(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】水素回収再生システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/56 20060101AFI20230524BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20230524BHJP
B01D 53/28 20060101ALI20230524BHJP
B01D 53/32 20060101ALI20230524BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230524BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20230524BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20230524BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20230524BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230524BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20230524BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C01B3/56 Z
B01D53/26 100
B01D53/26 200
B01D53/28 ZAB
B01D53/32
B01D53/86 200
B01D53/86 228
B01J23/42 M
B01J23/46 301M
C25B1/02
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B15/08 302
(21)【出願番号】P 2021542243
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2019100172
(87)【国際公開番号】W WO2020063143
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】201811145711.2
(32)【優先日】2018-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521129288
【氏名又は名称】鼎佳能源股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】閻明宇
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101306302(CN,A)
【文献】特表2012-522721(JP,A)
【文献】米国特許第06280865(US,B1)
【文献】特開2017-125257(JP,A)
【文献】特表2017-530921(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108529559(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106299422(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0233072(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02233195(EP,A1)
【文献】国際公開第2010/016117(WO,A1)
【文献】特表2017-522171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/56
B01D 53/26
B01D 53/28
B01D 53/32
B01D 53/86
B01J 23/42
B01J 23/46
C25B 1/02
C25B 9/00
C25B 9/23
C25B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスを受け取って処理して、有害な物質を除去するために使用される処理装置と、
前記処理装置に接続された、前記混合ガス中の水素以外のガスを除去するために使用される電気化学水素精製装置と、
前記電気化学水素精製装置に接続された、精製後の水素の水分を取り除くための除水装置とを含む水素回収再生システムにおいて、
前記混合ガスは、水素
を含み、
且つ窒素、アンモニア、アルゴン、シリコン化合物、リン化合物、ヒ素化合物、ガリウム化合物、インジウム化合物、又はそれらの組成物を含み、
前記処理装置は、ローカルスクラバー(local scrubber)を使用し、
前記除水装置は、凍結除水法で精製した水素中の水分を除去する方法を利用する、
ことを特徴とする水素回収再生システム。
【請求項2】
前記電気化学水素精製装置に接続されたポンプ装置をさらに含み、
前記ポンプ装置は、前記電気化学水素精製装置内の水素を押し出すための圧力を提供するために使用される、
ことを特徴とする請求項1に記載の水素回収再生システム。
【請求項3】
