(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】合金
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230524BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20230524BHJP
C21D 8/10 20060101ALN20230524BHJP
C21D 8/02 20060101ALN20230524BHJP
C21D 8/06 20060101ALN20230524BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20230524BHJP
【FI】
C22C38/00 302R
C22C38/60
C21D8/10 D
C21D8/02 D
C21D8/06 B
C21D9/46 P
(21)【出願番号】P 2021567706
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048927
(87)【国際公開番号】W WO2021132634
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019238842
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 貴代子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 俊一
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-195160(JP,A)
【文献】特開昭63-014842(JP,A)
【文献】特開平09-263891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/60
C21D 8/10
C21D 8/02
C21D 8/06
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成が、質量%で、
C:0.10%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.15~0.60%、
P:0.015%以下、
S:0.0030%以下、
Ni:30.0~40.0%、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.50%以下、
Co:0.250%以下、
Al:0.0150%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0300%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.0300%以下、
Pb:0.0040%以下、
Zn:0.020%以下、
Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計:0.015~0.145%未満、
Cu:0~0.300%、
Sn:0~0.100%、
W:0~0.200%、及び、
B:0~0.0040%、を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
式(1)を満たす、合金。
(Nb+3×Ti+V)/(C+N)≦
5.20 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、合金の化学組成中の各元素の含有量が質量%で代入される。
【請求項2】
請求項1に記載の合金であって、
前記化学組成は、
Cu:0~0.300%、Sn:0~0.100%、及び、W:0~0.200%からなる群から選択される1種以上を合計で0.020%以上含有する、
合金。
【請求項3】
前記合金は、管材、板材、及び棒材のいずれかである、
請求項1又は請求項2に記載の合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合金に関し、さらに詳しくは、熱膨張係数の低い合金に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)のような低温物質の輸送用配管や貯蔵用タンクの材料として、低温でも脆化しにくいオーステナイト系ステンレス鋼材が利用されている。
【0003】
低温物質の輸送用配管や貯蔵用タンクでは、低温物質が流れている場合、及び、低温物質を貯蔵している場合には温度が低下し、低温物質が流れていない場合、及び、低温物質を貯蔵していない場合には温度が上昇する。上述のオーステナイト系ステンレス鋼材の熱膨張係数は高い。そのため、低温物質の輸送用配管や貯蔵用タンクでは、温度変化に伴う熱膨張及び熱収縮が生じる。そこで、このような熱膨張及び熱収縮を吸収する機構として、低温物質の輸送用配管では、所定の長さ毎に、ループ配管を配置する。ループ配管は、熱膨張及び熱収縮による輸送用配管の変形を吸収する。しかしながら、ループ配管により配管の総長さは長くなり、製造コストが高くなる。そこで、低温物質の輸送用配管や貯蔵用タンクの材料として、オーステナイト系ステンレス鋼材よりも熱膨張係数の低い合金が求められている。
【0004】
熱膨張係数の小さい合金として、インバー合金が知られている。インバー合金は、自発体積磁歪(インバー効果)により、温度変化に対して、低い熱膨張係数を維持できる。そのため、熱の影響を受けても寸法が変化しにくい。インバー合金の熱膨張係数は、オーステナイト系ステンレス鋼材の熱膨張係数よりもはるかに小さい。そのため、低温物質の輸送用配管や貯蔵用タンク用途の材料として、インバー合金を用いれば、熱膨張及び熱収縮による輸送用配管や貯蔵用タンクの変形が抑えられる。
【0005】
LNGに代表される低温物質の輸送用配管及び貯蔵用タンクに用いられるインバー合金が特表2017-512899号公報(特許文献1)に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示された合金は、35wt%≦Ni≦37wt%、Mn≦0.6wt%、C≦0.07wt%、Si≦0.35wt%、Cr≦0.5wt%、Co≦0.5wt%、P≦0.01wt%、Mo<0.5wt%、S≦0.0035wt%、O≦0.0025wt%、0.011wt%≦[(3.138×Al+6×Mg+13.418×Ca)-(3.509×O+1.770×S)]≦0.038wt%、0.0003wt%<Ca≦0.0015wt%、0.0005wt%<Mg≦0.0035wt%、0.0020wt%<Al≦0.0085wt%を含み、残部が鉄及び精錬から生じた残留元素であることを特徴とする。この文献に開示された合金は、液化ガスを受けるためのタンク又は配管に使用される、と特許文献1には記載されている。
【0007】
ところで、インバー合金は、低い熱膨張係数を有するものの、強度が低い。低い熱膨張係数を有する合金の強度が高ければ、輸送用配管の薄肉化が可能となり、輸送用配管及び貯蔵用タンクの構造安定性も高まる。そのため、高強度を有するインバー合金が求められている。
【0008】
インバー合金の強度を高める技術がたとえば、特開平10-017997号公報(特許文献2)及び特開平10-195531号公報(特許文献3)に開示されている。
【0009】
特許文献2に開示されたインバー合金は、重量割合にて、C:0.015~0.10%、Si:0.35%以下、Mn:1.0%以下、P:0.015%以下、S:0.0010%以下、Cr:0.3%以下、Ni:35~37%、Mo:0~0.5%、V:0~0.05%、Al:0.01%以下、Nb:0.15%以上1.0%未満、Ti:0.003%以下、N:0.005%以下を含有すると共に残部がFe及び不可避的不純物より成ることを特徴とする。これにより、熱間加工性に優れた高強度のインバー合金が得られる、と特許文献2に記載されている。
