(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】水系塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20230524BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230524BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20230524BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230524BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230524BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/02
C09D5/08
C09D7/61
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2019015928
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 翔輝
(72)【発明者】
【氏名】片岡 義朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々岡 博昭
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-073776(JP,A)
【文献】特開平04-081472(JP,A)
【文献】特開平11-166153(JP,A)
【文献】特開2009-149791(JP,A)
【文献】特開2016-186021(JP,A)
【文献】特開2006-257142(JP,A)
【文献】特開昭52-051498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 5/02
C09D 5/08
C09D 7/61
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)
および水性樹脂を含有する第1剤と、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤と、
を含み、
前記水性樹脂としてエポキシ樹脂系エマルションを用い、
前記防錆剤の含有量が、前記第1剤の固形分100質量%に対し、1~20質量%である、
水系塗料組成物。
【請求項2】
前記フラッシュラスト抑制剤が、亜硝酸塩および安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の水系塗料組成物。
【請求項3】
前記防錆剤が、リン酸アルミニウム系化合物およびリン酸亜鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の水系塗料組成物。
【請求項4】
前記水系塗料組成物の不揮発分100質量%に対する前記防錆剤の含有量が1~20質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水系塗料組成物。
【請求項5】
前記水系塗料組成物の不揮発分100質量%に対する前記フラッシュラスト抑制剤の含有量が0.01~5質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水系塗料組成物。
【請求項6】
前記防錆剤5.0gを25℃の水100mlに分散させた分散液のpHが9以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の水系塗料組成物。
【請求項7】
前記第2剤がアミン系化合物を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の水系塗料組成物。
【請求項8】
前記アミン系化合物が水溶性アミン系化合物である、請求項
7に記載の水系塗料組成物。
【請求項9】
防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)
および水性樹脂を含有する第1剤と、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤と、
を含み、
前記水性樹脂としてエポキシ樹脂系エマルションを用い、
前記防錆剤の含有量が、前記第1剤の固形分100質量%に対し、1~20質量%である、
水系塗料組成物用キット。
【請求項10】
防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)
および水性樹脂を含有する第1剤を調製する工程、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤を調製する工程、
前記工程で得られた第1剤と第2剤とをそれぞれ貯蔵する工程、および、
前記貯蔵後の第1剤と第2剤とを混合する工程を含
み、
前記水性樹脂としてエポキシ樹脂系エマルションを用い、
前記防錆剤を、前記第1剤の固形分100質量%に対し、1~20質量%の量で用いる、
水系塗料組成
物の製造方法。
【請求項11】
防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)
および水性樹脂を含有する第1剤と、フラッシュラスト抑制剤を含有する第2剤とを含む水系塗料組成
物の貯蔵方法であって、
前記水性樹脂としてエポキシ樹脂系エマルションを用い、
前記防錆剤を、前記第1剤の固形分100質量%に対し、1~20質量%の量で用い、
前記第2剤に前記防錆剤を配合せず、前記第1剤と第2剤とを接触させないように貯蔵する、
水系塗料組成物の貯蔵方法。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の水系塗料組成物または請求項
9に記載のキットから得られる水系塗料組成物を乾燥または硬化する工程を含む、防食塗膜の製造方法。
【請求項13】
基材に、請求項1~
8のいずれか1項に記載の水系塗料組成物または請求項
9に記載のキットから得られる水系塗料組成物を塗装する工程、および、
塗装された前記水系塗料組成物を乾燥または硬化させて防食塗膜を形成する工程
を有する防食塗膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系塗料組成物、水系塗料組成物用キット、水系塗料組成物の製造方法、水系塗料組成物の貯蔵方法、防食塗膜の製造方法および防食塗膜付き基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の鉄鋼構造物には、これらを長期にわたり使用することなどを目的として、エポキシ樹脂系防食塗料などの防食塗料が塗装されている。
近年、このような防食塗料としては、環境面等への配慮による有機溶剤排出規制の強化に伴い、塗料の水性化が進んでおり、バインダー樹脂として水性エマルションや水溶性樹脂などを使用した水を含む塗料(水系塗料)が使用される傾向にある。
【0003】
このような水系塗料を活性な鋼材表面などに塗装する場合、塗装直後から乾燥過程において、該鋼材表面から鉄イオンが溶出することなどに起因する発錆、およびその錆などが塗膜表面に浮き出てくるフラッシュラストが発生することがある。特に、高温多湿条件下において、フラッシュラストの発生が顕著となる傾向にある。
