(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230523BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
(21)【出願番号】P 2023510307
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008674
(87)【国際公開番号】W WO2022209534
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2021058558
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021058531
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021188894
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】森田 格
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】永尾 有希
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慶徳
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-171971(JP,A)
【文献】特開2007-117848(JP,A)
【文献】特開2017-189761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ce系酸化物粒子と、Ce-Zr系複合酸化物粒子と、貴金属元素とを含む排ガス浄化用触媒組成物であって、
前記Ce系酸化物粒子が、Al、Mg、La、Pr、Y及びNdから選択される少なくとも1種の追加元素を含み、
前記Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO
2換算量が、前記Ce系酸化物粒子の質量を基準として、80質量%以上であり、
前記Ce系酸化物粒子における前記少なくとも1種の追加元素の酸化物換算量が、前記Ce系酸化物粒子の質量を基準として、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるCeのCeO
2換算量が、前記Ce-Zr系複合酸化物粒子の質量を基準として、5質量%以上90質量%以下である、排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項2】
前記Ce系酸化物粒子におけるCeO
2の結晶子径が、10nm以上である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項3】
前記貴金属元素が、前記Ce系酸化物粒子及び前記Ce-Zr系複合酸化物粒子に担持されている、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項4】
前記貴金属元素が、Rh及びPtから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項5】
前記Ce系酸化物粒子の平均粒子径が、0.10μm以上15μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項6】
前記排ガス浄化用触媒組成物における前記Ce系酸化物粒子の量が、前記排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、1.0質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒組成物。
【請求項7】
基材と、前記基材に設けられた触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒層が、請求項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒組成物で構成されている、排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する排ガス浄化用触媒として、THCを酸化して水及び二酸化炭素に、COを酸化して二酸化炭素に、NOxを還元して窒素に変換する触媒活性を有する三元触媒が使用されている。
【0003】
三元触媒等の排ガス浄化用触媒では、触媒活性成分(例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属粒子)を担持する担体として、アルミナ(Al2O3)等のAl系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物等が使用されている(例えば、特許文献1及び2)。なお、本明細書において、「Al系酸化物」は、Alを含む酸化物であって、AlのAl2O3換算量が酸化物の質量を基準として70質量%以上である酸化物を意味し、「Ce-Zr系複合酸化物」は、Ce及びZrを含む複合酸化物であって、CeのCeO2換算量が複合酸化物の質量を基準として5質量%以上90質量%以下である複合酸化物を意味する。
【0004】
Ce-Zr系複合酸化物は、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料(OSC材)であり、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒の作動ウインドウを拡大する。OSC材としては、その他に、酸化セリウム(CeO2)等のCe系酸化物が使用されている(例えば、特許文献2)。但し、CeO2は、酸素貯蔵能が低いため、一般的には、三元触媒の触媒活性成分を担持する担体としては使用されていない。なお、本明細書において、「Ce系酸化物」は、Ceを含む酸化物であって、CeのCeO2換算量が酸化物の質量を基準として80質量%以上である酸化物を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-039069号公報
【文献】特開2006-297372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Ce系酸化物は、触媒活性成分(例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属粒子)に対する親和性は高いが、耐熱性は低い。一方、Ce-Zr系複合酸化物は、耐熱性は高いが、触媒活性成分(例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属粒子)に対する親和性は比較的低い。したがって、触媒活性成分を担持する担体としてCe系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を併用することにより、一方の弱点を他方で補うことができる。しかしながら、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を併用しても、排ガス浄化性能が低下する場合がある。
【0007】
例えば、触媒活性成分を担持する担体としてCeO2を使用する場合、CeO2の耐熱性が低いことに起因して、CeO2同士の凝集、CeO2の小細孔の消失(すなわち比表面積の低下)等が生じ、それらに伴って触媒活性成分の埋没が引き起こされ、排ガス浄化性能が低下する場合がある。CeO2同士の凝集及びCeO2の比表面積の低下は、高温環境下で生じやすいため、排ガス浄化性能の低下は、高温環境に曝露された後に生じやすい。なお、本明細書において、「高温」は、例えば800℃以上、特に900℃以上の温度を意味する。
【0008】
また、触媒活性成分を担持する担体としてCeO2を使用する場合、CeO2の酸素貯蔵能が低いことに起因して、排ガス浄化性能が低下する場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を利用した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒であって、排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能)が向上した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を利用した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒において、Ce系酸化物にAl、Mg、La、Pr、Y及びNdから選択される少なくとも1種の追加元素を添加することにより、排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能)が向上することを見出した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいて完成された発明であり、以下の発明を包含する。
【0012】
[1]Ce系酸化物粒子と、Ce-Zr系複合酸化物粒子と、貴金属元素とを含む排ガス浄化用触媒組成物であって、
前記Ce系酸化物粒子が、Al、Mg、La、Pr、Y及びNdから選択される少なくとも1種の追加元素を含み、
前記Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量が、前記Ce系酸化物粒子の質量を基準として、80質量%以上であり、
前記Ce系酸化物粒子における前記少なくとも1種の追加元素の酸化物換算量が、前記Ce系酸化物粒子の質量を基準として、0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量が、前記Ce-Zr系複合酸化物粒子の質量を基準として、5質量%以上90質量%以下である、排ガス浄化用触媒組成物。
[2]基材と、前記基材に設けられた触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒層が、[1]に記載の排ガス浄化用触媒組成物で構成されている、排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物を利用した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒であって、排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能)が向上した排ガス浄化用触媒組成物及び排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気通路に配置されている状態を示す一部端面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒の端面図(
図4に対応する端面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪排ガス浄化用触媒組成物≫
以下、本発明の排ガス浄化用触媒組成物について説明する。
【0016】
<Ce系酸化物粒子>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Ce系酸化物粒子を含む。なお、本明細書において、「Ce系酸化物粒子」は、別段規定される場合を除き、本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子を意味し、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の原料として使用されるCe系酸化物粒子(以下「原料としてのCe系酸化物粒子」という。)と区別される。
【0017】
Ce系酸化物粒子は、Ce系酸化物で構成されている。Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。これにより、触媒活性成分に対するCe系酸化物粒子の親和性が向上し、Ce系酸化物粒子に担持された触媒活性成分同士のシンタリングの発生が抑制される。したがって、触媒活性成分の分散度が向上し、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化性能が向上する。かかる効果は、高温環境に曝露された後の排ガス浄化用触媒組成物において顕著である。Ce系酸化物粒子に担持された触媒活性成分同士のシンタリングは、高温環境に曝露された後に生じやすいからである。なお、上限は、100質量%から追加元素の酸化物換算量を差し引いた値である。
【0018】
Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料をエネルギー分散型X線分光法(EDS(EDXとも呼ばれる))で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDS元素分析とから測定することができる。具体的には、元素マッピングにより定性的にCe系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子及びその他の粒子(例えば、Al系酸化物粒子)を識別(色分け)し、指定した粒子に対して組成分析(元素分析)することにより、指定した粒子における所定元素の酸化物換算量を測定することができる。
【0019】
触媒活性成分に対するCe系酸化物粒子の親和性をより向上させ、Ce系酸化物粒子に担持された触媒活性成分同士のシンタリングの発生をより効果的に抑制する観点から、Ce系酸化物粒子におけるZrのZrO2換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%以下、より一層好ましくは3質量%以下、より一層好ましくは1質量%以下である。下限はゼロである。Ce系酸化物粒子におけるZrのZrO2換算量は、Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるZrのZrO2換算量よりも小さく、かかる点から、Ce系酸化物粒子は、Ce-Zr系複合酸化物粒子と区別される。Ce系酸化物粒子におけるZrのZrO2換算量の測定方法は、Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量の測定方法と同様である。
【0020】
Ce系酸化物粒子は、Al、Mg、La、Pr、Y及びNdから選択される少なくとも1種の追加元素を含む。すなわち、Ce系酸化物粒子は、Ceと、Al、Mg、La、Pr、Y及びNdから選択される少なくとも1種の追加元素とを含む複合酸化物である。なお、「追加元素」は、Ce及びO以外の元素を意味する。
【0021】
追加元素は、Ce及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、追加元素の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0022】
Ce系酸化物粒子がAl及びMgから選択される少なくとも1種の追加元素を含む場合、Ce系酸化物粒子の耐熱性が向上し、Ce系酸化物粒子の比表面積の低下及びそれに伴うCe系酸化物粒子への触媒活性成分の埋没が抑制される。したがって、排ガス浄化用触媒組成物の比表面積が向上するとともに触媒活性成分の分散度が向上し、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化性能が向上する。かかる効果は、高温環境に曝露された後の排ガス浄化用触媒組成物において顕著である。Ce系酸化物粒子の比表面積の低下及びそれに伴うCe系酸化物粒子への触媒活性成分の埋没は、高温環境に曝露された後に生じやすいからである。
【0023】
Ce系酸化物粒子がLa、Pr、Y及びNdから選択される少なくとも1種の追加元素を含む場合、貴金属元素担持後のCe系酸化物粒子の酸素貯蔵能(すなわち、排ガス中の酸素濃度が高い時には酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低い時には酸素を放出する能力)が向上する。したがって、排ガス中の酸素濃度の変動が緩和されて触媒活性成分の作動ウインドウが拡大し、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化能が向上する。
【0024】
追加元素の上記作用をより効果的に発揮させる観点から、Ce系酸化物粒子における追加元素の酸化物換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。「追加元素の酸化物換算量」は、Alに関してはAl2O3換算量を、Mgに関してはMgO換算量を、Laに関してはLa2O3換算量を、Prに関してはPr6O11換算量を、Yに関してはY2O3換算量を、Ndに関してはNd2O3換算量を意味する。また、「追加元素の酸化物換算量」は、Ce系酸化物粒子が1種の追加元素を含む場合には当該1種の追加元素の酸化物換算量を意味し、Ce系酸化物粒子が2種以上の追加元素を含む場合には当該2種以上の追加元素の酸化物換算量の合計を意味する。
【0025】
Ce系酸化物粒子の耐熱性を向上させる観点から、Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量及び追加元素の酸化物換算量の合計は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは98質量%以上である。なお、上限は100質量%である。
【0026】
以下、Al及びMgから選択される追加元素を「第1追加元素」といい、La、Pr、Y及びNdから選択される追加元素を「第2追加元素」という。
【0027】
一実施形態において、Ce系酸化物粒子は、少なくとも1種の第1追加元素を含み、第2追加元素を含まない。この実施形態において、第1追加元素の上記作用をより効果的に発揮させる観点から、Ce系酸化物粒子における第1追加元素の酸化物換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上12質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。「第1追加元素の酸化物換算量」は、Ce系酸化物粒子が1種の第1追加元素を含む場合には当該1種の第1追加元素の酸化物換算量を意味し、Ce系酸化物粒子が2種の第1追加元素を含む場合には当該2種の第1追加元素の酸化物換算量の合計を意味する。
【0028】
別の実施形態において、Ce系酸化物粒子は、少なくとも1種の第2追加元素を含み、第1追加元素を含まない。この実施形態において、第2追加元素の上記作用をより効果的に発揮させる観点から、Ce系酸化物粒子における第2追加元素の酸化物換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上12質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。「第2追加元素の酸化物換算量」は、Ce系酸化物粒子が1種の第2追加元素を含む場合には当該1種の第2追加元素の酸化物換算量を意味し、Ce系酸化物粒子が2種以上の第2追加元素を含む場合には当該2種以上の第2追加元素の酸化物換算量の合計を意味する。
【0029】
さらに別の実施形態において、Ce系酸化物粒子は、少なくとも1種の第1追加元素と、少なくとも1種の第2追加元素とを含む。この実施形態において、第1及び第2追加元素の上記作用をより効果的に発揮させる観点から、Ce系酸化物粒子における第1追加元素の酸化物換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上19.9質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上14.9質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上11.9質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上9.9質量%以下であり、Ce系酸化物粒子における第2追加元素の酸化物換算量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上19.9質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上14.9質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上11.9質量%以下、より一層好ましくは0.1質量%以上9.9質量%以下であり、Ce系酸化物粒子における第1及び第2追加元素の酸化物換算量の合計は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.2質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは1質量%以上12質量%以下、より一層好ましくは2質量%以上10質量%以下である。「第1追加元素の酸化物換算量」及び「第2追加元素の酸化物換算量」の意義は上記と同様である。
【0030】
Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径は、好ましくは7nm以上、より好ましくは10nm以上、より一層好ましくは20nm以上、より一層好ましくは30nm以上である。これにより、Ce系酸化物粒子同士の凝集、Ce系酸化物粒子の小細孔の消失(すなわち比表面積の低下)及びそれらに伴うCe系酸化物粒子への触媒活性成分の埋没が抑制される。したがって、触媒活性成分の分散度が向上し、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化性能が向上する。かかる効果は、高温環境に曝露された後の排ガス浄化用触媒組成物において顕著である。Ce系酸化物粒子同士の凝集、Ce系酸化物粒子の比表面積の低下及びそれらに伴うCe系酸化物粒子への触媒活性成分の埋没は、高温環境に曝露された後に生じやすいからである。なお、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径の上限は、例えば200nm、好ましくは100nm、より好ましくは55nmである。これらの上限はそれぞれ、上記の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0031】
Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径の測定方法は、次の通りである。本発明の排ガス浄化用触媒組成物から得られた粉末試料及び市販のX線回折装置を使用してX線回折(XRD)を行い、得られたXRDパターンにおいて、CeO2に由来するピークのうち、2θ=55~58°に存在するピーク及び2θ=46~49°に存在するピークを特定し、特定したピークに対してシェラーの式を適用し、結晶子径を測定する。具体的な測定方法は、実施例に記載の通りである。2θ=55~58°に存在するピークから求めた結晶子径と、2θ=46~49°に存在するピークから求めた結晶子径とを比較し、大きい方の結晶子径を、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径として選択する。得られたXRDパターンにおいて、CeO2以外の成分に由来するピークにより、CeO2に由来するピークのうち、2θ=55~58°に存在するピーク及び2θ=46~49°に存在するピークのいずれか一方が特定できない場合には、特定できるピークから求めた結晶子径を、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径とする。
【0032】
Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径は、例えば、Ce系酸化物粒子を製造する際の焼成条件を調整することにより調整してもよいし、Ce系酸化物粒子の製造段階において結晶化工程(例えば、水熱条件への曝露等)を設けることにより調整してもよい。
【0033】
Ce系酸化物粒子の上記作用効果をより効果的に発揮させる観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、より一層好ましくは3.0質量%以上、より一層好ましくは5.0質量%以上、より一層好ましくは10質量%以上である。また、Ce系酸化物粒子以外の成分の量(例えば、Ce-Zr系複合酸化物粒子の量、その他の粒子の量等)を相対的に増加させ、排ガス浄化用触媒組成物の比表面積(特に、高温環境に曝露された後の比表面積)をより向上させる観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、より一層好ましくは25質量%以下、より一層好ましくは20質量%以下、より一層好ましくは15質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上記の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0034】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子の量の測定方法は、次の(A)~(D)の手順で行う。
