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特許7284580環境中のアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法、通信システムおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】環境中のアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法、通信システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20230524BHJP
【FI】
G16H20/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018559191
(86)(22)【出願日】2017-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017060881
(87)【国際公開番号】W WO2017194447
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102016000048486
(32)【優先日】2016-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507211901
【氏名又は名称】ザンボン ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】マッシミリアーノ ムジオ
【合議体】
【審判長】高瀬 勤
【審判官】渡邊 聡
【審判官】梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-93616(JP,A)
【文献】特開2012-32968(JP,A)
【文献】特開2008-102784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中の少なくとも1つのアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法であって:
a)人の呼吸困難症状に関する情報をモバイルデバイス(1)に記録するステップであって、前記呼吸困難症状に関する少なくとも1つの主観的情報を前記モバイルデバイス(1)のグラフィカルインタフェース(50)を介して前記人から受信するステップと、前記呼吸困難症状に関する少なくとも1つの追加的情報を前記モバイルデバイスによって自動的に生成するステップと、を含み、前記少なくとも1つの主観的情報は、前記呼吸困難症状の考えられ得る原因および前記呼吸困難症状の重症度を含み、前記少なくとも1つの追加的情報は、前記呼吸困難症状が前記人によって感知された場所および前記呼吸困難症状が前記人によって感知された日付および時間を含み、前記場所ならびに前記日付および時間は、前記モバイルデバイス(1)によって自動的に検出される記録ステップと;
b)前記呼吸困難症状に関する前記モバイルデバイス(1)に記録された前記情報の少なくとも一部を共有サーバ(3)上で共有するステップであって、前記情報の少なくとも一部は、前記呼吸困難症状が前記人によって感知された前記場所、前記呼吸困難症状が前記人によって感知された前記日付および時間、および前記呼吸困難症状の前記考えられ得る原因を含むステップと;
c)他のモバイルデバイス(4a,4b,4c)上で、前記共有サーバ(3)から、前記呼吸困難症状に関する前記情報の前記共有された少なくとも一部を受信し、かつ前記呼吸困難症状に関する前記情報の前記共有された少なくとも一部を、前記他のモバイルデバイス(4a,4b,4c)のディスプレイに示されるマップ(71)上に表示するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップa)は、前記呼吸困難症状に関する前記少なくとも1つの追加的情報および前記少なくとも1つの主観的情報を、前記モバイルデバイス(1)のローカルに格納するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)は、前記少なくとも1つの追加的情報および前記少なくとも1つの主観的情報から前記呼吸困難症状を表す信号情報を前記人によって抽出するステップと、前記信号情報を移動無線ネットワーク(2)を介して前記共有サーバ(3)に送信するステップと、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb)において、前記信号情報は、前記呼吸困難症状の前記重症度をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb)は、前記信号情報を、前記共有サーバ(3)上に格納するステップを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)は、前記信号情報を、有限時間にわたって前記共有サーバ(3)上に格納し、かつ前記有限時間の満了時に前記共有サーバ(3)から削除するステップを含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップc)は、前記信号情報に対応する記号(72)を前記マップ(71)上に重ね表示するステップを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップc)は、前記信号情報で指定された前記呼吸困難症状が前記人によって実質的に感知された前記場所に、前記マップ(71)上の前記記号(72)を重ね表示するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記呼吸困難症状に関する前記少なくとも1つの追加的情報および前記少なくとも1つの主観的情報を、前記モバイルデバイス(1)に格納された前記人についての治療ダイアリーデータに追加するステップをさらに含み、前記治療ダイアリーデータは、前記人によって感知されて前記モバイルデバイス(1)に記録された前記呼吸困難症状を時間的順序に配列して構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