前記ポンプ装置に接続された、精製した水素中の水分を吸着するための吸着素子をさらに含み、
前記吸着素子は、活性化炭素、ゼオライト、シリコン、活性化アルミナ、分子ふるい、酸化マンガン、水酸化カルシウム、グラフェン及び中空繊維からなる群から選択される何れか1種である、
ことを特徴とする請求項2に記載の水素回収再生システム。
【請求項4】
前記電気化学水素精製装置は、吸気通路と、プロトン交換膜と、アノード触媒反応層と、カソード触媒反応層と、排気通路と、外部電源とをさらに有し、
前記吸気通路は前記処理装置に接続され、
前記プロトン交換膜は、複数の水素イオンを伝送しかつ複数の電子の通過を隔離するために使用され、
前記アノード触媒反応層及びカソード触媒反応層は、前記プロトン交換膜の対向する両側にそれぞれ配置され、
前記アノード及びカソード触媒反応層に白金(Pt)又はルテニウム(Ru)又は他の貴金属を提供し、触媒として電気化学反応した後、生成物が前記排気通路を通って拡散し排出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の水素回収再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素回収再生システムに関し、特に、水素を効果的に回収及び再利用すること
ができ、水素を高純度で精製することができる水素回収再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体製造工程及び光電製造工程が完了した後、残りのプロセスガス(すなわち
、排ガス)には、通常、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2
H6)、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、トリメチルガリウム(Ga(C
H3)3)、及び高濃度の水素が含まれる。その中、アンモニア、シラン、ジシラン、ホ
スフィン、アルシン、トリメチルガリウムは、いずれも環境汚染物質である。
【0003】
現在、上記の環境汚染物質の処理方法は、通常、排ガスを、硫酸又は次亜塩素酸で洗浄し
た後直接大気中に排出することである。しかしながら、この処理方法には多くの欠点があ
る。例えば、処理された廃水中の窒素濃度は数万ppmに達し、法定基準よりもはるかに
高くなっている。また、水素は直接大気中に放出され、爆発の危険性があり、しかも水素
の浪費をもたらす。
【0004】
さらに、半導体製造工程や、光電製造工程又は化学メーカ製造プロセスでは、関連する当
業者は通常、残りのプロセス排ガス(前述の様々なガスなど)を燃焼によって処理するた
め、プロセスはより複雑であり、また、設備や処理コストも比較的高価である。
【0005】
これに鑑みて、上記の問題を効果的に解決するために、本発明の主な目的は、水素を効果
的に回収及び再利用する水素回収再生システムを提供することにある。
【0006】
本発明の次の目的は、高純度で水素を精製できる水素回収再生システムを提供することに
ある。
【0007】
本発明の次の目的は、回収コストの低い水素回収再生システムを提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、混合ガスを受けや処理して有害な物質を除去す
るために使用される処理装置と、前記処理装置に接続された、前記混合ガス中の水素以外
のガスを除去するために使用される電気化学水素精製装置と、前記電気化学水素精製装置
に接続された、精製後の水素の水分を取り除くための除水装置と、を含む水素回収再生シ
ステムを提供する。
【0009】
本発明のシステムの設計によれば、まず、前記処理装置はあるプロセスで排出された混合
ガスを受け取って処理し、混合ガス中の窒化物、硫化物などの有害物質を除去する。次に
、前記電気化学水素精製装置を使用して、混合ガス中の水素以外のガス及び不純物を除去
し、さらに、ポンプ装置で前記電気化学水素精製装置内の水素を除水装置に押し出す圧力
を提供する。最後に、前記除水装置を用いて精製した水素中の水分を除去することによっ
て、より高純度の水素を分離できるため、水素を効果的に回収して再利用する効果が達成
できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の水素回収再生システムの好ましい実施形態の概略ブロック図である。
【
図2】本発明の水素回収再生システムの好ましい実施形態の電気化学水素精製装置の実施概略図である。
【
図3】本発明の水素回収再生システムの他の実施形態の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の上記の目的、構造及び機能的特徴について、添付図面の好ましい実施形態に基づ
いて説明する。
【0012】
図1及び
図2を参照されたい。
図1及び
図2は、本発明の水素回収再生システム2の好ましい実施形態の概略ブロック図、及び電気化学水素精製装置の実施概略図である。図に示すように、水素回収再生システム2は、処理装置20と、水素精製装置21と、除水装置23とを含む。本発明において、水素回収再生システム2は、水素4、窒素6、アンモニア、その他のガスを含有する混合ガス3から水素4を回収して再利用する。ここで、混合ガス3は、例えば、半導体製造工程又は光