(A)排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)、蛍光X線分析法(XRF)、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等を使用して元素分析を行い、試料全体の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各元素の含有率を酸化物換算で求める。
(B)排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料について、SEM観察及びSEM-EDXによる元素マッピングを行い、試料に含まれる粒子の種類(Ce系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子及びその他の粒子(例えば、Al系酸化物粒子)を含む)を特定する。
(C)各種類の粒子について、任意に選択された複数個(例えば50個)の粒子をSEM-EDXにて元素分析し、粒子の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各元素の含有率を酸化物換算で求める。各種類の粒子について、各元素の含有率の平均値を各元素の含有率とする。
(D)試料における各元素の含有率と、各種類の粒子における各元素の含有率と、試料における各種類の粒子の含有率との関係を表す方程式を作成して解くことにより、試料における各種類の粒子の含有率を算出する。
【0035】
例えば、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe源、Zr源及びAl源が、Ce系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子及びAl系酸化物粒子の3種のみからなる場合、次の通りに、Ce系酸化物粒子の量を求める。
【0036】
先ず、本発明の排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料について、任意に選択された5つの視野(各視野は20個以上の粒子を含む)に対して、SEM-EDX分析をして、試料全体の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各元素の含有率(平均値)を酸化物換算で求める。
【0037】
次に、排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料について、SEM観察及びSEM-EDXによる元素マッピングを行い、試料に含まれる粒子の種類(Ce系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子及びAl系酸化物粒子を含む)を特定する。
【0038】
次に、各種類の粒子について、任意に選択された50個の粒子をSEM-EDXにて元素分析し、粒子を構成する元素の種類を特定するとともに、特定された各元素の含有率(平均値)を酸化物換算で求める。
【0039】
以上の手順により、以下の含有率が求められる。
・試料全体におけるCeのCeO2換算での含有率(以下「PT」という。)
・Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算での含有率(以下「P1」という。)
・Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるCeのCeO2換算での含有率(以下「P2」という。)
・Al系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算での含有率(以下「P3」という。)
・試料全体におけるZrのZrO2換算での含有率(以下「QT」という。)
・Ce系酸化物粒子におけるZrのZrO2換算での含有率(以下「Q1」という。)
・Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるZrのZrO2換算での含有率(以下「Q2」という。)
・Al系酸化物粒子におけるZrのZrO2換算での含有率(以下「Q3」という。)
・試料全体におけるAlのAl2O3換算での含有率(以下「RT」という。)
・Ce系酸化物粒子におけるAlのAl2O3換算での含有率(以下「R1」という。)
・Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるAlのAl2O3換算での含有率(以下「R2」という。)
・Al系酸化物粒子におけるAlのAl2O3換算での含有率(以下「R3」という。)
【0040】
次に、試料における各元素の含有率と、各種類の粒子における各元素の含有率と、試料における各種類の粒子の含有率との関係を表す方程式を作成して解くことにより、試料における各種類の粒子の含有率を算出する。
【0041】
具体的には、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子及びその他の粒子の含有率(質量基準)をX、Y及びZとすると、下記式(1)~(3)が成立する。
PT=X×P1+Y×P2+Z×P3 ・・・(1)
QT=X×Q1+Y×Q2+Z×Q3 ・・・(2)
RT=X×R1+Y×R2+Z×R3 ・・・(3)
【0042】
上記式(1)~(3)から、X、Y及びZを求め、Xから、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子の量を求める。
【0043】
Ce系酸化物粒子の平均粒子径が小さすぎると、Ce系酸化物粒子とCe-Zr系複合酸化物粒子との界面で固相反応が進行し、Ce系酸化物粒子が粒子として存在できなくなる。Ce系酸化物粒子とCe-Zr系複合酸化物粒子との界面での固相反応は、高温環境に曝露された後に生じやすい。一方、Ce系酸化物粒子の平均粒子径が大きすぎると、Ce系酸化物粒子の分散性が低下するとともに、Ce系酸化物粒子と触媒活性成分との接触性が低下する。したがって、Ce系酸化物粒子の上記作用効果をより効果的に発揮させる観点から、Ce系酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.10μm以上15μm以下、より好ましくは0.50μm以上12μm以下、より一層好ましくは1.0μm以上10μm以下、より一層好ましくは2.0μm以上7.0μm以下である。
【0044】
Ce系酸化物粒子の平均粒子径の測定方法は、次の通りである。本発明の排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料を、走査型電子顕微鏡を使用して観察し、視野内から任意に選択された100個のCe系酸化物粒子の定方向径(フェレ径)を測定し、平均値をCe系酸化物粒子の平均粒子径とする。なお、本発明の排ガス浄化用触媒組成物を製造する際、原料としてのCe系酸化物粒子の平均粒子径は維持されるので、通常、Ce系酸化物粒子の平均粒子径は、原料としてのCe系酸化物粒子の平均粒子径と同一である。
【0045】
Ce系酸化物粒子の平均粒子径は、例えば、ボールミル等の公知の粉砕方法を使用して調整してもよいし、Ce系酸化物粒子の製造時にスプレードライ製法等の造粒方法を使用して調整してもよい。
【0046】
Ce系酸化物粒子は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce系酸化物粒子は、多孔質であることが好ましい。Ce系酸化物粒子は、バインダとして使用されるセリア(以下「セリアバインダ」という。)と区別される。セリアバインダは、触媒組成物の材料として使用されるセリアゾル、又は、硝酸セリウム、硝酸セリウム等の水溶性のセリウム塩に由来する。
【0047】
Ce系酸化物粒子は、Ce、Al、Mg、La、Pr、Y及びNd以外の1種又は2種以上の金属元素を含んでいてもよい。Ce、Al、Mg、La、Pr、Y及びNd以外の金属元素としては、例えば、Sc、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の希土類元素、Fe、Mn、Ni、Zr等の遷移金属元素等が挙げられる。Ce、Al、Mg、La、Pr、Y及びNd以外の金属元素は、Ce及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、金属元素の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0048】
<Ce-Zr系複合酸化物粒子>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Ce-Zr系複合酸化物粒子を含む。なお、本明細書において、「Ce-Zr系複合酸化物粒子」は、別段規定される場合を除き、本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれるCe-Zr系複合酸化物粒子を意味し、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の原料として使用されるCe-Zr系複合酸化物粒子(以下「原料としてのCe-Zr系複合酸化物粒子」という。)と区別される。
【0049】
Ce-Zr系複合酸化物粒子は、酸素貯蔵能(すなわち、排ガス中の酸素濃度が高い時には酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低い時には酸素を放出する能力)を有し、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒活性成分の作動ウインドウを拡大する。したがって、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化能が向上する。
【0050】
Ce-Zr系複合酸化物粒子は、Ce-Zr系複合酸化物で構成されている。Ce-Zr系複合酸化物粒子の酸素貯蔵能を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量は、Ce-Zr系複合酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは5質量%以上90質量%以下、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、より一層好ましくは7質量%以上60質量%以下、より一層好ましくは10質量%以上50質量%以下である。Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量の測定方法は、Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量の測定方法と同様である。
【0051】
Ce-Zr系複合酸化物粒子の耐熱性をより向上させ、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化能)をより向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるZrのZrO2換算量は、Ce-Zr系複合酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは10質量%以上95質量%以下、より好ましくは20質量%以上95質量%以下、より一層好ましくは40質量%以上95質量%以下、より一層好ましくは50質量%以上90質量%以下である。Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるZrのZrO2換算量の測定方法は、Ce系酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量の測定方法と同様である。
【0052】
Ce-Zr系複合酸化物粒子の酸素貯蔵能及び耐熱性をより向上させ、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化能)をより向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物粒子におけるCeのCeO2換算量及びZrのZrO2換算量の合計は、Ce-Zr系複合酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、より一層好ましくは80質量%以上、より一層好ましくは85質量%以上である。上限は、100質量%である。
【0053】