環境中の少なくとも1つのアレルゲン濃度を示す情報を提供するための、通信システム(100)であって:
a)人における呼吸困難症状に関する情報を記録するように構成されたモバイルデバイス(1)であって、前記人から、前記モバイルデバイス(1)のグラフィカルインタフェース(50)を介して、前記呼吸困難症状に関する少なくとも1つの主観的情報を受信し、かつ前記呼吸困難症状に関する少なくとも1つの追加的情報を自動的に生成するように構成され、前記少なくとも1つの主観的情報は、前記呼吸困難症状の考えられ得る原因および前記呼吸困難症状の重症度を含み、前記少なくとも1つの追加的情報は、前記呼吸困難症状が前記人によって感知された場所および前記呼吸困難症状が前記人によって感知された日付および時間を含み、前記場所ならびに前記日付および時間は、前記モバイルデバイス(1)によって自動的に検出される、モバイルデバイス(1)と;
b)前記呼吸困難症状に関する前記モバイルデバイス(1)に記録された前記情報の少なくとも一部を、前記モバイルデバイス(1)から受信するように構成され、前記情報の少なくとも一部は、前記呼吸困難症状が前記人によって感知された前記場所、前記呼吸困難症状が前記人によって感知された前記日付および時間、および前記呼吸困難症状の前記考えられ得る原因を含む、共有サーバ(3)と;
c)他のモバイルデバイス(4a,4b,4c)であって、前記共有サーバ(3)から、前記呼吸困難症状に関する前記情報の前記少なくとも一部を受信し、かつ前記呼吸困難症状に関する前記情報の前記少なくとも一部を当該他のモバイルデバイス(4a,4b,4c)のディスプレイに示されるマップ(71)上に表示する、他のモバイルデバイス(4a,4b,4c)と、を含む、通信システム。
【請求項11】
少なくとも1つのコンピュータのメモリ内にロード可能なコンピュータプログラムであって、前記プログラムが前記少なくとも1つのコンピュータによって実行されるときに、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、デジタルデータを処理するための装置および方法の分野に関する。特に、本発明は、環境中のアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法、ならびに当該方法を実施するように構成された通信システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明によれば、「呼吸困難症状」という表現には、鼻呼吸が遮断される感覚、鼻水(鼻の粘膜腺から排出される、無色で、液体状の、漿液性の分泌物)、しばしば口蓋にも影響を及ぼす鼻のかゆみ、およびくしゃみなどの、主にアレルギー性鼻炎に関連する症状と;喘鳴、呼吸困難(息切れ)、胸の閉塞感および咳などの、主にアレルギー性喘息に関連する症状と、が含まれる。
【0003】
詳細な研究は、鼻炎とアレルギー性喘息とが密接に関係していることを示している。実際に、鼻炎患者の約三分の一は喘息にも罹患しており、アレルギー性喘息に罹患している人の大多数に鼻炎症状があることが推定される。これらの理由から、鼻炎と喘息は、実質的に同じ障害として、「United airways disease」(UAD)の名称でグループ化されることがある。
【0004】
前述の呼吸困難症状は、通常、呼吸によって生体に侵入して異常な免疫反応を引き起こす花粉などのアレルゲン環境内にいることによって引き起こされる。
【0005】
環境中の様々な種類の花粉の濃度は、通常、領域にわたって配置された粒子測定装置のネットワークによって検出される。粒子測定装置によって提供されるデータは、該データをユーザが参照できるように、(例えば、インターネットサイト上に)公開されている花粉掲示板に集められる。花粉掲示板は、一般に、エリアのリスト(例えば、領域に分割されたインタラクティブマップの形態)と、各エリアについての、各種類の花粉の平均濃度(例えば、なし、低、中、高)の表示と、を含む。
【0006】
アレルギー性鼻炎および/またはアレルギー性喘息に罹患している人は、花粉掲示板を参照して、彼らにとって関心のあるエリアを選択し、該選択エリア内における様々な種類の花粉の平均濃度を見ることができる。したがって、彼女/彼がある地域に行くことを決めた場合、その人がアレルギー性鼻炎および/または喘息アレルギーに関連する1つ以上の症状を発症するリスクにさらされるかどうかを事前に調べることができ、リスクがある場合にどの措置を講じるかを決定することができる(例えば、彼女/彼は、症状を打ち消すための薬を服用したり、そのエリアに行かないことを決定したりすることができる)。
【0007】
出願人は、粒子測定装置によって検出されたデータから得られる花粉掲示板が完全に信頼できるものではないことを観察した。
【0008】
前述のデータは、実際には定期的に、典型的には週に一度だけ更新される。したがって、例えば、気象条件の突然の変動に因る、より短いタイムスケールにおける花粉濃度の変動が考慮されていない。
【0009】
