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  • 特許-直動・回転アクチュエータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】直動・回転アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/06 20060101AFI20230524BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20230524BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20230524BHJP
   H02K 37/14 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
F16H37/06 D
F16H25/20 E
H02K7/06 A
H02K37/14 535X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018116020
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019218992
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000229645
【氏名又は名称】日本パルスモーター株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石割 哲朗
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-96606(JP,U)
【文献】特開平9-292002(JP,A)
【文献】特開2007-211941(JP,A)
【文献】特開平06-292343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106761138(CN,A)
【文献】特開2014-178023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/06
F16H 25/20
H02K 7/06
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローポール永久磁石型ステッピングモータを直列配置させた第1モータと第2モータのケーシング内に、それぞれコイルの励磁によって回転可能に配設される第1モータ回転子と第2モータ回転子と、該第1モータ回転子の軸孔に挿通される廻り止め軸部と、第2モータ回転子の軸孔に挿通されるねじ軸部とが一体形成された出力軸とを備え、該出力軸を、それぞれのモータ駆動に伴って直動・回転可能に構成された直動・回転アクチュエータであって、
前記第2モータ回転子の軸孔内に、所定の幅域をもって前記ねじ軸部と螺合する雌ねじ部を形成する一方、
前記第1モータ回転子の軸孔内に、所定の幅域をもって前記廻り止め軸部と係合する回転規制部を形成すると共に、
当該第1モータと第2モータとを、内周面が円筒状の中間ケーシングを介してその両側に形成された連結部に対し、前記ケーシングのそれぞれの連結側ケーシング側部を連結することにより、前記第1モータ回転子と第2モータ回転子の端部同士を中間ケーシング内に臨ませて対向配設せしめ、
該対向する回転子端部間に形成される前記中間ケーシングの内部空域を、前記廻り止め軸部とねじ軸部とが進退移動するストローク域として構成し
さらに、前記出力軸は、前記廻り止め軸部を、前記第2モータ回転子の軸孔内に挿入可能とすべく、前記ねじ軸部よりも小径に形成せしめ、その先端を前記回転規制部に挿入させた状態で、前記ねじ軸部を雌ねじ部に螺合させながら軸装可能に構成されると共に、
前記第1モータのケーシングは、ケーシング胴部の一方にフロント側ケーシング側部を、他方に中間ケーシングへの連結側ケーシング側部を備え、前記第2モータのケーシングは、ケーシング胴部の一方にエンド側ケーシング側部を、他方に中間ケーシングへの連結側ケーシング側部を備え、
かつ、前記それぞれの連結側ケーシング側部には、軸受キャップを、前記中間ケーシングの内部に嵌挿させた際に、軸芯位置決めセットが可能な連結部材に兼用すべく突出形成せしめて設け、
