(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】超音波測定装置、接触判定サーバ装置、接触判定プログラム及び接触判定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
A61B8/08 ZDM
(21)【出願番号】P 2020523142
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022325
(87)【国際公開番号】W WO2019235521
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018109363
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515134863
【氏名又は名称】トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄高
(72)【発明者】
【氏名】正森 良輔
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199182(WO,A1)
【文献】特開2017-012612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0105585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブと、
前記プローブの体表への接触状態を判定する制御部とを備え、
前記制御部は、
装着中の前記プローブによる超音波の送受信の繰り返しによって得られた受信波のうち異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較することによって前記プローブの体表への接触状態を判定する超音波測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波測定装置において、
前記制御部は、前記少なくとも2つの受信波の類似の度合いに基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する超音波測定装置。
【請求項3】
対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブを含む端末装置とネットワークを介して通信可能であり、端末装置から送信されてくる受信波を受信する接触判定サーバ装置であって、
前記プローブの体表への接触状態を判定する制御部を備え、
前記制御部は、
装着中の前記プローブによる超音波の送受信の繰り返しによって得られた受信波のうち異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較することによって前記プローブの体表への接触状態を判定する接触判定サーバ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の接触判定サーバ装置において、
前記制御部は、前記少なくとも2つの受信波の類似の度合いに基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する接触判定サーバ装置。
【請求項5】
対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブの体表への接触状態を判定する機能をコンピュータに実現させるための接触判定プログラムであって、
装着中の前記プローブによる超音波の送受信の繰り返しによって得られた受信波のうち異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較する比較機能と、
前記比較機能の結果に基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する判定機能とをコンピュータに実現させるための接触判定プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の接触判定プログラムにおいて、
前記比較機能は、前記少なくとも2つの受信波の類似の度合いを算出する算出機能であり、
前記判定機能は、算出された前記類似の度合いに基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する接触判定プログラム。
【請求項7】
対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブの体表への接触状態を判定する接触判定方法であって、
装着中の前記プローブによる超音波の送受信の繰り返しによって得られた受信波のうち異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較する比較工程と、
前記比較工程の結果に基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する判定工程とを含む接触判定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の接触判定方法において、
異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって少なくとも2つの受信波を取得する取得工程をさらに含む接触判定方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の接触判定方法において、
前記比較工程は、前記少なくとも2つの受信波の類似の度合いを算出する算出工程であり、
前記判定工程では、算出された前記類似の度合いに基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する接触判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、超音波測定装置、接触判定サーバ装置、接触判定プログラム及び接触判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象者の体表にプローブを接触させ、プローブから体内に超音波を送信し、その反射波をプローブで受信する装置が開示されている。特許文献1に記載された装置は、受信した反射波に基づいて、膀胱内の尿量を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置においては、プローブを体表に適切に接触させる必要がある。例えば、オペレータがプローブを体表に当てながら、そのときの反射波を取得するような状況においては、プローブの接触状態を適切に調整しながら反射波を取得することができる。しかしながら、プローブを装着したままの状態では、プローブの接触状態を適宜調整することができない。そのような場合には、プローブの体表への接触状態を適切に判定することが求められる。接触状態が不適切な場合には、プローブの装着をやり直すとか、そのときの反射波を利用しない等の対応を取ることができる。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プローブの体表への接触状態を判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された超音波測定装置は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブと、前記プローブの体表への接触状態を判定する制御部とを備え、前記制御部は、異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較することによって前記プローブの体表への接触状態を判定する。
【0007】
ここに開示された接触判定サーバ装置は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブを含む端末装置とネットワークを介して通信可能であり、端末装置から送信されてくる受信波を受信する接触判定サーバ装置であって、前記プローブの体表への接触状態を判定する制御部を備え、前記制御部は、異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較することによって前記プローブの体表への接触状態を判定する。
【0008】
ここに開示された接触判定プログラムは、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブの体表への接触状態を判定する機能をコンピュータに実現させるための接触判定プログラムであって、異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較する比較機能と、前記比較機能の結果に基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する判定機能とをコンピュータに実現させる。
