(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】抜歯用具
(51)【国際特許分類】
A61C 3/14 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
A61C3/14
(21)【出願番号】P 2020541596
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020008567
(87)【国際公開番号】W WO2020175713
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019046492
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019187158
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020008747
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141908(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206508046(CN,U)
【文献】特表2005-531381(JP,A)
【文献】米国特許第06045360(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0275026(US,A1)
【文献】国際公開第2010/026687(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3162226(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
歯に固定させたアンカーを掛止して梃の原理でこの歯を抜くための抜歯用具であって、ハンドルと、このハンドルの先に設けられた掛止部と、これ等の間に位置する連結軸と、前記掛止部にこの部位を二股にするために設けられた掛止溝とから成るバールと、
ベースハンドルと、このベースハンドルの先端部の歯に当接させるための当接部と、これ等の間に位置して前記バールの前記連結軸を嵌めるための連結溝とから成るベースと、
から構成され、前記掛止部を前記連結溝に嵌めて前記バールと前記ベースとを連結一体化して前記ハンドルと前記ベースハンドルとが開いた状態にした時に、前記ベースの前記当接部に前記バールの前記掛止部が収まるように前記当接部に切欠部が設けられていると共に、前記当接部の底部が湾曲状に設けられていることを特徴とする、抜歯用具。
【請求項7】
前記ハンドルに、音声信号を発生するための音声発生回路とまたは外部の音声発生装置からの音声信号の入力部と、この音声信号を音声振動に変換する骨伝導トランスデューサと、この骨伝導トランスデューサを駆動する電源と、これ等のON/OFFのための電源スイッチとを有している、請求項2に記載の抜歯用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜歯を安全に安定的にかつ容易に行うことが出来て、患者の負担が軽くなるような抜歯用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科治療に於いて抜歯を行う場合には、歯と歯槽骨との間で歯根の周りにある歯根膜の部位に梃子(ヘーベル)を挿入して歯を脱臼させてから、歯科用の鉗子(ペンチ)で歯を挟んで抜き取るのが一般的である。
なお鉗子の実例は特開2002-291753号に、また梃子の実例は特開2009-119095号に詳述されている。
しかしながら、梃子で歯をこじる際に誤って歯を押し込むようなことが起ると、これが原因で神経を痛めたり血管を破損して出血が多くなったり、歯槽骨を陥没させてしまうような場合がある。これは大きな問題である。
当発明者は鋭意研究の結果、歯根は捻る力に弱く、捻ると比較的容易に歯槽骨から浮かせることが出来るため、これを引き抜くようにすれば簡単に抜歯を行うことが可能であると言う知見を得た。従って歯を歯槽骨から浮かせるに当って梃子を用いることなく、隣合う歯に影響されたり影響を与えたりすることもなく、歯を捻ることが出来て、その後の歯の引き抜きも容易であるようにしたいものである。
