(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20230524BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230524BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2021160706
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2017063932の分割
【原出願日】2017-03-28
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 裕之
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 浩行
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁美
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郷詩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 克彦
(72)【発明者】
【氏名】芳田 元
(72)【発明者】
【氏名】三井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】栗本 智行
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-082947(JP,U)
【文献】特開2009-268675(JP,A)
【文献】特開2016-144986(JP,A)
【文献】特開2003-299549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に延びるフレーム下部と、前記フレーム下部の後端から上方に延びるフレーム上部とを有し、乗物のフロアに設けられたフレームと、
シートクッション及びシートバックを含み、前記フレームに着脱可能に取り付けられる複数の支持部材と、
前記フレーム下部及び前記フレーム上部と前記支持部材のそれぞれとに設けられ、互いに着脱可能に結合することによって前記フレーム下部及び前記フレーム上部に対して前記支持部材を支持する複数の連結装置とを有し、
前記シートクッション及び前記シートバックのそれぞれは、前記フレームに結合されるサブフレームと、前記サブフレームに支持されたパッド部材と、前記パッド部材の表面に設けられた表皮材とを有し、
前記連結装置は
、第1筒
と、前記第1筒の内側に着脱可能に嵌合する第2筒
とを有し、
前記第1筒及び前記第2筒の一方にはロック爪が設けられ、前記第1筒及び前記第2筒の他方にはロック孔が設けられ、前記ロック爪が前記ロック孔に係合することによって前記第1筒及び前記第2筒の相対変位が規制される乗物用シート。
【請求項2】
前記パッド部材の形状、前記パッド部材の大きさ、前記パッド部材の硬さ、及び前記表皮材の材質の少なくとも1つが異なる複数の前記支持部材が用意され、複数の前記支持部材から前記フレームに取り付ける前記支持部材が選択可能となっている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記支持部材に設けられた識別子と、
前記フレームに設けられ前記識別子を認識する認識装置とを有し、
前記識別子と前記認識装置とは、前記第1筒及び前記第2筒の内側において互いに対向する位置に配置されている請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記フレーム下部及び前記フレーム上部と前記支持部材のそれぞれとに設けられ、互いに着脱可能に接続することによって前記支持部材のそれぞれに設けられた電装品と前記フレームに設けられた電装品とを電気的又は光学的に接続する複数の接続装置とを有する請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記フレームに設けられた前記電装品は、前記支持部材に設けられた前記電装品を制御する制御装置を含み、
前記制御装置は、前記認識装置が認識した前記識別子の情報に基づいて前記支持部材に設けられた前記電装品を制御する請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記連結装置と前記接続装置とが一体に形成されたコネクタユニットを有し、
前記識別子及び前記認識装置は、前記コネクタユニットに設けられる請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記制御装置と、前記支持部材に設けられた前記電装品とは、前記コネクタユニットを介して電気的に接続される請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記支持部材は、ヘッドレストを含み、
