(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】表面測定装置及び表面測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20230524BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01B11/30 102
(21)【出願番号】P 2018180976
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-05-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比 厚裕
(72)【発明者】
【氏名】今野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】古家 順弘
(72)【発明者】
【氏名】中崎 昭仁
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204119(WO,A1)
【文献】特開2011-220827(JP,A)
【文献】特開2004-184397(JP,A)
【文献】米国特許第4929846(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/88
G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被測定対象の表面を測定する表面測定装置において、
前記被測定対象の幅方向に亘って第1線状光を照射する第1光源と、
前記被測定対象の前記幅方向に亘って第2線状光を照射する第2光源と、
前記第1線状光が前記被測定対象の表面の第1反射領域で反射して第1反射像が投影されると共に、前記第2線状光が前記被測定対象の表面の第2反射領域で反射して第2反射像が投影されるスクリーンと、
前記スクリーンに投影された前記第1反射像及び前記第2反射像を撮像し、撮像画像を取得する撮像装置と、
前記撮像画像を用いて、前記被測定対象の表面を測定する演算処理装置と、
を有し、
前記第1線状光の前記被測定対象への入射角と前記第2線状光の前記被測定対象への入射角とは、同じ角度φであり、
前記第1反射領域及び前記第2反射領域は、前記被測定対象の移動方向において異なる位置にあり、かつ、前記被測定対象の前記幅方向において連続する位置にある、表面測定装置。
【請求項2】
前記被測定対象は、平面上を移動しており、
前記第1光源及び前記第2光源は、下記の式(1)を満たすように配置される、請求項1に記載の表面測定装置。
wは、前記移動方向に対応する前記スクリーンの高さ方向における、前記第1反射像及び前記第2反射像それぞれの変動幅であり、pは、前記第1反射領域及び前記第2反射領域の前記移動方向での間隔である。
【請求項3】
前記被測定対象は、ローラの曲面上を移動し、前記曲面上の前記被測定対象の表面で前記第1線状光及び前記第2線状光が反射し、
前記第1光源及び前記第2光源は、下記の式(2)を満たすように配置される、請求項1に記載の表面測定装置。
wは、前記移動方向に対応する前記スクリーンの高さ方向における、前記第1反射像及び前記第2反射像それぞれの変動幅であり、rは前記ローラの半径であり、θは、前記第1反射領域から前記ローラの断面円の中心を結ぶ半径線と、前記第2反射領域から前記中心を結ぶ半径線とがなす開き角であり、dは、前記ローラの頂点部における接線上での前記頂点部と前記スクリーンとの距離である。
【請求項4】
移動する被測定対象の表面を測定する表面測定方法において、
前記被測定対象の幅方向に亘って第1線状光を照射する第1線状光照射工程と、
前記被測定対象の前記幅方向に亘って第2線状光を照射する第2線状光照射工程と、
前記第1線状光を前記被測定対象の表面の第1反射領域で反射させ、スクリーンに第1反射像を投影すると共に、前記第2線状光を前記被測定対象の表面の第2反射領域で反射させ、前記スクリーンに第2反射像を投影する反射像投影工程と、
前記スクリーンに投影された前記第1反射像及び前記第2反射像を撮像装置で撮像し、撮像画像を取得する撮像工程と、
前記撮像画像を用いて、演算処理装置によって前記被測定対象の表面を測定する演算処理工程と、
を有し、
前記第1線状光の前記被測定対象への入射角と前記第2線状光の前記被測定対象への入射角とは、同じ角度φであり、
前記第1反射領域及び前記第2反射領域は、前記被測定対象の移動方向において異なる位置にあり、かつ、前記被測定対象の前記幅方向において連続する位置にある、表面測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面測定装置及び表面測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光てこに基づいて被測定対象の表面を測定する表面測定装置がある(例えば、特許文献1~4参照。)。そのような表面測定装置では、光源から照射された線状光を移動する被測定対象の表面で反射させ、スクリーンに投影された反射像を撮像装置で撮像し、得られた撮像画像を解析することで、被測定対象の表面測定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4081414号公報
【文献】特許第6281667号公報
【文献】特開平04-160304号公報
【文献】特許第6278171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、広い幅を有する被測定対象の表面を測定する要求がある。しかし、1台の光源では、要求される広い照射幅を有する線状光を照射できないため、広い幅を有する被測定対象の測定には容易に対応できない課題がある。
【0005】
広い幅を有する被測定対象の表面測定を行うために、複数台の光源を配置する方法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。しかし、具体的な光源の配置などの装置構成は開示されておらず、複数台の光源を配置する表面測定装置は、いまだ技術的に確立されていない。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、広い幅を有する被測定対象の表面を信頼性よく測定できる表面測定装置及び表面測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面測定装置は、移動する被測定対象の表面を測定する表面測定装置において、前記被測定対象の幅方向に亘って第1線状光を照射する第1光源と、前記被測定対象の前記幅方向に亘って第2線状光を照射する第2光源と、前記第1線状光が前記被測定対象の表面の第1反射領域で反射して第1反射像が投影されると共に、前記第2線状光が前記被測定対象の表面の第2反射領域で反射して第2反射像が投影されるスクリーンと、前記スクリーンに投影された前記第1反射像及び前記第2反射像を撮像し、撮像画像を取得する撮像装置と、前記撮像画像を用いて、前記被測定対象の表面を測定する演算処理装置と、を有し、前記第1線状光の前記被測定対象への入射角と前記第2線状光の前記被測定対象への入射角とは、同じ角度φであり、前記第1反射領域及び前記第2反射領域は、前記被測定対象の移動方向において異なる位置にあり、かつ、前記被測定対象の前記幅方向において連続する位置にある。
【0008】
本発明の表面測定装置は、移動する被測定対象の表面を測定する表面測定装置において、前記被測定対象の幅方向に亘って第1線状光を照射する第1光源と、前記被測定対象の前記幅方向に亘って第2線状光を照射する第2光源と、前記第1線状光が前記被測定対象の表面の第1反射領域で反射して第1反射像が投影されると共に、前記第2線状光が前記被測定対象の表面の第2反射領域で反射して第2反射像が投影されるスクリーンと、前記スクリーンに投影された前記第1反射像及び前記第2反射像を撮像し、撮像画像を取得する撮像装置と、前記撮像画像を用いて、前記被測定対象の表面を測定する演算処理装置と、を有し、前記第1線状光の前記被測定対象への入射角と前記第2線状光の前記被測定対象への入射角とは、同じ角度φであり、前記第1反射領域及び前記第2反射領域は、前記被測定対象の移動方向において同じ位置にあり、かつ、前記被測定対象の前記幅方向において連続する位置にあり、前記第1光源及び前記第2光源は、前記撮像装置で撮像する時刻に、前記第1線状光及び前記第2線状光のいずれか一方を照射し、前記演算処理装置は、前記第1線状光及び前記第2線状光のいずれか一方からなる前記撮像画像に基づいて、前記被測定対象の表面を測定する。
【0009】
本発明の表面測定装置は、移動する被測定対象の表面を測定する表面測定装置において、前記被測定対象の幅方向に亘って、第1の波長を有する第1線状光を照射する第1光源と、前記被測定対象の前記幅方向に亘って、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2線状光を照射する第2光源と、前記第1線状光が前記被測定対象の表面の第1反射領域で反射して第1反射像が投影されると共に、前記第2線状光が前記被測定対象の表面の第2反射領域で反射して第2反射像が投影されるスクリーンと、前記スクリーンに投影された前記第1反射像及び前記第2反射像を撮像し、撮像画像を取得する撮像装置と、前記撮像画像を用いて、前記被測定対象の表面を測定する演算処理装置と、を有し、前記第1線状光の前記被測定対象への入射角と前記第2線状光の前記被測定対象への入射角とは、同じ角度φであり、前記第1反射領域及び前記第2反射領域は、前記被測定対象の移動方向において同じ位置にあり、かつ、前記被測定対象の前記幅方向において連続する位置にあり、前記演算処理装置は、前記撮像画像から前記第1の波長の成分と前記第2の波長の成分とを分離して、前記被測定対象の表面を測定する。
【0010】
