(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】エンジン駆動作業機
(51)【国際特許分類】
F02B 77/13 20060101AFI20230524BHJP
F02B 63/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
F02B77/13 R
F02B63/00 B
(21)【出願番号】P 2018202832
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 和也
(72)【発明者】
【氏名】譚 鳴
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特許第6018426(JP,B2)
【文献】特開2010-056447(JP,A)
【文献】実開昭56-152830(JP,U)
【文献】国際公開第2015/114859(WO,A1)
【文献】特開2007-177780(JP,A)
【文献】特開2009-250128(JP,A)
【文献】特開2012-207422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 63/00 - 63/06
F02B 77/11 - 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと,該フレーム上を覆うボンネットにより形成される防音箱内の空間を垂直方向の仕切壁によってエンジン及び作業機本体が収容されるエンジン室と,前記エンジン室内を冷却した後の冷却風を導入して機外に排出する排風室とに仕切り,
前記仕切壁に設けた開口を介して前記エンジン室と前記排風室を連通すると共に,前記排風室を前記ボンネットの天板に形成された排風口を介して機外に開放して成り,
前記排風室の下方位置から前記エンジン室の下方位置に至る前記フレーム内の空間に,上向きに開放する有底の漏油溜を形成すると共に,該漏油溜の開放部を囲う枠板を前記フレーム上に立設し,
前記排風室の下方における前記漏油溜の前記開放部上をカバーで覆い,該カバーによって前記排風室の下方に,上部空間より隔絶されたタンク収容空間が形成されたエンジン駆動作業機において,
前記カバーに,
前記仕切壁より遠ざかる方向に向けて上向きに傾斜する傾斜部を備えた,前記排風室の下方の前記タンク収容空間を上部の前記排風室より仕切る上面板と,
前記傾斜部の傾斜方向と平面視において平行な前記上面板の側辺より下向きに突出して下端を前記枠板の外側に配置する側板を設け,
前記傾斜部の下端を前記仕切壁又は該仕切壁に取り付けた機器に水密に突合させることにより前記傾斜部の下端からの雨水の落下を防止すると共に,前記傾斜部
の傾斜方向における中間位置の上面に,前記仕切壁側に向う雨水の流れを規制して,少なくとも一方の前記側辺
より下向きに突出した前記側板の外側に誘導する,ガイド体を設けたことを特徴とするエンジン駆動作業機。
【請求項2】
前記ガイド体を,前記傾斜部の傾斜方向と交叉する方向で前記傾斜部に取り付けた型材により形成したことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動作業機。
【請求項3】
前記カバーの前記上面板を金属板とし,前記ガイド体
を前記傾斜部の傾斜方向と交叉する方向に形成された溝又は凸条によって形成したことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動作業機。
【請求項4】
前記ガイド体に,前記仕切壁の前記開口を介して前記排風室内に導入された冷却風の流れを前記排風口に向けて誘導する導風面を設けたことを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載のエンジン駆動作業機。
【請求項5】
前記ガイド体の両端が,該ガイド体の長手方向の中央に対し低位置となるよう前記ガイド体を,長手方向の中央においてに曲折した形状で前記傾斜部に設けたことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のエンジン駆動作業機。
【請求項6】
前記カバーの前記上面板に,前記傾斜部の上端を水平方向に延長する水平部を設け,
前記水平部の前記傾斜部側の端部に,前記傾斜部側への雨水の流入を規制する止水板を設けたことを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載のエンジン駆動作業機。
【請求項7】