前記ヘッドレストは、前記シートバックよりも上方に配置され、前記コネクタユニットによって前記フレーム上部に結合される請求項6又は請求項7に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、シートクッション及びシートバックのそれぞれを左側部、中央部、右側部の3つの部品から構成し、中央部に対して左側部及び右側部を組み換え可能にしたものがある(例えば、特許文献1)。この乗物用シートでは、乗員は好みのシート形状に応じて左右の側部を変更することができ、また破損した左右の側部を交換により補修することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の乗物用シートは、ボルト及びナットによって中央部に左右の側部を締結しているため、組み換え作業を容易に行うことができないという問題がある。また、左右の側部に電装品が組み込まれている場合には、電装品の配線の接続も行わなければならず、組み換え作業の負荷が更に大きくなる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、組み換えが容易な乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物用シート(1)であって、乗物のフロア(F)に設けられたフレーム(2)と、乗員を支持するべく、前記フレームに着脱可能に取り付けられる支持部材(3)と、前記フレーム及び前記支持部材に設けられ、互いに着脱可能に結合することによって前記フレームに対して前記支持部材を支持する連結装置(38)と、前記フレーム及び前記支持部材に設けられ、互いに着脱可能に接続することによって前記支持部材に設けられた電装品(47)と前記フレームに設けられた電装品(50)とを電気的又は光学的に接続する接続装置(39)とを有する。
【0007】
この構成によれば、フレームと支持部材とが着脱可能な連結装置及び接続装置によって互いに接続されるため、フレームに対する支持部材の着脱が容易になる。連結装置は、電気的又は光学的な接続を行うため、支持部材及びフレーム部材の電装品の接続が容易になる。
【0008】
また、上記の態様において、前記連結装置と前記接続装置とが一体に形成されたコネクタユニット(20)を有するとよい。
【0009】
この態様によれば、連結装置及び接続装置が一体に形成されるため、フレームと支持部材との接続箇所が削減され、フレームへの支持部材の着脱が容易になる。
【0010】
また、上記の態様において、前記連結装置は、互いに着脱可能に嵌合する第1筒(26)及び第2筒(35)を有し、前記接続装置は、前記第1筒及び第2筒の内側において互いに着脱可能に電気的又は光学的に接続するとよい。
【0011】
この態様によれば、接続装置は、連結装置の内側に配置されて保護されるため、接続装置の損傷が抑制される。
【0012】
また、上記の態様において、前記第1筒及び前記第2筒は液密に嵌合するとよい。
【0013】
この態様によれば、接続装置と液体との接触を避けることができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記第1筒及び前記第2筒の一方は、緩衝要素(25)を介して前記フレーム又は前記支持部材に結合されているとよい。
【0015】
この態様によれば、乗物から支持部材に伝達される振動を緩衝することができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記フレームに設けられた前記電装品は、前記接続装置を介して前記支持部材に設けられた前記電装品に電力を供給するとよい。
【0017】
この態様によれば、接続装置を介して支持部材に設けられた電装品への給電が可能になるため、支持部材に設けられた電装品に給電を行う電源線を別に設ける必要がなくなる。
【0018】
また、上記の態様において、前記フレームに設けられた前記電装品は、前記支持部材に設けられた前記電装品を制御する制御装置(50)を含み、前記制御装置に設けられた前記電装品と前記支持部材に設けられた前記電装品との信号伝達は前記接続装置を介して行われるとよい。
【0019】
この態様によれば、フレームに設けられた制御装置によって支持部材に設けられた電装品を制御することができ、制御装置と支持部材に設けられた電装品とは接続装置を介して接続することができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記支持部材に設けられた識別子(31)と、前記フレームに設けられ前記識別子を認識する認識装置(32)とを有し、前記制御装置は、前記認識装置が認識した前記識別子の情報に基づいて前記支持部材に設けられた前記電装品を制御するとよい。
【0021】