【0009】
ここに開示された接触判定方法は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブの体表への接触状態を判定する接触判定方法であって、異なる時間における前記プローブによる超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波を比較する比較工程と、前記比較工程の結果に基づいて前記プローブの体表への接触状態を判定する判定工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
ここに開示された超音波測定装置によれば、プローブの体表への接触状態を判定することができる。
【0011】
ここに開示された接触判定サーバ装置によれば、プローブの体表への接触状態を判定することができる。
【0012】
ここに開示された接触判定プログラムによれば、プローブの体表への接触状態を判定することができる。
【0013】
ここに開示された接触判定方法によれば、プローブの体表への接触状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】
図4は、プローブの装着状態を示す図である。
【
図5】
図5は、プローブを装着した人体の下腹部の模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第1サーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、超音波測定装置の処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、尿量推定のサブルーチンのフローチャートである。
【
図11】
図11は、蓄尿量が中程度の場合の人体の下腹部の模式的な断面図である。
【
図16】
図16は、第3サーバに蓄積される判定結果を示す表である。
【
図17】
図17は、接触判定のサブルーチンのフローチャートである。
【
図18】
図18は、プローブの体表への接触状態が適切な場合の第3超音波センサの最新の受信信号である。
【
図19】
図19は、プローブの体表への接触状態が適切な場合の第3超音波センサの前回の受信波形である。
【
図20】
図20は、プローブの体表への接触状態が適切な場合の第3超音波センサの前々回の受信波形である。
【
図21】
図21は、プローブの体表への接触状態が不適切な場合の第3超音波センサの最新の受信信号である。
【
図22】
図22は、プローブの体表への接触状態が不適切な場合の第3超音波センサの前回の受信波形である。
【
図23】
図23は、プローブの体表への接触状態が不適切な場合の第3超音波センサの前々回の受信波形である。
【
図24】
図24は、その他の実施形態に係るユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
〈超音波測定装置の構成〉
図1は、超音波測定装置100の概略図である。
【0017】
超音波測定装置100は、超音波を用いて、対象者の排尿タイミングを推定するものである。例えば、対象者は、老人若しくは身体障害者等の要介護者、又は要介護者ではないものの体が不自由でトイレに行くまでに時間を要する人等である。ただし、対象者は、これに限られるものではない。
【0018】
超音波測定装置100は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブ1、及び、プローブ1の受信信号を処理する処理装置2を含む端末装置10と、端末装置10から送られてくる信号を解析するサーバ群3とを備えている。プローブ1は、対象者に常時装着され、超音波の送受信を繰り返す。プローブ1と処理装置2とは、有線で接続されている。処理装置2は、サーバ群3と無線通信を行う。
【0019】
〈プローブ〉
図2は、プローブ1の概略的な斜視図である。
図3は、プローブ1の概略的な側面図である。
【0020】
プローブ1は、
図2に示すように、4つの超音波センサ11A~11Dと、超音波センサ11A~11Dを収容するケーシング12とを有している。
【0021】
超音波センサ11A~11Dのそれぞれの基本的な構成は同じである。以下、超音波センサ11A~11Dのそれぞれを区別しない場合には、単に「超音波センサ11」と称する。超音波センサ11A~11Dを区別する場合には、第1超音波センサ11A、第2超音波センサ11B、第3超音波センサ11C、第4超音波センサ11Dと称する。
【0022】
超音波センサ11は、超音波の送受信を行う。具体的には、超音波センサ11は、圧電素子を有している。圧電素子は、駆動電圧に応じた振動を行って超音波を発生させる一方、超音波を受信すると、その振動に応じた電気信号を発生させる。
【0023】
ケーシング12は、
図2に示すように、概略、偏平な直方体に形成されている。ケーシング12は、比較的大きな面積を有し、相対向する一対の略長方形の面を有しており、その一方の面が、対象者の腹部に接触する面(以下、「接触面」という)13となる。
【0024】
超音波センサ11A~11Dは、膀胱が膨張する方向における異なる位置に向かって超音波を送信するように配置されている。
【0025】
詳しくは、超音波センサ11A~11Dは、
図2,3に示すように、ケーシング12の上下方向における異なる位置に配置されている。第1超音波センサ11A、第2超音波センサ11B、第3超音波センサ11C、第4超音波センサ11Dの順で下から配置されている。ここで、ケーシング12の上下方向とは、プローブ1が対象者に装着されたときの上下方向である。プローブ1は、例えば、略長方形状の接触面13の長手方向が上下方向に一致する状態で対象者に装着される。すなわち、ケーシング12の上下方向は、接触面13の長手方向である。
【0026】
第1超音波センサ11A及び第3超音波センサ11Cの左右方向の位置は同じである一方、第2超音波センサ及び第4超音波センサ11Dは、第1超音波センサ11A及び第3超音波センサ11Cに対して左右方向にオフセットしている。第2超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dの左右方向の位置は同じである。つまり、超音波センサ11A~11Dは、千鳥状に配置されている。
【0027】
それに加えて、超音波センサ11A~11Dのそれぞれの超音波の送信方向は、平行ではない。超音波センサ11A~11Dは、
図3に示すように、上下方向に放射状に超音波を送信する。すなわち、超音波センサ11A~11Dは、上下方向における超音波の出射角度が異なっている。具体的には、第4超音波センサ11Dは、接触面13の法線方向に超音波を送信する。第3超音波センサ11Cは、第4超音波センサ11Aよりも斜め下方に向かって超音波を送信する。第2超音波センサ11Bは、第3超音波センサ11Cよりも斜め下方に向かって超音波を送信する。第1超音波センサ11Aは、第2超音波センサ11Bよりも斜め下方に向かって超音波を送信する。つまり、第1超音波センサ11Aが、最も下向きに超音波を送信し、第2超音波センサ11B、第3超音波センサ11C、第4超音波センサ11Dの順にしだいに上向きに超音波を送信する。
【0028】
図4は、プローブ1の装着状態を示す図である。プローブ1は、
図4に示すように、対象者に常時装着される。プローブ1は、対象者の腹部の皮膚上であって、膀胱に対応する部分(例えば、下腹部)に配置される。
【0029】
例えば、プローブ1は、接触面13を対象者の腹部に接触させた状態で、ベルト又はテープによって腹部に取り付けられる。尚、接触面13と腹部との間には、超音波の腹部への透過性を向上させるためのジェル等が塗布される。
【0030】
図5は、プローブ1を装着した人体の下腹部の模式的な断面図である。尚、
図5の例は、蓄尿量がほとんど無い状態を示している。腹部の表面から背中に向かって、皮下脂肪61、筋肉62、脂肪63、膀胱64、精嚢65若しくは前立腺66(男性の場合)又は膣(女性の場合)、直腸67、背骨(仙骨)68等が順に並んでいる。膀胱64の上には、小腸69が位置しており、膀胱64の前側の斜め下には、恥骨610が位置している。
【0031】
