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特許7284590硬化性複合材料及びそれを用いたインプリント方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】硬化性複合材料及びそれを用いたインプリント方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20230524BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230524BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20230524BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20230524BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20230524BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20230524BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/22
C08L81/02
C08K5/36
C08K5/372
C08K9/04
G02B1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019029301
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020132773
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】金 英輝
(72)【発明者】
【氏名】並木 康佑
(72)【発明者】
【氏名】宮本 美幸
(72)【発明者】
【氏名】堀越 裕
(72)【発明者】
【氏名】飯島 志行
(72)【発明者】
【氏名】窪田 百恵
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/075784(WO,A1)
【文献】特開2008-231323(JP,A)
【文献】特開2011-012165(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078129(WO,A1)
【文献】特開2007-314773(JP,A)
【文献】特開2017-002276(JP,A)
【文献】特開2013-191800(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041646(WO,A1)
【文献】特開2009-149820(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄系分散剤により表面修飾を施した金属酸化物微粒子と、硫黄系樹脂組成物とを含む硬化性複合材料であって、
前記硫黄系分散剤が、下記一般式(1)で表され、
K―N―M 式(1)
(式中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。)
【化1】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化2】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化3】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化4】
(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化6】
(式中、nは1~3の整数を表す。
前記硫黄系樹脂組成物が、下記一般式(2)~(7)並びに下記構造式(8)及び(9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を20質量%以上含む、前記硬化性複合材料。
【化7】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化8】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化9】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化10】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化11】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化12】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化13】
【化14】
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子は、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む、請求項1に記載の硬化性複合材料。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子が、酸化ジルコニウムである、請求項1または2に記載の硬化性複合材料。
【請求項4】
前記表面修飾を施した金属酸化物微粒子が、表面修飾前の金属酸化物微粒子100質量部に対し、前記硫黄系分散剤を0.1質量部以上200質量部以下にて表面修飾を施したものである、請求項1から3のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項5】
前記硫黄系樹脂組成物の100質量部に対し、前記表面修飾を施した金属酸化物微粒子が、25質量部以上400質量部以下含まれる、請求項1から4のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項6】
前記硫黄系分散剤における親油基と前記硫黄系樹脂組成物とが結合してなる、請求項1から5のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項7】