本発明の表面測定方法は、移動する被測定対象の表面を測定する表面測定方法において、前記被測定対象の幅方向に亘って第1線状光を照射する第1線状光照射工程と、前記被測定対象の幅方向に亘って第2線状光を照射する第2線状光照射工程と、前記第1線状光を前記被測定対象の表面の第1反射領域で反射させ、スクリーンに第1反射像を投影すると共に、前記第2線状光を前記被測定対象の表面の第2反射領域で反射させ、前記スクリーンに第2反射像を投影する反射像投影工程と、前記スクリーンに投影された前記第1反射像及び前記第2反射像を撮像装置で撮像し、撮像画像を取得する撮像工程と、前記撮像画像を用いて、演算処理装置によって前記被測定対象の表面を測定する演算処理工程と、を有し、前記第1線状光の前記被測定対象への入射角と前記第2線状光の前記被測定対象への入射角とは、同じ角度φであり、前記第1反射領域及び前記第2反射領域は、前記被測定対象の移動方向において異なる位置にあり、かつ、前記被測定対象の前記幅方向において連続する位置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、広い幅を有する被測定対象の表面を測定する際に、スクリーンに投影される第1反射像及び第2反射像が重なって測定できない領域が発生することを防止できる。また、被測定対象に光照射されずに未測定となる領域が発生することがなく、被測定対象の測定漏れを防止できる。よって、広い幅を有する被測定対象の表面を信頼性よく測定できる表面測定装置及び表面測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願発明者が検討した表面測定方法を説明するための斜視図である。
【
図2】
図1の表面測定方法の課題を説明するための斜視図である。
【
図3】
図1の表面測定方法の課題を説明するための平面図である。
【
図4A】第1実施形態の表面測定装置を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図4の表面測定装置の側面図及び
図4のスクリーンの正面図である。
【
図6】第2実施形態の表面測定装置を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図6の表面測定装置の側面図及び
図6のスクリーンの正面図である。
【
図8】第2実施形態において第2線状光の照射位置を変えたときの表面測定装置の側面図及びスクリーンの正面図である。
【
図9】第2実施形態の表面測定装置のスクリーンに投影された第1反射像、第2反射像、第3反射像及び第4反射像を示す、スクリーンの正面図である。
【
図10A】第3実施形態の表面測定装置を説明するための斜視図及びスクリーンの正面図である。
【
図10B】第3実施形態の表面測定装置を説明するための斜視図及びスクリーンの正面図である。
【
図11】第4実施形態の表面測定装置を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。実施形態の説明の前に、本願発明者が行った検討結果について説明する。
【0014】
(光てこに基づく表面測定方法の検討)
図1に示すように、光てこに基づく表面測定方法では、光源100から照射された線状光Lを、移動する被測定対象200の表面で反射させる。また、表面測定方法では、光源100と対向するように配置されたスクリーン300に、被測定対象200で反射した線状光Lの反射像400が投影される。そして、スクリーン300に投影された反射像400を撮像装置500で撮像し、得られた撮像画像内の反射像400を解析することで、被測定対象200の表面測定が行われる。
【0015】
近年、このような表面測定方法を使用して、広い幅を有する被測定対象の表面測定を行う要求がある。しかし、1つの光源100では光学系の制約又は光出力の制約から広い照射幅を有する線状光を十分なパワー密度で照射できないため、広い幅を有する被測定対象の測定には容易に対応できない課題がある。そこで、複数の光源を使用して線状光の実質的な照射幅を広げることが考えられる。
【0016】
ここで、光てこに基づく表面測定方法とは異なり、一般的な表面測定手法である光切断法を用いるのであれば、光切断法が、被測定対象にスリット光を照射し、被測定対象の表面の反射光を直接測定する手法であるため、被測定対象の幅方向の測定線に沿って複数のスリット光が一本続きになるように、複数の光源を配置しさえすればよく、容易に光源の配置を決定できる。
【0017】
一方で、光てこに基づく表面測定方法においても、
図2に示すように、第1光源100aと第2光源100bとから被測定対象200の幅方向に一本続きになるように第1線状光L1と第2線状光L2とをそれぞれ照射する手法が考えらえる。このとき、被測定対象200で反射した第1線状光L1及び第2線状光L2は、スクリーン300に向かってそれぞれ扇状に広がってゆくため、スクリーン300に投影される第1反射像400aと第2反射像400bとが一部重なってしまう。
【0018】
上記したように、光てこに基づく表面測定方法では、光切断法と違って、被測定対象200で線状光Lを反射させ、スクリーン300上に投影された反射像400を撮像して測定する(
図1)。このため、
図2に示すように、第1反射像400aと第2反射像400bとが重なった領域Aでは、被測定対象200の正確な表面測定ができなくなってしまう。
【0019】
また、
図2とは逆に、
図3に示すように、第1反射像400aと第2反射像400bとが、スクリーン300上で、被測定対象200の幅方向において重ならないで直線状に連なるように、第1光源100aと第2光源100bとから第1線状光L1と第2線状光L2とをそれぞれ照射することも考えられる。しかし、この場合、被測定対象200には、第1線状光L1と第2線状光L2とが反射する幅方向位置Cに第1線状光L1と第2線状光L2とが照射されない領域Bが生じる。被測定対象200の光照射されない領域Bは、表面測定されないため、測定漏れが発生してしまう。
【0020】
以下に説明する実施形態の表面測定装置及び表面測定方法では、第1反射像400aと第2反射像400bとがスクリーン300上で重なってしまい正確な表面測定ができないという課題や、被測定対象200の幅方向に測定漏れが発生してしまうという課題を解消することができる。
【0021】
(第1実施形態)
図4及び
図5は第1実施形態の表面測定装置1を模式的に示す図である。第1実施形態では、被測定対象5が平面上を移動する態様を例に挙げて説明する。
【0022】
図4Aに示すように、第1実施形態の表面測定装置1は、第1光源11及び第2光源12と、スクリーン20と、撮像装置30と、演算処理装置40とを備えている。第1光源11及び第2光源12は、搬送ラインの平面上を移動する、帯状の被測定対象5の表面に対して、被測定対象5の移動方向MDの上流側から第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する。
【0023】
第1光源11及び第2光源12は、同一構成であり、例えば、連続発振を行うCW(Continuous Wave)レーザ光源、SLD(Super Luminescent Diode)光源又はLED(Light Emitting Diode)光源等の光源部と、ロッドレンズ等のレンズ部とを組み合わせた構成を有する。第1光源11及び第2光源12は、光源部から出射された光を、レンズ部によって、扇状の面に広げて被測定対象5の表面に向かって照射する。
【0024】
第1光源11は、被測定対象5の移動方向MDと直交する幅方向WDに沿って広がり、かつ、移動方向MDに狭い幅を有する第1線状光L1を照射する。また、第2光源12は、被測定対象5の幅方向WDに沿って広がり、かつ、移動方向MDに狭い幅を有する第2線状光L2を照射する。なお、本発明において、第1光源11及び第2光源12は、射出光が扇状に広がるものであればよく、例えば、レンズ部に、ロッドレンズ以外のシリンドリカルレンズ又はパウエルレンズ等のレンズを利用することも可能である。
【0025】
スクリーン20は、第1光源11及び第2光源12と対向する位置に設けられており、被測定対象5の表面により反射された、第1線状光L1の第1反射光と、第2線状光L2の第2反射光とが、投影される。スクリーン20は、例えば、被測定対象5の全幅分となる第1反射光及び第2反射光が投影できるだけの横幅を有している。また、スクリーン20の高さは、被測定対象5の形状や、被測定対象5の移動に伴って発生する振動、被測定対象5の厚み等に応じて変化する第1反射光及び第2反射光の投影位置が、スクリーン20上に存在する高さに選定されている。被測定対象5は、例えば、薄板状でなる帯状の鋼板である。
【0026】
撮像装置30は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、又は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のエリアカメラであり、スクリーン20と対向する位置に設けられている。撮像装置30は、第1反射光及び第2反射光がそれぞれスクリーン20に投影されてできた第1反射像21及び第2反射像22を撮像し、これら第1反射像21及び第2反射像22が写った撮像画像を取得する。
【0027】
ここで、撮像装置30は、演算処理装置40によって制御されており、被測定対象5が移動方向MDに所定距離だけ移動する毎に、演算処理装置40から撮像のためのトリガ信号を受け取る。撮像装置30は、演算処理装置40から出力されたトリガ信号に応じて、第1反射像21及び第2反射像22が投影されているスクリーン20の投影面を順次撮像し、取得した撮像画像を演算処理装置40へと出力する。
【0028】
図4Bは
図4Aの表面測定装置1を上側からみた平面図である。
図4Bでは、第1線状光L1及び第2線状光L2に着目したものであり、撮像装置30及び演算処理装置40が省略されている。
図4A及び
図4Bに示すように、第1実施形態の表面測定装置1では、平面上を移動する被測定対象5の上方に配置された第1光源11と第2光源12とが、被測定対象5の移動方向MDにおいて、相互に異なる位置に配置されている。
【0029】
