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  • 特許-化粧用ブラシ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】化粧用ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20230524BHJP
   A46B 9/02 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A45D34/04 510B
A46B9/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017147390
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019024980
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】松浦 和司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 素樹
(72)【発明者】
【氏名】岡元 美也子
(72)【発明者】
【氏名】贄田 愛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 美香
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】山崎 孔徳
【審判官】佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0188691(US,A1)
【文献】特開2007-136200(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03026617(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D34/04
A46B9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の上部開口部を平面視において所定の幅を備えた円弧状とし、前記筒状部材の上部開口部から上方に延び出す毛束は、前記上部開口部に近い根元部分から上方に進むにつれて円弧状の曲率半径が徐々に大きくなり、毛束の先端部分は平面視において前記筒状部材の上部開口部より大きい曲率半径の円弧状又は略楕円形状であり、毛束の先端により形成されるブラシの先端面が、前記円弧状の内側湾曲面から外側湾曲面に向けてブラシ毛の長さが徐々に長くなるように形成された第1の凸曲面と、前記円弧状の長さ方向に向けてブラシ毛の長さが徐々に変化し、略中央部でブラシ毛が最も長くなるように形成された第2の凸曲面と、を備えた複合曲面であることを特徴とする化粧用ブラシ。
【請求項2】
前記筒状部材の上部開口部が平面視において曲率半径5~80mmの円弧状であることを特徴とする請求項1記載の化粧用ブラシ。
【請求項3】
前記第1の凸曲面が曲率半径5~60mmを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧用ブラシ。
【請求項4】
前記第2の凸曲面が曲率半径5~80mmを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧用ブラシ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧用ブラシを組み合わせたことを特徴とする粉末状化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頬紅やアイシャドー等の粉末状化粧料を塗布するための化粧用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧用ブラシは、化粧の仕上がりを左右する重要な化粧用具であることから、化粧料の種類や塗布する部位の面積等に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
ファンデーションや白粉等の粉末状化粧料を塗布する場合には、顔の比較的広い面積をむらなく塗布する必要があることから、筆形状や扁平な刷毛状のブラシを用いることが多い。頬紅やアイシャドーを塗布するブラシは、顔の比較的狭い面積を塗布するため小型ではあるものの、頬紅等もファンデーション等と同じく粉末状化粧料であることから、ファンデーション等と同形状のブラシが用いられることが一般的であった。
【0004】
一方、頬紅やアイシャドーを美しく仕上げるためには、微妙なグラデーションをつけながら肌に塗布することが重要であり、このようなグラデーションは、使用者の化粧テクニックによるところが大きいため、通常の使用者が、従来のブラシを使用して美麗な仕上がりを得ることは必ずしも容易ではなかった。
【0005】
このため、特別な化粧テクニックを必要とすることなく、頬紅やアイシャドー等の化粧料をグラデーションをつけながら容易に塗布することができ、美しい仕上がりを得ることができる化粧用ブラシの開発が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-113484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特別な化粧テクニックを必要とすることなく、頬紅やアイシャドー等の化粧料をグラデーションをつけながら容易に塗布することができ、美しい仕上がりを得ることができる化粧用ブラシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者が検討を行った結果、ブラシの先端面を所定の形状の曲面を複数組み合わせた複合曲面とすることによって、頬紅やアイシャドー等の化粧料をグラデーションをつけながら容易に塗布することができ、美しい仕上がりを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、筒状部材の上部開口部を平面視において所定の幅を備えた円弧状とし、前記筒状部材の上部開口部から上方に延び出す毛束は、前記上部開口部に近い根元部分から上方に進むにつれて円弧状の曲率半径が徐々に大きくなり、毛束の先端部分は平面視において前記筒状部材の上部開口部より大きい曲率半径の円弧状又は略楕円形状であり、毛束の先端により形成されるブラシの先端面が、前記円弧状の内側湾曲面から外側湾曲面に向けてブラシ毛の長さが徐々に長くなるように形成された第1の凸曲面と、前記円弧状の長さ方向に向けてブラシ毛の長さが徐々に変化し、略中央部でブラシ毛が最も長くなるように形成された第2の凸曲面と、を備えた複合曲面であることを特徴とする化粧用ブラシである。