前記硫黄系分散剤における親水基と前記金属酸化物微粒子とが結合してなる、請求項1から6のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項8】
前記硬化性複合材料の硬化後のd線屈折率が1.73以上であり、厚さ0.25mmの可視光領域の光透過率が80%以上であり、ヘーズ値が2.0%以下である、請求項1から7のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項9】
前記硬化性複合材料の硬化後のガラス転移点が30℃以上である、請求項1から8のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項10】
前記硬化性複合材料の25℃での粘度が100,000mPa・s以下である、請求項1から9のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項11】
更に、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれか1つ以上を含有する、請求項1から10のいずれかに記載の硬化性複合材料。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の硬化性複合材料を基材上に塗布する工程と、
金属又は樹脂モールドによりパターン転写する工程と、
熱又は活性エネルギー線により硬化する工程と、を含むことを特徴とするインプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学樹脂レンズや光導波路、導光板等の光学部品を作製する際に必要な硬化性複合材料、及びそれを用いたインプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ガラスは、透明性に優れているなどの諸物性に優れており、光学部材として広い分野で用いられている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、加工性、生産性が悪い等の短所があり、無機ガラスに代わる素材として透明光学用樹脂の開発が盛んに行われている。
【0003】
透明光学用樹脂として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。可視光領域波長における良好な透明性を有し、しかも無機ガラス材料に比べて成形性、量産性、あるいは可撓性、強靱性、耐衝撃性等の優れた特徴を有する汎用透明樹脂材料が望まれている。
【0004】
このような透明樹脂材料に高い屈折率を付与することによって、薄肉軽量な光学レンズ(メガネレンズ、フレネルレンズ、CD、DVDなどの情報記録機器におけるピックアップレンズ、デジタルカメラなどの撮影機器用レンズ等)、光学プリズム、光導波路、光ファイバー、薄膜成形物、光学用接着剤、光半導体用封止材料、回折格子、導光板、液晶基板、光反射板、反射防止材等の高屈折光学部材の材料等への展開が期待されている。
【0005】
高屈折率化には、硫黄元素を含有するモノマーが有用である。例えばチオール化合物とイソシアネート化合物を熱重合しチオウレタン結合を形成して得られる樹脂(nd=1.60~1.66程度)や、エピスルフィド、エピチオスルフィド化合物を重合硬化してなる樹脂(nd=1.7程度)などがある。ただ、nd=1.73以上の更なる高屈折率化を実現するには不十分であった。
【0006】
屈折率1.73を超える高屈折率化には、樹脂中に金属酸化物微粒子を含有させる方法が挙げられる。この方法では、金属酸化物微粒子の凝集を防ぎ、樹脂との相溶性を向上させるため、金属酸化物微粒子表面を修飾する分散剤が必要である。例えば、エポキシ樹脂中に分散剤で修飾した金属酸化物微粒子を分散させ、光学材料として好適な屈折率、透明性を有する硬化性複合材料が提案されている(特許文献1)。しかしながら、一般にエポキシ樹脂の屈折率は1.51~1.58程度であり、より高屈折率な微粒子を添加しても、前記硫黄系樹脂の屈折率以下であり、高屈折率化には工夫の余地があった。
【0007】
特許文献2では、市販のリン酸エステル系分散剤を用いて金属酸化物微粒子を修飾し、リン酸基を分子構造内に有する熱可塑性樹脂との有機無機複合材料を開示している。該微粒子と硫黄系樹脂との複合化についても言及しているが、最適な分散剤について開示されておらず、微粒子と硫黄系樹脂において、市販の分散剤にて相溶性を向上させ、十分な透明性を得られるかは不明であった。
【0008】
特許文献3では、金属酸化物微粒子を硫黄系樹脂に分散させた透明で高屈折率なレンズ材が開示されている。しかしながら、具体的な厚さの記載がなく透明性も目視で評価している。薄膜や厚膜で、微細な成形性が必要な高透明な光学部材への展開が可能かは不明であった。
【0009】
このように、金属酸化物微粒子を含む光学樹脂用途では、金属酸化物微粒子と硫黄系樹脂の極性差が極めて大きいため、金属酸化物微粒子が凝集して曇りが発生し、市販の分散剤を用いても、硫黄系樹脂と分散剤との親和性が低いため、凝集を防ぎ相溶性を大きく向上させることはできなかった。高透明性、及び屈折率1.73を超える微粒子を含む硫黄系光学樹脂が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6206564号公報
【文献】特開2008-201634号公報
【文献】特許第5422393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、光学樹脂レンズや光導波路、導光板等の光学部品を作製する際に必要な硬化性複合材料、及びそれを用いたインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、かかる状況下、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、硫黄系樹脂組成物の一部と同構造な硫黄元素を含むある種の化学構造を含んだ硫黄系分散剤を表面修飾剤として用いると、硫黄系樹脂組成物への金属酸化物微粒子の相溶性を向上させ、さらに、硬化反応時に硫黄系分散剤と硫黄系樹脂組成物とが架橋反応し、高透明、且つ高屈折率な硬化物を容易に得られることを見出すに至った。