この態様によれば、制御装置は、識別子に基づいてフレームに接続された支持体や支持体に設けられた電装品の種類を認識し、電装品の種類に応じた制御を行うことができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記連結装置と前記接続装置とが一体に形成されたコネクタユニット(20)を有し、前記識別子及び前記認識装置は、前記コネクタユニットに設けられるとよい。
【0023】
この態様によれば、識別子及び認識装置がコネクタユニットに組み込まれているため、乗物用シートの構造が簡素になる。
【0024】
また、上記の態様において、前記支持部材は、互いに着脱可能な複数の分割体を有し、前記分割体のそれぞれには、互いに着脱可能に結合することによって前記分割体の1つに前記分割体の他の1つを支持すると共に、電気的又は光学的に接続する第2のコネクタユニット(74)を有するとよい。
【0025】
この態様によれば、分割体の着脱作業が容易になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、フレームと支持部材とが着脱可能な連結装置及び接続装置によって互いに接続されるため、フレームに対する支持部材の着脱が容易になる。連結装置は、電気的又は光学的な接続を行うため、支持部材及びフレーム部材の電装品の接続が容易になる。
【0027】
本発明の一態様において、連結装置と接続装置とが一体のコネクタユニットを形成する態様にすることによって、フレームと支持部材との接続箇所を削減することができ、フレームへの支持部材の着脱が容易になる。
【0028】
本発明の一態様において、連結装置が第1筒及び第2筒を有し、接続装置が第2筒の内側において接続する態様にすることによって、連結装置によって接続装置を保護することができる。
【0029】
本発明の一態様において、第1筒及び第2筒が液密に嵌合する態様にすることによって、接続装置と液体との接触を避けることができる。
【0030】
本発明の一態様において、第1筒及び第2筒の一方が緩衝要素を介してフレーム又は支持部材に結合する態様にすることによって、乗物から支持部材に伝達される振動を緩衝することができる。
【0031】
本発明の一態様において、フレームに設けられた電装品が接続装置を介して支持部材に設けられた電装品に電力を供給する態様にすることによって、支持部材に設けられた電装品に給電を行う電源線を別に設ける必要がなくなる。
【0032】
本発明の一態様において、フレームに設けられた電装品が支持部材に設けられた電装品を制御する制御装置を含む態様にすることによって、制御装置によって支持部材に設けられた電装品を制御することができる。また、制御装置と支持部材に設けられた電装品とは接続装置を介して接続することができる。
【0033】
本発明の一態様において、支持部材に識別子を設け、フレームに認識装置を設けた態様にすることによって、制御装置は識別子に基づいてフレームに接続された支持体や支持体に設けられた電装品の種類を認識し、電装品の種類に応じた制御を行うことができる。
【0034】
本発明の一態様において、識別子及び認識装置がコネクタユニットに組み込まれた態様にすることによって、乗物用シートの構造を簡素にすることができる。
【0035】
本発明の一態様において、支持部材を複数の分割体から構成し、分割体を第2のコネクタによって接続する態様にすることによって、分割体の着脱作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図3】2つの車両用シートを左右に連結した状態を示す斜視図
【
図6】第2実施形態に係るシートクッション及びフレームを示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の乗物用シートを自動車用のシートに適用した実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、乗物用シートに着座した乗員を基準にして前後左右を定める。
【0038】
図1及び
図2に示すように、シート1は、フロアFに設けられたフレーム2と、乗員を支持するためにフレーム2に取り付けられた支持部材3とを有する。支持部材3は、シートクッション5、シートバック6、及びヘッドレスト7を含む。シートクッション5は着座する乗員の臀部及び大腿部を下方から支持し、シートバック6はシートクッション5の後部上方に配置され、乗員の背部を後方から支持し、ヘッドレスト7はシートバック6の上方に配置され、乗員の頭部を後方から支持する。シートクッション5、シートバック6、及びヘッドレスト7は、フレーム2に結合されるサブフレーム5A、6A、7Aと、サブフレーム5A、6A、7Aに支持されたパッド部材5B、6B、7Bと、パッド部材5B、6B、7Bの表面に設けられた表皮材5C、6C、7Cとを有する。本実施形態では、サブフレーム5A、6A、7Aは、板状部材によって形成されている。
【0039】