【0004】
このフラッシュラストの発生を抑制することを目的として、水系防食塗料にはフラッシュラスト抑制剤が使用されている。
特許文献1には、このようなフラッシュラスト抑制剤を用いる水系防食塗料が開示されている。
この特許文献1に記載されているように、フラッシュラスト抑制剤としては、亜硝酸ナトリウムが知られており、特許文献2や3には、このような亜硝酸ナトリウムを用いた水系塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-259854号公報
【文献】特開平11-166153号公報
【文献】特開2016-186021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、塗料は、調製してから塗装までの期間貯蔵され、使用(塗装)される。前記文献に記載の塗料などの従来の水系塗料は、フラッシュラスト抑制剤が配合されていても、このように、塗料を調製してからある程度の期間経過後に塗装すると、特に、耐フラッシュラスト性(フラッシュラスト抑制性)が十分ではないことが分かった。
また、優れた防食性(防錆性)が求められる場合には、防錆剤が使用されるが、この防錆剤とフラッシュラスト抑制剤との両者を含有する塗料を調製してからある程度の期間経過後に塗装すると、よりフラッシュラストが起こりやすい傾向にあることが分かった。従来、長期貯蔵後であっても、優れた防食性と耐フラッシュラスト性とを同時に満足する塗料は知られていなかった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、優れた防食性を有し、かつ、長期(例:3ヶ月)貯蔵後であっても、耐フラッシュラスト性に優れる水系塗料組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、防食性に優れる塗膜を形成可能であり、耐フラッシュラスト性の低下が抑制された水系塗料組成物の製造方法および貯蔵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、特定組成の塗料組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
[1] 防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)を含有する第1剤と、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤と、
を含み、
水性樹脂を含む水系塗料組成物。
【0010】
[2] 前記フラッシュラスト抑制剤が、亜硝酸塩および安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の水系塗料組成物。
【0011】
[3] 前記防錆剤が、リン酸アルミニウム系化合物およびリン酸亜鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]または[2]に記載の水系塗料組成物。
[4] 前記水系塗料組成物の不揮発分100質量%に対する前記防錆剤の含有量が1~20質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
【0012】
[5] 前記水系塗料組成物の不揮発分100質量%に対する前記フラッシュラスト抑制剤の含有量が0.01~5質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
【0013】
[6] 前記防錆剤5.0gを25℃の水100mlに分散させた分散液のpHが9以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
【0014】
[7] 前記第1剤が水性樹脂を含み、かつ、該水性樹脂としてエポキシ樹脂系エマルションを用いる、[1]~[6]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
[8] 前記第2剤がアミン系化合物を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
[9] 前記アミン系化合物が水溶性アミン系化合物である、[8]に記載の水系塗料組成物。
【0015】
[10] 防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)を含有する第1剤と、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤と、
を含み、
水性樹脂を含む水系塗料組成物用キット。
【0016】
[11] 防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)を含有する第1剤を調製する工程、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤を調製する工程、
前記工程で得られた第1剤と第2剤とをそれぞれ貯蔵する工程、および、
前記貯蔵後の第1剤と第2剤とを混合する工程を含む、
水系塗料組成物(ただし、該水系塗料組成物は水性樹脂を含む。)の製造方法。
【0017】
[12] 防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。)を含有する第1剤と、フラッシュラスト抑制剤を含有する第2剤とを含む水系塗料組成物(ただし、該水系塗料組成物は水性樹脂を含む。)の貯蔵方法であって、
前記第2剤に前記防錆剤を配合せず、前記第1剤と第2剤とを接触させないように貯蔵する、
水系塗料組成物の貯蔵方法。
【0018】
[13] [1]~[9]のいずれかに記載の水系塗料組成物または[10]に記載のキットから得られる水系塗料組成物を乾燥または硬化する工程を含む、防食塗膜の製造方法。
【0019】
[14] 基材に、[1]~[9]のいずれかに記載の水系塗料組成物または[10]に記載のキットから得られる水系塗料組成物を塗装する工程、および、
塗装された前記水系塗料組成物を乾燥または硬化させて防食塗膜を形成する工程
を有する防食塗膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る水系塗料組成物は、長期貯蔵後においても良好な耐フラッシュラスト性を有し、(長期)防食性に優れる塗膜を形成することができる。このため、本発明に係る水系塗料組成物は、鉄鋼構造物に好適に使用することができる。
また、本発明によれば、防食性に優れる塗膜を形成可能であり、耐フラッシュラスト性の低下が抑制された水系塗料組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪水系塗料組成物≫
本発明に係る水系塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、防錆剤(ただし、フラッシュラスト抑制剤を除く。以下同様。)を含有する第1剤と、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、前記防錆剤を含有しない第2剤と、
を含み、水性樹脂を含む。
【0022】
これら第1剤および第2剤は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、塗装の際(例:塗装直前)に混合して本組成物とした後に用いられる。つまり、これら第1剤および第2剤は、本組成物を調製するためのキットの構成要素であるともいえ、さらに換言すれば、前記本組成物は、前記第1剤と第2剤とを含み、水性樹脂を含む水系塗料組成物用キットであるといえる。
