(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20230524BHJP
G06F 30/15 20200101ALI20230524BHJP
G01M 17/08 20060101ALI20230524BHJP
B61F 5/52 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/15
G01M17/08
B61F5/52
(21)【出願番号】P 2019190732
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】亀甲 智
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和典
(72)【発明者】
【氏名】品川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川西 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】小崎 宏明
(72)【発明者】
【氏名】吉井 尊範
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-190242(JP,A)
【文献】特開2002-073705(JP,A)
【文献】特開2011-173573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G01M 17/08
B61F 1/00 - 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象となる構造部材のFEM解析用の解析モデルを取得する、モデル取得部と、
前記解析モデルの表面上の任意の節点を対象節点として、前記表面上において前記対象節点と共通の要素に属する複数の節点から、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせを基準節点ペアとして抽出する、抽出部と、
前記抽出部に抽出された前記基準節点ペアを構成する2つの節点の間に仮想節点を規定する、規定部と、
前記解析モデルに荷重を与える、荷重負荷部と、
前記荷重負荷部が荷重を与える前後における前記解析モデルの表面上の各節点の変位を取得する、変位取得部と、
前記対象節点および前記仮想節点の変位に基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の強度に関する値を算出する、算出部と、
を備え、
前記抽出部は、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせであっても、双方の節点が属する共通の要素が存在しない場合には、基準節点ペアとして抽出しない、構造部材の評価装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記強度に関する値として、ひずみ、応力および安全率のうちの少なくとも一つを出力する、請求項1に記載の構造部材の評価装置。
【請求項3】
前記荷重負荷部は、異なる複数の荷重条件ごとに、前記解析モデルに荷重を与え、
前記変位取得部は、前記複数の荷重条件ごとに各節点の変位を取得し、
前記算出部は、
前記複数の荷重条件ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出する、第1算出部と、
前記第1算出部によって算出された前記ひずみに基づいて、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を前記荷重条件ごとに算出する、第2算出部と、
前記第2算出部によって荷重条件ごとに算出された応力に基づいて、それらの平均応力成分の和を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合平均応力を算出するとともに、それらの変動応力成分の二乗和平方根を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合変動応力を算出する、第3算出部と、
予め設定された複合平均応力、複合変動応力および応力限界の関係と、前記第3算出部によって算出された前記複合平均応力および前記複合変動応力とに基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の安全率を算出する、第4算出部と、
を含む、請求項1または2に記載の構造部材の評価装置。
【請求項4】
前記規定部は、前記基準節点ペアを構成する2つの節点のうち、一方を第1基準節点、他方を第2基準節点とし、前記第1基準節点と前記第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比を0~1の範囲で変化させることによって仮想節点の位置を変更し、
前記第1算出部は、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出し、
前記第2算出部は、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を算出し、
前記第3算出部は、前記仮想節点の位置ごとに、前記複合平均応力および前記複合変動応力を算出し、
前記第4算出部は、前記仮想節点の位置ごとに前記安全率を算出し、算出された安全率のうち最も低い安全率を出力する、請求項3に記載の構造部材の評価装置。
【請求項5】
前記構造部材は、鉄道車両用台車枠である、請求項1から4のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項6】
コンピュータによって実行される評価方法であって、
評価対象となる構造部材のFEM解析用の解析モデルを取得する、モデル取得ステップと、
前記解析モデルの表面上の任意の節点を対象節点として、前記表面上において前記対象節点と共通の要素に属する複数の節点から、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせを基準節点ペアとして抽出する、抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記基準節点ペアを構成する2つの節点の間に仮想節点を規定する、規定ステップと、
前記解析モデルに荷重を与える、荷重負荷ステップと、