本明細書における「屈折率」とは、光線屈折率を指し、ヘリウムの輝線波長587.56nmによる測定値を用いる。
【0013】
すなわち本発明は、下記に記載する通りである。
<1> 硫黄系分散剤により表面修飾を施した金属酸化物微粒子と、硫黄系樹脂組成物とを含む硬化性複合材料である。
<2> 前記硫黄系分散剤が、分子構造内に親水基と親油基を有し、前記親水基が、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群より選択される1以上を含み、前記親油基が、スルフィド基、ジスルフィド基、チオール基、及び(チオ)エポキシ基からなる群より選択される1以上を含む、上記<1>に記載の硬化性複合材料である。
<3> 前記硫黄系分散剤が、下記一般式(1)で表される、上記<1>又は<2>に記載の硬化性複合材料である。
K―N―M 式(1)
(式中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。)
【化1】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化2】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化3】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化4】
(式中、Xは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化6】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
<4> 前記金属酸化物微粒子は、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む、上記<1>から<3>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<5> 前記金属酸化物微粒子が、酸化ジルコニウムである、上記<1>から<4>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<6> 前記表面修飾を施した金属酸化物微粒子が、表面修飾前の金属酸化物微粒子100質量部に対し、前記硫黄系分散剤を0.1質量部以上200質量部以下にて表面修飾を施したものである、上記<1>から<5>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<7> 前記硫黄系樹脂組成物が、下記一般式(2)~(7)並びに下記構造式(8)及び(9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を20質量%以上含む、上記<1>から<6>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
【化7】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化8】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化9】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化10】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化11】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化12】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化13】
【化14】
<8> 前記硫黄系樹脂組成物の100質量部に対し、前記表面修飾を施した金属酸化物微粒子が、25質量部以上400質量部以下含まれる、上記<1>から<7>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<9> 前記硫黄系分散剤における親油基と前記硫黄系樹脂組成物とが結合してなる、上記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<10> 前記硫黄系分散剤における親水基と前記金属酸化物微粒子とが結合してなる、上記<1>から<9>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<11> 前記硬化性複合材料の硬化後のd線屈折率が1.73以上であり、厚さ0.25mmの可視光領域の光透過率が80%以上であり、ヘーズ値が2.0%以下である、上記<1>から<10>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<12> 前記硬化性複合材料の硬化後のガラス転移点が30℃以上である、上記<1>から<11>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<13> 前記硬化性複合材料の25℃での粘度が100,000mPa・s以下である、上記<1>から<12>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<14> 更に、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれか1つ以上を含有する、上記<1>から<13>のいずれかに記載の硬化性複合材料である。
<15> 上記<1>から<14>のいずれかに記載の硬化性複合材料を基材上に塗布する工程と、
金属又は樹脂モールドによりパターン転写する工程と、
熱又は活性エネルギー線により硬化する工程と、を含むことを特徴とするインプリント方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性複合材料は、硫黄系分散剤により表面修飾を施した金属酸化物微粒子と、硫黄系樹脂組成物との濡れ性に優れ、容易に分散し、透明、易成型で、硬化後にもその透明性が維持されることから、光学素子、特に厚膜な導光板や薄膜な回折格子等の作製に利用されるインプリント材料への展開が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明について説明する。なお、以下は本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0016】