そこで当出願人は先に、実用新案登録第3162169号の「抜歯用具」を提案した。このものは歯内にねじ込むためのネジ部と指先で摘むためのハンドル部とから成り、前記ハンドル部に滑り止め部を備えている抜歯用具(リーマ)である。ハンドル部を以てネジ部を歯の中心部の穴にねじ込むと、ネジ部は歯内にしっかりと食い込むので、ハンドル部を指で摘むなり鉗子の顎部で挟むなりして引き抜く。この際に歯根が捻られて歯槽骨から浮いて来るために抜歯は比較的容易でありかつ安全である。また抜歯を行う歯にのみ歯槽骨から浮かせる際の力が加わるので、隣合う歯に影響されたり影響を与えたりすることが少ない。なおハンドル部に滑り止め部があることによって指で摘んだり鉗子で挟んで引く力をネジ部、すなわち歯に効果的に及ぼすことが出来る。なお滑り止め部がハンドル部に形成された孔部または掛止部であるものとして、この孔部や掛止部に鉗子や鈎具の先をしっかりと掛けることが出来る。この場合の鉗子や鈎具は、すでにネジ部により歯根を捻り浮かせてある歯に引っ掛けて引き抜く点で、従来の梃子の使い方とは大きく異なるものであると言える。
また特開2018-175817号の抜歯用具は当出願人の発明になるものであるが、アンカー部とハンドル部とから成り、切削によって歯に開けた窩洞部の中にUVレジンを注入し、この中にアンカー部を押し込んでからペン型の紫外線ライトでUVレジンに紫外線を照射し、UVレジンを硬化させて抜歯用具を歯にしっかりと固定して、ハンドル部を指先や鉗子で摘まんだりバールで引き抜くようにするものである。
実用新案登録第3162169号の抜歯用具も特開2018-175817号の抜歯用具も、ハンドル部を指で摘んで引き抜くのではなく鉗子や鈎具を用いて引き抜くのであれば、専用の道具があるとなお良いであろう。リーマによって浮かせてある歯を専用の道具によってより安定的に引き抜けるようにしたいものである。このような抜歯用具のための専用の道具として提案したものが、実用新案登録第3162226号のエクストラクタである。この主要部はバールハンドルと、該バールハンドルの先端部に設けられたリーマを掛止するための掛止部とから成るバールであり、バールの掛止部でリーマのハンドル部に形成された孔部や掛止部を掛止して梃子で引き抜くように用いるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
確かに実用新案登録第3162226号のエクストラクタは、バールだけを単独で用いる場合、梃子のように使用しても、従来の梃子とは異なりすでに浮かせてある歯に対して用いるものであるために、隣り合う歯への影響は殆どないと言う効果を有している。しかしながら現実は、平らな木板から釘を抜くようには行かない。と言うのも治療時に於ける患者の口が開きにくい状況やその時々の口の形や、その時の医師の体勢や、歯並びや噛み合わせなどと言った特殊な事情によって、バールの平たい底部が抜きたいとする歯に隣り合う歯列の上にぴたりと接しない場合があるからである。バールを患者の口に差し入れてリーマのハンドル部に掛止する際に平らなバールの底部で歯の角を探るのであるが、底部が平らなばかりにぎくしゃくする感がある。すなわち現状で患者の口腔内での取り回しがし易いような抜歯用具が希求されているのである。
この問題を解決することが出来れば、歯科医師の仕事がより楽になり疲労もより少なくなる。従ってこの発明の課題は上述のような問題点を解決して、不自由な口腔内での取り回しがし易くなり、抜歯がもっと安全にかつ容易に行えるような抜歯用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、歯に固定させたアンカーを掛止して梃の原理でこの歯を抜くための抜歯用具であって、ハンドルと、このハンドルの先に設けられた掛止部とから成り、この掛止部にこの部位を二股にするための掛止溝が設けられていると共に、掛止部の底部が湾曲状に設けられている、抜歯用具を提供することにより達成される。
患者は口をなるべく薄く開くようにするのが常であるから、抜歯用具を患者の口に差し入れるのに多少不自由がある状況であっても、リーマのハンドル部などに掛止するための掛止溝が設けられている掛止部の底部が湾曲状であることにより、バールの湾曲状の底部で歯の角や平らな面への当たり具合を円滑に探ることが可能となり、抜歯用具の口腔内での取り回しがとても楽なものとなっている。
また上記の課題は、歯に固定させたアンカーを掛止して梃の原理でこの歯を抜くための抜歯用具であって、ハンドルと、このハンドルの先に設けられた、底部が湾曲状の掛止部とから成り、この掛止部の前側または後側に掛止孔が設けられている、抜歯用具を提供することにより達成される。
請求項1の抜歯用具では掛止部の掛止溝にアンカーを掛止するように構成されていた。掛止溝が掛止部の先端部に設けられているような場合では、この後方の湾曲状の底部を、アンカーを掛止させた歯から見て後方の歯に宛がい梃の原理を利用するようにする。ところがこの後方に歯が無い場合には湾曲状の底部を宛がう場所に困ってしまう。そこで逆に後側に掛止孔を設けて、ここにアンカーを掛止させて、これより前方の湾曲状の底部を、アンカーを掛止させた歯から見て前方の歯に宛がうようにしたのである。なおこのような掛止孔は、請求項1の掛止溝の代わりに、湾曲状の底部の前側に設けることが出来る。