Ce-Zr系複合酸化物粒子の上記作用効果をより効果的に発揮させる観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe-Zr系複合酸化物粒子の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より一層好ましくは30質量%以上である。また、Ce系酸化物粒子の量を相対的に増加させ、Ce系酸化物粒子の上記作用効果をより効果的に発揮させる観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe-Zr系複合酸化物粒子の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは98.99質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上記の下限のいずれと組み合わせてもよい。本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe-Zr系複合酸化物粒子の量の測定方法は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子の量の測定方法と同様である。
【0054】
Ce系酸化物粒子の上記作用効果とCe-Zr系複合酸化物粒子の上記作用効果とのバランスを図り、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能)をより向上させる観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物において、Ce-Zr系複合酸化物粒子の量の、Ce系酸化物粒子の量に対する比は、質量比で、好ましくは0.5以上70以下、より好ましくは1.0以上25以下、より一層好ましくは1.5以上15以下である。
【0055】
Ce-Zr系複合酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上15μm以下、より好ましくは0.5μm以上12μm以下、より一層好ましくは1μm以上10μm以下である。Ce-Zr系複合酸化物粒子の平均粒子径の測定方法は、Ce系酸化物粒子の平均粒子径の測定方法と同様である。Ce-Zr系複合酸化物粒子の平均粒子径は、Ce系酸化物粒子の平均粒子径と同様に調整することができる。なお、本発明の排ガス浄化用触媒組成物を製造する際、原料としてのCe-Zr系複合酸化物粒子の平均粒子径は維持されるので、通常、Ce-Zr系複合酸化物粒子の平均粒子径は、原料としてのCe-Zr系複合酸化物粒子の平均粒子径と同一である。
【0056】
Ce-Zr系複合酸化物粒子は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce-Zr系複合酸化物粒子は、多孔質であることが好ましい。
【0057】
Ce-Zr系複合酸化物粒子において、Ce、Zr及びOは固溶体相を形成していることが好ましい。Ce、Zr及びOは、固溶体相に加えて、結晶相又は非晶質相である単独相(CeO2相及び/又はZrO2相)を形成していてもよい。
【0058】
Ce-Zr系複合酸化物粒子は、Ce及びZr以外の1種又は2種以上の金属元素を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、例えば、Ce以外の希土類元素等が挙げられる。Ce以外の希土類元素としては、例えば、Y、Pr、Sc、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。Ce及びZr以外の金属元素は、Ce、Zr及びOとともに、固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0059】
<貴金属元素>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、少なくとも1種の貴金属元素を含む。貴金属元素は、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os等から選択することができるが、Rh及びPtから選択することが好ましい。
【0060】
貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれる。
【0061】
排ガス浄化性能とコストのバランスを図る観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物における貴金属元素の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは0.010質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.050質量%以上10質量%以下、より一層好ましくは0.10質量%以上5.0質量%以下である。なお、本明細書において、「貴金属元素の量」は、触媒組成物が1種の貴金属元素を含む場合には当該1種の貴金属元素の金属換算量を意味し、触媒組成物が2種以上の貴金属元素を含む場合には当該2種以上の貴金属元素の金属換算量の合計を意味する。
【0062】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物における貴金属元素の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料をEDS又はWDS(波長分散型蛍光X線分析装置)で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDS元素分析とから測定することができる。
【0063】
貴金属元素は、Ce系酸化物粒子及びCe-Zr系複合酸化物粒子に担持されていることが好ましい。低温~中温では、Ce系酸化物粒子に担持された貴金属元素による排ガス浄化性能が発揮されやすく、高温では、Ce-Zr系複合酸化物粒子に担持された貴金属元素の排ガス浄化性能が発揮されやすい。したがって、貴金属元素がCe系酸化物粒子及びCe-Zr系複合酸化物粒子に担持されていることにより、広い温度域において優れた排ガス浄化性能が発揮される。特に、本発明の排ガス浄化用触媒組成物では、高温環境に曝露された後、低温~中温において、優れた排ガス浄化性能が発揮される。なお、本明細書において、「低温~中温」は、例えば50℃以上400℃以下、好ましくは100℃以上350℃以下の温度を意味する。「担持」は、貴金属等の触媒活性成分がCe系酸化物粒子及びCe-Zr系複合酸化物粒子の外表面又は細孔内表面に物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。例えば、本発明の排ガス浄化用触媒組成物から得られた試料をSEM-EDXで分析し、触媒活性成分とCe系酸化物粒子とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分がCe系酸化物粒子に担持されていると判断することができ、触媒活性成分とCe-Zr系複合酸化物粒子とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分がCe-Zr系複合酸化物粒子に担持されていると判断することができる。Ce系酸化物粒子に担持されている貴金属元素の量は、Ce系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。上限は、例えば、20質量%である。Ce-Zr系複合酸化物粒子に担持されている貴金属元素の量は、Ce-Zr系複合酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。上限は、例えば、20質量%である。
【0064】
<その他の成分>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、Ce系酸化物粒子及びCe-Zr系複合酸化物粒子以外の1種又は2種以上の無機酸化物粒子(以下「その他の粒子」という。)を含んでいてもよい。なお、本明細書において、「その他の粒子」は、別段規定される場合を除き、本発明の排ガス浄化用触媒組成物に含まれるその他の粒子を意味し、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の原料として使用されるその他の粒子(以下「原料としてのその他の粒子」という。)と区別される。
【0065】
その他の粒子は、Ce及びZr以外の金属元素を含む酸化物で構成されている。その他の粒子としては、例えば、Al系酸化物粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子、チタニア粒子等が挙げられる。
【0066】
Al系酸化物粒子は、一般的に、Ce系酸化物粒子及びCe-Zr系複合酸化物粒子よりも、耐熱性が高い。したがって、排ガス浄化用触媒組成物の比表面積(特に、高温環境に曝露された後の比表面積)が向上し、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能)が向上する。
【0067】
Al系酸化物粒子は、Al系酸化物で構成されている。Al系酸化物粒子は、Al及びO以外の元素を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0068】
Al及びO以外の元素は、例えば、B、Si、希土類元素(例えば、Y、Ce、La、Nd、Pr、Sm、Gd等)、Zr、Cr、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)から選択することができるが、Al系酸化物の耐熱性を向上させる観点から、Ce、La、Sr、Ba等から選択することが好ましい。
【0069】
Al系酸化物としては、例えば、アルミナ粒子(Al及びOのみからなる酸化物)、アルミナの表面をAl及びO以外の元素で修飾して得られる酸化物、アルミナ中にAl及びO以外の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。Al及びO以外の元素を含むAl系酸化物の具体例としては、アルミナ-シリカ、アルミナ-シリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリア、アルミナ-ランタナ等が挙げられる。
【0070】
Al系酸化物粒子において、Al及びO以外の元素は、Al及びOとともに固溶体相を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、Al及びO以外の元素の酸化物相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよい。
【0071】
Al系酸化物粒子がAl及びO以外の元素を含む場合、耐熱性を向上させる観点から、Al系酸化物粒子におけるAlのAl2O3換算量は、Al系酸化物粒子の質量を基準として、好ましくは70質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは80質量%以上99.5質量%以下、より一層好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
【0072】
比表面積(特に、高温環境に曝露された後の比表面積)を向上させるとともに、十分な助触媒(例えば、Ce系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子等)の量を確保する観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるAl系酸化物粒子の量は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の質量を基準として、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは15質量%以上70質量%以下、より一層好ましくは20質量%以上60質量%以下である。本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるAl系酸化物粒子の量の測定方法は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物におけるCe系酸化物粒子の量の測定方法と同様である。
【0073】
比表面積(特に、高温環境に曝露された後の比表面積)を向上させるとともに、十分な助触媒の量を確保する観点から、本発明の排ガス浄化用触媒組成物において、Al系酸化物粒子の量の、Ce系酸化物粒子の量に対する比は、質量比で、好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.2以上5以下、より一層好ましくは0.3以上3以下である。
【0074】