【0010】
特許文献3に開示されたアンバー合金の製造方法は、重量%で、Ni:30~45%と、C:0.001~0.04%とを含むFe-Ni系アンバー合金を製造する方法において、合金を900~1150℃に加熱し、下記(1)式で表されるTR℃以下の温度で、累積圧下率5%以上の熱間圧延を行うことを特徴とする。これにより、強度及び靱性に優れたアンバー合金が得られる、と特許文献3に記載されている。
TR(℃)=2,500×C%+750・・・(1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2017-512899号公報
【文献】特開平10-017997号公報
【文献】特開平10-195531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献2及び特許文献3に開示された技術により、インバー合金の強度を高めることができる。しかしながら、従前の技術では、インバー合金の強度を高めることはできるものの、熱膨張係数が増加する場合があった。そのため、十分に高い強度を有しつつ、熱膨張係数も十分に低い合金が求められている。
【0013】
本開示の目的は、高強度を有し、低い熱膨張係数を有する合金を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示による合金は、
化学組成が、質量%で、
C:0.10%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.15~0.60%、
P:0.015%以下、
S:0.0030%以下、
Ni:30.0~40.0%、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.50%以下、
Co:0.250%以下、
Al:0.0150%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0300%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.0300%以下、
Pb:0.0040%以下、
Zn:0.020%以下、
Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計:0.015~0.145%未満、
Cu:0~0.300%、
Sn:0~0.100%、
W:0~0.200%、及び、
B:0~0.0040%、を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
式(1)を満たす。
(Nb+3×Ti+V)/(C+N)≦6.00 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、合金の化学組成中の各元素の含有量が質量%で代入される。
【発明の効果】
【0015】
本開示による合金は、高強度を有し、低い熱膨張係数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、試験番号4の合金の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図2】
図2は、式(1)と熱膨張係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、高強度を有し、低い熱膨張係数が得られる合金について、調査及び検討を行った。
【0018】
Ni含有量が30.0~40.0質量%のNi-Fe系合金であれば、インバー効果により合金の熱膨張係数が低くなることが知られている。このようなNi-Fe系合金はそもそも、熱膨張係数が低いという基本性能を要求される。そのため、Ni含有量が30.0~40.0質量%のNi-Fe系合金においては、高強度化を検討する場合であっても、熱膨張係数の増大を抑制しつつ、高強度化することが求められてきた。
【0019】
合金を高強度化する方法の1つに、析出強化がある。析出強化では、炭化物、窒化物及び/又は炭窒化物を析出させて合金を強化する。しかしながら、合金中に炭化物や窒化物等の析出物が生成した場合、析出物が熱膨張することにより、合金の熱膨張係数が増大してしまう。Ni含有量が30.0~40.0質量%のNi-Fe系合金においては、熱膨張係数を抑制しつつ、高強度化することが検討されてきたため、析出強化による高強度化は避けられてきた。そこで、従前では、析出強化に代えて、固溶強化、結晶粒径の細粒化、又は、冷間加工により、合金の強度を高めることが試みられてきた。
【0020】
たとえば、上述の特許文献2では、合金に、合金元素としてNbを0.15%以上を含有することで強度を高めている(特許文献2の段落[0012]及び[0023])。特許文献2の実施例では、合金中のC含有量を低く抑えている。したがって、特許文献2では、多量のNbを固溶させ、固溶強化により合金の強度を高めている。また、特許文献3では、圧延条件を調整することにより合金の残留歪を調整して、合金の強度を高めている(特許文献3の段落[0011])。つまり、特許文献2及び特許文献3では、析出強化以外の方法で合金が高強度化されている。
【0021】
上述のとおり、熱膨張係数の増大を抑制しつつ、高強度化する場合、従前は、析出強化による高強度化は避けられてきた。また、Nbを使った強化では、0.15%以上のNbを含有しさらにC含有量を低下させて炭化物の生成を抑制し、Nbを固溶させることで固溶強化する技術が提案されている。この技術では、析出物が熱膨張することによって、合金の熱膨張係数が増大するのを回避することを試みている。
【0022】
Ni含有量が30.0~40.0質量%のNi-Fe系合金においては、Nbを用いて強化する場合、析出強化ではなく、固溶Nbによる固溶強化が行われてきたことは、上述のとおりである。しかしながら本発明者らの検討の結果、多量の固溶Nbはむしろ、熱膨張係数に影響を与える可能性があることが分かった。
【0023】
そこで、本発明者らは、固溶Nb量を低減しても、低い熱膨張係数と高強度とを両立できる合金について検討を行った。
図1Aは、後述する実施例における、試験番号4の合金(本発明例)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
図1Bは、
図1AのTEM写真の模式図である。
図1(
図1A及び
図1B)中、矢印で示した黒点部分の成分を分析したところ、Cを除く組成でNbを86.3%含む析出物であることが分かった。つまり、
図1のTEM写真中の黒点は、Nbを含む析出物(炭窒化物)である。
図1のTEM写真に示すとおり、試験番号4の合金には、ナノサイズの微細な炭窒化物が析出している。従前の検討によれば、炭窒化物は合金の熱膨張係数を増加させる。しかしながら、予想に反して、後述する実施例に記載のとおり、試験番号4の合金の熱膨張係数は低かった。
【0024】
本発明者らはこの結果を詳細に検討し、従来の知見とは異なる知見を得た。本発明者らは、ナノサイズの微細炭窒化物(以下、単にナノ炭窒化物とも称する)を析出させることにより、強度を高めつつ、さらに低い熱膨張係数を得られると考えた。ナノ炭窒化物は転位を固着する。そのため、合金を強化できる。ナノ炭窒化物はさらに、体積が非常に小さいため、温度変化に対する体積膨脹が小さい。そのため、本発明者らは、固溶Nbによる固溶強化ではなく、ナノ炭窒化物の析出強化によりNi-Fe系合金を高強度化すれば良いと考えた。これにより、固溶Nb量を低減でき、熱膨張係数をさらに低下できると考えられる。なお、本明細書において「炭窒化物」とは、炭化物、窒化物及び/又は炭窒化物を含む。
