IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンケンテクノ株式会社の特許一覧

特許7284546ガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置
<>
  • 特許-ガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置 図1
  • 特許-ガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置 図2
  • 特許-ガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置 図3
  • 特許-ガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】ガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/70 20060101AFI20230524BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20230524BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20230524BHJP
   B01D 53/76 20060101ALI20230524BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230524BHJP
   H05H 1/32 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B01D53/70
B01D53/64 ZAB
B01D53/68 100
B01D53/76
B01D53/78
H05H1/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022561724
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041924
(87)【国際公開番号】W WO2022101981
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592010106
【氏名又は名称】カンケンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】今村 啓志
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056036(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216446(WO,A1)
【文献】特開2004-216231(JP,A)
【文献】特開2011-226775(JP,A)
【文献】特開昭57-184821(JP,A)
【文献】特開2002-263444(JP,A)
【文献】特開2004-089752(JP,A)
【文献】特開2004-243237(JP,A)
【文献】特開2003-010638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
H05H 1/00-1/54
F23G 5/14-53/18,7/06-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス処理空間(12a)が設けられた中空筒状の炉本体(12)と、
上記ガス処理空間(12a)内にプラズマジェット(P)を供給する非移行型のプラズマジェットトーチ(14)と、
上記ガス処理空間(12a)の上記プラズマジェット(P)が供給される領域を加熱する電熱ヒータ(16)とを含むガス処理炉において、
前記の電熱ヒータ(16)が棒状又は柱状のセラミックヒータ(16A)であり、
前記の炉本体(12)の内壁(12b)が、上記セラミックヒータ(16A)を同一円周上にて互いに隣接するように配列し、且つ、そのセラミックヒーター(16A)同士を固定せずにフリーの状態で形成される、
ことを特徴とするガス処理炉。
【請求項2】
請求項1のガス処理炉において、
前記セラミックヒータ(16A)が炭化ケイ素発熱体を用いたSiCヒータであることを特徴とするガス処理炉。
【請求項3】
請求項1又は2のガス処理炉において、
前記ガス処理空間(12a)内に、その内部の気流を制御して流体の滞留時間を延長させる気流制御手段が設けられる、ことを特徴とするガス処理炉。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのガス処理炉と、
