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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】便器および仮設トイレ
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/00 20060101AFI20230524BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20230524BHJP
   E03D 11/14 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A47K11/00 111
A47K11/00 108
E03D11/00 A
E03D11/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019169321
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021045328
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390040958
【氏名又は名称】みのる化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】西岡 和道
(72)【発明者】
【氏名】赤松 健一
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-125505(JP,A)
【文献】特開昭57-123341(JP,A)
【文献】実開平03-079796(JP,U)
【文献】実開昭52-032145(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00-11/12
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汲み取り式と水洗式とに切り替え可能な便器であって、
便器本体と、
前記便器本体に対して着脱可能な第1切替部材および第2切替部材と、
を有し、
前記便器本体は、
上開口から下開口へ向かうにつれて次第に縮径する本体内周面と、
前記下開口から前記下開口よりも下方の汲み取り用開口まで延びる縦排出路と、
前記縦排出路の側部に設けられた水洗用開口から横方向に延びるS字排出路と、
を有し、
前記縦排出路に、前記第1切替部材および前記第2切替部材を、択一的に装着可能であり、
前記縦排出路に前記第1切替部材を装着したときには、前記第1切替部材により、前記下開口と前記汲み取り用開口とを連通する第1連通孔が形成されるとともに、前記水洗用開口が閉塞され、
前記縦排出路に前記第2切替部材を装着したときには、前記第2切替部材により、前記下開口と前記水洗用開口とを繋ぐ第2連通孔が形成されるとともに、前記汲み取り用開口が閉塞される、便器。
【請求項2】
請求項1に記載の便器であって、
前記第1切替部材および前記第2切替部材は、前記上開口を介して、前記縦排出路に着脱可能である、便器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の便器であって、
前記第1切替部材または前記便器本体は、
前記第1連通孔を開閉するフラッパー
を有する、便器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の便器であって、
前記縦排出路は、円環状の段差面を有し、
前記第1切替部材および前記第2切替部材は、前記段差面に支持される、便器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の便器であって、
前記縦排出路に対する前記第1切替部材および前記第2切替部材の固定が、ねじ込み式またはラッチ式である、便器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の便器と、
前記便器および前記便器を使用する空間を内包するボックスと、
前記ボックスの下方に位置し、前記汲み取り用開口に接続される便槽と、
を有する、仮設トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汲み取り式(簡易水洗式を含む)と水洗式(本水洗下水流出式)とに切り替え可能な便器および仮設トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場、イベント会場、被災地などに、一時的に設置される仮設トイレが知られている。仮設トイレは、多くの場合、レンタルで使用される。仮設トイレの種類としては、ボックスの下部の便槽に排泄物を溜める汲み取り式と、下水管に接続される水洗式とがある。設置場所に下水管が整備されている場合には、水洗式の仮設トイレが選択されるが、そうでない場合には、汲み取り式の仮設トイレが選択される。
【0003】
従来の仮設トイレについては、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6027354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来は、設置場所の環境に応じて、汲み取り式の仮設トイレまたは水洗式の仮設トイレが使用されていた。このため、レンタル会社は、汲み取り式の仮設トイレと、水洗式の仮設トイレとを、それぞれ十分な数だけ保有しておく必要があった。