さらに、花粉掲示板は、比較的広いエリア、典型的には地域内の花粉の平均濃度を提供している。しかしながら、アレルゲン濃度は、そのエリア内のある場所と別の場所とで著しく変化し得る。例えば、速報に示されている特定のエリアにおけるアレルゲンの平均濃度は、その人が行くことを望んでいる正確な場所での実際の濃度よりも著しく低い場合がある。この場合、その人は、不利な方法で無意識のうちにアレルギー性喘息および/またはアレルギー性鼻炎発作のリスクにさらされることになる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上述の問題の少なくとも1つを解決する、環境中のアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法を提供することにある。
【0011】
特に、本発明の目的は、(一般に、アレルギー性喘息および/または鼻炎発作に関連する)呼吸困難症状を患っている人に、アレルゲンの実際の濃度に関する(花粉掲示板に示される情報に比し)より正確な情報を提供することを可能にする、環境中のアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法を提供し、これらの人が無意識のうちにアレルギー性喘息および/またはアレルギー性鼻炎発作にさらされるリスクを最小限に抑えることにある。
【0012】
本発明の実施形態によれば、(おそらく、環境中のアレルゲンの存在に因って)呼吸困難症状を感知した人は、彼女/彼のモバイルデバイスを使用して感知した症状に関する情報を記録する。その記録は、感知された呼吸困難症状に関する主観的情報を、モバイルデバイスのグラフィカルインタフェースを介して提供することを含む。モバイルデバイスは、自動的に生成された客観的情報を用いて、感知された症状に関する情報を完成させる。次いで、感知された症状に関する記録された情報の少なくとも一部は、共有サーバ上のモバイルデバイスによって共有される。任意の他のモバイルデバイスは、感知された症状に関する記録情報の共有部分を共有サーバから受信し、それをディスプレイに示されたマップ上に表示することができる。
【0013】
したがって、基本的に、本発明によれば、呼吸困難症状を患っている人のモバイル端末に表示される花粉情報は、呼吸困難症状を感知した人が自身のモバイル端末に記録した共有情報によって修正または完成されたものである。
【0014】
このことは、花粉掲示板に示されるものと比較して、実際のアレルゲン濃度に関するより正確な情報が提供されるという利点をもたらし、これによって、呼吸困難症状を患っている人が無意識のうちにアレルギー性喘息および/またはアレルギー性鼻炎発作にさらされるリスクを最小限に抑えることが可能になる。
【0015】
まず第1に、実際に、感知された呼吸困難症状についての記録情報は、特に信頼できるものである。(その人が常に所持している)彼女/彼のモバイルデバイスのグラフィカルインタフェースとやり取りすることによって、その人は実際に、その事象が終了するとすぐに、各呼吸困難症状に関する主観的および客観的情報を、彼女/彼のモバイルデバイスに容易に記録することができる。したがって、その人が(数日または数週間にわたって物事を記憶しようとする必要がなく)主観的情報を直ちに提供し、また、その主観的情報がモバイルデバイスによって自動的に生成された客観的情報を用いて完成される、という両方の理由から、感知された各症状に関する情報は有利に完全で信頼できるものである。
【0016】
さらに、感知された呼吸困難症状に関する記録情報は、空間的視点および時間的視点の両方から、花粉掲示板から得られるものよりも正確である。そのような情報(および、特に客観的情報)は、花粉掲示板が通常、比較的広いエリアにおける平均的な花粉濃度を提供するのとは対照的に、症状が感知された正確な場所を実際に特定することができる。さらに、そのような情報は、感知された事象の終了後に、実質的にリアルタイムで記録され、かつ共有され得る。したがって、そのような情報には、(例えば、気象条件の突然の変動による)非常に短いタイムスケールにわたる花粉濃度の変動が反映され得る。
【0017】
例えば、おそらくモクセイ科の植物によって引き起こされる非常に重度の呼吸困難症状(例えば、喘息発作の症状)のある人が、花粉掲示板によれば、この種の花粉濃度が低いはずのエリア内に位置する場所にいる場合、その人は、彼女/彼のモバイルデバイスに記録されている彼女/彼の症状に関する情報の少なくとも一部を他の人と共有することができる。このようにして、例えば、その場所におけるモクセイ科の植物の濃度がおそらく速報に示されているよりも高い、という事実が他の人に有利に通知されるため、他の人は、アレルゲンに対して偶発的にさらされることを避けることができる。
【0018】
第1の態様によれば、本発明は、環境中の少なくとも1つのアレルゲン濃度を示す情報を提供するための方法を提供し、当該方法は:
a)人の呼吸困難症状の感知に関する情報をモバイルデバイスに記録するステップであって、感知された呼吸困難症状に関する少なくとも1つの主観的情報をモバイルデバイスのグラフィカルインタフェースを介して人から受信するステップと、感知された呼吸困難症状に関する少なくとも1つの客観的情報を自動的に生成するステップと、を含む記録ステップと;
b)感知された呼吸困難症状に関するモバイルデバイスに記録された情報の少なくとも一部を共有サーバ上で共有するステップと;
c)他のモバイルデバイス上で、共有サーバから、感知された呼吸困難症状に関する情報の共有された少なくとも一部を受信し、かつ感知された呼吸困難症状に関する情報の共有された少なくとも一部を、他のモバイルデバイスのディスプレイに示されるマップ上に表示するステップと、を含む。
【0019】
好ましくは、ステップa)において、少なくとも1つの主観的情報を受信するステップは、感知された呼吸困難症状の考えられ得る原因の表示および/または感知された呼吸困難症状の重症度の表示を受信するステップを含む。
【0020】
好ましくは、ステップa)において、少なくとも1つの客観的情報を自動的に生成するステップは、症状が感知された場所および/または症状が感知された日付および時間を自動的に生成するステップを含み、場所ならびに日付および時間は、モバイルデバイスによって自動的に検出される。