前記荷重負荷ステップで荷重を与える前後における前記解析モデルの表面上の各節点の変位を取得する、変位取得ステップと、
前記対象節点および前記仮想節点の変位に基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の強度に関する値を算出する、算出ステップと、
を備え、
前記抽出ステップでは、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせであっても、双方の節点が属する共通の要素が存在しない場合には、基準節点ペアとして抽出しない、構造部材の評価方法。
【請求項7】
前記算出ステップでは、前記強度に関する値として、ひずみ、応力および安全率のうちの少なくとも一つを出力する、請求項6に記載の構造部材の評価方法。
【請求項8】
前記荷重負荷ステップでは、異なる複数の荷重条件ごとに、前記解析モデルに荷重を与え、
前記変位取得ステップでは、前記複数の荷重条件ごとに各節点の変位を取得し、
前記算出ステップは、
前記複数の荷重条件ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出する、第1算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出された前記ひずみに基づいて、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を前記荷重条件ごとに算出する、第2算出ステップと、
前記第2算出ステップで荷重条件ごとに算出された応力に基づいて、それらの平均応力成分の和を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合平均応力を算出するとともに、それらの変動応力成分の二乗和平方根を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合変動応力を算出する、第3算出ステップと、
予め設定された複合平均応力、複合変動応力および応力限界の関係と、前記第3算出ステップで算出された前記複合平均応力および前記複合変動応力とに基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の安全率を算出する、第4算出ステップと、
を含む、請求項6または7に記載の構造部材の評価方法。
【請求項9】
前記規定ステップでは、前記基準節点ペアを構成する2つの節点のうち、一方を第1基準節点、他方を第2基準節点とし、前記第1基準節点と前記第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比を0~1の範囲で変化させることによって仮想節点の位置を変更し、
前記第1算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出し、
前記第2算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を算出し、
前記第3算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに、前記複合平均応力および前記複合変動応力を算出し、
前記第4算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに前記安全率を算出し、算出された安全率のうち最も低い安全率を出力する、請求項8に記載の構造部材の評価方法。
【請求項10】
前記構造部材は、鉄道車両用台車枠である、請求項6から9のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれかに記載の評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の評価装置、評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用台車枠(以下、台車枠と略記する。)は、車体を支持すると共に、車輪、車軸、主電動機、駆動装置、およびサスペンション部品等の種々の台車部品を支持する構造部材である。鉄道車両の走行時には、上記の種々の台車部品から台車枠に荷重が伝達される。このため、台車枠には、これらの荷重に対して十分な強度および耐久性が要求される。
【0003】
そこで、従来、台車枠の強度を評価するために種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1に開示された台車枠の強度評価方法では、台車枠のFEMモデルを用いて台車枠の強度評価が行われる。
【0004】
具体的には、特許文献1の強度評価方法では、FEMモデルの表面上に、仮想的に歪みゲージが定義される。歪みゲージは、FEMモデルにおいて、強度評価の対象となる表面上の節点Aと、当該節点Aの近傍の表面上の2つの節点B,Cから内挿して求められる点Dとを結ぶように定義される。そして、A-D間における荷重負荷前後の距離の変化に基づいて、A-D方向の応力が算出される。特許文献1の強度評価方法では、上記のようにして算出された応力に基づいて、台車枠の強度が評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らによる研究の結果、特許文献1に開示された方法では、内挿して求められる点Dが、FEMモデルの表面上ではなく、要素が存在しない空間上に位置する場合があることが分かった。この場合、実際には算出する必要がない方向の応力が算出されるため、台車枠の強度評価を適切に行うことができない。
【0007】
そこで、本発明は、構造部材の強度評価を適切に行うことができる、評価装置、評価方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の評価装置、評価方法およびプログラムを要旨とする。
【0009】
(1)評価対象となる構造部材のFEM解析用の解析モデルを取得する、モデル取得部と、
前記解析モデルの表面上の任意の節点を対象節点として、前記表面上において前記対象節点と共通の要素に属する複数の節点から、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせを基準節点ペアとして抽出する、抽出部と、
前記抽出部に抽出された前記基準節点ペアを構成する2つの節点の間に仮想節点を規定する、規定部と、
前記解析モデルに荷重を与える、荷重負荷部と、
