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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】共鳴器
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/12 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
F02M35/12 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019041955
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143647
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 博行
【審査官】原 泰造
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-032251(JP,U)
【文献】実開平01-092594(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123208(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0061358(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の第1の共鳴部と、
前記第1の共鳴部の円柱軸心方向に沿って前記第1の共鳴部と並んで配され、区画壁によって前記第1の共鳴部と仕切られた円柱形状の第2の共鳴部と、
騒音発生源に連通するチャンバ又は騒音発生源に連通するダクトと、前記第1の共鳴部の円柱側面と、を連通する第1の連通管部と
記チャンバ又は前記ダクトと、前記第2の共鳴部の円柱側面と、を連通する第2の連通管部と、を備える共鳴器において
前記第1の連通管部の長さ及び前記第2の連通管部の長さが可変に構成されており、
前記第1の共鳴部の円柱軸心方向における中央位置よりも前記区画壁に近い位置において、前記第1の共鳴部が前記第1の連通管部と連通し、
前記第2の共鳴部の円柱軸心方向における中央位置よりも前記区画壁に近い位置において、前記第2の共鳴部が前記第2の連通管部と連通している、ことを特徴とする共鳴器。
【請求項2】
前記第1の連通管部は、前記第1の共鳴部と連通した第1の一端側管部と、前記チャンバ又は前記ダクトと連通し前記第1の一端側管部に挿し込み可能な第1の他端側管部とを有し、前記第1の一端側管部に対して前記第1の他端側管部を挿し込む長さが可変であり、
前記第2の連通管部は、前記第2の共鳴部と連通した第2の一端側管部と、前記チャンバ又は前記ダクトと連通し前記第2の一端側管部に挿し込み可能な第2の他端側管部とを有し、前記第2の一端側管部に対して前記第2の他端側管部を挿し込む長さが可変であることを特徴とする請求項1に記載の共鳴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音発生源に連通するチャンバ又はダクトに取り付け可能な共鳴器に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機等の騒音発生源に連通するチャンバやダクトを介して、当該騒音発生源から伝搬される音を低減するために、当該チャンバやダクトに取り付け可能な共鳴器が用いられる。
【0003】
当該共鳴器は、チャンバやダクトに対して分岐接続され、分岐位置より上流側の音響パワーレベルLwiと下流側の音響パワーレベルLwoとの差に相当する音響パワーレベルを低減するように構成されている。
【0004】
この低減される音響パワーレベル、すなわち共鳴器の透過損失TLは、共鳴器の形状に応じて定まる共鳴周波数において最大となり、共鳴周波数より低周波側及び高周波側において徐々に低下してしまうため、消音対象の共鳴周波数が変わる場合に消音効果が満足に得られない場合があった。
【0005】
このような消音すべき周波数の変化に応じて共鳴周波数を変化させるために、特許文献1には、ダクトに分岐接続された複数の共鳴室を設け、これら共鳴室を連通管によって相互に連通させるとともに、当該連通管に設けた開閉弁を消音対象の共鳴周波数の変化に応じて開閉させる技術が提案されている。
【0006】
