(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンおよびMEMSパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 7/02 20060101AFI20230524BHJP
B81C 3/00 20060101ALI20230524BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20230524BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B81B7/02
B81C3/00
H04R19/04
H01L29/84 Z
(21)【出願番号】P 2019054758
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500393893
【氏名又は名称】新科實業有限公司
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】田家 裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】ビナラオ アンソニー レイモンドメラド
(72)【発明者】
【氏名】王 進武
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第102017115405(DE,B3)
【文献】特開平01-069341(JP,A)
【文献】特開2008-271426(JP,A)
【文献】特開平06-071767(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0121996(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0170109(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0315295(US,A1)
【文献】特開2017-113918(JP,A)
【文献】特開2009-260284(JP,A)
【文献】特開2017-221887(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159554(WO,A1)
【文献】特開2016-010763(JP,A)
【文献】特開2020-146658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 7/02
B81C 3/00
H04R 19/04
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSチップと、該MEMSチップが固着されているパッケージ基板とを有するMEMSパッケージであって、
該MEMSパッケージは、前記パッケージ基板または前記MEMSチップに接着されている薄膜フィルタを有し、
該薄膜フィルタは、フィルム面と、該フィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有する薄膜部を有し、
該薄膜部の前記パッケージ基板または前記MEMSチップに接着されている接着領域に、前記フィルム面から前記裏フィルム面まで貫通する貫通孔が形成され、
前記薄膜フィルタの接着に用いられているフィルタ接着層が前記貫通孔に入り込んだ接着層進入構造を有す
るMEMSパッケージ。
【請求項2】
前記フィルタ接着層が前記薄膜部の前記接着領域および前記貫通孔の内壁面に接着されている
請求項1記載のMEMSパッケージ。
【請求項3】
前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が前記貫通孔の内側に形成されている
請求項1または2記載のMEMSパッケージ。
【請求項4】
前記薄膜部の前記接着領域以外のフィルタ領域にも前記貫通孔が形成され、前記接着領域に形成されている前記貫通孔および前記フィルタ領域に形成されている前記貫通孔の双方の内側に、前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が形成されている
請求項1または2記載のMEMSパッケージ。
【請求項5】
前記筋状部は、前記貫通孔の内壁面よりも凹んだ凹部または該内壁面よりも突出した凸部として形成され、
前記フィルタ接着層は、前記筋状部が前記凹部として形成されているときには前記凹部に入り込み、前記筋状部が前記凸部として形成されているときには前記凸部の前記内壁面よりも突出している突出面に接触している
請求項3または4記載のMEMSパッケージ。
【請求項6】
前記貫通孔が平面視円形に形成され、
前記薄膜フィルタは、前記貫通孔をそれぞれ複数有する第1の貫通孔群および第2の貫通孔群を有し、
該第1の貫通孔群は、前記薄膜部の周端部との間隔が第1の間隔に設定されている第1の貫通孔を有し、かつ複数の該貫通孔が直線上に等間隔で配置され、
該第2の貫通孔群は、前記周端部との間隔が前記第1の間隔と異なる第2の間隔に設定されている第2の貫通孔を有し、かつ複数の該貫通孔が直線上に等間隔で配置され、
前記第1の貫通孔群によって形成される第1のラインと、前記第2の貫通孔群によって形成される第2のラインとが交互に配置されている
請求項4記載のMEMSパッケージ。
【請求項7】
前記筋状部が前記貫通孔の内壁面のほぼ全体に配置されている
請求項3~6のいずれか一項記載のMEMSパッケージ。
【請求項8】
前記筋状部が前記薄膜部の厚さであるフィルム厚の80%よりも大きい長さに形成されている
請求項3~7のいずれか一項記載のMEMSパッケージ。
【請求項9】
MEMSパッケージと、該MEMSパッケージを包み込んでいるキャップとを有するMEMSマイクロフォンであって、
該MEMSパッケージは、MEMSチップと、該MEMSチップが固着されているパッケージ基板と、該パッケージ基板または前記MEMSチップに接着されている薄膜フィルタを有し、
該薄膜フィルタは、フィルム面と、該フィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有する薄膜部を有し、
該薄膜部の前記パッケージ基板または前記MEMSチップに接着されている接着領域に、前記フィルム面から前記裏フィルム面まで貫通する貫通孔が形成されているMEMSマイクロフォン。
【請求項10】
MEMSチップと、該MEMSチップが固着されるパッケージ基板とを用いてMEMSパッケージが製造されるMEMSパッケージの製造方法であって、
前記パッケージ基板が製造されるパッケージ領域が複数形成されているパッケージパネルの表面に接着剤からなるフィルタ接着層を形成するフィルタ接着層形成工程と、
剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、該剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とが実行されることによって製造されている薄膜フィルタ基板について、該薄膜フィルタ基板の前記剥離接着層から前記薄膜フィルタが剥離される薄膜フィルタ剥離工程と、
該薄膜フィルタ剥離工程によって剥離された前記薄膜フィルタが前記パッケージパネルに転写される薄膜フィルタ転写工程とを有し、
前記薄膜フィルタ形成工程は、前記薄膜フィルタの形成に用いられる樹脂層を貫通する貫通孔が、該樹脂層の前記パッケージ基板に接着される予定の接着予定領域に形成される貫通孔形成工程を有し、
前記薄膜フィルタ転写工程は、前記接着予定領域が前記フィルタ接着層に重ねられた後、該フィルタ接着層の一部が前記貫通孔に入り込むようにすることによって、前記薄膜フィルタが前記パッケージ領域に接着されるMEMSパッケージの製造方法。
【請求項11】
前記薄膜フィルタ形成工程は、前記薄膜フィルタが形成される複数の個別領域が各前記パッケージ領域に応じた配置で形成されているフィルタ層が前記剥離接着層上に形成される
請求項10記載のMEMSパッケージの製造方法。
【請求項12】
MEMSチップと、該MEMSチップが固着されるパッケージ基板とを用いてMEMSパッケージが製造されるMEMSパッケージの製造方法であって、
剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、前記剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とが実行されることによって製造されている薄膜フィルタ基板について、該薄膜フィルタ基板の表面に接着剤からなるフィルタ接着層が形成されることによって、接着層付フィルタ基板が製造される接着層付フィルタ基板製造工程と、
前記MEMSチップが製造されるMEMS領域が複数形成されているMEMS基板と、前記接着層付フィルタ基板とが重なった重合基板が製造される基板重合工程と、
該重合基板が加熱されて、前記重合基板から前記剥離接着層と前記ベース基板とが剥離されることによって、前記薄膜フィルタが前記MEMSウェハに転写される薄膜フィルタ転写工程とを有し、
前記薄膜フィルタ形成工程は、前記薄膜フィルタの形成に用いられる樹脂層を貫通する貫通孔が、該樹脂層の前記MEMSチップに接着される予定の接着予定領域に形成される貫通孔形成工程を有し、
前記接着予定領域に前記フィルタ接着層が形成された後、該フィルタ接着層の一部が前記貫通孔に入り込むようにする進入工程を更に有するMEMSパッケージの製造方法。
【請求項13】
前記薄膜フィルタ形成工程は、前記薄膜フィルタが形成される複数の個別領域が前記MEMS領域に応じた配置で形成されているフィルタ層が前記剥離接着層上に形成される
請求項12記載のMEMSパッケージの製造方法。
【請求項14】
前記貫通孔形成工程は、前記薄膜フィルタの前記接着予定領域以外のフィルタ予定領域にも前記貫通孔が形成されるように実行される
請求項10~13のいずれか一項記載のMEMSパッケージの製造方法。
【請求項15】
前記貫通孔形成工程は、前記フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が前記貫通孔の内側に形成されるように実行される
請求項10~13のいずれか一項記載のMEMSパッケージの製造方法。
【請求項16】
前記薄膜フィルタ形成工程は、
前記樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、
