弁の例である。所定値P11は、本発明における第3閾値の例である。パイロット管路104は、本発明における第2パイロット管路の例である。
【0313】
(7)第1、第2実施形態は、車高調整機構20は、第1ポンプ23aと第2ポンプ23bを備える。すなわち、車高調整機構20に設けられるポンプ23の数は、2つである。但し、これに限られない。車高調整機構20に設けられるポンプ23の数は、1つ、または、3つ以上であってもよい。
【0314】
図23は、変形実施形態の車高調整機構20の構成を示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0315】
図示するように、車高調整機構20は第2ポンプ23bを備えていない。車高調整機構20に設けられるポンプ23の数は、1つである。このため、本変形実施形態によれば、車高調整機構20の構成をさらに簡素化できる。
【0316】
(8)第1、第2実施形態は、カム31が有する山部32aの数は、12個である。但し、これに限られない。図23に示すように、カム31が有する山部32aの数を、適宜に変更してもよい。同様に、カム31が有する谷部32bの数を、適宜に変更してもよい。
【0317】
(9)第1、第2実施形態では、車高調整機構20は、リアサスペンション8の第1バネ13に荷重Lを掛ける。但し、これに限られない。車高調整機構20は、さらに、フロントサスペンション3に荷重を掛けてもよい。
【0318】
図24は、変形実施形態の車高調整機構20の構成を示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。フロントサスペンション3は、第2バネ113を備える。第2バネ113は、前輪4が受ける衝撃を吸収する。第2バネ113は、フロント軸線A1の方向に延びる。フロント軸線A1は、図1にも示される。第2バネ113は、第1端114を有する。第2バネ113の第1端114は、例えば、第2バネ113の上端である。第2バネ113は、伸縮可能である。第2バネ113は、コイルバネである。
【0319】
フロントサスペンション3は、第2ダンパ115を備える。第2ダンパ115は、伸縮可能である。第2ダンパ115は、第2バネ113の伸縮を収束させる。第2ダンパ115は、第2バネ113の振動を減衰させる。
【0320】
第2ダンパ115は、第2バネ113を収容する。第2ダンパ115は、上筒116を備える。上筒116は車体フレーム2に支持される。第2ダンパ115は、不図示の下筒を備える。下筒は、上筒116に接続される。下筒は、上筒116から下方に延びる。下筒は前輪4を支持する。上筒116は、第2バネ113の第1端114を支持する。下筒は、第2バネ113の第2端(不図示)を支持する。第2バネ113は、上筒116の内部、及び、下筒の内部に収容される。下筒は、上筒116に対して、フロント軸線A1の方向に移動可能である。下筒が上筒116に対して移動することによって、第2ダンパ115はフロント軸線A1の方向に伸縮する。
【0321】
車高調整機構20は、第2ジャッキ121を備える。第2ジャッキ121は、第2バネ113に連結される。第2ジャッキ121は、例えば、第2バネ113の第1端114に連結される。第2ジャッキ121は、上筒116に支持される。第2バネ113の第1端114は、第2ジャッキ121を介して、上筒116に支持される。第2ジャッキ121は、第2バネ113に荷重を掛ける。
【0322】
第2ジャッキ121は、油室122を備える。油室122は、作動油を貯留する。油室122は、作動油で満たされる。油室122は、伸縮可能である。
【0323】
油室122は、例えば、上筒116の内部に形成される。油室122は、例えば、フロント軸線A1を中心とする環形状を有する。
【0324】
第2ジャッキ121は、1つのポート124を備える。ポート124は、第2ジャッキ121の油室122に連通する。ポート124は、例えば、上筒116に取り付けられる。
【0325】
第2ジャッキ121は、バネ受け部125を備える。バネ受け部125は、油室122の下部に配置される。油室122は、上筒116とバネ受け部125によって区画される。バネ受け部125は、上筒116に対して摺動可能である。バネ受け部125は、第2バネ113と接続する。バネ受け部125は、第2バネ113の第1端114と接続する。
【0326】
油室122が伸縮するとき、バネ受け部55はフロント軸線A1の方向に移動する。油室122が伸縮するとき、バネ受け部55は上筒116に対して移動する。
【0327】
図24は、油室122が伸張したときの第1端114とバネ受け部125を実線で示す。図24は、油室122が収縮したときの第1端114とバネ受け部125を破線で示す。油室122が伸張しているとき、第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重は、比較的に大きい。油室122が収縮しているとき、第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重は、比較的に小さい。
【0328】
第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重が大きくなるにしたがって、第2バネ113は圧縮され、かつ、第2ダンパ115は伸張する。第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重が小さくなるにしたがって、第2バネ113は伸張し、かつ、第2ダンパ115は収縮する。このため、第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重が変わることによって、鞍乗型車両1の車高は変わる。