第1光源11及び第2光源12は、配置位置の調整により、被測定対象5の移動方向MDにおいて、相互に異なる位置に第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する。これにより、被測定対象5で第1線状光L1が反射する第1反射領域Lxと、被測定対象5で第2線状光L2が反射する第2反射領域Lyとは、被測定対象5上の移動方向MDで異なる位置となる。
図4A及び
図4Bの例では、被測定対象5上で第2線状光L2が反射する第2反射領域Lyの移動方向MDでの位置(以下、第2反射位置と称する)R2は、被測定対象5上で第1線状光L1が反射する第1反射領域Lxの移動方向MDでの位置(以下、第1反射位置と称する)R1よりも、被測定対象5の移動方向MDの上流側に位置している。
【0030】
第1線状光L1が被測定対象5の第1反射領域Lxで反射することで、スクリーン20に帯状の第1反射像21が投影される。また同様に、第2線状光L2が被測定対象5の第2反射領域Lyで反射することで、スクリーン20に帯状の第2反射像22が投影される。
【0031】
図5の右側には、
図4Aの表面測定装置1の側面図を示し、
図5の左側には、スクリーン20の正面図を示す。
図5に示すように、第1線状光L1の被測定対象5への入射角は、第2線状光L2の被測定対象5への入射角と同じ角度φに設定される。ここで、入射角φは、被測定対象5の表面の面法線と、第1線状光L1(第2線状光L2)の光軸とがなす角度である。
【0032】
また、上記したように、本実施形態の場合、第2線状光L2は、第1線状光L1よりも被測定対象5の移動方向MDの上流側の位置(スクリーン20から遠ざけた位置)で反射する例を示している。よって、第2線状光L2の第2反射領域Lyとスクリーン20の投影面との移動方向MD上での距離(d+p)は、第1線状光L1の第1反射領域Lxとスクリーン20の投影面との移動方向MD上での距離dよりも、第2反射領域Lyをスクリーン20から遠ざけた距離(間隔p)分だけ長くなる。
【0033】
このため、第2線状光L2が被測定対象5で反射することによってスクリーン20に投影される第2反射像22は、第1線状光L1が被測定対象5で反射することによってスクリーン20に投影される第1反射像21よりも、スクリーン20の上側の位置にずれて投影される。
【0034】
図4Bに示すように、第1線状光L1が反射する第1反射領域Lxと、第2線状光L2が反射2する第2反射領域Lyとは、被測定対象5の移動方向MDで上流側及び下流側にずれた位置となる。
【0035】
第1実施形態では、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとの間で、被測定対象5の幅方向WDにおいて表面が測定されない非測定部が生じないように、第1線状光L1の第1反射領域Lxの両端部のうち第2反射領域Lyに近い側の端部E1と、第2線状光L2の第2反射領域Lyの両端部のうち第1反射領域Lxに近い側の端部E3とが、被測定対象5の幅方向WDにおいて同じ位置に配置される。すなわち、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとを合成すると、被測定対象5において、第1反射領域Lxの両端部のうち第2反射領域Lyから遠い側の端部E2から第2反射領域Lyの両端部のうち第1反射領域Lxから遠い側の端部E4までの領域が、幅方向WDにおいて連続することになる。
【0036】
なお、上述した第1実施形態においては、E1とE3とを、幅方向WDにおいて同じ位置に配置し、幅方向WDでは、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとの間に隙間がなく連続するようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、幅方向WDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとを、E1とE3とが、幅方向WDから見て一部重なる位置になるように配置することで、幅方向WDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとが連続するようにしてもよい。
【0037】
具体的には、第2光源12を被測定対象5の移動方向MDのより上流側に配置させたり、幅方向WDに移動させる等して、幅方向WDにおいて第2反射領域Lyが、第1反射領域Lxの領域にまで広がるようにしてもよい。また逆に、第1光源11を被測定対象5の移動方向MDのより上流側に配置させたり、幅方向WDに移動させる等して、幅方向WDにおいて第1反射領域Lxが、第2反射領域Lyの領域にまで広がるようにしてもよい。
【0038】
図4A及び
図4Bでは、第1光源11及び第2光源12の2つの光源により、被測定対象5の幅方向WDの所定領域に第1線状光L1及び第2線状光L2が照射され、被測定対象5の両端側に線状光が照射されていない。しかし、実際には、被測定対象5の幅方向WDの全体に線状光が照射されることが望ましく、例えば、光源の数や線状光の幅などが調整される。
【0039】
そして、
図4Aに示すように、撮像装置30は、スクリーン20に投影された第1反射像21及び第2反射像22を撮像し、撮像画像を取得する。
【0040】
撮像装置30は、演算処理装置40に接続されており、スクリーン20上の第1反射像21及び第2反射像22を撮像することで取得した撮像画像を、演算処理装置40に出力する。演算処理装置40は第1反射像21及び第2反射像22の撮像画像を用いて画像処理することにより、被測定対象5の表面形状等を算出し、被測定対象5の表面を測定する。
【0041】
本実施形態では、第1線状光L1の被測定対象5への入射角と第2線状光L2の被測定対象5への入射角とを同じ角度φとしており、被測定対象5の表面で第1線状光L1と第2線状光L2とが反射する位置(即ち、第1反射領域Lx及び第2反射領域Ly)を、被測定対象5の移動方向MDにおいて相互にずらしている。これにより、スクリーン20には、第1反射像21と第2反射像22とを相互に重なることなく離れた状態で投影させることができる。したがって、撮像装置30で取得される撮像画像には、被測定対象5の移動方向MDに相当するスクリーン20の高さ方向zに第1反射像21と第2反射像22とが相互に重なることなく離れた状態で撮像される。また、この撮像画像には、被測定対象5の幅方向WDに相当するスクリーン20の幅方向xにおいて、第1反射像21と第2反射像22とが相互に重なるように撮像される。
【0042】
このため、表面測定装置1では、広い幅を有する被測定対象5の表面を測定するために第1光源11及び第2光源12を用いても、第1反射像21及び第2反射像22がスクリーン20上の高さ方向zで重ならず、かつ、第1反射像21及び第2反射像22がスクリーン20の幅方向xでは一部が重なり、被測定対象5の幅方向WDで測定漏れがない撮像画像を得ることができる。
【0043】
本実施形態の演算処理装置40は、撮像装置30で取得された撮像画像に基づいて、被測定対象5の表面の測定として、表面の凹凸等による形状の変化、表面粗さ等を測定することができる。
【0044】
演算処理装置40は、例えば、下記のようにして、被測定対象5の表面形状を測定する。第1線状光L1及び第2線状光L2が照射される被測定対象5の表面の位置に傾斜面があると、第1線状光L1及び第2線状光L2は傾斜面の傾斜角に応じて反射角が変化する。公知の光切断法の原理により、反射角の変化は、第1線状光L1及び第2線状光L2の基準位置からの変位量として現れるため、光てこの原理により、第1反射像21及び第2反射像22は、当該変位量に応じてスクリーン20上での位置が上下することになる。
【0045】
演算処理装置40は、スクリーン20上を撮像して取得した撮像画像から、第1反射像21及び第2反射像22のスクリーン上の位置を検出することで、表面変化を検出する。
【0046】
本実施形態の表面測定装置1では、前述したように、スクリーン20に投影される第1反射像21と、スクリーン20に投影される第2反射像22とが重なることなく、離れた状態で投影される必要がある。次に、スクリーン20上で第1反射像21と第2反射像22とが重ならないように設定する条件について説明する。
【0047】
図5のスクリーン20の正面図に示すように、前述した第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20上で重ならないようにするには、下記の条件を満たす必要がある。ここで、被測定対象5の幅方向WD(
図4A及び
図4B)に沿って延びる、第1線状光L1及び第2線状光L2は、被測定対象5の表面で反射することで、スクリーン20の幅方向xに沿って延びる第1反射像21と第2反射像22として、スクリーン20上に投影される。
【0048】
ここで、被測定対象5の移動方向MDにおける第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの位置のずれは、スクリーン20上では、スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21及び第2反射像22の位置のずれとして表れる。また、被測定対象5の幅方向WDにおける第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの位置のずれは、スクリーン20上では、スクリーン20の幅方向xにおける第1反射像21及び第2反射像22の位置のずれとして表れる。
【0049】
被測定対象5の移動方向MDに対応するスクリーン20の高さ方向zにおいて、第1反射像21と第2反射像22が重ならないようにするためには、第1反射像21と第2反射像22とのスクリーン20上での距離Δzが、以下の式(3)を満たす必要がある。
【0050】
【0051】