前記枠板の形成位置における前記フレームに,外周方向に向かって突出するフランジを設け,該フランジ上に前記カバーの前記側板下端を載置すると共に,前記ボンネットの側壁下端を,前記側板の外側で前記フランジ上に接合又は近接して配置し,前記フランジ及び/又は前記ボンネットの側壁下端部に水抜孔を設けたことを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載のエンジン駆動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内部に漏油溜が形成されて防油堤の機能が付与されたフレームと,前記フレームの上面を覆うボンネットから成る防音箱内に構成機器を収容したパッケージ型のエンジン駆動作業機に関し,より詳細には,前記防音箱内に浸入した雨水を,フレーム内に形成された漏油溜に回収することなく排出できるようにしたエンジン駆動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように,発電機や圧縮機等の作業機本体340,前記作業機本体340を駆動するエンジン330,その他の必要な機器から構成される構成機器を載置するフレーム310と,前記構成機器を載置したフレーム310上部を覆うボンネット350によって構成される防音箱内に前記構成機器を収容してパッケージ化したエンジン駆動作業機300は,独自の駆動源を持つことにより設置場所を問わずに使用できると共に,可搬性を有することから工事現場等において広く使用されている。
【0003】
このようなエンジン駆動作業機300では,ボンネット350内を垂直に仕切る仕切壁355で内部を二室に仕切り,その一方をエンジン330や作業機本体340を収容したエンジン室356と成すと共に,他方を,前記エンジン室356を通過した冷却風を機外に排出するための排風室357とする構成が採用されている。
【0004】
そして,内部に収容された機器を冷却するために,前記仕切壁355に前記エンジン室356と排風室357を連通する開口355aを設け,該開口355aにラジエータコア332を取り付け,該ラジエータコア332に冷却風を送風するラジエータファン331を設けることで,エンジン室356側のボンネット側壁に設けられた吸気口(図示せず)を介して機外よりエンジン室356内に導入された冷却風が,エンジン室356内を冷却した後,ラジエータコア332を通過して排風室357に至り,排風室357に設けた排風口354を介して機外の排出できるように構成されている。
【0005】
このようなエンジン駆動作業機300の防音箱では,エンジン330や作業機本体340,その他の搭載機器から漏出した燃料や潤滑油を機外に漏出することなく防音箱内に溜めておくことができるようにするために,前述のフレーム310内に,上向きに開口する有底箱型の空間を漏油溜312として形成することで,前述したフレーム310に,構成機器を搭載する架台としての機能のみならず,搭載された機器より漏出した燃料や潤滑油等の漏油を貯留する防油堤としての機能を持たせたものも提案されている。
【0006】
なお,前述したエンジン駆動作業機300の防音箱内には,エンジン330に対し供給する燃料を貯留した燃料タンク360が収容されており,エンジン駆動作業機300を無給油で長時間連続運転するためには,防音箱内に大容量の燃料タンク360を収容できる空間を確保する必要がある。
【0007】
このような大容量の燃料タンク360を収容する空間を確保するために,後掲の特許文献1に記載のエンジン駆動作業機では,
図11に示すように,フレーム310内に排風室357からエンジン室356に至る漏油溜312を形成すると共に,排風室357の下方において漏油溜312上を覆うカバー320を設け,カバー320の下方に形成されたタンク収容空間363に燃料タンク360を収容することを提案する。
【0008】
そして,特許文献1に記載のエンジン駆動作業機300では,タンク収容空間363を可能な限り大きな空間として形成するために,前述のカバー320に,前記仕切壁355より遠ざかる方向に向かって上向きに傾斜する傾斜部321aを設けることで,タンク収容空間363の高さを確保しつつ,エンジン室356から排風室357に導入された冷却風を,この傾斜部321aによって排風口354に向けて誘導することで,冷却風の流れが妨げられることがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上で説明したように,フレーム310内に漏油溜312を形成したエンジン駆動作業機300では,漏油溜312内に漏油を溜めておくことで,周辺環境が漏油によって汚染されることを防止している。
【0011】
しかし,このような漏油溜312を備えたエンジン駆動作業機300では,防音箱内に雨水が浸入すると,漏油のみならず,浸入した雨水についても漏油溜312内に回収してしまう。