【0021】
有利な実施形態によれば、ステップa)は、感知された呼吸困難症状に関する少なくとも1つの客観的情報および少なくとも1つの主観的情報を、モバイルデバイスのローカルに格納するステップをさらに含む。
【0022】
好ましくは、ステップb)は、少なくとも1つの客観的情報および少なくとも1つの主観的情報から感知された呼吸困難症状に関する信号情報を抽出するステップと、信号情報を移動無線ネットワークを介して共有サーバに送信するステップと、を含む。
【0023】
有利な実施形態によれば、ステップb)において、信号情報は、症状が感知された場所、症状が感知された日付および時間、および感知された呼吸困難症状の考えられ得る原因の表示を含む。
【0024】
任意に、ステップb)において、信号情報は、感知された呼吸困難症状の重症度の表示をさらに含む。
【0025】
好ましくは、ステップb)は、信号情報を、匿名かつ追跡不可能な方法で共有サーバ上に格納するステップを含む。
【0026】
付加的または代替的に、ステップb)は、信号情報を、有限時間にわたって共有サーバ上に格納し、かつ有限時間の満了時に共有サーバから削除するステップを含む。
【0027】
有利な実施形態によれば、ステップc)は、信号情報に対応するインジケータ記号をマップ上に示すステップを含む。
【0028】
好ましくは、ステップc)は、信号情報で指定された症状が実質的に感知された場所に、マップ上のインジケータ記号を示すステップを含む。
【0029】
好ましくは、ステップc)は、インジケータ記号の手動選択時に、他のモバイルデバイスのディスプレイ上に、信号情報を含むポップアップメニューを示すステップを含む。
【0030】
任意に、この方法は、人の治療ダイアリーにおける、感知された呼吸困難症状に関する少なくとも1つの客観的情報および少なくとも1つの主観的情報を、モバイルデバイスに格納された人の治療ダイアリーに入力するステップをさらに含み、治療ダイアリーは、人によって感知されてモバイルデバイスに記録された呼吸困難症状の時間的に順序付けられたリストを含む。
【0031】
第2の態様によれば、本発明は、環境中の少なくとも1つのアレルゲン濃度を示す情報を提供するための、通信システムを提供し、当該通信システムは:
a)人における呼吸困難症状の感知に関する情報を記録するように構成されたモバイルデバイスであって、人から、モバイルデバイスのグラフィカルインタフェースを介して、感知された呼吸困難症状に関する少なくとも1つの主観的情報を受信し、かつ感知された呼吸困難症状に関する少なくとも1つの客観的情報を自動的に生成するように構成された、モバイルデバイスと;
b)感知された呼吸困難症状に関するモバイルデバイスに記録された情報の少なくとも一部を、モバイルデバイスから受信するように構成された、共有サーバと;
c)他のモバイルデバイスであって、共有サーバから、感知された呼吸困難症状に関する情報の共有された少なくとも一部を受信し、かつ感知された呼吸困難症状に関する情報の共有された少なくとも一部を当該他のモバイルデバイスのディスプレイに示されるマップ上に表示する、他のモバイルデバイスと、を含む。
【0032】
第3の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのコンピュータのメモリ内にロード可能なコンピュータプログラム製品であって、プログラムが少なくとも1つのコンピュータによって実行されるときに、前述の方法を実行するように構成された、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0033】
本発明を、非限定的な実施例によって提供される添付の図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に従う、環境中のアレルゲン濃度を示す情報を提供するための通信システムを示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に従う、図1の通信システムのモバイルデバイスのディスプレイに表示されるメイン画面を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に従う、図2のモバイルデバイスの動作のフローチャートである。
図4】花粉掲示板が開かれた図2の画面を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に従う、モバイルデバイスのディスプレイに表示されるメニュー画面を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に従う、モバイルデバイスのディスプレイに表示される記録画面を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に従う、モバイルデバイスのディスプレイに表示される通知画面を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に従う、モバイルデバイスのディスプレイに表示されるダイアリー画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に従う、環境中のアレルゲン濃度を示す情報を複数のモバイルデバイスに提供するための通信システム100を示す概略図である。
【0036】
通信システム100は、モバイルデバイス1、移動無線ネットワーク2、共有サーバ3、および複数の他のモバイルデバイス4a,4b,4cを含む。モバイルデバイス1は、モバイルデバイス4a,4b,4cも接続されている移動無線ネットワーク2によって共有サーバ3に接続されていることが好ましい。
【0037】