【0025】
本発明者らは、合金の低い熱膨張係数と高強度とを両立できる、ナノ炭窒化物の大きさや個数密度を特定しようと検討した。しかしながら、
図1に示すとおり、ナノ炭窒化物は非常に小さく、適切な大きさや個数密度の正確な特定を行うことは困難であった。そこで本発明者らは、このようなナノ炭窒化物を微細分散できるNi-Fe系合金の化学組成について検討を行った。本発明者らは、炭窒化物を形成するNb、Ti及びVの1種以上を含有し、かつ、C含有量及びN含有量を高めた化学組成であれば、ナノ炭窒化物を析出できるのではないかと考えた。具体的には、質量%で、C:0.10%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.15~0.60%、P:0.015%以下、S:0.0030%以下、Ni:30.0~40.0%、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Co:0.250%以下、Al:0.0150%以下、Ca:0.0050以下、Mg:0.0300%以下、N:0.0100%以下、O:0.0300%以下、Pb:0.0040%以下、Zn:0.020%以下、Cu:0~0.300%、Sn:0~0.100%、W:0~0.200%、及び、B:0~0.0040%を含有し、残部はFe及び不純物からなる合金において、Feの一部に代えて、Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上を合計で0.015~0.145%未満含有する合金であれば、ナノ炭窒化物を析出でき、その結果、強度を高めつつ、熱膨張係数をさらに小さくできる可能性があると考えた。
【0026】
しかしながら、上記の化学組成を有するだけの合金では、強度を高めることはできても、熱膨張係数をさらに小さくすることはできなかった。本発明者らは、その原因を詳細に調査した。その結果、上記の化学組成を有するだけでは、炭窒化物が過剰に析出する場合があることが分かった。そこで本発明者らは、ナノ炭窒化物を適切な量で析出できる合金についてさらに検討を行った。その結果、次の知見を得た。
【0027】
図2は、式(1)と熱膨張係数との関係を示す図である。
図2は後述する実施例のうち、化学組成中の各元素含有量が上述の範囲内である合金における、式(1)と熱膨張係数との関係を示している。
図2の横軸は、Fn1=(Nb+3×Ti+V)/(C+N)の値を示す。ここで、各元素記号には、合金の化学組成中の各元素の含有量が質量%で代入される。
図2の縦軸は、合金の熱膨張係数である。合金の熱膨張係数は、後述する測定方法により測定した。
【0028】
図2を参照して、Fn1が6.00以下であれば、合金の熱膨張係数が著しく低下する。式(1)は、ナノ炭窒化物を形成するNb、Ti及びVと、C及びNとの含有量の関係を規定する式である。Nb、Ti及びVの合計含有量を0.145%未満に制限し、かつ、Fn1が6.00以下であれば、ナノ炭窒化物を微細分散させつつ、過剰なナノ炭窒化物の析出を抑制できる。このため、強度を高めつつ、合金の熱膨脹係数をさらに低下できる。
【0029】
以上をまとめると、次のとおりである。合金に、Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上を合計で0.015%以上含有させる。これにより、Nb、Ti及び/又はVのナノ炭窒化物を分散させる。ナノ炭窒化物は転位を固着する。これにより、合金の強度が高まる。一方で、Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計量を0.015~0.145%未満に制限する。さらに、Nb含有量、Ti含有量及びV含有量と、C含有量及びN含有量とが式(1)を満たすよう調整する。これにより、Nb、Ti及び/又はVのナノ炭窒化物の過剰な析出を抑制する。Nb、Ti及び/又はVのナノ炭窒化物は非常に小さいため、ナノ炭窒化物が熱膨張しても体積変化が極めて小さい。そのため、合金の熱膨張係数を低く維持しつつ、高い強度を得る事ができる。なお、式(1)は次に示すとおりである。
(Nb+3×Ti+V)/(C+N)≦6.00 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、合金の化学組成中の各元素の含有量が質量%で代入される。
【0030】
以上のとおり、本実施形態による合金は、従前の技術とは全く異なる思想に基づいて完成した。本実施形態による合金は次の構成を有する。
【0031】
[1]
化学組成が、質量%で、
C:0.10%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.15~0.60%、
P:0.015%以下、
S:0.0030%以下、
Ni:30.0~40.0%、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.50%以下、
Co:0.250%以下、
Al:0.0150%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0300%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.0300%以下、
Pb:0.0040%以下、
Zn:0.020%以下、
Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計:0.015~0.145%未満、
Cu:0~0.300%、
Sn:0~0.100%、
W:0~0.200%、及び、
B:0~0.0040%、を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
式(1)を満たす、合金。
(Nb+3×Ti+V)/(C+N)≦6.00 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、合金の化学組成中の各元素の含有量が質量%で代入される。
【0032】
[1]の合金は、高強度を有し、さらに低い熱膨張係数を有する。
【0033】
[2]
[1]に記載の合金であって、
前記化学組成は、
Cu:0~0.300%、Sn:0~0.100%、及び、W:0~0.200%からなる群から選択される1種以上を合計で0.020%以上含有する、
合金。
【0034】
[2]の合金は、高強度と、低い熱膨張係数とを有し、さらに、優れた耐食性を有する。
【0035】
[3]
前記合金は、管材、板材、及び棒材のいずれかである、
[1]又は[2]に記載の合金。
【0036】
以下、本実施形態の合金について詳しく説明する。以下、化学組成における「%」は特に断りがない限り、質量%を意味する。
【0037】
[化学組成]
本実施形態の合金の化学組成は、次の元素を含有する。
【0038】
C:0.10%以下
炭素(C)は不可避に含有される。つまり、C含有量は0%超である。Cは、製鋼工程において、合金を脱酸する。Cはさらに、合金の強度を高める。Cが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、C含有量が0.10%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の耐食性が低下する。したがって、C含有量は0.10%以下である。C含有量の好ましい上限は0.09%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.06%であり、さらに好ましくは0.05%である。C含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。
【0039】
Si:0.50%以下