本発明において、第1剤および第2剤とは、これらの剤を調製した後、本組成物を調製するまでの間貯蔵され得る剤であり、例えば、下記実施例に記載の顔料分散液などは、通常、該分散液を調製した後ほどなくして他の成分と混合するため、本発明における第1剤や第2剤には該当しない。
【0023】
本組成物は、前記第1剤と第2剤とを含めば特に制限されず、用いる成分によっては、前記第1剤および第2剤以外の第3剤などを含む3成分型以上の組成物としてもよいが、本組成物によれば、このような3成分型以上にしなくても、長期貯蔵後においても良好な耐フラッシュラスト性を有する組成物が得られ、(長期)防食性に優れる塗膜を形成することができるため、塗装および貯蔵容易性等の点から、前記第1剤と第2剤とからなる組成物であることが好ましい。
【0024】
前記水系塗料組成物とは、組成物中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、水の含有量が50質量%以上である組成物のことをいい、該水の含有量は、好ましくは70~100質量%、より好ましくは75~95質量%である。
【0025】
<第1剤>
本組成物の第1剤は、防錆剤を含有すれば特に制限されないが、前記効果を奏する組成物を容易に得ることができる等の点から、防錆剤を含有する液体であることが好ましい。
本組成物は、水性樹脂を含む。該水性樹脂は、第1剤、第2剤およびこれら以外の剤のいずれか1つ以上に含まれていればよいが、より耐フラッシュラスト性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、第1剤に含まれていることが好ましい。つまり、この場合、第1剤は主剤である。
【0026】
第1剤は、所望の水系塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、水を含むことが好ましく、水の含有量は、第1剤中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70~100質量%、特に好ましくは80~95質量%である。
【0027】
第1剤が水性樹脂を含む場合、防食性に優れる塗膜を形成できる組成物を容易に得ることができる等の点から、該第1剤は、酸性~弱アルカリ性の液体であることが好ましく、具体的には、25℃におけるpHの値が5~8の液体が好ましい。
第1剤および第2剤のpHは、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
[防錆剤]
防錆剤としては、得られる塗膜に良好な防食性を付与することができる成分であれば特に制限されず、従来公知の防錆剤を用いることができる。
本組成物に用いる防錆剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0029】
防錆剤としては、該防錆剤5.0gを25℃の水100mlに分散させた分散液のpHが、好ましくは9以下、より好ましくは7.5以下であり、また、好ましくは5以上、より好ましくは6以上となる防錆剤が挙げられる。
このような化合物を用いることで、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる。一方、前記pHが9を超える防錆剤を用いると、得られる第1剤が増粘することがあり、貯蔵安定性が低下する場合がある。
なお、前記分散液のpHは、具体的には、防錆剤5.0gと25℃の水100mlとを5分間沸騰し、冷却した後、不溶分を沈降させることで得られる上澄み液のpHを、公知の方法で測定した値である。
【0030】
フラッシュラスト抑制剤と防錆剤とを同一剤に添加し、貯蔵する場合、特に、フラッシュラスト抑制剤と、pHが9以下である防錆剤とを同一剤に添加し、貯蔵すると、フラッシュラストを抑制するというフラッシュラスト抑制剤の効果が発揮されない(フラッシュラスト抑制剤が失活する)傾向にあることが分かった。なお、フラッシュラスト抑制剤と、pHが9以下である防錆剤とを同一剤に添加した場合、該剤のpHをアルカリ側に調整したとしても、局所的な相互作用によると思われるフラッシュラスト抑制剤の失活が起こることがわかった。
このため、本発明における第2剤は防錆剤を含有しない。
本発明では、フラッシュラスト抑制剤の効果が発揮される前記第2剤が存在するため、第1剤には、フラッシュラスト抑制剤を配合してもよいが、このように第1剤に配合したフラッシュラスト抑制剤の効果は発揮され難いことから、製造容易性、コスト、防食性等の点から、第1剤には、フラッシュラスト抑制剤を配合しないことが好ましい。
【0031】
防錆剤としては、防錆顔料であることが好ましく、リン酸系化合物またはホウ酸塩化合物であることがより好ましく、具体例としては、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、モリブデン酸亜鉛系化合物、モリブデン酸アルミニウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、トリポリリン酸亜鉛系化合物、ホウ酸亜鉛系化合物、ホウ酸バリウム系化合物が挙げられる。これらの中でも、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、リン酸アルミニウム系化合物およびリン酸亜鉛系化合物が好ましい。
【0032】
防錆剤としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、より防食性に優れる塗膜を得ることができる等の点で、リン酸系化合物を含む市販品が挙げられるが、防錆効果の向上、コスト等の点から、さらに、該リン酸系化合物以外の金属化合物、金属酸化物および有機塩等を含む複合物である市販品を好適に用いることができる。これらのリン酸系化合物を含む防錆剤の多くは前記pHが9以下を示す。
このような市販品としては、例えば、リン酸亜鉛系としてLFボウセイPW2(キクチカラー(株)製)、リン酸アルミニウム系としてLFボウセイ PM-303W(キクチカラー(株)製)、トリポリリン酸アルミニウム系化合物としてK-WHTE #140W(テイカ(株)製)が挙げられる。
【0033】
本組成物中の防錆剤の含有量は、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~20質量%、より好ましくは3~15質量%である。
一方、第1剤中の防錆剤の含有量は、同様の理由から、第1剤の固形分100質量%に対し、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~20質量%である。
【0034】
本組成物の不揮発分は、本組成物を十分に反応硬化(加熱)した後の塗膜(加熱残分)の質量百分率、または、該塗膜(加熱残分)自体を意味する。前記不揮発分は、JIS K 5601-1-2を基に、本組成物(例えば、第1剤と第2剤とを混合した直後の組成物)1±0.2gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間乾燥させた後、加熱温度105℃で1時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分および該針金の質量を測定することで算出することができる。なお、この不揮発分は、本組成物に用いる原料成分の固形分(分散媒および溶媒以外の成分)の総量と同等の値である。