ここで、第1反射像21及び第2反射像22が、測定バラツキ等に起因してスクリーン20上で位置が変動し、スクリーン20上で投影される可能性がある範囲を、変動範囲ER1とする。wは、変動範囲ER1のスクリーン20の高さ方向zにおける幅(長さ)であり、第1反射像21及び第2反射像22それぞれの高さ方向zにおける変動幅を示す。変動範囲ER1は、被測定対象5に想定される形状変化や振動により、スクリーン20の高さ方向zで生じる第1反射像21又は第2反射像22の変動領域に加え、スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21又は第2反射像22の線幅(太さ)を含めることができる。
【0052】
なお、第1反射像21及び第2反射像は、第1反射領域Lx又は第2反射領域Lyからスクリーン20までの距離が異なっていることから明らかなように、第1光源11及び第2光源12からの反射光が異なる倍率でスクリーン上に投影されていることになる。そのため、第1反射像21の変動範囲ER1の高さ方向zでの幅と第2反射像22の変動範囲ER1の高さ方向zでの幅とは、厳密には異なる値となるはずである。しかしながら、d>>pとなる場合には、それらの値の差は極めて小さいものと見なせるので、ここでは、どちらの変動範囲も同じER1であるとし、その変動幅を同じwとして説明している。一方で、適宜異なる値とすることも可能である。その場合には、変動幅の大きい方の値をwとすることが好ましい。
【0053】
本実施形態においては、第1反射像21と第2反射像22との距離△zとして、スクリーン20に投影された第1反射像21と第2反射像22との高さ方向zにおける像間距離を距離△zとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21の変動範囲ER1の中心位置と、スクリーン20の高さ方向zにおける第2反射像22の変動範囲ER1の中心位置との距離を、第1反射像21と第2反射像22との距離△zとしてもよい。
【0054】
スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21の線幅は、例えば、第1反射領域Lxの移動方向MDにおける位置からスクリーン20の移動方向MDにおける位置までの距離dによって、決めることができる。被測定対象5で想定される第1反射像21の変動幅wの値は、被測定対象5を用いて表面測定を行った過去の操業データ等から予め決定することができる。
【0055】
スクリーン20の高さ方向zにおける第2反射像22の線幅は、例えば、第2反射領域Lyの移動方向MDでの位置からスクリーン20の移動方向MDでの位置までの距離(d+p)によって決めることができる。被測定対象5で想定される第2反射像22の変動幅wの値は、被測定対象5を用いて表面測定を行った過去の操業データ等から予め決定することができる。
【0056】
スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21及び第2反射像22の距離Δzは、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとの移動方向MDにおける間隔pと、第1線状光L1の被測定対象5に対する入射角の角度φ(以下、単に、入射角φとも称する)を用いて、以下の式(4)で表される。なお、本実施形態の場合、第2線状光L2の被測定対象5に対する入射角の角度はφであり、第1線状光L1の被測定対象5に対する入射角φと同じである。
【0057】
【0058】
よって、上記の式(4)より、式(3)は、下記の式(5)のように表すことができ、また、下記の式(6)を得ることができる。
【0059】
【0060】
【0061】
以上より、第1反射像21と第2反射像22とが重ならないようにするには、式(6)の関係を満たすように、第1光源11及び第2光源12を配置すればよい。具体的には、第1光源11から照射される第1線状光L1の被測定対象5上での第1反射領域Lxと、第2光源12から照射される第2線状光L2の被測定対象5上での第2反射領域Lyとの間隔pを調整したり、第1光源11及び第2光源12から被測定対象5に照射される第1線状光L1及び第2線状光L2の入射角φを調整すればよい。
【0062】
上記した式(6)は、第1反射像21と第2反射像22が重ならないようにするための下限値を規定している。例えば、
図5において、第2反射領域Lyを移動方向MDの上流側(すなわち、スクリーン20から遠ざかる側)の位置にさらにずらすと、スクリーン20上において第2反射像22が、第1反射像21からさらに上側に離れた位置に投影される。
【0063】
このとき、第2反射像22は、線幅が太くなり、かつ輝度が下がる。第2反射像22と第1反射像21とを離すときの距離の上限値としては、スクリーン20上での第2反射像22の輝度が、スクリーン20上での第1反射像21の輝度の80%まで低下する距離までとすることが望ましい。第2反射像22の輝度が第1反射像21の輝度の80%よりも低下してしまうと、撮像画像内における第2反射像22の解析精度が低下し、被測定対象5の表面形状の測定精度が低下してしまうためである。
【0064】
(第1実施形態の作用及び効果)
以上説明したように、表面測定装置1では、被測定対象5の移動方向MDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとが異なる位置となり、かつ、被測定対象5の幅方向WDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとが連続する位置になるように、第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する(第1線状光照射工程及び第2線状光照射工程)。スクリーン20には、第1線状光L1が被測定対象5の表面の第1反射領域Lxで反射することで第1反射像21が投影され、第2線状光L2が被測定対象5の表面の第2反射領域Lyで反射することで第2反射像22が投影される(反射像投影工程)。表面測定装置1では、撮像装置30でスクリーン20上の第1反射像21及び第2反射像22を撮像し(撮像工程)、得られた撮像画像を用いて、演算処理装置40により被測定対象5の表面を測定する(演算処理工程)。
【0065】
このように、表面測定装置1では、第1線状光L1と第2線状光L2とが、被測定対象5の移動方向MDで異なる位置にて反射するように、第1光源11及び第2光源12を配置しているため、第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20上で重ならないように投影される。このため、広い幅を有する被測定対象5の表面を測定するために第1光源11及び第2光源12を配置しても、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22が重なることで測定できない領域が発生することを防止できる。
【0066】
また、表面測定装置1では、第1線状光L1と第2線状光L2とが、被測定対象5の幅方向WDで連続する位置にて反射するように、第1光源11及び第2光源12を配置しているため、被測定対象5の幅方向WDで第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの間に光照射されずに未測定となる領域が発生することがなく、被測定対象の測定漏れを防止できる。よって、広い幅を有する被測定対象5の表面を全体に亘って信頼性よく測定することができる。
【0067】
本実施形態においては、第1光源11及び第2光源12の2つの光源を設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、第1光源及び第2光源に加えて、第3光源や第4光源等、3つ以上の光源を設けるようにしてもよい。この場合、光源の数を増やした分だけ、スクリーン20上には反射像が表れる。このような場合には、上述した式(6)に示す関係が、各反射像の間で満たされるように、第3光源や第4光源等の他の光源を配置すればよい。
【0068】
さらに、上述した第1実施形態においては、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの上流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの下流側に配置した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの下流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの上流側に配置してもよい。
【0069】
(第2実施形態)
図6及び
図7は第2実施形態の表面測定装置1aを説明するための図である。第2実施形態では、被測定対象5を、ローラ50の曲面上部に沿って湾曲させながら移動させる態様を例に挙げて説明する。
図6に示すように、第2実施形態の表面測定装置1aでは、被測定対象5の移動中の振動などを防止する目的で、被測定対象5をローラ50の曲面上部に押し付けながら移動させている点が、上述した第1実施形態とは相違している。
【0070】
被測定対象5にはテンションがかけられており、被測定対象5は、ローラ50の曲面に当接することで曲面Dが形成されながら、移動方向MDに移動する。そして、ローラ50の曲面により形成された被測定対象5の曲面Dで、被測定対象5の表面測定が行われる。第2実施形態の表面測定装置1aの他の要素は、第1実施形態の表面測定装置1と同一であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成に着目して以下説明する。
【0071】
表面測定装置1aには、ローラ50の曲面の頂点部の上方に、第1光源11及び第2光源12がスクリーン20と対向するように配置されている。本実施形態の場合、第1光源11及び第2光源12は、被測定対象5の移動方向MDの上流側に配置されており、スクリーン20は、被測定対象5の移動方向MDの下流側に配置されている。これら第1光源11及び第2光源12と、スクリーン20との間に、ローラ50の曲面の頂点部が位置している。
【0072】