当該れぞれの連結側ケーシング側部を、前記中間ケーシングに対向配設すべく、その内周面に前記軸受キャップを嵌挿せしめた状態で組付けセット可能に構成してあることを特徴とする直動・回転アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1において、前記回転規制部は、前記第2モータにねじ軸部が螺合セットされた状態で、前記廻り止め軸部の視認挿入を可能とすべく、前記中間ケーシング側となる前記第1モータ回転子の軸孔端部域に形成されていることを特徴とする直動・回転アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記雌ねじ部は、前記第2モータのケーシングを形成するケーシング胴部の略中央域に配設されていることを特徴とする直動・回転アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一軸上に廻り止め軸部とねじ軸部とが一体形成された出力軸を、廻り止め軸部側に配設される第1モータと、ねじ軸部側に配設される第2モータとに軸装し、それぞれ独立または共同駆動することによって、進退移動と回動との複合的な動作を行うことのできる直動・回転アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製品の製造プロセス等においては、材料の配分、部品の加工、部品の実装等のワーク体において、直進と回転とによる複合的な動作制御が要求されるが、その駆動機構の一手段として、同一軸上に廻り止め軸部とねじ軸部とが一体形成された出力軸を用いて、廻り止め軸部を回転規制部に係合させて回転駆動させるための回転用モータと、ねじ軸部に雌ねじ部を螺合させて直進駆動をさせるための直動用モータを、それぞれ個別に配設させた2軸駆動機構(特許文献1)や直動・回転アクチュエータ(特許文献2)なるものが知られている。
【0003】
特許文献1の2軸駆動機構(1A)のものは、第1モータとしての直動用モータ(4A)の小径部(15)側面に、ボールナット(18)に予めボールネジ部(11)が螺合された状態の連結部(25)となる部材を組付けて「ねじ螺合部」を並設し、第2モータとしての軸回転用モータ(8A)の小径部(24)側面に別途部材としてのスプラインナット(36)を組付けて「廻り止め係合部」を並設した状態で、中空軸(48)にスプライン軸部(12)を挿通させながらスプラインナット(36)に係合させた後、連結部(25)を介して両モータを結合する構造となっている。
また、特許文献2の直動・回転アクチュエータ(1)のものは、特許文献1のものと同様に、第1モータとしての直動モータ部(30)のステータ(31)側面に中空出力軸(33)に一体成形した特殊なボールねじナット(39)を配置させて「ねじ螺合部」を並設し、第2モータとしての回転モータ部(10)のステータ(11)側面に中空出力軸(13)に一体成形した特殊なスプラインナット(19)を配置させて「廻り止め係合部」を並設した状態で、ボールねじ部(50b)をボールねじナット(39)に螺合させておき、中空出力軸(13)にスプライン部(50a)を挿通させながらスプラインナット(19)に係合させて、フランジ(35b)を介して両モータを結合する構造となっている。
【0004】
しかしながら、これらのものは何れも、「ねじ螺合部」を直動モータ(4Aや30)の連結部側に並設し、「廻り止め係合部」を回転モータ(8Aや10)のワーク体への接続外部側に並設させて、回転モータ(8Aや10)の回転子に一体化された中空出力軸(48や13)を長尺に形成し、その軸孔内に駆動軸(2や50)のストローク域を設定した、所謂、ストローク長さが中空出力軸(48や13)自体の長さ設定に依存した構成となっているため、「ねじ螺合部」や「廻り止め係合部」、或いは、その「軸受部」を、ステータ(55や11、44や31)から離間した位置に、別途専用の部材を組付けしたり、中空出力軸(13や33)を特殊な一体構造に成形して設けるなどの制約があり、かつ、これらの部材配置側における中空出力軸の振動を制御するために大きなベアリング(38や49)、(16や36)を用いて、高機能の軸受構造としなければならないなど、モータ自体が大がかりなものとなって部品点数が多くなるだけでなく、ストローク長さの設定変更等における設計の自由度が損なわれるなど、過剰品質となる構造上の問題がある。しかも、スプライン軸部(12)やスプライン部(50a)を軸芯位置決めがなされていない状態で中空出力軸(13、33)内に手探り挿通させて、廻り止め係合する作業を行わなければならず、組付け構成が複雑となって、組み立て作業に時間を要し製作コストが高くなり、製品単価が高価なものとなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-292343号公報