また上記の課題は、歯に固定させたアンカーを掛止して梃の原理でこの歯を抜くための抜歯用具であって、(1)ハンドルと、このハンドルの先に設けられた掛止部と、これ等の間に位置する連結軸と、前記掛止部にこの部位を二股にするために設けられた掛止溝とから成るバールと、(2)ベースハンドルと、このベースハンドルの先端部の歯に当接させるための当接部と、これ等の間に位置して前記バールの前記連結軸を嵌めるための連結溝とから成るベースとから構成され、(3)前記掛止部を前記連結溝に嵌めて前記バールと前記ベースとを連結一体化して前記ハンドルと前記ベースハンドルとが開いた状態にした時に、前記ベースの前記当接部に前記バールの前記掛止部が収まるように前記当接部に切欠部が設けられていると共に、前記当接部の底部が湾曲状に設けられていることを特徴とする、抜歯用具を提供することにより達成される。なお前記掛止部の形状が各々異なる複数個のバールと1個のベースとを組物にして成るエクストラクタを提供することも可能である。この場合もベースの当接部の底部が湾曲状に設けられているように構成する。
このリーマ用のエクストラクタには2つの使用法がある。その一は、バールだけを単独で用いて掛止部でリーマのハンドル部に形成された孔部や掛止部を掛止して、上記探りを行いつつ引き抜くように用いる方法である。この際に梃子のように使用することも出来るが、従来の梃子とは異なりすでに浮かせてある歯に対して用いるものであるために、隣り合う歯への影響は殆どない。なおバールの掛止部の底部を湾曲状に形成することが可能である。この場合ベースの当接部の底部と湾曲形状を合わせるようにしても良い。
その二は、バールとベースとを連結一体化させて用いる方法である。すなわち例えば、ベースの当接部を浮かせてある歯の両側の歯に渡すようにして、上記探りを行いつつ宛がい、掛止部でリーマのハンドル部に形成された孔部や掛止部を掛止させつつ連結軸を連結溝に嵌めるようにしてバールとベースとを連結一体化させ、バールハンドルとベースハンドルとを恰も鉗子のように握り、ベースで状態を安定させつつバールでリーマを引き抜くように用いる方法である。バールとベースとを連結一体化させた後にも上記探りを行うことが可能である。あるいは掛止部を連結溝に嵌めてバールとベースとを連結一体化させてバールハンドルとベースハンドルとが開いた状態にし、更にバールハンドルとベースハンドルとを開いてバールの掛止部をベースの当接部の切欠部より下方に出すことが可能な構成のものでは下方に出して、上記探りを行いつつ掛止部にリーマを掛止させてからバールハンドルとベースハンドルとを閉じるようにして使用する方法である。これ等の場合もすでに浮かせてある歯に対して用いるために隣り合う歯への影響は殆どない。
なお前記ベースの前記当接部が環状を呈しており、前記切欠部が環状の前記当接部の内側の孔部であり、該孔部は前記バールの前記掛止部の先に前記リーマを通し得るスペースを有するものとする設計が可能である。この他、掛止部の先にリーマを通し得るスペースを作るには、ベースの当接部を環状とせずに、当接部の先端部等の一部を解放した構成とすれば良い。
なお掛止部を連結溝に嵌めてバールとベースとを連結一体化させる際に、前記連結軸と前記連結溝との何れか一方または双方が磁力を帯びているように構成することで、前記連結軸と前記連結溝とが磁着して、不本意に外れたりすることをより少なくすることが出来る。この構成は、連結軸や連結溝に磁石を用いることで、或いは連結軸や連結溝そのものを磁化することで実現可能である。また連結軸と連結溝とは、双方共に磁力を帯びており互いに磁着するように構成することも、一方が磁力を帯びており他方がこれに磁着する素材例えば鉄材に成るように構成することも可能である。
また上記の課題は、歯に固定させたアンカーを掛止して梃の原理でこの歯を抜くための抜歯用の正動作鉗子であって、第1の柄の先端部の掛止部が第2の柄の先端部の歯に当接させるための当接部よりも前方に突出していると共に前記掛止部に二股状の掛止溝が設けられており、第1の柄と第2の柄とは回動軸で回動自在に設けられていると共に前記回動軸の後方の第1の柄と第2の柄との間にバネが取り付けられており、前記当接部の底部が湾曲状に設けられていることを特徴とする、抜歯用具を提供することにより達成される。正動作鉗子では、第1の柄と第2の柄とを握ることで、各々の先端部の掛止部と当接部とが開く方向に動作するようになっている。また握る力を緩めると、バネカの加勢もあって先端部が閉じる。