複数の孔部が形成されているレジストパターンが該金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、
該レジストパターンがマスクに用いられて前記複数の孔部に応じた対応孔部が前記金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、
前記貫通孔形成工程は、前記筋付内壁面が形成されるように、該金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行される
請求項15記載のMEMSパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォンやセンサ等として用いられるMEMSチップがパッケージ基板上に実装されているMEMSパッケージ、MEMSパッケージを有するMEMSマイクロフォンおよびMEMSパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる微細なデバイスが知られている。MEMSはシリコン等からなる基板(素子基板ともいう)上に微細な可動素子や電子回路が集積されたデバイスである。MEMSの全体がチップ状に形成されているため、本発明において、以下、MEMSはMEMSチップともいう。MEMSチップは、マイクロフォン、センサ、アクチュエータ等として利用されている。
【0003】
例えば、マイクロフォンとして利用されるMEMSチップは、薄膜であるメンブレンと、そのメンブレンの近くに配置された1つまたは2つの薄膜からなる電極とを有し、メンブレンが配置される凹部が形成された構造を有している。静電容量型マイクロフォンとして利用されるMEMSチップでは、音圧に応じたメンブレンの変位が電極間の静電容量の変位として検出される。そのため、静電容量型マイクロフォンとして利用されるMEMSチップは、可変コンデンサの原理で作動する。
【0004】
そして、MEMSチップがパッケージ基板上に実装されているMEMSパッケージに関して、従来、次のような2つの構造が知られていた。1つは、FCB(Flip Chip Bonding)によって、MEMSチップがパッケージ基板上に実装される構造(例えば、特許文献1参照)であり、もう1つは、ワイヤボンディング(Wire Bonding)によって、MEMSチップがパッケージ基板上に実装される構造(例えば、特許文献2参照)である。
【0005】
従来、静電容量型マイクロフォンとして利用されるMEMSでは、外部から進入した微粒子に起因する次のA),B)の課題があった。A)微粒子がメンブレンに当たり、そのことによってメンブレンが傷つく、B)微粒子が電極の間に入り込み、そのことによって可変コンデンサの機能が低下する。そのため、従来、微粒子の進入を防ぐ薄膜(微粒子フィルタ)が音孔に形成されているマイクロフォンモジュールが知られていた(例えば、特許文献3参照)。また、フィルムが装着されることによって、実装工程等におけるダストの進入が防止されるマイクロフォンユニットも知られていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-184341号公報
【文献】特開2012-39272号公報
【文献】米国特許9565488号明細書
【文献】特開2015-199069号公報
【文献】特開2017-221887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、微小穿孔が形成されているフィルムが知られている。例えば、特許文献4に開示されているポリマーフィルム、特許文献5に開示されている加工フィルムが知られている。これら従来のポリマーフィルムや加工フィルムがMEMSにおいて、微粒子、水の進入を防止するフィルタとして利用されることも可能である。
【0008】
しかし、従来のポリマーフィルムや加工フィルムは、非常に厚さが薄い薄膜状に形成されているため、フィルムそのものの強度が低い。また、この種の薄膜状のフィルムがフィルタとして利用されるためには、そのフィルムがMEMSパッケージに接着等によって実装される必要がある。その場合でも、フィルムが薄膜状に形成されていることにより、接着等に関わっている部分の強度が低く、剥離等のおそれがある。
【0009】
この点、膜厚が大きくされることでフィルムの強度が高められるから、膜厚が大きくされたフィルムに微小穿孔が形成され、その微小穿孔フィルムがフィルタとして利用されることが望ましい。
【0010】
しかし、微小穿孔フィルムの膜厚が大きくされると、その微小穿孔フィルムが厚さの拡大に伴い、空気の振動が大きく妨げられる。すると、MEMSパッケージがマイクロフォンとして利用される場合には、マイクロフォンの感度や、SNR(Signal-to-Noise Ratio)等のマイク特性が大きく低下する。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、微粒子や水の進入を防止するための微小穿孔が形成されている薄膜状フィルム(薄膜フィルタ)の強度および薄膜フィルタの接着強度が高められているMEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンおよびMEMSパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、MEMSチップと、そのMEMSチップが固着されているパッケージ基板とを有するMEMSパッケージであって、そのMEMSパッケージは、パッケージ基板またはMEMSチップに接着されている薄膜フィルタを有し、その薄膜フィルタは、フィルム面と、そのフィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有する薄膜部を有し、その薄膜部のパッケージ基板またはMEMSチップに接着されている接着領域に、フィルム面から裏フィルム面まで貫通する貫通孔が形成され、薄膜フィルタの接着に用いられているフィルタ接着層が貫通孔に入り込んだ接着層進入構造を有するMEMSパッケージを特徴とする。
【0014】
さらに、フィルタ接着層が薄膜部の接着領域および貫通孔の内壁面に接着されていることが好ましい。
【0015】
また、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が貫通孔の内側に形成されていることが好ましい。
【0016】
さらに、薄膜部の接着領域以外のフィルタ領域にも貫通孔が形成され、接着領域に形成されている貫通孔およびフィルタ領域に形成されている貫通孔の双方の内側に、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が形成されているようにすることができる。
【0017】
さらに、筋状部は、貫通孔の内壁面よりも凹んだ凹部またはその内壁面よりも突出した凸部として形成され、フィルタ接着層は、筋状部が凹部として形成されているときには凹部に入り込み、筋状部が凸部として形成されているときには凸部の内壁面よりも突出している突出面に接触しているようにすることもできる。
【0018】
貫通孔が平面視円形に形成され、薄膜フィルタは、貫通孔をそれぞれ複数有する第1の貫通孔群および第2の貫通孔群を有し、その第1の貫通孔群は、薄膜部の周端部との間隔が第1の間隔に設定されている第1の貫通孔を有し、かつ複数のその貫通孔が直線上に等間隔で配置され、その第2の貫通孔群は、周端部との間隔が第1の間隔と異なる第2の間隔に設定されている第2の貫通孔を有し、かつ複数の該貫通孔が直線上に等間隔で配置され、第1の貫通孔群によって形成される第1のラインと、第2の貫通孔群によって形成される第2のラインとが交互に配置されているようにすることもできる。
【0019】
筋状部が貫通孔の内壁面のほぼ全体に配置されているようにすることもできる。
【0020】
また、筋状部が薄膜部の厚さであるフィルム厚の80%よりも大きい長さに形成されているようにすることもできる。
【0021】
そして、本発明は、MEMSパッケージと、そのMEMSパッケージを包み込んでいるキャップとを有するMEMSマイクロフォンであって、そのMEMSパッケージは、MEMSチップと、そのMEMSチップが固着されているパッケージ基板と、そのパッケージ基板またはMEMSチップに接着されている薄膜フィルタを有し、その薄膜フィルタは、フィルム面と、そのフィルム面の裏側に配置されている裏フィルム面とを有する薄膜部を有し、その薄膜部のパッケージ基板またはMEMSチップに接着されている接着領域に、フィルム面から裏フィルム面まで貫通する貫通孔が形成されているMEMSマイクロフォンを提供する。
【0022】
また、本発明は、MEMSチップと、そのMEMSチップが固着されるパッケージ基板とを用いてMEMSパッケージが製造されるMEMSパッケージの製造方法であって、パッケージ基板が製造されるパッケージ領域が複数形成されているパッケージパネルの表面に接着剤からなるフィルタ接着層を形成するフィルタ接着層形成工程と、剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、その剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とが実行されることによって製造されている薄膜フィルタ基板について、その薄膜フィルタ基板の剥離接着層から薄膜フィルタが剥離される薄膜フィルタ剥離工程と、その薄膜フィルタ剥離工程によって剥離された薄膜フィルタがパッケージパネルに転写される薄膜フィルタ転写工程とを有し、薄膜フィルタ形成工程は、薄膜フィルタの形成に用いられる樹脂層を貫通する貫通孔が、その樹脂層のパッケージ基板に接着される予定の接着予定領域に形成される貫通孔形成工程を有し、薄膜フィルタ転写工程は、接着予定領域がフィルタ接着層に重ねられた後、そのフィルタ接着層の一部が貫通孔に入り込むようにすることによって、薄膜フィルタがパッケージ領域に接着されるMEMSパッケージの製造方法を提供する。
【0023】
さらに、薄膜フィルタ形成工程は、薄膜フィルタが形成される複数の個別領域が各パッケージ領域に応じた配置で形成されているフィルタ層が剥離接着層上に形成されるようにすることができる。
【0024】