【0329】
第2ジャッキ121は、油圧回路27に連通接続される。油圧回路27は、ポンプ23から第2ジャッキ121に作動油を送る。油圧回路27は、主室43から第2ジャッキ121に作動油を送る。第2ジャッキ121は、ポンプ23から供給される作動油によって、第2バネ113に荷重を掛ける。
【0330】
油圧回路27は、ジョイント127と管路128を備える。本変形実施形態では、管路75cは、さらに、ジョイント127に接続される。管路128は、第2ジャッキ121のポート124と、ジョイント127とに接続される。
【0331】
管路75a、75b、75c、128は、主室43と第2ジャッキ121とを連通する流路F7を形成する。すなわち、油圧回路27は、流路F7を備える。
【0332】
ジョイント127は、流路F7に設けられる。ジョイント127は、管路74cと管路128を接続する。ジョイント127は、管路74cと管路128を分離可能である。
【0333】
流路F7は、本発明における第4流路の例である。
【0334】
管路75cと管路128の圧力は、略等しい。よって、第2ジャッキ121の油圧は、第1ジャッキ21の油圧と略等しい。すなわち、第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重は、第1ジャッキ21が第1バネ13に掛ける荷重Lと略等しい。
【0335】
本変形実施形態によれば、以下の効果を奏する。車高調整機構20は、第1ジャッキ21と第2ジャッキ121を備える。よって、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を一層好適に調整できる。例えば、鞍乗型車両1の前部の高さと、鞍乗型車両1の後部の高さを、バランスを良く調整できる。
【0336】
第2ジャッキ121は、油圧回路27に連通接続される。第2ジャッキ121は、第1ポンプ23aから供給される作動油によって第2バネ113に荷重を掛ける。上述の通り、ポンプ23に入力される駆動力は、大きい。したがって、後輪9が回転し始めた後、第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重を、速やかに増大できる。すなわち、鞍乗型車両1が発進した後、車高調整機構20は、鞍乗型車両1の車高を速やかに調整できる。
【0337】
油圧回路27は、流路F7を備える。流路F7は、第1主室43aと第2ジャッキ121とを連通する。よって、流路F7は、比較的に高い圧力の作動油を第1主室43aから第2ジャッキ121に送る。したがって、第1ポンプ23aは、第2ジャッキ121を好適に駆動できる。第2ジャッキ121が第2バネ113に掛ける荷重を、速やかに増大できる。
【0338】
油圧回路27は、ジョイント127を備える。このため、流路F7を、管路75a、75b、75cと、管路128に容易に分離できる。よって、車高調整機構20を容易に製造できる。車高調整機構20を容易に組み立てることができる。例えば、車高調整機構20のうち、フロントサスペンション3に関連する要素と、リアサスペンション8に関連する要素とを別々に組み立てることができる。
【0339】
(10)第1実施形態では、第1ジャッキ21のストローク量として、ばね受け部55の位置を例示する。すなわち、第1センサ57は、バネ受け部55の位置を検出する。但し、これに限られない。例えば、ストローク量は、第1ジャッキ21の長さでもよい。例えば、第1センサ57は、第1ジャッキ21の長さを検出してもよい。具体的には、第1センサ57は、リア軸線A2の方向における第1ジャッキ21の長さを検出してもよい。例えば、ストローク量は、可動壁53の位置でもよい。例えば、第1センサ57は、可動壁53の位置を検出してもよい。具体的には、第1センサ57は、ダンパチューブ16または固定壁52に対する可動壁53の位置を検出してもよい。例えば、ストローク量は、油室51の長さでもよい。例えば、第1センサ57は、油室51の長さを検出してもよい。具体的には、第1センサ57は、リア軸線A2の方向における油室51の長さを検出してもよい。例えば、ストローク量は、第1バネ13の第1端14の位置でもよい。例えば、第1センサ57は、第1バネ13の第1端14の位置を検出してもよい。具体的には、第1センサ57は、ダンパチューブ16または固定壁52に対する第1バネ13の第1端14の位置を検出してもよい。ここで、第1ジャッキ21の長さ、可動壁53の位置、油室51の長さ、および、第1バネ13の第1端14の位置はそれぞれ、荷重Lを反映する。例えば、荷重Lが大きくなるにしたがって、油室51の長さは大きくなる。よって、第1センサ57が第1ジャッキ21の長さ、可動壁53の位置、油室51の長さ、および、第1バネ13の第1端14の位置の少なくともいずれかを直接的に検出することによって、第1センサ57は荷重Lを間接的に検出できる。
【0340】
(11)第1実施形態では、第1センサ57は、例えば、第1ジャッキ21のストローク量が最大であるか否かを判別する。すなわち、第1実施形態は、第1センサ57が検出する第1ジャッキのストローク量として、最大ストローク量を例示する。但し、これに限られない。ストロークセンサは、第1ジャッキ21のストローク量を計測してもよい。第1センサ57が検出する第1ジャッキ21のストローク量は、最大ストローク量以外のストローク量を含んでもよい。第1センサ57が検出する第1ジャッキ21のストローク量は、最大ストローク量未満のストローク量を含んでもよい。