Al系酸化物粒子の耐熱性と、基材への塗工性とを両立させる観点から、Al系酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは2μm以上30μm以下、より一層好ましくは4μm以上20μm以下である。Al系酸化物粒子の平均粒子径の測定方法は、Ce系酸化物粒子の平均粒子径の測定方法と同様である。Al系酸化物粒子の平均粒子径は、Ce系酸化物粒子の平均粒子径と同様に調整することができる。なお、本発明の排ガス浄化用触媒組成物を製造する際、原料としてのAl系酸化物粒子の平均粒子径は維持されるので、通常、Al系酸化物粒子の平均粒子径は、原料としてのAl系酸化物粒子の平均粒子径と同一である。
【0075】
その他の粒子は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、その他の粒子は、多孔質であることが好ましい。Al系酸化物粒子は、バインダとして使用されるアルミナ(以下「アルミナバインダ」という。)とは区別される。アルミナバインダは、触媒組成物の材料として使用されるアルミナゾルに由来する。
【0076】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物がその他の粒子を含む場合、貴金属元素は、その他の粒子に担持されていてもよい。「担持」の意義は上記と同様である。高温では、その他の粒子に担持された貴金属元素の排ガス浄化性能が発揮されやすい。したがって、貴金属元素がCe系酸化物粒子、Ce-Zr系複合酸化物粒子及びその他の粒子に担持されていることにより、広い温度域における排ガス浄化性能が向上する。その他の粒子に担持されている貴金属元素の量は、その他の粒子の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。なお、上限は、例えば、20質量%である。
【0077】
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、安定剤、バインダ等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等の無機酸化物系バインダが挙げられる。安定剤としては、例えば、アルカリ土類金属元素(例えば、Sr、Ba等)の硝酸塩、炭酸塩、酸化物、硫酸塩等が挙げられる。
【0078】
<排ガス浄化用触媒組成物の形態>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物の形態は、例えば、粉末状、成形体状、層状である。
【0079】
<排ガス浄化用触媒組成物の製造方法>
本発明の排ガス浄化用触媒組成物は、例えば、貴金属塩含有溶液と、原料としてのCe系酸化物粒子と、原料としてのCe-Zr系複合酸化物粒子と、必要に応じてその他の成分(例えば、原料としてのその他の粒子、バインダ、安定剤等)とを混合した後、乾燥し、焼成することにより製造することができる。焼成物は、必要に応じて粉砕してもよい。貴金属塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、塩化物等が挙げられる。貴金属塩含有溶液の溶媒は、例えば、水(例えば、イオン交換水等)である。貴金属塩含有溶液は、アルコール等の有機溶媒を含んでいてもよい。乾燥温度は、例えば50℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、例えば1時間以上3時間以下である。焼成温度は、例えば300℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば1時間以上3時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0080】
Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径を所望の範囲に調整する観点から、原料としてのCe系酸化物粒子に熱負荷を与え、原料としてのCe系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径を調整することが好ましい。熱負荷は、例えば、1000℃で1時間、大気雰囲気下で焼成することにより行うことができる。原料としてのCe系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径は、好ましくは7nm以上、より好ましくは10nm以上、より一層好ましくは20nm以上、より一層好ましくは30nm以上である。原料としてのCe系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径の上限は、例えば200nm、好ましくは100nm、より好ましくは55nmである。これらの上限はそれぞれ、上記の下限のいずれと組み合わせてもよい。原料としてのCe系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径の測定方法は、原料としてのCe系酸化物粒子を使用して測定を行う点を除き、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径の測定方法と同様である。
【0081】
≪排ガス浄化用触媒≫
以下、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0082】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材に設けられた本発明の触媒層とを備える。本発明の排ガス浄化用触媒は、本発明の触媒層の下側、上側、下流側及び上流側から選択された1以上の位置に、本発明の触媒層以外の触媒層を備えていてもよい。
【0083】
<基材>
基材は、排ガス浄化用触媒の基材として一般的に使用されている基材から適宜選択することができる。基材としては、例えば、ウォールフロー型基材、フロースルー型基材等が挙げられる。
【0084】
基材を構成する材料は、排ガス浄化用触媒の基材の材料として一般的に使用されている材料から適宜選択することができる。基材を構成する材料は、基材が例えば400℃以上の排ガスに曝露された場合にも基材の形状が安定して維持され得る材料であることが好ましい。基材の材料としては、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0085】
<触媒層>
本発明の触媒層は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物で構成されている。すなわち、本発明の触媒層は、Ce系酸化物粒子と、Ce-Zr系複合酸化物粒子と、貴金属元素とを含む。上記の<Ce系酸化物粒子>、<Ce-Zr系複合酸化物粒子>、<貴金属元素>及び<その他の成分>の欄における説明は、本発明の触媒層にも適用される。適用の際、「本発明の排ガス浄化用触媒組成物」は、「本発明の触媒層」に読み替えられる。
【0086】
排ガス浄化性能とコストとのバランスを図る観点から、基材の単位体積当たりの本発明の触媒層の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは10g/L以上300g/L以下、より好ましくは30g/L以上200g/L以下、より一層好ましくは50g/L以上150g/L以下である。なお、基材の体積は、基材の見かけの体積を意味する。例えば、基材が外径2rの円柱状である場合、基材の体積は、式:基材の体積=π×r2×(基材の長さ)で表される。
【0087】
<第1実施形態>
以下、
図1~4に基づいて、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化用触媒1Aについて説明する。
【0088】
図1に示すように、排ガス浄化用触媒1Aは、内燃機関の排気管P内の排気通路に配置されている。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン等である。内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端から他端に向けて排気管P内の排気通路を流通し、排気管P内に設けられた排ガス浄化用触媒1Aで浄化される。図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側を「排ガス流入側」、排ガス流通方向Xの下流側を「排ガス流出側」という場合がある。
【0089】
排気管P内の排気通路には、排ガス浄化用触媒1Aとともに、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。例えば、排気管P内の排気通路の上流側に、排ガス浄化用触媒1Aが配置され、排気管P内の排気通路の下流側に、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。その他の排ガス浄化用触媒としては、例えば、後述する排ガス浄化用触媒1B等が挙げられる。
【0090】
図2~4に示すように、排ガス浄化用触媒1Aは、基材10と、基材10上に設けられた触媒層20とを備える。
【0091】
基材に関する上記説明は、基材10にも適用される。
【0092】
触媒層20は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物で構成されている。すなわち、触媒層20は、Ce系酸化物粒子と、Ce-Zr系複合酸化物粒子と、貴金属元素とを含む。本発明の触媒層に関する上記説明は、触媒層20にも適用される。
【0093】
図2~4に示すように、基材10は、基材10の外形を規定する筒状部11と、筒状部11内に設けられた隔壁部12と、隔壁部12によって仕切られたセル13とを有する。
【0094】
図2に示すように、筒状部11の形状は、円筒状であるが、楕円筒状、多角筒状等のその他の形状であってもよい。
【0095】
図2~4に示すように、隣接するセル13の間には隔壁部12が存在し、隣接するセル13は隔壁部12によって仕切られている。隔壁部12は、多孔質であることが好ましい。隔壁部12の厚みは、例えば20μm以上1500μm以下である。
【0096】
図4に示すように、セル13は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
【0097】
図4に示すように、セル13の排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部はともに開口している。したがって、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、セル13の排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、フロースルー型と呼ばれる。
【0098】
図2及び3に示すように、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)の平面視形状は、四角形であるが、六角形、八角形等のその他の形状であってもよい。セル13の排ガス流出側の端部(開口部)の平面視形状も同様である。
【0099】
基材10の1平方インチあたりのセル密度は、例えば300セル以上900セル以下である。なお、基材10の1平方インチあたりのセル密度は、基材10を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られた断面における1平方インチあたりのセル13の合計個数である。
【0100】
図4に示すように、触媒層20は、基材10の隔壁部12上に設けられている。
【0101】
図4に示すように、触媒層20は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0102】
排ガス浄化用触媒1Aは、基材10の隔壁部12上に触媒層20を形成することにより製造することができる。例えば、貴金属塩含有溶液と、原料としてのCe系酸化物粒子と、原料としてのCe-Zr系複合酸化物粒子と、必要に応じてその他の成分(例えば、原料としてのその他の粒子、バインダ、安定剤等)とを混合してスラリーを調製し、スラリーを基材10の隔壁部12上に塗布し、乾燥し、焼成することにより、基材10の隔壁部12上に触媒層20を形成することができる。貴金属塩、貴金属塩含有溶液の溶媒、乾燥条件、焼成条件、原料としてのCe系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径等は、本発明の排ガス浄化用触媒組成物の製造方法と同様である。
【0103】
<第2実施形態>
以下、