【文献】特開2015-124864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、同一軸上に廻り止め軸部とねじ軸部とが一体形成された出力軸を用いて、回転駆動用の第1モータによる廻り止め係合部を介した回転動作と、直進駆動用の第2モータによるねじ螺合部を介した螺合送り動作とを、所定の駆動パターン制御により行うようにしたものでありながら、廻り止め係合部とねじ螺合部を、それぞれのモータ回転子を構成するロータカラーの軸孔内に一体形成して、中間ケーシング内に廻り止め軸部とねじ軸部とが共通移動するストローク域を形成することにより、両モータを、それぞれの外観形態や軸受構造を含む駆動機構などの基本的な組付け構成部材を統一化して、回転子を選択変更するだけで安価に製作することができ、構造の簡素化と部品点数の削減を図ると共に、第1モータと第2モータのそれぞれのケーシング側部を、中間ケーシングの連結部に対して直接連結させて、容易に軸芯が位置決めセットが成された状態での組付け作業を行うことができるだけでなく、第2モータにねじ軸部が予め螺合セットされた状態であっても、廻り止め軸部の視認による位置合わせ挿入が可能な軸孔端部側に回転規制部を形成することが可能となり、組付け作業の簡略化と時間短縮を図ることができるようにして、もって、製作の効率化や容易化、製品のコンパクト化やコストダウン等が図られた安価なものとして提供することのできる直動・回転アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が採用した技術手段は、クローポール永久磁石型ステッピングモータを直列配置させた第1モータと第2モータのケーシング内に、それぞれコイルの励磁によって回転可能に配設される第1モータ回転子と第2モータ回転子と、該第1モータ回転子の軸孔に挿通される廻り止め軸部と、第2モータ回転子の軸孔に挿通されるねじ軸部とが一体形成された出力軸とを備え、該出力軸を、それぞれのモータ駆動に伴って直動・回転可能に構成された直動・回転アクチュエータであって、前記第2モータ回転子の軸孔内に、所定の幅域をもって前記ねじ軸部と螺合する雌ねじ部を形成する一方、前記第1モータ回転子の軸孔内に、所定の幅域をもって前記廻り止め軸部と係合する回転規制部を形成すると共に、当該第1モータと第2モータとを、内周面が円筒状の中間ケーシングを介してその両側に形成された連結部に対し、それぞれの連結側ケーシング側部を連結することにより、前記第1モータ回転子と第2モータ回転子の端部同士を中間ケーシング内に臨ませて対向配設せしめ、該対向する回転子端部間に形成される前記中間ケーシングの内部空域を、前記廻り止め軸部とねじ軸部とが進退移動するストローク域として構成し、さらに、前記出力軸は、前記廻り止め軸部を、前記第2モータ回転子の軸孔内に挿入可能とすべく、前記ねじ軸部よりも小径に形成せしめ、その先端を前記回転規制部に挿入させた状態で、前記ねじ軸部を雌ねじ部に螺合させながら軸装可能に構成されると共に、前記第1モータのケーシングは、ケーシング胴部の一方にフロント側ケーシング側部を、他方に中間ケーシングへの連結側ケーシング側部を備え、前記第2モータのケーシングは、ケーシング胴部の一方にエンド側ケーシング側部を、他方に中間ケーシングへの連結側ケーシング側部を備え、かつ、前記それぞれの連結側ケーシング側部には、軸受キャップを、前記中間ケーシングの内部に嵌挿させた際に、軸芯位置決めセットが可能な連結部材に兼用すべく突出形成せしめて設け、当該れぞれの連結側ケーシング側部を、前記中間ケーシングに対向配設すべく、その内周面に前記軸受キャップを嵌挿せしめた状態で組付けセット可能に構成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、同一軸上に廻り止め軸部とねじ軸部とが一体形成された出力軸を用いて、回転駆動用の第1モータによる廻り止め係合部を介した回転動作と、直進駆動用の第2モータによるねじ螺合部を介した螺合送り動作とを、所定の駆動パターン制御により行うようにしたものでありながら、廻り止め係合部とねじ螺合部を、ストローク域が中空出力軸の軸孔長さに依存設定された従来の並設構造によらず、それぞれのモータ回転子を構成するロータカラーの軸孔内に一体形成して、中間ケーシング内を廻り止め軸部とねじ軸部とが進退移動するストローク域として設定してあるので、基本的な組付け構成部材を統一化して、回転子を選択変更するだけで安価に製作することができ、構造の簡素化と部品点数の削減を図ることができるだけでなく、回転規制部と雌ねじ部は、それぞれの回転子の軸孔内の任意部位に形成することかできるようになり、殊に、回転規制部を中間ケーシング内域側に配設し、雌ねじ部をケーシング胴部の中央域に配設するなど、配設位置の自由度が確保され、所定のメインストローク量を確保した状態で出力軸を短く製作することが可能となり、中間ケーシングの長さ変更によりメインとなるストローク域の長さ設定を容易に可変し得て、さらには、回転子の軸孔内を補助的なストローク域として利用することもできる。