上記ガス処理炉へ導入する処理対象の排ガス(E)を予め液洗する入口スクラバ(18)、または、上記ガス処理炉で熱分解させた排ガス(E)を冷却および液洗する出口スクラバ(20)の少なくとも一方とを備える、ことを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPFCs(パーフルオロコンパウンド)などを含む難分解性排ガスの除害処理に好適なガス処理炉と、そのガス処理炉を用いた排ガス処理装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、物を製造したり処理したりする工業プロセスとして多種多様のものが開発・実施されており、このような多種多様の工業プロセスから排出されるガス(以下、「処理対象排ガス」と云う。)の種類も非常に多岐に亘っている。このため、工業プロセスから排出される処理対象排ガスの種類に応じて、様々な種類の排ガス処理方法および排ガス処理装置が使い分けられている。
【0003】
このうち、処理対象排ガスをプラズマ空間に通して分解処理を行うプラズマ式の排ガス処理方法は、近年、半導体製造プロセスにおける排ガス処理方法として導入が拡がって来ている。このプラズマ式の排ガス処理方法は、処理対象排ガス(除害対象ガス)の分解処理に際して難分解性のものも比較的安全に分解処理することができる。とりわけ、非移行型のプラズマジェットを用いた分解処理装置(ガス処理炉)の前後に湿式のスクラバを設けた排ガス処理装置では、半導体製造における多種多様な条件に追従して、処理対象排ガス中における何れの除害対象成分についてもTLV[Threshold Limit Value;暴露限界]以下の濃度まで除害処理することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-205330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、それ以降、今後のエネルギーの効率的な利用等に関して様々な議論や検討が行われている。このような状況の下、加熱の際のエネルギーとして比較的多量の電力を消費する上記従来のプラズマ式のガス処理炉を備えた排ガス処理装置においても、高効率化及びこれに伴う省エネ化のニーズが益々高まってくることが容易に予想される。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる課題は、従来のプラズマ式のガス処理炉の利点をそのままの形で有すると共に、電力エネルギーの更なる効率的な利用を図ることが可能であり、様々なガスに対する分解効率を極大化させたガス処理炉と、このガス処理炉を用いて排ガスの除害効率を著しく向上させた排ガス処理装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1乃至図3に示すように、ガス処理炉10を次のように構成した。
すなわち、内部にガス処理空間12aが設けられた中空筒状の炉本体12と、上記ガス処理空間12a内にプラズマジェットPを供給する非移行型のプラズマジェットトーチ14と、上記ガス処理空間12aの上記プラズマジェットPが供給される領域を加熱する電熱ヒータ16とを含む、ことを特徴とする。
【0008】
本発明は、例えば、次の作用を奏する。
本発明のガス処理炉には、ガス処理空間12aのプラズマジェットPが供給される領域を加熱する電熱ヒータ16が備えられているので、従来、プラズマジェットPを生成するためにプラズマジェットトーチ14へ供給されていた電力の一部をこの電熱ヒータ16へ回すことによって、プラズマジェットPの出力は若干落ちるものの、ガス処理空間12a内のプラズマジェットPが供給される領域においてプラズマジェットPの熱が到達出来ない炉本体12の内周面近傍に形成される低温領域をも加熱することができる。つまり、ガス処理空間12a全体の温度を著しく底上げすることが出来る。このため、電熱ヒータ16の種類やプラズマジェットトーチ14からその電熱ヒータ16へ回す電力量などを適宜選択することによって、処理対象のガスがガス処理空間12aの何処を流れても当該ガスに対して分解に必要十分な熱を与えることができるようになる。
【0009】
本発明においては、前記の電熱ヒータ16を棒状又は柱状のセラミックヒータ16Aで形成すると共に、そのセラミックヒータ16Aを同一円周上にて互いに隣接するように配列して前記の炉本体12の内壁12bを形成するのが好ましい。