フレーム2は、前後に延びるフレーム下部2Aと、フレーム下部2Aの後端から上方に延びるフレーム上部2Bとを有し、側面視で略L字状に形成されている。フレーム下部2A及びフレーム上部2Bは、内部空間2Cを形成する中空のパイプ状部材によって構成されている。フレーム下部2Aは、下面に突設された複数の脚部11においてフロアFに結合している。
図3に示すように、フレーム下部2Aの後端には、左右に貫通する連結孔12が形成されている。
図3に示すように、左右に隣り合うシート1は、横方向に延びてそれぞれの連結孔12に突入した連結部材13によって、互いに連結されている。連結部材13は、ブラケット等を介してフロアFに結合されてもよい。
【0040】
図2に示すように、シートクッション5、シートバック6、及びヘッドレスト7は、コネクタユニット20によってフレーム2に結合されている。コネクタユニット20は、フレーム2に対してシートクッション5、シートバック6、及びヘッドレスト7を含む支持部材3を機械的かつ電気的又は光学的に接続する。コネクタユニット20は、フレーム2に設けられたフレーム側コネクタ21と、支持部材3に設けられた支持部材側コネクタ22とを有する。
【0041】
図4に示すように、フレーム側コネクタ21は、フレーム2に結合された基部24と、基部24に緩衝要素25を介して支持された第1筒26とを有する。基部24は溶接やボルト締結等によってフレーム2に結合されている。第1筒26は、有底筒形の部材であり、フレーム2と相反する側に向けて開口している。
【0042】
緩衝要素25は、例えばゴム等の弾性体であってよい。他の実施形態では、緩衝要素25はエアダンパや電磁ダンパ、オイルダンパ等であってもよい。例えば、エアダンパは、外部からの圧縮空気の供給及び排出によって伸縮し、アクチュエータとして機能するエアチャンバを備えているとよい。エアチャンバは、乗物からの振動に応じて能動的に圧縮空気の供給及び排出を行ってエアチャンバを伸縮させ、振動を相殺するアクティブダンパ(アクティブサスペンション)を構成してもよい。オイルダンパは粘弾性可変ダンパであってよい。
【0043】
第1筒26の内部の底部には、電気的又は光学的な接続を可能にする第1接続部材28と、後述する識別子31を認識する認識装置32とが設けられている。第1接続部材28に接続された配線33と認識装置32に接続された配線34は一体に結束され、第1筒26の底部、緩衝要素25、及び基部24を貫通してフレーム2の内部に延びている。
【0044】
支持部材側コネクタ22は、サブフレーム5A、6A、7Aに結合された第2筒35を有する。第2筒35は、有底筒形の部材であり、サブフレーム5A、6A、7Aと相反する側に向けて開口している。
【0045】
第2筒35の内部には、電気的又は光学的な接続を可能にする第2接続部材36と、識別子31とが設けられている。第2接続部材36に接続された配線37は、第2筒35の底部及びサブフレーム5A、6A、7Aを貫通して、支持部材3(シートクッション5、シートバック6、ヘッドレスト7)の内部に延びている。
【0046】
本実施形態では、第1筒26の内側に第2筒35が嵌合する構成となっている。すなわち、第1筒26が外筒、第2筒35が内筒として機能する。他の実施形態では、第1筒26が内筒、第2筒35が外筒として機能してもよい。第2筒35の外面には第1筒26の外面に形成されたロック孔41に係合するロック爪42が回動可能に設けられており、ロック爪42がロック孔41に係合することによって、第1筒26及び第2筒35の相対変位が規制される。ロック爪42は捩りコイルばね等の付勢部材によってロック孔41に係合する方向に付勢されている。作業者はロック爪42を手動操作してロック孔41から離脱させることによって、互いに嵌合した第1筒26及び第2筒35を分離させることができる。他の実施形態では、第1筒26及び第2筒35を角筒形に構成し、互いに嵌合した状態で相対回転できないようにしてもよい。第1筒26及び第2筒35は、互いに着脱可能に結合することによってフレーム2に対して支持部材3を支持する連結装置38を構成する。第1筒26及び第2筒35を含む連結装置38は、フレーム2と支持部材3とを機械的に連結する構造体として機能する。
【0047】
第2筒35の外周面には周方向に延びる環状のシール部材45が保持されている。シール部材45は第2筒35の外周面と第1筒26の内周面との間の隙間を液密にシールする。
【0048】
第1筒26と第2筒35とが結合した状態において、第1接続部材28と第2接続部材36とは電気的又は光学的に接続する。第1接続部材28と第2接続部材36とは、例えば互いに当接することによって電気的に接続する端子や、互いに接続することによって光学的に接続する光ファイバコネクタ、非接触で電磁的に結合するコイル等であってよい。
図4は、電気的に接続する端子の例を示している。第1筒26と第2筒35とが結合した状態において、第1接続部材28と第2接続部材36とは第2筒35の内側に配置されている。
【0049】