【0012】
このようにして漏油溜312内に回収された雨水は,漏油溜312内の漏油と混ざり合ってしまうために,これをそのまま生活排水等と共に排水することができず,油分離装置等で油分を除去して清浄な水とした後に排水するか,廃棄物処理業者に廃棄を依頼する等,その処理にコストが嵩む。
【0013】
また,容量を超える雨水が溜まることで漏油溜312が溢れた場合,雨水と共に漏油溜312内の油類が機外に漏出することで,周辺環境が汚染される。
【0014】
そのため,防音箱内に浸入した雨水は,漏油溜312内に回収される前に,直接,機外に排出できるようにすることが好ましい。
【0015】
このように,漏油溜312に雨水が溜まらないようにするために,前掲の特許文献1に記載のエンジン駆動作業機300では,排風室357とタンク収容空間363を仕切る前述のカバー320に設けた傾斜部321aの下端を,開口355aの下端縁よりも低い位置で仕切壁355に水密に突合し,仕切壁355と傾斜部321a下端の突合位置に形成された溝362を介して傾斜部321aを流れ落ちた雨水を機外に排水することができるようにしている。
【0016】
しかし,前述のようにカバー320に傾斜部321aを設けた特許文献1に記載の構造では,豪雨の発生時等,大量の雨水が排風口354を介して排風室357内に浸入すると,カバー320の傾斜部321a上を大量の雨水が仕切壁355に向かって勢い良く流れ落ちることで,前述の溝362や仕切壁355の開口355aを超えて雨水がエンジン室356側に浸入する場合があり,このようにしてエンジン室356内に浸入した雨水が,漏油溜312内に溜まる。
【0017】
その結果,溜まった雨水の廃棄のためのコストが発生すると共に,容量を超える雨水が溜まって漏油溜312が溢れると,雨水と共に漏油が機外に漏れ出ることで周辺環境を汚染してしまうという前述した問題が生じる。
【0018】
なお,上記の説明では,排風室357の下方に燃料タンク360を収容する空間を形成する構成について説明したが,ディーゼルエンジンの排気系に排気ガス浄化システムとしてSCR(Selective Catalytic Reduction)システムが設けられている場合,防音箱内にはこのSCRシステムに還元剤として導入する尿素水を入れておく尿素水タンクが搭載されることから,排風室357の下方に形成されたタンク収容空間363は,燃料タンク360に代えて尿素水タンクを収容する空間として使用することも考えられるが,タンク収容空間363内に収容されるタンクの種類が変わっても,前述した問題は同様に生じ得る。
【0019】
また,上記の例では,ラジエータコア332をエンジン室356側に配置し,従って,カバー320の傾斜部321aの下端を,仕切壁355に突合させる構成について説明したが,ラジエータコア332を排風室357側に配置した構成,又は仕切壁355内に埋め込んだ構成では,カバー320の傾斜部321aの下端を,ラジエータコア332に設けた下枠等に突合させて前述の溝362を形成する構成とすることも考えられるが,カバー320の傾斜部321aの下端を突合させる部材がラジエータコア332の下枠等に変更された場合であっても,傾斜部321aを勢いよく流れ落ちた雨水が,前述の溝362を超えてラジエータコア332の冷却フィンの隙間及び仕切壁355の開口355aを介してエンジン室356内に浸入すれば,漏油溜312に雨水が溜まるという前述の問題が生じることから,前述の問題は,傾斜部321aの下端を仕切壁355に突合させた構成以外においても同様に生じ得る。
【0020】
本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたもので,前述した傾斜部を備えたカバーによって排風室内を上下に仕切って排風室の下方に燃料タンクや尿素水タンク等のタンクを収容するタンク収容空間を形成したエンジン駆動作業機において,大量の雨水が排風口を介して排風室内に浸入した場合であっても,雨水をエンジン室側に浸入させることなく,従って,漏油溜に回収することなく機外に排水できる構成を備えたエンジン駆動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0022】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動作業機1は,
フレーム10と,該フレーム10上を覆うボンネット50により形成される防音箱内の空間を垂直方向の仕切壁55によってエンジン30及び作業機本体40が収容されるエンジン室56と,前記エンジン室56内を冷却した後の冷却風を導入して機外に排出する排風室57とに仕切り,前記仕切壁55に設けた開口55aを介して前記エンジン室56と前記排風室57を連通すると共に,前記排風室57を前記ボンネット50の天板に形成された排風口54を介して機外に開放して成り,
