(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】4級アンモニウム基で表面修飾された金属酸化物粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20230524BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20230524BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C09C3/12
C09C1/28
(21)【出願番号】P 2018227155
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000238164
【氏名又は名称】扶桑化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智子
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-311018(JP,A)
【文献】特開2018-044116(JP,A)
【文献】特開2016-011224(JP,A)
【文献】特開2013-018690(JP,A)
【文献】特表2014-513660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C09C 1/00-3/12
C09D 15/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
会合比(動的光散乱により測定される平均粒子径/SEM画像において測定される一次粒子の平均直径)が5.0以下であり、
一般式(1)
-Si(X)
n-[L-CR
1(OH)-C(R
2)
2-A]
3-n (1)[式中、
Xは同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した
シリカ粒子表面の
Si原子との結合であり;
nは0、1、または2であり;
Lは連結基であり;
R
1は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
R
2は同一または異なって、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
Aは4級アンモニウム基である。]
で示されるシリル基、および
一般式(2)
【化1】
[式中、
X’は同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した
シリカ粒子表面の
Si原子との結合であり;
n’は0、1、または2であり;
L’は連結基であり;
A’は4級アンモニウム基である。]
で示されるシリル基
からなる群より選択される少なくとも1種の基で表面修飾された
シリカ粒子。
【請求項2】
粉末乾燥状態の真比重が1.60以上である請求項1に記載の
シリカ粒子。
【請求項3】
前記会合比が1.5~5.0である請求項1
又は2に記載の
シリカ粒子。
【請求項4】
前記一次粒子の平均直径が120nm以下である請求項1~
3のいずれかに記載の
シリカ粒子。
【請求項5】
ハロゲン含有量が
シリカ粒子1g当たり10μmol/mL・g以下である請求項1~
4のいずれかに記載の
シリカ粒子。
【請求項6】
(a)水および/または有機溶媒の存在
下で、
シリカ粒子、3級アミン、およびエポキシ環を有するシランカップリング剤を任意の順番で混合する工程、および
(b)工程(a)で得られた混合物に酸を混合
してpHを0~8.0の範囲内に調整する工程、
を含む、
会合比(動的光散乱により測定される平均粒子径/SEM画像において測定される一次粒子の平均直径)が1.0以上5.0以下であり、4級アンモニウム基を表面に有する
シリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
酸が、無機酸および一価の有機酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項
6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4級アンモニウム基で表面修飾された金属酸化物粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物の粒子は、半導体基板等の化学研磨(CMP)の砥粒、樹脂のフィラー、光学材料用塗料、印刷用トナー樹脂粒子の外添剤、化粧品材料等として利用されており、粒子の分散安定性の向上や用途に合わせた特性を粒子に付与すること等を目的として、粒子の表面修飾処理が広く行われている。その表面修飾処理の1つにシランカップリング剤処理がある。シランカップリング処理では、代表的には官能基を有するアルコキシシラン、例えばZ-Si(OD)3[式中、Zは官能基を示し、Dはアルキル基を示す。]をシランカップリング剤とし、アルコキシシランのアルコキシ基が粒子表面のOH基と反応(典型的には脱水縮合反応)して「Z-Si-O-粒子」を形成することにより粒子表面が表面修飾(この場合では官能基Zが導入)される。表面修飾(変性と称されることもある)により粒子には、導入されたシリル基の有する官能基に応じた性質が付与されることとなる。例えばアミノ基を導入することにより粒子の表面電位が高くなり、正電位を示すpH領域が拡大することが知られている(特許文献1、特許文献2の例7)。
【0003】
一方、表面修飾の過程において粒子が凝集して会合比の大きな粒子や粗大粒子となることがある(例えば特許文献2の例7)。会合比の大きな粒子や粗大粒子は、化学研磨の砥粒として使用された際に研磨されている基材の表面にスクラッチを生じさせる傾向がある。また、4級アンモニウム基を含むシランカップリング剤も市販されているが、金属腐食作用に影響するハロゲン化物イオンを含有しており、これがスラリー中に残存してしまうため、金属を研磨対象とした化学研磨用途では望ましくない。さらに、クロロプロピルトリエトキシシランを用いてテトラメチルエチレンジアミン構造を有する水酸化シランを合成し、これを含有する液でシリカを処理する方法(特許文献3)、3-アミノプロピルシラン変性シリカナノ粒子の分散液に塩化3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウムを添加する方法(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-162533号公報
【文献】特表2012-515806号公報
【文献】特表2012-524020号公報
【文献】特表2011-512379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、例えば、4級アンモニウム基で表面修飾され、会合比の大きくない金属酸化物粒子、または、例えば、4級アンモニウム基で表面修飾され、ハロゲン含有量が少なく、会合比の大きくない金属酸化物粒子の提供を課題とする。また、例えば、4級アンモニウム基で表面修飾され、会合比の大きくない金属酸化物粒子の製造方法、または、例えば、ハロゲン化物を使用することなく、4級アンモニウム基で表面修飾された金属酸化物粒子を製造する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、エポキシ環を有するシランカップリング剤と3級アミンで金属酸化物粒子を表面修飾することでエポキシ環が開環して3級アミンと結合し、その結果、ハロゲン化物を使用することなく、該3級アミンの構造に対応した4級アンモニウム基で表面修飾された粒子が得られること、さらにその粒子の凝集が抑制でき、会合比(本発明においては、動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)により測定される平均粒子径/SEM画像において測定される一次粒子の平均直径をいう)を小さくできることを見出した。代表的な本発明は以下の通りである。