(硫黄系分散剤)
本発明で使用される硫黄系分散剤は、分子構造内に親水基と親油基を有し、前記親水基が、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群より選択される1以上を含み、前記親油基が、スルフィド基、ジスルフィド基、チオール基、及び(チオ)エポキシ基からなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。
前記硫黄系分散剤は、下記一般式(1)で表されることがより好ましい。
K―N―M 式(1)
式(1)中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、及びリン酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。
【0017】
【化15】
式(m1)中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。
【化16】
式(m2)中、nは1又は2の整数を表す。
【化17】
式(m3)中、nは1~8の整数を表し、好ましくは1を表す。
【化18】
式(n1)中、Xは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。好ましくは、mは0~3の整数を表し、nは0~3の整数を表す。
【化19】
式(n2)中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。
【化20】
式(n3)中、nは1~3の整数を表す。
【0018】
本発明で使用される硫黄系分散剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、他のシランカップリング剤と組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(シランカップリング剤)
硫黄系分散材と組み合わせて使用することができるシランカップリング剤は特に限定されず、ラジカル重合反応性の官能基を有するシランカップリング剤及びその他のシランカップリング剤が挙げられる。
【0020】
ラジカル重合反応性シランカップリング剤は、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基含有シランが好ましい。
【0021】
その他のシランカップリング剤は、ラジカル重合反応性の官能基を有さないシラン化合物である。その他のシランカップリング剤は、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン等のハロアルキル基含有シランが挙げられる。
【0022】
(金属酸化物微粒子)
本発明で使用される金属酸化物微粒子は、分散質粒子として用いることができ、平均粒子径が50nm未満の金属酸化物微粒子であることが好ましい。
本発明で使用される金属酸化物微粒子は、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むことが好ましい。
また、金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は特に限定されないが、例えば、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)等の単酸化物;チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸アルミニウム、チタン酸リチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化インジウムスズ(ITO)等の複合酸化物等を挙げることができる。これら金属酸化物は、分散質粒子として1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、屈折率、透明性、安定性の観点から酸化ジルコニウムが特に好ましい。
【0023】
金属酸化物微粒子の平均粒子径が50nm以上であると、得られる硬化物の透明性の低下、ヘーズの上昇、表面平滑性の低下が生じる可能性がある。金属酸化物微粒子の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば1nm以上であることが好ましい。したがって、金属酸化物微粒子の平均粒子径の範囲としては、1nm以上50nm未満が好ましく、3~30nmがより好ましく、3~15nmが特に好ましい。なお、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて球相当径とする体積基準の分布より求めた体積平均径として測定することができる。
【0024】
さらに、金属酸化物微粒子は、結晶状であってもアモルファス状であってもよく、また、等方性粒子であっても異方性粒子であってもよく、繊維状であってもよい。さらに、金属酸化物微粒子は、一般的な粉末状であってもよいし、微粒子ゾルであってもよい。
【0025】
(金属酸化物微粒子の製造方法)
本発明で用いられる金属酸化物微粒子の製造方法(調製方法)は、特に限定されず、公知の方法を好適に用いることができる。例えば、代表的な製造方法として、粗大粒子を機械的に解砕、微細化していくトップダウン方式;いくつかの単位粒子を生成させ、それが凝集したクラスター状態を経由して粒子が形成されるボトムアップ方式;の2種類の方式の製造方法を挙げることができるが、いずれの方法で調製されたものであってもよい。また、これら方式の製造方法は、湿式法または乾式法のいずれであってもよい。また、これら方式の製造方法で用いられる媒体としては、水系であっても非水系であっても気相であってもよい。
【0026】