前記荷重負荷部が荷重を与える前後における前記解析モデルの表面上の各節点の変位を取得する、変位取得部と、
前記対象節点および前記仮想節点の変位に基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の強度に関する値を算出する、算出部と、
を備え、
前記抽出部は、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせであっても、双方の節点が属する共通の要素が存在しない場合には、基準節点ペアとして抽出しない、構造部材の評価装置。
【0010】
(2)前記算出部は、前記強度に関する値として、ひずみ、応力および安全率のうちの少なくとも一つを出力する、上記(1)に記載の構造部材の評価装置。
【0011】
(3)前記荷重負荷部は、異なる複数の荷重条件ごとに、前記解析モデルに荷重を与え、
前記変位取得部は、前記複数の荷重条件ごとに各節点の変位を取得し、
前記算出部は、
前記複数の荷重条件ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出する、第1算出部と、
前記第1算出部によって算出された前記ひずみに基づいて、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を前記荷重条件ごとに算出する、第2算出部と、
前記第2算出部によって荷重条件ごとに算出された応力に基づいて、それらの平均応力成分の和を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合平均応力を算出するとともに、それらの変動応力成分の二乗和平方根を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合変動応力を算出する、第3算出部と、
予め設定された複合平均応力、複合変動応力および応力限界の関係と、前記第3算出部によって算出された前記複合平均応力および前記複合変動応力とに基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の安全率を算出する、第4算出部と、
を含む、上記(1)または(2)に記載の構造部材の評価装置。
【0012】
(4)前記規定部は、前記基準節点ペアを構成する2つの節点のうち、一方を第1基準節点、他方を第2基準節点とし、前記第1基準節点と前記第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比を0~1の範囲で変化させることによって仮想節点の位置を変更し、
前記第1算出部は、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出し、
前記第2算出部は、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を算出し、
前記第3算出部は、前記仮想節点の位置ごとに、前記複合平均応力および前記複合変動応力を算出し、
前記第4算出部は、前記仮想節点の位置ごとに前記安全率を算出し、算出された安全率のうち最も低い安全率を出力する、上記(3)に記載の構造部材の評価装置。
【0013】
(5)前記構造部材は、鉄道車両用台車枠である、上記(1)から(4)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0014】
(6)コンピュータによって実行される評価方法であって、
評価対象となる構造部材のFEM解析用の解析モデルを取得する、モデル取得ステップと、
前記解析モデルの表面上の任意の節点を対象節点として、前記表面上において前記対象節点と共通の要素に属する複数の節点から、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせを基準節点ペアとして抽出する、抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出された前記基準節点ペアを構成する2つの節点の間に仮想節点を規定する、規定ステップと、
前記解析モデルに荷重を与える、荷重負荷ステップと、
前記荷重負荷ステップで荷重を与える前後における前記解析モデルの表面上の各節点の変位を取得する、変位取得ステップと、
前記対象節点および前記仮想節点の変位に基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の強度に関する値を算出する、算出ステップと、
を備え、
前記抽出ステップでは、前記対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせであっても、双方の節点が属する共通の要素が存在しない場合には、基準節点ペアとして抽出しない、構造部材の評価方法。
【0015】
(7)前記算出ステップでは、前記強度に関する値として、ひずみ、応力および安全率のうちの少なくとも一つを出力する、上記(6)に記載の構造部材の評価方法。
【0016】
(8)前記荷重負荷ステップでは、異なる複数の荷重条件ごとに、前記解析モデルに荷重を与え、
前記変位取得ステップでは、前記複数の荷重条件ごとに各節点の変位を取得し、
前記算出ステップは、
前記複数の荷重条件ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出する、第1算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出された前記ひずみに基づいて、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を前記荷重条件ごとに算出する、第2算出ステップと、
前記第2算出ステップで荷重条件ごとに算出された応力に基づいて、それらの平均応力成分の和を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合平均応力を算出するとともに、それらの変動応力成分の二乗和平方根を取って前記対象節点と前記仮想節点との間の複合変動応力を算出する、第3算出ステップと、
予め設定された複合平均応力、複合変動応力および応力限界の関係と、前記第3算出ステップで算出された前記複合平均応力および前記複合変動応力とに基づいて、前記構造部材の前記対象節点に対応する部位の安全率を算出する、第4算出ステップと、
を含む、上記(6)または(7)に記載の構造部材の評価方法。
【0017】