【0007】
項1.会合比(動的光散乱により測定される平均粒子径/SEM画像において測定される一次粒子の平均直径)が5.0以下であり、
一般式(1)
-Si(X)
n-[L-CR
1(OH)-C(R
2)
2-A]
3-n (1)
[式中、
Xは同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合であり;
nは0、1、または2であり;
Lは連結基であり;
R
1は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
R
2は同一または異なって、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
Aは4級アンモニウム基である。]
で示されるシリル基、および
一般式(2)
【化1】
[式中、
X’は同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合であり;
n’は0、1、または2であり;
L’は連結基であり;
A’は4級アンモニウム基である。]
で示されるシリル基
からなる群より選択される少なくとも1種の基で表面修飾された金属酸化物粒子。
項2.粉末乾燥状態の真比重が1.60以上である項1に記載の金属酸化物粒子。
項3.金属酸化物粒子がシリカ粒子である項1または2に記載の金属酸化物粒子。
項4.前記会合比が1.5~5.0である項1~3のいずれかに記載の金属酸化物粒子。
項5.前記一次粒子の平均直径が120nm以下である項1~4のいずれかに記載の金属酸化物粒子。
項6.ハロゲン含有量が金属酸化物粒子1g当たり10μmol/mL・g以下である項1~5のいずれかに記載の金属酸化物粒子。
項7.(a)水および/または有機溶媒の存在下あるいは非存在下で、金属酸化物粒子、3級アミン、およびエポキシ環を有するシランカップリング剤を任意の順番で混合する工程、および
(b)工程(a)で得られた混合物に酸を混合する工程、
を含む、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子の製造方法。
項8.前記工程(b)において前記酸を混合することにより、混合液のpHを0~10の範囲内にする項7に記載の製造方法。
項9.酸が、無機酸および一価の有機酸からなる群より選択される少なくとも1種である項7または8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハロゲン含有量の小さい、4級アンモニウム基で表面修飾された、会合比が小さく、粗大粒子の少ない金属酸化物粒子が提供される。また、本発明によれば、ハロゲン化物イオンを含有するシランやハロゲン基を有するシランを使用することなく、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態は、会合比(動的光散乱により測定される平均粒子径/SEM画像において測定される一次粒子の平均直径)が5.0以下であり、
一般式(1)
-Si(X)
n-[L-CR
1(OH)-C(R
2)
2-A]
3-n (1)
[式中、
Xは同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合であり;
nは0、1、または2であり;
Lは連結基であり;
R
1は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
R
2は同一または異なって、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
Aは4級アンモニウム基である。]
で示されるシリル基、および
一般式(2)
【化2】
[式中、
X’は同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合であり;
n’は0、1、または2であり;
L’は連結基であり;
A’は4級アンモニウム基である。]
で示されるシリル基
からなる群より選択される少なくとも1種の基で表面修飾された金属酸化物粒子である。
【0010】
本発明において、表面修飾とは、無機材料をシランカップリング剤で処理することによって無機材料にシランカップリング剤に由来するシリル基を導入する技術における一般的な意味で使用され、変性とも称されることがある。代表的には、シリル基が共有結合(好ましくはメタロキサン結合)で金属酸化物粒子表面と結びついた状態をいい、共有結合に加え、イオン結合、水素結合、化学吸着、物理吸着等で結びついていてもよい。一実施形態において、本発明の金属酸化物粒子は、一般式(1)で示されるシリル基及び一般式(2)で示されるシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が共有結合(好ましくはメタロキサン結合)で粒子表面と結びついた金属酸化物粒子である。例えば、上記シリル基はシリル基中のSiが-O-を介して粒子表面に共有結合している。上記シリル基中のSiは、-O-を介したこの結合を1、2または3個有してもよい。
本発明の金属酸化物粒子は、代表的には、本発明の製造方法で得られるが、上記シリル基で表面修飾されている限り他の方法によって得られたものも本発明の金属酸化物粒子に包含される。
【0011】
本発明において、表面修飾の程度は、粉末乾燥状態の金属酸化物粒子の元素分析値について、表面修飾前後の差を取って算出できる。具体的には、金属酸化物粒子を含むスラリーを遠心分離した後、沈殿物を乾燥させ粉末状態とする。これを元素分析して窒素含有濃度を求め、表面修飾前後での窒素含有濃度の増加分で表面修飾の程度を表すことができる。
【0012】
本発明における表面修飾の程度は、窒素含有濃度の増加分が、例えば0.03質量%以上、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。
【0013】
金属酸化物粒子
本発明における金属酸化物粒子は、例えばシリカ(酸化ケイ素)粒子、酸化セリウム粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化スズ粒子、酸化マンガン粒子等であり、好ましくはシリカ粒子、酸化セリウム粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、または酸化マンガン粒子であり、これらの複合粒子でもよい。複合粒子としては、例えばシリカをコア粒子としこれを酸化セリウムのシェルで被覆した粒子などが挙げられる。金属酸化物粒子として、より好ましくはシリカ粒子であり、より一層好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカとしては、特に制限されないが、アルコキシシランもしくはケイ酸ソーダを原料として合成されたコロイダルシリカが好ましい。更に、アルコキシシラン(例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン)を原料として合成されたコロイダルシリカが好ましい。また、金属腐食性を有するハロゲンの混入を回避する観点からは、ハロゲンを含有しない金属塩または金属アルコキシドを原料として調製された金属酸化物粒子が好ましく、金属不純物(Na等)の混入を回避する観点からは金属アルコキシドを原料として調製された金属酸化物粒子が好ましい。