【0006】
また、工事現場では、工事の途中から下水管が整備される場合があるが、工事の初期段階では下水管に接続できないため、汲み取り式を使用せざるを得ない。このように、同じ設置場所においても、下水管を利用できない時期と、下水管を利用できる時期とがある場合、状況に応じて汲み取り式と水洗式とを切り替えたい、という要望もあった。
【0007】
ただし、汲み取り式と水洗式とを切り替えるために、便器ごと交換するのでは、管理者の作業負担が大きく、交換にかかるコストも大きい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、便器本体を交換することなく、汲み取り式と水洗式とに切り替えることができる、便器および仮設トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、汲み取り式と水洗式とに切り替え可能な便器であって、便器本体と、前記便器本体に対して着脱可能な第1切替部材および第2切替部材と、を有し、前記便器本体は、上開口から下開口へ向かうにつれて次第に縮径する本体内周面と、前記下開口から前記下開口よりも下方の汲み取り用開口まで延びる縦排出路と、前記縦排出路の側部に設けられた水洗用開口から横方向に延びるS字排出路と、を有し、前記縦排出路に、前記第1切替部材および前記第2切替部材を、択一的に装着可能であり、前記縦排出路に前記第1切替部材を装着したときには、前記第1切替部材により、前記下開口と前記汲み取り用開口とを連通する第1連通孔が形成されるとともに、前記水洗用開口が閉塞され、前記縦排出路に前記第2切替部材を装着したときには、前記第2切替部材により、前記下開口と前記水洗用開口とを繋ぐ第2連通孔が形成されるとともに、前記汲み取り用開口が閉塞される。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の便器であって、前記第1切替部材および前記第2切替部材は、前記上開口を介して、前記縦排出路に着脱可能である。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の便器であって、前記第1切替部材または前記便器本体は、前記第1連通孔を開閉するフラッパーを有する。
【0012】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の便器であって、前記縦排出路は、円環状の段差面を有し、前記第1切替部材および前記第2切替部材は、前記段差面に支持される。
【0013】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の便器であって、前記縦排出路に対する前記第1切替部材および前記第2切替部材の固定が、ねじ込み式またはラッチ式である。
【0014】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の便器と、前記便器および前記便器を使用する空間を内包するボックスと、前記ボックスの下方に位置し、前記汲み取り用開口に接続される便槽と、を有する仮設トイレ。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1発明から第6発明によれば、便器本体を交換することなく、第1切替部材と第2切替部材とを交換するだけで、便器を、汲み取り式と水洗式とに切り替えて使用することができる。
【0016】
特に、本願の第2発明によれば、便器本体を床面から取り外すことなく、トイレの室内から、便器本体の上開口を介して、第1切替部材および第2切替部材の交換作業を行うことができる。
【0017】
特に、本願の第3発明によれば、便槽内の臭気が、第1連通孔を通って逆流することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】仮設トイレの斜視図である。
図2】便器の側面図である。
図3】第1切替部材が装着された便器の断面図である。
図4】第1切替部材付近の部分断面図である。
図5】第2切替部材が装着された便器の断面図である。
図6】第2切替部材付近の部分断面図である。
図7】変形例に係る第1切替部材付近の部分断面図である。
図8】変形例に係る第2切替部材付近の部分断面図である。
図9】変形例に係る便器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<1.仮設トイレについて>
図1は、本発明の一実施形態に係る便器1を含む仮設トイレ100の斜視図である。この仮設トイレ100は、工事現場、イベント会場、被災地などに、一時的に設置され、利用者が大便または小便の用を足すために使用される。図1に示すように、仮設トイレ100は、ボックス101、便槽102、および便器1を有する。
【0021】