さらに、本発明は、MEMSチップと、そのMEMSチップが固着されるパッケージ基板とを用いてMEMSパッケージが製造されるMEMSパッケージの製造方法であって、剥離可能な剥離接着層がベース基板に形成される剥離接着層形成工程と、剥離接着層上に薄膜フィルタが形成される薄膜フィルタ形成工程とが実行されることによって製造されている薄膜フィルタ基板について、その薄膜フィルタ基板の表面に接着剤からなるフィルタ接着層が形成されることによって、接着層付フィルタ基板が製造される接着層付フィルタ基板製造工程と、MEMSチップが製造されるMEMS領域が複数形成されているMEMS基板と、接着層付フィルタ基板とが重なった重合基板が製造される基板重合工程と、その重合基板が加熱されて、重合基板から剥離接着層とベース基板とが剥離されることによって、薄膜フィルタがMEMSウェハに転写される薄膜フィルタ転写工程とを有し、薄膜フィルタ形成工程は、薄膜フィルタの形成に用いられる樹脂層を貫通する貫通孔が、その樹脂層のMEMSチップに接着される予定の接着予定領域に形成される貫通孔形成工程を有し、接着予定領域にフィルタ接着層が形成された後、そのフィルタ接着層の一部が貫通孔に入り込むようにする進入工程を更に有するMEMSパッケージの製造方法を提供する。
【0025】
上記MEMSパッケージの製造方法の場合、薄膜フィルタ形成工程は、薄膜フィルタが形成される複数の個別領域がMEMS領域に応じた配置で形成されているフィルタ層が剥離接着層上に形成されるようにすることができる。
【0026】
また、上記MEMSパッケージの製造方法の場合、貫通孔形成工程は、薄膜フィルタの接着予定領域以外のフィルタ予定領域にも貫通孔が形成されるように実行されることができる。
【0027】
上記MEMSパッケージの製造方法の場合、貫通孔形成工程は、フィルム面と交差する交差方向に沿った筋状部を有する筋付内壁面が貫通孔の内側に形成されるように実行されるようにすることができる。
【0028】
また、薄膜フィルタ形成工程は、樹脂層の表面に金属層が形成される金属層形成工程と、複数の孔部が形成されているレジストパターンがその金属層に形成されるレジストパターン形成工程と、そのレジストパターンがマスクに用いられて複数の孔部に応じた対応孔部が金属層に形成されることによって、金属パターンが形成される金属パターン形成工程とを更に有し、貫通孔形成工程は、筋付内壁面が形成されるように、その金属パターンをマスクに用いた反応性イオンエッチングが実行されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上詳述したように、本発明によれば、微粒子や水の進入を防止するための微小穿孔が形成されている薄膜状フィルム(薄膜フィルタ)の強度および薄膜フィルタの接着強度が高められているMEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンおよびMEMSパッケージの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係るMEMSマイクロフォンの
図3における1-1線に対応した部分の断面図である。
【
図3】MEMSマイクロフォンのキャップを外して示した要部の平面図である。
【
図4】
図1のMEMSマイクロフォンが有する薄膜フィルタの要部を拡大した平面図である。
【
図5】同じく、薄膜フィルタの複数の貫通孔を含む部分の平面図である。
【
図6】
図4の6-6線に対応した部分の断面図である。
【
図7】同じく、薄膜フィルタの要部を更に拡大した平面図である。
【
図8】
図7の8-8線の切断面を示す斜視図である。
【
図9】薄膜フィルタおよびその接着構造の要部を拡大して示した断面図である。
【
図10】薄膜フィルタおよびその接着構造の要部を示す平面図である。
【
図12】薄膜フィルタが接着される音孔の周辺部分を拡大して示した平面図である。
【
図13】接着領域に配置されている薄膜フィルタの要部を更に拡大した平面図である。
【
図15】(a)は筋状部の要部を示す斜視図、(b)は接着貫通孔の筋状部の要部を示す斜視図である。
【
図16】変形例1に係る薄膜フィルタの要部を拡大した平面図である。
【
図17】同じく、薄膜フィルタの代表貫通孔を含む部分の平面図である。
【
図18】変形例2に係る薄膜フィルタの要部を拡大した平面図である。
【
図19】同じく、薄膜フィルタの要部を更に拡大した平面図である。
【
図21】変形例3に係る薄膜フィルタの
図6に応じた断面図である。
【
図22】(a)は変形例4に係る薄膜フィルタの
図8に応じた斜視図、(b)は同じく、薄膜フィルタの接着貫通孔の要部を示す一部省略した平面図である。
【
図25】フィルタ接着層形成工程を示す要部の断面図である。
【
図26】(a)は剥離接着層形成工程を示す要部の断面図、(b)は薄膜フィルタ形成工程を示す要部の断面図である。
【
図27】(a)は
図26(b)の後続の工程を示す要部の断面図、(b)は
図27(a)の後続の工程を示す要部の断面図である。
【
図28】薄膜フィルタ基板の一例を示す断面図である。
【
図29】フィルタ接着層形成工程の別の要部を示す断面図である。
【
図30】薄膜フィルタ剥離工程を示す要部の断面図である。
【
図31】薄膜フィルタ転写工程を示す断面図である。
【
図33】変形例にかかるMEMSマイクロフォンの
図1に対応した断面図である。
【
図36】薄膜フィルタ基板の要部を示す断面図である。
【
図37】接着層付フィルタ基板製造工程を示す要部の断面図である。
【
図39】薄膜フィルタ転写工程を示す要部の断面図である。
【
図41】変形例1に係るMEMSパッケージを有するMEMSマイクロフォンを示す
図1に対応した断面図である。
【
図42】同じく、MEMSマイクロフォンを示す
図2に対応した断面図である。
【
図43】変形例2に係るMEMSパッケージを有するMEMSマイクロフォンを示す
図1に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0032】
第1の実施の形態
(MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの構造)
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の実施の形態に係るMEMSパッケージ1と、MEMSマイクロフォン100の構造について説明する。ここで、
図1は本発明の第1の実施の形態に係るMEMSマイクロフォン100の
図3における1-1線に対応した部分の断面図、
図2は
図1の要部を拡大して示した断面図である。
図3はMEMSマイクロフォン100のキャップ99を外して示した要部の平面図である。
【0033】
図1に示すように、MEMSマイクロフォン100は、MEMSパッケージ1と、キャップ99とを有している。
【0034】
MEMSパッケージ1は、MEMSチップ10と、MEMSチップ10が固着されているパッケージ基板20と、ボンディングバンプ4と、薄膜フィルタ5と、音響シールド6とを有している。また、MEMSパッケージ1は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)パッケージ91を有している。MEMSパッケージ1では、MEMSチップ10とASIC92とがFCB(Flip Chip Bonding)によってパッケージ基板20に実装されている。
【0035】
MEMSチップ10は、可動素子としてのメンブレン3が形成されている素子基板22を有している。MEMSチップ10は、静電容量型マイクロフォンとして利用される。素子基板22は
図3に示すような平面視矩形状に形成されている基板(側面22dを有する基板)であり、シリコン(silicon)を用いて形成されている。素子基板22の中央に孔部22cが形成されている。孔部22cは、素子基板22の基板面22b(素子基板22の外側の面)から対向面22a(素子基板22のパッケージ基板20に対向する面)に向かう円筒状に形成されていて、対向面22a側にメンブレン3が形成されている。なお、メンブレン3の上側と下側にバックプレートと呼ばれる2つの薄膜(図示せず)が配置されている。
【0036】
メンブレン3は、概ね円形状に形成されている振動膜であって、SiO2,SiN等の無機金属からなる薄膜である。
【0037】
ボンディングバンプ4は、はんだからなるはんだバンプである。
図2に示すように、各ボンディングバンプ4がそれぞれ4つの角部2D、2E,2F,2Gの近傍に配置されている。
【0038】
ボンディングバンプ4は、
図1に示すように、MEMSチップ10とパッケージ基板20の双方に固着されている。すなわち、ボンディングバンプ4は対向面22aに形成されている電極パッド7と、パッケージ基板20のパッケージ面20a(パッケージ基板20のMEMSチップ10側の表面)に形成されている電極パッド21の双方にそれぞれ固着されている。ボンディングバンプ4は、MEMSチップ10とパッケージ基板20とを電気的にかつ固定的に接続している。
【0039】
MEMSマイクロフォン100では、後に詳述する薄膜フィルタ5が、パッケージ基板20に対して、後述する音孔(サウンドホール)20bを塞ぐように接着されている。薄膜フィルタ5は、後述する薄膜フィルタ基板19を用いて形成されている。薄膜フィルタ5は、
図3に示すように、矩形の四隅を欠落させた変形矩形状に形成されている。
【0040】
音響シールド6は、シリコーン樹脂などからなり、MEMSチップ10を囲むようにして、MEMSチップ10とパッケージ基板20との間に形成されている。
【0041】
パッケージ基板20は、シリコンやセラミックなどからなる板材(またはPCB(プリント基板; Printed Circuit Board ))である。パッケージ基板20のパッケージ面20aに電極パッド21と、電極パッド12とが形成されている。パッケージ面20aの電極パッド21が形成されている部分にMEMSチップ10が搭載され、電極パッド12が形成されている部分にASICパッケージ91が搭載されている。また、パッケージ基板20のMEMSチップ10が搭載されている部分に音孔20bが形成されている。音孔20bは、パッケージ面20aからその反対側の底面20cまで貫通している。
【0042】
ASICパッケージ91は、ASIC92と、ボンディングバンプ93とを有している。ASIC92は、例えばMEMSチップ10の出力信号を増幅する集積回路(MEMSチップ10における静電容量の変位を電圧の変位として取り出す集積回路)である。ASIC92の下側に電極パッド14が形成されている。その電極パッド14と、パッケージ面20aの電極パッド12とがボンディングバンプ93によって接続されている。ASIC92は、パッケージ基板20に実装されている。