【0014】
本発明において金属酸化物粒子の一次粒子の平均直径は次の方法により得られる粒子径である。
(一次粒子の平均直径)
SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影された金属酸化物粒子の20万倍の画像(SEM画像)において無作為に抽出された50個の一次粒子の直径を測定しその平均値を求める。
【0015】
本発明において、表面修飾される前の金属酸化物粒子の一次粒子の平均直径は特に制限されず用途等に応じて適宜選択できるが、例えば1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、例えば350nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、より一層好ましくは90nm以下である。さらに、表面修飾される前の金属酸化物粒子の一次粒子の平均直径は、例えば1nm~350nm、好ましくは5nm~120nm、より好ましくは5nm~90nmである。
【0016】
本発明において、表面修飾された金属酸化物粒子の一次粒子の平均直径は特に制限されず用途等に応じて適宜選択できるが、例えば1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、例えば350nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、より一層好ましくは90nm以下である。さらに、表面修飾された金属酸化物粒子の一次粒子の平均直径は、例えば1nm~350nm、好ましくは5nm~120nm、より好ましくは5nm~90nmである。平均直径が上記範囲にあると、粒子が研磨剤の砥粒として使用される際に粒子の沈降が起こりにくい。
【0017】
本発明において、表面修飾された金属酸化物粒子の二次粒子の粒子径は、例えば次の方法により得られる。
(動的光散乱による平均粒子径(二次粒子の粒子径))
動的光散乱法の測定用サンプルとして、金属酸化物粒子分散液を0.3重量%クエン酸水溶液に加えて均一化したものを調製する。当該測定用サンプルを用いて、動的光散乱法(大塚電子株式会社製「ELSZ-2000S」)により二次粒子径を測定する。
【0018】
本発明において、表面修飾された金属酸化物粒子の会合比は、(動的光散乱により測定される平均粒子径)/(SEM画像において測定される一次粒子の平均直径)、で表され、代表的には5.0以下であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下であり、より一層好ましくは、3.0以下である。また、例えば1.0以上、好ましくは1.5以上である。会合比が上記範囲にあると、粒子が研磨剤の砥粒として使用される際に研磨面における傷の発生が抑制されやすく、また、真球型と比較して研磨速度が向上しやすい。
【0019】
本発明において、表面修飾された金属酸化物粒子の真比重(単位:g/cm3)は、例えば1.60以上、1.70以上であり、好ましくは1.90以上、より好ましくは2.00以上であり、また、例えば7.50以下、好ましくは6.00以下、より好ましくは2.50以下である。真比重が上記範囲にあると、粒子が研磨剤の砥粒として使用される際に粒子による機械的な研磨作用と研磨速度が向上しやすい。
真比重は、金属酸化物粒子を150℃のホットプレート上で乾固後、300℃炉内で1時間保持した後、エタノールを用いた液相置換法で測定した値であってよい。
【0020】
本発明において、金属酸化物粒子のハロゲン含有量(フッ素含有量、塩素含有量、臭素含有量及びヨウ素含有量の総和をいう。)はハロゲン濃度(フッ素濃度、塩素濃度、臭素濃度及びヨウ素濃度の総和をいう。)で表すことができ、金属酸化物粒子1g当たりのハロゲン含有量は、例えば10μmol/mL・g以下、より好ましくは5μmol/mL・g以下、より一層好ましくは1μmol/mL・gである。
【0021】
本発明において、ハロゲン含有量は次の方法により決定される。
金属酸化物粒子を20質量%含むスラリー10g(金属酸化物粒子2g含有)を遠心分離により金属酸化物粒子と上澄み液とに分離する。遠心分離の条件はスラリーが金属酸化物粒子と上澄み液とに分離される条件であればよい。上澄み液2mLを採取し、この採取液をイオンクロマトグラフィーで分析することによりこの液のハロゲン濃度(単位;μmol/mL)が測定できる。このハロゲン濃度をそのまま、金属酸化物粒子1g当たりのハロゲン含有量(単位;μmol/mL・g)とする。
【0022】
表面修飾シリル基
本発明の金属酸化物粒子は上記一般式(1)で示されるシリル基および上記一般式(2)で示されるシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基で表面修飾されたものである。
【0023】
シリル基中のSiと粒子表面の金属原子との-O-を介したこの結合が1個であるときは、シリル基中の-Siが-O-を介して粒子表面の金属原子と結合(メタロキサン結合)している。つまり、Siと粒子表面の金属原子とは「M-O-Si(X)n-」(ここで、Mは粒子表面の金属原子であり、Xは同一または異なって各々水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、または-O-を介した他のシリル基のSiとの結合であり、nは0、1、または2である。)で結合している。
【0024】
この結合が2個であるときは、1個のXが「-O-を介した粒子表面の金属原子との結合」である。つまり、Siと粒子表面の金属原子とは「M-O-Si(X)2(OM’)1-」(ここで、MおよびXは前記と同じであり、M’はMとは異なる粒子表面の金属原子である。)で結合している。
【0025】
この結合が3個であるときは、2個のXが「-O-を介した粒子表面の金属原子との結合」である。つまり、Siと粒子表面の金属原子とは「M-O-Si(X)1(OM’)1(OM’’)1-」(ここで、M、M’、およびXは前記と同じであり、M’’はMおよびM’とは異なる粒子表面の金属原子である。)で結合している。
【0026】
(一般式(1)で示されるシリル基)
一般式(1)
-Si(X)n-[L-CR1(OH)-C(R2)2-A]3-n (1)
で示されるシリル基において、
Xは同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合であり;
nは0、1、または2であり;
Lは連結基であり;
R1は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
R2は同一または異なって、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
Aは4級アンモニウム基である。
【0027】
一般式(1)で示されるシリル基においてXは、同一または異なって、各々、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合である。
【0028】
Xにおいて加水分解性置換基は、水性の系中で加水分解されてSi-OH基を形成しうる基である。表面修飾に使用されるシランカップリング剤中の加水分解性基は、表面修飾の際の加水分解の程度等によって、例えば、加水分解されずに加水分解性基のまま残るか、加水分解されて水酸基を形成するか、加水分解されて水酸基を形成しさらに他の水酸基と縮合する。加水分解性置換基は、例えばアルコキシ基などであり、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C6アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、またはtert-ブトキシ基であり、より一層好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である。
