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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】耐油剤及び紙製品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230524BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20230524BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230524BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20230524BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20230524BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C09K3/00 112Z
D21H19/10 Z
C09D5/02
B65D65/42 C
D21H21/14 Z
C09D201/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021096587
(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公開番号】P2022188501
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 達記
(72)【発明者】
【氏名】芥 諒
(72)【発明者】
【氏名】松本 あかね
(72)【発明者】
【氏名】相原 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】青山 博一
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135932(JP,A)
【文献】特開2020-128616(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155546(WO,A1)
【文献】特開2001-172583(JP,A)
【文献】特開2015-030795(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038516(WO,A1)
【文献】特開2004-068180(JP,A)
【文献】特開2004-270049(JP,A)
【文献】特開2004-270050(JP,A)
【文献】特開2006-097141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
D21H
B65D 65/42
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つを有する重合体(a1)の前記水酸基及び/又は前記アミノ基に一価の基である炭素数7~40の脂肪族炭化水素基(a2)を修飾してなる重合体(A)を含む耐油剤であって、
前記重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアルコール単位及びビニルアミン単位の合計量が40モル%以上であり、
前記重合体(A)における前記脂肪族炭化水素基(a2)の修飾率が、前記重合体(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計量に対して25モル%以上100モル%以下である、耐油剤
【請求項2】
前記脂肪族炭化水素基(a2)の炭素数が10以上の直鎖状アルキル基である、請求項1に記載の耐油剤。
【請求項3】
前記重合体(a1)と前記脂肪族炭化水素基(a2)とが、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、アミド結合、及びエーテル結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合により結合している、請求項1又は2に記載の耐油剤。
【請求項4】
前記重合体(a1)がポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアミン、及びビニルアミン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1~3のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項5】
重合体(A)が非フッ素重合体である、請求項1~のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項6】
さらに、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合物を含み、分散液又は溶液である、請求項1~のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項7】
さらに、多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、及び凝結剤から選択された少なくとも一種を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項8】
紙製品用である請求項1~のいずれか一項に記載の耐油剤。
【請求項9】
前記紙製品が食品用包装材又は食品用容器である、請求項に記載の耐油剤。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の耐油剤によって処理された紙製品(粘着ラベルを除く)
【請求項11】
食品用包装材又は食品用容器である請求項10に記載の紙製品。
【請求項12】
水酸基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つを有する重合体(a1)に一価の基である炭素数7~40の脂肪族炭化水素基(a2)を修飾してなる重合体(A)を含む耐油剤であって、前記重合体(a1)と前記脂肪族炭化水素基(a2)とがエステル結合により結合している、耐油剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐油剤、特に紙製品に好適に利用できる耐油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使い捨てのプラスチック製の包装材及び容器の代替として、紙製の包装材及び容器が期待されている。紙製の食品包装材及び食品容器は食品の水分及び油分が染み出すことを防止することが要求され、耐油剤が紙に内添又は外添により適用されている。