しかも、各モータのそれぞれの連結側ケーシング側部を、中間ケーシングの連結部に対して直接連結させて、容易に軸芯が位置決めセットが成された状態での組付け作業を行うことができるだけでなく、第2モータにねじ軸部が予め螺合セットされた状態であっても、廻り止め軸部の視認による位置合わせ挿入が可能な軸孔端部側に回転規制部を形成することが可能となり組付け作業の簡略化と時間短縮を図ることができる。また、第1モータと第2モータを中間ケーシングに取付けした後であっても、第2モータ回転子の軸孔内に廻り止め軸部を挿入させて回転操作し、廻り止め軸部の先端を回転規制部に挿入操作することで、出力軸自体を軸装することが可能であるので、ワーク体への連結後など、分解が難しい状況などであっても、出力軸の保守点検等を行うことができる。さらにそれぞれの連結側ケーシング側部に設けられた軸受キャップは、中間ケーシングの内部に嵌挿させた際に、軸芯位置決めセット可能な連結部材として突出形成されているので、嵌挿組付けセットをするだけで第1モータと第2モータ間における出力軸の軸芯位置決めがなされた状態で対向配設することができ、組付け作業時間の短縮を図ることができると共に、図2図3に図示された接続端子がケーシング胴部の外周面に設けられていても組付けットが行えるだけでなく、第1モータと第2モータとを、それぞれ単体モータとしての外観形態や軸受構造等を含む駆動機構など、回転子以外の基本的な構成部材の組付けや配置構造を統一化して共通に製作することができ、要求されるトルクや推力や精度に応じて第1モータおよび第2モータの両方もしくは一方をハイブリッド型ステッピングモータやサーボモータに変更しても組付けすることを可能ならしめ、もって、製作の効率化や容易化、製品のコンパクト化やコストダウン等が図られた安価な製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態を示す直動・回転アクチュエータの内部構造を示す断面図である。
図2】直動・回転アクチュエータの外観図である。
図3】直動・回転アクチュエータのワーク体への連結側を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、好適な実施の形態として例示する直動・回転アクチュエータを図面に基づいて詳細に説明する。
図1は直動・回転アクチュエータの断面図、図2はその外観図、図3は同じくワーク体への連結側を示す側面図である。これらの図に示すように、直動・回転アクチュエータAは、2相のクローポール永久磁石(PM)型ステッピングモータである回転駆動用の第1モータ1と2相のクローポール永久磁石型ステッピングモータである直進駆動用の第2モータ2とを組として、中間ケーシング3を介して直列配置された状態で一体的に連結されており、出力軸4の同一軸上に形成された廻り止め軸部41とねじ軸部42とを、それぞれ第1モータ1と第2モータ2に廻り止め係合手段とねじ螺合手段とをもって軸装させることにより、第1モータ1による回転動作と、第2モータ1による螺合送り動作とを所定の駆動パターンをもって複合的な駆動制御が行えるように構成される。
なお、出力軸4の先端部にはワーク体への取付け用の連結ねじ部43が形成されている。なお、本実施例では、簡易に位置決め制御が可能で、低コストなクローポール型ステッピングモータを採用しているが、要求されるトルクや推力、要求される精度に応じて第1モータおよび第2モータの両方もしくは一方をハイブリッド型ステッピングモータやサーボモータに変更してもよい。
【0011】