第2実施形態の場合、第1光源11から照射される第1線状光L1は被測定対象5の曲面Dの第1反射領域Lxで反射する。第1光源11は、例えば、ローラ50の曲面の頂上部を高さの基準位置とした場合、この基準位置よりも高い位置で、かつ基準位置よりも移動方向MDの上流側に配置されている。第1光源11は、ローラ50の曲面の頂上部にある被測定対象5の湾曲した表面に、被測定対象5の幅方向WDに亘って第1線状光L1を照射する(第1線状光照射工程)。
【0073】
一方、第2光源12は、基準位置よりも高く、かつ第1光源11の高さ位置によりも低い位置に配置されているとともに、第1光源11と同様に基準位置よりも移動方向MDの上流側に配置されている。第2光源12は、被測定対象5の湾曲した表面のうち、第1線状光L1が照射される位置とは異なる位置に、被測定対象5の幅方向WDに亘って第2線状光L2を照射する(第2線状光照射工程)。第2光源12から照射される第2線状光L2は、第1反射領域Lxよりも、被測定対象5の移動方向MDの上流側(すなわち、スクリーン20から遠ざかる側)に位置する第2反射領域Lyで反射する。
【0074】
ここで、第1線状光L1の被測定対象5への入射角と第2線状光L2の被測定対象5への入射角とを同じ角度φとしており、第1光源11及び第2光源12は、前記第1反射領域Lx及び前記第2反射領域Lyが、被測定対象5の移動方向MDにおいて異なる位置になるようにし、被測定対象5の幅方向WDでは第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとの間に隙間がなく連続するように、第1線状光L1及び第2線状光L2の照射位置が設定されている。これにより、第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、被測定対象5の幅方向WDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとの間に未測定領域が発生することがなく、被測定対象5の幅方向WDについて、途切れのない連続的な表面測定を行え得る。
【0075】
第1線状光Lは被測定対象5の第1反射領域Lxで反射し、スクリーン20に帯状の第1反射像21が投影される。また同様に、第2線状光L2は被測定対象5の第2反射領域Lyで反射し、スクリーン20に帯状の第2反射像22が投影される(反射像投影工程)。
【0076】
図7の右側には、
図6の側面図を示し、
図7の左側には、スクリーン20の正面図を示す。
図7に示すように、第1線状光L1の被測定対象5への入射角φは、第2線状光L2の被測定対象5への入射角φと同じ角度に設定される。このため、第2実施形態の場合、被測定対象5の表面における第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとの位置のずれは、第1光源11及び第2光源12の配置位置を変えることで調整される。
【0077】
第2実施形態の場合、第2光源12は、上記したように第1線状光L1が反射する第1反射領域Lxよりも、被測定対象5の移動方向MDの上流側に第2反射領域Lyが位置するように、高さ位置が設定されている。
【0078】
このように、第2反射領域Lyが、第1反射領域Lxよりもスクリーン20から遠ざかる上流側にあることによって、第2反射領域Lyとスクリーン20との距離は、第1反射領域Lxとスクリーン20との距離よりも長くなる。このため、第2線状光L2が被測定対象5の第2反射領域Lyで反射することによってスクリーン20に投影される第2反射像22は、第1線状光L1が被測定対象5の第1反射領域Lxで反射することによってスクリーン20に投影される第1反射像21よりも、スクリーン20の高さ方向zにおいて上側に位置する。
【0079】
すなわち、被測定対象5の移動方向MDにおける第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの位置のずれは、スクリーン20上では、スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21及び第2反射像22の位置のずれとして表れる。なお、被測定対象5の幅方向WDにおける第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの位置のずれは、スクリーン20上では、スクリーン20の幅方向xにおける第1反射像21及び第2反射像22の位置のずれとして表れる。
【0080】
図7左側のスクリーン20の正面図に示すように、スクリーン20上において、スクリーン20の高さ方向zで第1反射像21と第2反射像22とが重ならないようにするためには、第1反射像21と第2反射像22との距離Δzが第1実施形態で説明した式(3)を満たす必要がある。ここでは、ローラ50の曲面の頂上部にある被測定対象5に第1線状光L1を照射し、ローラ50の曲面の頂上部に、第1反射領域Lxがある場合について以下説明する。なお、R1は、第1反射領域Lxの移動方向MDでの位置(第1反射位置)を示し、R2は、第2反射領域Lyの移動方向MDでの位置(第2反射位置)を示す。
【0081】
ここで、
図7に示すz
0は、スクリーン20上に投影される第1反射像21の高さ位置を示したものである。具体的にはz
0は、ローラ50の曲面の頂上部を高さの基準位置とし、スクリーン20の高さ方向zでの第1反射像21の高さ位置z
0を示している。
【0082】
なお、本実施形態においては、第1反射像21の高さ位置z0として、スクリーン20上に投影される第1反射像21の高さ位置を示すようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、ローラ50の曲面の頂上部を高さの基準位置として、スクリーン20上の第1反射像21の変動範囲ER1の中心までを第1反射像21の高さ位置z0としてもよい。第1反射像21の変動範囲ER1は、被測定対象5に想定される形状変化や振動により、スクリーン20の高さ方向zで生じる第1反射像21の変動領域に加え、スクリーン20の高さ方向zにおける第1反射像21の線幅(太さ)を含めることができる。
【0083】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、d>>r・sinθ(rはローラ50の半径、θは開き角(後述する))となる場合には、それらの値の差は極めて小さいものと見なせるので、ここでは、どちらの変動範囲も同じER1であるとし、その変動幅を同じwとして説明する。一方で、適宜異なる値とすることも可能である。その場合には、変動幅の大きい方の値をwとすることが好ましい。
【0084】
図7に示すz
+は、スクリーン20上に投影される第2反射像22の高さ位置を示したものである。具体的にはz
+は、ローラ50の曲面の頂上部を高さの基準位置とし、スクリーン20の高さ方向zでの第2反射像22の高さ位置z
+を示している。
【0085】
なお、本実施形態においては、第2反射像22の高さ位置z+として、スクリーン20上に投影される第2反射像22の高さ位置を示すようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、ローラ50の曲面の頂上部を高さの基準位置とし、スクリーン20上の第2反射像22の変動範囲ER1の中心までを第2反射像22の高さ位置z+としてもよい。第2反射像22の変動範囲ER2は、被測定対象5に想定される形状変化や振動により、スクリーン20の高さ方向zで生じる第2反射像22の変動領域に加え、スクリーン20の高さ方向zにおける第2反射像22の線幅(太さ)を含めることができる。
【0086】
本実施形態の場合では、第2反射領域Lyは、第1反射領域Lxから、移動方向MDの上流側に開き角θだけずれている。これにより、スクリーン20の高さ方向zでは、z+>z0となる。
【0087】
開き角θは、被測定対象5で第1線状光L1が反射する第1反射領域Lxから、ローラ50の断面円の中心を結ぶ半径線r1と、被測定対象5で第2線状光L2が反射する第2反射領域Lyから、当該中心を結ぶ半径線r2と、がなす角度(すなわち、ローラ50の断面円の中心で半径線r1,r2が交差する角度)である。ここで、第1反射像21の高さ位置z+と、第2反射像22の高さ位置z0とを用いて、スクリーン20の高さ方向zにおける、第1反射像21と第2反射像22との距離Δzを表すと、下記の式(7)のように表すことができる。
【0088】
【0089】
図7では、ローラ50の頂点部を高さの基準位置とし、ローラ50の頂点部の第1反射領域Lxに第1線状光L1を照射した場合が示されているが、高さの基準位置は必ずしもローラ50の頂点部には限定されない。例えば、ローラ50の頂点部から、移動方向MDの上流側又は下流側に所定距離移動した被測定対象5上の位置を基準に開き角θを求めても、以下の説明が成り立つ。
【0090】
ここで、ローラ50の頂点部を高さの基準位置とし、当該基準位置における接線上での、頂点部(第1線状光L1の第1反射領域Lx)からスクリーン20の投影面までの距離をdとする。また、被測定対象5の第1反射領域Lxでの接線の面法線と、第1線状光L1の光軸とがなす入射角をφとすると、距離d及び入射角φにより、第1反射像21の高さ位置z0は、下記の式(8)で表される。
【0091】
【0092】
また、被測定対象5の第2反射領域Lyでの接線の面法線と、第2線状光L2の光軸とがなす入射角も第1線状光の入射角φと同じとし、ローラ50の半径をrとすると、第2反射像22の高さ位置z+は、下記の式(9)のように表される。ここで、開き角θは、2度以下であり、微小であることから、式(9)では、開き角θは微小であるという仮定を用いた。
【0093】
【0094】
上記の式(7)及び式(9)を用いると、下記の式(10)が得られる。
【0095】
【0096】
したがって、上記の式(10)と式(3)とを併せると、下記の式(11)が得られる。
【0097】
【0098】