ボックス101は、上下に延びる略四角柱状の筐体である。ボックス101は、例えば、樹脂のブロー成形により製造される。ボックス101の内部には、便器1と、利用者が便器1を使用するトイレとしての空間とが設けられている。また、ボックス101の前面には、開閉可能な扉101Aが設けられている。利用者は、扉101Aを開くことにより、ボックス101へ入室またはボックス101から退室することができる。また、ボックス101内で用を足すときには、扉101Aを閉じて、ボックス101の内側から扉101Aを施錠することができる。
【0022】
便槽102は、便器1を汲み取り式で使用する場合に、利用者から排泄された大便および小便を貯留する容器である。便槽102は、ボックス101の下方に配置され、ボックス101の下面と連結されている。便槽102は、その上部に、図示を省略した便受け入れ口を有する。便受け入れ口は、便器1の後述する汲み取り用開口16に接続される。
【0023】
<2.便器について>
続いて、ボックス101内に設置される便器1について、説明する。
【0024】
図2は、便器1の側面図である。この便器1は、利用者が腰掛けて使用する洋式の大便器である。図2に示すように、便器1は、便器本体10、便座20、便蓋30、および貯水タンク40を有する。
【0025】
便器本体10は、樹脂または陶器により形成される。便器本体10は、その上端部に、上方へ向けて開放された上開口11を有する。また、図2中に破線で示したように、便器本体10の内側には、上開口11から下方へ向かうにつれて次第に縮径する本体内周面12が設けられている。利用者から排泄される大便および小便は、この本体内周面12に受けられる。本体内周面12の下端部は、上開口11よりも小さい下開口13となっている。
【0026】
また、図3に示すように、便器本体10は、縦排出路14とS字排出路15とを有する。縦排出路14は、上述した下開口13から、下開口13よりも下方に設けられた汲み取り用開口16まで、縦方向に延びる貫通孔である。汲み取り用開口16は、便槽102の上述した便受け入れ口に接続される。
【0027】
図3に示すように、本実施形態の縦排出路14は、大径筒状面141、小径筒状面142、および段差面143を有する。大径筒状面141は、下開口13から下方へ向けて延びる円筒状の面である。小径筒状面142は、大径筒状面141よりも下方に位置し、大径筒状面141よりも径が小さい円筒状の面である。段差面143は、大径筒状面141の下端部と小径筒状面142の上端部との間を繋ぐ円環状の面である。後述する第1切替部材50および第2切替部材60は、この段差面143に支持される。
【0028】
S字排出路15は、水洗式の場合に使用される流路である。S字排出路15は、縦排出路14の側部に設けられた水洗用開口17から、横方向に延びる。S字排出路15の下流側の端部は、下水管または浄化槽に接続される。S字排出路15は、水洗用開口17よりも高さが高くなるように湾曲したトラップ部151を有する。水洗式として使用する場合には、このトラップ部151よりも上流側に水溜まりが形成される。これにより、下水管からの臭気がボックス101内の空間へ流入することが防止される。
【0029】
便座20は、利用者が便器1に腰掛けるときに、利用者の臀部を支持する部材である。便座20は、例えば、樹脂の射出成形により形成される。便座20は、便器本体10の上開口11の縁に沿った、U字型またはO字型の形状を有する。便座20は、便器本体10の後部上面に位置するヒンジ18を中心として回動する。これにより、利用者は、便座20の姿勢を、便器本体10の上面に配置された水平姿勢(図2中の二点鎖線の姿勢)と、便器本体10の後部上方へ立ち上げた起立姿勢(図2中の実線の姿勢)とに、切り替えることができる。男性の利用者が、小便の用を足すときには、便座20を起立姿勢にして使用してもよい。
【0030】
便蓋30は、便器本体10の上開口11を開閉する板状の部材である。便蓋30は、例えば、樹脂の射出成形により形成される。便蓋30は、便座20と共通のヒンジ18を中心として回動する。これにより、利用者は、便蓋30の姿勢を、便器本体10の上開口11および便座20を覆う水平姿勢(図2中の二点鎖線の姿勢)と、便器本体10の後部上方へ立ち上げた起立姿勢(図2中の実線の姿勢)とに、切り替えることができる。利用者は、便器1を使用しないときには、便蓋30を水平姿勢にして、便器本体10の上開口11を閉じる。これにより、便器本体10内の臭気が便器1の外へ漏れることが抑制される。ただし、便蓋30は省略されていてもよい。
【0031】
貯水タンク40は、便器本体10内に流すための水を貯留する容器である。貯水タンク40は、便器本体10の後部上方に配置される。仮設トイレ100を水洗式として使用する場合、利用者は、排便後に貯水タンク40のレバー41を回す。そうすると、貯水タンク40から便器本体10内に多量の水が流れ込む。これにより、排泄された大便および小便が、水とともに、S字排出路15を通って、下水管へ排出される。
【0032】
<3.汲み取り式と水洗式の切り替えについて>
この仮設トイレ100は、設置場所の状況に応じて、便器1を汲み取り式と水洗式とに切り替えることができる。すなわち、この仮設トイレ100は、下水管と接続することができない場合には、汲み取り式として使用し、下水管と接続することができる場合には、水洗式として使用することが可能である。以下では、この汲み取り式と水洗式との切り替えについて、説明する。
【0033】