【0043】
キャップ99は、MEMSパッケージ1を覆っており、図示しない接着剤によって(またははんだ付けにて)、パッケージ面20aに固着されている。キャップ99と、パッケージ基板20とによって空隙99Aが確保されていて、その空隙99AにMEMSパッケージ1が収められている。
【0044】
(薄膜フィルタ)
続いて、
図4~
図8、
図15(a)を参照して、薄膜フィルタ5について説明する。ここで、
図4は薄膜フィルタ5の要部を拡大した平面図、
図5は薄膜フィルタ5の複数の貫通孔15を含む部分の平面図、
図6は
図4の6-6線に対応した部分の断面図である。
図7は薄膜フィルタ5の要部を更に
拡大した平面図、
図8は
図7の8-8線の切断面を示す斜視図である。
図15(a)は、筋状
部37の要部を示す斜視図である。
【0045】
薄膜フィルタ5は、微粒子や水の進入防止に用いられるフィルタである。薄膜フィルタ5は、
図4に示すように、ポリアミド(polyamide)またはポリイミドフィルムを用いて形成されている薄膜部16を有している。また、複数の貫通孔15が薄膜部16に形成され、
図7、8に示す筋付内壁面38がその各貫通孔15に形成されている。
【0046】
薄膜部16は、
図6に示すように、片側表面であるフィルム面16aと、フィルム面16aの裏側に配置されている裏フィルム面16bとを有している。複数の貫通孔15がその薄膜部16に規則的で均一な配置で形成されている。
図4、
図5、
図7では、そのフィルム面16aにドットが付されている。
【0047】
各貫通孔15は、
図6に示すように、フィルム面16aから裏フィルム面16bまで貫通している孔部である。フィルム面16aから裏フィルム面16bまで貫通孔15の大きさ(直径)が一定である。隣接している貫通孔15の間隔も一定の大きさで形成されている。
【0048】
また、各貫通孔15が平面視円形に形成されている。その直径(
図6のR)はおよそ2μmから6μm程度である。また、薄膜フィルタ5の膜厚(
図6のTで、薄膜部16の厚さであるフィルム厚に相当する)がおよそ1μmから6μm程度である。
【0049】
そして、
図4に詳しく示すように、薄膜フィルタ5は、第1の貫通孔群15Aおよび第2の貫通孔群15Bを有している。第1の貫通孔群15Aには、第1の貫通孔15A1と、貫通孔15A2,15A3・・・貫通孔15Anとを含む複数の貫通孔15が含まれている。第1の貫通孔15A1は、薄膜部16の周端部16eとの間隔が第1の間隔d1に設定され、かつ第1の貫通孔群15Aに含まれる貫通孔15の中で周端部16eに最も近い位置に配置されている。第1の貫通孔15A1、貫通孔15A2、15A3・・・15Anは、周端部16eと直交上に交差する方向に沿って直線上に等間隔で配置されて、第1のラインL1を形成している。
【0050】
第2の貫通孔群15Bには、第2の貫通孔15B1と、貫通孔15B2と、貫通孔15Bnとを含む複数の貫通孔15が含まれている。第2の貫通孔15B1は、周端部16eとの間隔が第1の間隔d1よりも大きい第2の間隔d2に設定され、かつ第2の貫通孔群15Bに含まれる貫通孔15の中で周端部16eに最も近い位置に配置されている。第2の貫通孔15B1、貫通孔15B2・・・15Bnは、周端部16eと直交上に交差する方向に沿って直線上に等間隔で配置されて、第2のラインL2を形成している。
【0051】
また、薄膜フィルタ5では、第1のラインL1と第2のラインL2とが交互に配置されている。
【0052】
さらに、薄膜フィルタ5は、第1の貫通孔群
15Aに含まれる隣接する貫通孔15(例えば、
図4では、貫通孔15A2、貫通孔15A3)の中心の間に、第2の貫通孔群15Bに含まれる貫通孔15(例えば、
図4の貫通孔15B2)の中心が配置されるように形成されている。
【0053】
貫通孔15は空気の通り道となるが、隣接する貫通孔15の間の部分(
図4、
図5、
図7では、ドットが付されている部分)は薄膜部16であるため、空気の通り道にならない。
【0054】
薄膜フィルタ5の場合は、
図5に示すように、代表貫通孔として、3つの隣接する貫通孔15a,15b,15cが考慮される。貫通孔15a,15b,15cの中心はa0,b0,c0であるが、これらを頂点とする三角形(
図5の三角形ABC)は貫通孔15の配置の規則性から、正三角形である。また、薄膜フィルタ5は、薄膜部16における貫通孔15の配置密度ができるだけ高くなるように形成されている。薄膜フィルタ5は、隣接する3つの貫通孔15の間に別の貫通孔15が形成され得ないように(例えば、貫通孔15a,15b,15cの間に別の貫通孔15が形成され得ないように)、隣接する貫通孔15の間隔が狭められている(このような構造を貫通孔の高密度構造ともいう)。
【0055】
そして、薄膜フィルタ5は、
図7、
図8に示すように、筋付内壁面38が各貫通孔15の内側に形成されている。筋付内壁面38は複数の筋状部37を有している。複数の筋状部37が貫通孔15の内壁面のほぼ全体に配置され、筋付内壁面38は貫通孔15の内壁面のほぼ全体に形成されている。貫通孔15の内壁面に滑らかな部分が残らないように、筋状部37が隙間なく形成されている。
【0056】
筋状部37は、フィルム面16aと交差する交差方向、すなわち、フィルム面16aから裏フィルム面16bまでを最短距離で結ぶ方向(
図8のd7、d8で示す方向)に沿って形成されている。
【0057】
各筋状部37は、貫通孔15の内壁面に交差方向に沿って概ね直線状に形成された凸部または凹部である。各筋状部37がすべて凸部でもよいし、すべて凹部でもよい。各筋状部37に凸部と凹部とが混在してもよい。
【0058】
図15(a)には、筋状部37が交差方向に沿った凹部として描かれている。
図15(a)の筋状部37は、第1の筋状部37aと、第1の筋状部37aよりも幅の広い第2の筋状部37bとを有している。各筋状部37は、フィルム厚Tの80%よりも大きい長さに形成されている。筋状部37の長さ37Lがフィルム厚Tの80%よりも大きい大きさを有している。
図15(a)に示されている筋状部37のように、各筋状部37の長さが共通でもよい。各筋状部37の長さが相違していてもよい(図示せず)。
【0059】
(薄膜フィルタ5の接着構造)
次に、
図9~
図14、
図15(b)を参照して、薄膜フィルタ5の接着構造について説明する。ここで、
図9は薄膜フィルタ5およびその接着構造の要部を拡大して示した断面図である。
図10は薄膜フィルタ5およびその接着構造の要部を示す平面図、
図11は
図10の要部を更に拡大し、一部省略した平面図、
図12は薄膜フィルタ5が接着される音孔20bの周辺部分を拡大して示した平面図である。
図13は接着領域に配置されている薄膜フィルタの要部を更に拡大した平面図である。
図14は
図13の14-14線の切断面を示す斜視図である。
図15(b)は接着貫通孔の筋状部の要部を示す斜視図である。
【0060】
薄膜フィルタ5は、
図9に示すように、パッケージ面20aのうちの音孔20bの周辺部分(音孔周辺部ともいう)20bbに、音孔20bを塞ぐようにして接着されている。また、
図12に示すように、後述する感光性接着層61が音孔周辺部20bbに形成されており、薄膜フィルタ5がその感光性接着層61によって、音孔周辺部20bbに接着されている。感光性接着層61は、音孔20bよりも若干大きい大きさの孔部61aが形成された孔あき構造を有している。
【0061】
そして、
図10,11に示すように、薄膜フィルタ5の薄膜部16において、音孔周辺部20bbに接着されている部分が接着領域16X、薄膜部16の接着領域16X以外の部分がフィルタ領域16Yである。接着領域16Xは、感光性接着層61によって、音孔周辺部20bbに接着されているから、濾過機能を有していない。これに対し、フィルタ領域16Yは、音孔20bを跨ぐようにして配置されているため、濾過機能を有している。
【0062】
また、薄膜フィルタ5では、フィルタ領域16Yだけでなく、接着領域16Xにも、貫通孔15が複数形成されている。フィルタ領域16Yに形成されている貫通孔15がフィルタ貫通孔15Yである。接着領域16Xに形成されている貫通孔15が接着貫通孔15Xである。
図10、11において、ハッチングが付されていない貫通孔15がフィルタ貫通孔15Y、ハッチングが付されている貫通孔15が接着貫通孔15Xである。
【0063】
フィルタ貫通孔15Y、接着貫通孔15Xは、薄膜部16のフィルム面16aから裏フィルム面16bまで貫通している孔部である。しかしながら、
図9、
図13、
図14に示すように、感光性接着層61を用いた接着によって、接着貫通孔15Xには(接着貫通孔15Xの音孔周辺部20bb側の一部分に)、その感光性接着層61の一部が進入部61dとして入り込んでいる。感光性接着層61の一部が進入部61dとして接着貫通孔15Xに入り込んでいる構造が本発明における接着層進入構造である。この接着層進入構造により、接着貫通孔15Xは、音孔周辺部20bb上で閉鎖されている。
【0064】
また、感光性接着層61が接着貫通孔15Xに入り込んでいるため、感光性接着層61の進入部61dが接着貫通孔15Xの内壁面(前述した筋付内壁面38であり、この点、以下詳しく説明する)に接着されている。このように、接着貫通孔15Xによって、薄膜フィルタ5のパッケージ面20aへの接着強度(接着力)が向上している。なお、感光性接着層61は、薄膜フィルタ5の接着に用いられているため、本発明におけるフィルタ接着層に相当する。感光性接着層61は、感光性接着剤を用いて形成される。そのほか、感光性接着層61の代わりに、ポリイミド系接着剤やエポキシ樹脂系接着剤を用いた接着層がフィルタ接着層として形成されることもできる。この点は後に詳述する。
【0065】
前述した筋状部37,筋付内壁面38がフィルタ貫通孔15Y、接着貫通孔15Xの双方に形成されている。
図13,14に示すように、接着貫通孔15Xにおいて、感光性接着層61の進入部61dが筋付内壁面38に接着されている。筋付内壁面38において、筋状部37は凹部として形成されている。そのため、
図15(b)に示すように、進入部61dが筋状部37の中に(筋状部37a,37bの凹んだ曲面部分37ad,37bdに)入り込み、曲面部分37ad,37bdに接着されている。
図15(b)に示すように、貫通孔15(フィルタ貫通孔15Y、接着貫通孔15X)の筋付内壁面38が無い滑らかな内壁面15ddよりも、進入部61dが曲面部分37ad,37bdに入り込んでいるため、進入部61dがより広い部分に接着されている。