モバイルデバイス1,4a,4bおよび4cは、例えば、GSM(汎欧州デジタル移動電話方式)ネットワーク、UMTS(ユニバーサル移動体通信システム)ネットワーク、LTE(ロングタームエボリューション)ネットワークなどの移動無線ネットワークに自動的に接続することができるポータブルデバイスであることが好ましい。好適な実施形態によれば、モバイルデバイス1,4a,4b,4cは、移動無線接続を備えるスマートフォンまたはタブレットである。
【0038】
モバイルデバイス1,4a,4bおよび4cは、それぞれのモバイルデバイス1,4a,4b,4cの位置を自動的に検出することができるジオローカリゼーションモジュール(不図示)を備えることがさらに好ましい。好適な実施形態によれば、モバイルデバイス1,4a,4b,4cのローカリゼーションモジュールはGPS(全地球測位システム)受信機であり、これは周知のように、衛星ネットワークによって位置付けられて、衛星ネットワークからその地理的座標を受信することができる。
【0039】
図2に概略的に示されるモバイルデバイス1は、人の呼吸困難症状の感知に関する情報の記録を可能にする、ソフトウェアコンポーネント(不図示)を備えることが好ましい。ソフトウェアコンポーネントの動作については、図3のフローチャートを参照して以下に詳細に説明する。
【0040】
モバイルデバイス1のソフトウェアコンポーネントが、モバイルデバイス1を初めて使用する人によって(例えば、彼女/彼のモバイルデバイス1のディスプレイに表示された適切なアイコンを選択することによって)開始されると、好ましくは一連の予備画面(不図示)が表示される(ステップ20)。これらの予備画面は、好ましくは以下の画面を含む:
・予備的な契約条件画面であって、ソフトウェアコンポーネントの使用前に受諾しなければならないソフトウェアコンポーネントの使用条件をその人に知らせる画面;
・予備的な情報画面であって、ソフトウェアコンポーネントの機能の簡単な説明を提供する画面(詳細については後述する);
・予備的なプロフィール画面であって、これによってその人が特定の個人データ(性別、誕生日、医師によるアレルギー性喘息および/またはアレルギー性鼻炎の診断の有無、診断がある場合に特定の治療が医師によって処方されているか否かなど)を提供することができる画面。この個人データは、モバイルデバイス1のローカルにのみ格納されて、リモートアクセスすることも、モバイルデバイス1が接続されている移動無線ネットワークを介して利用することもできないことが好ましい;
・予備的なテスト画面であって、彼女/彼のアレルギー性喘息および/または彼女/彼のアレルギー性鼻炎の重症レベルの要約表示を得ることができるように、その人に多数の質問をする画面。例えば、テストは、国際GINA(喘息のグローバルイニシアチブ)2014ガイドラインに従っていてもよい。テスト結果もまた、モバイルデバイス1のローカルにのみ格納され、リモートアクセスすることも、モバイルデバイス1が接続されている移動無線ネットワークを介して利用することもできない。
【0041】
予備画面が表示された後、図2に示すメイン画面10がモバイルデバイス1のディスプレイに表示される(ステップ21)ことが好ましい。
【0042】
メイン画面10は、場所の名称と、温度、気象条件、風、湿度、雨、紫外線などのその場所の気象情報と、を示す気象ウィンドウを含むことが好ましい。例えば、図2に示す実施形態において、気象ウィンドウは、2つのサブウィンドウ11a(名称、場所、気温および気象状況を含む)と、11b(風、湿度および紫外線を含む)と、に分割されている。気象ウィンドウに表示される場所は、上述のジオローカライゼーションモジュールによって自動的に検出されるモバイルデバイス1の位置とすることができる。代替的に、気象ウィンドウ11に表示される場所は、選択可能な場所のリストを開く適切なアイコン11cを選択することによって、モバイルデバイス1を使用する人によって選択されてもよい。
【0043】
メイン画面10はまた、花粉ウィンドウ12を含み、該花粉ウィンドウ12は、選択されると花粉掲示板12b(図4参照)を表示するように花粉ウィンドウ12を広げるアイコン12aを含むことが好ましい。花粉掲示板12bは、気象ウィンドウ11に示される場所を含む地理的エリア(例えば、地域)における、様々な種類の花粉の平均濃度の指標を含んでいることが好ましい。
【0044】
気象ウィンドウに示される気象情報および花粉掲示板12bに示される平均濃度は、気象予測と、3Bmeteo,Accuweatherなどの環境モニタリングサービスと、から取得されることが好ましい。
【0045】
メイン画面10はまた、選択されると図5に概略的に示すメニュー画面40を開く、メニューアイコン13を含む。メニュー画面40は、複数のキーを含み、それぞれのキーは、メニューのそれぞれの項目に対応している。特に、メニュー画面40は、以下のキーの少なくとも1つを含むことが好ましい:
・メイン画面10に戻ることができる第1のキー41;
・地図(以下で、より詳細に説明する)を開く第2のキー42;
・グラフィカルインタフェース(不図示)を開く第3のキーであって、これによってその人が薬(アレルギー性喘息および/またはアレルギー性鼻炎の治療のためでなくてもよい)を服用しなければならない日時のアラームを設定することができるキー;
・アレルギー性喘息および/またはアレルギー性鼻炎の病態、その原因や症状などに関する一般情報を含む、情報画面(不図示)を開く第4のキー44;
・記録用グラフィカルインタフェース(以下でより詳細に説明する)を開く第5のキー45;
・治療ダイアリー(以下で、より詳細に説明する)へのアクセスを可能にする第6のキー46;
・彼女/彼のアレルギー性喘息および/または彼女/彼のアレルギー性鼻炎の重症度の要約表示を取得するために、その人が上述のテストを繰り返すことを可能にする第7のキー47;