この場合、炉本体12の構成をシンプルに出来るのに加え、電熱ヒータ16が発する熱を無駄なくガス処理空間12aの加熱に利用することが出来る。
【0010】
また、本発明においては、前記セラミックヒータ16Aが炭化ケイ素発熱体を用いたSiCヒータであるのが好ましい。
この場合、ガス処理空間12aにおけるプラズマジェットPが供給される領域全体の温度を1600℃前後の超高温にすることが出来る。
【0011】
さらに、本発明においては、前記ガス処理空間12a内に、その内部の気流を制御して流体の滞留時間を延長させる気流制御手段を設けるのが好ましい。
この場合、ガス処理空間12a内における処理対象のガスの滞留時間が延長され、当該ガスに対してより多くの熱を与えることができるようになる。
【0012】
本発明における第2の発明は、上記のガス処理炉を使用した排ガス処理装置であって、上記の何れかのガス処理炉と、上記ガス処理炉へ導入する処理対象の排ガスEを予め液洗する入口スクラバ18、または、上記ガス処理炉で熱分解させた排ガスEを冷却および液洗する出口スクラバ20の少なくとも一方とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のプラズマ式のガス処理炉のように熱源としてプラズマのみを用いるのではなく、プラズマと電熱ヒータとのハイブリッド化を図ることによって、従来のプラズマ式のガス処理炉の利点をそのままの形で有すると共に、電力エネルギーの更なる効率的な利用が可能であり、様々なガスに対する分解効率を極大化させたガス処理炉と、このガス処理炉を用いて排ガスの除害効率を著しく向上させた排ガス処理装置とを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のガス処理炉を用いた排ガス処理装置の一例を示す概略断面図である。
図2図1におけるX-X’線切断端面の模式図である。
図3】本発明の他の実施形態のガス処理炉における炉本体の水平方向切断端面の模式図である。
図4】本発明における他の実施形態の排ガス処理装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のガス処理炉及びこれを用いた排ガス処理装置の実施形態について図1及び図2を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態のガス処理炉10を用いた排ガス処理装置50の一例を示す概略断面図であり、図2は、図1におけるX-X’線切断端面の模式図である。この排ガス処理装置50は、図示しない排出源より排出される排ガスEを熱分解して除害処理する装置であり、大略、ガス処理炉10,入口スクラバ18および出口スクラバ20で構成される。
なお、この排ガス処理装置50は、処理対象となる排ガスEの種類を限定するものではないが、半導体製造装置から排出されるPFCs(パーフルオロコンパウンド),モノシラン(SiH4),塩素系ガスなどのようにその排出基準が定められている難分解性の排ガスEを除害処理するのに特に好適である。したがって、以下では、この排ガス処理装置50について、半導体製造装置から排出される排ガスEの除害処理に用いるものを念頭に置いて説明する。
【0016】
ガス処理炉10は、半導体製造プロセスなどから排出される排ガスE中の有害な除害対象ガスをプラズマジェットPと電熱とを併用して熱分解する装置であり、炉本体12,プラズマジェットトーチ14及び電熱ヒータ16を備える。
【0017】
炉本体12は、その内部にガス処理空間12aが設けられ、上下が開口した中空筒状の直管型部材であり、本実施形態のガス処理炉10では、図2に示すように、ガス処理空間12aを区画する内壁12bが電熱ヒータ16で構成される(詳しくは後述する)。この電熱ヒータ16で構成された内壁12bの外周は、キャスタブルなどの断熱材22で囲繞されており、更に、その断熱材22の外周は、例えばステンレスなどからなる金属製のジャケット24で被覆されている。
この炉本体12の上部開口には、処理ガス供給器26を介してプラズマジェットトーチ14が連結される。一方、炉本体12の下部開口は、ガス処理空間12aで熱分解処理したガスの排出口となっている。
【0018】
処理ガス供給器26は、プラズマジェットトーチ14のプラズマジェットP噴出側に連結され、プラズマジェットトーチ14で生成したプラズマジェットPの噴出側上流部近傍を囲繞して、処理対象のガス(本実施形態の場合は排ガスE)をスパイラル状に吹き込んでガス処理空間12a内のプラズマジェットPに向けて供給するための装置である。
【0019】