【0029】
Xにおいて非加水分解性置換基は、水性の系中で、加水分解されない、つまりSi-OH基を形成しない基である。非加水分解性置換基は、例えばアルキル基などであり、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C6アルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、またはtert-ブチル基であり、より一層好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0030】
Xにおいて-O-を介した他のシリル基のSiとの結合は、金属酸化物粒子表面において、一般式(1)で示されるシリル基中のSiとその近傍に存在するシリル基のSiとの酸素原子を介した結合(シロキサン結合)であり、Si-O-Si構造を形成する。
【0031】
Xにおいて-O-を介した粒子表面の金属原子との結合は、該シリル基中のSiと粒子との結合であり、Si-O-M’構造またはSi-O-M’’(M’およびM’’は粒子表面の金属原子であり、前記のとおりである。)を形成する。この結合の詳細は上記のとおりである。
【0032】
一実施形態において、好ましいXは、同一または異なって、-O-を介した粒子表面の金属原子との結合、近傍に存在するシリル基のSiとの酸素原子を介した結合、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、またはメチル基である。
【0033】
一般式(1)で示されるシリル基においてnは0、1、または2である。立体障害の小ささ、つまりシランカップリング剤のエポキシ環が開環して3級アミンと結合する反応のしやすさの観点では、nは2であることが好ましい。
【0034】
一般式(1)で示されるシリル基においてLは連結基である。連結基は、代表的には、表面修飾の際に使用されたシランカップリング剤におけるSiとエポキシ環を構成する炭素原子との間を構成する基に対応する基である。つまり、連結基は、シリル基中のSiと、表面修飾の際に使用されたシランカップリング剤においてエポキシ環を構成していた炭素原子との間を結ぶ基である。連結基は、例えば直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基である。
【0035】
直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基は、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、オクタデシレン基などであり、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C8のアルキレン基、より好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C6のアルキレン基である。アルキレン基における分岐の数は、例えば0、1、2、または3個、好ましくは0、1、または2個、より好ましくは0または1個である。なお、直鎖状のアルキレン基は分岐の数が0個のアルキレン基に該当する。また、分岐状のアルキレン基における分岐鎖は、例えばC1-C3のアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基である。なお、分岐鎖とは、分岐状のアルキレン基においてSiと結合する炭素原子とAと結合する炭素原子を結ぶ直線状の炭化水素鎖を主鎖とした場合に、主鎖を構成する炭素原子に結合するアルキル基をいう。
【0036】
直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基は、置換基を有してもよい。置換基は、例えばアミノ基、アルケニル基(例えばビニル基、アリル基)、アルキニル基である。置換基は1種類でも複数種併用してもよい。置換基の数は、例えば0、1、2、または3個、好ましくは0、1、または2個、より好ましくは0または2個、より一層好ましくは0個である。
【0037】
直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基は、そのアルキレン鎖末端またはアルキレン鎖中の任意の位置に、酸素原子(-O-)、窒素原子(-N-)、または硫黄原子(-S-)を含んでもよく、好ましくは酸素原子または硫黄原子であり、より好ましくは酸素原子である。これらのヘテロ原子が分岐状のC1-C18のアルキレン基に含まれるときは、主鎖に含まれても分岐鎖に含まれてもよい。また、窒素原子がアルキレン鎖末端またはアルキレン鎖中に含まれるときは、-NH-であっても、窒素原子が1個の置換基で置換されていてもよい。この場合の置換基としてはメチル基やエチル基が挙げられる。アルキレン鎖末端およびアルキレン鎖中に含まれる酸素原子、窒素原子、および硫黄原子の総数は特に制限されないが、例えば1、2、または3個であり、好ましくは1または2個であり、より好ましくは1個である。
【0038】
一実施形態において、Lは、*-(CH2)3-O-CH2-、*-(CH2)2-O-CH2-、*-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-が好ましく、原料シランカップリング剤の入手が容易である点、また、立体障害が小さい点で、*-(CH2)3-O-CH2-、-(CH2)4-が好ましい。なお、*はSi(X)n側を表す。
【0039】
一般式(1)で示されるシリル基においてR1は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基である。アルキル基は、例えば直鎖状または分岐状のC1-C6アルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。不飽和結合を含むアルキル基は、例えばビニル基やアリル基である。R1は水素原子がより好ましい。
【0040】
一般式(1)で示されるシリル基においてR2は同一または異なって、各々、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基である。アルキル基は、例えば直鎖状または分岐状のC1-C6アルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。不飽和結合を含むアルキル基は、例えばビニル基やアリル基である。好ましくは、2つのR2がともに水素原子である。
【0041】
一般式(1)で示されるシリル基においてAは4級アンモニウム基である。4級アンモニウム基は、代表的には、原料の3級アミンの構造に対応した構造を有し、例えば原料の3級アミンがトリエチルアミンであれば対応する4級アンモニウム基はトリエチルアンモニウム基である。4級アンモニウム基は、例えば飽和炭化水素基を有するもの(トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン等);水酸基、エーテル基、アミノ基、および/または不飽和炭素結合を含む炭化水素基を有するもの(ジメチルエタノールアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン等)などである。好ましい4級アンモニウム基は、同一または異なって、水酸基、アミノ基またはフェニル基で置換されてもよいC1-C10アルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基、より好ましくはC1-C3アルキル基)を3個有する。一実施形態において、4級アンモニウム基としては、-N+(CH3)3、-N+(C2H5)3、-N+(CH3)2(CH2CH2OH)、-N+(C2H5)2(CH2CH2OH)、-N+(CH3)2(CH2CH(OH)CH3)、-N+(CH3)2(C(CH3)2CH2OH)が挙げられる。4級アンモニウム基は、-N+(C2H5)3、-N+(CH3)3がより好ましい。