シリコン(Si)は不可避に含有される。つまり、Si含有量は0%超である。Siは製鋼工程において、合金を脱酸する。Siが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Si含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の自発体積磁歪が減少し、合金の熱膨張係数が高まる。Si含有量が0.50%を超えればさらに、合金の熱間加工性が低下する。Si含有量が0.50%を超えればさらに、介在物が過剰に多く生成して合金の耐食性が低下する。したがって、Si含有量は0.50%以下である。Si含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。Si含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%である。
【0040】
Mn:0.15~0.60%
マンガン(Mn)は、製鋼工程において、合金を脱酸する。Mnはさらに、硫黄(S)と結合してMnSを形成し、合金の熱間加工性を高める。Mn含有量が0.15%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が0.60%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Mn含有量は0.15~0.60%である。Mn含有量の好ましい下限は0.16%であり、さらに好ましくは0.17%であり、さらに好ましくは0.19%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.21%である。Mn含有量の好ましい上限は0.55%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.45%である。
【0041】
P:0.015%以下
燐(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは合金の溶接性及び熱間加工性を低下する。P含有量が0.015%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の溶接性及び熱間加工性が顕著に低下する。したがって、P含有量は0.015%以下である。P含有量の好ましい上限は0.012%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.008%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。
【0042】
S:0.0030%以下
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは合金の溶接性及び熱間加工性を低下する。S含有量が0.0030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の溶接性及び熱間加工性が顕著に低下する。したがって、S含有量は0.0030%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.0010%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。
【0043】
Ni:30.0~40.0%
ニッケル(Ni)は、合金の自発体積磁歪を高め、その結果、合金の熱膨張係数を低下する。Niはさらに、合金の耐食性を高める。Ni含有量が30.0%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が40.0%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱膨張係数がかえって増大する。したがって、Ni含有量は30.0~40.0%である。Ni含有量の好ましい下限は31.0%であり、さらに好ましくは32.0%であり、さらに好ましくは33.0%であり、さらに好ましくは34.0%である。Ni含有量の好ましい上限は39.0%であり、さらに好ましくは38.0%であり、さらに好ましくは37.0%である。
【0044】
Cr:0.50%以下
クロム(Cr)は不可避に含有される。つまり、Cr含有量は0%超である。Crは合金の耐食性を高める。Crが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Cr含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は0.50%以下である。Cr含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cr含有量の好ましい下限は0.01%である。
【0045】
Mo:0.50%以下
モリブデン(Mo)は不可避に含有される。つまり、Mo含有量は0%超である。Moは合金の強度を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mo含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0.50%以下である。Mo含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.10%である。Mo含有量の好ましい下限は0.01%である。
【0046】
Co:0.250%以下
コバルト(Co)は不可避に含有される。つまり、Co含有量は0%超である。Coは、Niと同様に、合金の強度を高める。Coが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Co含有量が0.250%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱膨張係数がかえって高まってしまう。したがって、Co含有量は0.250%以下である。Co含有量の好ましい上限は0.200%であり、さらに好ましくは0.150%であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.080%である。Co含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。
【0047】
Al:0.0150%以下
アルミニウム(Al)は不可避に含有される。つまり、Al含有量は0%超である。Alは合金を脱酸する。Alが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Al含有量が0.0150%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Al含有量は0.0150%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.0120%であり、さらに好ましくは0.0100%であり、さらに好ましくは0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0035%未満である。Al含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0012%である。本実施形態において、Al含有量とは、全Al(Total-Al)の含有量である。
【0048】
Ca:0.0050%以下
カルシウム(Ca)は不可避に含有される。つまり、Ca含有量は0%超である。CaはMnSを微細化して、合金の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な介在物が過剰に多く生成して、合金の熱間加工性を低下する。したがって、Ca含有量は0.0050%以下である。Ca含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0020%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