第1筒26と第2筒35とが結合した状態において、認識装置32と識別子31とは第2筒35内において互いに対向した位置に配置され、認識装置32は識別子31を認識する。識別子31は例えばバーコード等の画像情報やICタグであり、認識装置32はバーコード等の画像情報を認識可能なカメラや、ICタグを読み取るICタグリーダーであってよい。識別子31は、支持部材3の大きさや形状等の情報や、支持部材3に設けられた電装品47の種類等の情報を含むとよい。
【0050】
図2に示すように、支持部材3のそれぞれは、複数のコネクタユニット20を介してフレーム2に結合されていることが好ましい。これにより、フレーム2に対する支持部材3の回転が規制される。本実施形態では、シートクッション5及びシートバック6は、3個のコネクタユニット20を介してフレーム2に結合されている。支持部材側コネクタ22は、サブフレーム5A、6A、7Aの左右方向における中央に設けられている。シートクッション5、シートバック6、及びヘッドレスト7に対して、フレーム2はこれらの左右方向における中央に配置される。
【0051】
図2及び
図5に示すように、フレーム2の内部空間2Cには、電装品である制御装置50が設けられている。制御装置50は、基板上にCPUやメモリ等が集積された電子制御装置であり、フレーム2の内面に固定されている。制御装置50は、電源ケーブル51を介して乗物に設けられた電源52に接続されている。電源ケーブル51は、フレーム2の内部空間2C及び脚部11内を通過して電源52に延びているとよい。また、制御装置50は、配線33、34によって第1接続部材28及び認識装置32に接続されている。また、緩衝要素25がエアダンパ等の制御可能な電装品である場合には、緩衝要素25に延びる配線も設けられているとよい。他の実施形態ではフレーム2を絶縁部材から形成し、フレーム2の内面に制御装置50のサーキットパターンを直接にプリントしてもよい。この場合、制御装置50とフレーム2を一体化することができ、部品点数の削減や軽量化が可能になる。
【0052】
支持部材3には、選択に応じて任意の電装品47が設けられていてもよい。電装品47は、例えば、伝熱線を含むヒータや、冷却風を送るファン、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ等の各種センサ、エアバッグ、信号を送信するスイッチを含む。電装品47は、サブフレーム5A、6A、7Aとパッドとの間や、パッドと表皮材5C、6C、7Cとの間に配置されているとよい。支持部材3に設けられた電装品47は配線37によって第2接続部材36に接続され、コネクタユニット20及び配線33を介して制御装置50に接続される。
【0053】
支持部材3は、形状や大きさ、パッド部材5B、6B、7Bの硬さ、表皮材5C、6C、7Cの材質、内蔵する電装品47が異なる様々なバリエーションが用意され、乗員はバリエーションから選択した1つをコネクタユニット20によってフレーム2に結合して使用することができる。例えば、シートクッション5、シートバック6、ヘッドレスト7は、成人男性、成人女性、児童、及び幼児等の標準体型に対応した大きさ及び形状の規格品が用意されているとよい。
【0054】
フレーム上部2Bの内部空間2Cにはエアバッグ装置60が収容されている。エアバッグ装置60は、折り畳まれたエアバッグと、衝突発生時にエアバッグにガスを供給するインフレータとを有する。フレーム上部2Bの後面には、展開するエアバッグが通過可能な貫通孔が形成されており、エアバッグはフレーム上部2Bの後方に向けて展開する。エアバッグ装置60は、エアバッグ装置60が設けられたシート1の後方に配置されたシートに着座した乗員とエアバッグ装置60が設けられたシート1との衝突を軽減する。エアバッグ装置60は、支持部材3に対して剛性が高いフレーム2に直接に設けられ、フレーム2に形成された貫通孔を通過するため、展開方向が安定する。貫通孔は、エアバッグの展開時にエアバッグに押されて外れる蓋が設けられているとよい。
【0055】
エアバッグ装置60のインフレータは、フレーム2の内部空間2Cを延びる配線63によって制御装置50に接続されている。制御装置50は、車両に設けられた衝突検知センサ65からの信号に基づいてインフレータを制御し、エアバッグを展開させる。衝突検知センサ65は例えば加速度センサであってよい。
【0056】
シートクッション5の左右側部、シートバック6の左右側部の少なくとも1つには、車両の衝突時に着座した乗員を乗物シートに対して適正な着座位置に移動させるための補正装置70が設けられている。適正な着座位置とは、乗員の臀部がシートクッション5の中央にあり、かつ乗員の背筋がシートバック6に沿って上下に配置された位置をいう。補正装置70は、乗員の臀部がシートクッション5の中央に対してずれた状態や、背筋が側方に傾いた状態等から適正位置に移動させる。補正装置70は、例えばシートクッション5及びシートバック6の外面に膨出するエアバッグであり、膨出したエアバッグによって乗員を押し、乗員を適正な着座位置に移動させる。また、補正装置70は、例えばパッドの両側部に設けられたサイドサポートとサブフレーム5A、6A、7Aとの間に設けられたアクチュエータであり、サイドサポートを外面側に突出させることによってサイドサポートで乗員を押し、乗員を適正な着座位置に移動させる。アクチュエータは例えばエアシリンダ等であってよい。補正装置70は、上述した電装品47に含まれる。補正装置70は、配線37によって第2接続部材36に接続され、コネクタユニット20を介して制御装置50に接続されている。制御装置50は、衝突検知センサ65からの信号に基づいて補正装置70を制御する。