【0010】
さらに本発明は、前記筒状部材の上部開口部が平面視において曲率半径5~80mmの円弧状であることを特徴とする化粧用ブラシである。
【0011】
さらに本発明は、前記第1の凸曲面が曲率半径5~60mmを備えることを特徴とする化粧用ブラシである。
【0012】
さらに本発明は、前記第2の凸曲面が曲率半径5~80mmを備えることを特徴とする化粧用ブラシである。
【0013】
さらに本発明は、前記の化粧用ブラシを組み合わせたことを特徴とする粉末状化粧料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特別な化粧テクニックを必要とすることなく、頬紅やアイシャドー等の化粧料をグラデーションをつけながら容易に塗布することができ、美しい仕上がりを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】化粧用ブラシの外観図
図2】化粧用ブラシの外観図((a)背面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)底面図、(e)平面図)
図3】化粧用ブラシの正面図(他の実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の化粧用ブラシは、図1に示すように、筒状部材(2)の上部開口部(2a)を平面視において所定の幅を備えた円弧状とし、ブラシ(3)を形成する毛束は前記筒状部材の上部開口部から上方に伸び出している。
【0018】
上部開口部(2a)から上方に延び出す毛束は、上部開口部に近い根元部分では、筒状部材と同じ曲率半径の円弧状であるが、上方に進むにつれて毛束が徐々に広がることから、しだいに大きな曲率半径の円弧状へ変化し、ブラシの長さによってはブラシの先端部は略楕円形となる(図2)。このようにブラシ(3)は、少なくとも筒状部材の上部開口部付近とこれよりやや上方付近では、円弧状の内側湾曲面(4)と外側湾曲面(5)を備え、いずれの湾曲面も根元から先端にかけて徐々に大きな曲率半径へ変化している。
【0019】
ブラシ(3)の内側湾曲面(4)は、肌に密着し易い形状であるため、化粧操作を円滑に行うことができるが、特に、筒状部材の上部開口部の曲率半径R1を5~80mmとすると、内側湾曲面の上端部が頬に密着し易くなり、頬紅等が塗布し易くなる(図2(d))。
【0020】
筒状部材(2)は、ブラシとなる毛束を固定するものである。筒状部材は、通常、金属製もしくは樹脂製であり、筒状部材の内部に毛束を接着固定してブラシを形成する。筒状部材はそのまま化粧用ブラシのハンドルとして用いることができ、筒状部材を把持して化粧操作を行ってもよいが、筒状部材とは別に用意したハンドルに筒状部材を組み込むことも可能である。
【0021】
筒状部材(2)を化粧用ブラシのハンドルとして使用する場合には、筒状部材の胴部を上部開口部と同じく円弧状とすることが好ましい。筒状部材胴部及び上部開口部を円弧状とすることにより、把持した際に指に密着し易くなり、化粧操作を容易に行うことができる。特に、曲率半径R1を5~80mmの円弧状とすると、内側湾曲面が親指の先端から第一関節に至る指の腹部分に沿い易くなるため、使用者は自然にブラシが親指と直角になるように化粧用ブラシを把持するようになるため、より一層化粧操作を円滑に行うことが可能となる(図2)。
【0022】
ブラシ(3)の先端面(3a)は、円弧状の内側湾曲面(4)から外側湾曲面(5)に向けてブラシ毛の長さが徐々に長くなるように形成した第1の凸曲面(6)を備える(図2(c))。このような第1の凸曲面(6)の中央部は、頬の中心部分に当て易く、化粧操作を行う中心位置が定め易い。特に、第1の凸曲面(6)の曲率半径R2を5~60mmとすると、肌への感触がすぐれるとともに、所定の位置を中心に自然なグラデーションで頬紅等を塗布することができ、すぐれた化粧効果を得ることができる。
【0023】
またブラシ(3)の先端面(3a)は、円弧状の長さ方向に向けてブラシ毛の長さが徐々に変化し、略中央部でブラシ毛が最も長くなるように形成された第2の凸曲面(7)を備える(図2(b))。この第2の凸曲面(7)で頬紅等の固形粉末化粧料を掬い取ると、化粧料はブラシの中央部分に最も多く、周辺にいくほど少なく付着する。また、肌へ接触する圧力は、ブラシの中央部分が最も強く、周辺にいくほど弱くなることから、第2の凸曲面(7)で化粧料を塗布すると自然なグラデーションを簡単につけることができる。特に、第2の凸曲面(7)の曲率半径R3を5~80mmとすると、肌への感触がすぐれるとともに、自然なグラデーションで頬紅等を塗布することができ、すぐれた化粧効果を得ることができる。
【0024】
ブラシの材質は、肌への感触にすぐれ、また化粧料に配合される成分との相互作用が少ないことから、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、馬毛、山羊毛、リス毛、豚毛から選ばれる1種又は2種以上とすることが好ましい。
【0025】
ブラシの長さは、特に限定されるものではないが、5~50mmとすれば、肌への感触にすぐれ、頬紅やアイシャドー等を円滑に塗布することができる。
【0026】
化粧用ブラシは、頬紅等の固形粉末化粧料とともにコンパクト容器に収容することで、持ち運びを容易にするとともに、外出先での円滑な化粧行為を可能としている。
【0027】
化粧用ブラシは、化粧料を塗布する部位に応じて大きさを適宜調整することができる。例えば、瞼にアイシャドーを塗布するような、面積が比較的小さい部位に塗布する場合には、図3のように、左右の幅を狭くした形状とすれば化粧操作にすぐれ好適である。尚、本発明の化粧用ブラシは、頬紅、アイシャドーに限らず、ファンデーション、白粉を塗布する際に用いてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 化粧用ブラシ
2 筒状部材
2a 上部開口部
3 ブラシ
3a 先端面
4 内側湾曲面
5 外側湾曲面
6 第1の凸曲面
7 第2の凸曲面
R1 曲率半径
R2 曲率半径
R3 曲率半径
図1
図2
図3