図5に基づいて、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒1Bについて説明する。排ガス浄化用触媒1Bにおいて、排ガス浄化用触媒1Aと同一の部材は、排ガス浄化用触媒1Aと同一の符号で示されている。以下で別段記載する場合を除き、排ガス浄化用触媒1Aに関する上記説明は、排ガス浄化用触媒1Bにも適用される。
【0104】
図5に示すように、排ガス浄化用触媒1Bは、
基材10に、一部のセル13の排ガス流出側の端部を封止する第1封止部14、及び、残りのセル13の排ガス流入側の端部を封止する第2封止部15が設けられており、これにより、基材10に、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が第1封止部14で閉塞されている流入側セル13a、及び、排ガス流入側の端部が第2封止部15で閉塞されており、排ガス流出側の端部が開口している流出側セル13bが形成されている点、並びに、
基材10の隔壁部12の流入側セル13a側に触媒層20aが設けられており、基材10の隔壁部12の流出側セル13b側に触媒層20bが設けられている点
で、排ガス浄化用触媒1Aと相違する。
【0105】
図5に示すように、1個の流入側セル13aの周りには、複数(例えば4つ)の流出側セル13bが隣接するように配置されており、流入側セル13aと、当該流入側セル13aに隣接する流出側セル13bとは、多孔質の隔壁部12によって仕切られている。
【0106】
図5に示すように、触媒層20aは、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している。触媒層20aは、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで延在していてもよい。
【0107】
図5に示すように、触媒層20bは、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在している。触媒層20bは、隔壁部12の排ガス流出側の端部から隔壁部12の排ガス流入側の端部まで延在していてもよい。
【0108】
触媒層20a及び20bの少なくとも一方は、Ce系酸化物粒子と、Ce-Zr系複合酸化物粒子と、貴金属元素とを含む本発明の触媒層であり、本発明の触媒層に関する上記説明が適用される。触媒層20a及び20bの組成等は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0109】
排ガス浄化用触媒1Bでは、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスが、多孔質の隔壁部12を通過して流出側セル13bの排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、ウォールフロー型と呼ばれる。
【0110】
排ガス浄化用触媒1Bにおいて、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスが、多孔質の隔壁部12を通過する際、排ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)が、隔壁部12の細孔に捕集される。したがって、排ガス浄化用触媒1Bは、ガソリンエンジン用のパティキュレートフィルタ(Gasoline Particulate Filter)又はディーゼルエンジン用のパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter)として有用である。
【0111】
排ガス浄化用触媒1Bは、以下の方法により製造することができる。基材10の排ガス流入側の端部を、触媒層20aを形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引し、乾燥させ、触媒層20aの前駆層を形成する。基材10の排ガス流出側の端部を、触媒層20bを形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引し、乾燥させ、触媒層20bの前駆層を形成する。触媒層20aの前駆層及び触媒層20bの前駆層を形成した後、焼成することにより、触媒層20a及び触媒層20bが形成され、排ガス浄化用触媒1Bが製造される。排ガス浄化用触媒1Bの製造条件等は、排ガス浄化用触媒1Aと同様である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例、比較例及び試験例に基づいて、本発明をさらに詳述する。
【0113】
酸化セリウム粉末を準備し、以下の実施例、比較例及び比較例で使用した。酸化セリウム粉末におけるCeのCeO2換算量はほぼ100質量%(>99質量%)であった。
【0114】
〔実施例1〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液(AlのAl2O3換算量:5.0g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:95.0g)を添加し、室温で2時間攪拌した後、蒸発乾固して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を大気中1000℃で1時間焼成し、実施例1のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、AlのAl2O3換算量:5.0質量%)を得た。
【0115】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
触媒組成物100質量部を作製するために、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(Ptの金属換算量:1.0質量部)に、Ce-Zr系複合酸化物粉末(CeのCeO2換算量:40質量%、ZrのZrO2換算量:50質量%、LaのLa2O3換算量:10質量%) 61.0質量部、Al系酸化物粉末(AlのAl2O3換算量:99質量%、LaのLa2O3換算量:1質量%) 28.0質量部、及び実施例1のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、AlのAl2O3換算量:5.0質量%) 10.0質量部を順次添加し、1時間静置してジニトロジアンミン白金硝酸水溶液をCe-Zr系複合酸化物粉末、Al系酸化物粉末及びCe系酸化物粉末に含浸及び担持させた後、蒸発乾固して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を大気雰囲気下、500℃で1時間焼成し、粉末状の触媒組成物を得た。
【0116】
得られた触媒組成物を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するAl2O3が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びAlを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0117】
〔実施例2〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸マグネシウム水溶液(MgのMgO換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、実施例2のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、MgのMgO換算量:5.0質量%)を得た。
【0118】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、実施例2のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0119】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するMgOが検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びMgを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0120】
〔実施例3〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸ランタン水溶液(LaのLa2O3換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、実施例3のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、LaのLa2O3換算量:5.0質量%)を得た。
【0121】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、実施例3のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0122】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するLa2O3が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びLaを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0123】
〔実施例4〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸プラセオジム水溶液(PrのPr6O11換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、実施例4のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、PrのPr6O11換算量:5.0質量%)を得た。
【0124】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、実施例4のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0125】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するPr6O11が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びPrを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0126】
〔実施例5〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸イットリウム水溶液(YのY2O3換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、実施例5のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、YのY2O3換算量:5.0質量%)を得た。
【0127】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、実施例5のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0128】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するY2O3が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びYを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0129】
〔実施例6〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸ネオジム水溶液(NdのNd2O3換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、実施例6のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、NdのNd2O3換算量:5.0質量%)を得た。
【0130】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、実施例6のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0131】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するNd2O3が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びNdを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0132】