第1モータ1と第2モータ2は、コイルが巻回されたボビンと、ボビンを上下から挟むように配置された外ヨークと内ヨークとからなるステータコアユニットが形成され、2相分の前記ステータコアユニットの前記内ヨーク同士を重なり合わせることにより、ステータを形成している。ケーシング11は、2相分の前記ステータユニットの外ヨークの円周側面により構成されるケーシング胴部111、フロント側ケーシング側部112、中間ケーシング3への連結側ケーシング側部113により構成され、ケーシング21は、ケーシング胴部211、エンド側ケーシング側部212、中間ケーシング3への連結側ケーシング側部213により構成されており、連結側ケーシング側部113、213は中間ケーシング3の連結部32に連結可能に鍔状に形成される。コイル1a、2aの内周側には、それぞれフロント側ケーシング側部112、エンド側ケーシング側部212と、連結側ケーシング側部113、213がそれぞれ有する軸受キャップ11a、11bと、21a、21bを介して回転可能にボールベアリング軸受された多極に着磁される第1モータ回転子1bと第2モータ回転子2bが配設される。つまり、第1モータ1と第2モータ2は、第1モータ回転子1bと第2モータ回転子2b以外の基本的な構成部材の組付けや配置構造が統一化され、殊更特殊な構造を採用することなく同じ駆動性能を有して共通に製作されている。
【0012】
第1回転子1bおよび第2回転子2bは、それぞれの中心に軸孔1b1、2b1を有する樹脂製、黄銅、鉄またはアルミ等の金属製の円柱(円筒)型のロータカラー1b2、2b2と、このロータカラー1b2、2b2の外周面に配設されたS極とN極を交互に多極磁着したリング状磁石1b3、2b3とにより構成される。第1モータ回転子1bのロータカラー1b2は、連結側ケーシング側部113となる一側端部が軸受キャップ11bよりも外方に延出形成されており、第2モータ回転子2bのロータカラー2b2は、エンド側ケーシング側部212となる一側端部が軸受キャップ21aよりも外方に延出して形成されている。
【0013】
軸孔1b1は、廻り止め軸部41の外径よりも大きな内径空間を有し、その内部に軸受キャップ11b側となる端部側に所定の幅域をもって廻り止め軸部41の形状と適合して係合する回転規制部41aが形成されており、また、軸孔2b1は、ねじ軸部42の外径よりも大きな内径空間を有し、その内部のステータとしてのケーシング胴部111の略中央域部に所定の幅域をもってねじ軸部42と螺合する雌ねじ部42aが形成されている。つまり、ねじ軸部42は、軸受キャップ21aと21bとの軸受間におけるロータカラー2b2の略中央部に配設されているので、モータ駆動による回転負荷を略等分に分担して軸受できるようになっており、一方の軸受に負荷が片寄って加わることがない。
【0014】
中間ケーシング3は、アルミニウム等の単一部材を加工または成形してなり、任意の円筒または角筒状の筒状胴部31と、その両側に連結側ケーシング側部113と213の鍔形状にそれぞれ適合した鍔部を有した連結部32、32とで形成され、その内周面域は、軸受キャップ11bと21bの外周面形状と所謂インロー構造で嵌め合い嵌挿可能な内径筒に形成されている。
つまり、第1モータ1と第2モータ2は、この連結部32、32に対して、連結側ケーシング側部113と213を面当てした際に、第1モータ回転子1bと第2モータ回転子2bの端部同士を中間ケーシング3内に臨ませた状態で、かつ、軸受キャップ11bと21bを所謂インロー構造で嵌挿することで精度の良い軸芯位置決めがなされ、その組付け状態で、鍔部同士をねじ固定することで広い当接面域をもって強固に連結固定でき、両者の嵌挿とねじ固定による共同連結機能によりモータ駆動時における回転負荷により発生する振動を防止することができるようになっている。
【0015】
この様に、軸受キャップ11bと21bは、その外周面が中間ケーシング3の内周面と所謂インロー構造を構成することにより、軸芯位置決め可能な機能を有した連結部材として兼用することができるけでなく、第1モータ回転子1bと第2モータ回転子2bの中間ケーシング3側の軸受部(特に、回転規制部41a)の振動を抑止できる構造が確保され、殊更大きなベアリングを用いて高機能の軸受構造とする必要がない。なお、軸受キャップ11bと21bの外周面は、中間ケーシング3の内周面全域に嵌め合い嵌挿可能に形成したが、外周面の一部が中間ケーシング3の内周面の一部に嵌め合い嵌挿できるようにしたものであれば良い。また、中間ケーシング3は、単一部材からなるため、その内周面を高精度の同軸度に加工又は成形することができ、第1モータ回転子1bと第2モータ回転子2bとの関係においても高精度な軸心位置決めが可能となっている。これにより、送りねじ機構のねじ効率が高くなり、従来諦めざるを得なかった低トルクな2相のクローポール永久磁石型ステッピングモータの採用をし易くさせている。そして、ねじ効率が上がったことにより、ボールねじやボールスプライン等ではなく、すべりねじやすべりのスプライン軸を採用でき、製作費が非常に安価になり、かつ、ボールねじやボールスプラインに比べ、ナット部やスプライン部を小さくすることができ、さらにボールねじに一般的に使用される組合せアンギュラ玉軸受よりも省スペースで安価なボールベアリングを使用することができる。