【0066】
(MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの製造方法)
続いて、以上の構成を有するMEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100の製造方法について、
図23~
図31を参照して説明する。ここで、
図23は後述するパッケージパネル40を示す斜視図、
図24は後述する薄膜フィルタ基板19を示す斜視図である。
図25~
図29は、フィルタ接着層形成工程、薄膜フィルタ基板形成工程、薄膜フィルタ剥離工程、薄膜フィルタ転写工程を示す要部の断面図である。
【0067】
MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100の製造方法では、前述したMEMSチップ10と、ASIC92と、そのMEMSチップ10とASIC92とが固着されるパッケージ基板20とを用いて、MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100が製造される。その製造方法には、後述するフィルタ接着層形成工程と、薄膜フィルタ剥離工程と、薄膜フィルタ転写工程とが含まれている。また、パッケージ基板20が
図23に示すパッケージパネル40を用いて製造される。
【0068】
パッケージパネル40は、
図23に示すように、PCBまたはセラミックからなる矩形板状の部材であり、その表面40aに複数のパッケージ領域41が規則的な配置で形成されている。パッケージパネル40が分割ライン42に沿って分割されると、各パッケージ領域41によって、パッケージ基板20が製造される(パッケージパネル1枚あたり概ね600個程度)。
【0069】
薄膜フィルタ基板19は、
図24に示すように、シリコンウェハ31(ガラス、石英などからなる基板でもよい)と、フィルタ層29と、剥離接着層33とを有している。薄膜フィルタ基板19は、後述する薄膜フィルタ基板製造工程が実行されることによって製造される。
【0070】
そして、薄膜フィルタ基板19は、MEMSマイクロフォン100に用いられるという特定の用途を有している。そのため、薄膜フィルタ基板19の場合、シリコンウェハ31が複数の個別領域31Xを有し、フィルタ層29が複数の個別領域51を有している。
【0071】
複数の個別領域31Xは、パッケージパネル40のパッケージ領域41に応じた規則的な配置で形成されている。各個別領域31Xの間が分割ライン42に応じた分割ライン31yになっている。また、複数の個別領域51も、パッケージパネル40のパッケージ領域41に応じた規則的な配置で形成されている。各個別領域51の間が分割ライン42に応じた分割ライン52になっている。フィルタ層29が分割ライン52に沿って区分けされることによって、複数の個別領域51が形成される。その各個別領域51から薄膜フィルタ5が形成される。その各個別領域51に前述した複数の貫通孔15および筋付内壁面38が形成されている。
【0072】
また、各個別領域51には、
図24に示すように、フィルタ部58が配置される。各フィルタ部58が後に前述の薄膜フィルタ5になる。そのため、各フィルタ部58は、薄膜フィルタ5に応じた変形矩形状に形成される。
【0073】
(薄膜フィルタ基板製造工程)
薄膜フィルタ基板製造工程には、剥離接着層形成工程と、薄膜フィルタ形成工程とが含まれている。
【0074】
(剥離接着層形成工程)
剥離接着層形成工程では、シリコンウェハ31に剥離接着層33が形成される。この場合、例えば、熱発泡性テープがベース基板としてのシリコンウェハ31のベース面31aに張り付けられる。すると、
図26(a)に示すように、剥離接着層33が形成される。また、図示しない熱発泡性樹脂がシリコンウェハ31のベース面31aに塗布されることによって、剥離接着層33が形成されることもできる。
【0075】
熱発泡性樹脂は樹脂および発泡剤を含む。熱発泡性樹脂は加熱によりガスを発生させて発泡可能である。このような熱発泡性樹脂が塗布されて、熱発泡性樹脂層が形成されると、その熱発泡性樹脂層が加熱によって剥離する熱剥離層になり、その熱剥離層によって、剥離接着層33が形成される。また、熱発泡性樹脂がシート状に加工されている熱発泡性樹脂シートが張り付けられて熱発泡性樹脂層が形成されてもよい。この場合、その熱発泡性樹脂シートによって、剥離接着層33が形成される。
【0076】
(薄膜フィルタ形成工程)
次に、
図26(a)、(b)、
図27(a)、(b)に示すように、薄膜フィルタ形成工程が実行されることによって、フィルタ層29が剥離接着層33上に形成される。その薄膜フィルタ形成工程には、樹脂層形成工程と、金属層形成工程と、レジストパターン形成工程と、金属パターン形成工程と、貫通孔形成工程とが含まれている。
【0077】
まず、樹脂層形成工程が実行される。樹脂層形成工程では、
図26(a)、に示すように、樹脂層44がポリアミド(polyamide)またはポリイミドフィルムを用いて剥離接着層33上に形成される。
【0078】
次に、金属層形成工程が実行される。金属層形成工程では、
図26(b)に示すように、金属層45がチタン(Ti)を用いて樹脂層44の表面上に形成される。チタン(Ti)のほか、SUS,Crが用いられて金属層45が形成されることもできる。
【0079】
続いて、レジストパターン形成工程が実行される。レジストパターン形成工程では、金属層45の表面にフォトレジストが塗布される。その後、図示しないフォトマスクを用いて露光が行われ、さらに現像が行われることにより、複数の孔部46rが形成されているレジストパターン46pが形成される。
【0080】
次に、金属パターン形成工程が実行される。金属パターン形成工程では、レジストパターン46pがマスクに用いられて金属層45を対象にしたArによるミリングが行われる(反応性イオンエッチングが行われてよいし、ウェットエッチングが行われてもよい)。その後、レジストパターン46pが除去される。すると、
図27(a)に示すように、金属層45の不要な部分が除去され、レジストパターン46pの孔部46rに応じた対応孔部45hが金属層45に形成される。これによって、金属パターン45Aが形成される。金属パターン45Aは、のちに形成されるフィルタ層29に応じたパターンで形成される。
【0081】
続いて、貫通孔形成工程が実行される。貫通孔形成工程では、金属パターン45Aがマスクに用いられて、筋付内壁面38が形成されるように、樹脂層44に対する反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)が実行される。すると、
図27(b)に示すように、金属パターン45Aに応じて、樹脂層44の金属パターン45Aで被覆されていない部分が不要な部分として除去される。不要な部分が除去される箇所に貫通孔15が形成される。この場合、樹脂層44の各個別領域51において、各フィルタ部58の周縁部58eおよびその内側の領域(後に前述したフィルタ領域16Yになる部分で、フィルタ予定領域ともいう)に貫通孔15が形成される。各フィルタ部58の周縁部58eは、後に音孔周辺部20bbに接着される予定の領域であり、本発明における接着予定領域に相当する(周縁部58eは
図24参照)。
【0082】
そして、反応性イオンエッチングでは、イオンによるスパッタ作用と化学反応の両方の効果でエッチングが進行する。そのため、反応性イオンエッチングでは、アンダーカットのない垂直な形状が実現されやすい。したがって、貫通孔15の内側に複数の筋状部37が形成され、それによって、筋付内壁面38が形成される。こうして、反応性イオンエッチングが実行された後の樹脂層44によって、薄膜部16を有するフィルタ層29が得られる。
【0083】
貫通孔形成工程が実行されたあと、
図28に示すフィルタ層29のように、金属パターン45Aが除去されることもあるが、
図27(b)に示すフィルタ層29のように、薄膜部16の表面(フィルム面16a)に金属パターン45Aが残ることもある。以上のようにして、薄膜フィルタ基板19が製造される。
【0084】
(フィルタ接着層形成工程)
フィルタ接着層形成工程では、
図25に示すように、感光性接着層61がパッケージパネル40の表面40aに形成される。感光性接着層61は、感光性ポリイミド接着剤シートを張り付けるなどして形成される。この場合、
図29に示すように、感光性接着層61は、音孔20bが後に形成される部分を除いた孔あき構造で形成される。感光性接着層61の代わりに、ポリイミド系接着剤やエポキシ樹脂系接着剤を用いた接着層が形成されることもできる。感光性接着層61や、これらの接着層がフィルタ接着層となる。
【0085】
(薄膜フィルタ剥離工程)
薄膜フィルタ剥離工程では、薄膜フィルタ基板19が加熱される。すると、そのときの熱によって、剥離接着層33が発泡する。そのため、
図30に示すように、剥離接着層33からフィルタ層29が剥がれる。こうして、フィルタ層29が製造される。
【0086】
(薄膜フィルタ転写工程)
続いて、薄膜フィルタ転写工程が実行される。薄膜フィルタ転写工程では、薄膜フィルタ基板19から剥離されたフィルタ層29がパッケージパネル40に転写される。この場合、前述したようにパッケージパネル40の表面40aに感光性接着層61が形成されているため、
図31に示すように、その上に、薄膜フィルタ基板19から剥離されたフィルタ層29が重ねられる。また、パッケージパネル40には、複数のパッケージ領域41が形成されているので、各パッケージ領域41において、レーザ加工によって、フィルタ層29の不要部分が除去される。この場合、各パッケージ領域41において、フィルタ部58が残され、そのほかの部分は除去される。
【0087】
そして、各パッケージ領域41において、各フィルタ部58の周縁部58eが感光性接着層61の上に重なる。このとき、感光性接着層61が常温でペースト状の場合、感光性接着層61の表面の一部が、フィルタ部58の周縁部58e(接着予定領域に相当する)の貫通孔15の内側に進入して、前述した進入部61dになる。また、感光性接着層61が加熱されたときに軟化する場合には、パッケージパネル40が加熱されたときの熱によって、感光性接着層61の表面が柔らかくなり、その一部が貫通孔15の内側に進入して進入部61dになる。すると、進入部61dが形成される貫通孔15が前述した接着貫通孔15Xになり、前述した接着層進入構造が得られる。
【0088】
