IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社バスクレフ・プランニングの特許一覧

<>
  • 特許-マウスピース 図1
  • 特許-マウスピース 図2
  • 特許-マウスピース 図3
  • 特許-マウスピース 図4
  • 特許-マウスピース 図5
  • 特許-マウスピース 図6
  • 特許-マウスピース 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】マウスピース
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/03 20200101AFI20230524BHJP
   G10D 7/10 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
G10D9/03
G10D7/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022082873
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520319200
【氏名又は名称】株式会社バスクレフ・プランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】嵜上 修二郎
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01596360(EP,A1)
【文献】特開2012-118386(JP,A)
【文献】特開2010-026111(JP,A)
【文献】米国特許第05303628(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00-7/16
G10D 9/00-9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ本体部を有するカップ部と、筒内のスロート部に最小内径の部分を有するシャフトと、前記カップ本体部と前記シャフトとの間の領域であるカップ部下部とを有して、筒孔の内面に複数の螺旋溝が形成された楽器のマウスピースであって、
前記カップ部下部の筒内は、
前記カップ本体部のリムの部分の最大内径に対して半分程度の内径となる部分がカップ部下部の上端部であり、前記シャフトとの境界部分がカップ部下部の下端部であり、
このカップ部下部の下端部と前記カップ部下部の上端部との区間の中央部分と、前記カップ部下部の上端部と、の区間である小区間が前記カップ本体部の直下の当該カップ部下部におけるカップ内面底面部であり、さらに、
前記カップ部下部は、
前記カップ部下部の下端部から前記カップ部下部の上端部に向かって、次第に緩やかに広がって行くテーパ形状にされ、前記カップ部下部の上端部から前記カップ部下部の上端部に向かって次第にさらに大きな内径で緩やかに広がって行くテーパ形状にされており、
前記複数の螺旋溝は、
前記シャフトの筒内の、ボア―部側となる下端付近から前記カップ部下部の上端部の区間までが螺旋溝区間であり、この螺旋溝区間にわたって、互いの間隔が略等間隔にさせられて、各々が螺旋溝区間を長手方向に進みながら小区間毎に90度程度のねじれで回転させられて周設されており、
前記螺旋溝区間は、螺旋溝の一方端から他方端までのねじれが450度程度となる前記小区間を所定倍した長さであり、
前記カップ本体部からの複数の螺旋溝の形状は、筒孔を中央にした渦巻状である、ことを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
前記小区間を所定倍した長さは、
前記小区間の5倍程度の長さであり、
前記小区間は、5mm程度である、ことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項3】
前記カップ部下部の下端部からシャフト方向に向かって前記小区間の幅となる部分と前記カップ部下部の下端部との中央付近となる部分と、この部分からボアー部に向かって前記小区間の幅となる部分と、の区間は、
前記最小内径と同程度の内径にされている、ことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項4】
記螺旋溝は、けがき工具で形成されており、
一方端から他方端又は他方端から一方端に向かうに従って次第に幅及び深さが増加させられ、前記他方端又は一方端に近づくに従って次第に前記一方端又は他方端の幅及び深さにされている、ことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項5】
前記複数の螺旋溝は、