・ソフトウェアコンポーネントの起動時に作成された彼女/彼のプロフィールへその人がアクセスできるようにし、また、その人が任意に当該プロフォールを変更できるようにする第8のキー48と;
・ソフトウェアコンポーネントの設定(例えば、プロフィールおよび/または治療ダイアリーにアクセスするためのパスワード設定)へその人がアクセスできるようにする第9のキー49。
【0046】
これらのキーのいくつかは、さらなる利便性のために、メイン画面10にも存在する。モバイルデバイス1を使用する人が、ソフトウェアコンポーネントの対応する機能に直接アクセスできるようにするためである。特に、図2に示すメイン画面10に戻ると、該メイン画面10は、以下のキーをさらに含むことが好ましい:
・メニュー画面40のキー45と同様に、記録用グラフィカルインタフェース(以下で、より詳細に説明する)を開くキー14;
・メニュー画面40のキー42と同様に、地図を開くキー15(以下でより詳細に説明する);および
・メイン画面40のキー49と同様に、その人がソフトウェアコンポーネントの設定(例えば、プロフィールおよび/または治療ダイアリーへアクセスするためのパスワード設定)にアクセスできるようにするキー16。
【0047】
図3のフローチャートを再び参照すると、本発明の実施形態によれば、呼吸困難症状(例えば、アレルギー性鼻炎および/またはアレルギー性喘息)の感知の終了時に、ソフトウェアコンポーネントは、感知された呼吸困難症状に関する情報をその人がモバイルデバイス1に記録できるようにすることが好ましい。
【0048】
特に、ソフトウェアコンポーネントは、その人がメイン画面10のキー14、または代替的に、メニュー画面40のキー45を押したときに、その人が呼吸困難症状の感知に関する情報の記録を望んでいると決定する(ステップ22)ことが好ましい。
【0049】
その人がキー14または45を押すと、図6に概略的に示す記録用グラフィカルインタフェース50がモバイルデバイス1のディスプレイに表示されることが好ましい。
【0050】
記録用グラフィカルインタフェース50は、感知された呼吸困難症状に関する主観的情報、すなわち、症状に罹患している人の知覚によって取得された情報をその人が入力できるように構成されている。この主観的情報は、症状の発症を引き起こした原因(すなわち、アレルゲンの種類(周辺環境に存在する樹木の種類を観察することによって、その人が推測することができる))および/または症状の重症度を含むことが好ましい。この目的のために、好ましい変形例によれば、記録用グラフィカルインタフェース50は、以下のメニューを含む:
・その人によって選択され得るアレルゲンのリストを含むプルダウンメニュー51と、
・症状の重症度の直感的なレベル(例えば、軽度または重度)をそれぞれ示すアイコン(例えば、2つ)を含む、症状重症度選択ウィンドウ52。
【0051】
記録用グラフィカルインタフェース50は、例えば、症状が発症したときに彼女/彼が行っていた活動や症状に抗するために服用した薬など、呼吸困難症状の感知に関するメモをその人が追加することができるウィンドウ53を含むことができる。
【0052】
さらに、記録用グラフィカルインタフェース50は、モバイルデバイス1によって自動的に生成された、感知された呼吸困難症状に関する客観的情報を表示するように構成されていることが好ましい。この客観的情報は、症状が感知された場所、ならびに症状が感知された日付および時間を含むことが好ましい。この目的のために、好適な変形例によれば、記録用グラフィカルインタフェース50は以下のウィンドウを含む:
・日付および時間を表示および修正するためのウィンドウ54であって、移動無線ネットワークを介してモバイルデバイス1によって検出された日付および時間が示されているウィンドウ54と、
・場所を表示および修正するためのウィンドウ55であって、モバイルデバイス1の地理座標モジュールによって検出された該モバイルデバイス1の現在の位置が示されているウィンドウ55。
【0053】
好ましくは、例えば、症状が消えてから数時間後もしくは数日後に記録を作成した場合、および/または、症状が感知された場所を離れた後に記録を作成した場合、ウィンドウ54に示される日付および時間、ならびにウィンドウ55に示される位置は両方ともに、その人によって修正可能である。
【0054】
記録用グラフィカルインタフェース50は、共有キー56をさらに含み、該共有キー56の機能については、以下により詳細に説明する。記録用グラフィカルインタフェース50は、上述の主観的および客観的情報をローカルに保存できるようにする保存キー57をさらに含むことが好ましい。
【0055】
図3を再び参照すると、記録用グラフィカルインタフェース50がいったん表示されたら、ソフトウェアコンポーネントは、記録用インタフェースのプルダウンメニュー51および重症度選択ウィンドウ52を介して、その人が提供する主観的情報を受信する(ステップ24)ことが好ましい。ステップ24の間、ソフトウェアコンポーネントは、記録用グラフィカルインタフェース50のウィンドウ53および54を介して、その人によってなされる客観的情報に対する任意の修正も受信することが好ましい。
【0056】
その人の呼吸困難症状の感知に関する客観的および主観的情報は、次いで、もバルデバイス1のローカルに格納される(ステップ25)ことが好ましい。保存は、保存キー57を押すことによって、その人により開始されることが好ましい。
【0057】
したがって、有利には、彼女/彼のモバイルデバイス1(彼女/彼が常に所持している)の記録用グラフィカルインタフェース50を介してやり取りすることによって、その人は、各呼吸困難事象に関する主観的情報および客観的情報を、該事象の終了後すぐに彼女/彼のモバイルデバイス1に容易に記録することができる。したがって、各呼吸困難事象に関する情報は、その人が主観的情報を即座に提供している(物事を数日または数週間後に思い出す必要がない)ことと、その主観的情報がモバイルデバイス1によって自動的に生成された客観的情報を用いて完成されていることと、の両方の理由から、完全かつ信頼性が高いという利点がある。