そこで、先ず上記リーマ様の抜歯用具のハンドル部を指で摘み持ち、抜くべき歯にネジ部を捻じ込ませ、次いで第2の柄の先端部の当接部を浮かせてある歯の隣り合う歯に当てるようにして上記探りを行いつつ宛がい、第1の柄の先端部の掛止部でリーマのハンドル部に形成された孔部や掛止部を掛止させつつ、第1の柄と第2の柄とを握って、リーマを引き抜くようにするのである。本抜歯用具に於いても、すでに浮かせてある歯に対して用いるために隣り合う歯への影響は殆どなく、歯を梃子(ヘーベル)で脱臼させる必要や歯槽骨を陥没させる虞がなく、患者の負担が軽くて済む。
このように正動作鉗子に上記探りが出来るようにしたことによって、上述した他の抜歯用具と同様、患者の口が開きにくい状況やその時々の口の形や、その時の医師の体勢や、歯並びや噛み合わせなどと言った特殊な事情に、極めて良好に適応することが可能となっている。
さて請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れの抜歯用具であっても、前記底部が前記先端部の長手方向に湾曲状に設けられているものとすることが出来る。特に請求項1の抜歯用具のようにハンドルとこのハンドルの先に設けられた掛止部とから成り、底部がハンドルと掛止部との長手方向に湾曲状に設けられているものの設計ではこれしかないであろう。また請求項2の抜歯用具のようにバールとベースとを連結一体化して鉗子のようにするものや、請求項3の抜歯用具のように正動作鉗子では、底部は先端部の長手方向に湾曲状に設けられているものとなるであろう。
これに対して請求項1や請求項2に記載の抜歯用具では、前記掛止部が略長円形状を呈していると共に、前記底部が全周方向に湾曲状に設けられているものとすることが可能である。いわゆるスプーンのような形状がこれに含まれる。これによれば全周方向への上記探りが容易となり、更に便利である。特に患者が抜歯を怖がるなどして薄くしか口を開かないような場合に、スプーンのような形状であると患者を怖がらせることが少なく、口内に挿し込みやすいと言う利点がある。
この底部が全周方向に湾曲状に設けられているものでは、前記掛止溝が前記掛止部の側部に設けられているものとすることが出来る。側部とは前方側部、中央側部、後方側部などのことである。底部が全周方向に湾曲状に設けられているものでは、全周方向への上記探りが容易なものになっている分けであるが、この効果をさらに活かすべく、先端部以外の箇所でもリーマのハンドル部などを掛止可能にしたのである。従って全周方向への上記探りが円滑であり、かつこれに続くリーマのハンドル部への掛止も容易である。
次に請求項1、請求項2の抜歯用具に関して、前記ハンドルにまたは前記掛止部に鏡部を有するものとすることが出来る。鏡部があると患者の歯の裏側を詳しく見ることが出来るから便利である。鏡部はハンドルや掛止部に対するメッキ面であっても、独立した鏡を取り付けたものであっても良い。また鏡部はいわゆる平面鏡であれば等倍の鏡像が、凹面鏡であれば拡大鏡像が得られる。
また請求項1、請求項2の抜歯用具に関して、前記ハンドルまたは前記掛止部に、患者を安心させるべく図柄を入れて成るものとすることが出来る。掛止部がいわゆるスプーンのような形状であると、患者が抜歯を怖がるなどして薄くしか口を開かないような場合であっても患者を怖がらせることが少なく、口内に挿し込みやすい利点があることをこれまでに説明した。この利点を更に強化すべく、いわゆるキャラクターの絵などの図柄を入れるようにした。これによれば単に子供のみならず、大人でも殊に歯医者嫌いの患者や光物が苦手な患者らを幾らかでも安心させることの出来る効果がある。
また請求項1、請求項2の抜歯用具に関して、前記ハンドルに、音声信号を発生するための音声発生回路とまたは外部の音声発生装置からの音声信号の入力部と、この音声信号を音声振動に変換する骨伝導トランスデューサと、この骨伝導トランスデューサを駆動する電源と、これ等のON/OFFのための電源スイッチとを有しているものとすることが出来る。これによれば音声信号は歯から加えらることによって骨伝導により内耳に伝わり音声が聞かれるため、抜歯に際して患者は不可思議な興趣を催すと共に心地良さが体感され、抜歯時の恐怖が心理的に癒される。従って歯科医はこの時を衝いて抜歯を行うことになる。
すなわち音声発生回路が発する音声信号や外部の音声発生装置からの音声信号が骨伝導トランスデューサによって音声振動に変換され、この音声振動が抜歯しようとする歯と、これに隣り合う梃の支点を得るための歯とに加えられ、更に骨を振るわせ骨を伝って直接聴覚神経を刺激する。難聴になった楽聖ベートーベンが歯で噛んだ指揮棒をピアノに押し付けて骨導音を聞き取り作曲を続けることができたのも骨伝導のお陰である。彼の音楽によっていま私たちが癒されている。音声は声であったり音楽であったりする。声の場合は痛くない暗示とすることが出来る。また子供に対してはその親の声を録音しておいて、この声を用いるように設計することも可能である。なお音声信号を出力する音声発生回路と外部の音声発生装置からの音声信号の入力部との両方を有するようにしても良い。電源は内蔵バッテリであったり、外部電源とのコネクタであってもよい。