【0049】
Mg:0.0300%以下
マグネシウム(Mg)は不可避に含有される。つまり、Mg含有量は0%超である。MgはCaと同様に、MnSを微細化して、合金の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が0.0300%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な介在物が過剰に多く生成して、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Mg含有量は0.0300%以下である。Mg含有量の好ましい上限は0.0200%であり、さらに好ましくは0.0100%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Mg含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。
【0050】
N:0.0100%以下
窒素(N)は不可避に含有される不純物である。つまり、N含有量は0%超である。Nは、合金の熱間加工性を低下する。N含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、窒化物を過剰に多く形成して、合金の熱膨張係数が増大し、かつ、合金の耐食性が低下する。したがって、N含有量は0.0100%以下である。N含有量の好ましい上限は0.0095%であり、さらに好ましくは0.0090%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Nの過剰な低減は製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮した場合、N含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
【0051】
O:0.0300%以下
酸素(O)は不可避に含有される不純物である。つまり、O含有量は0%超である。Oは粗大な介在物を生成し、合金の熱間加工性を低下する。O含有量が0.0300%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が顕著に低下する。したがって、O含有量は0.0300%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0200%であり、さらに好ましくは0.0180%であり、さらに好ましくは0.0150%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、O含有量の過剰な低減は、製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮した場合、O含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
【0052】
Pb:0.0040%以下
鉛(Pb)は不可避に含有される不純物である。つまり、Pb含有量は0%超である。Pbは低融点の金属であり、合金の熱間加工性を低下する。Pb含有量が0.0040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が顕著に低下する。したがって、Pb含有量は0.0040%以下である。Pb含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Pb含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Pb含有量の過剰な低減は製造コストを高くする。したがって、工業生産を考慮した場合、Pb含有量の好ましい下限は0.0001%である。
【0053】
Zn:0.020%以下
亜鉛(Zn)は不可避に含有される不純物である。つまり、Zn含有量は0%超である。Znは低融点の金属であり、合金の熱間加工性を低下する。Zn含有量が0.020%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が顕著に低下する。したがって、Zn含有量は0.020%以下である。Zn含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.016%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.010%である。Zn含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Zn含有量の過剰な低減は製造コストを高くする。したがって、工業生産を考慮した場合、Zn含有量の好ましい下限は0.001%である。
【0054】
Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計:0.015~0.145%未満
ニオブ(Nb)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)はいずれも、合金の強度を高める。合金の化学組成中の各元素の含有量が上述の範囲内であり、かつ、後述する式(1)を満たす場合、Nb、Ti及びVはいずれも、ナノレベルの炭窒化物を形成し、ナノレベルの炭窒化物の微細分散析出により、合金の強度を高める。Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計含有量が0.015%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計含有量が0.145%以上であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、ナノレベルの炭窒化物が過剰に生成する。この場合、合金の熱膨張係数が高まり、かつ、合金の耐食性が低下する。したがって、Nb:0~0.145%未満、Ti:0~0.145%未満、及び、V:0~0.145%未満からなる群から選択される1種以上の合計含有量は0.015~0.145%未満である。Nb、Ti及びVの合計含有量の好ましい下限は0.016%であり、さらに好ましくは0.017%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.030%である。Nb、Ti及びVの合計含有量の好ましい上限は0.140%であり、さらに好ましくは0.135%であり、さらに好ましくは0.120%である。
【0055】
本実施形態の合金の化学組成の残部はFe及び不純物である。ここで、不純物とは、合金を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の合金に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0056】
[任意元素について]
[任意元素第1群(Cu、Sn、W)]
本実施形態の低熱膨張合金の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Sn、及び、Wからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、合金の耐食性を高める。
【0057】