第2実施形態では、第1反射像21と第2反射像22とが重ならないようにするためには、式(11)の関係を満たすように、第1光源11、第2光源12及びスクリーン20の位置等を設定すればよい。具体的には、第1線状光L1の被測定対象5への入射角と第2線状光L2の被測定対象5への入射角とは、同じ角度φであり、第1線状光L1及び第2線状光L2の入射角φと距離dとが予め設定されている場合、第1光源11と第2光源12との間で開き角θを、式(11)の関係を満たすように設定すればよい。
【0099】
上記した式(11)は、第1反射像21と第2反射像22とが重ならないようにするための下限値を規定している。第1反射像21と第2反射像22とを遠ざけることができる上限値は下記のように規定される。
図7に示すように、ローラ50の頂点部を高さゼロ地点(高さの基準位置)とし、スクリーン20の上端の高さ位置をhとすると、第2反射像22がスクリーン20から外れずに投影される必要があるため、第2反射像22の高さ位置z
+はスクリーン20の高さ位置hよりも低く設定される必要がある。よって、上限値は、第2反射像22の高さ位置z
+<スクリーン20の上端の高さ位置hとなる(z
+<h)。
【0100】
図7との同一部分に同一符号を付して示す
図8は、他の実施形態を示しており、第2線状光L2が被測定対象5で反射する第2反射領域Lyを、移動方向MDの下流側(スクリーン20に近づく側)に変えたときの実施形態を示す。すなわち、第1光源11からの第1線状光L1が被測定対象5で反射する第1反射領域Lx(基準位置)から、スクリーン20寄りに、第2反射領域Lyを開き角θでずらした態様が示されている。この態様の場合は、スクリーン20に投影される第2反射像22の高さ位置z
-は、下記の式(12)から得られる。
【0101】
【0102】
上記の式(7)及び式(12)を用いると、上記の式(10)が得られ、
図8に示すような実施態様でも、
図7に示す実施態様と同様に、下限値の規定として上記の式(11)が得られる。
【0103】
第2線状光L2が被測定対象5で反射する第2反射領域Lyを、基準位置(第1反射領域Lx)からスクリーン20寄りに開き角θずらす場合においても、式(11)を満たすように、第1光源11及び第2光源12を配置すればよい。具体的には、第1線状光L1及び第2線状光L2の入射角φと距離dとが予め設定されている場合、第1光源11と第2光源12との間の開き角θを、式(11)を満たすように設置すればよい。
【0104】
図8に示す実施態様においても、上記した式(11)は、第1反射像21と第2反射像22が重ならないようにするための下限値を規定している。第1反射像21と第2反射像22を遠ざけることができる上限値は下記のように規定される。
【0105】
図8に示すように、ローラ50の頂点部を高さゼロ地点(高さの基準位置)とし、スクリーン20の下端の高さ位置をhxとすると、第2反射像22がスクリーン20から外れずに投影される必要があるため、第2反射像22の高さ位置z
-はスクリーン20の下端の高さ位置hxよりも高く設定される必要がある。よって、第1反射像21と第2反射像22が離れる上限値は、第2反射像22の高さ位置z
->スクリーン20の下端の高さ位置hxとなる(z
->hx)。
【0106】
撮像装置30は、スクリーン20上のこれら第1反射像21及び第2反射像22を撮像し(撮像工程)、取得した撮像画像を演算処理装置40に出力する。演算処理装置40は第1反射像21及び第2反射像22の撮像画像を用いて画像処理することにより、被測定対象5の表面形状等を算出し、被測定対象5の表面を測定する(演算処理工程)。なお、演算処理装置40による被測定対象5の表面測定は、上述した第1実施形態と同様であるためここではその説明は省略する。
【0107】
本実施形態では、前述した
図6~
図8のように、光源として、第1光源11及び第2光源12を使用する態様を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第1光源及び第2光源に加えて、第3光源や第4光源等、3以上の光源を設けるようにしてもよい。この場合、光源の数を増やした分だけ、スクリーン20上には反射像が表れる。このような場合には、上述した式(11)に示す関係が、各反射像の間で満たされるように、第3光源や第4光源等の他の光源を配置すればよい。
【0108】
ここで、
図7に示すような実施形態において、第1光源11及び第2光源12に加えて、さらに第3光源及び第4光源を設置して、スクリーン20に4つの第1反射像21、第2反射像22、第3反射像及び第4反射像が投影される例について、
図9を用いて以下説明する。
図9は、スクリーン20の正面図を示している。
【0109】
図9において、第1反射像21は、第1光源11からの第1線状光L1が被測定対象5の曲面Dで反射することでスクリーン20上に投影された像を示し、第2反射像22は、第2光源12からの第2線状光L2が被測定対象5の曲面Dで反射することでスクリーン上に投影された像を示す。また、第3反射像23は、図示しない第3光源からの第3線状光が被測定対象5の曲面Dで反射することでスクリーン20上に投影された像を示し、第4反射像24は、図示しない第4光源からの第4線状光が被測定対象5の曲面Dで反射することでスクリーン20上に投影された像を示す。なお、これら第3線状光及び第4線状光の入射角も、第1線状光L1及び第2線状光L3と同じ入射角φとする。
【0110】
図9に示すように、スクリーン20の位置P1では、スクリーン20の高さ方向zで第1反射像21と第2反射像22と存在している。この際、スクリーン20の高さ方向zで第1反射像21と第2反射像22とが重ならないようにするためには、例えば、第1線状光L1及び第2線状光L2の入射角φと距離dとが予め設定されている場合、第1光源と第2光源との間の開き角θ(
図7及び
図8)が上記の式(11)の関係を満たすように設定される。
【0111】
また、スクリーン20の位置P2では、スクリーン20の高さ方向zで第1反射像21と第2反射像22と第3反射像23とが存在している。この際、スクリーン20の高さ方向zで第1反射像21と第2反射像22と第3反射像23とが重ならないようにするためには、例えば、第1線状光L1、第2線状光L2及び第3線状光の入射角φと距離dとが予め設定されている場合、第1光源と第2光源との間の開き角θと、第2光源と第3光源との間の開き角θと、第1光源と第3光源との間の開き角θ(
図7及び
図8)とがそれぞれ上記の式(11)の関係を満たすように設定される。
【0112】
また、スクリーン20の位置P3では、スクリーン20の高さ方向zで第2反射像22と第3反射像23とが存在している。この際、スクリーン20の高さ方向zで第2反射像22と第3反射像23とが重ならないようにするためには、例えば、第2線状光L2及び第3線状光の入射角φと距離dとが予め設定されている場合、第2光源と第3光源との間の開き角θ(
図7及び
図8)が上記の式(11)の関係を満たすように設定される。
【0113】
また、スクリーン20の位置P4では、スクリーン20の高さ方向zで第2反射像22と第3反射像23と第4反射像24とが存在している。この際、スクリーン20の高さ方向zで第2反射像22と第3反射像23と第4反射像24とが重ならないようにするためには、例えば、第2線状光L2、第3線状光及び第4線状光の入射角φと距離dとが予め設定されている場合、第2光源と第4光源との間の開き角θと、第2光源と第3光源との間の開き角θと、第3光源と第4光源との間の開き角θと(
図7及び
図8)がそれぞれ上記の式(11)の関係を満たすように設定される。
【0114】
図9の説明は、第1実施形態の被測定対象5が平面上を移動する第1実施態様においても同様に適用される。第2実施形態では開き角θ(
図7及び
図8)を設定するが、前述した第1実施形態では、
図9の位置P1~P4において、式(6)の関係を満たすように、被測定対象5上での第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの間隔p(
図5)を設定すればよい。
【0115】
(第2実施形態による作用及び効果)
以上の構成において、第2実施形態による表面測定装置1aでは、曲面Dを有する被測定対象5の移動方向MDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとが異なる位置となり、かつ、被測定対象5の幅方向WDで第1反射領域Lxと第2反射領域Lyとが連続する位置になるように、第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する。
【0116】
このように、表面測定装置1aは、曲面Dが形成された被測定対象5の表面を測定する際でも、第1線状光L1と第2線状光L2とが、被測定対象5の移動方向MDで異なる位置にて反射するように、第1光源11及び第2光源12を配置しているため、第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20上で重ならないように投影できる。このため、広い幅を有する被測定対象5の表面を測定するために第1光源11及び第2光源12を配置しても、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22が重なって測定できない領域が発生することを防止できる。
【0117】
また、表面測定装置1aでも、第1線状光L1と第2線状光L2とが、被測定対象5の幅方向WDで連続する位置にて反射するように、第1光源11及び第2光源12を配置しているため、被測定対象5の幅方向WDで第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyの間に光照射されずに未測定となる領域が発生することがなく、被測定対象の測定漏れを防止できる。よって、広い幅を有する曲面した被測定対象5の表面でも全体に亘って信頼性よく測定することができる。
【0118】