【0016】
また、中間ケーシング3は、単に、第1モータ1と第2モータ2を組付け固定するための部材としてではなく、対向する回転子1bと2b間に形成される中間ケーシング3の内空域を廻り止め軸部41とねじ軸部42とがメインとして進退移動するストローク域S1に構成することができるだけでなく、回転規制部41aと雌ねじ部42a間を全ストローク域Sとするにあたり、雌ねじ部42aの軸孔2b1内をサブとなる補助的なストローク域S2として利用することができ、従来の如きストローク長さの設定を回転子自体の長さに依存した軸孔内全域に設定する必要がなく、ストローク域S1の長さ設定を中間ケーシング3の長さ変更により行うことができ設計の自由度を確保することができる。
【0017】
本実施形態における廻り止め軸部41と回転規制部41aは、インボリュートスプライン形状を有した歯合によりスプライン連結により廻り止め係合されるようになっている。なお、両者の廻り止め係合関係は、これに限定されず、特許文献2の図5から図9に開示された形態を適宜採用して良いことは勿論である。回転規制部41aは、軸受キャップ11bよりも外方に延出するロータカラー1b2の軸孔1b1端部、即ち、中間ケーシング3内部に配設されており、所定のメインストローク量を確保したストローク域S1の長さ設定に対して、出力軸4自体の長さを相対的に短く製作することができると共に、回転規制部41aの歯車状のボス孔端面の形状が視認できるようになっている。
つまり、中間ケーシング3の一端側に第2モータ2を取付けして、ねじ軸部42を雌ねじ部42aに螺合セットさせた状態で、第1モータ1を中間ケーシング3の他端側に組付けする際に、先ず、連結ねじ部43を回転規制部41aに挿入しつつ廻り止め軸部41の先端を、回転規制部41aのスフライン形状を視認しながら位置合わせ挿入することができ、軸芯位置決めがなされていない状態であっても、手探りによる挿通作業を回避して、廻り止め軸部41と回転規制部41aとが複雑な形状を有した歯合によるスプライン連結で有っても、その挿通作業を容易かつ短時間で行うことができるようになっている。
【0018】
出力軸4は、廻り止め軸部41がねじ軸部42よりも小径に形成され、連結ねじ部43が廻り止め軸部41よりも小径に形成されており、廻り止め軸部41とねじ軸部42、および廻り止め軸部41と連結ねじ部43とは、更に小径の軸部を存して離間して配設されている。この様に形成すると、第1モータ1と第2モータ2を中間ケーシング3に取付けした後であっても、連結側ケーシング側部113と213および軸受キャップ11bと21bによる軸芯位置決め機能により、両者の軸芯位置決めがなされた状態が確保されているので、第2モータ2のエンド側ケーシング側部212から延出する第2モータ回転子2bの軸孔2b1内に廻り止め軸部41を挿入し、ねじ軸部42を雌ねじ部42aに螺合させながら、第2モータ回転子2b(ロータカラー2b2)の一側端部が軸受キャップ21aよりも外方に延出された延出部を指や工具により挟持して手動で回転操作して、手探りにより廻り止め軸部41の先端を回転規制部41aに挿入操作することで軸装することが可能となっており、ワーク体への連結後など、分解が難しい状況など、出力軸4の保守点検等を行う際に有効である。
【0019】
次に、第1モータ1と第2モータ2を駆動制御することにより、出力軸4は次のような駆動パターンをもって動作制御される。
(a) 第1モータ1と第2モータ2を共に正/逆回転駆動することにより、出力軸4を進退移動を伴わずに回転動作させる。
(b) 第1モータ1を励磁ON状態で停止させ、第2モータ2を正/逆回転駆動することにより、出力軸4を回転動作を伴わずに進退移動させる。
(c) 第2モータ2を励磁ON状態で停止させ、第1モータ1を正/逆回転駆動することにより、出力軸4を回転動作させながら進退移動させる。
(d) 第1モータ1を正転駆動させ、第2モータ2を逆転駆動することにより、出力軸4を回転動作させながら倍速直進移動させる。
(e) 第1モータ1を逆転駆動させ、第2モータ2を正転駆動することにより、出力軸4を回転動作させながら倍速後退移動させる。