【0058】
図3に示すフローチャートを再び参照すると、ステップ25において、感知された困難症状に関する主観的および客観的情報を記録している間に、その人は、好ましくは同様のソフトウェアコンポーネントを実行しているモバイルデバイス4a,4b,4cのユーザに通知を送信すること、すなわちこの情報(以下、「信号情報」という)の一部を共有することを決定することができる。通知または共有を開始するために、その人は、記録用グラフィカルインタフェース50にあるキー56を選択することが好ましい。
【0059】
ソフトウェアコンポーネントは、記録ステップ25の終了時にキー56が選択され、したがってその人が通知を送信することを望んでいると判断すると、その人は、記録された主観的および客観的情報から信号情報を抽出し、当該信号情報を図1に示す共有サーバ3に送信する(ステップ27)ことが好ましい。
【0060】
上述したように、モバイルデバイス1は、該モバイルデバイス1のものと同様のソフトウェアコンポーネントを備える他の人のモバイルデバイス4a,4b,4cが接続されている移動無線ネットワーク2によって共有サーバ3に接続されている。
【0061】
好ましくは、ステップ27の間に、モバイルデバイス1のソフトウェアコンポーネントは、例えば、感知された呼吸困難症状の発症を引き起こした場所、日付およびアレルゲン、ならびに任意に、感知された症状の重症度を含む信号情報を共有サーバ3に送信する。
【0062】
信号情報は、匿名で追跡不可能な方法で共有サーバ3に格納されて、信号情報と該信号情報が送信されたモバイルデバイス1との間に何らの接続も確立され得ないことが好ましい。このようにして、その人のプライバシーが有利に保護される。さらに、信号情報は、例えば24時間などの有限時間の間、共有サーバ3に格納され、その終了時には削除される。
【0063】
その通知は、有利には、モバイルデバイス1のものと同様のソフトウェアコンポーネントを備える他の人のモバイルデバイス4a,4b,4cによって表示され得る。特に、モバイルデバイス4a,4b,4cのいずれかを使用する人は、彼女/彼のモバイルデバイスのディスプレイに表示されるメイン画面のキー15(または、メニュー画面40のキー42)を選択することができる。これらの2つのキーのいずれかを選択すると、図7に概略的に示す通知画面70が開く。
【0064】
通知画面70は、マップ71を示すことが好ましい。ジオローカリゼーションデバイスが有効である場合、マップ71は、モバイルデバイス4a,4bまたは4cが位置する場所を示す。そうでなければ、スクロール機能によって地図を好適にナビゲートできることが好ましい。マップ71は、ほかの人によって送信された、モバイルデバイス4a,4bまたは4cが位置する地域の近傍で感知された呼吸困難症状に関する通知を示すことが好ましい。例えば、図7に例示的に示されたマップ71は、3つのインジケータ記号72,73,74を示しており、それらの各々が個々の通知を表している。例えば、インジケータ記号72は、図3に示すフローチャートのステップ27を実行しているモバイルデバイス1を使用している人によって送信された通知に対応し得る。好ましくは、インジケータ記号72,73または74が選択されると、すべての信号情報を含むポップアップウィンドウが開く。
【0065】
モバイルデバイス1を使用している人によって、ならびにモバイルデバイス4a,4bおよび4cを使用している他の人によって共有される呼吸困難症状の感知に関する通知は、花粉掲示板12bに含まれる情報を完成または修正することを有利に可能にする。例えば、モバイルデバイス1を使用している人が、おそらくモクセイ科植物によって引き起こされた非常に重度の呼吸困難症状(例えば、喘息発作の1つ以上の症状)を、花粉掲示板12bによればこの種の花粉濃度が低いはずであるとされているエリアに位置する場所で感知した場合、その人は、モバイルデバイス4a,4bおよび4cを使用している人に、この症状の感知について通知することを決定することができる。このようにして、モバイルデバイス4a,4bおよび4cを使用する人は、その場所におけるモクセイ科植物の濃度が、花粉掲示板12bに示されるよりも高いであろう事実を有利に通知される。
【0066】
好ましくは、共有サーバ3とモバイルデバイス1,4a,4b,4cとの間の信号情報の交換は、送信元と受信者との間の安全な通信(エントツーエンドの原理)をTCP/IPネットワーク(インターネットなど)上で可能にし、かつ輸送レベルを超えて動作する場合、認証、データの完全性、および暗号化のための機能を提供する、暗号プトロコルで管理される接続によって実行される。例えば、信号情報の交換は、SSL(Secure Socket Layer)証明書を使用して実行することができる。さらに、好ましくは、信号情報は、送信前に、例えば既知のトリプルDES(データ暗号化基準)アルゴリズムを使用して暗号化されることが好ましい。
【0067】
共有サーバ3は、クラウドサーバ技術を使用して実装されること、すなわちサービスプロバイダのデータセンタに物理的に配置された一連の実サーバとして実装されることが好ましい。クラウドサーバ技術は、高い信頼性(実サーバを停止する必要がある場合でも、システムハードウェアはサービスをアクティブに保つことができる)とスケーラビリティ(最初に所与の記憶容量および帯域幅を使用してから増幅することができる)を有利に保証する。例えば、共有サーバ3は、高可用性SAN(ストレージエリアネットワーク)を有するN+1冗長構成のマルチプロセッサマシン上で実装することができる。すべてのクラウドサーバシステムは、Web(起動、スイッチオフ、監視)、IPv4およびIPv6専用ネットワーク、オーバーブッキングなしの専用仮想環境、SANベースのストレージ、および99.90%保証されたアップタイムを介してクラウドサーバを完全に制御することが好ましい。