前記排風室57の下方位置から前記エンジン室56の下方位置に至る前記フレーム10内の空間に,上向きに開放する有底の漏油溜12を形成すると共に,該漏油溜12の開放部を囲う枠板13を前記フレーム10上に立設し,
前記排風室57の下方における前記漏油溜12の前記開放部上をカバー20で覆い,該カバー20によって前記排風室57の下方に,上部空間より隔絶されたタンク収容空間63が形成されたエンジン駆動作業機において,
前記カバー20に,
前記仕切壁55より遠ざかる方向に向けて上向きに傾斜する傾斜部21aを備えた,前記排風室57の下方の前記タンク収容空間63を上部の前記排風室57より仕切る上面板21と,
前記傾斜部21aの傾斜方向idと平面視において平行な前記上面板21の側辺211,212より下向きに突出して下端を前記枠板13の外側に配置する側板22,23を設け,
前記傾斜部21aの下端を前記仕切壁55又は該仕切壁55に取り付けた機器(例えば熱交換器32の下枠等)に水密に突合させることにより前記傾斜部21aの下端からの雨水の落下を防止すると共に,前記傾斜部21aの傾斜方向における中間位置の上面に,前記仕切壁55側に向う雨水の流れを規制して,少なくとも一方の前記側辺211,212より下向きに突出した前記側板22,23の外側に誘導する,ガイド体26を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0023】
前記ガイド体26は,前記傾斜部21aの傾斜方向idと交叉する方向で前記傾斜部21aに取り付けた,断面L型(直角以外のものを含む),Z型,T型,チャネル型,平型等の型材により形成することができる(請求項2,
図7参照)。
【0024】
また,前記カバー20の前記上面板21を金属板とし,前記ガイド体26を,例えば段曲げ等の塑性加工によって前記傾斜部21aの傾斜方向idと交叉する方向に形成された溝又は凸条により形成するものとしても良い(請求項3,
図8参照)。
【0025】
前記ガイド体26には,前記仕切壁55の前記開口55aを介して前記排風室57内に導入された冷却風の流れを前記排風口54に向けて誘導する導風面27を設けることが好ましい(請求項4,
図10参照)。
【0026】
なお,前記ガイド体26の両端26a,26bが,該ガイド体26の長手方向の中央26cに対し低位置となるよう前記ガイド体26を,長手方向の中央26cにおいてに曲折した形状で前記傾斜部21aに設けるものとしても良い〔請求項5,
図9(B)参照〕。
【0027】
前記カバー20の前記上面板21に,前記傾斜部21aの上端を水平方向に延長する水平部21bを設ける場合,前記水平部21bの前記傾斜部21a側の端部に,前記傾斜部21a側への雨水の流入を規制する止水板28を設けるように構成することが好ましい(請求項6,
図6~
図8,
図10参照)。
【0028】
なお,前記枠板13の形成位置における前記フレーム10には,更に外周方向に向かって突出するフランジ14を設け,該フランジ14上に前記カバー20の前記側板22,23下端を載置すると共に,前記ボンネット50の側壁下端を,前記側板22,23の外側で前記フランジ14上に接合又は近接して配置し,前記フランジ14及び/又は前記ボンネット50の側壁下端部に,例えば前記フランジ14を貫通する貫通孔151,前記側壁の下端部に形成された貫通孔152及び/又は前記フランジ14と前記ボンネット50の側壁下端間に設けた隙間153等から成る,水抜孔15を設けるものとしても良い(請求項7,
図5参照)。
【発明の効果】
【0029】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動作業機1にあっては,以下の効果を得ることができた。
【0030】
カバー20に設けた側板22,23の下端を枠板13の外側に配置したことにより,この側板22,23の外面を伝って流れ落ちた雨水が,枠板13の内側に設けられている漏油溜12内に浸入できないように構成すると共に,カバー20の上面板21に設けた傾斜部21aに,仕切壁55側に向う雨水の流れを規制すると共に,側板22,23と連結する側辺211,212に向けて誘導するガイド体26を設けたことで,雨水の流れを,側板22,23を介して枠板13の外側に誘導して機外に排出することで,傾斜部21a上を流れ落ちて仕切壁55に向かって流れる雨水の量を大幅に減少させることができると共に,流れの勢いについても大幅に弱めることができ,これにより,仕切壁55に設けた開口55aを介して雨水がエンジン室56側に浸入することを防止することができた。