【0042】
一般式(1)で示されるシリル基は、原料シランカップリング剤の入手が容易である点、また、立体障害が小さい点で、
-Si(X)2-[(CH2)3-O-CH2-CH(OH)-CH2-A]1または
-Si(X)2-[(CH2)4-CH(OH)-CH2-A]1が好ましい。
【0043】
(一般式(2)で示されるシリル基)
一般式(2)
【化3】
で示されるシリル基において、
X’は同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合であり;
n’は0、1、または2であり;
L’は連結基であり;
A’は4級アンモニウム基である。
【0044】
一般式(2)で示されるシリル基においてX’は、同一または異なって、各々、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介した粒子表面の金属原子との結合である。X’についての説明は上記Xについての説明と同じである。
【0045】
一般式(2)で示されるシリル基においてn’は0、1、または2である。n’についての説明は上記nについての説明と同じである。
【0046】
一般式(2)で示されるシリル基においてL’は連結基である。L’についての説明は上記Lについての説明と同じである。
【0047】
一般式(2)で示されるシリル基においてA’は4級アンモニウム基である。A’についての説明は上記Aについての説明と同じである。
【0048】
一般式(2)で示されるシリル基において以下の部分構造
【化4】
として好ましいのは、
【化5】
である(式中、A’は前記と同じ)。
【0049】
一般式(2)で示されるシリル基は、原料シランカップリング剤の入手が容易である点で、次式で示される基が好ましい(式中、X’およびA’は前記と同じ)。
【化6】
【0050】
本発明の金属酸化物粒子は、例えば紙、繊維、鉄鋼等の分野で物性改良剤として使用できる他、化学機械研磨(CMP)やシリコンウエハ研磨、ガラス研磨において研磨剤として使用できる。本発明の金属粒子は、ハロゲン含有量が低いため、金属を対象とした研磨における砥粒として、好ましく使用できる。
【0051】
製造方法
一実施形態において、本発明の金属酸化物粒子は、エポキシ環を有するシランカップリング剤と3級アミンで金属酸化物粒子を表面被覆することにより製造することができる。具体的には以下の工程(a)および(b)を経て製造することができる。
(a)水および/または有機溶媒の存在下あるいは非存在下で、金属酸化物粒子、3級アミン、およびエポキシ環を有するシランカップリング剤を任意の順番で混合する工程、および
(b)工程(a)で得られた混合物に酸を混合する工程、
を含む、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子の製造方法。
なお、本発明の製造方法において製造される4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子は、好ましくは上記本発明の金属酸化物粒子であるが、4級アンモニウム基を表面に有するその他の金属酸化物粒子(好ましくは、上記一般式(1)で示されるシリル基、および上記一般式(2)で示されるシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基で表面修飾された金属酸化物粒子)も包含しうるものである。
【0052】
(工程(a))
工程(a)では、水および/または有機溶媒の存在下あるいは非存在下で、金属酸化物粒子、3級アミン、およびエポキシ環を有するシランカップリング剤を任意の順番で混合して混合物を調製する。混合前、混合中、混合後のいずれの段階においても任意に撹拌することができる。撹拌の方法は特に制限されない。
【0053】
金属酸化物粒子は特に制限されないが、上記金属酸化物粒子にて説明された粒子と同一のものを使用できる。
【0054】
3級アミンは4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、上記一般式(1)または(2)における所望の4級アンモニウム基AまたはA’に対応する3級アミンを使用すればよい。例えば、Aがトリエチルアンモニウム基であれば、3級アミンとしてトリエチルアミンを使用すればよい。したがって、上記において好ましいAまたはA’として説明された4級アンモニウム基に対応する3級アミン、つまりトリメチルアミン、トリエチルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノールなどを好ましく使用できる。3級アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、2-ジメチルアミノエタノールがより好ましい
【0055】
3級アミンの使用量は4級アンモニウム基を有するシリル基で粒子の表面被覆が達成される限り特に制限されないが、3級アミンはシランカップリング剤中のエポキシ環と反応するため、当該エポキシ環の量に応じて決定すればよい。3級アミンの使用量は、当該エポキシ環1モルに対し、例えば1モル以上、好ましくは1.2モル以上、更に好ましくは1.5モル以上である。3級アミンの使用量の下限が上記範囲にあると、3級アミンとエポキシ環の接触頻度が増加しやすく、また、シランカップリング剤と粒子との縮合反応が促進されやすい。また、3級アミンの使用量は、当該エポキシ環1モルに対し、例えば50モル以下、好ましくは30モル以下である。
【0056】
工程(a)においてシランカップリング剤はエポキシ環を有するものであれば特に制限されないが、エポキシ環を有し、上記一般式(1)または(2)における所望のLまたはL’に対応するシランカップリング剤を使用すればよい。例えば以下の一般式(3)で示されるシランまたは一般式(4)で示されるシランである。
【0057】
【化7】
[式中、
X’’は同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、または非加水分解性置換基であり、ただし少なくとも1個は加水分解性置換基であり;
n’’は1、2、または3であり;
L’’は連結基であり;
R
1’’は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基であり;
R
2’’は同一または異なって、同一または異なって、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基である。]
【0058】
【化8】
[式中、
X’’’は同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、または非加水分解性置換基であり、ただし少なくとも1個は加水分解性置換基であり;
n’’’は1、2、または3であり;
L’’’は連結基である。]
【0059】