【0003】
特許文献1は撥水性が優れた撥水剤として、(a)水酸基、アミノ基、およびイミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基を有するビニル系ポリマー及び(b)炭素数が8以上の脂肪族基を有するイソシアネートの付加物である撥水剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO/2020/022367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において紙製品への液体油に対する耐油性の付与についての記載はない。紙製品の液体油に対する耐油性は、食品用の用途が意図される紙製品(例えば食品包装材)においては重要な特性である。本開示の目的は、紙製品に液体油に対する耐油性を付与することができる耐油剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の好ましい態様は次のとおりである。
[項1]
水酸基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つを有する重合体(a1)に炭素数1~40の脂肪族炭化水素基(a2)を修飾してなる重合体(A)を含む耐油剤。
[項2]
前記脂肪族炭化水素基(a2)の炭素数が7以上である、項1に記載の耐油剤。
[項3]
前記重合体(a1)と前記脂肪族炭化水素基(a2)とが、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、アミド結合、及びエーテル結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合により結合している、項1又は2に記載の耐油剤。
[項4]
前記重合体(a1)がポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアミン、及びビニルアミン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも一つである項1~3のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項5]
前記重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアルコール単位及びビニルアミン単位の合計量が40モル%以上である、項1~4のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項6]
前記重合体(A)における前記脂肪族炭化水素基(a2)の修飾率が、前記重合体(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計量に対して25モル%以上100モル%以下である、項1~5のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項7]
重合体(A)が非フッ素重合体である、項1~6のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項8]
さらに、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合物を含み、分散液又は溶液である、項1~7のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項9]
さらに、多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、及び凝結剤から選択された少なくとも一種を含む、項1~8のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項10]
紙製品用である項1~9のいずれか一項に記載の耐油剤。
[項11]
前記紙製品が食品用包装材又は食品用容器である、項10に記載の耐油剤。
[項12]
項1~11のいずれか一項に記載の耐油剤によって処理された紙製品。
[項13]
食品用包装材又は食品用容器である項12に記載の紙製品。
[項14]
水酸基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つを有する重合体(a1)に炭素数1~40の脂肪族炭化水素基(a2)を修飾してなる重合体(A)を含む耐油剤であって、前記重合体(a1)と前記脂肪族炭化水素基(a2)とがエステル結合により結合している、耐油剤。
【発明の効果】
【0007】
本開示における耐油剤は紙製品に液体油に対する耐油性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<耐油剤>
耐油剤は、基材に処理することによって、基材に耐油性を付与する。耐油性が付与された基材は油染みを防止する性質を有し、さらに、撥油性、又は防汚性などを有してもよい。ここで油とは、油脂や有機溶剤を指し、油脂としては食用油脂(植物性脂肪油、動物性脂肪油、植物性脂肪、動物性脂肪)、工業油脂があげられ、食用油脂としては、サラダ油、コーン油、ごま油、菜種油、オリーブオイル、工業油脂としてはひまし油があげられ、有機溶剤は極性溶媒、非極性溶媒でもよく、非極性溶媒としてはヘキサン、ヘキサデカン等が挙げられるがこれらに限定されない。油は少なくとも油脂を含んでいてもよい。耐油剤は、基材に処理することによって、基材に耐水性、及び/又は撥水性を付与してよい。
【0009】
耐油剤は重合体(A)(例えば非フッ素重合体であってよい)に加えて、液状媒体(水、有機溶媒又はこれらの混合溶液)を含んでよい。耐油剤は、さらに、界面活性剤、分散剤、及び添加剤から選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0010】
[重合体(A)]