〔比較例1〕
触媒組成物100質量を作製するために、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(Ptの金属換算量:1.0質量部)に、Ce-Zr系複合酸化物粉末(CeのCeO2換算量:40質量%、ZrのZrO2換算量:50質量%、LaのLa2O3換算量:10質量%) 66.0質量部、及びAl系酸化物粉末(AlのAl2O3換算量:99質量%、LaのLa2O3換算量:1質量%) 33.0質量部を順次添加し、1時間静置してジニトロジアンミン白金硝酸水溶液をCe-Zr系複合酸化物粉末及びAl系酸化物粉末に含浸及び担持させた後、蒸発乾固して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を大気雰囲気下、500℃で1時間焼成し、粉末状の触媒組成物を得た。
【0133】
〔比較例2〕
触媒組成物100質量を作製するために、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(Ptの金属換算量:1.0質量部)に、Ce-Zr系複合酸化物粉末(CeのCeO2換算量:40質量%、ZrのZrO2換算量:50質量%、LaのLa2O3換算量:10質量%) 61.0質量部、Al系酸化物粉末(AlのAl2O3換算量:99質量%、LaのLa2O3換算量:1質量%) 28.0質量部、及び酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:ほぼ100質量%(>99質量%)) 10.0質量部を順次添加し、1時間静置してジニトロジアンミン白金硝酸水溶液をCe-Zr系複合酸化物粉末、Al系酸化物粉末及び酸化セリウム粉末に含浸及び担持させた後、蒸発乾固して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を大気雰囲気下、500℃で1時間焼成し、粉末状の触媒組成物を得た。
【0134】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するAl2O3はほとんど検出されなかった。
【0135】
〔比較例3〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸ジルコニウム水溶液(ZrのZrO2換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、比較例3のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、ZrのZrO2換算量:5.0質量%)を得た。
【0136】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、比較例3のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0137】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するZrO2が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びZrを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0138】
〔比較例4〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、リン酸水溶液(PのP4O10換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、比較例4のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、PのP4O10換算量:5.0質量%)を得た。
【0139】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、比較例4のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0140】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するP4O10が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びPを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0141】
〔比較例5〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸スズ水溶液(SnのSnO換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、比較例5のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、SnのSnO換算量:5.0質量%)を得た。
【0142】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、比較例5のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0143】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するSnOが検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びSnを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0144】
〔比較例6〕
(1)Ce系酸化物の作製
硝酸アルミニウム水溶液に代えて、硝酸インジウム水溶液(InのIn2O3換算量:5.0g)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、比較例6のCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、InのIn2O3換算量:5.0質量%)を得た。
【0145】
(2)排ガス浄化用触媒組成物の作製
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、比較例6のCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0146】
得られた触媒組成物をEPMAで分析したところ、CeO2と同じ位置に存在するIn2O3が検出された。これにより、触媒組成物に含まれるCe系酸化物粒子が、Ce及びInを含む酸化物で構成されていることが確認された。
【0147】
〔試験例1〕
(1)Ce系酸化物粉末の平均粒子径の測定
実施例1~6及び比較例1~6で得られた各Ce系酸化物粉末の平均粒子径を次の通り測定した。走査型電子顕微鏡(JEOL製 JCM-7000)を使用して、Ce系酸化物粉末を観察し、視野内から任意に選択された100個の粒子の定方向径(フェレ径)を測定し、平均値をCe系酸化物粉末の平均粒子径とした。
【0148】
(2)Ce系酸化物粉末を使用した結晶子径の測定
実施例1~6及び比較例1~6で得られた各Ce系酸化物粉末を使用して、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径を次の通り測定した。Ce系酸化物粉末及び市販の粉末X線回折装置(株式会社リガク社製「MiniFlex600」)を使用して、X線源:CuKα、操作軸:2θ/θ、測定方法:連続、計数単位:cps、開始角度:5°、終了角度:90°、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:10°/分、電圧:40kV、電流:150mAの条件でX線回折(XRD)を行った。得られたXRDパターンにおいて、CeO2に由来する回折ピークのうち、2θ=55~58°に存在するピーク及び2θ=46~49°に存在するピークを特定し、解析ソフト(株式会社リガク社製「PDXL version 2」)を使用して、特定したピークにシェラーの式を適用し、結晶子径を自動算出した。2θ=55~58°に存在するピークから求めた結晶子径と、2θ=46~49°に存在するピークから求めた結晶子径とを比較し、大きい方の結晶子径を、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径として選択した。
【0149】
(3)触媒組成物を使用した結晶子径の測定
実施例1~6及び比較例1~6で得られた各触媒組成物を使用して、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径を上記(2)と同様にして測定した。
【0150】
(4)貴金属分散度の測定
石英製の管状炉を使用して、O2ガス 0.5vol.%、水蒸気としてH2O 10vol.%,バランスガスとしてN2を流通させた雰囲気下、1000℃で20時間、実施例1~6及び比較例1~6で得られた各触媒組成物に熱処理を施した。熱処理後の触媒組成物を、金属分散度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 BELMETAL3)を使用して、COパルス法により、貴金属へのCO吸着量を測定し、貴金属分散度を算出した。ここで、貴金属分散度とは、触媒組成物中の貴金属原子(実施例1~6及び比較例1~6ではPt)の総数Aに対する、貴金属粒子表面に露出している貴金属原子の数Bの比率であり、貴金属分散度(%)=(B/A)×100により算出される。貴金属粒子表面に露出している貴金属原子の数Bは、貴金属粒子表面に露出している貴金属原子とCOとが1:1で吸着するという前提に基づき、COパルス法により測定されたCO吸着量から算出される。
【0151】
(5)OSC量の測定
金属分散度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 BELMETAL3)を使用して、実施例1~6及び比較例1~6で得られた各触媒組成物のOSC測定をCOパルス法により行った。
【0152】
OSC測定では、He流通下、触媒組成物を800℃に昇温し、40分間、当該温度に保持する前処理を行った後、300℃まで降温した。次いで、触媒組成物を300℃に保持した状態で、O2ガスを4パルスに分けて注入し、酸化処理を行った後、COを含む試験ガスを10パルスに分けて注入し、消費されたCOガス総量から、触媒組成物の単位重量当たりのOSC量(μmol/g)を、金属分散度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 BELMETAL3)に内蔵されている熱伝導度型検出器(TCD)で測定した。
【0153】
(6)排ガス浄化性能の評価
石英製の管状炉を使用して、O2ガス 0.5vol.%、水蒸気としてH2O 10vol.%、バランスガスとしてN2を流通させた雰囲気下、1000℃で30時間、実施例1~6及び比較例1~6で得られた各触媒組成物に熱処理を施した。熱処理後の触媒組成物を反応管に充填し、固定床流通型反応装置を使用して、熱処理後の触媒組成物の排ガス浄化性能を測定した。具体的には、熱処理後の触媒組成物0.1gを反応管に充填し、模擬排ガス(CO:3000ppm、C3H6:1000ppmC、NO:500ppm、O2:0.28%、CO2:14%、H2O:10%、N2:残部)を、昇温速度:10℃/分、空燃比(A/F):14.6、総流量:1000mL/分の条件で反応管に導入した。なお、「A/F」は、Air/Fuelの略で、空気と燃料との比率を示す数値である。昇温速度10℃/分で600℃まで昇温させた後、10分間保持し、前処理を行った。次いで、一旦冷却した後、100℃から600℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、反応管の出口から流出する模擬排ガスに含まれるNO量をフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定し、下記式に基づいて浄化率を求めた。なお、下記式中、Xは、触媒組成物未設置のときの検出量を表し、Yは、触媒組成物設置時の検出量を表す。
浄化率(%)=(X-Y)/X×100
【0154】
NOの浄化率が50%に達したときの、反応管の入口におけるガス温度をライトオフ温度T50(℃)として求めた。なお、ライトオフ温度T50は、昇温時について求めた。
【0155】