プラズマジェットトーチ14は、高温のプラズマジェットPを生成するための装置であり、本実施形態ではこのプラズマジェットトーチ14として直流アーク放電を採用した非移行型のものが採用されている。また、このプラズマジェットトーチ14は、黄銅などの金属材料からなるトーチボディ28を有する。このトーチボディ28の先端(図1における下端)にはアノード30が連設されており、その内部には棒状のカソード32が取着される。
【0020】
アノード30は、銅,銅合金,ニッケルまたはタングステンなどの高い導電性を有する高融点金属で構成され、内部にプラズマ発生室30aが凹設された円筒状のノズル電極である。このアノード30の下面中心部には前記プラズマ発生室30a内で生成した超高温のプラズマジェットPを噴出させる噴出孔30bが貫設される。
【0021】
カソード32は、トリウム或いはランタンを混入させたタングステンなどからなり先端に向けてその外径が紡錘状に縮径した棒状の電極部材であり、その先端部が上記プラズマ発生室30aに配設される。
なお、アノード30とカソード32との間には、トーチボディ28を介してこれらの間で通電(短絡)しないように四フッ化エチレン樹脂やセラミックなどの絶縁材料(図示せず)が介装されている。また、アノード30およびカソード32の内部には、冷却水通流路(図示せず)が設けられており、これらの部材を冷却するようにしている。なお、図1における符合Wは当該冷却水の流れを表わしている。
【0022】
以上のように構成されたプラズマジェットトーチ14のアノード30およびカソード32には、所定の放電電圧を印加してそのアノード30とカソード32との間にアークを生起させる電源ユニット34が接続される。なお、この電源ユニット34としては、所謂スイッチング方式の直流電源装置が好適である。
【0023】
また、以上のように構成されたプラズマジェットトーチ14には、プラズマ生成用流体供給手段36が設けられる。
このプラズマ生成用流体供給手段36は、アノード30のプラズマ発生室30a内に、窒素,酸素,アルゴン,ヘリウム又は水からなる群より選ばれる少なくとも1種を高温プラズマ生成用の流体Gとして送給するものであり、これらの流体Gを貯蔵する貯蔵タンク36aと、この貯蔵タンク36aとアノード30のプラズマ発生室30aとを連通する配管系36bとを有する。また、この配管系36bにはマスフローコントローラなどの流量制御手段36cが取り付けられる。
【0024】
電熱ヒータ16は、炉本体12内のガス処理空間12aにおけるプラズマジェットPが供給される領域を加熱するための手段であり、その熱源の種類は、処理対象のガスの熱分解温度等に応じて適宜選択される。本実施形態では、処理対象のガスが半導体製造装置から排出される排ガスEであることから、耐食性に優れ、高温での発熱が可能な炭化ケイ素(SiC),二珪化モリブデン(MoSi2)及びランタンクロマイト(LaCrO3)などのセラミックスを発熱体とする棒状又は柱状のセラミックヒータ16A、とりわけ1600℃前後の加熱が可能な炭化ケイ素(SiC)を発熱体とするSiCヒータが採用されている。
【0025】
ここで、本実施形態のガス処理炉10では、上述したようにガス処理空間12aを区画する内壁12bが電熱ヒータ16で構成されている。具体的には、棒状又は柱状のセラミックヒータ16Aを、プラズマジェットPの中心と同じ中心を持つ同一円周上にて互いに隣接するように配列すると共に(図2参照)、隣接するセラミックヒータ16A同士を固定せずにフリーの状態で内壁12bを形成している。このように、棒状又は柱状のセラミックヒータ16Aで炉本体12の内壁12bを形成することにより、セラミックヒータ16Aが発する高熱をダイレクトにガス処理空間12aの加熱に利用することが出来る。また、隣接するセラミックヒータ16A同士を固定せずにフリーの状態としているので、セラミックヒータ16Aの発熱に伴う熱膨張に起因する応力などを分散させることが出来、炉本体12を長期間安定して稼働させることが出来る。なお、このように隣接するセラミックヒータ16A同士を固定せずにフリーの状態としても、ガス処理空間12a内は後述する排気ファン46の作用によって負圧となっているため、処理対象の排ガスEが炉本体12内から外部へと漏洩する心配はない。
【0026】
また、内壁12bを形成する電熱ヒータ16のそれぞれは、プラズマジェットトーチ14に電力を供給する電源ユニット34に接続され、プラズマジェットトーチ14へ供給する電力の一部を各電熱ヒータ16へと回す(供給する)ようになっている。
【0027】