本開示における耐油剤は重合体(A)を含む。重合体(A)は水酸基又はアミノ基を含有する重合体(a1)に炭素数1~40の脂肪族炭化水素基(a2)を修飾してなるものである。ここで、重合体(a1)に脂肪族炭化水素基(a2)を修飾するとは、重合体(a1)に脂肪族炭化水素基(a2)を化学的に結合させることをいう。つまり、重合体(A)は重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが化学的に結合したものである。
【0011】
(重合体(a1))
重合体(a1)は水酸基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つを有する。重合体(a1)は水酸基のみ、アミノ基のみ、又は水酸基とアミノ基の両方を有してもよいし、加えてカルボキシル基等の官能基を有していても良い。重合体(a1)は合成高分子又は天然高分子であってよく、例としてはビニル基CH=CH-またはビニリデン基CH=C=を有するモノマーを重合して得られるビニルポリマーが挙げられる。重合体(a1)はアクリルモノマーから誘導された繰り返し単位を有するアクリルポリマーであってもよいが、アクリルポリマーでなくてもよい。重合体(a1)は熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0012】
重合体(a1)はビニルアルコール単位を有するポリビニルアルコールであってよい。ビニルアルコール単位は下式:
-(-CH-CHOH-)-
で示される繰り返し単位である。ポリビニルアルコールは例えばポリ酢酸ビニルの鹸化によって製造される。
【0013】
重合体(a1)は酢酸ビニル単位を有していてよい。酢酸ビニル単位は下式:
-(-CH-CH(OCOCH)-)-
で示される繰り返し単位である。
【0014】
重合体(a1)はビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位との両方を有していてよく、酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体であってもよい。
【0015】
重合体(a1)が有する繰り返し単位は、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位に限られず、エチレン単位、ビニルアミン単位等を有してもよい。その他、重合体(a1)が有してもよい繰り返し単位は限定されず、その他ビニルモノマーやアクリルモノマーから誘導される繰り返し単位等を有してもよい。
【0016】
重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアルコール単位の量は10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上であってよく、好ましくは60モル%以上である。重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアルコール単位の量は100モル%以下、95モル%以下、85モル%以下、75モル%以下、65モル%以下、55モル%以下、45モル%以下、35モル%以下、25モル%以下、15モル%以下又は10モル%以下であってよい。
【0017】
重合体(a1)における鹸化度(ビニルアルコール単位数/ビニルアルコール単位及び酢酸ビニル単位の合計数)は10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上であってよく、好ましくは60モル%以上である。重合体(a1)における鹸化度は100モル%以下、95モル%以下、85モル%以下、75モル%以下、65モル%以下、55モル%以下、45モル%以下、35モル%以下、25モル%以下、15モル%以下又は10モル%以下であってよい。
【0018】
重合体(a1)の全繰り返し単位におけるエチレン単位の量は5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上であってよい。重合体(a1)の全繰り返し単位におけるエチレン単位の合計量は60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下、15モル%以下又は10モル%以下であってよい。
【0019】
重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアミン単位の量は5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上であってよい。重合体(a1)の全繰り返し単位におけるエチレン単位の合計量は60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下、15モル%以下又は10モル%以下であってよい。
【0020】
重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアルコール単位及びビニルアミン単位の合計量は10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上であってよく、好ましくは40モル%以上である。重合体(a1)の全繰り返し単位におけるビニルアルコール単位及びビニルアミン単位の合計量は100モル%以下、95モル%以下、85モル%以下、75モル%以下、65モル%以下、55モル%以下、45モル%以下、35モル%以下、25モル%以下、15モル%以下又は10モル%以下であってよい。
【0021】
重合体(a1)の具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアミン、及びビニルアミン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0022】
重合体(a1)の重量平均分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、7500以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、500000以上であってよい。重合体(a1)の重量平均分子量は、10000000以下、7500000以下、5000000以下、3000000以下、1000000以下、750000以下、500000以下、3000000以下、100000以下、75000以下、50000以下であってよい。
【0023】
(脂肪族炭化水素基(a2))