なお、上述した第2実施形態においては、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの上流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの下流側に配置した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの下流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの上流側に配置してもよい。
【0119】
(第3実施形態)
図10A及び
図10Bは、第3実施形態の表面測定装置1bを説明するための図である。表面測定装置1bは、搬送ラインの平面上を移動する被測定対象5の表面に対して、被測定対象5の移動方向MDの上流側から第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する第1光源11及び第2光源12を備えている。
【0120】
ここで、第1線状光L1の被測定対象5への入射角と、第2線状光L2の被測定対象5への入射角とは、同じ角度である。なお、入射角の定義は、上述した第1実施形態の入射角φと同じであるため、ここではその説明は省略する。また、第1線状光L1が被測定対象5の表面で反射する位置である第1反射領域Lx、及び、第2線状光L2が被測定対象5の表面で反射する位置である第2反射領域Lyは、被測定対象5の移動方向MDにおいて同じ位置にあり、かつ、被測定対象5の幅方向WDにおいて連続する位置にある。
【0121】
その結果、第3実施形態では、第1線状光L1及び第2線状光L2が被測定対象5で反射することでスクリーン20に投影される第1反射像21と第2反射像22とが、スクリーン20の高さ方向zで重なり、かつスクリーン20の幅方向xで一部重なる位置に投影される。
【0122】
しかし、第3実施形態では、第1光源11及び第2光源12の照射時刻をずらすことにより、スクリーン20に第1反射像21及び第2反射像22が同時に表れないようにし、スクリーン20上で第1反射像21及び第2反射像22が重なることを回避している。
【0123】
図10A及び
図10Bに示すように、第3実施形態の表面測定装置1bでは、第1光源11と第2光源12とが被測定対象5から同じ高さ位置に配置されており、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyは、被測定対象5の移動方向MDにおいて、同じ位置に配置される。また、第1光源11と第2光源12とが、同じ高さ位置で被測定対象5の幅方向WDに沿って並んで配置されており、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyは、被測定対象5の幅方向WDにおいて、連続するように配置される。そして、第1光源11及び第2光源12は、第1線状光L1及び第2線状光L2を、被測定対象5の移動方向MDで同じ位置で、かつ、被測定対象5の幅方向WDで連続する位置に照射する(第1線状光照射工程及び第2線状光照射工程)。
【0124】
これにより、被測定対象5で第1線状光L1及び第2線状光L2が反射して、第1反射光及び第2反射光がスクリーン20に向けて扇状に広がり、第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20に投影された場合、第1反射像21及び第2反射像22は、スクリーン20の高さ方向zで同じ高さ位置において、スクリーン20の幅方向xで一部が重なるような位置に投影される(反射像投影工程)。
【0125】
第3実施形態の表面測定装置1bは、第1実施形態の表面測定装置1と同様に、撮像装置30と、撮像装置30が接続された演算処理装置40とを備えている。この場合、演算処理装置40は、第1光源11及び第2光源12にも接続された構成(
図10A及び
図10Bでが図示せず)を有しており、第1光源11及び第2光源12の各照射時刻を制御する。
【0126】
表面測定装置1bでは、
図10Aに示すように、まず、第1光源11から照射された第1線状光L1を被測定対象5の表面で反射させ、スクリーン20に第1反射像21を投影する。これにより、被測定対象5では第1線状光L1のみが反射し、スクリーン20には第1反射像21のみが投影される。次に、
図10Bに示すように、第1光源11による第1線状光L1の照射が停止された後に、第2光源12による第2線状光L2の照射が開始される。これにより、被測定対象5では第2線状光L2のみが反射し、スクリーン20には第2反射像22のみが投影される。このようにして、第1光源11及び第2光源12は、第1線状光L1及び第2線状光L2を交互に照射する。
【0127】
このとき、撮像装置30は、演算処理装置40からの制御信号に基づいて、第1光源11及び第2光源12の照射時刻に同期して、スクリーン20を撮像する(撮像工程)。このようにして、撮像装置30は、第1光源11と第2光源12との間でずれた、それぞれの照射時刻を含むように、スクリーン20を撮像する時刻を合わせることで、第1反射像21と第2反射像22のいずれか一方だけが投影されているスクリーン20を撮像し、撮像画像を取得する。
【0128】
なお、演算処理装置40は、例えば、PLG(Pulse Generator)を備えており、被測定対象5の移動によって発生するパルスによって、第1光源11及び第2光源12の照射時刻と、撮像装置30の撮像時刻とを同期させる。
【0129】
撮像装置30は、第1光源11の照射時刻に合わせてスクリーン20上の第1反射像21を撮像することで取得した撮像画像と、第2光源12の照射時刻に合わせてスクリーン20上の第2反射像22を撮像することで取得した撮像画像とを交互に取得してゆき、取得した撮像画像を演算処理装置40に出力する。
【0130】
これにより、演算処理装置40は、上述した第1実施形態と同様に、撮像装置30で取得された第1線状光及び第2線状光のいずれか一方からなる撮像画像に基づいて、被測定対象5の表面測定を行うことができる(演算処理工程)。なお、演算処理装置40による被測定対象5の表面測定は、上述した第1実施形態と同様であるためここではその説明は省略する。
【0131】
(第3実施形態による作用及び効果)
以上の構成において、第3実施形態による表面測定装置1bでは、第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20上で一部重なる位置に投影されるように第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する。この際、第1光源11及び第2光源12で照射時刻をずらし、スクリーン20上に第1反射像21と第2反射像22とを交互に投影させる。表面測定装置1bは、第1光源11及び第2光源12の各照射時刻に合わせて、撮像装置30の撮像時刻を同期させることにより、第1反射像21と第2反射像22とが重ならずに、第1反射像21及び第2反射像22のいずれか一方のみが撮像された撮像画像を取得する。
【0132】
このため、第3実施形態の表面測定装置1bでは、第1、第2実施形態と違って、第1光源11と第2光源12とを被測定対象5の移動方向MDの上流側又は下流側にずらして配置することなく、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22が重なって測定できない領域が発生することを防止できる。
【0133】
以上により、表面測定装置1bでも、広い幅を有する被測定対象5の表面を測定するために第1光源11及び第2光源12を配置しても、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22が重なって測定できない領域が発生することを防止できる。
【0134】
また、表面測定装置1bでも、第1線状光L1と第2線状光L2とが、被測定対象5の幅方向WDで連続する位置にて反射するように、第1光源11及び第2光源12を配置しているため、被測定対象5の幅方向WDにおいて、第1線状光L1が反射される第1反射領域Lxと、第2線状光L2が反射する第2反射領域Lyとの間に光照射されずに未測定となる領域が発生することがなく、被測定対象5の測定漏れを防止できる。よって、広い幅を有する被測定対象5の表面でも全体に亘って信頼性よく測定することができる。
【0135】
なお、上述した第3実施形態においては、
図10A及び
図10Bに示すように、第1光源11と第2光源12とを設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、光源として、第1光源11及び第2光源12に加えて、第3光源や第4光源等、3つ以上の光源を設けるようにしてもよい。3つ目の第3光源を配置する場合にも、第1光源11及び第2光源12間での照射時刻と、第1光源11及び第3光源間での照射時刻と、第2光源12及び第3光源間での照射時刻とをそれぞれずらして第1反射像21、第2反射像22及び第3反射像同士が重ならないようし、これら第1光源11、第2光源12及び第3光源の各照射時刻に、撮像装置30の撮像時刻を同期させればよい。
【0136】
また、上述した第3実施形態においては、第1反射像21及び第2反射像22を1台の撮像装置30で撮像する場合について説明したが本発明はこれに限らず、例えば、複数の撮像装置で各第1反射像21及び第2反射像22を個々に撮像してもよい。
【0137】
また、上述した第3実施形態においては、被測定対象として、上述した第1実施形態と同様に、平面上を移動する被測定対象5の表面を測定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、上述した第2実施形態と同様に、ローラ50により曲面が形成された被測定対象5の表面を測定するようにしてもよい。
【0138】
さらに、上述した第3実施形態においては、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの上流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの下流側に配置した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの下流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの上流側に配置してもよい。