以上は、同じ回転速度をもって回動させ、廻り止め状態を励磁ON状態で維持する場合の駆動パターンを例示したものであるが、第1モータ1と第2モータ2の回転速度差を生じるように制御することより、スパイラル的動作が可能となる。また、モータ性能が同じ場合、第1モータ1と第2モータ2の回転方向を逆転駆動することにより、軸方向の速度を倍速化することも可能であり、種々の組合せ駆動制御によって複合的な動作パターンを行うことができる。なお、連結されるワーク体によっては、これら駆動パターンに伴う任意位置に位置決め停止制御するための回転/進退位置センサが設けられる。
【0020】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、第1モータ1と第2モータ2を駆動制御することにより、出力軸4を直動・回転による複合的な動作を行わせるのであるが、本発明における直動・回転アクチュエータAは、第2モータ回転子2b(ロータカラー2b2)の軸孔2b1内に、所定の幅域をもってねじ軸部42と螺合する雌ねじ部42aを形成する一方、第1モータ回転子1b(ロータカラー1b2)の軸孔1b1内に、所定の幅域をもって廻り止め軸部41と係合する回転規制部41aを形成すると共に、当該第1モータと第2モータとを、内周面が円筒状の中間ケーシング3を介してその両側に形成された連結部32に対し、それぞれの連結側ケーシング側部113、213を連結することにより、第1モータ回転子1b(ロータカラー1b2)と第2モータ回転子2b(ロータカラー2b2)の端部同士を中間ケーシング3内に臨ませて対向配設せしめ、該対向する第1モータ回転子1bと第2モータ回転子2bの端部間に形成される中間ケーシング3(筒状胴部31)の内部空域を、廻り止め軸部41とねじ軸部42とがメインとして進退移動するストローク域S1に構成し、さらに、出力軸4は、廻り止め軸部41を、第2モータ回転子2bの軸孔2b1内に挿入可能とすべく、ねじ軸部42よりも小径に形成せしめ、その先端を回転規制部41aに挿入させた状態で、ねじ軸部42を雌ねじ部42aに螺合させながら軸装可能に構成される。
【0021】
この様に構成すると、同一軸上に廻り止め軸部41とねじ軸部42とが一体形成された出力軸4を用いて、回転駆動用の第1モータ1による廻り止め係合部(31、41a)を介した回転動作と、直進駆動用の第2モータ2によるねじ螺合部(32、32b)を介した螺合送り動作とを、所定の駆動パターン制御により行うようにしたものでありながら、廻り止め係合部(31、41a)とねじ螺合部(32、32b)を、ストローク域S2が中空出力軸の軸孔長さに依存設定された従来の並設構造によらず、それぞれのモータ回転子1b、2bを構成するロータカラー1b2、2b2の軸孔1b1、2b1内に一体形成して、中間ケーシング3内を廻り止め軸部41とねじ軸部42とが共にメインとして進退移動するストローク域S1に設定してあるので、第1モータ1と第2モータ2とを、それぞれ単体モータとしての外観形態や軸受構造等を含む駆動機構などの基本的な組付け構成部材を統一化して、回転子1b(1b2)と2b(12b2)とを選択変更するだけで安価に製作することができ、構造の簡素化と部品点数の削減を図ることができるだけでなく、回転規制部41aと雌ねじ部42aは、それぞれの回転子1bと2bの軸孔1b1、2b1内の任意部位に形成することかできるようになり、殊に、回転規制部41aを中間ケーシング3内域側に配設し、雌ねじ部42aをケーシング胴部111の略中央部に配設するなど、配設位置の自由度が確保され、所定のメインストロークS1量を確保した状態で出力軸4を短く製作することが可能となり、中間ケーシング3の長さ変更によりメインとなるストローク域S1の長さ設定を容易に可変し得て、さらには、回転子1bと2bの軸孔1b1、2b1内を補助的なサブストローク域S2として利用することもできる。
【0022】
しかも、各モータ1、2のそれぞれの連結側ケーシング側部113、213を、中間ケーシング3の連結部32、32に対して直接連結させて、容易に高精度な軸芯が位置決めセットが成された状態での組付け作業を行うことができるので、送りねじ機構のねじ効率が高くなり、従来諦めざるを得なかった、低トルクなスクローポール永久磁石型ステッピングモータの採用が可能となるだけでなく、第2モータ2にねじ軸部42が予め螺合セットされた状態であっても、廻り止め軸部41の視認による位置合わせ挿入が可能な軸孔1b1の端部側に回転規制部41aを形成することが可能となり、組付け作業の簡略化と時間短縮を図ることができる。また、第1モータ1と第2モータ2を中間ケーシング3に取付けした後であっても、第2モータ回転子2bの軸孔2b1内に廻り止め軸部41を挿入させて回転操作し、廻り止め軸部41の先端を回転規制部41aに挿入操作することで、出力軸4自体の軸装が可能であるので、ワーク体への連結後など、分解が難しい状況などであっても、出力軸4の保守点検等を行うことができ、もって、製作の効率化や容易化、製品のコンパクト化やコストダウン等が図られた安価な製品を提供することができる。