脂肪族炭化水素基(a2)の炭素数は、1以上、3以上、5以上、7以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、又は20以上であってよく、好ましくは7以上、10以上、又は12以上である。脂肪族炭化水素基(a2)の炭素数は、40以下、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、又は18以下であってよい。好ましくは30以下である。
【0024】
脂肪族炭化水素基(a2)は好ましくは一価の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基(a2)は直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。脂肪族炭化水素基(a2)は、不飽和(例えば、一価不飽和、二価不飽和、三価不飽和、四価不飽和、又は多価不飽和)又は飽和であってよく、例えばアルキル基である。
【0025】
脂肪族炭化水素基(a2)の具体例としては、n-プロピル、iso-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ラウリル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ベヘニル基、2-エチルヘキシル基、イソステアリル基等のアルキル基;オレイル基、パルミトイル基、エイコセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0026】
(ポリオルガノシロキサン基(a3))
脂肪族炭化水素基(a2)に代えて、又は脂肪族炭化水素基(a2)と組み合わせて、ポリオルガノシロキサン基(a3)を用いることも可能である。ポリオルガノシロキサン基(a3)は、ポリオルガノシロキサンが重合体(a1)に結合して生成される基であり、好ましくは一価の基である。ポリオルガノシロキサンと重合体(a1)とを結合させる方法は特に限定されず、ポリオルガノシロキサンが有する反応性基を介して結合させてよい。
【0027】
ポリオルガノシロキサンは、下記式:
-(RSiO)
[式中、各Rは独立して一価の有機基であり、nは1~10000である。]
で示される化学構造を有していてよい。Rは炭素数1~12(例えば炭素数1~4)のアルキル基又は官能基(例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ハロゲン置換アルキル基、ビニル基、(メタ)アクリレート基、及び(メタ)アクリルアミド基等)を有する有機基であってよい。nは1以上、2以上、10以上、30以上、又は100以上であってよく、10000以下、5000以下、1000以下、又は500以下であってよい。ポリオルガノシロキサンの末端構造は、水素原子、アルキル基、水酸基、シラノール基、トリアルキルシリル基であってよい。
【0028】
[重合体(A)の組成等]
重合体(A)における脂肪族炭化水素基(a2)の修飾率は重合体(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計量に対して5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、及び50モル%以上であってよく、好ましくは25モル%以上である。重合体(A)における脂肪族炭化水素基(a2)の修飾率は重合体(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計量に対して100モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、又は50モル%以下であってよい。
【0029】
重合体(A)が脂肪族炭化水素基(a2)に代えて、ポリオルガノシロキサン基(a3)を有する場合、ポリオルガノシロキサン基(a3)の修飾率は重合体(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計量に対して0.1モル%以上、1モル%以上、3モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、又は25モル%以上であってよく、重合体(a1)が有する水酸基及びアミノ基の合計量に対して50モル%以下、30モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、又は5モル%以下であってよい。重合体(A)が脂肪族炭化水素基(a2)とポリオルガノシロキサン基(a3)との両方を有する場合、ポリオルガノシロキサン基(a3)の修飾率は脂肪族炭化水素基(a2)の修飾率の0.01倍以上、0.1倍以上、又は0.3倍以上であってよく、脂肪族炭化水素基(a2)の修飾率の3倍以下、1倍以下、又は0.5倍以下であってよい。
【0030】
重合体(A)は炭素数1以上、3以上、6以上、又は8以上のフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)を有しなくてよい。重合体(A)はフッ素原子を有しない非フッ素重合体であってもよい。本開示における耐油剤はフルオロアルキル基又はフッ素原子を有する重合体を用いずとも良好な耐油性を発現し得る。
【0031】
重合体(A)の重量平均分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、7500以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、500000以上であってよい。重合体(A)の重量平均分子量は、10000000以下、7500000以下、5000000以下、3000000以下、1000000以下、750000以下、500000以下、3000000以下、100000以下、75000以下、50000以下であってよい。
【0032】
[重合体(A)の特性]
重合体(A)についてn-ヘキサデカンの接触角(ガラス基板上)は5°以上、10°以上、又は15°以上、好ましくは、20°以上、25°以上、又は30°以上、さらに好ましくは、35°以上、40°以上、又は45°以上であってよい。n-ヘキサデカンの接触角が上記範囲にあることで耐油剤が撥液性に優れ、特に耐油性の観点等から好ましい。ここで、接触角は実施例に記載の方法により測定したものであってよい。具体的には、重合体(A)濃度1.0%のクロロホルム溶液をセロファンフィルムを貼付したガラス基板上にスピンコートし、得られた塗膜上に、2μLのヘキサデカン(HD)を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られる静的接触角であってよい。