プローブ1は、超音波センサ11A~11Dから出射される超音波が上下方向に広がるように対象者の腹部に装着される。超音波センサ11A~11Dは、体内における上下方向の異なる位置に向かって超音波を送信する。膀胱は、蓄尿量の増加に伴って三次元に膨らむ。そのため、上下方向における異なる位置は、膀胱が膨張する方向の1つである。尚、膀胱は、特に上下方向に大きく膨張する。すなわち、超音波センサ11A~11Dは、膀胱が比較的大きく膨張する方向における異なる位置に向かって超音波を送信するように配置されている。
【0032】
〈処理装置〉
図6は、端末装置10のブロック図である。処理装置2は、超音波センサ11へ駆動電圧を出力する送信部21と、超音波センサ11から電気信号を受信する受信部22と、送信部21及び受信部22に接続される超音波センサ11を切り替えるスイッチ23と、外部に種々の情報を報知するための報知部24と、外部との通信を行う通信部25と、各種プログラム及びデータを記憶する記憶部26と、処理装置2の全体的な制御を行う制御部27と、メモリ28とを有している。処理装置2は、対象者の衣服等に装着される。
【0033】
送信部21は、超音波センサ11に駆動電圧を供給する。送信部21は、パルス発生器21aと増幅部21bとを有している。パルス発生器21aは、所定のパルス幅及び電圧値のパルス信号を発生させる。パルス発生器21aは、パルス幅、パルス数、及び、周波数を変更可能に構成されていてもよい。増幅部21bは、パルス発生器21aからのパルス信号を増幅し、駆動電圧として超音波センサ11へ出力する。
【0034】
受信部22は、超音波センサ11からの電気信号を受信する。受信部22は、増幅部22aと、検波部22bと、A/D変換部22cとを有している。増幅部22aは、超音波センサ11からの受信信号を増幅する。検波部22bは、増幅された受信信号に包絡線検波を施す。尚、検波部22bは、検波後の受信信号を増幅してもよい。A/D変換部22cは、検波後の受信信号をA/D変換する。
【0035】
スイッチ23は、超音波センサ11A~11Dの中から送信部21及び受信部22に接続される超音波センサ11を択一的に切り替える。
【0036】
報知部24は、例えば、LEDランプである。LEDランプの点灯態様によって対象者に様々な情報(例えば、排尿タイミングの到来)を報知する。
【0037】
通信部25は、通信モジュールであり、外部の通信装置と通信を行う。例えば、通信部25は、ブルートゥース(登録商標)規格の通信を行う。通信部25は、
図1に示すように、ゲートウェイ72を介してサーバ群3と通信を行う。
【0038】
記憶部26は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、フラッシュメモリで構成されている。尚、記憶部26は、CD-ROM等の光ディスク等で構成されていてもよい。記憶部26は、制御部27の処理の実行に必要な各種プログラムや各種情報を記憶している。さらに、記憶部26は、受信部22によって受信された受信信号、及び、通信部25を介して外部から取得した情報等を記憶している。
【0039】
制御部27は、記憶部26に記憶されているプログラムに基づいて送信部21、受信部22、スイッチ23、報知部24及び通信部25を制御する。制御部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成されている。制御部27は、記憶部26等に記憶されたプログラムをメモリ28に展開して実行することによって各種処理を実行する。尚、制御部27は、プロセッサと同様の機能を有するLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0040】
具体的には、制御部27は、スイッチ23を制御して、送信部21及び受信部22に接続される超音波センサ11を切り替える。制御部27は、送信部21を制御して、駆動電圧を超音波センサ11へ出力させる。制御部27は、受信部22を制御して、超音波センサ11の受信信号をデジタル信号に変換させる。制御部27は、通信部25を制御して、受信部22からの信号を外部に送信する。制御部27は、通信部25を介して外部からの信号を受信し、その信号に応じた処理を行う(例えば、報知部24を作動させる)。
【0041】
メモリ28は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はRAM(Random Access Memory)等で構成されている。
【0042】
〈サーバ群〉
サーバ群3は、所謂、クラウドコンピューティングを行う。サーバ群3は、
図1に示すように、複数のサーバを含んでいる。具体的には、サーバ群3は、データ解析を行う第1サーバ31、ユーザ端末71にアプリケーションを提供する第2サーバ32と、データベースとして機能する第3サーバ33とを含んでいる。
【0043】
第1サーバ31は、端末装置10(詳しくは、処理装置2)とネットワークを介して通信可能であり、端末装置10から送信されてくる受信信号(即ち、受信部22により受信処理された超音波センサ11の受信信号(受信波))を受信し、第3サーバ33に保存する。以下、端末装置10から送信される受信信号を単に「超音波センサ11の受信信号」とも称する。また、第1サーバ31は、第3サーバ33に保存された超音波センサ11の受信信号の解析を行う。具体的には、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号に基づいて膀胱の蓄尿量を推定する。さらに、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号に基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する。第1サーバ31は、蓄尿量を推定するためのプログラム及びデータ、並びに、プローブ1の接触状態を判定するためのプログラム及びデータ等を記憶している。第1サーバ31は、接触判定サーバ装置の一例である。
【0044】
第2サーバ32は、ユーザ端末71とネットワークを介して通信可能である。サーバ群3(詳しくは、第3サーバ33)には、ユーザ(ユーザID)を登録可能であり、ユーザIDがサーバ群3に処理装置2と紐づけて記憶されている。さらには、サーバ群3には、ユーザIDと紐づけてユーザ端末71も登録され得る。例えば、ユーザがユーザ端末71を用いて、第2サーバ32にユーザ登録をしたり、ログインしたりする際に、第2サーバ32がユーザ端末71の情報を取得し、登録しておく。そうすることで、サーバ群3とユーザ端末71との間の通信が可能となる。例えば、介護者の所持するユーザ端末71(例えば、スマートフォンやタブレット端末)がサーバ群3に登録され得る。また、対象者が自力でトイレへ行くことができる場合には、対象者のユーザ端末71が登録され得る。ユーザ端末71は、1台に限らず、複数台(例えば、介護者のユーザ端末71と対象者のユーザ端末71)を登録可能としてもよい。ユーザ端末71は、超音波測定装置100専用のアプリをダウンロードしておくことによって、第2サーバ32と情報の送受信を行って、専用のアプリを作動させることができる。また、第2サーバ32は、対象者の排尿タイミング等の各種情報をユーザ端末71に送信する。
【0045】
第3サーバ33は、対象者に関する情報、第1サーバ31が受信した超音波センサ11の受信信号、第1サーバ31の解析結果、及び、第2サーバ32が受信した情報を記憶している。対象者に関する情報は、例えば、対象者を特定するユーザID、処理装置2を特定する機器ID、ユーザ端末を特定する端末ID、及び、対象者の蓄尿及び排尿に関する情報等である。第3サーバ33は、これらの情報を紐づけて記憶している。ユーザID、機器ID及び端末IDは、ユーザによって予め登録されている。対象者の蓄尿及び排尿に関する情報は、例えば、許容蓄尿量(後述する許容尿レベル)であり、デフォルトで共通の初期値が予め設定されている。
【0046】
図7は、第1サーバ31のハードウェア構成を示すブロック図である。第1サーバ31は、制御部41と、メモリ42と、通信部43と、記憶部44とを有している。尚、第1サーバ31は、キーボード及び/又はディスプレイをさらに有していてもよい。
【0047】
制御部41は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成されている。制御部41は、記憶部44等に記憶されたプログラムをメモリ42に展開して実行することによって各種処理を実行する。尚、制御部41は、プロセッサと同様の機能を有するLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0048】
メモリ42は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はRAM(Random Access Memory)等で構成されている。