第1の螺旋溝、第2の螺旋溝、第3の螺旋溝、第4の螺旋溝、第5の螺旋溝よりなり、
前記ボアー部側の下端付近には、これらの螺旋溝の一方端が第1の所定間隔で周方向に位置し、
さらに、
これらの螺旋溝の他方端は、前記カップ部下部の上端部に、各々が第2の所定間隔(第2の所定間隔>第1の所定間隔)で周方向に位置させられている、ことを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【請求項6】
前記複数の螺旋溝は、互いに重ならないように形成されていることを特徴とする請求項1記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金管楽器等のマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金管楽器(気鳴楽器)は、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバ等があり、唇の振動によって生じた音を管体で共鳴させ朝顔(ベル)から放出する。このような金管楽器においては、口をあて息を吹き込む部分、またその部品である発音源の形成を主な目的とするマウスピースが重要である。マウスピースは、唇を軽く合わせて閉じた状態で息を吹き出した時に上下の唇の隙間で振動が起きる。この振動がラッパ管部に伝達する。
【0003】
材質には真鍮が用いられることが多いが、ステンレス、チタンなどの他に、金属アレルギー対策などの理由で硬質の木材や、プラスチックなど、様々な材質のものが開発されている。
このような、マウスピースの特許文献1として例えば、以下の出願がある。
【0004】
特許文献1には、金管楽器のマウスピースにおいて、スロートの内壁領域の少なくとも一部に、溝または凹凸を形成して 吹奏抵抗を増加させることを可能とする金管楽器のマウスピースが開示されている。
【0005】
また、特許文献1の段落[0030]には、「溝30の断面形状、間隔、方向などは特に限定されないが、実施例1~4を図2の拡大断面図に示す。図2(a)は溝30の断面を三角形状とし、溝30の深さをW1としたものであり、スロートの周方向に所定間隔L1で形成し、複数の環状溝としている。・・・・、複数の直線溝としている」。と記載している。
【0006】
また、段落[0031]には、「・・・溝30は環状溝であるが、螺旋溝でもよい。・・・」と記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4278112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、スロートに溝又は凹凸の抵抗部を形成して、吹奏抵抗(カップ内の圧力)を増加させるための機能をもっぱら与えることを主とするものである。このため、溝同士の間隔も狭く、かつ溝の形成区間も狭い。
【0009】
また、特許文献1の段落0030には「・・複数の環状溝としている」と記載されている。しかし、環状溝の形成区間は、区間は狭い。
さらに、特許文献1の段落[0031]には、「・・・溝30は環状溝であるが、螺旋溝でもよい。・・・」と記載している。この螺旋溝というのは、特許文献1の記載より判断して1本の螺旋溝である。
【0010】
一般に、音響学的には、唇の開閉による方形波状の音圧変化を、ある程度の音響抵抗でかつ息、振動がスムーズにボアーに伝わるのが好ましい。
【0011】
すなわち、特許文献1のように、スロートに溝を形成したとしても、短い区間に形成された環状溝又は1本の螺旋溝の吹奏抵抗を得るためのものであるので、依然として奏者のイメージした「息の流れ」をそのままに表現できない。
【0012】
したがって、低音域から高音域まで跳躍やスラーもよりスムーズになっただけでなく、音色、響きにも好影響が見られる、というマウスピースではない。
【0013】
本発明は以上の課題を鑑みてなされたものであり、容易に奏者の最良の音をそのままに表現できるマウスピースを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るマウスピースは、カップ本体部を有するカップ部と、筒内のスロート部に最小内径の部分を有するシャフトと、前記カップ本体部と前記シャフトとの間の領域であるカップ部下部とを有して、筒孔の内面に複数の螺旋溝が形成された楽器のマウスピースであって、
前記カップ部下部の筒内は、
前記カップ本体部のリムの部分の最大内径に対して半分程度の内径となる部分がカップ部下部の上端部であり、前記シャフトとの境界部分がカップ部下部の下端部であり、
このカップ部下部の下端部と前記カップ部下部の上端部との区間の中央部分と、前記カップ部下部の上端部と、の区間である小区間が前記カップ本体部の直下の当該カップ部下部におけるカップ内面底面部であり、さらに、