また、ボトムアップ方式には、物理的方法と化学的方法があるが、いずれの方法によるものであってもよい。物理的方法の代表例としては、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させ、ガスとの衝突により冷却凝縮させてナノ粒子を生成するガス中蒸発法が挙げられる。また、化学的方法の代表例としては、液相還元法(液相中で保護剤の存在下で金属イオンを還元し、生成した0価の金属をナノサイズで安定化させる方法)、金属錯体の熱分解法等が挙げられる。液相還元法のより具体的な例としては、化学的還元法、電気化学的還元法、光還元法、または化学的還元法と光照射法とを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0027】
なお、本発明の硬化性複合材料は、後述するように、硫黄系分散剤、分散質粒子としての金属酸化物微粒子、及び硫黄系樹脂組成物を混合攪拌することにより調製(製造)することができるが、硫黄系分散剤は、トップダウン方式またはボトムアップ方式での金属酸化物微粒子の製造工程中で使用することができる。また、前述した各種の方式または方法を採用して金属酸化物微粒子を製造する際には、その製造工程で用いた媒体中から金属酸化物微粒子を取り出すために、保護剤を使用することができる。保護剤は、金属酸化物微粒子の表面を修飾する表面修飾剤、あるいは、金属酸化物微粒子の表面を保護する表面保護剤等を挙げることができる。これら保護剤により表面が被覆されるか、これら保護剤により含浸されることにより、媒体中から金属酸化物微粒子を安定的に取り出すことができる。ここで、硫黄系分散剤は、この保護剤としても使用することができる。
【0028】
(表面修飾及び硬化性複合材料の製造方法)
表面修飾を施した金属酸化物微粒子は、表面修飾前の金属酸化物微粒子100質量部に対し、前記硫黄系分散剤を0.1質量部以上200質量部以下にて表面修飾を施したものであることが好ましく、前記硫黄系分散剤を10質量部以上50質量部以下にて表面修飾を施したものであることがより好ましい。
前記金属酸化物微粒子を、硫黄系分散剤で表面修飾する方法は特に限定されず、例えば、混合、浸漬、塗布(スピンコート、スプレーコートなど)又は蒸着によって修飾できる。特に、混合が好適である。表面修飾を施した後、該表面修飾を施した金属酸化物微粒子を硫黄系樹脂組成物に分散させ、硬化性複合材料を得ることができる。
【0029】
本発明の硬化性複合材料の製造方法の一例としては、表面修飾を施すための硫黄系分散剤と金属酸化物微粒子を含有する有機溶媒とを混合し混合液を得る第1ステップと、該第1ステップにより得られた混合液から前記有機溶媒を取り除く第2ステップと、さらに前記硫黄系樹脂組成物を混合し、硫黄系分散剤構造内の親水基と親油基によって、金属酸化物微粒子と硫黄系樹脂組成物との間に相互作用を形成させ硬化性複合材料を得る第3ステップからなる製造方法が挙げられる。なお、本発明の硬化性複合材料の製造方法において、前記第2ステップは、遠心分離によって前記有機溶媒と硫黄系分散剤により表面修飾した金属酸化物微粒子とに分け有機溶媒を取り除く方法、又は溶媒置換法によって有機溶媒を取り除く方法などが挙げられる。
こうして得られた本発明の硬化性複合材料は、硫黄系分散剤における親油基と硫黄系樹脂組成物とが結合していることが好ましく、更には、硫黄系分散剤における親水基と金属酸化物微粒子とが結合していることがより好ましい。
本発明の硬化性複合材料は、25℃での粘度が100,000mPa・s以下であることが好ましく、20,000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0030】
なお、分子構造内にアルコキシシリル基を有する硫黄系分散剤、及びその他シランカップリング剤を用いる場合は、加水分解処理を施した後、表面修飾に使用することができる。
【0031】
(硫黄系樹脂組成物)
本発明で使用される硬化性樹脂組成物としては、分子内に硫黄原子を含有する化合物が挙げられる。例えば、エピチオ化合物((チオ)エポキシ化合物)やチオール化合物が挙げられる。さらに、分子内に硫黄原子を含有する化合物とアリル化合物やイソシアネート化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(エピチオ化合物)
エピチオ化合物としては、例えば、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1-(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,1,1-トリス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン等の環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2-ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3-エピチオプロピルチオ化合物等、更に3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド等のメルカプト基含有エピチオ化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0033】
(チオール化合物)
チオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、脂環族チオール化合物、芳香族チオール化合物、複素環含有チオール化合物等が挙げられる。より具体的には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、(2-メルカプトエチル)スルフィド、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート) 、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]3-メルカプトプロパン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0034】
本発明で使用される硫黄系樹脂組成物は、下記一般式(2)~(7)並びに下記構造式(8)及び(9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を20質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことがより好ましい。