【0049】
通信部43は、通信モジュールであり、ゲートウェイ72を介して端末装置10と通信する。
【0050】
記憶部44は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクで構成されている。尚、記憶部44は、CD-ROM等の光ディスク等で構成されていてもよい。記憶部44は、制御部41の処理の実行に必要な各種プログラムや各種情報を記憶している。例えば、記憶部44は、尿量推定プログラム81、接触判定プログラム82及び接触判定に用いる判定閾値83等を記憶している。
【0051】
なお、第2サーバ32及び第3サーバ33は、基本的には第1サーバ31と同様のハードウェア構成を有している。第2サーバ32及び第3サーバ33の記憶部に記憶されている各種プログラム及び各種情報は、それぞれの処理に応じたプログラム及び情報となっている。
【0052】
図8は、制御部41の機能構成を示すブロック図である。制御部41は、端末装置10との通信によって超音波センサ11の受信信号を取得する取得部51と、対象者の膀胱の蓄尿量を推定する尿量推定部52と、プローブ1の体表への接触状態を判定する接触判定部53とを有している。
【0053】
取得部51は、端末装置10の処理装置2から送信されてくる超音波センサ11の受信信号を受信する。この取得機能は、制御部41が記憶部44に記憶された関連するプログラムを実行することによって実現される。取得部51は、受信信号を受信したときの時刻(即ち、取得時刻)と共に受信信号を第3サーバ33に保存する。第3サーバ33は、受信信号と取得時刻とを蓄積していく。
【0054】
尿量推定部52は、超音波センサ11の受信信号に含まれる反射波に基づいて膀胱の蓄尿量を推定する。この推定機能は、制御部41が記憶部44に記憶された尿量推定プログラム81を実行することによって実現される。具体的には、尿量推定部52は、第3サーバ33に記憶された超音波センサ11の受信信号を解析して蓄尿量を推定する。尿量推定部52は、推定結果を第3サーバ33に保存する。尿量推定部52は、推定結果を適宜、通信部43を介して処理装置2及びユーザ端末71へ送信する。
【0055】
接触判定部53は、異なる時間におけるプローブ1による超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信信号(即ち、受信波)を比較することによってプローブ1の体表への接触状態を判定する。より詳しくは、接触判定部53は、異なる時間に得られた少なくとも2つの受信信号の類似の度合いに基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する。接触判定部53は、類似の度合いが所定の基準よりも高い、即ち、2つの受信信号が類似している場合にプローブ1の接触状態が不適切と判定し、類似の度合いが所定の基準よりも低い、即ち、2つの受信信号が類似していない場合にプローブ1の接触状態が適切であると判定する。接触判定部53は、2つの受信信号の類似度を算出する算出部54と、類似度に基づいて接触状態を判定する判定部55とを有する。「類似度」とは、類似の度合いを示す指標である。類似度が大きいほど、2つの受信信号が似ていることを意味する。この判定機能、具体的には、算出機能及び判定機能は、制御部41が記憶部44に記憶された接触判定プログラム82を実行することによって実現される。
【0056】
算出部54は、異なる時間に取得された複数の超音波センサ11の受信信号、即ち、受信波の類似度を算出する。
【0057】
判定部55は、類似度が大きい場合には、プローブ1の体表への接触状態が不適切であると判定する。一方、判定部55は、類似度が小さい場合には、プローブ1の体表への接触状態が適切であると判定する。判定部55は、判定結果を第3サーバ33に保存する。判定部55は、判定結果を適宜、処理装置2及びユーザ端末71へ送信する。
【0058】
〈超音波測定装置の動作〉
以下、超音波測定装置100の処理について詳しく説明する。
図9は、超音波測定装置100の処理のフローチャートである。
【0059】
まず、プローブ1及び処理装置2の動作について説明する。プローブ1及び処理装置2は、超音波の送受信を周期的に行う。この超音波の送受信は、処理装置2の制御部27によって制御される。
【0060】
詳しくは、制御部27は、ステップSa1において、送受信タイミングが到来したか否かを判定する。送受信タイミングは、所定の送受信周期で繰り返している。送受信タイミングが到来していない場合には、制御部27は、ステップSa1において、送受信タイミングを待機する。
【0061】
送受信タイミングが到来した場合には、制御部27は、スイッチ23を切り替えながら、第1~第4超音波センサ11A~11Dに順番に超音波を送受信させる。具体的には、制御部27は、ステップSa2において、第1超音波センサ11Aと送信部21及び受信部22とが接続されるようにスイッチ23を制御する。そして、制御部27は、送信部21へパルス信号の生成指令を出力し、送信部21に駆動電圧を第1超音波センサ11Aへ供給させる。第1超音波センサ11Aは、駆動電圧に基づく超音波を送信すると共に、体内からの反射波を受信する。第1超音波センサ11Aの受信信号は、受信部22により増幅、検波及びA/D変換される。制御部27は、A/D変換された後の受信信号を記憶部26に保存する。続いて、制御部27は、ステップSa3~Sa5において、スイッチ23を順次切り替えて、第2~第4超音波センサ11B~11Dに対しても同様の制御を実行する。
【0062】
その後、制御部27は、ステップSa6において、第1~第4超音波センサ11A~11Dの受信信号を通信部25を介してサーバ群3(具体的には、第1サーバ31)に送信する。
【0063】
制御部27は、ステップSa1からの処理を繰り返す。つまり、制御部27は、第1~第4超音波センサ11A~11Dによる超音波の送受信及び受信信号のサーバ群3への送信を1セットとして、この処理を送受信周期で周期的に実行する。これらステップSa1~Sa5の処理が取得工程の一例である。
【0064】
続いて、サーバ群3の処理を説明する。
【0065】
ステップSb1において、第1サーバ31の取得部51は、処理装置2から周期的に送信されてくる、4つの超音波センサ11の受信信号を受信したか否かを判定する。取得部51は、超音波センサ11の受信信号を受信した場合には、ステップSb2において、超音波センサ11の受信信号を第3サーバ33に保存する。
【0066】
取得部51が超音波センサ11の受信信号を受信していない場合には、ステップSb3において、尿量推定部52は、推定タイミングが到来したか否かを判定する。推定タイミングは、所定の推定周期で繰り返している。つまり、尿量推定部52は、推定周期で尿量の推定を行うように構成されている。推定周期は、処理装置2の送受信周期よりも長い間隔に設定されている。尚、推定周期は、送受信周期と同じ周期であってもよい。
【0067】
推定タイミングが到来した場合には、尿量推定部52は、ステップSb4において尿量推定を実行する。尿量推定の具体的な内容については後述する。尿量推定が完了した後は、ステップSb1において、取得部51が再び超音波センサ11の受信信号の受信を行う。
【0068】
推定タイミングが到来していない場合には、接触判定部53は、ステップSb5において、判定タイミングが到来したか否かを判定する。判定タイミングは、所定の判定周期で繰り返す。つまり、接触判定部53は、判定周期でプローブ1の体表への接触状態を判定するように構成されている。判定周期は、推定周期と同じ間隔に設定されている。尚、判定周期は、推定周期よりも長い間隔であっても、短い間隔であってもよい。
【0069】
判定タイミングが到来した場合には、接触判定部53は、ステップSb6において接触判定を実行する。接触判定の具体的な内容については後述する。接触判定が完了した後は、ステップSb1において、取得部51が再び超音波センサ11の受信信号の受信を行う。
【0070】
判定タイミングが到来していない場合には、ステップSb1における取得部51の処理に戻る。
【0071】
<尿量推定>
以下、尿量推定の具体的な内容について説明する。
図10は、尿量推定のサブルーチンのフローチャートである。
【0072】
ステップSc1において、尿量推定部52は、超音波センサ11の受信信号を第3サーバ33から読み出す。ここで、プローブ1には4つの超音波センサ11が含まれるので、読み出す超音波センサ11の受信信号は、4つの受信信号のセットを意味する。尿量推定部52は、第3サーバ33から直近の所定のセット数(例えば、10セット)の受信信号を読み出す。