(9)前記規定ステップでは、前記基準節点ペアを構成する2つの節点のうち、一方を第1基準節点、他方を第2基準節点とし、前記第1基準節点と前記第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比を0~1の範囲で変化させることによって仮想節点の位置を変更し、
前記第1算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じるひずみを算出し、
前記第2算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに、前記対象節点と前記仮想節点との間に生じる応力を算出し、
前記第3算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに、前記複合平均応力および前記複合変動応力を算出し、
前記第4算出ステップでは、前記仮想節点の位置ごとに前記安全率を算出し、算出された安全率のうち最も低い安全率を出力する、上記(8)に記載の構造部材の評価方法。
【0018】
(10)前記構造部材は、鉄道車両用台車枠である、上記(6)から(9)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0019】
(11)上記(6)から(10)のいずれかに記載の評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構造部材の強度を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る評価装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る評価装置の評価対象となる鉄道車両用台車枠の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、抽出部による基準節点ペアの抽出方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、規定部の機能を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る評価装置の作用効果を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る評価装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る評価装置の動作を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る評価装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る構造部材の評価装置、評価方法およびプログラムについて説明する。なお、以下においては、構造部材の一例として鉄道車両用台車枠を挙げ、鉄道車両用台車枠の各部の強度に関する値を評価装置によって算出する場合について説明する。
【0023】
[装置構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る評価装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る評価装置10は、モデル取得部12、抽出部14、規定部16、荷重負荷部18、変位取得部20、および算出部22を備える。
【0024】
図2は、本実施形態に係る評価装置10の評価対象となる鉄道車両用台車枠の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、台車枠100は、一対の側梁102と、一対の側梁102を接続する横梁104とを備えている。横梁104は、一対のパイプ部材104aを有している。以下においては、評価装置10が、台車枠100の解析モデルを用いて、台車枠100の各部の強度に関する値を算出する場合について説明する。ただし、評価装置10によって強度が評価される台車枠の構成は
図2に示す台車枠100に限定されず、評価装置10は、種々の構成の台車枠の強度評価を行うために用いられる。
【0025】
図1に示すように、評価装置10のモデル取得部12は、台車枠100の解析モデルを取得する。解析モデルは、複数の要素および複数の節点を有する。本実施形態では、複数の節点には、コーナー節点(一次節点:要素の角に配置された節点)に加えて、中間節点(二次節点:コーナー節点とコーナー節点との間に位置するように要素辺上に配置された節点)が含まれてもよい。なお、解析モデルとしては、有限要素法(FEM)による応力解析において用いられる公知の解析モデルを利用することができるので、解析モデルについての詳細な説明は省略する。
【0026】
本実施形態では、モデル取得部12は、他の装置において作成された解析モデルを与えられることによって解析モデルを取得してもよいし、公知のFEM解析ソフトと同様に、ユーザの操作に基づいて解析モデルを作成することによって解析モデルを取得してもよい。
【0027】
抽出部14は、解析モデルの表面上の任意の節点を対象節点として、解析モデルの表面上において対象節点と共通の要素に属する複数の節点から、複数の基準節点ペアを抽出する。具体的には、抽出部14は、対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の複数の組み合わせをそれぞれ基準節点ペアとして抽出する。なお、対象節点は、強度に関する値(例えば、安全率)の算出対象となる節点である。本実施形態では、抽出部14は、例えば、ユーザによって指定された領域に属する複数の節点を対象節点として選択してもよく、解析モデルの全ての節点を対象節点として選択してもよい。また、抽出部14は、コーナー節点のみを対象節点として選択してもよい。以下、図面を用いて基準節点ペアの抽出方法について説明する。
【0028】
図3は、抽出部14による基準節点ペアの抽出方法を説明するための図である。なお、
図3には、解析モデルの表面上の複数の要素のうちの一部の要素e1,e2,e3,e4が示されている。また、
図3には、複数の節点として、コーナー節点A,B,C,D,E,Fおよび中間節点G,H,I,J,K,L,M,N,Oが示されている。なお、
図3において、コーナー節点Bとコーナー節点Fとを結ぶ要素辺は存在しないものとする。すなわち、要素e1と要素e4との間は、要素が存在しない空間である。
【0029】
例えば、