【0031】
前述のガイド体26は,カバー20の上面板21に設けられている傾斜部21aに,各種の型材を取り付けることで容易に形成することができ,または,前記カバー20の前記傾斜部21aに,曲げ加工,その他の塑性加工によって溝又は凸条を形成することで容易に形成することができた。
【0032】
なお,前記ガイド体26に,冷却風の流れを排風口54に向けて誘導する導風面27を設けた構成では,排風室57内における冷却風の流れが良好となり,防音箱内を通過する冷却風量を増大させて冷却効率を高めることができると共に,風切り音等が減少して騒音を低減することができた。
【0033】
前記ガイド体26の両端26a,26bが,該ガイド体26の長手方向の中央26cに対し低位置となるよう前記ガイド体26を,長手方向の中央26cにおいて曲折した形状とした構成〔
図9(B)参照〕では,傾斜部21a上を流れる雨水を左右に振り分けることができ,また,ガイド体26が傾斜していることでガイド体26に誘導された雨水が円滑に流れることで,効率よく排水を行うことができた。
【0034】
前記カバー20の前記上面板21に,前記傾斜部21aの上端を水平方向に延長する水平部21bを設け,前記水平部21bの前記傾斜部21a側の端部に,前記傾斜部21aへの雨水の流入を規制する止水板28を設けた構成では,水平部21b上に受けた雨水が,傾斜部21a側に流入し難くなることで,傾斜部21aを流れる雨水の勢いをより一層弱めることができ,雨水が仕切壁55に設けた開口55aを介してエンジン室56側に流入し難い構成とすることができた。
【0035】
前記枠板13の形成位置における前記フレーム10に,更に外周方向に向かって突出するフランジ14を設け,該フランジ14上に前記カバー20の前記側板22,23下端を載置すると共に,前記ボンネット50の側壁下端を,前記側板22,23の外側で前記フランジ14上に接合又は近接して配置し,前記フランジ14及び/又は前記ボンネット50の側壁下端部に水抜孔15を設けた構成では,この水抜孔15を介して機外に円滑に雨水を排水することができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図5】フレームに対する枠板,フランジ,及びボンネットの取付状態の説明図であり(A)はボンネットの側壁下端をフランジに突合させた構成,(B),(C)は,ボンネットの側壁下端に水抜孔を設けた構成。
【
図7】(A)はエンジン駆動作業機の排風室部分の断面図,(B)~(G)は,(A)中に〇印を付けた部分の拡大断面図であり,カバーの傾斜部に取り付けたガイド体(型材)の変形例を示す。
【
図8】ガイド体の変形例を示すエンジン駆動作業機の排風室部分の断面図。
【
図9】傾斜部に対するガイド体の形成状態の説明図であり,(A)はガイド体を傾斜方向と直交方向に設けた例,(B)は長手方向の中央を屈曲した状態のガイド体を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のエンジン駆動作業機1について説明する。
【0038】
本発明のエンジン駆動作業機1の基本構造は,
図11を参照して説明した従来のエンジン駆動作業機300と共通であり,フレーム10上にエンジン30や作業機本体(図示の実施形態にあっては発電機)40,バッテリー70,その他の必要な機器から成る構成機器を載置すると共に,これらの構成機器が載置されたフレーム10の上面を,側壁及び天板を備えた箱型のボンネット50で覆いパッケージ化したものである。
【0039】
なお,
図1では,後述する排風室57内の構造を説明するためにボンネット50の一部を透視している。また,
図1では,ボンネット50の側面に点検用の窓52,53を設けると共に,この窓52,53を開放した状態を図示しているが,これらの窓52,53は,適切な防音材を貼着した扉(図示せず)によって塞ぐことができるように構成されており,これによりエンジン30や作業機本体40の作動音等の騒音の漏出が防止されていると共に,扉(図示せず)の開放により内部点検等のメンテナンスを容易に行うことができるようになっている。
【0040】
ボンネット50の天板の一角には,図示の実施形態では金網状の排風口54が設けられており,ボンネット50内で熱交換に使用された冷却風(排風)が,この排風口54を介して機外に排出できるように構成されている。
【0041】
前述したボンネット50内の空間は,
図2に示すように仕切壁55によって仕切られており,仕切壁55によって仕切られた一方の空間にエンジン30及び作業機本体40を収容するエンジン室56が,他方に,前述の排風口54に連通する排風室57が形成されている。