【0073】
次に、尿量推定部52は、ステップSc2において、超音波センサ11の受信信号に基づいて、超音波センサ11が膀胱を検出しているか否かを判定する。尿量推定部52は、4つの超音波センサ11のそれぞれについて、膀胱の検出の有無を調べる。
【0074】
詳しくは、尿量推定部52は、4つの超音波センサ11の受信信号のそれぞれに対して平均処理を行う。尿量推定部52は、読み出した複数セットの受信信号を超音波センサ11ごとに平均する。これにより、受信信号のノイズが低減され、反射波が識別しやすくなる。次に、尿量推定部52は、平均処理後の受信信号に膀胱の反射波が含まれているか否かを判定する。受信信号においては超音波の送信直後にノイズが観測されるので、腹部の表面から比較的遠い、膀胱の後壁からの反射波が識別し易い。そこで、尿量推定部52は、受信信号に膀胱の後壁の反射波が含まれるか否かを調べる。膀胱の後壁の反射波が返ってくると想定される受信時間帯は概ねわかっているので、尿量推定部52は、該受信時間帯において反射波が存在するか否かを判定する。以下、特に断りがない限り、「膀胱の反射波」は、膀胱の後壁の反射波を意味する。尿量推定部52は、受信信号に膀胱の反射波が含まれていることをもって、超音波センサ11が膀胱を検出していると判定する。
【0075】
続いて、尿量推定部52は、ステップSc3において、尿レベルを判定する。尿レベルとは、膀胱の蓄尿量を示す指標であり、尿レベルが大きいほど蓄尿量が多いことを示す。
【0076】
具体的には、尿量推定部52は、どの超音波センサ11が膀胱を検出しているかに基づいて尿レベルを求める。膀胱は、蓄尿量の増加に伴って上方へ膨張する一方、第1~第4超音波センサ11A~11Dは、前述の如く、上下方向の異なる位置に向かって超音波を送信している。そのため、蓄尿量が多いほど、膀胱を検出する超音波センサ11の個数が多くなる。尿量推定部52は、下から順にどの超音波センサ11までが膀胱を検出しているかによって尿レベルを判定する。何れの超音波センサ11も膀胱を検出していないときの尿レベルを「0」とする。第1超音波センサ11Aのみが膀胱を検出しているときの尿レベルを「1」とする。第1超音波センサ11A及び第2超音波センサ11Bのみが膀胱を検出しているときの尿レベルを「2」とする。第1超音波センサ11A、第2超音波センサ11B及び第3超音波センサ11Cのみが膀胱を検出しているときの尿レベルを「3」とする。全ての超音波センサ11が膀胱を検出しているときの尿レベルを「4」とする。
【0077】
人体の下腹部の例を
図11に示す。
図11は、蓄尿量が中程度の場合の人体の下腹部の模式的な断面図である。また、
図11の膀胱の状態における4つの超音波センサ11の受信信号の例を
図12~15に示す。
図12は、第1超音波センサ11Aの受信信号である。
図13は、第2超音波センサ11Bの受信信号である。
図14は、第3超音波センサ11Cの受信信号である。
図15は、第4超音波センサ11Dの受信信号である。
図12~15の波形は、平均処理を施された後の波形である。
【0078】
この例では、第1超音波センサ11A及び第2超音波センサ11Bが膀胱の反射波W1を検出しており、第3超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dは膀胱の反射波を検出していない。つまり、尿レベルは「2」である。
【0079】
尚、
図11に示すように、膀胱64の上には小腸69が位置している。第3超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dから出射された超音波の大部分は、小腸69に入射する。小腸69の内部には、ガスが混在しているため、超音波は小腸69で減衰し、体内の奥の方まで届き難くなる。そのため、第3超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dの受信信号(
図14,15参照)においては、小腸の反射波W2が観測されるものの、小腸の反射波W2の後には膀胱の反射波はもちろん、それ以外の部分からの目立った反射波も観測され難い。尚、小腸69は、常に蠕動運動をしているため、小腸の反射波W2は、明確なピークとしては現れず、ノイズに似た波形となる場合もある(
図15参照)。また、膀胱64の膨張の度合いによっては、超音波の伝播経路上に小腸69と膀胱64とが存在する場合もある。この場合には、超音波の伝播経路上の小腸69が少ないので、超音波の一部は膀胱64まで到達し、膀胱の反射波が観測され得る。このときには、小腸の反射波と膀胱の反射波とが観測され得る。
【0080】
尚、尿レベルは、単純に、膀胱を検出している超音波センサ11の個数に基づいて決定してもよい。
【0081】
一方、
図5の例では、蓄尿量が少なく、膀胱が小さいので、何れの超音波センサ11も膀胱の反射波を検出しない。この場合の尿レベルは「0」である。
【0082】
尿量推定部52は、判定結果を第3サーバ33に記憶させる。判定結果には、判定時刻と、各超音波センサ11の膀胱の検出の有無と、尿レベルが含まれる。判定結果は、
図16に示すような表の形式で第3サーバ33に蓄積される。
図16における判定時刻9:00の判定結果が、
図12~15の受信信号の結果である。各超音波センサ11の欄における符号「0」は、膀胱を検出していないことを表し、符号「1」は、膀胱を検出していることを表している。
【0083】
続いて、尿量推定部52は、ステップSc4において、報知タイミングが到来したか否かを判定する。報知タイミングは、所定の報知周期で繰り返している。つまり、尿量推定部52は、処理装置2への尿量の報知を報知周期で行うように構成されている。報知周期は、推定周期よりも長い間隔に設定されている。尚、報知周期は、推定周期と同じ間隔であってもよい。
【0084】
報知タイミングが到来していない場合には、尿量推定部52は、尿量推定を完了し、
図9のフローチャート(詳しくは、ステップSb4)に戻る。
【0085】
報知タイミングが到来した場合には、尿量推定部52は、ステップSc5において、前回の報知タイミングから今回の報知タイミングまでの間の尿レベルを第3サーバ33から読み出す。尿量推定部52は、読み出した尿レベルの最大値を通信部43を介して処理装置2及びユーザ端末71へ送信する。尚、尿量推定部52は、読み出した尿レベルの最大値ではなく、平均値を送信してもよい。あるいは、尿量推定部52は、第3サーバ33に記憶された最新の尿レベルを読み出し、その尿レベルを送信してもよい。
【0086】
このとき、尿量推定部52は、報知する尿レベルが許容尿レベルに達している場合には、通信部43を介して排尿タイミングの到来を処理装置2及びユーザ端末71へ送信する。許容尿レベルは、対象者が尿意を催す尿レベルであり、例えばレベル「3」が初期値として記憶部44に記憶されている。
【0087】
一方、処理装置2は、尿レベル及び/又は排尿タイミングの通知を受信すると、報知部24を作動させる。例えば、処理装置2は、報知部24であるLEDランプを尿レベルに応じて点灯させる。LEDランプが尿レベルに対応して複数設けられている場合には、処理装置2は、尿レベルに応じたLEDランプを点灯させる。LEDランプが1つの場合には、処理装置2は、尿レベルに応じて点滅速度を早くする等、点灯態様を尿レベルに応じて変更する。また、処理装置2は、排尿タイミングの通知を受信した場合には、LEDランプをそれに対応した点灯態様で点灯させる。また、ユーザ端末71は、尿レベル及び/又は排尿タイミングの通知を受信すると、ユーザ端末71のディスプレイに尿レベル及び/又は排尿タイミングの通知を表示する。
【0088】
これにより、対象者又は対象者の周りの人々は、尿レベル及び排尿タイミングを知ることができ、排尿の準備を行うことができる。対象者は、早期にトイレの準備を行うことができる。また、対象者の周りの人々も、対象者をトイレへ早期に誘導することができる。その結果、失禁を防止することができる。あるいは、実際の排尿が早まったり、排尿の準備に手間取ったりした場合には、失禁してしまう場合もあり得るが、そのような場合であっても、失禁後の処理を早期に行うことができる。つまり、オムツ交換の時期を早期に報知することができる。
【0089】
尿量推定部52は、以上の処理によって尿レベルを推定し、対象者又はその周りの人々に尿レベル及び/又は排尿タイミングを知らせる。
【0090】
尚、以上の説明では、報知タイミングの到来により尿レベルが処理装置2及びユーザ端末71に送信されているが、これに限られるものではない。例えば、尿量推定部52は、尿レベルを判定し、その判定結果を第3サーバ33に記憶させるだけで、尿レベルの報知を行わなくてもよい。つまり、