【化21】
式(2)中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。好ましくは、n=0、あるいは、m=0及びn=1を表す。
【化22】
式(3)中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。
【化23】
式(4)中、nは1又は2の整数を表す。
【化24】
(式(5)中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化25】
(式(6)中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化26】
(式(7)中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化27】
【化28】
【0035】
(その他の成分)
本発明の硬化性複合材料には、前述した硫黄系分散剤、分散質粒子としての金属酸化物微粒子、及び硫黄系樹脂組成物以外の成分が含まれてもよい。その他の成分としては、具体的には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等のように公知の様々な添加剤を挙げることができる。本実施の形態では、代表的なその他の成分として、例えば、分散質粒子の分散性をより良好なものとするために分散助剤を用いることができる。この分散助剤としては、硫黄系分散剤、金属酸化物微粒子、及び硫黄系樹脂組成物の種類、物性、使用条件等に応じて、公知の溶媒を適宜選択して用いることができる。
【0036】
(分散助剤)
分散助剤として使用可能な溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ヘプタノール、n-アミルアルコール、sec-アミルアルコール、n-ヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アリルアルコール、エチレンクロロヒドリン、オクチルドデカノール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、イソアミルアルコール、t-アミルアルコール、sec-イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、α-テルピネオール、ターピネオールC、L-α-ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール、1,4-ブタンジオール、オクタンジオール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ジグライム1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2-(1-シクロヘキセニル)シクロヘキサノンメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸sec-ヘキシル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒、並びに、これらモノエーテル類の酢酸エステル系溶媒(例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等);ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール系溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;等を挙げることができる。これら溶媒は、1種類のみを分散助剤として用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて分散助剤として用いてもよい。
【0037】
(その他成分を加えた混合方法)
本発明の硬化性複合材料は、前述した、硫黄系分散剤、金属酸化物微粒子、及び硫黄系樹脂組成物の各成分、並びに、必要に応じて分散助剤等の他の成分を所定の組成で配合し、分散質粒子としての金属酸化物微粒子が十分に分散するまで攪拌または均一化すればよい。金属酸化物微粒子を分散させるための分散装置としては、具体的には、例えば、2本ロール、3本ロール等のロールミル;ボールミル、振動ボールミル等のボールミル;ペイントシェーカー;連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミル;サンドミル;ジェットミル;等を挙げることができるが、特に限定されない。また、超音波発生浴の中で分散処理を行うこともできる。
【0038】
(硬化性複合材料の配合量)
本発明の硬化性複合材料において、前述した、硫黄系分散剤、金属酸化物微粒子、及び硫黄系樹脂組成物の各成分の配合量(含有量または添加量)は特に限定されず、各成分の種類、物性、硬化性複合材料の用途等の諸条件に応じて、適宜好適な範囲を設定することができる。このうち硫黄系分散剤については、分散質粒子としての金属酸化物微粒子を良好に分散させるために、所定の範囲内で配合することができる。
【0039】
具体的には、硬化性複合材料の全固形分を100質量%としたときに、硫黄系分散剤の配合量は、全固形分の2~30質量%の範囲内が好ましく、3~20質量%の範囲内であるとより好ましい。硫黄系分散剤の配合量が全固形分に対して少なすぎると、前記諸条件にもよるが、得られる硬化物の表面平滑性が低下する場合がある。また、硫黄系分散剤の配合量が全固形分に対して多すぎると、前記諸条件にもよるが、得られる硬化物の透明性が低下し、当該硬化物の物性(例えば、耐擦傷性、耐アルカリ性等)が十分でなくなる場合がある。
【0040】
また、分散質粒子である金属酸化物微粒子の配合量も特に限定されないが、硬化性複合材料の全量を100質量%としたときに、0.5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましい。前記諸条件にもよるが、金属酸化物微粒子がこの範囲内であれば、得られる硬化物の光学特性及び物性を良好なものにできるとともに、硫黄系分散剤との組合せにより表面平滑性の向上にも寄与することができる。