【0033】
重合体(A)の融点は、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、120℃以上又は140℃以上であることが好ましい。また、重合体(A)の融点は200℃以下、180℃以下、160℃以下であることが好ましい。重合体(A)の融点が上記範囲にあることで繊維製品に処理した際の被覆性や温度に対する耐性が向上し、特に耐油性の観点等から好ましい
【0034】
重合体(A)のガラス転移温度は30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上又は100℃以上であることが好ましい。また、重合体(A)のガラス転移温度は140℃以下、130℃以下、120℃以下であることが好ましい。重合体(A)のガラス転移温度が上記範囲にあることで繊維製品に処理した際の被覆性や温度に対する耐性が向上し、特に耐油性の観点等から好ましい。
【0035】
[重合体(A)の量]
重合体(A)の量は、耐油剤に対して0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、25重量%以上、50重量%以上、又は75重量%以上であってよい。重合体(A)の量は、耐油剤に対して100重量%以下、95重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、又は25重量%以下であってよい。
【0036】
[重合体(A)の製造方法]
重合体(A)は重合体(a1)に脂肪族炭化水素基(a2)を修飾することにより製造することができる。重合体(a1)に脂肪族炭化水素基(a2)を修飾する方法としては特に限定されない。例えば、ウレタン結合形成反応、ウレア結合形成反応、エステル結合形成反応、アミド結合形成反応、及びエーテル結合形成反応等の方法を用いることができる。すなわち、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが、ウレア結合、ウレタン結合、エステル結合、アミド結合、及びエーテル結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合により結合していてよい。結合形成反応においては、アシル化剤、縮合剤、触媒等が適宜使用される。
【0037】
重合体(a1)への脂肪族炭化水素基(a2)の修飾は重合体(a1)の官能基(水酸基又はアミノ基)と、脂肪族炭化水素基含有反応体とを反応させることで行われてもよい。ここで、「脂肪族炭化水素基含有反応体」とは、脂肪族炭化水素基(a2)及び重合体(a1)の官能基と反応し得る基を有する化合物である。
【0038】
脂肪族炭化水素基含有反応体の例は次のとおりである。
N-R
HO-R
HO(O=)C-R
X(O=)C-R
RC(=O)OC(=O)R
O=C=N-R
S=C=N-R
(CHOCH)CHOR
X-R
[式中、各々のRは独立して脂肪族炭化水素基(a2)であり、XはF、Cl、Br、又はIである。]
【0039】
(ウレタン結合形成)
重合体(A)において、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが、ウレタン結合により結合していてよい。重合体(A)におけるウレタン結合は、例えば、水酸基含有重合体(a1)と、脂肪族炭化水素含有イソシアネートを反応させることで、形成されてもよい。反応時に錫触媒やアミンを触媒として使用することができる。例えば、有機溶媒中で水酸基含有重合体(a1)と脂肪族炭化水素基含有イソシアネートと一定時間反応すれば水酸基がイソシアネート基と反応し、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とがウレタン結合により結合している重合体(A)が得られる。
【0040】
(ウレア結合形成)
重合体(A)において、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが、ウレア結合により結合していてよい。重合体(A)におけるウレア結合は、例えば、アミノ基含有重合体(a1)と、脂肪族炭化水素基含有イソシアネート基を反応させることで、形成されてもよい。反応時に適宜触媒を利用してもよい。例えば、有機溶媒中でアミノ基含有重合体(a1)と脂肪族炭化水素含有イソシアネートと数時間反応すれば、アミノ基がイソシアネート基と反応し、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とがウレア結合により結合している重合体(A)が得られる。
【0041】
(エステル結合形成)
重合体(A)において、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが、エステル結合により結合していてよい。重合体(A)におけるエステル結合は、例えば、水酸基含有重合体(a1)と、脂肪族炭化水素基含有カルボン酸を反応させることで、形成されてもよい。反応時にアシル化触媒や縮合剤等を利用してもよい。例えば、有機溶媒中で水酸基含有重合体(a1)と脂肪族炭化水素基含有カルボン酸を数時間反応すれば、水酸基がカルボン酸と反応し、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とがエステル結合により結合している重合体(A)が得られる。
【0042】
(アミド結合形成)
重合体(A)において、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが、アミド結合により結合していてよい。重合体(A)におけるアミド結合は、例えば、アミノ基含有重合体(a1)と、脂肪族炭化水素基含有カルボン酸を反応させることで、形成されてもよい。反応時にアシル化触媒や縮合剤等を利用してもよい。例えば、有機溶媒中でアミノ基含有重合体(a1)と脂肪族炭化水素基含有カルボン酸を数時間反応すれば、アミノ基がカルボン酸と反応し、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とがアミド結合により結合している重合体(A)が得られる。