なおこれまでに説明したようなリーマ用の抜歯用具とこのリーマとを、組物にして成るものを提供することが出来る。1種類の抜歯用具に付いて、全体の大きさや形状が異なる複数種類のリーマを組合わせるようにしても良い。同様に大中小のように異なるサイズの抜歯用具をセットで提供することが可能である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、実用新案登録第3162169号や実用新案登録第3162226号等々を用いて浮かせた歯を引き抜くのに有効なバール状の抜歯用具を提供することが出来た。これによれば隣り合う歯への影響が殆どなく、抜歯を安全に安定的にかつ容易に行うことが出来て、患者の負担が軽いと言う効果を奏する。このことはまた歯科医師の仕事がより楽になり疲労もより少なくなるなどの効果を生み出している。なお本発明の抜歯用具は梃子(ヘーベル)としての使用可能性を備えている。
なおハンドルや掛止部に鏡部を有するものでは、鏡部によって患者の歯の裏側を詳しく見ることが出来るため便利である。またハンドルや掛止部にキャラクターの絵などの図柄を入れたものには、大人子供を問わず患者を安心させる効果がある。また骨伝導トランスデューサを備えるものでは声や音楽が不思議な聞こえ方をするので、患者に癒しや安心感を与えることが出来る。このことは歯科医師自身の肉体的精神的な負担を軽くすることにも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1は実施例1を側面視した説明図である。
図2は実施例1を斜面視した説明図である。
図3は実施例1の使用状態の説明図である。
図4は実施例2を平面視した説明図である。
図5は実施例1を側面視した説明図である。
図6は実施例3を平面視した説明図である。
図7は実施例4を側面視した説明図である。
図8は実施例4を側面視した説明図である。
図9は実施例5を側面視した説明図である。
図10は実施例5を側面視した説明図である。
図11は実施例6を平面視した説明図である。
図12は実施例6の使用状態の説明図である。
図13は実施例7を平面視した説明図である。
図14は実施例7の断面を側面視した説明図である。
図15は実施例8を平面視した説明図である。
図16は実施例8をブロック図で表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
【実施例1】
【0008】
図1~
図3によりこの実施例のバール状の抜歯用具を説明する。抜歯用具1はハンドル10とこの先端部に設けられた掛止部11とから構成されている。特に掛止部11の底部は抜歯用具1の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する湾曲部12とされている。鎖線による補助線によってこのことが良く分かる。ロッキングチェアーの弧台のようでもある。また掛止部11の先端部にはこの部位を二股にするための掛止溝13が形成されている。この掛止溝13に後述するリーマ8が掛止される。
この抜歯用具1に適合するリーマ8に付いての詳しい説明は省くが、このものは例えば歯内にねじ込むためのネジ部80とハンドル部81とを、回転中心軸としての軸部82で接続して成るものであり、この軸部82とハンドル部81とで側面視T字形状を呈するようになっている。このT字の脇の部位は掛止部であり、上述した抜歯用具1の掛止部11にて掛止される。なおリーマ8はこの発明の必須要件ではない。
この使用法であるが、リーマ8のハンドル部81を、親指と人差し指や中指とで挟んでネジ部80を虫歯の根管に差し入れ、摘んだ指でハンドル部81を右回転させるようにする。こうしてネジ部80をしっかりと歯根に食い込ませるようにするのであるが、この際に虫歯に掛かる捩りによって虫歯が浮いて来ている。そこで
図3に示すように、ハンドル10を握り掛止部11の掛止溝13をリーマ8に掛けるべく、湾曲部12にてこの虫歯に隣り合う歯列の上面部分を探りながら掛止溝13をリーマ8に掛けるようにする。掛止部11の底部は湾曲部12であるために、滑らせるような移動が行い易く、ハンドル10が比較的に自由に扱える。こうして抜歯用具1のハンドル10を操りつつ、リーマ8を引き抜くようにする。なおこの際にこの抜歯用具1を梃子のように使用して、リーマ8を引き抜くことも可能である。