【0041】
同様に、硫黄系樹脂組成物の配合量も特に限定されないが、硬化性複合材料の全量を100質量%としたときに、3~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましい。前記諸条件にもよるが、硫黄系樹脂組成物がこの範囲内で配合されれば、得られる膜状または層状の硬化物(硬化膜または硬化層)を形成したときに、金属酸化物微粒子を良好に分散した状態で、硬化物として良好な物性を実現することができる。また、硫黄系分散剤との組合せにより硬化物の表面平滑性の向上にも寄与することができる。
【0042】
更に、本発明の硬化性複合材料は、硫黄系樹脂組成物の100質量部に対し、表面修飾を施した金属酸化物微粒子が、20~900質量部含まれることが好ましく、25~400質量部含まれることがより好ましい。
【0043】
なお、分散助剤等のその他の成分は、当該成分の添加により所望の機能を発揮できる範囲内で添加すればよい。
【0044】
(硬化性複合材料の塗布方法)
硬化性複合材料を基材に塗布する方法は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法等が挙げられる。これらの塗布方法のうち、スピンコート法が好適である。
【0045】
(膜厚)
硬化性複合材料からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm~30μmであることが好ましい。
【0046】
(重合開始剤)
本発明の硬化性複合材料は、重合開始剤を含むことが好ましく、なかでも熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれか1つ以上を含有することがより好ましい。
重合開始剤としては、イオンを発生するアニオン重合開始剤やカチオン重合開始剤、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤、紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などをさらに添加することも好ましい。
【0047】
(硬化性複合材料の硬化物)
本発明の硬化物は、上記の硬化性複合材料を硬化させて得られる。ここで、「硬化性複合材料を硬化させた硬化物」とは、本発明に係る硫黄系分散剤及び硫黄系樹脂組成物の硬化性成分を架橋して、硬化させたものを意味する。
【0048】
(硬化物の耐熱性)
本発明の硬化性複合材料の硬化物は、光学材料として使用するために、一定以上の耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を示す指標としては、硬化物のガラス転移温度が挙げられる。好ましい耐熱性は、硬化性複合材料を塗布する基板の種類によって決定される。例えば、硬化性複合材料の線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂シートとガラス基板との間に、硬化性複合材料を一対の基板の隙間を封止する光学接着剤として使用する場合、本発明の硬化性複合材料を硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度は、30℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。硬化性複合材料の硬化物のガラス転移温度が上記範囲であれば、各基板と接着剤との間での界面剥離等が生じる可能性が少ない。
【0049】
なお、ここでいう樹脂シートとは、透明性が高い樹脂から構成されることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン(COC)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、透明ABS樹脂、透明ナイロン、透明ポリイミド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0050】
(硬化物のその他の物性)
本発明の硬化性複合材料の硬化物は、d線屈折率が1.73以上であり、厚さ0.25mmの可視光領域の光透過率が80%以上であり、ヘーズ値が2.0%以下であることが好ましい。より好ましいd線屈折率は1.75以上であり、より好ましい光透過率は85%以上であり、より好ましいヘーズ値は1.0%以下である。
【0051】
(インプリント成型硬化体の製造方法)
インプリント成型硬化体の製造方法は、特に限定されないが、特開2012-214716号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、インプリント成型硬化体の製造方法は、下記工程(1)~(4):
(1)前記した硬化性複合材料を基材に塗布する工程、
(2)前記基材上に塗布された硬化性複合材料に、微細凹凸パターンを有するスタンパを圧接する工程、
(3)工程(2)の後、前記硬化性複合材料を硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程、及び、
(4)前記インプリント成型硬化体を前記スタンパから剥離する工程を含む。
【0052】
(金型)
金型は、転写されるべきパターンを有する金型が使われる。金型は、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成されている。
金型は、光透過性金型及び非光透過性金型が挙げられる。光透過性金型は、ガラス、石英、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が挙げられる。非光透過性金型は、例えば、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Fe、真鍮等の金属金型、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーン等の金型等が例示される。
【0053】