【0057】
以上の構成によれば、フレーム2に対して支持部材3(シートクッション5、シートバック6、ヘッドレスト7)が着脱可能に取り付けられたシート1を提供することができる。パッド部材5B、6B、7Bの形状や大きさ、硬さ、表皮材5C、6C、7Cの材質、内蔵された電装品47が異なる様々な支持部材3を用意することによって、乗員は自身の選択に応じて任意の組合せでシート1を組み立てることができる。
【0058】
コネクタユニット20は、フレーム2に支持部材3を機械的に連結して支持すると共に、支持部材3に設けられた電装品47とフレーム2に設けられた制御装置50とを電気的に接続する。そのため、フレーム2と支持部材3との接続箇所を削減することができ、フレーム2に対する支持部材3の着脱作業が容易になる。
【0059】
コネクタユニット20では、第1接続部材28及び第2接続部材36が第2筒35の内側に配置されるため、第1筒26及び第2筒35によって保護され、損傷が抑制される。また、シール部材45によって第1筒26及び第2筒の隙間が液密にシールされるため、第1接続部材28及び第2接続部材36と水との接触を避けることができる。
【0060】
制御装置50は、認識装置32で識別子31を認識し、支持部材3の形や大きさ等に関する情報や支持部材3に設けられた電装品47の種類に関する情報を取得することができる。これにより、制御装置50は、取得した情報に基づいて支持部材3に設けられた電装品47を制御することができる。
【0061】
フレーム2に設けられた制御装置50と、支持部材3に設けられた電装品47とは、コネクタユニット20を介して接続され、信号伝達や電力の供給が可能である。
【0062】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態に係るシートクッション5、シートバック6、及びヘッドレスト7の支持部材3は、複数の分割体を組み合わせて形成されてもよい。例えば
図6に示すように、シートクッション5は、幅方向において中央部71と、左右の側部72との3つの分割された部分から構成される。中央部71及び左右の側部72のそれぞれはサブフレーム5A、6A、7A、パッド部材5B、6B、7B、及び表皮材5C、6C、7Cを備えているとよい。シートクッション5の中央部71は、コネクタユニット20を介してフレーム2に着脱可能に結合されている。左右の側部72のそれぞれは、第2コネクタユニット74を介して中央部71に着脱可能に結合されている。第2コネクタユニット74は、中央部71と左右の側部72とを機械的に結合すると共に、電気的又は光学的に結合する。第2コネクタユニット74の構成は、コネクタユニット20と同様であってよい。中央部71及び左右の側部72のそれぞれには、電装品47が設けられてもよい。左右の側部72に設けられた電装品47は、第2コネクタユニット74、中央部71、コネクタユニット20を介してフレーム2に設けられた制御装置50に接続されるとよい。
【0063】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。コネクタユニット20の第1筒26と基部24とはヒンジやボールジョイント等を介して接続されてもよい。この場合、第1筒26と基部24とを初期位置に付勢する付勢部材を有するとよい。この構成では、コネクタユニット20を介してフレーム2に結合された支持部材3は、フレーム2に対して微少量回動することができ、回動することによって振動を緩衝することができる。
【0064】
他の実施形態では連結装置38と接続装置とが互いに独立したコネクタを形成し、それぞれのコネクタがフレーム2と支持部材3とを接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :シート
2 :フレーム
3 :支持部材
5 :シートクッション
6 :シートバック
7 :ヘッドレスト
20 :コネクタユニット
21 :フレーム側コネクタ
22 :支持部材側コネクタ
24 :基部
25 :緩衝要素
26 :第1筒
28 :第1接続部材
31 :識別子
32 :認識装置
35 :第2筒
36 :第2接続部材
38 :連結装置
39 :接続装置
45 :シール部材
47 :電装品
50 :制御装置
74 :第2コネクタユニット
F :フロア