こうして隣り合う歯への影響が殆どなく、抜歯を安全に安定的にかつ容易に行うことが出来て、患者の負担が軽くなる。
【実施例2】
【0009】
図4~
図5はこの実施例の抜歯用具2である。このものはハンドル20とこの先端部に設けられた略長円形状の掛止部21とから構成されている。特に掛止部21の底部は抜歯用具2の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する船底部22とされている。これはスプーンの形状に近いが、掛止部21のハンドル20に近い部位は太く形成されている。また掛止部21の先端部にはこの部位を二股にするための掛止溝23が形成されている。この掛止溝23にリーマが掛止される。なおハンドル20の他端部には紐通し孔24が設けられている。
この使用法であるが、実施例1と同様にリーマをしっかりと虫歯に食い込ませてから、ハンドル20を握って掛止部21の掛止溝23をリーマに掛けるべく、船底部22でこの虫歯に隣り合う歯列の上面部分を探りながら、掛止溝23をリーマに掛けるようにする。こうして抜歯用具2のハンドル20を自由に操りつつリーマ3を引き抜くようにするのである。なおこの際にこの抜歯用具2を梃子のように使用してリーマを引き抜くことも可能である。
この船底部22の探りが実施例1と異なる点は、スプーンの形状に類似した、幅の広い船底部22を有していることによって、歯列の上面部分のみならず歯列の角を探ることが出来る点にある。歯の角部分や歯列の段差部分をも探ることが出来ることから、患者の口が開きにくい状況やその時々の口の形や、その時の医師の体勢や、歯並びや噛み合わせなどと言った特殊な事情に対応することが出来るのである。このことを言い表すとしたら、掛止溝23のリーマと船底部22の歯との接点とハンドル20とで軸が合っていると言うことである。なお掛止部21が船底部22で船底形状を呈して強度が出せることにより、掛止部21の肉厚を薄く構成することが可能である。
こうして隣り合う歯への影響が殆どなく、抜歯を安全に安定的にかつ容易に行うことが出来て、患者の負担が軽くなる。また同様に歯科医師の仕事がより楽になり、疲労もより少なくなると言う効果がある。なお掛止部21の形状が略長円形であることから、患者の口内へ入れる際に抵抗感が少なく、この意味でも安心な抜歯用具である。
【実施例3】
【0010】
図6はこの実施例の抜歯用具25である。このものはその殆どの構成を上述した実施例2に倣うものであるが、掛止部26の構成で異なっている。すなわち掛止部26の底部は抜歯用具25の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する船底部27とされているが、先端部の掛止溝23以外にも、掛止部26の側部に掛止溝28及び掛止溝29が設けられている。掛止部26の側部の前方側部の、上記掛止溝23の両側に掛止溝28,28が、また掛止部26の側部の後方側部の両側に掛止溝29,29が設けられている。なお掛止溝28と掛止溝29との間に別の掛止溝を設ける設計もある。これは偏に掛止部26の形が略長円形状であることによる。
上述したように、患者の口が開きにくいことや医師の体勢等々の事情に応じて、掛止溝28や掛止溝29が併せて使用出来ることは、とても使い勝手が良くて便利なことなのである。
【実施例4】
【0011】
図7~
図8はこの実施例の抜歯用具である。ベース4はベースハンドル40とこの先端部に設けられて歯の咬合面に当接させるための当接部42と、これ等の間に位置して後述のバール3の左右の連結軸31を回動自在に嵌めるための2つの連結溝41とから構成されている。また当接部42には後述のバール3の掛止部32が収まる環状の切欠部44が設けられている。また当接部42の底部はベース4の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する湾曲部43とされている。
一方バール3はバールハンドル30とこの先端部に設けられた掛止部32とこれ等の間に位置してベース4の連結溝41に回動自在に嵌めるための左右の連結軸31とから構成されている。なお掛止部32の先端部にはこの部位を二股にするための掛止溝33が形成されている。この掛止溝33に後述するリーマ8のハンドル部81が掛止される。
次に上述した2つの使用法のその二に従い
図8に示すようにベース4にバール3を組み合わせて用いるべく、ベース4の連結溝41にバール3の連結軸31を嵌めるようにしてベース4とバール3とを連結一体化させ、ベース4の前記環状の切欠部44(当接部42の内側の孔部である)の、バール3の掛止部32の先に出来たスペースの部分に、虫歯に食い込んだリーマ8を位置させて、ベース4の当接部42を、湾曲部43にて浮かせてある虫歯の両側の歯の上面部分を探りながら、両側の歯に渡すようにして宛がいつつ、掛止溝33をリーマ8に掛けるようにする。こうしておいてベースハンドル40とバールハンドル30とを恰も鉗子のように握って、ベース4で状態を安定させつつバール3でリーマ8を引き抜くようにする。