【0042】
そして,前述の仕切壁55の中央に形成された開口55aを介して前記二室56,57が連通していると共に,
図2に示す例では,エンジン室56側で前記開口55aに面してエンジン30や作業機本体40に設けた熱交換器(ラジエータ,オイルクーラ,インタークーラ等を含む)32が取り付けられており,冷却ファン31が回転すると,エンジン室56から熱交換器32を通過した冷却風が排風室57内に導入されると共に,排風室57の上部で開口する排風口54より機外に排出できるようになっている。
【0043】
なお,
図2には,前述の熱交換器32をエンジン室56側に配置する例を示したが,この熱交換器32は,排風室57側に配置するものとしても良く,また,仕切壁55内に埋め込んだ状態に取り付けても良く,更にはラジエータ,オイルクーラ,インタークーラ等の複数の熱交換器を同時に設ける場合,エンジン室56側と排風室57側に振り分けて配置するものとしても良い。
【0044】
エンジン30や作業機本体40等の構成機器を載置する前述のフレーム10は,本実施形態にあっては
図2及び
図3に示すように幅方向の断面において略コ字状を成すチャネル材を,いずれも外向きに開放するコ字となるように矩形状に配置して溶着,その他の方法で固着した枠状の基本構造を有する。
【0045】
図3に示す実施形態にあっては,このフレーム10上に仕切壁55や熱交換器32を載置する基台17,エンジン30の底部を支えるための支持材18,及び作業機本体40の底部を載置する架台19をそれぞれ設け,
図2に示すようにこれらの基台17,支持材18,及び架台19上に仕切壁55や熱交換器32,エンジン30,及び作業機本体40をそれぞれ載置した状態でフレーム10上をボンネット50で覆うことで,ボンネット50内における各部材の適切な配置が実現できるようになっている。
前述した排風室57の下部からエンジン室56の下部に至り,フレーム10の前記枠体内には,
図2及び
図3に示すように漏油溜12が形成されている。
【0046】
この漏油溜12は,例えば上部を開口する水密性の有底箱体をフレーム10の枠体内に取り付けることによって形成しても良く,または,フレーム10の枠体を構成するチャネル材の垂直壁の内周面に,漏油溜12の底面となる金属板等を溶着等の方法で水密に取り付けることにより形成しても良く,水密の漏油溜12を形成可能であればその形成方法は特に限定されない。
【0047】
図2に示す実施形態にあってはこの漏油溜12を,排風室57の下部からエンジン室56の長手方向約1/3の位置に至り設けているが,エンジン室56の下方における漏油溜12の形成範囲は,燃料タンク60の容量に対して十分な容量を確保し得るものであれば,図示の例に限定されず,より拡張乃至は縮小して形成しても良い。
【0048】
以上のように構成されたフレーム10の,少なくとも漏油溜12が形成されている部分,好ましくは,漏油溜12の形成部分よりも広い範囲のフレーム10には,
図2~
図5に示すように,漏油溜12に対する雨水の浸入を防止する枠板13が周方向に連続して立設されている。
【0049】
図5に示した例では,フレーム10の内周縁に帯板を溶着等の方法によって取り付けることで枠板13を設けており,接合部を介して雨水が漏油溜12に入り込むことがないように水密に取り付けるものとし,全周に亘り連続して溶接を行うか,必要に応じてシール材を貼着乃至は塗布することにより水密性を確保する。
【0050】
なお,前述したようにフレーム10の枠体内に上向きに開放する有底の箱体を取り付けることで漏油溜12を形成する場合には,この箱体の上端開口縁が,フレーム10の上部開口縁より上方に突出するように取り付けることで,別途,枠板13を取り付ける作業が不要となる。
【0051】
このようにフレーム10に枠板13を設けることで,この枠板13が,枠板13の外側から漏油溜12内に入り込もうとする雨水に対する障壁となるため,この枠板13の形成位置に対して外側にボンネット50の側壁を配置すれば,雨水がボンネット50の内壁を伝って落下した場合であっても,漏油溜12内に入り込むことを防止できる。
【0052】
前述したようにコ字状のチャンネル材によってフレーム10の枠体を形成することで,フレーム10の上部開口縁に外周方向に突出するフランジ14が形成されている本実施形態にあっては,
図4に示すように所定間隔でこのフランジ14の肉厚を貫通する貫通孔151を水抜孔15として設け,この水抜孔15を介してフランジ14上に落下した雨水を機外に排出できるようにすることができる。
【0053】