Cu:0~0.300%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。Cuが含有される場合、つまり、Cu含有量が0%超である場合、Cuは、合金の耐食性を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が0.300%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0~0.300%である。Cu含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Cu含有量の好ましい上限は0.250%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.150%であり、さらに好ましくは0.120%であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.070%である。
【0058】
Sn:0~0.100%
錫(Sn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Sn含有量は0%であってもよい。Snが含有される場合、つまり、Sn含有量が0%超である場合、Snは、合金の耐食性を高める。Snが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Sn含有量が0.100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Sn含有量は0~0.100%である。Sn含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。Sn含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.020%である。
【0059】
W:0~0.200%
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、W含有量は0%であってもよい。Wが含有される場合、つまり、W含有量が0%超である場合、Wは、合金の耐食性を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が0.200%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性が低下する。したがって、W含有量は0~0.200%である。W含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。W含有量の好ましい上限は0.150%であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.020%である。
【0060】
[好ましいCu、Sn及びWの合計含有量]
好ましくは、本実施形態の合金の化学組成では、Cu:0~0.300%、Sn:0~0.100%、及び、W:0~0.200%からなる群から選択される1種以上を合計で0.020%以上含有する。
【0061】
Cu、Sn及びWはいずれも、合金の耐食性を高める。Cu:0~0.300%、Sn:0~0.100%、及び、W:0~0.200%からなる群から選択される1種以上の合計含有量が0.020%以上であれば、合金の耐食性が顕著に高まる。Cu、Sn及びWの合計含有量の好ましい下限は0.025%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.040%である。Cu、Sn及びWの合計含有量の好ましい上限は0.600であり、さらに好ましくは0.300%であり、さらに好ましくは0.250%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.180%である。
【0062】
[任意元素第2群(B)]
本実施形態の低熱膨張合金の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Bを含有してもよい。
【0063】
B:0~0.0040%
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、つまり、B含有量が0%超である場合、Bは合金の熱間加工性を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が0.0040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、合金の熱間加工性がかえって低下する。したがって、B含有量は0~0.0040%である。B含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0008%であり、さらに好ましくは0.0012%である。B含有量の好ましい上限は0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030である。
【0064】
[式(1)について]
本実施形態の合金の化学組成は、式(1)を満たす。
(Nb+3×Ti+V)/(C+N)≦6.00 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、合金の化学組成中の各元素の含有量が質量%で代入される。
【0065】
Fn1=(Nb+3×Ti+V)/(C+N)と定義する。本実施形態の合金では、化学組成が、上述の各元素の含有量を満たし、かつ、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.015~0.145%未満であることを前提として、Fn1が6.00以下であれば、合金中において、ナノ炭窒化物が適切な量で微細分散する。そのため、高強度が得られ、かつ、熱膨張係数も低く維持することができる。一方、化学組成が上述の各元素の含有量を満たし、かつ、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.015~0.145%未満であっても、Fn1が6.00を超えれば、ナノ炭窒化物が過剰に多く析出する。この場合、合金の強度を高めることはできても、合金の熱膨張係数が高くなってしまう。したがって、Fn1は6.00以下である。Fn1の上限は好ましくは5.20、さらに好ましくは4.20、さらに好ましくは3.20である。Fn1の下限は特に限定されないが、たとえば0.13である。
【0066】
[合金の形状について]
本実施形態の合金の形状は特に限定されない。合金の形状はたとえば、管材、板材、及び棒材である。合金は、LNGに代表される低温物質の輸送用配管、及び、低温物質の貯蔵用タンクの素材として使用される。具体的には、合金管、合金板、合金棒は、低温物質の輸送用配管及び低温物質の貯蔵用タンクに、溶接等により組み込まれる素材として使用される。
【0067】
以上の構成を有する本実施形態の合金は、化学組成中の各元素含有量が上述の範囲内であり、かつ、Nb、Ti、及び、Vからなる群から選択される1種以上の合計含有量が0.015~0.145%未満であり、かつ、式(1)を満たす。そのため、本実施形態の合金は、十分に低い熱膨張係数と高い強度とを両立できる。好ましくは、本実施形態の合金はさらに、Cu、Sn及びWからなる群から選択される1種以上の合計含有量が0.020%以上である。この場合、本実施形態の合金は、低い熱膨張係数と、高い強度とを有し、さらに、優れた耐食性を有する。
【0068】
[製造方法]
本実施形態の合金の製造方法の一例を以下に説明する。なお、本実施形態の合金は、以下の製造方法に限定されない。以下に説明する製造方法は、本実施形態の合金の製造方法の好ましい一例である。
【0069】
本実施形態の合金の製造方法は、一例として、素材準備工程と、熱間加工工程と、必要に応じて実施される(つまり任意の工程である)冷間加工工程と、必要に応じて実施される(つまり任意の工程である)熱処理工程とを備える。以下、各工程について説明する。