電製造工程の完了後に残る排ガスであり、ここで、残りの排ガスには、水素4、窒素6、アンモニア、シラン、ジシラン、ホスフィン、アルシン、トリメチルガリウム、又はその組成物を含む。
【0013】
まず、前述の混合ガス3は、パイプライン5を介して、処理装置20として選択されたロ
ーカルスクラバー(local scrubber)に排出される。そして、前記ローカ
ルスクラバーを以って、先に、混合ガス3を予備処理しておいた。これにより、混合ガス
3中の有毒ガスや物体の粒子(ほこりなど)又は有害物質(窒化物、硫化物など)を除去
することで、無害なガスだけが残された。その後、予備処理された混合ガス3を電気化学
水素精製装置21に入る。
なお、前記ローカルスクラバーは、原理的に電気温水洗浄タイプ、充填水洗浄タイプ、乾
式吸着タイプなどに分けられている。本発明の水素回収再生システム2では、ユーザの要
求に応じて、どのタイプのローカルスクラバーが混合ガス3の処理に適用するのかについ
て決めることができる。このため、前述の処理装置20として、前記に述べた各タイプの
ローカルスクラバーは、本発明の範囲に含まれるべきである。こういうことを先ず説明し
ておく、ご留意ください。
【0014】
次に、洗浄された混合ガス3は、パイプライン5を介して電気化学水素精製装置21に送られ、電気化学水素精製装置21で混合ガス3中の水素4以外のガス及び他の不純物を除去する。なお、前記電気化学水素精製装置21は、混合ガス3中の水素4以外のガス及び不純物を除去するために電気化学的方法を選択したことに特に留意されたい。言い換えれば、混合ガス3は、電気化学水素精製装置21内で電気化学的方法によって水素4以外のガス(窒素6、アンモニアなど)及び不純物が除去・分離されるため、電気化学水素精製装置21内に水素4のみが保持され、これまで混合ガス3中に水素4以外のすべてのガスが分離されて存在せず、水素4がパイプライン5を介して除水装置23に入る。
【0015】
図2と併せて参照しながらより詳しく説明する。電気化学水素精製装置は、吸気通路90
と、プロトン交換膜7と、アノード触媒反応層70と、カソード触媒反応層71と、排気
通路91と、外部電源8とをさらに有する。吸気通路90は、前述の処理装置20に接続
され、処理装置20で処理された混合ガス3は、吸気通路90を通って電気化学水素精製
装置21に入り、続いて、プロトン交換膜7によって水素4以外のガスを遮断するととも
に、プロトン交換膜7を介して複数の水素イオン40を伝送しかつ複数の電子41の通過
を隔離することができる。
アノード触媒反応層70及びカソード触媒反応層71は、プロトン交換膜7の対向する両
側にそれぞれ配置された。アノード及びカソード触媒反応層70、71に白金(Pt)、
ルテニウム(Ru)又は他の貴金属を触媒として提供して電気化学した後、生成物(生成
物は水素4を指す)が排気通路91を通って拡散し排出され、混合ガス3中の水素4以外
のガス及び不純物の除去を完了する。
次に、水素4は、除水装置23に入る前にポンプ装置22を通過し、ポンプ装置22で水
素精製装置21内の水素4を除水装置23に押し出す圧力を提供する。電気化学水素精製
装置21によって分離された水素4はまだ一部の水分を含むため、除水装置23によって
水分が除去される必要がある。除水装置23は、凍結除水法で精製した水素4内の水分を
除去する方法を選択するため、高純度の水素4に分離することができる。
【0016】
さらに、
図3を共に参照されたい。なお、本発明は、除水装置23に接続された吸着素子
24をさらに含み、吸着素子24は、精製後の水素4内の水分を吸着するために使用され
る。すなわち、吸着素子24は、除水装置23の補助素子として使用することができるの
で、分離された水素4の水分除去速度はより速く、水素4の純度はより高く、相乗効果を
得ることができる。吸着素子24は、活性化炭素、ゼオライト、シリコン、活性化アルミ
ナ、分子ふるい、酸化マンガン、水酸化カルシウム、グラフェン及び中空繊維からなる群
から何れか1種を選択することができる。
【0017】
このように、前述装置の様々な機能により、高純度の水素4を分離することが達成でき、
高い効率の水素回収及び再生のシステムを形成することができ、また、回収プロセスは従
来の水素回収方式と比べ、コストは比較的低く、水素4回収のコストを大幅に削減するこ
とができる。
【0018】
上記のように、本発明は、従来技術に比べて以下の利点を有する。
1.水素を効果的に回収し再利用できる。
2.高純度で水素を精製することができる。
3.回収プロセスのコストが低下される。
【0019】
以上、本発明について詳細に説明されたが、上記に説明されたものは本発明の好ましい実
施形態の1つに過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の
特許請求の範囲に基にづいて行った均等な変更及び修正などは、本発明の特許の請求範囲
に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0020】
2水素回収再生システム 20処理装置
21電気化学水素精製装置 22ポンプ装置
23除水装置 24吸着素子
3混合ガス 4水素
40水素イオン 41電子
5パイプライン 6窒素
7プロトン交換膜 70アノード触媒反応層
71カソード触媒反応層 8外部電源
90吸気通路 91排気通路