【0043】
(エーテル結合形成)
重合体(A)において、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とが、エーテル結合により結合していてよい。重合体(A)におけるエーテル結合は、例えば、水酸基含有重合体(a1)と、脂肪族炭化水素基含有アルコールを反応させることで、形成されてもよい。反応時に酸触媒、延期触媒等を利用してもよい。例えば、有機溶媒中で水酸基含有重合体(a1)と脂肪族炭化水素基含有アルコールを、触媒下、加熱して反応すれば、脂肪族炭化水素基含有アルコールが求核剤として働いて、重合体(a1)と脂肪族炭化水素基(a2)とがエーテル結合により結合している重合体(A)が得られる。
【0044】
[液状媒体]
耐油剤は、液状媒体を含有してよい。液状媒体は水の単独、有機溶媒の単独、又は水と有機溶媒の混合物であり、好ましくは水の単独又は水と有機溶媒の混合物である。
【0045】
有機溶媒の例としては、エステル(例えば、炭素数2~30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~30の1~3価のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)、エーテル、アルカン、トルエン系溶剤、ハロゲン化カーボン等であってよい。その他の溶媒の具体例としては、アセトン、イソプロピルアルコール、クロロホルム、HCHC225、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0046】
液状媒体の量は、耐油剤に対して30重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、75重量%以上、又は90重量%以上であってよい。液状媒体の量は、耐油剤に対して95重量%以下、75重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0047】
液状媒体が水と有機溶媒の混合物の場合、有機溶媒の量は、液状媒体に対して、3重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、又は75重量%以上であってよい。有機溶媒の量は、液状媒体に対して、90重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0048】
[界面活性剤又は分散剤]
耐油剤は、界面活性剤(乳化剤)又は分散剤を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。一般に、重合体(A)の水分散体の安定化のために、界面活性剤又は分散剤を、重合体(A)100重量部に対して0.01~100重量部、0.01~80重量部、0.01~60重量部、0.01~40重量部、0.01~30重量部、又は0.01~15重量部で添加してもよい。界面活性剤又は分散剤は、重合体(A)の粉末を水との混合時に添加してもよく、重合体(A)を強制乳化、転相乳化により水分散体を作製する際に添加してもよい。
【0049】
耐油剤において、界面活性剤はノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された一種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせを用いることが好ましい。
【0050】
ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のそれぞれが一種又は二以上の組み合わせであってよい。
【0051】
分散剤としては、高分子分散剤が挙げられる。高分子分散剤としては、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等があげられる。
【0052】
界面活性剤又は分散剤の量は、重合体(A)100重量部に対して0.01~100重量部、0.01~80重量部、0.01~60重量部、0.01~40重量部、0.01~30重量部、又は0.01~15重量部であってよい。一般に界面活性剤又は分散剤を添加すると、水分散体の安定性や繊維製品への浸透性は向上する。
【0053】
[その他添加剤]
耐油剤は、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤の例は、多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、凝結剤、バインダー樹脂、分散剤、耐水剤、耐油剤、撥水剤、撥油剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、親水化剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤、サイズ剤、紙力増強剤等である。その他添加剤の量は、それぞれ、重合体(A)100重量部に対して、0.1~100重量部、0.1~80重量部、0.1~60重量部、0.1~40重量部、0.1~20重量部または0.1~10重量部であってよい。中でも、耐油剤は多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、及び凝結剤から選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0054】
多糖類の例としては、澱粉、キサンタンガム、カラヤガム、ウェランガム、グアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン、キトサン、アラビアガム、ローカストビーンガム、セルロース、アルギン酸、寒天、デキストラン、及びプルラン等が挙げられる。多糖類は、置換されている変性多糖類であってよく、特に、水酸基やカチオン性基を導入した変性多糖類であってよい。
【0055】
紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤の例としては、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、及びオレフィン/無水マレイン酸重合体等が挙げられる。
【0056】
[耐油剤の用途]