また,この水抜孔15を当該エンジン駆動作業機1の運転時に機外よりも僅かに高い圧力となる排風室57内に配置したことから,排風室57内と機外との圧力差で円滑に雨水を機外に排出することができる。
【0054】
そして,例えば
図5(A)に示すようにボンネット50の側壁下端をフランジ14の周縁部に接合することで,前述の枠板13,フランジ14,及びボンネット50側壁によって排水路16が形成され,これによりボンネット50の内壁を伝って落下した雨水は,排水路16内に確実に捕集されて,フランジ14に設けた水抜孔15を介して機外に排出されるため,枠板13を越えて漏油溜12内に入り込むことがない。
【0055】
なお,以上の説明では,フランジ14に設けた貫通孔151を水抜孔15とする場合を例に挙げて説明したが,この構成に代え,又は,この構成と共に,例えば
図5(B)に示すようにボンネット50の側壁下端部に設けた貫通孔152を水抜孔15として使用しても良く,更には
図5(C)に示すようにフランジ14とボンネット50の側壁下端との間に設けた隙間153を前述の水抜孔15として使用しても良い。
【0056】
前述の仕切壁55によってボンネット50内の空間を仕切ることで形成された排風室57の下部には,
図2に示すようにカバー20が設けられており,このカバー20によって排風室57の底部を画成し,排風室57内に浸入した雨水が,漏油溜12内に落下しないように構成されている。
【0057】
そして,前述のように排風室57の底部をカバー20で画成することにより,該カバー20の上面板21の下方に形成された空間をタンク収容空間63とし,このタンク収容空間63内に燃料タンク60や尿素水タンク等の液体タンク(図示の例では燃料タンク60)を,その底部が漏油溜12内に受け入れられた状態で収容できるように構成されている。
【0058】
このカバー20は,
図2,
図4及び
図6に示すように,仕切壁55から遠ざかる方向に上向きに傾斜する傾斜部21aと,この傾斜部21aの上端を水平方向に延長する水平部21bを備えた上面板21と,前記傾斜部21aの下端を成す1辺を除く前記上面板21の3辺より下方に向かって突設された側板22,23,24を備えた,下向きに開口する台形箱型のキャップ状に形成されており,上面板21に設けた傾斜部21aの下端を,仕切壁55に水密に突合すると共に,側板22,23,24の下端が前述した枠板13の外側においてフランジ14上に載置されるように取り付けることで,カバー20上に落下した雨水が漏油溜12内に入らないように構成されている。
【0059】
前述のカバー20に設けた傾斜部21aには,
図6に示すように,傾斜部21a上を下方に向かって流れる雨水の流れを規制して,傾斜部21aの傾斜方向idと平面視において平行を成す方向に配置され側辺211,212側に誘導するガイド体26を設けている。
【0060】
このガイド体26は,例えば断面L型〔
図7(B)の他,
図7(C)のように直角以外のL型を含む〕,Z型〔
図7(D)参照〕,T型〔
図7(E)参照〕,チャネル型〔
図7(F)参照〕,平型〔
図7(G)参照〕等の各種の型材を傾斜部21aに対し取り付けることにより形成するものとしても良く,又は,
図8に示すように,カバー20を金属板により形成し,塑性加工(図示の例では段曲げ)によってカバー20の傾斜部21aに形成した溝や凸条(図示の例ではV字溝)を前述のガイド体26として設けるものとしても良い。
【0061】
ガイド体26は,
図9(A)に示すように,傾斜部21aの傾斜方向idに対し直交方向の長さ方向を有する直線状のものとして形成しても良く,また,
図9(B)に示すようにガイド体26の長手方向の両端26a,26bに対し,長手方向の中央26cが高所に配置されるように,ガイド体26を長手方向の中央26cにおいて屈曲した形状に形成するものとしても良く,このような屈曲させた形状とすることで,ガイド体26に沿って雨水が側辺211,212側に円滑に流れるように構成するものとしても良い。
【0062】
なお,
図10に示すように,ガイド体26の熱交換器32側を向いた面は,その上端が排風口54に向かって伸びる形状として,排風室57内に導入された冷却風を,
図10中に矢印で示すように排風口54に向かって誘導する導風面27として機能させるものとしても良い,
【0063】
また,カバー20の上面板21が,傾斜部21aの上端を水平方向に延長する水平部21bを備えた図示の実施形態では,水平部21bの傾斜部21a側の端縁に止水板28を設け,水平部21b上に受けた雨水が,傾斜部21a側に流入することを規制して,側板22~24側に落下させるように構成するものとしても良い。
【0064】
以上のように構成されたカバー20の傾斜部21aの下端は,