この仮設トイレ100の便器1は、交換部品である第1切替部材50および第2切替部材60を有する。仮設トイレ100の管理者は、汲み取り式として使用したいときには、便器本体10の縦排出路14に、第1切替部材50を装着する。一方、仮設トイレ100の管理者は、水洗式として使用したいときには、便器本体10の縦排出路14に、第2切替部材60を装着する。
【0034】
図3は、第1切替部材50が装着された便器1の断面図である。図4は、第1切替部材50付近の部分断面図である。図3および図4に示すように、第1切替部材50は、縦排出路14に対応する形状の外周面を有し、かつ、内側に上下に延びる貫通孔を有する部材である。第1切替部材50は、例えば、樹脂の射出成形により形成される。第1切替部材50の下部の外周面には、雄ねじ51が設けられている。一方、縦排出路14の小径筒状面142には、雄ねじ51に対応する雌ねじ144が設けられている。縦排出路14に第1切替部材50を装着するときには、この小径筒状面142の雌ねじ144に、第1切替部材50の雄ねじ51を螺合させる。これにより、便器本体10に対して第1切替部材50が固定される。
【0035】
第1切替部材50が装着されると、第1切替部材50の上端部の開口の位置が、便器本体10の下開口13の位置と一致する。そして、第1切替部材50により、下開口13と汲み取り用開口16とを繋ぐ第1連通孔71が形成される。また、第1切替部材50により、水洗用開口17が閉塞される。したがって、本体内周面12の内側の空間は、下水管から遮断されるとともに、第1連通孔71を介して下方の便槽102と連通する。
【0036】
また、図3および図4に示すように、本実施形態の第1切替部材50は、フラッパー52を有する。フラッパー52は、第1切替部材50の内部に設けられた弁体である。フラッパー52は、図3および図4中に実線で示した閉鎖姿勢と、図3および図4中に二点鎖線で示した開放姿勢との間で、回動可能となっている。また、フラッパー52は、図示を省略したばねによって、常に閉鎖姿勢へ向けて付勢されている。
【0037】
したがって、フラッパー52は、通常時には閉鎖姿勢となり、第1連通孔71を閉鎖する。これにより、便槽102内の臭気が、第1連通孔71を通ってボックス101内の空間へ流入することが防止される。ただし、閉鎖姿勢において、フラッパー52の周囲に僅かな隙間が存在していてもよい。また、利用者が大便および小便を排泄すると、その大便および小便の重みによって、フラッパー52が開放姿勢へ向けて回動する。これにより、第1連通孔71が開放されて、大便および小便が、第1連通孔71から便槽102内へ落下する。大便および小便が落下した後、フラッパー52は、ばねの弾性力によって、再び閉鎖姿勢に戻る。
【0038】
便器本体10から第1切替部材50を取り外す場合、仮設トイレ100の管理者は、第1切替部材50を回転させて、雄ねじ51と雌ねじ144の螺合を解除する。そして、第1切替部材50を上方へ引き上げることにより、上開口11を介して第1切替部材50を取り出す。このとき、管理者は、第1切替部材50の下向きの段差面53に、治具を引っかけて、第1切替部材50を引き上げることができる。
【0039】
図5は、第2切替部材60が装着された便器1の断面図である。図6は、第2切替部材60付近の部分断面図である。図5および図6に示すように、第2切替部材60は、縦排出路14に対応する形状の外周面を有し、かつ、内側にL字状の貫通孔を有する部材である。第2切替部材60は、例えば、樹脂の射出成形により形成される。第2切替部材60の下部の外周面には、第1切替部材50と同様の雄ねじ61が設けられている。縦排出路14に第2切替部材60を装着するときには、小径筒状面142の雌ねじ144に、第2切替部材60の雄ねじ61を螺合させる。これにより、便器本体10に対して第2切替部材60が固定される。
【0040】
第2切替部材60が装着されると、第2切替部材60の上端部の開口の位置が、便器本体10の下開口13の位置と一致する。そして、第2切替部材60により、下開口13と水洗用開口17とを繋ぐ第2連通孔72が形成される。また、第2切替部材60により、汲み取り用開口16が閉塞される。したがって、本体内周面12の内側の空間は、便槽102から遮断されるとともに、第2連通孔72およびS字排出路15を介して下水管と連通する。
【0041】
利用者が大便および小便を排泄した後、貯水タンク40のレバー41を回すと、貯水タンク40から便器本体10内に、多量の水が流れ込む。これにより、排泄された大便および小便が、第2連通孔72およびS字排出路15を通って、下水管へ排出される。また、大便および小便が下水管へ排出された後、下開口13とトラップ部151との間に、水溜まりが残る。これにより、下水管からの臭気の逆流が防止される。
【0042】
便器本体10から第2切替部材60を取り外す場合、仮設トイレ100の管理者は、第2切替部材60を回転させて、雄ねじ61と雌ねじ144の螺合を解除する。そして、第2切替部材60を上方へ引き上げることにより、上開口11を介して第2切替部材60を取り出す。このとき、管理者は、第2切替部材60の下向きの段差面62に、治具を引っかけて、第2切替部材60を引き上げることができる。
【0043】