前記カップ部下部は、
前記カップ部下部の下端部から前記カップ部下部の上端部に向かって、次第に緩やかに広がって行くテーパ形状にされ、前記カップ部下部の上端部から前記カップ部下部の上端部に向かって次第にさらに大きな内径で緩やかに広がって行くテーパ形状にされており、
前記複数の螺旋溝は、
前記シャフトの筒内の、ボア―部側となる下端付近から前記カップ部下部の上端部の区間までが螺旋溝区間であり、この螺旋溝区間にわたって、互いの間隔が略等間隔にさせられて、各々が螺旋溝区間を長手方向に進みながら小区間毎に90度程度のねじれで回転させられて周設されており、
前記螺旋溝区間は、螺旋溝の一方端から他方端までのねじれが450度程度となる前記小区間を所定倍した長さであり、
前記カップ本体部からの複数の螺旋溝の形状は、筒孔を中央にした渦巻状である、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、複数の螺旋溝によって、従来のマウスピースに比べ、息を高速に通過させることができるので、低音から高音域を吹く人(奏者ともいう)の意図する最良の「息の流れ」(音と速度)でそのままに表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態の楽器のマウスピースの概略説明図である。
図2図1(b)の詳細断面図である。
図3】マウスピース10の螺旋溝形成部22の拡大図である。
図4】第1の螺旋溝Taのみの説明図である。
図5】各部の断面図(1)である。
図6】各部の断面図(2)である。
図7】各部の断面図(3)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明のマウスピースの実施の形態を説明する。実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない 。
【0018】
なお、本実施の形態のマウスピースは、チューバ、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアムの金管楽器に主として用いられ、材質は真鍮、ステンレス、チタンなどの他に、金属アレルギー対策などの理由で硬質の木材や、プラスチックなどであってもよい。
本実施の形態は金管楽器のマウスピースを一例として説明する。本実施の形態の金管楽器のマウスピースは、スロートの内面に、複数の螺旋溝を形成することによって、従来の金管楽器のマウスピースに比べて、以下の作用効果等を得ることを可能としている。
(1)基本性能である優れた音色と響き、吹き易さに加えて、早い空気の流れを利用した奏法が可能になっている。
(2)吹く人(奏者)の表現力を大きく高め、かつ表現力が広まる。
(3)ひいては、これまでの金管楽器演奏法、表現に大きな、新たな可能性を生むことになる。
さらに、後述するスロートの内面に、複数の螺旋溝を形成することで、(4)強い吹奏がやり易くなった。
(5)演奏スタミナを維持できるようになった。
(6)吹奏の緩急、変化(切り替え)をし易くなった。
(7)吹く人(奏者)が意図した音を容易に導き出させるようになった。
という、学期的な新たな奏法、表現までを可能にしている。
以下に、上記のような作用効果を得る金管楽器のマウスピースの構造の具体例を実施の形態として説明する。
【0019】
図1は本実施の形態の楽器のマウスピースの概略説明図である。なお、図1は螺旋溝が内面に形成されていることを概略的に示す図であり、詳細については後述する図3で説明する。
図1(a)はカップ部の正面を示し、図1(b)はマウスピースの断面を示す。図1(a)及び図1(b)は、本実施の形態のマウスピース10を水平にした場合の断面図であり、水平軸を「X」と記載している。
【0020】
また、図1(a)はカップ正面図であり、カップ中心を通るX軸を「Xp」と記載している。図1(b)に示すように、本実施の形態のマウスピース10は、スロート部19からカップ内面12の底面(以下、カップ内面底面部15と称する)に渡る区間(螺旋溝形成区間22ともいう)に、螺旋溝Ti(Ta、Tb、・・・、Te)が形成されている。但し、図1(b)の螺旋溝Tiは一方向から見た場合の内面に刻まれた螺旋溝(トルネード溝ともいう)を見た場合の断面を示している。
【0021】
螺旋溝Tiは、図1(a)、図1(b)に示すように、第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teよりなり、数学的にはフェルマー螺旋、双曲螺旋等に近似している。図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施の形態のマウスピース10は、スロート部19からカップ内面底面部15に渡って、螺旋溝Ti(Ta、Tb、・・・、Te)が互いに重ならないように周設(けずり)させられている。