図10のサブルーチンは、ステップSc3で終了して
図9のメインフローチャートに戻ってもよい。そして、第2サーバ32が処理装置2又はユーザ端末71からのリクエストを受けた場合に、第2サーバ32が、ステップSc5と同様の処理を行って、尿レベル及び/又は排尿タイミングを処理装置2又はユーザ端末71に返すようにしてもよい。
【0091】
<接触判定>
次に、接触判定の具体的な内容について説明する。
図17は、接触判定のサブルーチンのフローチャートである。
【0092】
ステップSd1において、算出部54は、最新の超音波センサ11の受信信号と前回(即ち、1回前)の超音波センサ11の受信信号と前々回(即ち、2回前)の受信信号を第3サーバ33から読み出す。ここで、プローブ1には4つの超音波センサ11が含まれるので、読み出す超音波センサ11の受信信号は、4つの受信信号のセットを意味する。つまり、尿量推定部52は、第3サーバ33から前述の3セットの受信信号を読み出す。
【0093】
次に、算出部54は、ステップSd2において、受信信号の標準化及び次元削減を実行する。標準化及び次元削減は、最新、前回及び前々回の受信信号のそれぞれについて、さらには、それらに含まれる4つの受信信号のそれぞれについて実行される。
【0094】
詳しくは、受信信号は、時系列に並んだ所定の個数の数値で構成されている。体内を伝播する超音波は、その伝播距離に従って減衰する。そのため、受信信号において、体表に近い部分からの反射波、即ち、時間的に早い領域の数値は相対的に大きく、体表から遠い部分からの反射波、即ち、時間的に遅い領域の数値は相対的に小さくなる傾向にある。そこで、算出部54は、受信信号を標準化することによって、伝播距離に起因する数値の大小の影響を低減する。これにより、その後の類似度の算出を適切に行うことができる。記憶部44が受信信号の平均値及び標準偏差を記憶しており、算出部54は、これらの平均値及び標準偏差を用いて受信信号の各時間の数値を標準化する。尚、記憶部44は、予め取得された受信信号の平均値及び標準偏差を記憶しておいてもよいし、処理装置2から送信されてくる受信信号に基づいて随時算出したものを記憶しておいてもよい。
【0095】
続いて、算出部54は、標準化した受信信号の次元削減を行う。例えば、算出部54は、主成分分析(PCA)又は特異値分解(SVD)等の次元削減を行う。尚、算出部54は、主成分分析等の次元削減に代えて、受信信号のうち伝播距離が長い領域の数値、即ち、遅い時間の数値を削減してもよい。遅い時間の数値は、大きさが小さく情報量が少ないので、削減しても類似度の算出に与える影響が小さい。
【0096】
その後、算出部54は、ステップSd3において、受信信号の類似度を算出する。ここでは、算出部54は、4つの超音波センサ11の受信信号のそれぞれに関し、最新の受信信号と前回の受信信号との類似度、及び、前回の受信信号と前々回の受信信号との類似度をそれぞれ算出する。すなわち、算出部54は、第1超音波センサ11Aに関する最新の受信信号と前回の受信信号との類似度、第2超音波センサ11Bに関する最新の受信信号と前回の受信信号との類似度、第3超音波センサ11Cに関する最新の受信信号と前回の受信信号との類似度、及び、第4超音波センサ11Dに関する最新の受信信号と前回の受信信号との類似度を算出する。前回の受信信号と前々回の受信信号との類似度についても同様である。
【0097】
この例では、算出部54は、以下の式(1)で表される類似度Sを用いている。
【0098】
類似度S=-1×log(1-コサイン類似度) ・・・(1)
【0099】
ここで、logは常用対数である。コサイン類似度は、各受信信号をベクトルと捉えた場合に以下の式(2)で表される。
【0100】
【0101】
算出部54は、最新の受信信号と前回の受信信号との類似度Sと、前回の受信信号と前々回の受信信号との類似度Sとの平滑化を行う。ここでは、算出部54は、類似度Sの算術平均を算出する。ステップSd3において、算出部54は、平滑化された類似度Sを最終的な類似度Sとして算出する。前述の如く、受信信号には、4つの超音波センサ11の受信信号が含まれるので、4つの超音波センサ11の受信信号に対応する4つの平滑化された類似度Sが算出される。算出部54は、類似度Sを第3サーバ33に記憶させる。ステップSd3が比較工程、及び、算出工程の一例である。
【0102】
類似度Sが算出されると、判定部55は、ステップSd4において、類似度Sが判定閾値以上か否かを判定する。判定部55は、記憶部44から判定閾値83を読み出す。判定部55は、4つの超音波センサ11ごとの類似度Sを判定する。そして、4つの超音波センサ11の少なくとも1つの超音波センサ11の類似度Sが判定閾値以上である場合には、判定部55は、プローブ1の体表への接触状態が不適切であると判定する(ステップSd5)。一方、4つの超音波センサ11の全ての類似度Sが判定閾値よりも小さい場合には、判定部55は、プローブ1の体表への接触状態が適切であると判定する(ステップSd6)。判定部55は、判定結果を第3サーバ33に保存する。ステップSd4が判定工程の一例である。
【0103】
プローブ1の体表への接触状態が適切な場合には、超音波センサ11は、超音波を体内へ適切に送信し、体内からの超音波を適切に受信する。体内においては小腸及び大腸等の臓器が動いている。また、対象者の体動、呼吸、脈拍等も受信波に影響を与え得る。そのため、超音波センサ11の受信波の形状は、その取得した時間が異なれば、一致することは稀である。プローブ1の接触状態が適切であれば、これらの影響が受信信号に現れ得る。その場合、異なる時間に取得された2つの受信信号を比較すると、両者には差異が現れる。つまり、2つの受信信号は、あまり類似しておらず、類似度Sが小さくなる。
【0104】
一方、プローブ1と体表との間に隙間がある場合のようにプローブ1の接触状態が不適切な場合には、超音波センサ11は、超音波を体内へ適切に送信できないだけでなく、体内からの超音波を適切に受信することもできない。このときの受信信号には、臓器からの反射波が含まれていないだけでなく、臓器の動きや体動等も現れていない。その場合、異なる時間に取得された2つの受信信号を比較すると、両者には差異があまりない。つまり、2つの受信信号は、よく類似しており、類似度Sが大きくなる。尚、プローブ1の一部だけが体表から浮いている場合などでは、いくつかの超音波センサ11が超音波を適切に送受信でき、残りの超音波センサ11が超音波を適切に送受信できない状況が起こり得る。
【0105】
判定閾値は、プローブ1が体表へ適切に接触していないと評価できる類似度Sの大きさに設定されている。そのため、類似度Sが判定閾値よりも小さい場合には、プローブ1の体表への接触状態が適切であると判定することができる。逆に、類似度Sが判定閾値以上の場合には、プローブ1の体表への接触状態が不適切であると判定することができる。
【0106】
全ての超音波センサ11の類似度Sが判定閾値よりも小さい場合(ステップSd6)には、判定部55は、接触判定を完了し、
図9のフローチャート(詳しくは、ステップSb6)に戻る。
【0107】
一方、少なくとも1つの超音波センサ11の類似度Sが判定閾値以上の場合には(ステップSd5)、判定部55は、プローブ1の接触状態が不適切である旨を通信部43を介して処理装置2及びユーザ端末71に報知する。このとき、判定部55は、類似度Sが判定閾値以上であった超音波センサ11を併せて報知してもよい。それに加えて、判定部55は、類似度Sの算出の基になった最新、前回及び前々回の受信信号を、不適切な受信信号として記憶部44に記憶させる。その後、判定部55は、接触判定を完了し、
図9のフローチャート(詳しくは、ステップSb6)に戻る。
【0108】
処理装置2は、プローブ1の接触状態が不適切な旨の報知を受信すると、それに応じた態様で報知部24を作動させる。ユーザ端末71は、プローブ1の接触状態が不適切な旨の報知を受信すると、それに応じた表示をディスプレイで行う。こうして、対象者又はその周りの人々にプローブ1の装着状態の修正を促すことができる。
【0109】
尿量推定部52は、前述のステップSc1において受信信号を読み出す際に、該当する受信信号が不適切な受信信号として記憶されている場合には、ステップSc2以降の処理においては、それらの受信信号を用いない。これにより、尿量をより正確に推定することができる。
【0110】
尚、以上の説明では、プローブ1の接触状態が不適切である場合にその旨が処理装置2及びユーザ端末71に送信されているが、これに限られるものではない。例えば、接触判定部53は、プローブ1の接触状態を判定し、その判定結果を第3サーバ33に記憶させるだけで、接触状態が不適切な旨の報知を行わなくてもよい。つまり、第2サーバ32が処理装置2又はユーザ端末71からのリクエストを受けた場合に、第2サーバ32が、ステップSd5と同様の処理を行って、プローブ1の接触状態を処理装置2又はユーザ端末71に返すようにしてもよい。