Ce系酸化物粉末の平均粒子径及びCe系酸化物粉末を使用して測定したCeO2の結晶子径の測定結果を表1に示す。触媒組成物を使用して測定したCeO2の結晶子径、貴金属分散度、OSC量及びT50の測定結果を表2に示す。表1には、実施例1~6及び比較例1~6において触媒組成物の材料として使用したCe系酸化物粉末の組成及び添加量も示す。表1中、「CeO2」はCeのCeO2換算量(質量%)を、「Al2O3」はAlのAl2O3換算量(質量%)を、「MgO」はMgのMgO換算量(質量%)、「La2O3」はLaのLa2O3換算量(質量%)を、「Pr6O11」はPrのPr6O11換算量(質量%)、「Y2O3」はYのY2O3換算量(質量%)、「Nd2O3」はNdのNd2O3換算量(質量%)、「ZrO2」はZrのZrO2換算量を、「P4O10」はPのP4O10換算量(質量%)を、「SnO」はSnのSnO換算量(質量%)を、「In2O3」はInのIn2O3換算量(質量%)を表す。
【0156】
【0157】
【0158】
表2に示されるように、実施例1~6の触媒組成物のT50は比較例1~6の触媒組成物のT50よりもよりも低く、実施例1~6の触媒組成物の排ガス浄化性能は比較例1~6の触媒組成物の排ガス浄化性能よりも向上していた。
【0159】
表2に示されるように、実施例1及び2の触媒組成物の貴金属分散度は実施例3~6の触媒組成物の貴金属分散度よりも高い一方、実施例3~6の触媒組成物のOSC量は実施例1及び2の触媒組成物のOSC量よりも大きかった。これらの結果から、実施例1及び2の触媒組成物と、実施例3~6の触媒組成物とは、排ガス浄化性能の向上メカニズムが異なることが判明した。
【0160】
すなわち、Ce系酸化物粒子がAl及びMgから選択される第1追加元素を含む場合、Ce系酸化物粒子の耐熱性が向上し、Ce系酸化物粒子の比表面積の低下及びそれに伴うCe系酸化物粒子への触媒活性成分の埋没が抑制され、これにより、排ガス浄化用触媒組成物の比表面積が向上するとともに触媒活性成分の分散度が向上し、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化性能が向上すると考えられる。
【0161】
また、Ce系酸化物粉末がLa、Pr、Y及びNdから選択される第2追加元素を含む場合、貴金属元素担持後のCe系酸化物粒子の酸素貯蔵能が向上し、これにより、排ガス浄化用触媒組成物の排ガス浄化能が向上すると考えられる。
【0162】
〔試験例2〕
試験例2では、Al及びMgから選択される第1追加元素の含有量に関し、好適な範囲を決定するための試験を行った。
【0163】
(1)試験例2A
硝酸アルミニウム水溶液(AlのAl2O3換算量:0.1g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:99.9g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例2AのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:99.9質量%、AlのAl2O3換算量:0.1質量%)を得た。
【0164】
(2)試験例2B
硝酸アルミニウム水溶液(AlのAl2O3換算量:2.5g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:97.5g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例2BのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:97.5質量%、AlのAl2O3換算量:2.5質量%)を得た。
【0165】
(3)試験例2C
実施例1で得られたCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、AlのAl2O3換算量:5.0質量%)を、試験例2CのCe系酸化物粉末とした。
【0166】
(4)試験例2D
硝酸アルミニウム水溶液(AlのAl2O3換算量:10.0g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:90.0g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例2DのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:90.0質量%、AlのAl2O3換算量:10.0質量%)を得た。
【0167】
(5)試験例2E
硝酸アルミニウム水溶液(AlのAl2O3換算量:20.0g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:80.0g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例2EのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:80.0質量%、AlのAl2O3換算量:20.0質量%)を得た。
【0168】
(6)試験例2F
酸化セリウム粉末を大気中1000℃で1時間焼成し、試験例2FのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:ほぼ100質量%(>99質量%))を得た。
【0169】
(7)Ce系酸化物粉末の平均粒子径の測定
試験例1(1)と同様にして、試験例2A~2FのCe系酸化物粉末の平均粒子径を測定した。測定結果を表3に示す。
【0170】
(8)Ce系酸化物粉末を使用した結晶子径の測定
試験例2A~2FのCe系酸化物粉末を使用して、試験例1(2)と同様にして、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径を測定した。測定結果を表3に示す。
【0171】
(9)BET比表面積の測定
カンタクローム社製 QUADRASORB SIを使用して、N2ガス吸着法により、試験例2A~2FのCe系酸化物粉末のBET比表面積を測定した。測定結果を表3に示す。
【0172】
【0173】
表3に示されるように、試験例2A~2EのCe系酸化物粉末のBET比表面積は、試験例2FのCe系酸化物粉末のBET比表面積よりも大きかった。これらの結果から、Ce系酸化物粉末における第1追加元素の酸化物換算量の好適な範囲は、Ce系酸化物粉末の質量を基準として、0.1質量%以上20質量%以下であることが判明した。
【0174】
〔試験例3〕
試験例3では、La、Pr、Y及びNdから選択される第2追加元素の含有量に関し、好適な範囲を決定するための試験を行った。
【0175】
(1)試験例3A
硝酸ランタン水溶液(LaのLa2O3換算量:0.1g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:99.9g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例3AのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:99.9質量%、LaのLa2O3換算量:0.1質量%)を得た。
【0176】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3AのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0177】
(2)試験例3B
硝酸ランタン水溶液(LaのLa2O3換算量:2.5g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:97.5g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例3BのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:97.5質量%、LaのLa2O3換算量:2.5質量%)を得た。
【0178】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3BのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0179】
(3)試験例3C
実施例3で得られたCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:95.0質量%、LaのLa2O3換算量:5.0質量%)を、試験例3CのCe系酸化物粉末とした。
【0180】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3CのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0181】
(4)試験例3D
硝酸ランタン水溶液(LaのLa2O3換算量:10.0g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:90.0g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例3DのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:90.0質量%、LaのLa2O3換算量:10.0質量%)を得た。
【0182】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3DのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0183】
(5)試験例3E
硝酸ランタン水溶液(LaのLa2O3換算量:20.0g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:80.0g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例3EのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:80.0質量%、LaのLa2O3換算量:20.0質量%)を得た。
【0184】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3EのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0185】
(6)試験例3F
酸化セリウム粉末を大気中1000℃で1時間焼成し、試験例3FのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:ほぼ100質量%(>99質量%))を得た。
【0186】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3FのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0187】
(7)試験例3G
硝酸ランタン水溶液(LaのLa2O3換算量:30.0g)に酸化セリウム粉末(CeのCeO2換算量:70.0g)を添加した点を除き、実施例1と同様にして、試験例3GのCe系酸化物粉末(CeのCeO2換算量:70.0質量%、LaのLa2O3換算量:30.0質量%)を得た。
【0188】
実施例1のCe系酸化物粉末に代えて、試験例3GのCe系酸化物粉末を使用した点を除き、実施例1と同様にして、粉末状の触媒組成物を得た。
【0189】
(8)Ce系酸化物粉末の平均粒子径の測定
試験例1(1)と同様にして、試験例3A~3GのCe系酸化物粉末の平均粒子径を測定した。測定結果を表4に示す。
【0190】
(9)Ce系酸化物粉末を使用した結晶子径の測定
試験例3A~3GのCe系酸化物粉末を使用して、試験例1(2)と同様にして、Ce系酸化物粒子におけるCeO2の結晶子径を測定した。測定結果を表4に示す。
【0191】
(10)OSC量の測定
試験例1(5)と同様にして、試験例3A~3Gの触媒組成物のOSC測定をCOパルス法で行った。測定結果を表4に示す。
【0192】
【0193】
表4に示されるように、試験例3A~3Eの触媒組成物のOSC量は、試験例3F及び3Gの触媒組成物のOSC量よりも大きかった。これらの結果から、Ce系酸化物粉末における第2追加元素の酸化物換算量の好適な範囲は、Ce系酸化物粉末の質量を基準として、0.1質量%以上20質量%以下であることが判明した。
【符号の説明】
【0194】
1A,1B・・・排ガス浄化用触媒
10・・・基材
11・・・筒状部
12・・・隔壁部
13・・・セル
20,20a,20b・・・触媒層