【0022】
各々の螺旋溝Ti(Ta、Tb、・・・、Te)の間隔は略等間隔を有して螺旋状に形成されている(詳細は後述する)。
また、図1(a)に示すように、カップを正面から見た場合は、螺旋溝Ti(Ta、Tb、・・・、Te)は渦巻状になっている。
【0023】
カップ内面底面部15における第1の螺旋溝Taの他方端を(a1)と記載し、第2の螺旋溝Tbの他方端を(b1)、第3の螺旋溝Tcの他方端を(c1)、第4の螺旋溝Tdの他方端を(d1)、第5の螺旋溝Teの他方端を(e1)と記載する。
【0024】
この螺旋溝Ti(Ta、Tb、・・・、Te)によって、マウスピース内に空気の流れに渦を作り、速度が増す(吹く息が速くなる)、力が増す。
結果として、吹く人(奏者)の技量の幅を拡げ、容易に意図通りに、低音域から高音域までの音を再現できるようになった。
すなわち、よりスムーズになっただけではなく、吹く人(奏者)の自己表現が確かなものとして音色、響きにも好影響がでるようになった。
【0025】
さらに、図1(a)及び図1(b)を用いて説明する。図1(b)に示すように、マウス10は筒状に形成されている。そして、このマウスピース10は、カップ部17と、ボアー部13と、スロート部19よりなる。カップ部17(単にカップともいう)は、カップ内面12が擂鉢状(Uカップ又はVカップでも構わない)に形成されている。なお、ボアー部13の後方の部分をバックボア16と称する。
【0026】
また、カップ部17の唇にあたる部分にはリム14が形成されている。スロート部19の内径は、マウスピース10において最も細い部分を有しており、ボアー部13に向かうに従って、内径が大きくなっている。
なお、本実施の形態のマウスピース10は、全長L1が98mm程度(±3mm)であり、ボアー部13の長さは43mm程度であり、螺旋溝形成部22の長さは、26mm程度(25mm~27mmでも構わない)である。
【0027】
また、シャンク18を図1(b)に示している。また、本実施の形態のマウスピース10の内面壁を「20」と記載し、外面壁を「21」と記載する。また、水平軸を「X」と記載する。また、図1(a)においてはカップ中心(X軸)を「Xp」と記載する。
さらに、リム14の端(唇が触れる箇所)からカップ内面底面部15までの区間を本実施の形態ではカップ本体部23と記載する。また、図1(b)においては、シャンク11を記載する。
【0028】
図2図1(b)の詳細断面図である。図1と同一符号のものについては説明を省略する。図2においては、筒の内面に刻まれている。螺旋溝Ti(Ta、Tb、・・・、Te)は、一方向から見た場合のものを、「Ta´」、「Tb´」、「Tc´」、「Td´」、「Te´」と記載し、対面のものを「Ta´´」、「Tb´´」、「Tc´´」、「Td´´」、「Te´´」と記載している。これらは、5mm程度(3mm~8mm)の間隔(水平軸上)で螺旋状に「切り込まれて:けがき工具による」されている。
【0029】
すなわち、螺旋溝Ti(ノッチともいう)は螺旋溝形成部22の区間で、各々が1回転(360度)となるように刻まれている。
例えば、第1の螺旋溝Taの区間La(20mm)において、1回転(360度:Ta´、Ta´´)している。
【0030】
なお、螺旋溝Tiが上側、下側で細くなるのは、螺旋溝を横から見てそれを描いているためである。なお、これらの螺旋溝については図3において詳細に説明する。
さらに、図2を用いて本実施の形態のマウスピース10の寸法を説明する。リム14の長さL24(水平軸上で)は、リム14の端(唇が触れる箇所:以下リム端という)から10mm程度(8mm~12mm)である。
【0031】
また、カップ本体部23はリム端から長さL10が29mm程度(27mm~32mm)で、カップ部17の長さL14は39mm程度(37mm~42mm)である。ボアー部13の長さL26は43mm程度(40mm~45mm)である。さらに、図2に示すL3の長さは55mm程度(53mm~57mm)であり、L12は34mm程度(32mm~36mm)である。
一方、カップ外径φ1は、47mm程度(45mm~49mm)であり、カップ内径φ3は、33mm程度(32mm~35mm)である。
【0032】
また、ボアー部16の後端外径φ10は、13mm程度(11mm~15mm)であり、ボアー部16の後端内径φ12は、12mm程度(10mm~13mm)である。さらに、図2における外径φ14は7.8mm程度(7.5mm~8.0mm)である。
なお、φ30~φ34及びφ16等については図3で説明する。
【0033】
図3はマウスピース10の螺旋溝形成部22の拡大図である。図3においても上図と同一符号のものについて説明を省略する。