このように、薄膜フィルタ転写工程では、フィルタ部58が後にパッケージ基板20となる各パッケージ領域41に接着される。このようにして、薄膜フィルタ5が音孔20bを塞ぐようにして形成される。
【0089】
(そのほかの工程)
その後、MEMSチップ搭載工程が実行される。MEMSチップ搭載工程では、MEMSチップ10に電極パッド7が形成され、さらにはんだバンプが形成される。その後、パッケージパネル40において、MEMSチップ10が、はんだバンプを用いたフリップチップボンディングによってパッケージ領域41ごとに搭載されて、チップ付きパネル40X(
図32参照)が形成される。そのチップ付きパネル40Xが図示しない加熱リフロー炉に通される。すると、はんだバンプが溶融したあと、ボンディングバンプ4になる。その後、音響シールド6が形成される(MEMSチップ10が実装される前に音響シールド6が形成される場合もある)。
【0090】
その後、ASIC92がパッケージ領域41に実装され、さらに、キャップ99が固着される。なお、チップ付きパネル40XにASIC92が実装されるときは、MEMSチップ10とASIC92の一括リフローが行われてもよい。
【0091】
さらに続いて、パネル裁断工程が実行される。パネル裁断工程では、MEMSチップ10およびASIC92が実装され、さらにキャップ99が被せられたチップ付きパネル40Xが分割ライン42に沿ってパッケージ領域41ごとに裁断される。すると、チップ付きパネル40Xが複数のパッケージ領域41に区分けされる。その各パッケージ領域41によって、パッケージ基板20とともに、MEMSパッケージ1とMEMSマイクロフォン100とが製造される。製造されたパッケージ基板20には、前述した薄膜フィルタ5が接着されている。
【0092】
(MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの作用効果)
MEMSパッケージ1とMEMSマイクロフォン100には、薄膜フィルタ5が接着されているから、微粒子や水の外部からの進入がその薄膜フィルタ5によって防止される。薄膜フィルタ5の薄膜部16は、非常に厚さが薄い薄膜状に形成されている。しかし、貫通孔15(接着貫通孔15X)がそのパッケージ基板20に接着される接着領域16Xに形成されている。そのため、パッケージ基板20に接着されている状態で、その接着に用いられる感光性接着層61が貫通孔15(接着貫通孔15X)の内側に接触して、感光性接着層61が貫通孔15(接着貫通孔15X)に係合する構造が得られる。そのため、薄膜フィルタ5の接着強度(接着力)が、貫通孔のない滑らかな表面がパッケージ基板20に接着される場合に比べて向上している。
【0093】
また、感光性接着層61の一部が進入部61dとして貫通孔15(接着貫通孔15X)の内側に進入しているから、感光性接着層61のアンカー効果が得られ、よって、接着力がさらに向上する。
【0094】
感光性接着層61が接着領域16Xに接着されるだけでなく、その一部が進入部61dとして貫通孔15(接着貫通孔15X)の内壁面(筋付内壁面38)にも接着されているから、感光性接着層61と薄膜フィルタ5の接触面積が広がり、よりいっそう接着力が向上している。
【0095】
一方、薄膜フィルタ5には、複数の貫通孔15が形成され、その内側に筋付内壁面38が形成されているから、貫通孔15の内壁面が滑らかな曲面である場合に比べて、感光性接着層61と貫通孔15の内壁面との接触面積が広がる。そのため、感光性接着層61のアンカー効果が拡大され、接着力もよりいっそう向上する。
【0096】
そして、薄膜フィルタ5には、複数の貫通孔15が形成され、その内側に筋付内壁面38が形成されている。複数の貫通孔15が、筋付内壁面38が形成されるように、反応性イオンエッチングで形成されている。そのため、薄膜フィルタ5には、例えば、デブリの付着による孔の閉鎖のような製造工程に起因する濾過機能の低下がない。また、薄膜フィルタ5の耐久性も良好である。
【0097】
筋付内壁面38は、複数の筋状部37を有しており、筋状部37は交差方向に沿って形成されている。すると、空気が薄膜フィルタ5を通過する場合、その空気による気流(通過気流)は、貫通孔15(フィルタ貫通孔15Y)の内側を筋状部37に沿った方向(
図8のd7、d8で示す方向)に通過する。つまり、筋状部37が貫通孔15(フィルタ貫通孔15Y)を通過する気流の動きを交差方向に整えるガイド部材となるため、d7、d8で示す方向とは異なった方向の気流が形成されない。ゆえに、貫通孔15(フィルタ貫通孔15Y)の周囲の部分が通過気流の影響を受けにくく、損傷も受けにくい。通過気流が一定の方向を向くような構造を薄膜フィルタ5が有するから、薄膜フィルタ5の耐久性が良好である。
【0098】
また、薄膜フィルタ5では、貫通孔15の孔開け加工が反応性イオンエッチングで行われている。反応性イオンエッチングでは、イオンによるスパッタ作用と化学反応の両方の効果でエッチングが進行する。この場合、除去された材料(薄膜フィルタ5の場合は、ポリイミドなど)が揮発物質化され、それを含む真空排気が行われる。そのため、デブリの発生や、そのデブリの付着が生じることもない。したがって、貫通孔15の孔径にばらつきが生じることもない。よって、薄膜フィルタ5は、製造工程に起因する濾過機能の低下がなく、耐久性も良好である。
【0099】
薄膜フィルタ5では、筋状部37が貫通孔15の内壁面のほぼ全体に配置されているから、貫通孔15の内壁面のほぼ全体がガイド部材であり、耐久性が良好である。また、筋状部37がフィルム厚Tの80%よりも大きい長さに形成されているから、通過気流の乱れがより生じにくく、筋状部37が良好なガイド部材となる。
【0100】
そして、薄膜フィルタ5では、第1の貫通孔群15Aに含まれる隣接する貫通孔15の中心の間に、第2の貫通孔群15Bに含まれる貫通孔15の中心が配置されるように形成されている。そのため、薄膜フィルタ5において、貫通孔15の配置に無駄がなく、通過気流の通り道になる部分が効率的に確保されている。しかも、薄膜フィルタ5が高密度構造を有するから貫通孔15の配置によりいっそうの無駄がない。
【0101】
一方、薄膜フィルタ5(フィルタ層29)は、ポリアミド(polyamide)またはポリイミドなどからなる薄膜部16が主体となった部材であるため、それ単独での取扱いが困難である。しかし、薄膜フィルタ基板19であれば、平板状のシリコンウェハ31を有するから、運搬、保管等の取扱いが容易になる。
【0102】
しかも、薄膜フィルタ基板19は、剥離接着層33を有しているので、必要に応じて、フィルタ層29がシリコンウェハ31から剥離されることによって、フィルタ層29が取り出される。そのフィルタ層29が所望の製品に取り付けられることで、その製品に求められる濾過機能が発揮される。そのため、薄膜フィルタ基板19の利便性が高い。また、シリコンウェハ31は、フィルタ層29が剥離されたあと、再びフィルタ層29が形成されるベース基板として再利用可能であるから、材料や資源の無駄が減少する。
【0103】
(薄膜フィルタの変形例1)
次に、
図16、
図17を参照して、変形例1に係る薄膜フィルタ32について説明する。ここで、
図16は、変形例1に係る薄膜フィルタ32の要部を示した平面図、
図17は薄膜フィルタ32の代表貫通孔15a,15b,15c,15dを含む部分の平面図である。
【0104】
薄膜フィルタ32は、薄膜フィルタ5と比較して、第1の貫通孔群15Aを有しているが、第2の貫通孔群15Bを有していない点で相違している。薄膜フィルタ32は、第2の貫通孔群15Bを有していないので、第1のラインL1が複数配置されている。また、それぞれの第1のラインL1に含まれる第1の貫通孔15A1、貫通孔15A2、15A3・・・15Anが周端部16eと直交上に交差する方向に沿って直線上に等間隔で配置されている。さらに、各第1のラインL1に含まれる複数の第1の貫通孔15A1が周端部16eに沿って直線上に等間隔で配置されている(貫通孔15A2、15A3・・・15Anも同様)。すべての第1の貫通孔15A1と周端部16eとの間隔が一定の端部間隔d3に設定されている。
【0105】
薄膜フィルタ32では、
図17に示すように、代表貫通孔として、4つの隣接する貫通孔15a,15b,15c,15dが設定される。貫通孔15a,15b,15c,15dの中心はa0,b0,c0,d0である。
【0106】
四角形ABCDは、隣接する2つの第1の貫通孔群15Aに含まれる隣接する複数の貫通孔15(15a,15b,15c,15d)の中心a0,b0,c0,d0を頂点とする四角形であり、貫通孔15の配置の規則性から正方形である。
【0107】
薄膜フィルタ32は、薄膜フィルタ5と同様の複数の貫通孔15を有し、薄膜フィルタ5と同様の製造方法によって製造することができる。薄膜フィルタ32も、薄膜フィルタ5と同様に、接着領域とフィルタ領域を有し、その双方に貫通孔15が形成されている。また、貫通孔15に薄膜フィルタ5と同様の筋付内壁面38が反応性イオンエッチングによって形成されている(
図16、
図17には図示せず)。そのため、薄膜フィルタ32も、薄膜フィルタ5の代わりに薄膜フィルタ32が形成されているMEMSパッケージ、MEMSマイクロフォン(図示せず)も、前述した薄膜フィルタ5、MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100と同様の作用効果を奏する。
【0108】
(薄膜フィルタの変形例2)
次に、
図18、
図19、
図20を参照して、変形例2に係る薄膜フィルタ34について説明する。ここで、
図18は、変形例2に係る薄膜フィルタ34の要部を拡大した平面図、
図19は薄膜フィルタ34の要部を更に拡大した平面図、
図20は
図19の20-20線の切断面を示す斜視図である。
【0109】
薄膜フィルタ34は、薄膜フィルタ5と比較して、薄膜部16の代わりに薄膜部36を有する点、貫通孔15の代わりに貫通孔35が形成されている点で相違している。薄膜部36は、薄膜部16と比較して、貫通孔35が形成されている点で相違している。
【0110】
前述した貫通孔15は、平面視円形に形成されていたが、貫通孔35は平面視正6角形に形成されている。薄膜フィルタ34は、第1の貫通孔群35Aおよび第2の貫通孔群35Bを有している。第1の貫通孔群35Aには、第1の貫通孔35A1と、貫通孔35A2,35A3・・・貫通孔35Anとを含む複数の貫通孔35が含まれている。第1の貫通孔35A1、貫通孔35A2、35A3・・・35Anは、第1の貫通孔群15Aと同様の第1のラインL1を形成している。