【0023】
さらに、第1モータ1と第2モータ2は、それぞれの連結側ケーシング側部113、213から突出して設けられた回転子1b(1b2)、2b(2b2)の軸受を保持するための軸受キャップ11b、21bを備え、該軸受キャップ11b、21bを、中間ケーシング3の内周面に嵌挿させて、軸芯位置決めセット可能な連結部材に兼用すべく突出形成せしめて設け、当該れぞれの連結側ケーシング側部113、213を、中間ケーシング3に対向配設すべく、その内周面に軸受キャップ11b、21bを嵌挿せしめた状態で組付けセット可能に構成してあるので、それぞれの軸受キャップ11b、21bを、中間ケーシング3の内周面に嵌挿させながら、連結部32、32に対して連結側ケーシング側部113、213を面当てするセット作業において、第1モータ1と第2モータ2の軸芯同士位置決めすることができ、組付け作業時間の短縮を図ることができる。しかも、軸受キャップ11b、21bを嵌挿組付けセットするだけで、第1モータ1と第2モータ2間における出力軸4の軸芯位置決めがなされた状態で対向配設することができ、組付け作業時間の短縮を図ることができると共に、図2図3に図示された接続端子がケーシング胴部111,211の外周面に設けられていても組付けットが行えるだけでなく、第1モータ1と第2モータ2とを、それぞれ単体モータとしての外観形態や軸受構造等を含む駆動機構など、回転子1b(1b2)、2b(2b2)以外の基本的な構成部材の組付けや配置構造を統一化して共通に製作することができ、要求されるトルクや推力や精度に応じて第1モータ1および第2モータ2の両方もしくは一方をハイブリッド型ステッピングモータやサーボモータに変更しても組付けすることを可能ならしめ、さらに、回転規制部41aを軸受キャップ11b側に片寄らせて配設させても、軸受部位が自由端構造とならずに軸受キャップ11bの外周が中間ケーシング3の内周に確りと保持されているので、モータ駆動時における回転規制部41aに対して回転負荷を生じても、軸受キャップ11b側への振動が防止されて、殊更大きなベアリングを用いて高機能の軸受構造とする必要がなく、軸受キャップ11a側と同機能のボールベアリンク軸受を採用して、第1モータ回転子1bを好適に軸受することができる。
【0024】
また、回転規制部41aは、第2モータ2にねじ軸部42が螺合セットされた状態で、廻り止め軸部41の視認挿入を可能とすべく、中間ケーシング3側となる第1モータ回転子1b(1b2)の軸孔1b1端部域に形成されているので、第1モータ1を中間ケーシング3の他端側に組付けする際に、軸芯位置決めがなされていない状態での挿入作業が強いられても、廻り止め軸部41の先端を、回転規制部41aのスプライン形状を視認しながら位置合わせ挿入することができ、手探りによる挿通作業を回避して、歯合等によるスプライン形状が複雑なもの同士であっても、挿通作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0025】
また、雌ねじ部42aは、第2モータ2のケーシング21を形成するケーシング胴部211の略中央域、即ち、軸受キャップ21aと21bとの軸受間におけるロータカラー2b2の略中央部に配設されているので、モータ駆動による回転負荷を略等分に分担してバランス良く軸受することができ、一方の軸受に負荷が片寄って加わってしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
A 回転アクチュエータ
1 第1モータ
11 ケーシング
111 ケーシング胴部
112 フロント側ケーシング側部
113 連結側ケーシング側部
11a 軸受キャップ
11b 軸受キャップ
1a コイル
1b 第1モータ回転子
1b1 軸孔
1b2 ロータカラー
1b3 リング状磁石
2 第2モータ
21 ケーシング
211 ケーシング胴部
212 エンド側ケーシング側部
213 連結側ケーシング側部
21a 軸受キャップ
21b 軸受キャップ
2a コイル
2b 第2モータ回転子
2b1 軸孔
2b2 ロータカラー
3 中間ケーシング
31 筒状胴部
32 連結部
4 出力軸
41 廻り止め軸部
41a 回転規制部
42 ねじ軸部
42a 雌ねじ部
43 連結ねじ部
S 全ストローク域
S1 メインのストローク域
S2 サブのストローク域
図1
図2
図3