図3においては、「Ta´´」、「Tb´´」、「Tc´´」、「Td´´」、「Te´´」を点線で示している。また、「Ta´」、「Tb´」、「Tc´」、「Td´」、「Te´」を実線で示している。なお、本実施の形態では、縦軸は「Z」、奥行軸は「Y」、水平軸はX軸とする。
【0034】
図3に示すように、F-F付近の内面の一方側から螺旋溝Tiの各々の一方端がスタートさせられている(同程度の位置)。互いの間隔は、Z軸方向では第1の所定間隔k(4mm~6mm程度)である。同様にA-A付近では螺旋溝Tiの他方端((a1)、(e1)、(d1)、(c1)、(b1))が終端位置となっている。
【0035】
さらに、これらの溝の他方端((a1)、(e1)、(d1)、(c1)、(b1))は、カップ部17の内面のカップ内面底面部15に、各々が後述する図5に示す第2の所定間隔(5mm~7mm程度)で位置されている。
【0036】
一方、内径φ30は16mm程度(15mm~17mm)、内径φ34は9mm程度(8mm~11mm)で、内径φ16(E1とE2間)は8.3mm程度(8mm~9mm)である。
【0037】
また、図3においては、「削り」の深さ(0.1mm~0.2mm)を点線で示し「ma」と記載している。さらに、螺旋溝Tiは削り幅(けがき幅)を有している。例えば、後述する図4に示すように、第1の螺旋溝Taの削り幅Tah(Tah´、Tah´´)は、Ta1とTa2の間は、0.4mm~0、8mm程度である。
【0038】
すなわち、本実施の形態のマウスピース10の螺旋溝形成部22は、第1の螺旋溝Ta(Ta´、Ta´´)と、第2の螺旋溝Tb(Tb´、Tb´´)と、第3の螺旋溝Tc(Tc´、Tc´´)と、第4の螺旋溝Td(Td´、Td´´)と、第5の螺旋溝Te(Te´、Te´´)よりなる。
そして、ボアー側には、これらの溝の一方端が第1の所定間隔で位置し、さらに、これらの溝の他方端は、カップ部の内面の底面部分(テーパ状)に各々が第2の所定間隔で位置され、これらの各々の位置は、ボアー側の前記一方端から略同一距離にされている。
このため、唇が振動することで発生した音波は、螺旋状に通過していく。従って、吹く息は加速されることになる。
【0039】
図4は第1の螺旋溝Taのみの説明図である。図4に示すように、Laの区間で、第1の螺旋溝Taが1回転(360度)している。
【0040】
次に、図3に記載した、A-A断面(図5(a))、B-B断面(図5(b))、C-C断面(図6(a))、D-D断面(図6(b))、E―E断面(図7(a))、F-F断面(図7(b))について説明する。なお、上図と同一符号のものは説明を省略する。
【0041】
図5(a)はA-A断面であり、マウスピース10を水平にして、第1の螺旋溝Taの他方端(a1)をZ軸上に位置させて、カップ正面から見た図である(この状態を0度回転状態ともいう)。
【0042】
このA-A断面のZ軸を0度とし、反時計回りに角度(0°~360度、・・・)を定義した場合の、A-A断面(図5(a))、B-B断面(図5(b))、C-C断面(図6(a))、D-D断面(図6(b))、E―E断面(図7(a))、F-F断面(図7(b))における螺旋溝Tiの「ねじれ」について説明する。
【0043】
図5(a)に示すA-A断面においては、第1の螺旋溝Taの他方端a1、第2の螺旋溝Tbの他方端b1、第3の螺旋溝Tcの他方端c1、第4の螺旋溝Tdの他方端第d1、第5の螺旋溝Teの他方端e1同士の角度θi(ねじれ角度)は、Xpを中心にして計測すると、約72度となっている。また、A-A断面の外径をφ35と記載している。
【0044】
また、A-A断面でも他方端a1、他方端b1、他方端c1、他方端第d1、他方端e1の付近は溝が浅いので、図示しないが、工具によって「けずら」れていることを示すためにha1、hb1、hc1、hd1、he1と記載する。
【0045】
図5(b)はB-B断面(A-A断面から約5mm)である。B-B断面は、A―A断面と比較すると、内径φ32がA-A断面の内径φ30より小さい。
【0046】
また、図5(b)に示すB-B断面は、A―A断面と比較すると、第1の螺旋溝Tiの各々は約90度ねじれた位置となっている(90度回転ともいう)。本実施の形態では、B-B断面における第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの螺旋溝Teの部分をa2、b2、b2、c2、d2、e2と記載する。また、この部分の「けずり」は深いので、ha2、hb2、hc2、hd2、he2と記載する。
【0047】
図6(a)はC-C断面(B-B断面から約5mm)である。C-C断面は、B―B断面と比較すると、内径φ34となっている(B-B断面の内径φ32より小さい)。