【0070】
[素材準備工程]
素材準備工程では、上述の化学組成を有する素材を準備する。素材は第三者から供給されてもよいし、製造してもよい。素材はインゴットであってもよいし、スラブ、ブルーム、ビレットであってもよい。素材を製造する場合、次の方法により、素材を製造する。上述の化学組成を有する溶融合金を製造する。製造された溶融合金を用いて、造塊法によりインゴットを製造する。製造された溶融合金を用いて、連続鋳造法によりスラブ、ブルーム、ビレット(円柱素材)を製造してもよい。製造されたインゴット、スラブ、ブルームに対して熱間加工を実施して、ビレットを製造してもよい。たとえば、インゴットに対して熱間鍛造を実施して、円柱状のビレットを製造し、このビレットを素材(円柱素材)としてもよい。この場合、熱間鍛造開始直前の素材の温度は特に限定されないが、たとえば、900~1300℃である。熱間鍛造後の素材の冷却方法は特に限定されない。
【0071】
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、素材準備工程において準備された素材に対して熱間加工を実施して、中間材を製造する。中間材はたとえば管材であってもよいし、板材であってもよいし、棒材であってもよい。
【0072】
中間材が管材(合金管)である場合、熱間加工工程では、次の加工を実施する。初めに、円柱素材を準備する。機械加工により、円柱素材の中心軸に沿った貫通孔を形成する。貫通孔が形成された円柱素材に対して、ユジーンセジュルネ法に代表される熱間押出を実施して、中間材(合金管)を製造する。熱間押出直前の素材の温度は特に限定されない。熱間押出直前の素材の温度はたとえば、900~1300℃である。熱間押出法に代えて、熱間押抜き製管法を実施してもよい。
【0073】
熱間押出に代えて、マンネスマン法による穿孔圧延を実施して、合金管を製造してもよい。この場合、穿孔機により円柱素材を穿孔圧延する。穿孔圧延された丸ビレットをさらに、マンドレルミル、レデューサ、サイジングミル等により熱間圧延して中間材(合金管)を製造する。熱間加工工程での累積の減面率は特に限定されないが、たとえば、20~80%である。
【0074】
中間材が板材(合金板)である場合、熱間加工工程はたとえば、一対のワークロールを備える1又は複数の圧延機を用いる。スラブ等の素材に対して圧延機を用いて熱間圧延を実施して、合金板を製造する。熱間圧延直前の素材の温度はたとえば、800~1300℃である。
【0075】
中間材が棒材である場合、熱間加工工程はたとえば、粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とを含む。粗圧延工程では、素材を熱間加工してビレットを製造する。粗圧延工程はたとえば、分塊圧延機を用いる。分塊圧延機により素材に対して分塊圧延を実施して、ビレットを製造する。分塊圧延機の下流に連続圧延機が設置されている場合、分塊圧延後のビレットに対してさらに、連続圧延機を用いて熱間圧延を実施して、さらにサイズの小さいビレットを製造してもよい。連続圧延機では、たとえば、一対の水平ロールを有する水平スタンドと、一対の垂直ロールを有する垂直スタンドとが交互に一列に配列される。粗圧延工程直前の素材温度は特に限定されないが、たとえば、900~1300℃である。仕上げ圧延工程では、初めにビレットを加熱する。加熱後のビレットに対して、連続圧延機を用いて熱間圧延を実施して、棒材を製造する。仕上げ圧延工程での加熱炉での加熱温度は特に限定されないが、たとえば、800~1300℃である。
【0076】
[冷間加工工程]
冷間加工工程は必要に応じて実施する。つまり、冷間加工工程は任意の工程であり、実施しなくてもよい。実施する場合、中間材に対して、脱スケール処理を実施した後、冷間加工を実施する。脱スケール処理はたとえば、ショットブラスト及び/又は酸洗である。中間材が管材又は棒材である場合、冷間加工はたとえば、冷間抽伸又は冷間ピルガー圧延である。中間材が板材である場合、冷間加工はたとえば、冷間圧延である。冷間加工工程を実施することにより、熱処理工程前に、中間材に歪を付与する。これにより、熱処理工程時において再結晶の発現及び整粒化を行うことができる。冷間加工工程における減面率は特に限定されないが、たとえば、10~70%である。
【0077】
[熱処理工程]
熱処理工程は必要に応じて実施する。つまり、熱処理工程は任意の工程であり、実施しなくてもよい。実施する場合、熱間加工工程後又は冷間加工工程後の中間材に対して、再結晶を目的とした熱処理を実施する。熱処理温度は750~950℃である。熱処理温度での保持時間は特に限定されないが、たとえば、5~30分である。保持時間経過後の中間材を水冷して、製品である合金を製造する。
【0078】
以上の製造工程により、本実施形態の合金を製造できる。なお、本実施形態の化学組成を満たせば、合金の製造方法は特に限定されない。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本実施形態の合金の効果をさらに具体的に説明する。以下の実施例での条件は、本実施形態の合金の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。したがって、本実施形態の合金は、この一条件例に限定されない。
【0080】
表1中の各試験番号の溶融合金を真空溶解により製造し、溶融合金を用いて、表1に示す化学組成の円柱状のインゴットを製造した。インゴットの外径は250mmであった。
【0081】
【0082】
表1中の空白欄は、対応する元素含有量が検出限界未満であったことを意味する。つまり、空白部分は、対応する元素含有量の最小桁において、検出限界未満であったことを意味する。たとえば、表1中のTi含有量の場合、最小桁は小数第3位である。したがって、試験番号1のTi含有量は、小数第3位までの桁数において、検出されなかった(有効数字が小数第3位までの含有量において、0%であった)ことを意味する。
【0083】
インゴットを1200℃に加熱した。加熱後のインゴットに対して熱間鍛造を実施して、厚さ40mm、幅100mmの素材を製造した。素材に対して熱間圧延を実施して、中間材(合金板)を製造した。熱間圧延での素材の加熱温度は1200℃であった。中間材に対して冷間圧延を実施して、厚さ15mm、幅100mmの中間材(合金板)とした。冷間圧延後の中間材に対して、850℃の熱処理温度で熱処理を実施した。熱処理温度での保持時間は30分であった。保持時間経過後の中間材を水冷して、各試験番号の合金(合金板)を製造した。なお、熱間圧延での減面率、冷間圧延での減面率は、いずれの試験番号でも同じとした。
【0084】
[評価試験]
[グリーブル試験]
各試験番号の合金の熱間加工性を、グリーブル試験によって評価した。各試験番号の熱間鍛造後のインゴットから、外径10mm、長さ130mmの棒状試験片を採取し、900℃の絞り値を求めた。具体的には、グリーブル試験機(DYNAMIC SYSTEM Inc.社製 Gleeble 3500-GTC)に棒状試験片を設置した。棒状試験片を、直接通電により1200℃に加温して1分間保持した。その後、1分間で900℃まで降温し、歪み速度10/秒で破断まで引っ張り、断面の絞り値(試験後の棒状試験片の破断面積/試験前の棒状試験片の長手方向に垂直な断面積)を算出した。各試験番号の中間材の900℃での絞り値(%)を表2に示す。なお、900℃での絞り値が70%未満であった場合、熱間加工性が低いと判定した。熱間加工性が低かった試験番号の中間材については、熱間加工工程以降の工程を実施せず、以下に示す評価試験(熱膨張係数評価試験、引張強さ評価試験、耐食性評価試験)を実施しなかった(表2中の「線膨張係数」欄、「引張強さ」欄、「腐食速度」欄において「-」で表記)。