図3において、要素e1~e4に属するコーナー節点Aを対象節点とする。この場合、抽出部14は、対象節点Aと共通の要素e1~e4に属する複数の節点B~O(対象節点Aを除く節点)から、基準節点ペアを抽出する。具体的には、抽出部14は、対象節点Aとともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせを基準節点ペアとして抽出する。
【0030】
例えば、
図3に示す要素B~Oのうち、節点Bおよび節点Cは、対象節点Aと共通の要素e1に属し、かつ対象節点Aとともに三角形を形成することができる。したがって、抽出部14は、節点Bおよび節点Cの組み合わせを基準節点ペアとして抽出する。また、例えば、節点Bおよび節点Hも、対象節点Aと共通の要素e1に属し、かつ対象節点Aとともに三角形を形成することができる。したがって、抽出部14は、節点Bおよび節点Hの組み合わせも基準節点ペアとして抽出する。
【0031】
ただし、抽出部14は、対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせであっても、双方の節点が属する共通の要素が存在しない節点の組み合わせを、基準節点ペアから除外する。例えば、
図3に示す要素B~Oのうち、節点Hおよび節点Kは、対象節点Aと共通の要素e1,e2,e3に属し、かつ対象節点Aとともに三角形を形成することができる。しかしながら、節点Hおよび節点Kが属する共通の要素は存在しない。具体的には、節点Hは、要素e1に属し、節点Kは要素e2および要素e3に属している。このため、節点H,Kの組み合わせは、双方の節点が属する共通の要素が存在しない組み合わせとなり、抽出部14は、節点H,Kの組み合わせを基準節点ペアとして抽出しない。同様に、例えば、節点Hおよび節点Oは、対象節点Aと共通の要素e1,e4に属し、かつ対象節点Aとともに三角形を形成することができる。しかしながら、節点Hおよび節点Oが属する共通の要素は存在しない。具体的には、節点Hは、要素e1に属し、節点Oは要素e4に属している。このため、節点H,Oの組み合わせも、双方の節点が属する共通の要素が存在しない組み合わせであり、抽出部14は、節点H,Oの組み合わせを基準節点ペアとして抽出しない。
【0032】
本実施形態では、抽出部14は、上記のルールに従って、対象節点ごとに1以上の基準節点ペアを抽出する。例えば、節点Aが対象節点に設定された場合には、抽出部14は、節点B,C、節点B,H、節点B,I、節点C,G、節点C,H、節点G,H、節点G,I、節点H,I、節点C,D、節点C,J、節点C,K、節点D,I、節点D,J、節点I,J、節点I,K、節点J,K、節点D,E、節点D,L、節点D,M、節点E,K、節点E,L、節点K,L、節点K,M、節点L,M、節点E,F、節点E,N、節点E,O、節点F,M,節点F,N、節点M,N、節点M,O、および節点N,Oの32通りの節点の組み合わせを、基準節点ペアとして抽出する。
【0033】
また、上述したように、本実施形態では、中間節点を対象節点とすることもできる。この場合も、抽出部14は、上述したルールに従って基準節点ペアを抽出する。例えば、中間節点Iが対象節点に設定された場合には、抽出部14は、対象節点Iとともに対象節点Iの周囲の要素e1,e2に属する複数の節点A~D、G、H、JおよびKから、複数の基準節点ペアを抽出する。具体的には、抽出部14は、節点A,B、節点A,D、節点A,G、節点A,H,節点A,J、節点A,K、節点B,C、節点B,G、節点B,H、節点C,D、節点C,G、節点C,H、節点C,J、節点C,K、節点D,J、節点D,K、節点G,Hおよび節点J,Kの18通りの節点の組み合わせを、基準節点ペアとして抽出する。
【0034】
なお、詳細な説明は省略するが、例えば、評価装置10の負担を軽減するために、上述の基準節点ペアのうちの一部を、基準節点ペアから除外してもよい。例えば、対象節点と同一の要素辺上に位置する中間節点と、対象節点と異なる要素辺上に位置する中間節点との組み合わせを、基準節点ペアから除外してもよい。したがって、
図3において節点Aを対象節点とした場合に、対象節点Aと同一の要素辺上に位置する中間節点G(または中間節点I)と、対象節点Aと異なる要素辺上に位置する中間節点Hとの組み合わせを、基準節点ペアから除外してもよい。なお、基準節点ペアから除外する節点の組み合わせは、ユーザが適宜設定することができる。
【0035】
規定部16は、上記のようにして抽出した基準節点ペアごとに、仮想節点を規定する。具体的には、規定部16は、基準節点ペアを構成する2つの節点のうち、一方を第1基準節点、他方を第2基準節点とし、第1基準節点と前記第2基準節点との間に仮想節点を規定する。
【0036】
以下、規定部16の機能を具体的に説明する。
図4は、規定部16の機能を説明するための図である。なお、
図4には、
図3に示した要素e1が示されている。また、以下においては、節点Aを対象節点とする基準節点ペアG,Iに対して、仮想節点を規定する場合について説明する。
【0037】
図4を参照して、基準節点ペアG,Iに対して仮想節点を規定する場合、規定部16は、例えば、節点Gを第1基準節点とし、節点Iを第2基準節点とし、第1基準節点Gと第2基準節点Iとを結ぶ線分GI上に、仮想節点Vを規定する。なお、本実施形態では、規定部16は、第1基準節点Gと第2基準節点Iとの距離D
0に対する第1基準節点Gと仮想節点Vとの距離D
1の比を0~1の範囲で変化させることによって、仮想節点の位置を変更する。これにより、規定部16は、複数の基準節点ペアに対してそれぞれ、複数の仮想節点を規定することができる。
【0038】
なお、本明細書において、第1基準節点と第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比が0になる場合とは、第1基準節点を仮想節点として規定することを意味し、第1基準節点と第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比が1になる場合とは、第2基準節点を仮想節点として規定することを意味する。
【0039】
なお、第1基準節点と第2基準節点との距離に対する第1基準節点と仮想節点との距離の比については、0~1の範囲で連続的に変化させてもよく、複数の値をユーザが適宜設定してもよい。また、例えば、1つの基準節点ペアに対して規定される仮想節点の数が予め設定されていてもよい。この場合、第1基準節点と第2基準節点との間において、予め設定された数の仮想節点を等間隔で規定してもよい。