しかし、このような開閉弁を開閉制御する構成は、構成が複雑で高価なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-22021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、消音対象の周波数に応じて、共鳴周波数を容易に変更することができる共鳴器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための本発明に係る共鳴器の特徴構成は、円柱形状の第1の共鳴部と、前記第1の共鳴部の円柱軸心方向に沿って前記第1の共鳴部と並んで配され、区画壁によって前記第1の共鳴部と仕切られた円柱形状の第2の共鳴部と、騒音発生源に連通するチャンバ又は騒音発生源に連通するダクトと、前記第1の共鳴部の円柱側面と、を連通する第1の連通管部と記チャンバ又は前記ダクトと、前記第2の共鳴部の円柱側面と、を連通する第2の連通管部と、を備える共鳴器において前記第1の連通管部の長さ及び前記第2の連通管部の長さが可変に構成されており、前記第1の共鳴部の円柱軸心方向における中央位置よりも前記区画壁に近い位置において、前記第1の共鳴部が前記第1の連通管部と連通し、前記第2の共鳴部の円柱軸心方向における中央位置よりも前記区画壁に近い位置において、前記第2の共鳴部が前記第2の連通管部と連通している点にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る共鳴器が取り付けられたチャンバの側面図
図2】本発明に係る共鳴器が取り付けられたチャンバの正面図
図3】本発明に係る共鳴器の側面図
図4】本発明に係る共鳴器の正面図
図5】連通管部の長さを異ならせたときの相対音圧の変化を示す説明図
図6】別実施例に係る共鳴器の側面図
図7】別実施例に係る共鳴器の正面図
図8】連通管部の長さを異ならせたときの透過損失の変化を示す説明図
図9】別実施例に係る共鳴器の側面図
図10】別実施例に係る共鳴器の正面図
図11】連通管部の長さを異ならせたときの透過損失の変化を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る共鳴器の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0018】
図1及び図2に示すように、騒音発生源である空調機1の吹出口に連通して設けられるチャンバ2には、空調機1から伝搬される音を低減するために共鳴器10が取り付けられている。
【0019】
[実施例1]
図3及び図4に示すように、共鳴器10は、円柱形状の共鳴室を有する本体部20と、これをチャンバ2に連通させる連通管部30とを備えている。
【0020】
本体部20は、長さ940mmの硬質塩ビ管(VU450)の両方の開放端が、厚さ15mmの硬質塩ビ板が接着されるなどして、閉塞されて構成され、したがって、本体部20の内部空間が、円柱形状の共鳴室21を構成する。
【0021】
本実施形態においては、本体部20の内部には、共鳴室21を円柱形状の軸心方向に並んだ二つの共鳴部21a,21bに区画する一つの区画壁20aを備えている。区画壁20aは、長手方向の中央、すなわち長手方向の一端から470mmの位置に設けられている。区画壁20aも、厚さ15mmの硬質塩ビ板から構成され、接着剤や溶接等によって本体部20の内面に固定されている。
【0022】
連通管部30は、共鳴室21の円柱側面に連通される一端側管部31と、チャンバ2に連通可能な他端側管部32とを備えている。
【0023】
本実施形態においては、共鳴室21は、二つの共鳴部21a,21bに区画されていることから、共鳴部21aに連通する連通管部30aと、共鳴部21bに連通する連通管部30bの二つが設けられている。連通管部30a,30bは、それぞれ、共鳴部21a,21bの円柱側面のうち、円柱軸心に沿った中央位置に設けられているのではなく、区画壁20aに近い位置に設けられている。具体的には、連通管部30a,30bの軸心どうしの間隔が100mmとなる位置に設けられている。
【0024】
連通管部30a,30bは同一の構成であるため、以下の説明において両者を区別する必要がない限り、両者を区別することなく単に連通管部30と記載する。連通管部30を構成する各部も同様である。
【0025】
一端側管部31は硬質塩ビソケット(VU100)から構成され、本体部20の円周側面に設けられた開口に挿通させられた状態で、本体部20の表面からの突出量が50mmとなるように、接着剤や溶接等によって固定されている。
【0026】
チャンバ2の天面に、ざぐりを有する開口3が設けられてあり、この開口3に一端側管部31の先端側が抜き挿し可能、かつ、チャンバ2内の通風方向に直交する態様で挿し込まれている。ざぐりの深さが、チャンバ2の天面に対する一端側管部31の挿し込み深さとなる。なお、チャンバ2は共鳴器10の共鳴周波数において平面波音場となるように、複数(本実施形態においては4枚)の仕切り板によって複数(本実施形態においては5つ)の部分に仕切られており、共鳴器10は各仕切られた部分ごとに設けられている。
【0027】
他端側管部32は、一端側管部31に挿し込み可能なサイズの硬質塩ビ管(VU100)から構成され、一方の端部が一端側管部31に挿し込まれた状態であるときに、他方の端部が、チャンバ2の内部に位置する。
【0028】
他端側管部32は、長さの異なる複数の硬質塩ビ管から構成されている。一端側管部31に挿し込まれる硬質塩ビ管を変更することによって、連通管部30の一端側と他端側との距離が変化し、共鳴器10の共鳴周波数を変更させることができる。
【0029】