【0035】
なお、本発明では、第1剤、第2剤およびこれらを構成する各原材料中の分散媒および溶媒(揮発成分)以外の成分を「固形分」という。
【0036】
なお、本発明における防錆剤には、亜鉛(亜鉛合金)粉末は含まれない。
このような亜鉛(亜鉛合金)粉末を水系の剤に配合し、貯蔵すると、貯蔵中に水素が生じ得る。本組成物が使用される環境において、溶接が行われることがあり、このように水素が生じると、この溶接の際の火花によって爆発等が起こる場合があるため、貯蔵され得る水系の剤は亜鉛(亜鉛合金)粉末を含有しないことが好ましい。
本組成物が亜鉛(亜鉛合金)粉末を含有する場合、その含有量は、より安全性に優れる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5質量%以下である。
【0037】
[水性樹脂]
本組成物は、塗膜形成成分として、水性樹脂を含む。
本組成物に用いる水性樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
本発明における「水性樹脂」とは、水または水を主な溶媒もしくは分散媒とする樹脂、または、水と混合可能(水で希釈可能)な樹脂であり、より具体的には、水分散型樹脂、水溶性樹脂および自己乳化性樹脂等が挙げられる。
なお、これらの水性樹脂は、例えば、第1剤中に含まれる他の成分と混合した後において、水性樹脂であったか否かを判断できない場合があるが、このような場合であっても、第1剤等を調製する際の原料として水性樹脂を用いる場合には、本発明では、水性樹脂を含むという。
【0038】
前記水性樹脂は、従来公知の方法、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、ミニエマルション重合法、マイクロエマルション重合法、無乳化剤(ソープフリー)乳化重合法等で合成することができる。また、これらの他に、樹脂を既知の方法、例えば、転相乳化、D相乳化、機械乳化、ゲル乳化、反転乳化、高圧乳化等で乳化させる方法でも、水性樹脂を得ることができる。
【0039】
水性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、およびこれらの変性物が挙げられる。該変性物としては、アクリル変性物、アルキド変性物、エポキシ変性物およびウレタン変性物等が挙げられ、例えば、アルキド変性アクリル樹脂;アクリル変性アルキド樹脂;アクリル変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂;アクリル変性ウレタン樹脂;が挙げられる。ここで、変性物とは、変性量が50質量%未満の樹脂、例えば、アルキド変性アクリル樹脂の場合、樹脂を構成する全てのモノマー成分100質量%に対し、アクリル樹脂を構成するモノマー成分が50質量%を超える樹脂をいう。
【0040】
水性樹脂としては、前述の中でもエポキシ樹脂が好ましく、該エポキシ樹脂は、エマルションの形態で水に分散されている、エポキシ樹脂系エマルションであることが好ましい。なお、エポキシ樹脂系エマルションとしては、例えば、エポキシ樹脂を含む油滴を水性媒体に均一に分散した乳濁液が挙げられる。
エポキシ樹脂系エマルションを含む第1剤に、フラッシュラスト抑制剤を配合し、該第1剤を貯蔵した場合、該フラッシュラスト抑制剤が失活する場合があることが分かった。これは、エポキシ樹脂系エマルションに含まれる乳化剤や、エポキシ樹脂に微量含まれる残留塩素による影響であると考えられる。このため、水性樹脂としてエポキシ樹脂系エマルションを用いる場合、本組成物における第1剤にエポキシ樹脂系エマルションを配合することで、長期貯蔵後においてもより良好な耐フラッシュラスト性を有する組成物が得られ、長期防食性により優れる塗膜を形成することができる。
【0041】
エポキシ樹脂系エマルションは、例えば、転相温度乳化法や、機械乳化法などによって水性媒体中でエポキシ樹脂を強制的に乳化させることにより調製することができる。ここで、使用する乳化剤としては、例えば、アルキル型やアルキルフェノール型のノニオン系界面活性剤;リン酸エステル型、アルキルベンゼンスルホン酸塩型、スルホコハク酸塩型などのアニオン系界面活性剤;が挙げられる。なお、これらの乳化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
前記エポキシ樹脂は、形成する塗膜の耐水性等を考慮し、前記乳化剤の使用量の低減等の点から、変性エポキシ樹脂であってもよい。この変性としては、例えば、エポキシ樹脂と他の化合物とを結合させることによって、乳化力のあるセグメントを分子中に導入して自己乳化型エポキシ樹脂に変性することが挙げられ、より具体的には、ポリオキシアルキレン鎖、水酸基、アミノ基および/またはカルボキシ基等をエポキシ樹脂に導入することが挙げられる。なお、これらの変性エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0043】
前記エポキシ樹脂は、防食性により優れる塗膜が得られる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシとしては、例えば、ビスフェノール骨格を有する化合物とエピハロヒドリンとの共重合体が挙げられ、より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、防食性により優れる塗膜が得られる等の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。なお、これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0044】
エポキシ樹脂系エマルションとしては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、ユカレジン NEP-1110(吉村油化学(株)製)、アデカレジン EM-101-50((株)ADEKA製)、BECKOPOX EP 384w/53WAMP(ALLNEX社製)等が挙げられる。
【0045】
硬化性および防食性等に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、前記エポキシ樹脂の固形分あたりのエポキシ当量は、好ましくは150~6,000、より好ましくは400~3,000である。
【0046】
本組成物中の水性樹脂(固形分)の含有量は、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは20~50質量%、より好ましくは25~45質量%である。
第1剤中の水性樹脂(固形分)の含有量は、同様の理由から、第1剤の固形分100質量%に対し、好ましくは25~55質量%、より好ましくは30~45質量%である。
【0047】
[その他の成分]
第1剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、防錆剤およびフラッシュラスト抑制剤以外のその他の顔料、分散剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、湿潤剤、レオロジー添加剤、造膜助剤、表面調整剤、繊維物質、界面活性剤、有機溶剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、pH調整剤、酸化防止剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0048】