耐油剤は、耐油剤に限られず、耐水剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤又は離型剤等の各種剤又はその成分として使用できる。耐油剤は、外的処理剤(表面処理剤)又は内的処理剤又はその成分として使用できる。
【0057】
基材が耐油剤により処理されることで、重合体(A)が基材表面に表面コーティング構造を形成し得る。「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布等により被処理物に適用することを意味する。処理により、耐油剤の有効成分である重合体(A)が被処理物の内部に浸透する及び/又は被処理物の表面に付着する。
【0058】
処理された被処理物(基材)は、耐油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、共重合体のTg以上の温度、例えば100℃~200℃で加熱されることが好ましい。共重合体のTg以上の温度で処理することにより、基材表面が共重合体に被覆され、さらに側鎖の配列が誘起される。これにより、耐油性に優れた表面コーティング構造が形成され得る。
【0059】
表面コーティング構造は、耐油剤を従来既知の方法により被処理物(基材)に適用することで、基材表面に重合体(A)を付着させることで、形成することができる。通常、耐油剤を有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(例えば、ブロックイソシアネート化合物)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、耐油剤に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤、サイズ剤、紙力増強剤等を添加して併用することも可能である。
【0060】
本開示の耐油剤で処理される基材としては、布製品や紙製品などの繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスター等を挙げることができる。中でも、本開示における耐油剤に含まれる重合体(A)は紙基材に良好に付着(物理的又は化学的結合)するため、本開示の耐油剤で処理される基材は紙製品であることが好ましい。つまり、本開示における耐油剤は紙製品用耐油剤として好適に用いることができる。
【0061】
紙製品の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品用包装用紙、食品用容器、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等である。本開示の耐油剤は耐油性に優れるため、食品用途(食品用包装材又は食品用容器)に好適に用いられる。
【0062】
耐油剤は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材に適用することができる。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着又は噴霧してよい。繊維製品が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着又は噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。耐油剤を、予め形成した繊維製品(特に紙、布等)に適用してよく、又は、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。耐油剤はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
【0063】
紙用耐油剤の量は、内添においては、重合体(A)の固形分量がパルプ100重量部に対して、0.1重量部以上、0.5%重量部以上、1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、又は30重量部以上となる量であってよい。紙用耐油剤の量は、重合体(A)の固形分量がパルプ100重量部に対して、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下となる量であってよい。外添においては、耐油層に含まれる重合体(A)の量が0.01g/m以上、0.03g/m以上、0.05g/m以上、0.10g/m以上、0.30g/m以上、又は0.50g以上であってよい。耐油層に含まれる重合体(A)の量が5g/m以下、3g/m以下、2g/m以下、1.5g/m以下、0.30g/m以下、又は0.50g/m以下であってよい。
【0064】
重合体(A)溶液(または耐油剤)(濃度14.8 mg/mL)を紙密度が0.58g/cm3の坪量45g/m2の紙の原紙に0milの設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、70℃で10分アニールすることで作製した処理紙の透気度は200s/100cc以上、300s/100cc以上、500s/100cc以上、700s/100cc以上または1000s/100cc以上であることが好ましい。処理紙の透気度が上記値以上にあることで繊維間の空隙が閉塞し、特に耐油性が向上し得る。
【0065】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0066】
[実施例]
次に、実施例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明は本開示を限定するものでない。
【0067】
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
【0068】
[処理紙の作成]
木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cmの坪量45g/mの紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は52g/mであった。この原紙に対して、下記実施例又は比較例で特定する重合体の濃度が14.9 mg/cmの重合体溶液を、ギャップを0milの設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、70℃で10分アニールすることで、処理紙を作成した。
【0069】
[KIT試験(耐油性)]