図2に示すように熱交換器32をエンジン室56側において仕切壁55に取り付けた構成では,仕切壁55に設けた開口55aの下端縁よりも下方位置において仕切壁55に水密に突合させて,仕切壁55と傾斜部21aの下端との突合位置に,前述の枠板13の外側まで延設された溝62を形成する。
【0065】
なお,熱交換器32を排風室57側において仕切壁55に取り付けた構成,又は仕切壁55内に埋め込んだ構成では,前述の傾斜部21aの下端を,熱交換器32の下枠等に水密に突合するものとしても良く,傾斜部21aの下端部分より雨水が下方に落下しないように構成されていると共に,この部分に枠板13の外側まで延設された溝62を形成することができるものであれば,傾斜部21aの下端部の突合位置は,上記の位置に限定されない。
【0066】
このように,前記傾斜部20aの下端と仕切壁55の突合位置に形成された溝62を,前述の枠板13の外側まで延設して,溝62を,枠板13とフランジ14,及びボンネット50の内壁によって形成された排水路16に連通させている。
【0067】
〔作用等〕
以上のように構成されたエンジン駆動作業機1を雨天の屋外に設置して使用すると,ボンネット50の天板に設けた排風口54より排風室57内に浸入した雨水は,排風室57の下端を画成するカバー20の上面板21上に落下する。
【0068】
上面板21上に落下した雨水は,落下した位置に応じて,
図4中に矢印で示す流路を辿って水抜孔15に到達して機外に排出される。
【0069】
カバー20の上面板21上に落下した雨水中,水平部21bに落下した雨水は,止水板28の存在によって傾斜部21a側への移動が規制されており,水平部21bのその他の部分から側板22,23,24の表面を伝って,落下して,枠板13とフランジ14,及びボンネット50の内壁によって形成された前述の排水路16内に導入される。
【0070】
また,傾斜部21a上に落下した雨水は,各落下位置に設けられているガイド体26によって傾斜方向への移動が阻まれると共に,ガイド体26によって側板22,23側に誘導されて,前述の排水路16内に導入される。
【0071】
その結果,傾斜部21aに落下した雨水のうち,傾斜部21aの下端に形成された溝62まで到達する雨水の量は僅かであると共に,傾斜部21a上を傾斜方向に落下しようとする雨水の勢いは大幅に弱められた状態で溝62に導入されることで,傾斜部21aを伝って落下した雨水が,前述の溝62を越えて,更に仕切壁55の開口55aを通過してエンジン室56内に浸入することが防止される。
【0072】
このようにして,排水路16内に導入された雨水は,水抜孔15を介して機外に円滑に排出されることで,排風口54を介して防音箱内に浸入した雨水を,漏油溜12内に溜めることなく,直接,機外に排出することができるものとなっている。
【0073】
なお,
図10に示したように,ガイド体26に冷却風の流れを排風口54に向けて誘導する導風面27を設けた構成では,仕切壁55に設けた開口55aを介してエンジン室56から排風室57に導入された冷却風は,傾斜部21aと衝突することで上向きの流れに偏向されるだけでなく,導風面27によって排風口54に向けて偏向されることにより,冷却風が排風室57内を円滑に通過することができるようになり,これにより防音箱内を通過する冷却風の風量が増大して防音箱内に収容されたエンジン30や作業機40等の構成機器の冷却効率が向上するだけでなく,排風に伴う風切音の低減による騒音の低減を図ることができた。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジン駆動作業機
10 フレーム
12 漏油溜
13 枠板
14 フランジ
15 水抜孔
151,152 貫通孔
153 隙間
16 排水路
17 基台
18 支持材
19 架台
20 カバー
21 上面板
211,212 側辺(上面板の)
21a 傾斜部
21b 水平部
22,23,24 側板
26 ガイド体
26a,26b 端部(ガイド体の)
26c 中央(ガイド体の)
27 導風面
28 止水板
30 エンジン
31 冷却ファン
32 熱交換器
40 作業機本体
50 ボンネット
52,53 窓
54 排風口
55 仕切壁
55a 開口
56 エンジン室
57 排風室
60 燃料タンク
62 溝
63 タンク収容空間
70 バッテリー
300 エンジン駆動作業機
310 フレーム
312 漏油溜
320 カバー
321a 傾斜部
330 エンジン
331 ラジエータファン
332 ラジエータコア
340 作業機本体
350 ボンネット
354 排風口
355 仕切壁
355a 開口
356 エンジン室
357 排風室
360 燃料タンク
362 溝
363 タンク収容空間
id 傾斜方向