また、図6(b)に示すC-C断面は、A―A断面と比較すると、第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの各々は約180度ねじれた位置となっている(180度回転ともいう)。
【0048】
本実施の形態では、C-C断面における第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの部分をa3、b3、c3、d3、e3と記載する。また、この部分の「けずり」は浅くなるが、ha3、hb3、hc3、hd3、he3と記載する。
【0049】
図6(b)はD-D断面(C-C断面から約5mm)である。D-D断面は、C―C断面と比較すると、内径φ36がC-C断面の内径φ34より小さい。また、D-D断面は、A―A断面と比較すると、第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの各々は約270度ねじれた位置となっている(270度回転ともいう)。
【0050】
本実施の形態では、D-D断面における第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの部分をa4、b4、c4、d4、e4と記載する。また、この部分の「けずり」は、ha4、hb4、hc4、hd4、he4と記載する。
【0051】
図7(a)はE-E断面(D-D断面から約2.5mm)である。E-E断面は、D―D断面と比較すると、内径φ16である。
【0052】
また、D-D断面は、A―A断面と比較すると、第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの各々は約299度ねじれた位置となっている(299.43度回転ともいう)。
【0053】
本実施の形態では、E-E断面における第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの部分をa5、b5、c5、d5、e5と記載する。また、この部分の「けずり」を、ha5、hb5、hc5、hd5、he5と記載する。
【0054】
図7(b)はF-F断面(D-D断面から約15mm)である。F-F断面は、E―E断面と比較すると、内径は少し大きくなっている。
【0055】
また、E-E断面は、A―A断面と比較すると、第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの各々は約453度ねじれた位置となっている(453.5度回転ともいう)。
【0056】
本実施の形態では、F-F断面における第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Teの部分をa6、b6、c6、d6、e6と記載する。
【0057】
また、この部分の「けずり」は浅いが、わずかに「けずり」があることを示すために、ha6、hb6、hc6、hd6、he6と記載する。
【0058】
すなわち、本実施の形態のマウスピース10はカップ底面からスロート部の内面に渡って複数の螺旋溝が長手方向に重ならないように形成されている。
このため、カップ、スロートを通る息に対して、螺旋溝Tiが適度な方向性(整流感)を与え、かつ息が渦巻くように通過するので、疲れにくく、かつ低音域、高音域が安定する。
【0059】
なお、スロートの内径は、小さくても構わないし、ボアー部は、着脱可能になっていてもかまわない。
さらに、螺旋溝の「けずり」の形状の断面は、その形状は問わない。丸形、四角形状であってもよい。
また、上記実施の形態では5本の螺旋溝として説明したが、螺旋溝の数は多くても、少なくてもかまわない。
【符号の説明】
【0060】
10 マウスピース
12 カップ内面
13 ボアー部
15 カップ内面底面部
17 カップ部
19 スロート部
23 カップ本体部
Ta 第1の螺旋溝
Tb 第2の螺旋溝
Tc 第3の螺旋溝
Td 第4の螺旋溝
Te 第5の螺旋溝
【要約】
【課題】
容易に吹く人(奏者)の意図したとおりの「息の流れ」(音と速度)をそのままに表現できる金管楽器のマウスピースを得る。
【解決手段】
本実施の形態のマウスピース10は、スロート部19からカップ内面12の底面(カップ内面底面部15と称する)に渡る区間(螺旋溝形成区間22)に、螺旋溝Ti(第1の螺旋溝Ta、第2の螺旋溝Tb、第3の螺旋溝Tc、第4の螺旋溝Td、第5の螺旋溝Te)を形成する。これによって、息が渦巻き状に通過させることができるので、音息を吹く人(奏者)の意図したとおりの「息の流れ」(音と速度)でそのままに表現できる。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7