以上のように構成されたガス処理炉10には、図示しないが、例えばガス処理空間12aの温度を検出する熱電対などの温度計測手段が取り付けられると共に、この温度計測手段で検出した温度データ(温度信号)が、信号線を介して、CPU[Central Processing Unit;中央処理装置],メモリ,入力装置及び表示装置などからなる制御手段へと与えられるようになっている。また、この制御手段には、上記の電源ユニット34も接続されている。
なお、本実施形態のガス処理炉10は、水などの薬液を貯留する貯留タンク38上に立設される。
【0028】
入口スクラバ18は、ガス処理炉10に導入する排ガスEに含まれる粉塵や水溶性成分などを除去する湿式のスクラバであり、直管型のスクラバ本体18aと、このスクラバ本体18a内部の頂部近傍に設置され、水などの薬液を噴霧状にして撒布するスプレーノズル18bとを備える。
【0029】
本実施形態の入口スクラバ18は、上流端が排ガス供給源である半導体製造装置(図示せず)に接続された流入配管系40の途中に設けられる。また、この入口スクラバ18は、水などの薬液を貯留する貯留タンク38上に立設され、排水が貯留タンク38に送り込まれるようになっている。
【0030】
そして、スプレーノズル18bと貯留タンク38との間には循環ポンプ42が設置されており、貯留タンク38内の貯留薬液をスプレーノズル18bへ揚上するようになっている。
【0031】
出口スクラバ20は、ガス処理炉10を通過した熱分解後の排ガスEを冷却すると共に、熱分解によって副成した粉塵や水溶性成分等を最終的に排ガスE中から除去する湿式のスクラバであり、排出配管44を介してガス処理炉10の炉本体12底面の開口に連通する洗浄層20aとこの洗浄層20aの直上に配設されたスプレーノズル20bとで構成される。この出口スクラバ20は貯留タンク38上に立設され、排水が貯留タンク38に送り込まれるようになっている。
【0032】
また、上述した入口スクラバ18と同様に、図示実施形態の出口スクラバ20では、スプレーノズル20bと貯留タンク38との間には循環ポンプ42が設置されており、貯留タンク38内の貯留薬液をスプレーノズル20bへ揚上するようになっているが、このスプレーノズル20bには、貯留タンク38内の貯留薬液ではなく、新水などの新しい薬液を供給するようにしてもよい。
【0033】
そして、この出口スクラバ20の出口は、処理済みの排ガスEを大気中へと放出する排気ファン46に接続されている。
【0034】
なお、本実施形態の排ガス処理装置50におけるガス処理炉10を除く他の部分には、排ガスEに含まれる、或いは、当該排ガスEの分解によって生じるフッ酸などの腐食性成分による腐食から各部を守るため、塩化ビニル,ポリエチレン,不飽和ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などによる耐食性のライニングやコーティングが施されている。
【0035】
次に、以上のように構成された排ガス処理装置50を用いて排ガスEの除害処理を行う際には、まず始めに、排ガス処理装置50の運転スイッチ(図示せず)をオンにしてガス処理炉10のプラズマジェットトーチ14と電熱ヒータ16とを作動させ、炉本体12内のガス処理空間12aの加熱を開始する。
【0036】
そして、ガス処理空間12a内の温度が、800℃~1600℃の範囲内であって、処理対象の排ガスEの種類に応じた所定の温度に達すると、排気ファン46が作動し、排ガス処理装置50への排ガスEの導入が開始される。すると、排ガスEは、入口スクラバ18、ガス処理炉10及び出口スクラバ20をこの順に通過して排ガスE中の除害対象成分が除害される。また、図示しない制御手段によって、ガス処理空間12a内の温度が所定の温度を保持するようにガス処理炉10のプラズマジェットトーチ14と電熱ヒータ16とに供給する電力量が制御される。
【0037】
本実施形態の排ガス処理装置50によれば、ガス処理空間12aのプラズマジェットPが供給される領域を加熱する電熱ヒータ16が備えられているので、従来、プラズマジェットPを生成するためにプラズマジェットトーチ14へ供給されていた電力の一部をこの電熱ヒータ16へ回すことによって、プラズマジェットPの出力は若干落ちるものの、ガス処理空間12a内においてプラズマジェットPの熱が到達しない低温領域をも加熱することができ、ガス処理空間12a全体の温度を底上げすることが出来る。とりわけ、本実施形態では、電熱ヒータ16としてSiCヒータを用いているため、ガス処理空間12aにおけるプラズマジェットPが供給される領域全体の温度を1600℃前後まで昇温させることが出来、例えば、難分解性のCF4がガス処理空間12aの何処を流れても当該CF4を確実に熱分解させることが出来るようになる。
【0038】