具体的には、図5に示すように、チャンバ2に共鳴器10を取り付けないとき(実線参照)に比べて、連通管部30を、一端側管部31に挿し込む他端側管部32の長さを異ならせた共鳴器10をチャンバ2に取り付けたとき(破線、一点鎖線参照)は、相対音圧が低下する周波数が異なることから、連通管部30の一端側と他端側との距離に応じて、消音される周波数が変化していることが確認された。なお、連通管部30の一端側と他端側との距離が短いほど共鳴周波数は高くなる。
【0030】
[実施例2]
図6及び図7に示すように、実施例2において、本体部20は、長さ550mmの硬質塩ビ管(VU200)の両方の開放端が、厚さ10mmの硬質塩ビ板が接着されるなどして、閉塞されて構成され、本体部20内部には、三つの区画壁20a,20b,20cが、長手方向の一端から140mmの位置、275の位置、410mmの位置に設けられている。区画壁20a,20b,20cも、厚さ10mmの硬質塩ビ板から構成され、接着剤や溶接等によって本体部20の内面に固定されている。したがって、実施例2に係る共鳴器10においては、三つの区画壁20a,20b,20cによって、共鳴室21は四つの共鳴部21a,21b,21c,21dに区画されている。
【0031】
実施例2に係る共鳴器10の連通管部30を構成する一端側管部31は硬質塩ビソケット(VU75)から構成され、他端側管部32は、一端側管部31に挿し込み可能なサイズの硬質塩ビ管(VU75)から構成されている。なお、各連通管部30の軸心どうしの間隔は135mmである。
【0032】
図8に示すように、長さが異なる三つの他端側管部32を、一端側管部31に、それぞれ順に差し込んで、共鳴器10を通過する前後の透過損失を計測すると、長さに応じて三箇所のピークが確認された(実線、破線、一点鎖線参照)。つまり、連通管部30の一端側と他端側との距離に応じて、消音される周波数が変化していることが確認された。なお、連通管部30の一端側と他端側との距離が短いほど共鳴周波数は高くなる。
【0033】
[実施例3]
図9及び図10に示すように、実施例3において、本体部20は、長さ550mmの硬質塩ビ管(VU150)の両方の開放端が、厚さ10mmの硬質塩ビ板が接着されるなどして、閉塞されて構成され、本体部20内部には、三つの区画壁20a,20b,20cが、長手方向の一端から140mmの位置、275の位置、410mmの位置に設けられている。区画壁20a,20b,20cも、厚さ10mmの硬質塩ビ板から構成され、接着剤や溶接等によって本体部20の内面に固定されている。したがって、実施例3に係る共鳴器10においても、実施例2と同様に、三つの区画壁20a,20b,20cによって、共鳴室21は四つの共鳴部21a,21b,21c,21dに区画されている。
【0034】
実施例3に係る共鳴器10の連通管部30を構成する一端側管部31は硬質塩ビソケット(VU75)から構成され、他端側管部32は、一端側管部31に挿し込み可能なサイズの硬質塩ビ管(VU75)から構成されている。なお、各連通管部30の軸心どうしの間隔は135mmである。
【0035】
図11に示すように、長さが異なる三つの他端側管部32を、一端側管部31に、それぞれ順に差し込んで、共鳴器10を通過する前後の透過損失を計測すると、長さに応じて三箇所のピークが確認された(実線、破線、一点鎖線参照)。つまり、連通管部30の一端側と他端側との距離に応じて、消音される周波数が変化していることが確認された。なお、連通管部30の一端側と他端側との距離が短いほど共鳴周波数は高くなる。
【0036】
上述した実施形態においては、連通管部は、長さの異なる複数の硬質塩ビ管を備え、硬質塩ビソケットに差し込む硬質塩ビ管を変更することによって、共鳴器の共鳴周波数を変更させる構成について説明したが、これに限らない。
【0037】
例えば、一端側管部及び他端側管部の両方を、一方が他方に挿し込み可能なサイズの硬質塩ビ管を用いてテレスコピックに構成し、一方の前記他方に対する挿し込み深さを変更することによって、共鳴器の共鳴周波数を変更させてもよい。
【0038】
上述のように、消音対象の周波数に応じて、共鳴周波数を容易に変更することができる共鳴器10が実現される。なお、上述のいずれの実施例においても、共鳴室は区画壁によって複数の共鳴部に区画されていたが、区画壁の数は例示であり、なくてもよいし、二以上の複数であってもよい。また、上記の寸法は例示であってこれに限らない。
【0039】
また、上述した実施形態においては、共鳴器10がチャンバ2に取り付けられる構成について説明したが、共鳴器10は、騒音発生源に連通するダクトに取り付けられてもよい。
【0040】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲において適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 :空調機(騒音発生源)
2 :チャンバ
3 :開口
10 :共鳴器
20 :本体部
20a :区画壁
20b :区画壁
20c :区画壁
21 :共鳴室
21a :共鳴部
21b :共鳴部
21c :共鳴部
21d :共鳴部
30 :連通管部
31 :一端側管部
32 :他端側管部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11