【0040】
荷重負荷部18は、モデル取得部12が取得した解析モデルに荷重を与える。なお、荷重負荷部18の機能は、公知のFEM解析ソフトの機能と同様である。したがって、荷重負荷部18は、公知のFEM解析ソフトと同様に構成することができるので、詳細な説明は省略する。
【0041】
変位取得部20は、荷重負荷部18が荷重を与える前後における解析モデルの表面上の各節点(コーナー節点、中間節点および仮想節点)の変位を取得する。本実施形態では、変位取得部20は、公知のFEM解析ソフトと同様の機能により、コーナー節点および中間節点の変位を取得する。
【0042】
また、本実施形態では、変位取得部20は、第1基準節点および第2基準節点の変位に基づいて、内挿(直接内挿)により仮想節点の変位を取得する。
図4に示した例では、変位取得部20は、第1基準節点Gの変位および第2基準節点Iの変位に基づいて、仮想節点Vの変位を算出する。本実施形態では、変位取得部20は、例えば、仮想節点Vの変位を変位ベクトルとして算出する。具体的には、第1基準節点Gの変位をΔG(=(Δx
1,Δy
1,Δz
1))とし、第2基準節点Iの変位をΔI(=(Δx
2,Δy
2,Δz
2))とした場合、仮想節点Vの変位ΔVは、下記式(1)によって算出される。
ΔV=(1-(D
1/D
0))×ΔG+(D
1/D
0)× ΔI ・・・(1)
【0043】
算出部22は、変位取得部20が取得した対象節点の変位および仮想節点の変位に基づいて、台車枠100において対象節点に対応する部位の強度に関する値を算出する。本実施形態では、算出部22は、強度に関する値として、ひずみ、応力および安全率を算出する。
図4に示した例では、算出部22は、対象節点Aの変位および仮想節点Vの変位に基づいて、台車枠100において対象節点Aに対応する部位のひずみ、応力および安全率を算出する。
【0044】
本実施形態では、算出部22は、まず、対象節点Aの変位および仮想節点Vの変位に基づいて、荷重負荷部18が解析モデルに荷重を与えることによって対象節点Aと仮想節点Vとの間に生じるひずみを算出する。本実施形態では、算出部22は、例えば、下記式(2)によってひずみλを算出する。
λ=(AV1-AV0)/AV0 ・・・(2)
ただし、上記式において、AV0は、荷重負荷部18による荷重負荷前における対象節点Aと仮想節点Vとの距離を示し、AV1は、荷重負荷部18による荷重負荷後における対象節点Aと仮想節点Vとの距離を示す。
【0045】
次に、算出部22は、上記のようにして算出したひずみと、解析モデルにおいて予め設定されたヤング率とに基づいて、対象節点Aと仮想節点Vとの間に生じる応力を算出する。
【0046】
最後に、算出部22は、上記のようにして算出した応力、および予め設定された応力と応力限界との関係に基づいて、台車枠100において対象節点Aに対応する部位の安全率を算出する。
【0047】
なお、本実施形態では、算出部22は、仮想節点の位置ごとに、対象節点に対応する部位の安全率を算出する。算出部22は、例えば、仮想節点の位置ごとに算出した安全率のうち、最も低い安全率を、対象節点に対応する部位の安全率として出力してもよく、算出した全ての安全率を、仮想節点の位置に紐付けて出力してもよい。
【0048】
以下、本実施形態に係る評価装置10の作用効果を説明する。
図5は、本実施形態に係る評価装置10の作用効果を説明するための図である。具体的には、
図5は、台車枠の解析モデル106の一部を示す斜視図である。解析モデル106は、底部106aおよび底部106aから立ち上がる壁部106bを有している。なお、
図5においては、図面が煩雑になることを避けるために、解析モデル106の複数の要素(三角要素)のうち、底部106aおよび壁部106bの内表面の要素(三角要素)のみを示している。
【0049】
上述したように、本実施形態に係る評価装置10では、対象節点と共通の要素に属する複数の節点から基準節点ペアを抽出する際に、対象節点とともに三角形を形成することができる2つの節点の組み合わせであっても、双方の節点が属する共通の要素が存在しない場合には、その節点の組み合わせは基準節点ペアから除外される。
【0050】
例えば、
図5に示す解析モデル106において、底部106aと壁部106bとの境界に位置する節点aが対象節点に設定されたとする。この場合、対象節点aと共通の要素E1,E2に属する中間節点b、および対象節点と共通の要素E3,E4に属する中間節点cは、対象節点aとともに三角形を形成することができる。しかしながら、中間節点b,cが属する共通の要素は存在しない。したがって、対象節点aの安全率を算出する際には、中間節点b,cの組み合わせは基準節点ペアとして抽出されない。これにより、中間節点b,cを結ぶ線分bc上、すなわち要素が存在していない空間上に仮想節点が配置されることを防止することができる。その結果、対象節点aの周囲に生じるひずみおよび対象節点aに作用する応力を適切に算出することができ、解析対象(台車枠)において対象節点aに対応する部位の安全率を適切に算出することができる。
【0051】
次に、評価装置10の具体的な構成について説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る評価装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【0052】
本実施形態に係る評価装置10においても、上述の実施形態と同様に、モデル取得部12が台車枠のFEM解析用の解析モデルを取得し、抽出部14は、複数の基準節点ペアを抽出し、規定部16は、基準節点ペアごとに仮想節点を規定する。
【0053】
本実施形態では、荷重負荷部18は、異なる複数の荷重条件で解析モデルに荷重を与える。荷重条件の区分としては、例えば、上下方向の荷重、左右方向の荷重、前後方向の荷重、およびねじり方向の荷重等が挙げられる。本実施形態では、例えば、JIS E 4207:2019に示された荷重条件に従って、解析モデルに荷重を与えることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、荷重条件ごとに、平均荷重および変動荷重が予め設定されている。また、本実施形態では、荷重負荷部18は、荷重条件ごとに、平均荷重および変動荷重を加算して得られる荷重を、解析モデルに与える。
【0055】