一般式(3)および(4)において、X’’の少なくとも1個およびX’’’の少なくとも1個は加水分解性置換基である。X’’およびX’’’において加水分解性置換基および非加水分解性置換基は、上記一般式(1)で示されるシリル基において説明した加水分解性置換基および非加水分解性置換基と同一でよい。好ましいX’’およびX’’’は加水分解性置換基であり、例えばアルコキシ基などである。より好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C6アルコキシ基、より一層好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、またはtert-ブトキシ基であり、さらにより一層好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である。
【0060】
一般式(3)および(4)において、n’’およびn’’’は1、2、または3であり、好ましくは2または3、より好ましくは3である。
【0061】
一般式(3)および(4)において、L’’およびL’’’は連結基である。連結基は上記一般式(1)で示されるシリル基において説明した連結基と同一でよい。
【0062】
一般式(3)において、R1’’は水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基である。R1’’は上記一般式(1)で示されるシリル基において説明したR1と同一でよい。
【0063】
一般式(3)において、R2’’は同一または異なって、水素原子、あるいは、アミノ基、水酸基、または不飽和結合を含んでもよいアルキル基である。R2’’は上記一般式(1)で示されるシリル基において説明したR2と同一でよい。
【0064】
一般式(3)で示されるシランは、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシメチルトリエトキシシランなどのグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのグリシドキシアルキルジアルコキシアルキルシラン;3-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシランなどのグリシドキシアルキルアルコキシジアルキルシラン;5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどのエポキシアルキルトリアルコキシシランであり、入手容易性や立体障害の小ささの観点から好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。
【0065】
一般式(4)で示されるシランは、例えば、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシシクロヘキシルアルキルトリアルコキシシランが挙げられ、入手容易性の観点から好ましくは、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランである。
【0066】
エポキシ環を有するシランカップリング剤の使用量は4級アンモニウム基を有するシリル基で粒子の表面被覆が達成される限り特に制限されない。当該使用量は、(シランカップリング剤のモル数)/(粒子表面のシラノール基の総モル数)が、例えば0.15以上、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.50以上となる量である。当該使用量がこの範囲にあることにより、中性付近のpHにおいて安定なカチオン性粒子が得られるため有利である。また、当該使用量は、((シランカップリング剤の使用質量(g))×(シランカップリング剤の最小被覆面積(m2/g)))/(粒子の総表面積(m2))による計算値が、例えば1.0以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.30以下となる量である。当該使用量がこの範囲であることにより、シランカップリング剤が粒子と反応せずに反応液中に残存することを抑制できるため有利である。
【0067】
ここで、粒子表面のシラノール基の総モル数、シランカップリング剤の最小被覆面積、および粒子の総表面積は次の方法で得られる値である。
(粒子表面のシラノール基の総モル数)
粒子表面のシラノール基の総モル数は、Analytical Chemistry,vol.28,No.12,1956年,1982~1983ページに記載された方法に従い、pH4からpH9までの水酸化ナトリウム消費量から算出する。
(シランカップリング剤の最小被覆面積)
シランカップリング剤の最小被覆面積(m2/g)は、Stuart-brieglebの分子モデル式より算出する。この式は以下のとおりである。
シランカップリング剤の最小被覆面積(m2/g)=78260/シランカップリング剤の分子量
(粒子の総表面積)
粒子の総表面積は、SEM画像において測定される一次粒子の平均直径をR(nm)、金属酸化物粒子の重量をx(g)、金属酸化物粒子の真比重をρ(g/cm3)として、6000x/R・ρ(m2)で算出される。
【0068】
工程(a)は、水および/または有機溶媒(以下、単に媒体と称することがある)の存在下あるいは非存在下で実施できる。媒体の存在下で実施すると凝集抑制の点で有利であり、好ましい。媒体を使用する場合、媒体の使用量は表面被覆が行われる限り特に制限されないが、媒体と金属酸化物粒子の合計100質量部に対して、金属酸化物粒子が例えば10~60質量部、好ましくは10~50質量部となる量である。媒体の使用量を上記範囲とすることにより、粒子の凝集と粗大粒子の増加を抑制しつつ、シランカップリング剤と粒子との接触頻度が高くでき、反応効率が向上する点で有利である。
【0069】
媒体としては、水単独または水と有機溶媒との併用が好ましい。水の使用は、シランカップリング剤の反応性が向上するため好ましい。有機溶媒としては、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコールであり、好ましくはメタノール、エタノールである。媒体を使用する場合、水と有機溶媒の合計100質量部に対して、水が、例えば30質量部以上、好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上となる量であり、また、水が、例えば100質量部以下、好ましくは95質量部以下となる量である。水の使用比率が高いことによって、製造コスト上のメリットがある。なお、媒体を反応系に添加する際、一回で反応系に添加してもよいが、複数回(例えば2回、3回)に分けて添加してもよい。また、水と有機溶媒を併用する場合、水全量および/または有機溶媒全量を一回で反応系に添加してもよいが、複数回(例えば2回、3回)に分けて添加してもよく、複数回に分ける場合は水の一部、有機溶媒の一部を任意の順序で添加できる。例えば粒子を含む水に3級アミンを添加後、シランカップリング剤および有機溶媒を添加し、次の工程でここに酸を添加することができる。
【0070】
工程(a)において、金属酸化物粒子、3級アミン、およびエポキシ環を有するシランカップリング剤を混合する順序は、4級アンモニウム基を有するシリル基で粒子の表面被覆が達成される限り特に制限されない。工程(a)において、水および/または有機溶媒を使用する場合は、水および/または有機溶媒、金属酸化物粒子、3級アミン、およびエポキシ環を有するシランカップリング剤を混合する順序も特に制限されない。
【0071】