・その他の顔料
塗膜の強度、防食性、色相等の付与などの点から、前記その他の顔料を用いてもよい。該その他の顔料としては、体質顔料、着色顔料等が挙げられ、有機系、無機系の何れであってもよい。本組成物がその他の顔料を含有する場合、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
前記体質顔料としては、従来公知の体質顔料を用いることができ、例えば、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、アルミナホワイト、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスフレーク、プラスチックフレークが挙げられる。
【0050】
本組成物が体質顔料を含有する場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%である。
【0051】
前記着色顔料としては、従来公知の着色顔料を用いることができ、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料、アルミニウムフレーク、鱗片状酸化鉄、ステンレスフレーク等の光沢顔料が挙げられる。
【0052】
本組成物が着色顔料を含有する場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%である。
【0053】
・造膜助剤
本組成物は、水を含有することに起因し、冬季に組成物が凍結することがあるため、また、低温下における成膜性や得られる塗膜の仕上がり外観を向上させる等の点から、造膜助剤を含むことが望ましい。
【0054】
前記造膜助剤としては、水系塗料組成物に通常使用されるものを用いることができ、例えば、炭素数5~10の直鎖状または分岐状の脂肪族アルコール類;芳香環を有するアルコール類;(ポリ)エチレングリコールまたは(ポリ)プロピレングリコール等のモノエーテル類;(ポリ)エチレングリコールエーテルエステル類;(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル類;が挙げられる。
【0055】
<第2剤>
本組成物の第2剤は、フラッシュラスト抑制剤を含有し、防錆剤を含まなければ特に制限されないが、前記効果を奏する組成物を容易に得ることができる等の点から、フラッシュラスト抑制剤を含有し、防錆剤を含まない液体であることが好ましい。
このように、防錆剤を含まないでフラッシュラスト抑制剤を含む剤を用いることで、フラッシュラスト抑制剤の失活が抑制され、長期貯蔵後においても良好な耐フラッシュラスト性を有する組成物が得られる。
【0056】
第2剤は、所望の水系塗料組成物を容易に得ることができ、フラッシュラスト抑制剤を均一に分散させることができる等の点から、水を含むことが好ましく、水の含有量は、第2剤中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55~100質量%、特に好ましくは60~90質量%である。
【0057】
第2剤が前記液体である場合、より耐フラッシュラスト性の低下(フラッシュラスト抑制剤の失活)が抑制され、長期貯蔵後においても良好な耐フラッシュラスト性を有する組成物が得られ、より長期防食性に優れる塗膜を形成することができる等の点から、該第2剤の25℃におけるpHの値は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、特に好ましくは8以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
【0058】
前記水性樹脂として、硬化成分の使用により塗膜を形成できる樹脂を用いる場合、本組成物は硬化成分を含むことが好ましい。該硬化成分は、第1剤、第2剤およびこれら以外の剤のいずれか1つ以上に含まれていればよいが、貯蔵安定性の点からは、水性樹脂とは異なる剤に配合することが好ましい。
【0059】
前述の通り、水性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましく、このエポキシ樹脂の硬化成分としては、従来公知の硬化成分を用いることができるが、これらの中でも、耐フラッシュラスト性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、アミン系化合物を用いることが好ましい。この場合、前記の通り、エポキシ樹脂は第1剤に含まれていることが好ましいため、第2剤にアミン系化合物を配合することが好ましい。つまり、この場合、第2剤は硬化剤である。
アミン系化合物とフラッシュラスト抑制剤とを混合し、貯蔵しても、得られる塗膜の防食性等の性能に悪影響を与えることなく、耐フラッシュラスト性の失活を長期間防ぐことが可能であることが分かった。また、第2剤にアミン系化合物を配合することで、前記pHの第2剤を容易に得ることができるという効果も奏する。
【0060】
[フラッシュラスト抑制剤]
フラッシュラスト抑制剤としては、水系塗料組成物を塗装した際に生じるフラッシュラストを抑制することができる成分であれば特に制限されず、従来公知のフラッシュラスト抑制剤を用いることができる。
本組成物に用いるフラッシュラスト抑制剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0061】
フラッシュラスト抑制剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩;安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アンモニウムなどの安息香酸塩;フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウムなどのフィチン酸塩;セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪酸塩;アルキルリン酸、ポリリン酸などのリン酸誘導体;タンニン酸塩;スルホン酸金属塩;N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、これらのアルカリ金属塩などのアミン系キレート剤;4-メチル-γ-オキソ-ベンゼンブタン酸とN-エチルモルホリンの付加反応物;モノアルキルアミンやポリアミン、第四級アンモニウムイオンなどをトリポリリン酸二水素アルミニウムなどの層状リン酸塩にインターカレートしてなる層間化合物;ヒドラジド化合物、セミカルバジド化合物、ヒドラゾン化合物などのヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0062】
これらの中でも、耐フラッシュラスト性に優れ、安価である等の点から、亜硝酸塩(例:ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩)、安息香酸塩(例:ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩)が好ましく、使用量が少なくても、高い耐フラッシュラスト性を示す組成物を容易に得ることができ、前記第1剤および第2剤を用いる効果がより発揮される等の点から、亜硝酸塩がより好ましく、亜硝酸ナトリウムが特に好ましい。