【0111】
第2の貫通孔群35Bには、第2の貫通孔35B1と、貫通孔35B2と、貫通孔35Bnとを含む複数の貫通孔35が含まれている。第2の貫通孔35B1、貫通孔35B2・・・35Bnは、第2の貫通孔群15Bと同様の第2のラインL2を形成している。薄膜フィルタ34の場合も、隣接する3つの貫通孔35(例えば、貫通孔35A2、35A3、35B2)の中心を頂点とする三角形が、貫通孔35の配置の規則性から、正三角形である。
【0112】
そして、薄膜フィルタ34は、
図19、
図20に示すように、筋付内壁面48が各貫通孔35の内側に形成されている。筋付内壁面48は複数の筋状部47を有している。複数の筋状部47は、複数の筋状部37と同様、貫通孔35の内壁面のほぼ全体に配置され、筋付内壁面48は貫通孔35の内壁面のほぼ全体に形成されている。筋状部47は、筋状部37と同様、交差方向に沿って形成されている。また、各筋状部47は、貫通孔35の交差方向に沿って概ね直線状に形成された凸部または凹部である。
【0113】
薄膜フィルタ34は、複数の貫通孔35を有し、薄膜フィルタ5と同様の製造方法によって製造することができる。薄膜フィルタ34も、薄膜フィルタ5と同様に、接着領域とフィルタ領域を有し、その双方に貫通孔35が形成されている。また、貫通孔35に、貫通孔15の筋状部37、筋付内壁面38と同様の筋状部47、筋付内壁面48が形成されている。そのため、薄膜フィルタ34も、薄膜フィルタ5の代わりに薄膜フィルタ34が形成されているMEMSパッケージ、MEMSマイクロフォン(図示せず)も、前述した薄膜フィルタ5、MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100と同様の作用効果を奏する。
【0114】
(薄膜フィルタの変形例3)
次に、
図21を参照して、変形例3に係る薄膜フィルタ62について説明する。ここで、
図21は、変形例3に係る薄膜フィルタ62の
図6に応じた断面図である。
【0115】
薄膜フィルタ62は、薄膜フィルタ5と比較して、貫通孔15の代わりに貫通孔65が形成されている点で相違している。貫通孔15の場合、フィルム面16aから裏フィルム面16bまで直径が一定であった。これに対して、貫通孔65では、フィルム面16aから裏フィルム面16bまで直径が漸次縮小されている。薄膜フィルタ62も、薄膜フィルタ5と同様に、接着領域とフィルタ領域を有し、その双方に貫通孔65が形成されている。また、貫通孔65には、貫通孔15と同様、筋付内壁面38が形成されているから(
図21には図示せず)、薄膜フィルタ62も、薄膜フィルタ5の代わりに薄膜フィルタ62が形成されているMEMSパッケージ、MEMSマイクロフォン(図示せず)も、前述した薄膜フィルタ5、MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100と同様の作用効果を奏する。
【0116】
(薄膜フィルタの変形例4)
次に、
図22(a)、(b)を参照して、変形例4に係る薄膜フィルタ72について説明する。ここで、
図22(a)は、変形例4に係る薄膜フィルタ72の
図8に応じた斜視図である。
図22(b)は、薄膜フィルタ72の接着貫通孔の要部を示す一部省略した平面図である。
【0117】
薄膜フィルタ72は、薄膜フィルタ5と比較して、貫通孔15の代わりに貫通孔73が形成されている点で相違している。また、薄膜フィルタ72では、貫通孔73の内側に筋付内壁面74が形成されている。
【0118】
前述した筋付内壁面38では、貫通孔15の内壁面に滑らかな部分が残らないように、筋状部37が隙間なく形成されていた。これに対し、筋付内壁面74では、貫通孔73の内側に滑らかな部分(平滑部)が残るように、筋状凸部76が間隔76dを隔てて飛び飛びに形成されている。そのため、各筋状凸部76の間の部分が平滑部74aとして残っている。筋状凸部76は、貫通孔73の内壁面に形成された凸部であり、交差方向に沿って概ね直線状に形成されている。したがって、筋付内壁面74の筋状凸部76によって、通過気流が一定の方向に沿って流れ、薄膜フィルタ72も、薄膜フィルタ5と同様の作用効果を奏する。
【0119】
また、薄膜フィルタ72も、薄膜フィルタ5と同様に、接着領域とフィルタ領域を有し、その双方に貫通孔73が形成されている。貫通孔73の場合、筋状凸部76が形成されている。そのため、
図22(b)に示すように、接着領域の貫通孔73において、感光性接着層61の一部が進入部61dとして、隣接する筋状凸部76の間に入り込む。すると、進入部61dが、筋付内壁面74の平滑部74aと、平滑部74aよりも突出している突出面(筋状凸部76の突出側面76e,76f)に接触する。したがって、薄膜フィルタ72も、薄膜フィルタ5と同様、感光性接着層61と薄膜フィルタ72の接触面積の拡大と、感光性接着層61のアンカー効果とが得られるから、接着力が向上する。
【0120】
第2の実施の形態
(MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの構造)
次に、
第2の実施の形態に係るMEMSパッケージ101、MEMSマイクロフォン200について
図33を参照して説明する。
図33は、MEMSマイクロフォン200の
図1に対応した断面図である。
【0121】
図33に示すように、MEMSマイクロフォン200は、MEMSパッケージ101と、キャップ99とを有している。
【0122】
前述したMEMSマイクロフォン100(MEMSパッケージ1)では、MEMSチップ10と、ASIC92とがフリップチップボンディングによって、パッケージ基板20に実装されていた。
【0123】
これに対し、第2の実施の形態に係るMEMSマイクロフォン200(MEMSパッケージ101)では、MEMSチップ10と、ASIC92とがワイヤボンディングによって、パッケージ基板20に実装されている。
【0124】
そして、MEMSパッケージ101は、MEMSパッケージ1と比較して、以下a),b),c)の各点で相違している。
a)薄膜フィルタ5がMEMSチップ10に接着されている点
b)MEMSパッケージ101がボンディングバンプ4、音響シールド6、電極パッド7、21を有していない点、
c)MEMSチップ10がワイヤ26Aによって、ASIC92に接続されている点
MEMSパッケージ1では、薄膜フィルタ5がパッケージ基板20に接着されているが、MEMSパッケージ101では、薄膜フィルタ5がMEMSチップ10に接着されている。薄膜フィルタ5は、MEMSチップ10の基板面22bに対し、孔部22cを塞ぐようにして接着されている。
【0125】
MEMSパッケージ101では、薄膜フィルタ5の薄膜部16のうちの、基板面22bに接着されている部分が接着領域16X、薄膜部16の接着領域16X以外の部分がフィルタ領域16Yである(接着領域16X、フィルタ領域16Yは図示を省略)。接着領域16X、フィルタ領域16Yの双方に貫通孔15が形成されている。接着領域16Xの貫通孔15が接着貫通孔15Xであり、フィルタ領域16Yの貫通孔15がフィルタ貫通孔15Yである(接着貫通孔15X、フィルタ貫通孔15Yも図示を省略)。
【0126】
ASIC92は、ボンディングバンプ93ではなく、ワイヤ26Bによって、パッケージ基板20に接続されている。
【0127】
(
MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの製造方法)
続いて、以上の構成を有するMEMSパッケージ101、MEMSマイクロフォン200の製造方法について、
図34~
図40を参照して説明する。ここで、
図34は後述するMEMSウェハ140を示す斜視図、
図35は後述する薄膜フィルタ基板150を示す斜視図である。
図36は、薄膜フィルタ基板150の要部の断面図、
図37は接着層付フィルタ基板製造工程を示す要部の断面図、
図38は基板重合工程を示す要部の断面図、
図39、
図40は薄膜フィルタ転写工程を示す要部の断面図である。
【0128】
MEMSパッケージ101、MEMSマイクロフォン200の製造方法では、
図34に示すMEMSウェハ140と、
図35に示す薄膜フィルタ基板150と、パッケージ基板20が用いられる。MEMSパッケージ101、MEMSマイクロフォン200の製造方法には、接着層付フィルタ基板製造工程、基板重合工程、薄膜フィルタ転写工程とが含まれている。
【0129】
MEMSウェハ140は、シリコンウェハを用いて形成されている。MEMSウェハ140には、複数のMEMS領域141が規則的な配置で形成されている。MEMSウェハ140がスクライブライン142に沿って分割されると、その各MEMS領域141によって、MEMSチップ10が製造される(ウェハ1枚あたり10,000~20,000個程度製造される)。
【0130】
薄膜フィルタ基板150は、薄膜フィルタ基板19と比較して、シリコンウェハ31と、剥離接着層33とを有している点では一致し、フィルタ層29の代わりにフィルタ層159を有する点で相違している。薄膜フィルタ基板19の場合、シリコンウェハ31の個別領域31Xは、パッケージ領域41に応じた規則的な配置で形成されていた。これに対し、薄膜フィルタ基板150の場合、シリコンウェハ31の個別領域31Xは、MEMS領域141に応じた規則的な配置で形成されている(
図35では、個別領域31Xの図示が省略されている)
【0131】
薄膜フィルタ基板150は、薄膜フィルタ基板19と同様に、薄膜フィルタ基板製造工程が実行されることによって製造される。その薄膜フィルタ基板製造工程には、剥離接着層形成工程と、薄膜フィルタ形成工程とが含まれている。
【0132】
剥離接着層形成工程では、
図36に示すように、薄膜フィルタ基板19の場合と同様、シリコンウェハ31に剥離接着層33が形成される。次に、薄膜フィルタ形成工程が実行されることによって、フィルタ層159が剥離接着層33上に形成される。この場合、その薄膜フィルタ形成工程には、樹脂層形成工程と、金属層形成工程と、レジストパターン形成工程と、金属パターン形成工程と、貫通孔形成工程とが含まれている。
【0133】
そして、前述したフィルタ層29は、パッケージ領域41に応じた複数の個別領域51を有していた。これに対し、