なお上述した2つの使用法のその一に従い、
図7に示すようにバール3を単独で用いることが可能である。バールハンドル30を握り掛止部32の掛止溝33をリーマ8のハンドル部81に掛けてリーマ8を引き抜くようにする。なおこの際にこの実施例のバール3を梃子のように使用してリーマ8を引き抜くことも可能である。なおバールハンドル30の掛止部32の底部を、バール3の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する湾曲部とする構成も可能である。またこの湾曲部を上記ベース4の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する湾曲部43に合わせて同じような湾曲度とすることも可能である。これによりバール3は単独でも上記探りを行うことが出来るようになる。
【実施例5】
【0012】
図9~
図10はこの実施例の抜歯用具5(正動作鉗子)である。第1の柄50の先端部の掛止部51が第2の柄53の先端部である歯に当接させるための当接部54よりも前方に突出していると共に掛止部51に二股状の掛止溝52が設けられている。第1の柄50と第2の柄53とは回動軸56で回動自在に設けられていると共に回動軸56の後方の、第1の柄50と第2の柄53との間にバネ57が取り付けられている。特に当接部54の底部は湾曲状に設けられて湾曲部55とされている。
正動作鉗子では、第1の柄50と第2の柄53とを握ることで、各々の先端部の掛止部51と当接部54とが開く方向に動作するようになっている。また握る力を緩めることによって、バネ57のカの加勢もあつて先端部が自動的に閉じる。
この使用法であるが、第2の柄53の先端部の当接部54を浮かせてある歯の隣り合う歯に当てるようにして、上述した探りを行いつつ宛がい、この際に第1の柄50の先端部の掛止部52でリーマ8の掛止部としてのハンドル部81を掛止させつつ、第1の柄50と第2の柄53とを握ってリーマ8を引き抜くようにする。上記探りは湾曲部55を設けたことにより可能になったことである。
このように正動作鉗子である抜歯用具5に上記探りが出来るようにしたことによって、上述した他の抜歯用具と同様、患者の口が開きにくい状況やその時々の口の形や、その時の医師の体勢や、歯並びや噛み合わせなどと言った特殊な事情に、極めて良好に適応することが可能となっている。なおこの抜歯用具5でも、すでに浮かせてある歯に対して用いるため、隣り合う歯への影響は殆どなく、歯を梃子(ヘーベル)で脱臼させる必要や歯槽骨を陥没させる虞が少なく、患者の負担が軽くて済む。
【実施例6】
【0013】
図11および
図12はこの実施例の抜歯用具6である。このものはハンドル60とこの先端部分に設けられた略長円形状の掛止部61とから構成されている。特に掛止部61の底部は抜歯用具6の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する船底部62とされている。これはスプーンの形状に近いが、掛止部61のハンドル60に近い部位は太く形成されている。また掛止部61の先端部にはこの部位を二股にするための掛止溝63が形成されている。また掛止部61の後端部には、リーマ8のハンドル部81を通し得る大きさの円形の孔とこれに続くハンドル部81を通さない細さの長形の孔とを連続させて構成した掛止孔64が形成されている。上記掛止溝63は掛止部61の縁部に至るが、この掛止孔64は掛止部61の縁部には至っていない。なお上記掛止溝63の代わりに掛止孔64を設けることが出来る。従って上述した実施例2の掛止溝23の代わりに掛止孔64を設けたものも、この発明の権利範囲内のものである。この掛止溝63や掛止孔64にリーマ8が掛止されるのである。ハンドル部81は長形の孔に入ることで抜歯時に抜けないようになる。なおハンドル60の他端部には紐通し孔65が設けられている。
この使用法であるが、ここではリーマ8を食い込ませた虫歯の後方に、鎖線で表したような歯の欠損や、ぐらつきなどがある場合を想定する。そうでない場合は実施例2の使用法を参照すれば良い。そこでリーマ8をしっかりと虫歯に食い込ませてからハンドル60を握って掛止部61の掛止孔64をリーマ8に掛けるべく、船底部62でこの虫歯の前方に隣り合う歯列の上面部分を探りながら掛止孔64をリーマ8に掛けるようにする。こうして抜歯用具6のハンドル60を上方に引き上げるようにして、リーマ8を引き抜くのである。これは上述した実施例2の場合とは逆の操作になる。