【0085】
【0086】
[熱膨張係数評価試験]
各試験番号の合金板の板幅中央位置であって、板厚中心位置から、直径5mm、長さ20mmの試験片を採取した。試験片の長手方向は、合金板の長手方向と平行であった。試験片の中心軸は、合金板の板厚中心位置とほぼ一致した。試験片を用いて、JIS Z 2285(2003)に基づいて、熱膨張係数を求めた。熱膨張係数の測定には、水平型示差膨張式機械分析装置(NETZSCH社 DIL402 Expedis Supreme)を用いた。具体的には、試験片を5℃/minの速度で昇温し、30~100℃の熱膨張係数を1℃ピッチで求めた。求めた熱膨張係数の平均を、線膨張係数(×10-6/K)とした。各試験番号の合金の線膨張係数(×10-6/K)を表2に示す。
【0087】
[引張強さ評価試験]
各試験番号の合金の板幅中央位置であって、板厚中心位置から、試験片を採取した。試験片は、平行部長さ65mm、平行部の直径6mmの引張試験片とした。平行部長さは、合金の長手方向と平行であった。引張試験片の中心軸は、合金板の板厚中心位置とほぼ一致した。得られた試験片を用いて、JIS Z 2241(2011)に準拠して、常温大気中にて、引張試験を実施して、引張強さ(MPa)を求めた。各試験番号の合金の引張強さ(MPa)を表2に示す。
【0088】
[耐食性評価試験]
各試験番号の合金の板幅中央位置であって、板厚中心位置から、厚さ1mm、幅10mm、長さ55mmの試験片を採取した。試験片の長手方向は、合金板の長手方向と平行であった。試験片の長手方向に垂直な断面の中心位置は、合金板の板厚中心位置とほぼ一致した。試験片を用いて、JIS G 0578(2000)に準拠した塩化第二鉄腐食試験を実施した。具体的には、試験片を表面研磨した。表面研磨後の試験片を脱脂した後、乾燥した。試験前の試験片の質量を測定した。質量を測定後、試験片を、6%塩化第二鉄溶液中へ浸漬した。浸漬中の溶液の温度は35±1℃とした。24時間浸漬した後、試験片を溶液から取り出した。試験片に付着している腐食生成物を除去した後、試験片を洗浄及び乾燥した。乾燥後の試験片の質量を測定し、減量を求めた。求めた減量に基づいて、腐食速度(mg/cm2/h))を求めた。求めた腐食速度に基づいて、各試験番号の合金の耐食性を次のとおり評価した。
評価A:腐食速度が、基準材の腐食速度の0.90倍以下
評価B:腐食速度が、基準材の腐食速度の0.90倍超~1.00倍
評価X:腐食速度が、基準材の腐食速度の1.00倍超
評価Aの場合、特に優れた耐食性が得られたと判断した。得られた評価結果を表2中の「腐食速度」欄に示す。なお、試験番号12(基準材)の腐食速度は、6.5mg/cm2/hであった。
【0089】
[評価結果]
表1及び表2を参照して、試験番号1~11の合金の化学組成は適切であり、かつ、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.015~0.145%未満であり、式(1)を満たした。そのため、試験番号1~11の合金の引張強さは472MPa以上であった。また、試験番号1~11の合金の熱膨張係数は1.00×10-6/K以下であった。なお、試験番号1~11の合金の900℃での絞り値は70%以上であった。
【0090】
試験番号1~11のうち、試験番号1~3、5、7、9及び11はさらに、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.030%以上であった。そのため、引張強さは504MPa以上であり、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.030%未満の試験番号4、6、8及び10と比較してさらに優れた強度が得られた。
【0091】
さらに、試験番号1~11のうち、試験番号1、2、4、5、8及び9ではさらに、Cu、Sn及びWの合計含有量が0.020%以上であった。そのため、高い強度、及びさらに低い熱膨張係数が得られるだけでなく、耐食性は評価Aであり、優れた耐食性が得られた(5.9mg/cm2/h以下の腐食速度)。
【0092】
一方、試験番号12では、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.015%未満であった。そのため、強度が低すぎた。
【0093】
試験番号13では、Nb含有量が高すぎた。そのため、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0094】
試験番号14では、Ti含有量が高すぎた。そのため、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0095】
試験番号15では、V含有量が高すぎた。そのため、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0096】
試験番号16~18では、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.015%未満であった。そのため、強度が低すぎた。
【0097】
試験番号19では、V含有量が高すぎた。そのため、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0098】
試験番号20では、Nb含有量が高すぎた。そのため、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0099】
試験番号21では、Sn含有量が高すぎた。そのため、熱間圧延後の中間材に割れが確認され、熱間加工性が低かった。
【0100】
試験番号22では、Ti含有量が高く、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。さらに、N含有量が高すぎた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0101】
試験番号23では、Pb含有量が高すぎた。そのため、熱間圧延後の中間材に割れが確認され、熱間加工性が低かった。
【0102】
試験番号24では、B含有量が高すぎた。そのため、熱間圧延後の中間材に割れが確認され、熱間加工性が低かった。
【0103】
試験番号25では、Cu含有量が高すぎた。そのため、熱間圧延後の中間材に割れが確認され、熱間加工性が低かった。
【0104】
試験番号26では、W含有量が高すぎた。そのため、熱間圧延後の中間材に割れが確認され、熱間加工性が低かった。
【0105】
試験番号27では、Nb含有量及びTi含有量が高すぎた。そのため、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%を超えた。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0106】
試験番号28では、各元素の含有量、及び、Nb、Ti及びVの合計含有量は適切であったものの、式(1)を満たさなかった。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0107】
試験番号29では、各元素の含有量、及び、Nb、Ti及びVの合計含有量は適切であったものの、式(1)を満たさなかった。そのため、熱膨張係数が高すぎた。
【0108】
試験番号30では、Nb、Ti及びVの合計含有量が0.145%以上であった。そのため、熱膨張係数が高すぎた。さらに、耐食性が低かった。
【0109】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定さることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。