変位取得部20は、複数の荷重条件ごとに、上述の実施形態と同様に、荷重負荷部18が荷重を与える前後における解析モデルの表面上の各節点(コーナー節点、中間節点および仮想節点)の変位を取得する。
【0056】
算出部22は、第1算出部22a、第2算出部22b、第3算出部22cおよび第4算出部22dを有する。第1算出部22aは、複数の荷重条件ごとに、対象節点と仮想節点との間に生じるひずみを算出する。具体的には、第1算出部22aは、例えば、上述の実施形態と同様に、上記式(2)によって、対象節点と仮想節点との間に生じるひずみを、規定部16が規定した仮想節点の位置ごとに算出する。
【0057】
第2算出部22bは、第1算出部22aが算出したひずみと、解析モデルにおいて予め設定されたヤング率とに基づいて、対象節点と仮想節点との間に生じる応力を荷重条件ごとに算出する。本実施形態では、第2算出部22bは、規定部16が規定した仮想節点の位置ごとに、対象節点と仮想節点との間に生じる応力を算出する。
【0058】
第3算出部22cは、第2算出部22bが荷重条件ごとに算出した応力の平均応力成分および変動応力成分を算出する。なお、上述したように、本実施形態では、荷重負荷部18は、平均荷重および変動荷重を加算して得られる荷重を解析モデルに与えている。すなわち、第2算出部22bによって算出される応力は、平均荷重および変動荷重を加算して得られる荷重に基づいて算出された応力である。
【0059】
したがって、本実施形態では、第3算出部22cは、第2算出部22bが算出した応力と、荷重負荷部18が解析モデルに与えた荷重に対する平均荷重の割合とを乗算することにより、平均応力成分を算出することができる。また、第3算出部22cは、第2算出部22bが算出した応力と、荷重負荷部18が解析モデルに与えた荷重に対する変動荷重の割合とを乗算することにより、変動応力成分を算出することができる。
【0060】
例えば、荷重負荷部18が解析モデルに与えた荷重が130kNで、そのうち、平均荷重が100kNで、変動荷重が30kNであったとする。この条件で、第2算出部22bによって算出された応力が130MPaであったとする。この場合、第2算出部22bが算出した応力(130MPa)と、荷重負荷部18が解析モデルに与えた荷重(130kN)に対する平均荷重(100kN)の割合(100/130)とが乗算され、平均応力成分が100MPaであると算出される。また、第2算出部22bが算出した応力(130MPa)と、荷重負荷部18が解析モデルに与えた荷重(130kN)に対する変動荷重(30kN)の割合(30/130)とが乗算され、変動応力成分が30MPaであると算出される。
【0061】
第3算出部22cは、上記のようにして荷重条件ごとに算出した平均応力成分の和を取って、対象節点と仮想節点との間の複合平均応力を算出する。また、第3算出部22cは、上記のようにして荷重条件ごとに算出した変動応力成分の二乗和平方根を取って、対象節点と仮想節点との間の複合変動応力を算出する。本実施形態では、第3算出部22cは、規定部16が規定した仮想節点の位置ごとに、複合平均応力および複合変動応力を算出する。
【0062】
第4算出部22dは、予め設定された複合平均応力、複合変動応力および応力限界の関係(以下、応力限界関係と記載する。)と、第3算出部22cが算出した複合平均応力および複合変動応力とに基づいて、台車枠100において対象節点に対応する部位の安全率を算出する。本実施形態では、応力限界関係は、図示しないデータベースに予め記憶されていてもよく、評価装置10による解析を実行する際に、ユーザによって入力されてもよい。以下、第4算出部22dによる安全率の算出方法の一例について図面を用いて説明する。
【0063】
図7は、応力限界関係の一例を示す図(応力限界図)である。
図7に示す応力限界関係では、平均応力を第1軸(横軸)とし、変動応力を第2軸(縦軸)とするグラフ上に、応力限界線が規定されている。
【0064】
図7に示すように、本実施形態では、第4算出部22dは、まず、応力限界線が示されたグラフ上に、第3算出部22cが算出した複合平均応力および複合変動応力を示す点をプロットする。なお、
図7には、複合平均応力が「-50MPa」で、複合変動応力が「50MPa」の場合を示している。
【0065】
次に、第4算出部22dは、プロットした点と原点とを通る直線(以下、判定線と記載する。)を算出する。次に、第4算出部22dは、下記式(3)に基づいて、安全率SFを算出する。
SF=OP1/OP2 ・・・(3)
なお、上記式(3)において、OP1は、判定線および応力限界線の交点と原点とを結ぶ線分の長さであり、OP2は、判定線において、第4算出部22dがプロットした点と原点とを結ぶ線分の長さである。
【0066】
なお、応力限界関係としては、例えば、JIS E 4207:2019に示された応力限界図を用いることができる。
【0067】
本実施形態では、第4算出部22dは、規定部16が規定した仮想節点の位置ごとに、上述の(3)式を用いて、台車枠100において対象節点に対応する部位の安全率を算出する。また、本実施形態では、第4算出部22dは、仮想節点の位置ごとに算出した安全率のうち、最も低い安全率を、対象節点に対応する部位の安全率として出力する。
【0068】
なお、本実施形態では、例えば、解析モデルに予め形成された全ての節点(仮想節点を除く節点:コーナー節点および中間節点)が対象節点に設定される。したがって、第4算出部22dは、解析モデルに予め設定された全ての節点について、安全率を算出することができる。また、本実施形態では、第4算出部22dは、台車枠100において解析モデルの各節点に対応する部位の安全率を、安全率分布図として出力してもよい。この場合、第4算出部22dは、台車枠100の各部位の安全率を、その大きさに基づいてコンター表示してもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態においては、複合平均応力および複合変動応力を用いて、台車枠100の各部の安全率が算出される。ここで、本実施形態では、複合平均応力および複合変動応力を算出するに際して、要素が存在していない空間上に仮想節点が配置されることが防止される。これにより、各対象節点に作用する複合平均応力および複合変動応力を適切に算出することができ、台車枠100の各部の安全率を適切に算出することができる。
【0070】
[装置動作]
次に、本実施形態に係る評価装置10の動作について