【0139】
(第4実施形態)
図11は第4実施形態の表面測定装置1cを説明するための図である。表面測定装置1cは、搬送ラインの平面上を移動する、帯状の被測定対象5の表面に対して、被測定対象5の移動方向MDの上流側から第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する第1光源11及び第2光源12を備えている。
【0140】
ここで、第1線状光L1の被測定対象5への入射角と、第2線状光L2の被測定対象5への入射角とは、同じ角度である。なお、入射角の定義は、上述した第1実施形態の入射角φと同じであるため、ここではその説明は省略する。また、第1線状光L1が被測定対象5の表面で反射する位置である第1反射領域Lx、及び、第2線状光L2が被測定対象5の表面で反射する位置である第2反射領域Lyは、被測定対象5の移動方向MDにおいて同じ位置にあり、かつ、被測定対象5の幅方向WDにおいて連続する位置にある。
【0141】
その結果、第4実施形態では、第1線状光L1及び第2線状光L2が被測定対象5で反射することでスクリーン20に投影される第1反射像21と第2反射像22とが、スクリーン20の高さ方向zで重なり、かつスクリーン20の幅方向xで一部重なっている。
【0142】
しかし、第4実施形態では、第1光源11から照射される第1線状光L1と、第2光源12から照射される第2線状光L2との波長をずらすことにより、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22を波長の違いにより分離できるように構成されている。
【0143】
図11に示すように、第4実施形態の表面測定装置1cでは、第1光源11と第2光源12とが被測定対象5から同じ高さ位置に配置されており、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyは、被測定対象5の移動方向MDにおいて、同じ位置に配置される。また、第1光源11と第2光源12とが、同じ高さ位置で被測定対象5の幅方向WDに沿って並んで配置されており、第1反射領域Lxと第2反射領域Lyは、被測定対象5の幅方向WDにおいて、連続するように配置される。そして、第1光源11及び第2光源12は、第1線状光L1及び第2線状光L2を、被測定対象5の移動方向MDで同じ位置で、かつ、被測定対象5の幅方向WDで連続する位置に照射する(第1線状光照射工程及び第2線状光照射工程)。
【0144】
しかし、第4実施形態の表面測定装置1cでは、第1光源11から照射される第1線状光L1を、第1の波長とし、第2光源12から照射される第2線状光L2を、第1の波長とは異なる第2の波長とすることで、スクリーン20上で第1反射像21及び第2反射像22が、波長の違いを基に分離可能に投影される(反射像投影工程)。
【0145】
第1光源11から照射される第1線状光L1と、第2光源12から照射される第2線状光L2とを、公知の光学フィルタで分離できるような異なる波長帯に設定する。
【0146】
また、第4実施形態の表面測定装置1cは、撮像装置30を備えており、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22を撮像装置30により撮像する(撮像工程)。
【0147】
第4実施形態では、スクリーン20に投影される第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20上で一部重なった状態で、撮像装置30で撮像して、撮像画像を取得する。
【0148】
撮像装置30は、演算処理装置40に接続されており、スクリーン20上の第1反射像21及び第2反射像22を撮像した撮像画像を演算処理装置40に出力する。
【0149】
これにより、演算処理装置40は、撮像装置30で取得された撮像画像に基づいて、撮像画像に含まれる、RGBの成分から、第1の波長の成分と第2の波長の成分とを、データ上で分離する。それぞれの波長の成分は、第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyにおける、被測定対象5の形状に対応しているため、第1の波長に対応するデータと第2の波長に対応するデータとから、被測定対象5の表面を測定することができる。
【0150】
なお、撮像装置30としては複数の撮像部を有している撮像装置30であってもよい。この場合、各撮像部により、それぞれに異なる透過波長帯を有する光学フィルタを付けて撮像することで、第1の波長の成分と第2の波長の成分とを分離するようにすることも可能である。その場合には、撮像装置30は、第1の波長と第2の波長の違いにより第1反射像21と第2反射像22とが分離された画像を個別に撮像する。このようにして、演算処理装置40では、第1反射像21及び第2反射像22が独立に撮像された撮像画像から、被測定対象5の表面をそれぞれ測定することもできる。
【0151】
(第4実施形態による作用及び効果)
以上の構成において、第4実施形態による表面測定装置1cでは、第1反射像21と第2反射像22とがスクリーン20上で一部重なる位置に投影されるように第1線状光L1及び第2線状光L2を照射する。撮像装置30は、第1の波長の第1線状光L1が被測定対象5で反射することでスクリーン20に投影される第1反射像21と、第2の波長の第2線状光L2が被測定対象5で反射することでスクリーン20に投影される第2反射像22とを、一旦撮像した後、波長の違いによりデータ上で分離する。このようにして、演算処理装置40では、第1反射像21及び第2反射像22が撮像された撮像画像から、波長の違いにより第1反射像21及び第2反射像22を分離し、得られたデータを基に、被測定対象5の表面をそれぞれ測定することができる。
【0152】
以上により、表面測定装置1cでも、広い幅を有する被測定対象5の表面を測定するために第1光源11及び第2光源12を配置しても、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22が重なって測定できない領域が発生することを防止できる。
【0153】
また、表面測定装置1cでも、第1線状光L1と第2線状光L2とが、被測定対象5の幅方向WDで連続する位置にて反射するように、第1光源11及び第2光源12を配置しているため、被測定対象5の第1線状光L1が反射される領域(第1反射領域Lx)と、第2線状光L2が反射する領域(第2反射領域Ly)との間に光照射されずに未測定となる領域が発生することがなく、被測定対象5の測定漏れを防止できる。よって、広い幅を有する被測定対象5の表面でも全体に亘って信頼性よく測定することができる。
【0154】
上述した第4実施形態においては、
図11に示すように、第1光源11及び第2光源12を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、光源として、第1光源11及び第2光源12に加えて、第3光源や第4光源等、3つ以上の光源を設けるようにしてもよい。例えば、3つ目の第3光源を配置する場合には、第3光源から照射される第3線状光の波長を、他の第1線状光L1及び第2線状光L2とは異なる波長に設定する。
【0155】
この場合、演算処理装置40は、第1反射像21及び第2反射像22に加えて、第3線状光が被測定対象5で反射することによりスクリーン20に投影される第3反射像も撮像された撮像画像を撮像装置30から受け取る。演算処理装置40は、第1反射像21、第2反射像22及び第3反射像が撮像された撮像画像から、第1反射像21、第2反射像22及び第3反射像を波長の違いにより分離したデータを生成し、当該データを基に被測定対象5の表面をそれぞれ測定することができる。
【0156】
また、上述した第4実施形態においては、被測定対象として、上述した第1実施形態と同様に、平面上を移動する被測定対象5の表面を測定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、上述した第2実施形態と同様に、ローラ50により曲面が形成された被測定対象5の表面を測定するようにしてもよい。
【0157】
さらに、上述した第4実施形態においては、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの上流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの下流側に配置した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、第1光源11及び第2光源12を移動方向MDの下流側に配置し、スクリーン20を移動方向MDの上流側に配置してもよい。
【0158】
なお、各実施形態において、第1線状光L1の被測定対象5への入射角と第2線状光L2の被測定対象5への入射角とが同じ角度φであるとは、全くずれのない同じ角度のみだけでなく、第1光源11及び第2光源12等を設置する際に生じる若干のずれ(誤差)をも含むものである。また、第1反射領域Lx及び第2反射領域Lyが、被測定対象5の移動方向MDにおいて同じ位置にあるとは、全くずれのない同じ位置のみだけでなく、第1光源11及び第2光源12等を設置する際に生じる若干のずれをも含むものである。このような若干のずれが生じた場合でも、広い幅を有する被測定対象5の表面を測定する際に、スクリーン20に投影される第1反射像21及び第2反射像22が重なって測定できない領域が発生することを防止でき、また、被測定対象5に光照射されずに未測定となる領域が発生することがなく、被測定対象5の測定漏れを防止できる。
【符号の説明】
【0159】
1,1a,1b,1c 表面測定装置
5 被測定対象
11 第1光源
12 第2光源
20 スクリーン
21 第1反射像
22 第2反射像
23 第3反射像
24 第4反射像
30 撮像装置
40 演算処理装置
50 ローラ
L1 第1線状光
L2 第2線状光
Lx 第1反射領域
Ly 第2反射領域