図35に示すように、フィルタ層159には、MEMS領域141に応じた複数の個別領域151が規則的な配置で形成されている。各個別領域151の間は、スクライブライン142に応じた分割ライン152になっている。各個別領域151に1つのフィルタ部158が配置されている。各個別領域151には、2つ以上のフィルタ部158が配置されるスペースがない。フィルタ層159には、フィルタ部158の確保という点で無駄がない。
【0134】
そして、各フィルタ部158は、フィルタ部58と同様、後に前述の薄膜フィルタ5になる。各フィルタ部158には、薄膜フィルタ5と共通する複数の貫通孔15、筋付内壁面38が形成されている。フィルタ部158は、薄膜フィルタ5に応じた変形矩形状に形成されている。
【0135】
また、薄膜フィルタ形成工程には、薄膜フィルタ基板19の場合と同様、樹脂層形成工程と、金属層形成工程と、レジストパターン形成工程と、金属パターン形成工程と、貫通孔形成工程とが含まれている。これら各工程は、薄膜フィルタ基板19が形成される場合と比べて、フィルタ層29とフィルタ層159の区画パターンの相違(個別領域31X、151)に応じた相違があるが、そのほかは共通である。
【0136】
フィルタ層159が形成される場合は、貫通孔形成工程において、フィルタ層159の形成に用いられる樹脂層44(フィルタ層29が形成される場合と同様の樹脂層で、
図36では図示が省略されている)につき、貫通孔15が接着予定領域に形成される。接着予定領域は、各フィルタ部158のMEMSチップ10に接着される予定の領域であって、各フィルタ部158の周縁部158eに相当する(周縁部158eは、
図35参照)。この場合、貫通孔15は、樹脂層44の各個別領域151において、各フィルタ部158の周縁部158eの内側の領域(フィルタ予定領域に相当する領域)にも形成される。周縁部158eは、後にMEMSチップ10の基板面22b(孔部22cの周囲)に接着される。
【0137】
(接着層付フィルタ基板製造工程)
接着層付フィルタ基板製造工程では、以上のようにして製造された薄膜フィルタ基板150に対して、その表面に感光性接着層61が形成される。感光性接着層61は、感光性ポリイミド接着剤シートを張り付けるなどして形成される。この場合、
図37に示すように、感光性接着層61は、薄膜フィルタ基板150の表面に次のような孔あき構造で形成される。感光性接着層61は、各個別領域151において、各フィルタ部158の周縁部158eに対応した環状の部分が残り、その内側が除去された孔あき構造で形成される。露光、現像によって、感光性接着層61がパターニングされる。接着層付フィルタ基板製造工程が実行されることによって、接着層付フィルタ基板153が製造される。感光性接着層61の代わりに、ポリイミド系接着剤やエポキシ樹脂系接着剤を用いた接着層が形成されることもできる。感光性接着層61や、これらの接着層がフィルタ接着層となる。また、例えば、フィルタ接着層の材料となる接着剤がインクジェット方式で塗布されるか、またはディスペンサを用いて塗布されることによって、フィルタ接着層が形成されることができる。
【0138】
(基板重合工程)
基板重合工程では、
図38に示すように、重合基板165が製造される。この場合、各MEMS領域141と、各個別領域151との位置合わせが行われた後、感光性接着層61が各MEMS領域141に重なるように、接着層付フィルタ基板153とMEMSウェハ140とが重ね合わされる。それによって、重合基板165が製造される。
【0139】
(薄膜フィルタ転写工程)
次の薄膜フィルタ転写工程では、まず、重合基板165が加熱される。すると、そのときの熱によって、剥離接着層33が発泡する。そのため、
図39に示すように、重合基板165から剥離接着層33とベース基板であるシリコンウェハ31が剥がれる。そのため、
図40に示すように、フィルタ層159が感光性接着層61上に残る。これによって、フィルタ層159がMEMSウェハ140に転写される。その後、MEMSチップ搭載工程、パネル裁断工程が実行されると、MEMSパッケージ101とMEMSマイクロフォン200とが製造される。
【0140】
(進入工程)
また、接着層付フィルタ基板製造工程から基板重合工程までの間で進入工程が実行される。進入工程では、各フィルタ部158の周縁部158e(接着予定領域)に感光性接着層61が形成されるとき、または感光性接着層61が形成された後で、その感光性接着層61の一部が周縁部158e(接着予定領域)の貫通孔15に入り込むようにする。例えば、接着層付フィルタ基板製造工程において、感光性接着層61が各フィルタ部158の周縁部158eに形成されたときに接着層付フィルタ基板153が加熱されることで、感光性接着層61の一部が進入部61dとして貫通孔15に入り込むようにすることができる。また、基板重合工程で、接着層付フィルタ基板153とMEMSウェハ140とが重ね合わされたときに両者が押し合わされることによって、感光性接着層61の一部が進入部61dとして貫通孔15に入り込むようにすることができる(
図37,38では、進入部61dを図示せず)。進入工程によって、進入部61dが形成される貫通孔15が前述した接着貫通孔15Xになり、前述した接着層進入構造が得られる。
【0141】
以上のようにして製造されたMEMSパッケージ101、MEMSマイクロフォン200は、MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100と比較して、薄膜フィルタ5が接着されている部分がMEMSチップ10である点で相違しているが、薄膜フィルタ5が接着されている点では共通している。そのため、MEMSパッケージ101、MEMSマイクロフォン200は、MEMSパッケージ1、MEMSマイクロフォン100と同様の作用効果を奏する。
【0142】
(MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの変形例1)
図41は、変形例1に係るMEMSパッケージ1Aを有するMEMSマイクロフォン100Aを示す
図1に対応した断面図である。
図42は、MEMSマイクロフォン100Aを示す
図2に対応した断面図である。
【0143】
MEMSパッケージ1Aは、MEMSパッケージ1と比較して、薄膜フィルタ5がMEMSチップ10に形成されている点で相違している。MEMSパッケージ1Aは、MEMSパッケージ1と同様に薄膜フィルタ5を有しているため、MEMSパッケージ1と同様の作用効果を奏する。
【0144】
MEMSパッケージ1Aでは、薄膜フィルタ5がMEMSチップ10に形成されている。そのため、第2の実施の形態にかかるMEMSパッケージ101と同様の製造方法によって、MEMSチップ10が製造され、さらに、そのMEMSチップ10がFCBによって、パッケージ基板20上に実装されることによって、MEMSパッケージ1Aが製造される。
【0145】
(MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンの変形例2)
図43は、変形例2に係るMEMSパッケージ101Aを有するMEMSマイクロフォン200Aを示す
図33に対応した断面図である。MEMSパッケージ101Aは、MEMSパッケージ101と比較して、薄膜フィルタ5がパッケージ基板20に接着されている点で相違している。MEMSパッケージ101Aは、MEMSパッケージ101と同様に薄膜フィルタ5を有しているため、MEMSパッケージ101と同様の作用効果を奏する。
【0146】
MEMSパッケージ101Aは、薄膜フィルタ5がパッケージ基板20に接着されている。そのため、第1の実施の形態と同様のパッケージパネル40が用いられることによって、MEMSパッケージ101Aが製造される。この場合、そのパッケージパネル40には、第1の実施の形態と同様にフィルタ層29が転写される(例えば
図31参照)。そして、そのパッケージパネル40にMEMSチップ10などがワイヤボンディングで搭載され、その後、パネル裁断工程などが実行されて、MEMSパッケージ101Aが製造される。
【0147】
以上の実施形態では、メンブレン3を有するMEMSパッケージ1を例にとって説明しているが、本発明は、他のMEMSパッケージにも適用され得る。例えば、本発明は、センサ、アクチュエータ等として用いられるMEMSチップを有するMEMSパッケージにも適用され得る。
【0148】
また、以上の実施形態では、メンブレン3の上側と下側にバックプレートと呼ばれる2つの薄膜(図示せず)が配置されているタイプ(ダブルバックプレート)を例にとって説明した。本発明は、それに加えて、メンブレン3の片側に1つのバックプレートが配置されているタイプ(シングルバックプレート)にも適用することができる。
【0149】
さらに、薄膜フィルタに形成されている貫通孔の形状として、平面視円形、六角形のほか、四角形でもよい。シリコンウェハ31の代わりにガラス、石英等の透明な材料からなる基板がベース基板として用いられる場合、UVテープがベース面に張り付けられて剥離接着層が形成されることもできる。
【0150】
以上の実施形では、本発明にかかる薄膜フィルタが適用される製品の一例としてMEMSマイクロフォンについて説明したが、MEMSマイクロフォン以外の製品、例えば、MEMSセンサにも薄膜フィルタが適用される。
【0151】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明を適用することにより、微粒子や水の進入を防止するための微小穿孔が形成されている薄膜フィルタの強度および薄膜フィルタの接着強度が高められる。本発明は、MEMSパッケージ、MEMSマイクロフォンおよびMEMSパッケージの製造方法の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1,101,1A,101A…MEMSパッケージ、5,32,34,62,72…薄膜フィルタ、3…メンブレン、5…薄膜フィルタ、6p…レジストパターン、10…MEMSチップ、15,35,73…貫通孔、15A,35A…第1の貫通孔群、15B,35B…第2の貫通孔群、L1…第1のライン、L2…第2のライン、16,36…薄膜部、16a…フィルム面、16b…裏フィルム面、16X…接着領域、16Y…フィルタ領域、19…薄膜フィルタ基板、20…パッケージ基板、22…素子基板、31…シリコンウェハ、31a…ベース面、33…剥離接着層、37,47…筋状部、38,48,74…筋付内壁面、40…パッケージパネル、41…パッケージ領域、61…感光性接着層、100,100A,200,200A…MEMSマイクロフォン、140…MEMSウェハ、150…薄膜フィルタ基板。