【0111】
図18~20は、一例として、プローブ1の体表への接触状態が適切な場合の第3超音波センサ11Cの受信信号である。
図18は、最新の受信信号であり、
図19は、前回の受信波形であり、
図20は、前々回の受信波形である。
図18~20の受信信号は、処理装置2において平均処理を施された後のものである。
図18~
図20を比較すると、波形の差異が大きく、3つの波形はあまり類似していない。
図18の受信信号と
図19の受信信号との類似度Sは、2.0である。
図19の受信信号と
図20の受信信号との類似度Sは、2.1である。2つの類似度Sの平均値は、2.05である。例えば、判定閾値は、3.5に設定されている。平均値の2.05は、判定閾値よりも小さいので、プローブ1の接触状態が適切であると判定される。
【0112】
図21~23は、一例として、プローブ1の体表への接触状態が不適切な場合の第3超音波センサ11Cの受信信号である。
図21は、最新の受信信号であり、
図22は、前回の受信波形であり、
図23は、前々回の受信波形である。
図21~23の受信信号は、処理装置2において平均処理を施された後のものである。
図21~23を比較すると、波形の差異が小さく、3つの波形は類似している。
図21の受信信号と
図22の受信信号との類似度Sは、4.4である。
図21の受信信号と
図22の受信信号との類似度Sは、4.5である。2つの類似度Sの平均値は、4.45である。平均値の4.45は、判定閾値以上であるので、プローブ1の接触状態が不適切であると判定される。
【0113】
以上のように、超音波測定装置100は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブ1と、プローブ1の体表への接触状態を判定する制御部41とを備え、制御部41は、異なる時間におけるプローブ1による超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号を比較することによってプローブ1の体表への接触状態を判定する。
【0114】
また、第1サーバ31は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブ1を含む端末装置10とネットワークを介して通信可能であり、端末装置10から送信されてくる受信波、即ち、受信信号を受信する接触判定サーバ装置であって、プローブ1の体表への接触状態を判定する制御部41を備え、制御部41は、異なる時間におけるプローブ1による超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信信号を比較することによってプローブ1の体表への接触状態を判定する。
【0115】
さらに、接触判定プログラム82は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブ1の体表への接触状態を判定する機能を第1サーバ31(コンピュータ)に実現させるための接触判定プログラムであって、異なる時間におけるプローブ1による超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号を比較する比較機能と、比較機能の結果に基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する判定機能とを第1サーバ31に実現させるための接触判定プログラムである。
【0116】
さらにまた、超音波測定装置100の接触判定方法は、対象者の体表に接触した状態で装着され、体内に超音波を送信し、超音波の反射波を受信するプローブ1の体表への接触状態を判定する接触判定方法であって、異なる時間におけるプローブ1による超音波の送受信によって得られた少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号を比較するステップSd3(比較工程)と、比較工程の結果に基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定するステップSd4(判定工程)とを含む。
【0117】
これらの構成によれば、異なる時間における超音波の送受信による2つの受信信号を取得できれば、プローブ1の体表への接触状態を判定することができる。詳しくは、プローブ1が体表へ適切に接触している場合には、プローブ1が体内へ適切に超音波を送信し、体内からの反射波をプローブ1で適切に受信することができる。体内からの反射波を含む受信波には、臓器の動きや体動等の影響が現れている。臓器の動きや体動等は不規則なので、異なるタイミングで超音波を送受信した際の受信波を比べると、2つの受信信号には変化、即ち、差異が現れるはずである。逆に、プローブ1が体表へ適切に接触していない場合には、2つの受信信号には大きな変化は現れない。そのため、異なる時間に取得された2つの受信信号を比較すれば、プローブ1の体表への接触状態を判定することができる。このように、異なる時間においてプローブ1によって取得された2つの受信信号を比較することによってプローブ1の体表への接触状態を判定できるので、プローブ1の接触状態を調整しながら受信信号を観察する等の作業を行うことなく、プローブ1の接触状態の判定を簡単に行うことができる。また、プローブ1を装着した状態のまま、プローブ1の接触状態の判定を行うことができるので、プローブ1による本来の処理(前述の例では尿量推定)を行いつつ、又は、行える状態を維持しつつ、プローブ1の接触状態の判定を行うことができる。特に、プローブ1を常時装着して使用する場合に有効である。
【0118】
具体的には、制御部41は、少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号の類似の度合いに基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する。
【0119】
また、接触判定プログラム82において、比較機能は、少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号の類似の度合いを算出する算出機能であり、判定機能は、算出された類似の度合いに基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する。
【0120】
さらに、超音波測定装置100の接触判定方法において、比較工程は、少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号の類似の度合いを算出する算出工程であり、判定工程では、算出された類似の度合いに基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する。
【0121】
これらの構成によれば、プローブ1の接触状態を一定の基準で判定することができる。つまり、前述の如く、プローブ1の体表への接触状態が適切な場合には、2つの受信信号には差異が現れる一方、プローブ1の体表への接触状態が不適切な場合には、2つの受信信号にはあまり差異が現れない。このような2つの受信信号の差異は、様々な方法で評価することができる。例えば、2つの受信信号の類似の度合いには、2つの受信信号の差異がよく現れている。そこで、制御部41は、2つの受信信号を比較する上で、2つの受信信号の類似の度合いという基準でプローブ1の接触状態を判定する。これにより、プローブ1の接触状態を一定の基準で判定することができる。
【0122】
さらに詳しくは、制御部41は、少なくとも2つの受信波、即ち、2つの受信信号の類似度Sに基づいてプローブ1の体表への接触状態を判定する。
【0123】
また、接触判定プログラム82の算出機能は、少なくとも2つの受信波、即ち、2つの受信信号の類似度Sを算出する。
【0124】
さらに、超音波測定装置100の接触判定方法において、算出工程は、少なくとも2つの受信波、即ち、2つの受信信号の類似度Sを算出する。
【0125】
これらの構成によれば、類似度Sというパラメータを用いることによって、プローブ1の接触状態を画一的に判定することができる。また、類似度Sは、2つの受信信号のコサイン類似度に関連している。そのため、2つの受信信号が全体的に類似しているか否かを判断することができる。例えば、2つの受信信号の類似の度合いは、ピークの有無、ピークの大きさ、又はピークの位置(即ち、時間)等の局所的な特徴をもって評価することもできる。それに対し、コサイン類似度は、2つの受信信号をそれぞれベクトルとして捉え、2つのベクトルの類似の度合いを表すものであり、換言すると、2つの受信信号の全体的な類似の度合いを表している。そのため、コサイン類似度を用いて表される類似度Sによって2つの受信信号の類似の度合いを評価することによって、2つの受信信号が全体的に類似しているか否かを判定することができる。