粒子の凝集と粗大粒子の増加を抑制しつつ、シランカップリング剤と粒子との接触頻度が高くでき、反応効率が向上する点で、好ましくは、金属酸化物粒子と3級アミンを混合後、シランカップリング剤を添加、混合する。ここで、シランカップリング剤は有機溶媒で希釈され、希釈液として連続的に金属酸化物粒子と3級アミンとの混合物に添加されると、粒子凝集の抑制効果が高くなるため、より好ましい。
【0072】
別の混合方法としては、水および/または有機溶媒の非存在下、つまり媒体を含まない乾式の状態のまま、金属酸化物粒子の粉体に、シランカップリング剤を混合し、更に3級アミンを混合して混合物を調製することもできる。
【0073】
また別の混合方法としては、水および/または有機溶媒の非存在下、つまり媒体を含まない乾式の状態のまま、金属酸化物粒子の粉体に、シランカップリング剤を混合した後、未反応のシランカップリング剤を除去して、表面修飾された粒子のみの状態とし、その粒子と3級アミンを、シランカップリング剤の不在の状況で、水および/または有機溶媒の存在下または非存在下、混合して混合物を調製することもできる。
【0074】
さらに別の混合方法としては、水および/または有機溶媒の非存在下で、3級アミンとシランカップリング剤を予め混合して4級アンモニウム基を有するシランとし、水および/または有機溶媒の非存在下で粒子とこのシランを混合して表面修飾させて混合物を調製すこともできる。
【0075】
工程(a)において、水および/または有機溶媒の存在下で混合する際の、媒体の温度は4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、例えば0℃~媒体の沸点以下、好ましくは20℃~80℃、より好ましくは30℃~70℃である。混合および反応時の媒体の温度をこの範囲とすることにより粒子の凝集抑制と反応性向上による反応時間短縮の点で有利である。水および/または有機溶媒の非存在下で混合する際の温度は4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されない。
【0076】
工程(a)における時間は4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、金属酸化物粒子、3級アミン、エポキシ環を有するシランカップリング剤、および任意成分である水および/または有機溶媒の全てを混合してから、例えば1分~48時間、好ましくは1分~24時間である。
【0077】
工程(a)において、水単独または水および有機溶媒の存在下で混合する際の混合液のpHは4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、例えばpH9以上、好ましくはpH10以上である。
【0078】
(工程(b))
工程(b)では、工程(a)で得られた混合物に酸を混合し、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が製造される。酸の混合により反応性が向上するとともに、粒子の凝集と粗大粒子の増加を抑制できる。また、酸混合前、酸混合中、酸混合後のいずれの段階においても任意に撹拌することができ、粒子の凝集抑制と反応性向上の点から撹拌されていることが好ましい。撹拌の方法は特に制限されない。
【0079】
酸は4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、例えば硝酸、リン酸、塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸、好ましくは無機酸、一価の有機酸である。より好ましくは金属腐食性が低く、ハロゲン非含有の酢酸、硝酸である。
【0080】
酸の使用量は4級アンモニウム基を有するシリル基で粒子の表面被覆が達成される限り特に制限されないが、酸混合後の混合液のpHが、例えば0~10、好ましくは0~8.5、より好ましくは0~8.0となる量である。
【0081】
工程(b)における酸混合中の混合液の温度は4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、例えば媒体の沸点以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下であり、また、例えば0℃以上である。
【0082】
工程(b)における時間は4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる限り特に制限されないが、酸を混合してから、例えば1分~48時間、好ましくは1分~24時間である。
【0083】
工程(a)において有機溶媒を使用した場合、工程(b)における酸混合および反応終了後、有機溶媒を系外除去するために、水で有機溶媒を置換してもよい。
【0084】
工程(b)において生成した4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子は、可能であればそのままコロイド粒子とすることもできるし、公知の手法で分散媒から粒子を分離することもできる。
【0085】
本発明の製造方法には、金属酸化物粒子を媒体に分散した分散液に3級アミンを混合する工程、および、この工程で得られた分散液にエポキシ環を有するシランカップリング剤を混合する工程を含む、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子を製造する方法が包含される。
【0086】
本発明の製造方法によれば、会合比を制御した、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子が得られる。また、本発明の製造方法では、上記のエポキシ環を有するシランカップリング剤と3級アミンを使用することによって、ハロゲン化物イオンを含有するシランやハロゲン基を有するシランを使用しない系でも、4級アンモニウム基を表面に有する金属酸化物粒子を製造することが可能である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例等を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
実施例1
[工程I]:フラスコに、シリカ粒子分散水(シリカA;扶桑化学工業社製、表1の物性を有するシリカ粒子、シリカ濃度20質量%)9000gを入れ、トリエチルアミン160.2gを添加した。得られた分散液のpHは11.7であった。
[工程II]:工程Iで得られた分散液を内温55℃まで加熱した後、内温変動しないように温度調整しつつ、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン124.7gおよびメタノール499.1gの混合液を60分かけて添加した。全量添加後、55℃で30分間維持した。
[工程III]:工程IIで得られた分散液3450gを別のフラスコに入れ、酢酸31.3gを室温(20℃)で添加した。得られた混合液のpHは6.5であった。
[工程IV]工程IIIで得られた混合液からメタノールを系外留去するために、常圧下で加熱し、容量を一定に保ちつつ純水2000mlを滴下し、メタノールを水に置換し、表面が、4級アンモニウム基を有するシリル基(-Si(X)2-CH2CH2CH2-O-CH2-CH(OH)CH2-N+(C2H5)3)で変性されたシリカ粒子の分散水を3328g(シリカ濃度20質量%)得た。
各工程でのpHは、堀場製作所製のpHメータD-74により測定した。
【0089】
粒子径の測定
工程I前のシリカ粒子と工程IV後のシリカ粒子の一次粒子の平均直径(R;nm)、動的光散乱による平均粒子径(二次粒子の粒子径)(D2;nm)、および会合比(D2/R)を下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0090】