また、本実施形態の排ガス処理装置50によれば、入口スクラバ18及び出口スクラバ20を備えているので、ガス処理炉10に導入する排ガスEを予め液洗して流入配管系40下流部や処理ガス供給器26の目詰まり等を防止し、より安定してガス処理炉10を連続運転できると共に、熱分解後の処理済の排ガスEの清浄度を向上させることができる。
【0039】
なお、上記の図1及び図2に示す実施形態は、次のように変更可能である。
すなわち、上述の実施形態のガス処理炉10では、炉本体12の内壁12bをセラミックヒータ16Aで形成する場合を示したが、図3に示すように、この炉本体12の内壁12bを、例えばステンレスやハステロイ(ヘインズ社登録商標)などの高耐熱金属材料、或いはキャスタブルなどの断熱材等からなる円管状の内壁材52で構成すると共に、この内壁材52の外周に電熱ヒータ16を配設してガス処理空間12aのプラズマジェットPが供給される領域を加熱するようにしてもよい。この場合、電熱ヒータ16としては、棒状又は柱状のセラミックヒータ16Aのみならず、例えば、ニクロム線やカンタル(サンドビックAB社登録商標)線などの金属発熱体を中空管状或いは半割管状のシース内に収納したヒータ等を使用するようにしてもよい。
【0040】
また、上述の実施形態のガス処理炉10では、炉本体12内部のガス処理空間12a全体がプラズマジェットPの供給される領域となっているが、例えば図4に示すように、セラミックヒータ16Aで構成された内壁12bの下段にその内壁12bと同じ内径を有する下筒54を連設してガス処理空間12aを延長すると共に、この下筒54の上端に、貯留タンク38より揚上した薬液を流下させて当該下筒54の内面をその薬液で覆う薬液供給手段56を設けるようにしてもよい。このような薬液供給手段56を設けることによって、下筒54の内面を覆う薬液として水を用いた場合、プラズマジェットPや電熱ヒータ16からの熱を受けてその水が気化し、気化した水(水蒸気)はさらに熱を受けて酸素と水素とに解離する。このようにして生成された酸素および水素は、延長されたガス処理空間12a内において処理対象の排ガスEと反応することにより、当該排ガスEの分解に寄与する。
【0041】
また、上述の実施形態のガス処理炉10では、炉本体12内部のガス処理空間12aに何も設けないプレーンなものを示したが、例えば、そのガス処理空間12a内に、高耐食性金属やセラミックス等からなる邪魔板などのように、ガス処理空間12a内の気流を制御して流体(=処理対象の排ガスE)の滞留時間を延長させる気流制御手段(図示せず)を設けるようにしてもよい。このような気流制御手段を設けることによって、ガス処理空間12aを通過する排ガスEの当該ガス処理空間12aでの滞留時間を延長させることが出来、排ガスEの熱分解効率をより一層向上させることが出来る。
【0042】
更に、上述の実施形態のガス処理炉10では、プラズマジェットトーチ14と電熱ヒータ16とを同じ電源ユニット34に接続して電力を供給する場合を示しているが、プラズマジェットトーチ14と電熱ヒータ16とをそれぞれ別々の電源ユニット(図示せず)に接続するようにしてもよい。
【0043】
そして、上述の実施形態の排ガス処理装置50では、入口スクラバ18と出口スクラバ20の両方を備える場合を示したが、処理する排ガスEの種類によってはこれらの何れか一方を備えるようにしてもよい。また、入口スクラバ18及び出口スクラバ20を貯留タンク38上に立設する場合を示したが、入口スクラバ18及び出口スクラバ20を貯留タンク38とは別個に配設すると共に、両者を配管で接続し、各スクラバ18,20からの排液が貯留タンク38に送り込まれるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の排ガス処理装置は、従来のプラズマ式のガス処理炉を用いたものに比べて、電力エネルギーの更なる効率的な利用を図ることが可能であり、様々なガスに対する分解効率を極大化させることが出来ることから、上述した半導体製造プロセスから排出される排ガスの熱分解処理のみならず、化学プラントにおける排ガスの加熱処理など、あらゆる工業プロセスより排出される排ガスの分解処理に利用することができる。また、本発明のガス処理炉は、排ガスの熱分解処理のみならず、工業プロセスにおける様々なガスの熱処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10:ガス処理炉,12:炉本体,12a:ガス処理空間,12b:内壁,14:プラズマジェットトーチ,16:電熱ヒータ,16A:セラミックヒータ,18:入口スクラバ,20:出口スクラバ,50:排ガス処理装置,E:排ガス,P:プラズマジェット.
図1
図2
図3
図4