【0126】
また、超音波測定装置100の接触判定方法は、異なる時間におけるプローブ1による超音波の送受信によって少なくとも2つの受信波、即ち、受信信号を取得する取得工程をさらに含む。
【0127】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0128】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0129】
プローブ1は、膀胱を検出するために用いられているが、プローブ1が検出する対象は膀胱に限られない。つまり、超音波測定装置100は、膀胱の尿量を推定することを主な目的としているが、超音波測定装置100の主な目的、即ち、基本となる処理は尿量の推定に限られない。つまり、前述の接触判定は、対象者の体表に接触した状態で装着されたプローブ1から体内に超音波を送信し、超音波の反射波をプローブ1で受信し、その受信信号に基づいて任意の処理を行う装置及び方法に適用することができる。
【0130】
プローブ1の体表への設置場所は、任意に設定することができる。また、プローブ1の装着方法は、前記の方法に限られるものではない。例えば、接触面13を粘着性を有する貼付面で形成し、接触面13を対象者の腹部に貼り付けるようにしてもよい。
【0131】
複数の超音波センサ11の個数は、4個に限られるものではない。超音波センサ11の個数は、1個であってもよく、3個以下又は5個以上であってもよい。
【0132】
複数の超音波センサ11の配置は、前記の配置に限られるものではない。例えば、超音波センサ11は、左右方向にオフセットしていなくてもよい。
【0133】
また、ケーシング12は、前記の構成に限られるものではない。例えば、ケーシング12の接触面13には突出部が設けられていてもよい。超音波センサ11は、突出部内に内蔵される。突出部により、ケーシング12のうち超音波センサ11が内蔵された部分の皮膚(体表)との密着性が向上し、超音波の人体への入射が促進される。これにより、膀胱の検出能力が高められる。
【0134】
プローブ1と処理装置2とが別体に構成されているが、これに限られるものではない。例えば、プローブ1と処理装置2とを一体的に構成してもよい。また、プローブ1と処理装置2とは、有線で接続されておらず、無線通信してもよい。さらに、処理装置2の機能の一部(例えば、送信部21又は受信部22)を、プローブ1が有していてもよい。
【0135】
処理装置2の構成は、前述の構成に限られない。例えば、送信部21は、パルス信号を駆動信号としてプローブ1に入力しているが、駆動信号は、パルス信号に限定されるものではない。駆動信号は、パルス波ではなく、バースト波等であってもよい。また、報知部24は、LEDランプに限られず、ディスプレイ、アラーム又はバイブレータであってもよい。
【0136】
処理装置2は、サーバ群3、より具体的には第1サーバ31と無線で接続されているが、有線で接続されていてもよい。
【0137】
前述の処理装置2及びサーバ群3のそれぞれの処理は、それぞれの装置に固有のものではなく、少なくとも一部の処理を前述の説明とは異なる装置が実行してもよい。例えば、尿量の推定を処理装置2が実行してもよい。あるいは、超音波測定装置100は、サーバ群3を含まず、前述のサーバ群3の機能を処理装置2又はそれ以外の装置(例えば、PC又はユーザ端末71)が実現してもよい。
【0138】
例えば、ユーザ端末71がサーバ群3の機能を実現してもよい。
図24は、ユーザ端末71のハードウェア構成を示すブロック図である。ユーザ端末71がサーバ群3の機能を実現する場合、ユーザ端末71の通信部93は、処理装置2と無線又は有線で通信を行う。ユーザ端末71の制御部91が第1サーバ31の制御部41の代わりをする。記憶部94は、尿量推定プログラム81、接触判定プログラム82及び判定閾値83を記憶している。それに加えて、記憶部94は、第3サーバ33の役割も果たし、超音波センサ11の受信信号及び判定結果等を記憶する。制御部91は、記憶部94に記憶されたプログラムをメモリ92に展開して実行することによって取得部51、尿量推定部52及び接触判定部53として機能する。つまり、制御部91は、
図8に示す制御部41と同様の機能構成を有する。その場合、ユーザ端末71が接触判定サーバ装置として機能する。
【0139】
サーバ群3は複数のサーバを有しているが、1つのサーバが第1~第3サーバ31~33の機能を有していてもよい。
【0140】
前述の超音波測定装置100の動作は一例に過ぎない。例えば、超音波センサ11による反射波の検出及び尿レベルの変化の有無の判定は、周期的に行われているが、これに限られるものではない。例えば、超音波測定装置100は、対象者が所定の姿勢のときに、超音波センサ11による反射波の検出及び尿レベルの変化の有無の判定を行ってもよい。体内における膀胱の形状及び位置は、対象者の姿勢に応じて変わり得る。そのため、超音波の送信及び検出を行うときの対象者の姿勢を統一することによって、膀胱を精度良く検出し、尿レベルを精度良く判定することができる。あるいは、超音波測定装置100は、超音波センサ11により周期的に検出された反射波のうち、所定の姿勢のときに検出された反射波を用いて尿レベルの変化の有無の判定を行ってもよい。あるいは、超音波測定装置100は、超音波センサ11による反射波の検出を行う際に、対象者に予め決めた姿勢を取るように促すように構成されていてもよい。
【0141】
また、超音波測定装置100は、どの超音波センサ11までが膀胱を検出しているかによって尿レベルを判定しているが、これに限られるものではない。尿量の推定は、任意の方法によって実現することができる。
【0142】
サーバ群3にはユーザ端末71が登録されており、サーバ群3の判定結果等が適宜、ユーザ端末71に送信されているが、ユーザ端末71は登録されていなくてもよい。その場合、前述の処理においてユーザ端末71への処理が省略される。
【0143】
接触判定は、前述の方法に限られるものではない。例えば、制御部41は、異なる時間に取得された2つの受信信号を比較し、受信信号に含まれるピーク(反射波)の有無、大きさ及び位置(受信時間)の少なくとも1つに基づいて2つの受信信号の差異を評価することによってプローブ1の接触状態を判定してもよい。
【0144】
類似の度合いを示す指標は、2つの受信信号の類似の度合いを示す指標であれば、任意の指標を採用することができる。例えば、コサイン類似度を2つの受信信号の類似の度合いを示す指標としての類似度としてそのまま用いてもよい。あるいは、ユークリッド距離の逆数又はピアソン積率相関係数等を類似度として用いてもよい。
【0145】
また、類似度Sの算出する前の受信信号の前述の処理は、必須ではない。すなわち、受信信号の標準化及び次数削減は省略することができる。
【0146】
さらに、複数の類似度Sを算出した上で、それらを平滑化(平均)しているが、これに限られるものではない。制御部41は、2つだけの受信信号から類似度Sを算出し、その類似度Sをプローブ1の接触状態の判定に用いてもよい。また、類似度Sを平滑化する場合には、平滑化する類似度Sの個数は2つに限られない。つまり、制御部41は、4つ以上の受信信号を用いて、3つ以上の類似度Sを算出し、それらを平滑化してもよい。また、平滑化する対象の類似度Sの個数が多い場合には、算術平均に代えて、トリム平均又はウィンザライズド平均を用いてもよい。さらに、平滑化の手法は、平均に限らず、ガウシアンフィルタ又はスプライン補間等を用いた手法であってもよい。
【0147】
また、類似度Sは、時系列的に連続する2つの受信信号の類似度Sに限られない。例えば、前述の例において、制御部41は、最新の受信信号と前々回の受信信号との類似度Sを算出してもよい。つまり、類似度Sの算出に用いられる2つの受信信号は、時系列的に連続していない、所定時間を空けて取得された2つの受信信号であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上説明したように、ここに開示された技術は、超音波測定装置、接触判定サーバ装置、接触判定プログラム及び接触判定方法について有用である。
【符号の説明】
【0149】
100 超音波測定装置
1 プローブ
10 端末装置
31 第1サーバ(接触判定サーバ装置)
41 制御部