【0063】
本組成物中のフラッシュラスト抑制剤の含有量は、より耐フラッシュラスト性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%、特に好ましくは0.1~2質量%である。
一方、第2剤中のフラッシュラスト抑制剤の含有量は、同様の理由から、第2剤の固形分100質量%に対し、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1~35質量%である。
【0064】
[アミン系化合物]
前記アミン系化合物としては、三級アミン(3級アミノ基のみを有するアミン化合物)以外のアミン化合物であれば特に制限されないが、1分子中に2個以上のアミノ基を含有するアミン系化合物が挙げられ、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系などのアミン化合物が好ましい。
本組成物に用いるアミン系化合物は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0065】
前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミン等が挙げられる。
【0066】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0067】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(CmH2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン等が挙げられる。
【0068】
これら以外の脂肪族系アミン化合物としては、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)等が挙げられる。
【0069】
前記脂環族系アミン化合物としては、具体的には、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、2,2'-ジメチル-4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリン等が挙げられる。
【0070】
前記芳香族系アミン化合物としては、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
この芳香族系アミン化合物として、より具体的には、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン等が挙げられる。
【0071】
前記複素環系アミン化合物としては、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1,4-ジアザシクロヘプタン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0072】
前記アミン系化合物としては、さらに、前述したアミン化合物の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンなどが挙げられる。これらの中では、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物が好ましい。
【0073】
前記アミン系化合物としては、水溶性アミン系化合物またはアミン系エマルションを使用することができる。前記水溶性アミン系化合物としては、前述のアミン系化合物または前述のアミン系化合物を公知の方法で親水性とした化合物が挙げられる。該親水化の方法としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、水酸基など水溶性を促進する基の導入や、ポリアルキレングリコールのグリシジルエーテルをアダクト変性する等の親水性基の導入が挙げられる。
なお、水溶性アミン系化合物とは、25℃で、水30質量%とアミン系化合物70質量%とを混合し、十分撹拌した状態において、外観が透明である化合物のことをいう。
【0074】
このような水溶性アミン系化合物としては市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、「ダイトクラール I-6020」(大都産業(株)製)、「Cardolite NX-8102」(Cardolite Corporation製)、「アンカミン 401」(Evonik Industries社製)、「BECKOPOX EH 613w/80WA」(ALLNEX社製)、「Sunmide WH-900」(Evonik Industries社製)が挙げられる。
【0075】
前記アミン系エマルションとしては、例えば、アミン系化合物が水等の水性媒体中で分散してなる乳濁液が挙げられる。
前記乳濁液とは、透明なガラス容器に入れた乳濁液に対し、容器の前面から15cmの距離にあり、かつ、容器に対して正対の位置からレーザーポインター(型式:TLP-3200、アイガーツール社製)を照射した場合に、レーザー光を透過しない状態をいう。
このようなアミン系エマルションとしては市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、「フジキュアー FXS-918-FA」((株)T&K TOKA製)、「EPILINK 701」(Evonik Industries社製)、「ユカレジン HD-03」(吉村油化学(株)製)が挙げられる。
【0076】
前記アミン系化合物は、基材への付着性に優れ、耐水性が早期に発現する塗膜を容易に得ることができる等の点から水溶性アミン系化合物、特に水溶性ポリアミンが好ましい。さらに、耐フラッシュラスト性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、乳化剤を含まない水溶性ポリアミンがより好ましい。
【0077】
硬化性および防食性等に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、前記アミン系化合物の固形分あたりの活性水素当量は、好ましくは30~500、より好ましくは40~300である。
【0078】
本組成物がエポキシ樹脂とアミン系化合物とを含有する場合、その含有量は、硬化性および防食性等に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、下記式(1)で算出される反応比が、好ましくは0.4~1.0、より好ましくは0.6~0.9となる量である。
反応比=(アミン系化合物の配合量(固形分)/アミン系化合物の固形分あたりの活性水素当量+エポキシ樹脂に対して反応性を有する成分の配合量(固形分)/エポキシ樹脂に対して反応性を有する成分の固形分あたりの官能基当量)/(エポキシ樹脂の配合量(固形分)/エポキシ樹脂の固形分あたりのエポキシ当量+アミン系化合物に対して反応性を有する成分の配合量(固形分)/アミン系化合物に対して反応性を有する成分の固形分あたりの官能基当量)・・・(1)
【0079】
ここで、前記式(1)における「アミン系化合物に対して反応性を有する成分」としては、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、また、「エポキシ樹脂に対して反応性を有する成分」としては、例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。また、前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