3Mキットテスト(TAPPI T-559cm-02)により測定した。3Mキットテスト法は、ヒマシ油、トルエン、ヘプタンが配合された試験油を処理紙の表面におき、15秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価した。キット番号1~6の試験油にて試験を実施し、染みが見られなかった最大のキット番号を耐油性の評価結果とした。
【0070】
[撥液性(静的接触角)]
撥液性は、下記実施例又は比較例で特定する重合体の濃度1.0%のクロロホルム溶液をセロファンフィルムを貼付したガラス基板上にスピンコートし、静的接触角を測定した。静的接触角は、塗膜上に、2μLのヘキサデカン(HD)を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られた。
【0071】
[透気度]
処理紙の透気度(透気抵抗度)を、株式会社安田精機製作所製の自動ガーレー式デンソーメーター(製品No.323-AUTO、通気孔径直径28.6±0.1mm)を用いてJIS P8117(2009)に準拠して測定した。
【0072】
(実施例1)
還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、攪拌子、ポリビニルアルコール (鹸化度 87.8mоl%、水酸基含有率87.8mоl%)0.98gを入れ、80℃で1時間減圧乾燥を行った。トルエン 60mL、オクタデシルイソシアネート 5.9g(繰り返し単位のOHに対して115mоl%)を加え、75℃で1時間攪拌した。その後、室温に戻し、ジラウリン酸ジブチルすず 0.1gを加えた。温度を120℃に変更し、20時間攪拌した。反応容器を室温まで冷却し、反応混合液をメタノールに滴下し、固体を析出させた。吸引濾過にて析出した固体を回収し、メタノールで1回洗浄、アセトンで1回洗浄する。回収した固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行い、ポリビニルアルコールをオクタデシルイソシアネートで修飾した重合体を得た。この重合体を用いて、撥液性、KIT試験、透気度を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2)
添加するオクタデシルイソシアネート量を3.0g(繰り返し単位のOHに対して57mоl%)に変更し、反応溶媒をジメチルスルホキシドに変更した以外は実施例1と同様に反応・処理した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、攪拌子、 エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン含有率 38mоl%、水酸基含有率62mоl%)0.76gを入れ、80℃で1時間減圧乾燥を行った。ジメチルスルホキシド 45mL、オクタデシルイソシアネート 3.7g(繰り返し単位のOHに対して100mоl%)を加え、75℃で1時間攪拌した。その後、室温に戻し、ジラウリン酸ジブチルすず 0.1gを加えた。温度を140℃に変更し、20時間攪拌した。反応容器を室温まで冷却し、反応混合液をメタノールに滴下し、固体を析出させた。吸引濾過にて析出した固体を回収し、メタノールで1回洗浄、アセトンで1回洗浄する。回収した固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行い、エチレン-ビニルアルコール共重合体をオクタデシルイソシアネートで修飾した重合体を得た。この重合体を用いて、撥液性、KIT試験、透気度を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例4)
添加するオクタデシルイソシアネート量を1.8g(繰り返し単位のOHに対して50mоl%)に変更した以外は実施例3と同様に反応・処理した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例5)
還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、攪拌子、ポリビニルアルコール (鹸化度 87.8mоl%、水酸基含有率87.8mоl%)0.98gを入れ、80℃で1時間減圧乾燥を行った。ジメチルスルホキシド 30mLを添加し80℃で溶解させた後、ステアリン酸ビニル 6.2g(繰り返し単位のOHに対して115mоl%)、酢酸ナトリウム0.002gを加え、80℃で48時間攪拌した。反応容器を室温まで冷却し、反応混合液をメタノールに滴下し、固体を析出させた。吸引濾過にて析出した固体を回収し、メタノールで1回洗浄、アセトンで1回洗浄する。回収した固体を良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈殿を行い、ポリビニルアルコールをステアリン酸ビニルで修飾した重合体を得た。この重合体を用いて、撥液性、KIT試験、透気度を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例6)
添加するステアリン酸ビニル量を3.1g(繰り返し単位のOHに対して57mоl%)に変更した以外は実施例5と同様に反応・処理した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例7)
ポリビニルアルコールをエチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン含有率 38mоl%、水酸基含有率62mоl%)に変え、ステアリン酸ビニル 6.2gを5.0g(繰り返し単位のOHに対して100mоl%)に変更した以外は実施例5と同様に反応・処理した。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例8)
ポリビニルアルコールをエチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン含有率 38mоl%)に変え、ステアリン酸ビニル 6.2gを2.5g(繰り返し単位のOHに対して50mоl%)に変更した以外は実施例5と同様に反応・処理した。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1)
ポリビニルアルコール (鹸化度 87.8mоl%)を用いて、撥液性、KIT試験、透気度を評価した。結果を表1に示す。
【0081】
(表1)