(一次粒子の平均直径;R)
SEM(走査型電子顕微鏡)を用いてコロイダルシリカの一次粒子の直径(R;nm)を測定した。具体的には、SEMで20万倍のシリカ粒子画像を取得し、画像中の不作為に抽出したシリカ粒子50個の直径を測定し、その平均値を算出した。
(動的光散乱による平均粒子径;D2)
動的光散乱法の測定用サンプルとして、コロイダルシリカを0.3重量%クエン酸水溶液に加えて均一化したものを調製した。当該測定用サンプルを用いて、動的光散乱法(大塚電子株式会社製「ELSZ-2000S」)により平均粒子径(D2;nm)を測定した。
【0091】
また、工程IIで得られたシリカ粒子分散液、および工程IVで得られたアミノ変性シリカ粒子分散水について、残存シラン濃度(ppm)、等電点、および真比重(g/cm3;工程IIで得られたシリカ粒子分散液を除く)を以下の方法で測定し、結果を表2に示した。
【0092】
(残存シラン濃度)
遠心分離により分散水中のシリカ固形分を沈降させ、この上澄み中に含まれる残存シラン濃度をICP発光分析装置で分析した。
(等電点)
等電点は、シリカ固形分濃度が2%となるようにコロイダルシリカ分散液を水で希釈した溶液を、Dispersion Technology製のModel DT-1202で測定した。
(真比重)
真比重は、150℃のホットプレート上で乾固後、300℃炉内で1時間保持した後、エタノールを用いた液相置換法で測定した。
【0093】
工程IIで得られたシリカ粒子分散液と工程IVで得られたアミノ変性シリカ粒子とを対比することにより酢酸添加による作用を確認した。
【0094】
実施例2~5
酢酸を25.5gの60%硝酸(実施例2)、29.7gの85%乳酸(実施例3)、19.9gの85%リン酸(実施例4)に代え、酸添加後のpHを5~7とした以外は実施例1と同様にしてアミノ変性シリカの分散水を得た。また、シリカ粒子BS-2を同重量のLudox CL-Xに、酢酸添加量を66.0g(実施例5)に代えた以外は実施例1と同様にしてアミノ変性シリカの分散水を得た。得られたシリカ粒子について、実施例1と同様にして平均直径、動的光散乱による平均粒子径(二次粒子の粒子径)、会合比、および粗大粒子数(実施例5のみ)を測定し、結果を表1に示した。なお、粗大粒子数は下記の方法で測定した。
【0095】
(粗大粒子数;LPC)
粗大粒子数(単位:個/mL)は、スラリー1mLに含まれる、Particle Sizing Systems社製のAccusizer780を用いて検出される0.56μm以上のサイズの粒子の数とした。
【0096】
比較例1
205g(45%固形分)のLudox CL-X(登録商標)コロイド状シリカ分散液(Sigma-Aldrichから入手可能)、65.3gの水、および163gのメタノールを撹拌し、混合した。この混合物に、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドのメタノール中の50%溶液(28.5g)を室温で添加した。この混合物を、68~73℃で、24時間に亘って加熱して、pH8.4の分散液を得た。得られたシリカ粒子について、実施例1と同様にして平均直径、動的光散乱による平均粒子径(二次粒子の粒子径)、および会合比を測定し、実施例5と同様にして粗大粒子数を測定し、結果を表1に示した。
【0097】
比較例2(ハロゲン含有シランを用いた表面修飾)
1Lフラスコに320.7gのクロロプロピルトリエトキシシランをとり、撹拌しながら154.7gのN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを急速に添加した。激しく撹拌しながら、160.3gの水を2分14秒で注入した。これを6時間加熱還流した。これに、64.1gの水を1分20秒で注入した。更に1.5時間加熱還流を行い、160.1gの水を2分11秒で注入した。
加水分解により生じたエタノールを除去するため、100~270ミリバールの圧力下、49℃~54℃の湯浴中で、エバポレーターを使用して留去した。約170gのエタノール及び水の混合物を留去した後、32.7gの水を迅速に添加した。更に、223gのエタノール及び水の混合物を留去させ、223gの水を添加した。これを表面処理剤とした。
500mLビーカーに110.0gの水をとり、ホモミキサーHM-310を使用して2000rpmの強撹拌下で、7.15gのギ酸、および先述の表面処理剤2.00gを添加し、混合した。この混合液に117.8gのLUDOX CL-X(シリカ濃度45質量%)を急速に添加したところ、液が白濁した。5分間2000rpmで撹拌したのち、10分間12000rpmで撹拌した。これを60℃の湯浴中で加熱しながら、60分間5000rpmで撹拌した。放冷し、300μmのふるいでろ過した。得られたシリカ粒子について、実施例1と同様にして平均直径、動的光散乱による平均粒子径(二次粒子の粒子径)、および会合比を測定し、結果を表1に示した。
【0098】
比較例3(ハロゲン含有アンモニウム塩を用いた表面修飾)
750.0gのLUDOX TMAコロイド状シリカ分散液(シリカ濃度34質量%)を3Lのフラスコにとり、967.0gのエタノールと混合した。この混合液に、室温下で172.5gの3-アミノプロピルトリメトキシシランを126分かけて滴下したところ、白濁した。この混合物を約50℃で24時間加熱した。エバポレーターを使用してこの反応液からエタノールを留去させ、31.9質量%の3-アミノプロピルシラン変性シリカナノ粒子の分散液を得た。
先述の3-アミノプロピルシラン変性シリカナノ粒子の分散液100.0gを300mLフラスコにとり、分散液を75℃に加熱した状態で、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウム塩化物塩の39質量%水溶液19.8gを4時間かけて添加した。これを撹拌しながら4時間75℃に維持した。室温まで放冷した後、51.0gの水を添加して、変性シリカナノ粒子の分散液を得た。得られたシリカ粒子について、実施例1と同様にして平均直径、動的光散乱による平均粒子径(二次粒子の粒子径)、および会合比を測定し、結果を表1に示した。
【0099】
【0100】
【0101】
実施例1~5では、粒子の凝集はなかった。また、実施例にて示されたように、ハロゲンを含有する化合物を使用することなく、4級アンモニウム基を表面に有するシリカ粒子を製造できた。さらに、表1からは、実施例1~5では、比較例1と比較して、アミノ変性による、D2および会合比の増加が小さいこと、また、実施例5では、比較例1と比較して、粗大粒子数を低く維持できたことがわかる。
【0102】
表2に示された、工程IIのシリカ粒子分散液と工程IVのアミノ変性シリカ分散水について、残存シラン濃度および等電点における対比から、酢酸を添加することよって、残存シラン濃度が低下したこと、シリカ粒子が表面処理されて4級アンモニウム基が粒子表面に結合し等電点が高pH側に移行したことがわかる。
【0103】
比較例1の製造方法では4級アンモニウム基を有するシランカップリング剤を使用して4級アンモニウム基を表面に有するシリカ粒子が得られているものの、このカップリング剤は金属腐食性を有するハロゲン化物イオン(Cl-)を含有していた。また、比較例1では動的光散乱による平均粒子径が34nmから136nmと大きく増加したことから凝集が確認され、また粗大粒子数も実施例5との対比から大きく増加したことがわかる。更に、比較例2および3においても、表面修飾の前後で動的光散乱による平均粒子径と会合比が大きく増加した。