以上のように、この仮設トイレ100は、便器本体10の縦排出路14に、汲み取り用の第1切替部材50と、水洗用の第2切替部材60とを、択一的に装着可能である。このため、便器本体10を交換することなく、第1切替部材50と第2切替部材60とを交換するだけで、便器1を、汲み取り式と水洗式とに切り替えて使用することができる。
【0044】
特に、本実施形態の構造では、第1切替部材50および第2切替部材60は、便器本体10の上開口11を介して着脱される。このため、仮設トイレ100の管理者は、ボックス101の床面から便器本体10を取り外すことなく、ボックス101内の空間から、上開口11を介して、第1切替部材50および第2切替部材60の交換作業を行うことができる。これにより、汲み取り式と水洗式との切り替えを、より容易に行うことができる。
【0045】
この仮設トイレ100をレンタルで使用する場合、レンタル会社は、貸し出し先の設置場所の状況に応じて、仮設トイレ100を、汲み取り式または水洗式に切り替えることができる。したがって、レンタル会社は、汲み取り式の仮設トイレと水洗式の仮設トイレとを、別々に保有しておく必要はない。したがって、レンタル会社の在庫および置き場所にかかるコストを低減できる。
【0046】
また、この仮設トイレ100を工事現場で使用する場合、下水管が整備されていない初期段階では、仮設トイレ100を汲み取り式で使用し、下水管が整備された時点で、仮設トイレ100を下水管に接続して、水洗式に切り替えて使用することができる。また、工事の撤収直前には、再び仮設トイレ100を下水管から切り離して、汲み取り式に切り替えて使用することもできる。このように、本実施形態の仮設トイレ100を用いれば、同一の設置場所で、汲み取り式と水洗式とを、状況に応じて切り替えて使用することができる。
【0047】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上記の実施形態では、縦排出路14に対する第1切替部材50および第2切替部材60の固定が、ねじ込み式であった。しかしながら、ねじ込み式に代えて、ラッチ式を採用してもよい。具体的には、図7のように、便器本体10の小径筒状面142に可動式の爪部145を設けるとともに、第1切替部材50に凹部54を設ける。そして、縦排出路14に第1切替部材50を挿入すると、凹部54に爪部145が係合されて、第1切替部材50が固定されるようにすればよい。そして、第1切替部材50を取り外すときには、所定の操作を行うことにより、爪部145を退避させて、第1切替部材50を上方へ引き抜くことができるようにすればよい。この場合、図8のように、第2切替部材60にも、第1切替部材50と同様の凹部63を設ければよい。
【0049】
ラッチ式を採用する場合、縦排出路14、第1切替部材50、および第2切替部材60の形状は、上面視において円形(円筒状)でなくてもよい。例えば、縦排出路14、第1切替部材50、および第2切替部材60の形状は、上面視において楕円形や四角形などであってもよい。
【0050】
また、ねじ込み式およびラッチ式の他に、第1切替部材50および第2切替部材60は、重力または圧入によって、縦排出路14に配置されるものであってもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、第1切替部材50がフラッパー52を備えていた。しかしながら、図9のように、フラッパー52は、便器本体10に設けられていてもよい。そして、第1切替部材50は、フラッパー52の無いシンプルな構造としてもよい。この場合、フラッパー52は、縦排出路14の、第1切替部材50が装着される部分よりも下方の位置に設ければよい。また、フラッパー52は、利用者の操作により開閉するものであってもよい。
【0052】
また、仮設トイレ100を汲み取り式で使用する場合、貯水タンク40とは別体のタンクから便器本体10内に、少量の水を流すようにしてもよい。すなわち、本発明の「汲み取り式」は、簡易水洗式を含む。
【0053】
また、上記の実施形態では、洋式の便器1について説明したが、同様の汲み取り/水洗切り替え構造を、和式の便器に適用してもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、仮設トイレ100について説明したが、同様の汲み取り/水洗切り替え構造を、常設トイレに適用してもよい。
【0055】
また、仮設トイレおよび便器の細部の構造については、本願の各図に示された構造と、相違していてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 便器
10 便器本体
11 上開口
12 本体内周面
13 下開口
14 縦排出路
15 S字排出路
16 汲み取り用開口
17 水洗用開口
18 ヒンジ
20 便座
30 便蓋
40 貯水タンク
41 レバー
50 第1切替部材
51 雄ねじ
52 フラッパー
53 段差面
54 凹部
60 第2切替部材
61 雄ねじ
62 段差面
63 凹部
71 第1連通孔
72 第2連通孔
100 仮設トイレ
101 ボックス
101A 扉
102 便槽
141 大径筒状面
142 小径筒状面
143 段差面
144 雌ねじ
145 爪部
151 トラップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9