【0080】
本組成物がエポキシ樹脂とアミン系化合物とを含有する場合、これらの合計含有量は、硬化性および防食性等に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは25~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。
【0081】
[その他の成分]
第2剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記その他の顔料、硬化触媒、分散剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、湿潤剤、レオロジー添加剤、造膜助剤、表面調整剤、繊維物質、界面活性剤、有機溶剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、pH調整剤、硬化触媒等を必要に応じて適宜配合してもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらのうち、水中において酸性を示す成分を用いることは好ましくない。また、これらその他の成分を用いる場合、得られる第2剤のpHが前記範囲となるように用いることが好ましい。
【0082】
≪水系塗料組成物の製造方法および貯蔵方法≫
本発明に係る水系塗料組成物(ただし、該水系塗料組成物は水性樹脂を含む。)の製造方法は、防錆剤を含有する第1剤を調製する工程、
フラッシュラスト抑制剤を含有し、防錆剤を含有しない第2剤を調製する工程、
前記工程で得られた第1剤と第2剤とをそれぞれ貯蔵する工程、および、
前記貯蔵後の第1剤と第2剤とを混合する工程を含む。
また、本発明に係る水系塗料組成物(ただし、該水系塗料組成物は水性樹脂を含む。)の貯蔵方法は、防錆剤を含有する第1剤と、フラッシュラスト抑制剤を含有する第2剤とを含む水系塗料組成物の貯蔵方法であって、
前記第2剤に防錆剤を配合せず、前記第1剤と第2剤とを接触させないように貯蔵することを特徴とする。
【0083】
このような製造方法および貯蔵方法によれば、防食性に優れる塗膜を形成可能でありながらも、耐フラッシュラスト性の低下が抑制された水系塗料組成物を容易に製造することができ、特に、塗装性に優れながらも、フラッシュラスト抑制剤の失活を長期にわたり抑制できる水系塗料組成物を容易に製造することができる。
【0084】
なお、前記水系塗料組成物の製造方法および貯蔵方法では、最終的に得られる水系塗料組成物中に水性樹脂が含まれていればよい。このような水性樹脂を含む水系塗料組成物を得るには、例えば、前記第1剤として水性樹脂を含む第1剤を用いてもよく、前記第2剤として水性樹脂を含む第2剤を用いてもよく、前記第1剤や第2剤以外の第3剤として水性樹脂を含む第3剤を用いてもよく、貯蔵後の前記第1剤と第2剤とを混合する際に、水性樹脂を添加してもよい。これらの中でも、前記第1剤として水性樹脂を含む第1剤を用いることが好ましい。
【0085】
前記水系塗料組成物の製造方法および貯蔵方法における第1剤および第2剤は、それぞれ、前記水系塗料組成物の欄で記載の第1剤および第2剤であることが好ましい。
前記第1剤および第2剤は、これらの剤に配合する各成分を混合(混練)することで、調製することができ、本組成物は、これら第1剤、第2剤および必要により用いられる他の剤を混合(混練)することで、調製することができる。
この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよいが、数種類の前記その他の成分を用いる場合には、まず、顔料を含む顔料分散液を調製することが好ましい。なお、混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等を使用でき、例えば、混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。
また、第1剤がエポキシ樹脂を含み、第2剤がアミン系化合物を含む場合、反応比が前記範囲となるように調整して混合(混練)することが好ましい。
【0086】
前記貯蔵方法としては、前記第1剤と第2剤とが接触しないように貯蔵すれば特に制限されず、主剤と硬化剤とからなる従来公知の塗料と同様の方法で貯蔵すればよい。また、用いる成分等に応じて、貯蔵温度、貯蔵雰囲気、貯蔵場所などの貯蔵環境を適宜選択すればよい。
前記貯蔵における貯蔵期間は特に制限されないが、通常の販路では、第1剤や第2剤を調製してから30~180日程度でこれらが混合されて水系塗料組成物として塗装されることから、この期間と同程度の貯蔵期間が挙げられる。
【0087】
≪防食塗膜および防食塗膜付き基材の製造方法≫
本発明に係る防食塗膜の製造方法は、前記本組成物(前記キットから得られる本組成物を含む)を乾燥または硬化する工程を含み、本発明に係る防食塗膜付き基材の製造方法は、基材に、前記本組成物(前記キットから得られる本組成物を含む)を塗装する工程、および、該塗装された本組成物を乾燥または硬化させて防食塗膜を形成する工程を有する。
【0088】
前記乾燥または硬化の条件としては特に制限されず、用いる水性樹脂や硬化成分の種類、塗膜の形成方法、基材の種類、用途、塗装環境等に応じて適宜設定すればよいが、乾燥温度は、常温乾燥の場合、通常5~35℃、より好ましくは10~30℃である。なお、所望により、加熱したり、送風により強制乾燥(これらの際の温度の例:30~90℃)してもよいが、通常は自然条件下で乾燥、硬化される。
乾燥または硬化の時間は、塗膜の乾燥方法によって異なり、常温乾燥の場合、通常12~250時間である。
【0089】
前記防食塗膜の乾燥膜厚は、特に限定されないが、十分な防食性等を有する塗膜を得る等の点から、通常は20~400μm、好ましくは30~300μmである。
前記塗装は、このような乾燥膜厚の塗膜が得られるように塗装すればよく、この場合、1回の塗装で所望の膜厚を形成(1回塗り)してもよいし、2回以上の塗装(2回以上塗り)で所望の膜厚の塗膜を形成してもよい。
【0090】
前記基材の材質としては特に制限されず、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム等)、ステンレスなどが挙げられ、基材の表面がショッププライマー等で被覆されていてもよい。
前記基材としては、例えば、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の(大型)鉄鋼構造物などが挙げられる。
【0091】
前記基材として、例えば、マイルドスチール(SS400等)を用いる場合、必要により、グリットブラスト等で表面を研磨するなど、素地調整(十点平均粗さ(RzJIS)μmが20~75μm程度になるよう調整)しておくことが望ましい。
また、前記基材としては、腐食が生じた防食塗膜付き基材から塗膜を除去した基材を用いてもよい。つまり、本組成物は、腐食が生じた防食塗膜付き基材の、補修塗装するために使用することもできる。
【0092】
前記塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアースプレー塗装等のスプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗りなどの常法が挙げられるが、船舶、橋梁等の大型構造物に塗装する場合には、大面積の基材を容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