【0341】
(12)第1実施形態では、第1センサ57は、例えば、ストロークセンサであり、ストロークセンサは、例えば、接触センサである。但し、これに限られない。例えば、ストロークセンサは、非接触センサであってもよい。例えば、ストロークセンサは、対象物(例えば、バネ受け部55)の位置を検出する変位センサであってもよい。例えば、ストロークセンサは、対象物(例えば、油室51)の長さを検出する側長センサであってもよい。
【0342】
(13)第1実施形態では、第1センサ57は、例えば、ストロークセンサである。第1実施形態では、第1センサ57は、荷重Lを間接的に検出する。但し、これに限られない。第1センサ57は、荷重センサでもよい。第1センサ57は、荷重Lを直接的に検出してもよい。
【0343】
(14)第1実施形態では、バネ受け部55は可動壁53に固定される。但し、これに限られない。バネ受け部55は、可動壁53に固定されなくてもよい。例えば、バネ受け部55は、可動壁53に間接的に接続されてもよい。
【0344】
(15)第1実施形態では、第1ジャッキ21はバネ受け部55を備える。但し、これに限られない。第1ジャッキ21はバネ受け部55を備えなくてもよい。例えば、可動壁53は、第1バネ13と直接的に接続してもよい。例えば、可動壁53は、第1バネ13の第1端14と直接的に接続してもよい。
【0345】
(16)第1、第2実施形態では、ストッパ59は、固定壁52と接触可能である。ただし、これに限られない。例えば、ストッパ59は、ダンパチューブ16と接触可能であってもよい。例えば、バネ受け部55が限界位置にあるとき、ストッパ59はダンパチューブ16と接触してもよい。ストッパ59がダンパチューブ16と接触するとき、バネ受け部55が限界位置から第2正方向D2pに移動することを、ダンパチューブ16は禁止してもよい。本変形実施形態であっても、ストッパ59は、バネ受け部55の限界位置を、好適に規定できる。
【0346】
(17)第1、第2実施形態では、鞍乗型車両1としてのオフロード型の車両を例示する。ただし、これに限られない。例えば、鞍乗型車両1を、スクータ型、ストリート型、スポーツ型、オフロード型、不整地走行用車両(ALL-TERRAIN VEHICLE)など、他の種類の車両に変更してもよい。最低地上高が比較的に低い車両であっても、車高調整機構20を好適に適用できる。ここで、最低地上高が比較的に低い車両は、例えば、スクータ型の車両や、スポーツ型の車両である。
【0347】
(18)第1、第2実施形態では、鞍乗型車両1が備える前輪4の数は1つである。ただし、これに限られない。鞍乗型車両1が備える前輪4の数は2つであってもよい。第1、第2実施形態では、鞍乗型車両1が備える後輪9の数は1つである。これに限られない。鞍乗型車両1が備える後輪9の数は2つであってもよい。
【0348】
(19)上述した第1、第2実施形態では、エンジン7は車体フレーム2に固定される。すなわち、エンジン7は車体フレーム2に対して揺動不能である。ただし、これに限られない。例えば、エンジン7は、車体フレーム2に対して揺動可能であってもよい。エンジン7は、ユニットスイング式のエンジンであってもよい。
【0349】
(20)第1、第2実施形態では、鞍乗型車両1は、動力源としてエンジン7(内燃機関)を備える。ただし、これに限られない。例えば、鞍乗型車両1は、エンジン7に加えて、動力源として電動モータを備えてもよい。
【0350】
(21)第1、第2実施形態および上記(1)から(20)で説明した各変形実施形態については、さらに各構成を他の変形実施形態の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0351】
1 :鞍乗型車両
3 :フロントサスペンション(第2サスペンション)
4 :前輪(従動輪)
7 :エンジン
8 :リアサスペンション(第1サスペンション)
9 :後輪(駆動輪)
13 :第1バネ
15 :第1ダンパ
20 :車高調整機構
21 :第1ジャッキ
23a:第1ポンプ
23b:第2ポンプ
24a:第1シリンダ
24b:第2シリンダ
25a:第1ピストン
25b:第2ピストン
27 :油圧回路
29 :変換機構
31 :カム
35a:第1ロッド
35b:第2ロッド
43a:第1主室
44a:第1副室
47a:第1弾性体
57 :第1センサ
61 :タンク
67 :弁(第1弁)
79 :制御部
84 :パイロット弁(第1弁)
89 :逆止弁(第1逆止弁)
92 :圧力保持管路
93 :パイロット管路(第1パイロット管路)
101:弁(第2弁)
113:第2バネ
115:第2ダンパ
121:第2ジャッキ
127:ジョイント
A1 :フロント軸線
A2 :リア軸線
A3 :回転軸線
D1p:第1正方向
F1 :流路(第1流路)
F2 :流路(第3流路)
F5 :流路(第2流路)
F7 :流路(第4流路)
L :第1ジャッキが第1バネに掛ける荷重
L3 :第3荷重(第1閾値)
P4 :パイロット弁84のパイロット圧の所定値(第2閾値)
P11:弁101のパイロット圧の所定値(第3閾値)
X :鞍乗型車両の前後方向
Y :鞍乗型車両の幅方向
Z :鞍乗型車両の上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24