【0068】
図3に示すフローチャートを再び参照すると、感知された症状に関する主観的および客観的情報は、ステップ25の間にいったんローカルに格納されると、同様にモバイルデバイスのローカルに格納されている治療ダイアリーに自動的に入力される(ステップ28)ことが好ましい。この治療ダイアリーは、本質的に、その人によって感知されてモバイルデバイス1に記録されたすべての呼吸困難症状が時間的に順序付けられたリストである。したがって、モバイルデバイス1に感知事象を次々に記録することは、医師による最適な治療法の確立を可能にする、完全かつ信頼性の高い治療ダイアリーを自動編集するという利点をもたらす。
【0069】
治療ダイアリーは、例えば、図5に示すメニュー画面40のキー46を選択することによって、モバイルデバイス1上の人が参考にすることができる。好ましくは、その人がキー46を選択すると、ソフトウェアコンポーネントは、その人がメイン画面10のキー16からアクセス可能な設定画面を介して入力することができるパスワードを求める。好ましい変形例によれば、ソフトウェアコンポーネントは、個人がダイアリーにアクセスするためのパスワードを覚えていない場合に、秘密の質問を伴うセキュリティメカニズムを構想することができる。いったんその人が彼女/彼の治療ダイアリーにアクセスすると、それは、図8に示すダイアリー画面80内に、モバイルデバイス1のディスプレイ上に表示される。
【0070】
図8に示すように、ダイアリー画面80は、その人によって感知されてモバイルデバイス1に記録された、呼吸困難症状の時間的に順序付けられたリストを含むことが好ましい。感知された各症状について、ダイアリーは、その症状の重症度の指標81(例えば、アイコン形態)と、症状を特定する情報82(例えば、日付およびアレルギー)を示す。さらに、感知されて記録された各症状について、修正キー83および削除キー84が示され、修正キーを選択すると、症状に関する主観的および客観的情報を修正することができ、削除キーを選択すると、その症状の感知を治療ダイアリーから削除することができる。
【0071】
さらに、ダイアリー画面80はまた、以下の情報項目のうちの1つ以上を任意に含むことができる:
・日付および現在時刻と;
・呼吸困難症状が最後に感知されてからの経過時間(例えば、日数)。
【0072】
さらに、ダイアリー画面80はまた、以下のキーの1つ以上の任意に含むことができる:
・症状の感知を記録するためのキー85であって、メイン画面10のキー14およびメニュー画面40のキー45と同様に、記録用グラフィカルインタフェース50を開くことができるキーと;
・マップにアクセスするためのキー86であって、メイン画面10のキー15およびメニュー画面40のキー42と同様に、マップ71を開くことができるキー。
【0073】
ソフトウェアコンポーネントは、モバイルデバイス1に格納された治療ダイアリーを、その人が簡単な方法で彼女/彼の医師に送ることができるように構成されていることが好ましい。そのために、ダイアリー画面は、送信キー87をさらに含んでいることが好ましく、送信キー87は、その人に選択されると、モバイルデバイス1が治療ダイアリーを所定の受信者に、例えば電子メールの形式で彼女/彼の医師の電子メールアドレス宛に送信するようにする。このようにして、医師は、最も適切な治療の確立を可能にする、完全かつ信頼性の高い治療ダイアリーを有利に受け取ることができる。
【0074】
有利な変形例によれば、ソフトウェアコンポーネントは、モバイルデバイス1を使用する人によって該モバイルデバイス1上にダウンロードされ得るアプリケーションである。例えば、ソフトウェアコンポーネントは、DBMS(データベース管理システム)としてMS SQL Serverを使用する.net4.0マイクロソフト環境で開発されたアプリケーションであってもよい。好ましくは、ソフトウェアアーキテクチャはまた、オブジェクト指向インタフェースを用いてデータの永続性に関連するすべてのサービスを提供するORM(オブジェクトリレーショナルマッピング)層の採用を想定し、同時に、使用される特定のDBMSの実装特性を抽出することも想定している。ORM層の使用はまた、使用されるDBMS技術に関して高度の移植性を保証し(DBMSが変更される場合、存続層を実装するルーチンを書き換える必要はない)、変更されるデータへのアクセス中におけるコンフリクトおよびコンペティションを管理し、かつシステムのパフォーマンス機能を改善するためのデータキャッシュメカニズムを提供する。例えば、アプリケーションを開発するために、既知のモバイルクロスプラットフォームフレームワークであるPhoneGapを使用することができ、これにより、HTML、CSSおよびJavaScriptなどのウェブ技術を使用してネイティブアプリケーションを開発することが可能になる。
【0075】
したがって、有利には、彼女/彼のモバイルデバイス(その人が常に所持している)のグラフィカルインタフェースを介してやり取りすることによって、その人は、各呼吸困難事象に関する主観的情報および客観的情報を、その事象が終了したらすぐに、彼女/彼のモバイルデバイスに容易に記録することができる。したがって、各困難事象に関する情報は、有利に完全かつ信頼性のあるものである。したがって、困難事象をモバイルデバイス上に次々に記録することは、完全かつ信頼性の高い治療ダイアリーの自動編集をもたらすという利点がある。さらに、その人の困難症状の各感知に関する情報は、花粉掲示板に掲載された情報を完成させ、または修正するために、同じ障害に罹患している他の人と少なくとも部分的に共有することができる。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8