【実施例7】
【0014】
図13および
図14はこの実施例の抜歯用具66である。基本的な構成を上述した実施例6のそれに倣うものであり、全体はスプーンの形状に近く、ハンドル60とこの先端部分に設けられた略長円形状の掛止部61とから構成されている。掛止部61の先端部には掛止溝63が形成されており、また掛止部61の後端部には上記掛止孔64が形成されている。そしてこの掛止溝63と掛止孔64との間の掛止部61の底部は平面状に形成されており、その表面は鏡面仕上げが施されて平面鏡67と為されている。
この平面鏡67によって患者の歯の裏側を詳しく見ることが出来る。なお平面鏡67は掛止部61に鏡面メッキを施して成るものであるが、別途ガラス製の鏡を埋め込むような構成も可能である。また平面鏡67の代わりに拡大鏡としての凹面鏡を設けることなども可能である。
一方、ハンドル60にはかわいい動物の絵柄68の印刷が施されている。患者の前にこの抜歯用具66を指し出すと、ハンドル60の動物の絵柄68に患者の目が行き、患者の気を逸らして安心させることが出来る。なお絵柄68の印刷以外には、シールを貼り付けたり、ハンドル60をそのような造形として成型するなどによっても、同様の構成を実現することが出来る。
【実施例8】
【0015】
図15および
図16はこの実施例の抜歯用具7である。このものは合成樹脂製の筐体でもあるハンドル70とこの先端部分に設けられた略長円形状の掛止部71とから構成されている。特に掛止部71の底部は抜歯用具7の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する船底部72とされている。これはスプーンの先部の形状に近い。そして掛止部71の先端部には掛止溝73が形成されており、また掛止部71の後端部には、リーマ8のハンドル部81を通し得る大きさの円形の孔とこれに続くハンドル部81を通さない細さの長形の孔とを連続させて構成した掛止孔74が形成されている。
次にハンドル70であるが、この中にはメロディーIC回路75と、これに接続された骨伝導スピーカ76と、これ等に電力を供給するための乾電池77とが納められている。骨伝導スピーカ76は上記掛止部71に接続している。またハンドル70の外部にはメロディーIC回路75を動作させるスイッチ78が設けられている。これ等の配線の様子は
図16から明らかとなる。そこでスイッチ78をONにすると、乾電池77の電力はメロディーIC回路75に所定のメロディー信号を発生させて骨伝導スピーカ76を動作させる。この骨伝導スピーカ76のメロディー振動は上記掛止部71に伝えられるから、掛止部71を患者の抜歯しようとする歯と、これに隣り合う梃の支点を得るための歯とに接触させるようにすると、メロディー振動はさらに顎の骨を伝って直接聴覚神経を刺激する。これが患者にはメロディーとして聞こえることになり、これが抜歯の不安を取り除いたり軽減させるのである。なおメロディーIC回路75は所定のメロディー信号を発生するものであるが、複数種類のメロディーを選択可能にしておき、歯科医師が患者にメロディーを選択させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、抜歯の際に患者の負担をより軽く歯科医師の仕事をより楽にしたことで、産業上の利用価値を極めて高いものとすることが出来た。なお本発明の抜歯用具はこれを獣医師が用いるものとして構成して提供することが可能である。なお請求項2の掛止孔の構成を請求項3や請求項4に適用して良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0017】
1:抜歯用具 10:ハンドル 11:掛止部 12:湾曲部
13:掛止溝
2:抜歯用具 20:ハンドル 21:掛止部 22:船底部
23:掛止溝 24:紐通し孔 25:抜歯用具 26:掛止部
27:船底部 28:掛止溝 29:掛止溝
3:バール 30:バールハンドル 31:連結軸 32:掛止部
33:掛止溝
4:ベース 40:ベースハンドル 41:連結溝 42:当接部
43:湾曲部
5:抜歯用具 50:第1の柄 51:掛止部 52:掛止溝
53:第2の柄 54:当接部 55:湾曲部 56:回動軸
57:バネ
6:抜歯用具 60:ハンドル 61:掛止部 62:船底部
63:掛止溝 64:掛止孔 65:紐通し孔 66:抜歯用具
67:平面鏡 68:絵柄
7:抜歯用具 70:ハンドル 71:掛止部 72:船底部
73:掛止溝 74:掛止孔 75:メロディーIC回路
76:骨伝導スピーカ 76:電源 77:乾電池 78:スイッチ
8:リーマ 80:ネジ部 81:ハンドル部 82:軸部