なお、塗装作業の際には、本組成物を水等で適宜希釈して用いてもよい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例に基づいて本発明の好適な態様をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0094】
[実施例1]
<第1剤>
下記表1に示すように、イオン交換水17.57質量部と、レオロジー添加剤(注1)0.6質量部と、分散剤(注2)2質量部と、消泡剤(注3)0.1質量部と、白色顔料(注4)6質量部と、黒色顔料(注5)0.03質量部と、タルク(注6)8.5質量部と、カリ長石(注7)12質量部と、防錆剤1(注8)7質量部とを、ハイスピードディスパーサーを用いて、室温(23℃)で撹拌しながら順に容器に入れ、粒度が50μm以下になるまで撹拌することで、顔料分散液を調製した。
次いで、調製した顔料分散液に、造膜助剤1(注10)2質量部と、エポキシ樹脂エマルション1(注11)44質量部と、消泡剤(注3)0.2質量部とを順に入れ、その後ハイスピードディスパーサーを用いて15分間撹拌することで、第1剤を調製した。
【0095】
得られた第1剤の25℃におけるpHは、pH測定計(型式:SevenExcellenc S470 Basic、METTLER TOLEDO社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0096】
<第2剤>
下記表1に示すように、アミン硬化剤1(注13)4質量部と、造膜助剤2(注17)0.8質量部と、イオン交換水1.1質量部と、フラッシュラスト抑制剤(注18)0.1質量部とを、ディスパーを用いて、室温(23℃)で撹拌しながら順に容器に入れ、その後15分間撹拌することで、第2剤を調製した。
調製した第2剤のpHを、前記第1剤と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0097】
このようにして得られた第1剤と第2剤とを、これらを調製した直後に、表に記載の混合比で混合することで、水系塗料組成物(貯蔵前)を調製した。
また、前記方法によって調製した第1剤および第2剤それぞれをポリ容器に密閉して、23℃にて3か月間貯蔵した後、これらを表に記載の混合比で混合することで、水系塗料組成物(貯蔵後)を調製した。このようにして調製した各水系塗料組成物は、調製後速やかに下記試験に用いた。
【0098】
[実施例2~9、比較例1]
実施例1の第1剤および第2剤を構成する成分の種類および配合量を、下記表1または表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして各水系塗料組成物を調製した。
また、得られた第1剤および第2剤のpHを実施例1と同様にして測定した。結果を表1または2に示す。
[比較例2~9]
顔料分散液を調製する際に、イオン交換水17.57質量部の代わりに、イオン交換水およびフラッシュラスト抑制剤を表2に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして各水系塗料組成物を調製した。
また、得られた第1剤および第2剤の25℃におけるpHを実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0099】
表1および2に記載の各原材料の説明を表3に示す。表1および2中の第1剤および第2剤の各成分の数値は、それぞれ質量部を示す。
なお、表3中の(注8)および(注9)におけるpHの値は、前記防錆剤の欄に記載した方法で測定した値である。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
[試験片の作製方法]
・試験片(1)
JIS G 3101:2010で規定されるSS400の鋼板(150mm×70mm×3.2mm(厚み))を、表面粗さ(RzJIS)が約25μmになるようにブラスト処理したものを基材として使用した。
前記基材の表面に、前記各水系塗料組成物を、得られる塗膜の乾燥膜厚が60μmになるようエアースプレーにて塗装した。塗装直後の水系塗料組成物付き基材を試験片(1)とし、後述する耐フラッシュラスト耐性試験に供試した。結果を表4または5に示す。
【0104】
・試験片(2)
前記と同様に作成した試験片(1)上の水系塗料組成物を温度23℃で24時間乾燥することで塗膜を形成した後(この塗膜を形成した面を「試験面」ともいう。)、基材の該塗膜で覆われていない部分(前記試験面の裏面および側面)に、該塗膜を形成するのに用いた塗料と同じ塗料を塗装し、さらに23℃で6日間乾燥させた。
乾燥後、JIS K 5600-7-9:2006の7.5a)の方法にて、試験面に切り込みきずをつけ、試験片(2)とし、後述する耐湿試験、複合サイクル試験および湿潤冷熱繰り返し試験に供試した。結果を表4または5に示す。
【0105】
<耐フラッシュラスト性試験>
プラスチック容器に水を張り、密閉した後、温度23±3℃または40±3℃の条件下に24時間静置した。この容器内に、前記の通り作成した試験片(1)を水に触れないように、また、水系塗料組成物側が上側になるように設置し、再び密閉した。その後23±3℃または40±3℃の条件下でさらに24時間静置した後、以下の基準に従って耐フラッシュラスト性を評価した。
(評価基準)
○:フクレ・錆が見られない
△:試験片の一部にフクレ・錆が見られる
×:試験片の全面にフクレ・錆が見られる
【0106】
<耐湿試験>
温度50±1℃、相対湿度95%に保たれた耐湿試験機内に、前記の通り作成した試験片(2)を720時間静置した後、試験面の外観を目視にて、以下の基準に従って評価した。なお、切り込みきずから幅3mm以内の範囲は、評価の対象外とした。
(評価基準)
○:フクレ・錆がみられない
△:試験片の一部にフクレ・錆が見られる
×:試験片の全面にフクレ・錆がみられる
【0107】
<複合サイクル試験>
JIS K 5551:2008に準拠し、前記の通り作成した試験片(2)を用いて、サイクルDの試験を120サイクル行った。試験後、試験片上に残留した塩分を流水で洗い、2時間静置後、試験面の外観を目視にて、以下の基準にて評価した。なお、切り込みきずから幅4mm以内の範囲は、評価の対象外とした。
(評価基準)
○:フクレ・錆がみられない
△:試験片の一部にフクレ・錆が見られる
×:試験片の全面にフクレ・錆がみられる
【0108】
<湿潤冷熱繰り返し試験>
JIS K 5659:2008を基に、前記の通り作成した試験片(2)を用いて、下記条件にて防食性の試験を行った。
試験片(2)を23±1℃の水中に18時間浸漬し、該水中から取り出した後、直ちに-20±3℃の恒温機で3時間冷却し、次に50±3℃の恒温機で3時間加温した。この操作を10回繰り返した。試験後、1時間静置後、試験面の外観を目視にて評価し、JIS K 5600-5-6:1999の手法により付着性を以下の基準にて評価した。
(評価基準)
○:塗膜表面にフクレ・割れ・錆が見られず、付着性の分類が0である
△:塗膜表面にフクレ・割れ・錆が見られ、付着性の分類が0~2である
×:塗膜表面にフクレ・割れ・錆が見られ、付着性の分類が3~5である
【0109】
【0110】