金型の形状は板状金型、ロール状金型等のいずれでもよい。ロール状金型は、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
金型は、組成物と金型との剥離性をより向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。このような離型処理を行うための離型剤は、シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤、例えば、ダイキン工業製、型番オプツールDSX等の市販品が挙げられる。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載における「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0055】
(表面修飾方法、及び硬化性複合材料の調製方法)
ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、平均一次粒子径3nm)5.0g、メタノール7.5g、イオン交換水2.5g、下記で合成した硫黄系分散剤4.5mmol(粒子1gあたり3mmol)をガラス容器に加え、16時間撹拌することでジルコニア粒子を修飾した。得られた粒子を遠心分離し、エタノールで洗浄した後、テトラヒドロフラン(THF)に再分散させた。ジルコニア粒子のTHF分散液と下記構造式(10)で表される(チオ)エポキシ化合物とを混合し、エバポレータにより脱溶媒することで、表面修飾を施したジルコニア粒子と硫黄系樹脂組成物からなる硬化性複合材料を得た。硬化性複合材料の調製時、組成比は、表面修飾を施したジルコニア微粒子50質量%と硫黄系樹脂組成物50質量%に設定した(50質量%分散体)。
【化29】
【0056】
(硬化物の目視による透明性の評価方法)
硬化性複合材料99.5質量%、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.5質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機で100℃、240分加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んだ硬化物の透過側が視認できたものを「○」、できなかったものを「×」とした。なお、離形処理した板状ガラスは、板状ガラスをフッ素系離形処理剤(ダイキン、型番オプツールDSX)と希釈液(3M、型番NOVEC7100)を処理剤:希釈液=1:200で調製した混合液に1分浸漬させた後、希釈液で洗浄し1時間以上風乾させ用意した。
【0057】
(硬化物の光学物性の測定方法)
前記板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし用意した。屈折率測定には、多波長アッベ屈折率計(アタゴ、DR-M4)を用いた。ヘーズ値の測定には、分光測色計(コニカミノルタ、CM-5)を用いた。透過率測定には、紫外可視分光光度計(日本分光、V-630)を用いた。透過率測定において、厚み0.25mmにて、波長450nmから750nmの可視光領域で80%以上の透過率のものを「○」、80%未満の透過率のものを「×」とした。
【0058】
(硬化物の耐熱性の測定方法)
前記硬化膜のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定法にて2℃/分の昇温速度で測定することにより求めた(日立ハイテクサイエンス、DMS6100)。周波数10Hzにて第一昇温時のtanδ値を測定し、tanδ値のピークの温度をガラス転移温度とした。Tgが30℃以上のものを「○」、30℃未満を「×」とした。
【0059】
(硬化性複合材料のインプリント可否)
前記板状ガラスに挟んで透過側を視認できた50質量%分散体を、50mm四方の透明な易接着PETフィルム(東洋紡、A4100)に2g塗布した。塗布後、モスアイ構造を有するNiモールド(綜研化学、ARN20-30)を押し当てた。押し当てたまま、乾燥機で100℃、4時間硬化した。硬化物からNiモールドを剥がし、Niモールドを押し当てた硬化物の表面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ、SU8220)にて観察した。モスアイ構造が転写されているものを「○」、転写されなかったものを「×」とした。
【0060】
(硫黄系分散剤の合成)
(合成例1)
100mlバイアル瓶にチオール化合物である4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(GST)を73.7g仕込み、触媒としてペンタメチルピペリジルメタクリレートを0.02g添加した。室温で30分攪拌した後、イソシアネート系シランカップリング剤(信越化学、型番KBE-9007N)を20.0g添加した。更に、100℃で3日間攪拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、KBE-9007Nの化学構造内にある2260cm-1付近のイソシアネート基に起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて、未反応GSTを除去し親水性構造と親油性構造を有する下記構造式(11)で表される化合物を得た。
【化30】
【0061】
(実施例1)
前記構造式(11)で表される硫黄系分散剤にて表面修飾を施したジルコニア微粒子を用意した。前記構造式(10)で表される硫黄系樹脂組成物と混合し50質量%分散体を得た。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
アリル系分散剤KBM-1083(信越化学工業)にて表面修飾を施したジルコニア微粒子を用意した。前記構造式(10)で表される硫黄系樹脂組成物と混合し50質量%分散体を得た。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、金属酸化物微粒子、その表面を修飾する硫黄系分散剤、及び硬化性樹脂組成物を含む硬化性複合材料、及び該硬化性複合材料の硬化物は、光学材料として優れ、回折格子、光導波路、光ファイバー、レンズ等の光学素子に有用である。