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る評価装置10の動作を示すフロー図である。なお、本実施形態に係る評価方法は、評価装置10を動作させることによって実施される。
【0071】
図8に示すように、本実施形態では、上述したように、まず、モデル取得部12が、台車枠のFEM解析用の解析モデルを取得する(ステップS1)。次に、上述したように、抽出部14が、解析モデルに予め形成された複数の節点をそれぞれ対象節点に設定するとともに、対象節点ごとに複数の基準節点ペアを抽出する(ステップS2)。
【0072】
次に、上述したように、規定部16が、基準節点ペアごとに仮想節点を規定する(ステップS3)。次に、上述したように、荷重負荷部18が解析モデルに荷重を与える(ステップS4)。
【0073】
次に、上述したように、変位取得部20が、荷重負荷部18が荷重を与える前後における解析モデルの表面上の各節点(コーナー節点、中間節点および仮想節点)の変位を取得する(ステップS5)。
【0074】
最後に、上述したように、算出部22が、台車枠100において対象節点に対応する部位の強度に関する値を算出する(ステップS6)。ステップS6では、ステップS2において対象節点に設定された複数の節点についてそれぞれ、強度に関する値(ひずみ、応力および安全率)が算出される。なお、ステップS6では、上述したように、台車枠100において解析モデルの各節点に対応する部位の安全率が、安全率分布図として出力されてもよい。
【0075】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図8に示すステップS1~S6を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における評価装置と評価方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、モデル取得部12、抽出部14、規定部16、荷重負荷部18、変位取得部20、および算出部22(第1算出部22a、第2算出部22b、第3算出部22cおよび第4算出部22d)として機能し、処理を行う。
【0076】
また、本実施形態に係るプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合、各コンピュータがそれぞれ、モデル取得部12、抽出部14、規定部16、荷重負荷部18、変位取得部20、および算出部22(第1算出部22a、第2算出部22b、第3算出部22cおよび第4算出部22d)のいずれかとして機能してもよい。
【0077】
[物理構成]
図9は、本発明の一実施形態に係る評価装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。コンピュータ110は、本実施形態に係るプログラムを実行することによって、本実施形態に係る評価装置10を実現する。
【0078】
図9に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていてもよい。
【0079】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0080】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボードおよびマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0081】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、およびコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0082】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))およびSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0083】
なお、本実施形態に係る評価装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによって実現されてもよい、また、評価装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0084】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、評価装置が、鉄道車両用台車枠の各部の強度に関する値を算出する場合について説明したが、本発明に係る評価装置の評価対象となる構造部材は、鉄道車両用台車枠に限定されない。例えば、評価装置が、他の機械構造部材(自動車用車体等)、建築構造部材および土木構造部材等の種々の構造部材の各部の強度に関する値を算出してもよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、算出部22が強度に関する値として安全率を出力する場合について説明したが、算出部22が強度に関する値としてひずみまたは応力(複合平均応力および複合変動応力を含む。)を出力してもよい。すなわち、算出部22が、ひずみ、応力および安全率のうちの少なくとも一つを出力してもよい。なお、上述したように、算出部22は、仮想節点の位置ごとに、対象節点に対応する部位のひずみおよび応力を算出する。算出部22は、例えば、仮想節点の位置ごとに算出したひずみまたは応力のうち、最も大きいひずみまたは応力を、対象節点に対応する部位のひずみまたは応力として出力してもよく、算出した全てのひずみまたは応力を、仮想節点の位置に紐付けて出力してもよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、算出部22が強度に関する値として、ひずみ、応力および安全率を算出する場合について説明したが、算出部が強度に関する値として、安全率を算出しなくてもよく、安全率および応力を算出しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、構造部材の強度を適切に評価することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 評価装置
12 モデル取得部
14 抽出部
16 規定部
18 荷重負荷部
20 変位取得部
22 算出部