(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】微粉炭バーナ装置およびその燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F23D 1/02 20060101AFI20230524BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20230524BHJP
F23K 1/00 20060101ALI20230524BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20230524BHJP
【FI】
F23D1/02 Z ZAB
F23C99/00 305
F23K1/00 B
B09B3/40
(21)【出願番号】P 2019091157
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082832
【氏名又は名称】森本 邦章
(72)【発明者】
【氏名】清水 正也
(72)【発明者】
【氏名】横路 尚人
(72)【発明者】
【氏名】福永 史樹
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】宇山 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】福田 格章
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-092135(JP,A)
【文献】特開昭58-002509(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104141950(CN,A)
【文献】特開2010-106188(JP,A)
【文献】特開2019-027647(JP,A)
【文献】特開2006-170459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 1/00 - 1/06
F23C 9/00 - 9/08
F23C 99/00
F23K 1/00
B09B 3/00 - 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナ
のバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルを
その後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状
に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、
前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に
設けて微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に
前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにしたことを特徴とする微粉炭バーナ装置。
【請求項2】
外気導入ノズルを微粉炭ノズルの両側に対して
左右または上下対称状にそれぞれ接線方向から連結し、外気導入ノズルに外気の流速を調整自在に
送風量調整装置を設け、バーナ燃焼量に応じて導入外気の流速を増減調整して微粉炭を安定燃焼するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の微粉炭バーナ装置。
【請求項3】
湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから微粉炭バーナに供給するもので、微粉炭バーナから排出される高温ガスを前記微粉炭ノズルの基端部に導入するように連結して微粉炭を加熱するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の微粉炭バーナ装置。
【請求項4】
一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナ燃焼方法であって、
前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記微粉炭ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、
前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを
外気の流速を調整可能に連結して、微粉炭ノズル内の混合気を旋回流として分散状態に
前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むことを特徴とする微粉炭バーナの燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の一般廃棄物の炭化処理物の微粉炭を燃料とする微粉炭バーナ装置およびその燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却処理していた一般廃棄物(都市ゴミ等)を低酸素、あるいは無酸素下で炭化処理して炭化物を得て、該炭化物を化石燃料の一部と代替させることで化石燃料の使用量を減らし、環境負荷の低減を図るといったことが行われている。
【0003】
しかし、一般廃棄物を原料とする前記炭化物中には塩素が含有しており、燃料として燃焼させる際にはダイオキシンを発生させる懸念があるため、例えば、生成した炭化物を水槽内に投入し、流水にて水洗して塩素分を洗い出すといった脱塩処理が行われる。そして、脱水機(フィルタープレス等)にてある程度(例えば、含水率で約30%程度)まで脱水した後、乾燥機にて絶乾状態まで乾燥処理される。
【0004】
そして、前記脱塩処理を経た炭化物は、例えばペレット状にして焼却炉等に投入して補助燃料として使用したり、粉砕機(ミル等)にて微粉炭化してバーナ燃料として使用したりする。なお、前記脱塩処理後、脱水した後に、敢えて乾燥処理せず、ある程度水分を残した湿潤状態に保てば、粉塵爆発や自然発火等の不具合を防げてハンドリング性を高められる可能性がある。
【0005】
微粉炭バーナとしては、例えば特許文献1、2のように重油ノズルの周囲に複数の微粉炭ノズルを配置し、前記重油ノズルの前方に形成される火炎中に、各微粉炭ノズルからの微粉炭と圧送空気との混合気を噴射投入することにより、混合気中の微粉炭をガス化して燃焼させる構成のものがある。
【0006】
また、特許文献3のように微粉炭ノズルに微粉炭と圧送空気との混合気を供給する供給ダクトを直交方向に連結し、混合気が旋回流を形成するようにして重油ノズル前方に形成される火炎と効果的に混合させてガス化・燃焼させる構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-27647号公報
【文献】特開2019-27648号公報
【文献】特開2017-15305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、湿潤状態の炭化物を微粉炭化してバーナに供給しようとすると、特許文献1、2のものでは、微粉炭ノズル途中の曲管部にて付着、閉塞を生じ、失火する可能性がある。
【0009】
また、特許文献3のものでは、供給ダクトと微粉炭ノズルとが直交方向に連結されているため、直交部分にてやはり付着、閉塞を生じやすい。
【0010】
さらに、微粉炭が約30%程度もの湿潤状態であれば、微粉炭の粒子同士が(表面張力によって)互いに引っ付きやすく、大粒径化する結果、ノズル先端部からの噴射時の分散性が低下して火炎中に適正に吹き込めず、ガス化・燃焼効率が低下する可能性がある。そのため、脱塩処理によって水洗した炭化物をハンドリングを高めるためにも湿潤状態に保ちながらも、微粉炭バーナにて適正に燃焼可能にするのが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の点に鑑み、上記の課題を解決するために、請求項1に記載のように微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に設けて微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにしたことを特徴とする微粉炭バーナ装置を提供するにある。
【0012】
また、請求項2に記載のように外気導入ノズルを微粉炭ノズルの両側に対して左右または上下対称状にそれぞれ接線方向から連結し、外気導入ノズルに外気の流速を調整自在に送風量調整装置を設け、バーナ燃焼量に応じて導入外気の流速を増減調整して微粉炭を安定燃焼するようにしたことを特徴とする微粉炭バーナ装置を提供するにある。
【0013】
また、請求項3に記載のように湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから微粉炭バーナに供給するもので、微粉炭バーナから排出される高温ガスを前記微粉炭ノズルの基端部に導入するように連結して微粉炭を加熱するようにしたことを特徴とする微粉炭バーナ装置を提供するにある。
【0014】
さらに、請求項4に記載のように一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナ燃焼方法であって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記微粉炭ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを外気の流速を調整可能に連結して、微粉炭ノズル内の混合気を旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むことを特徴とする微粉炭バーナ燃焼方法を提供するにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る微粉炭バーナ装置は、請求項1に記載のように微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に設けて微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにしたことによって、特に一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭であっても、微粉炭ノズルを微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状なので、微粉炭が微粉炭ノズルに付着したり、閉塞することなく、外気導入ノズルからの外気を外気流速調整装置で外気の流速を調整して重油ノズルの前方に形成される保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に分散状態で適正に吹き込められて微粉炭バーナで適正に燃焼することができる。
たとえば、外気流速が速い程微粉炭ノズル内の混合気に旋回力が付与され、分散性が増して微粉炭噴射時の噴射角度が広がり、逆に、外気流速が遅いと分散力が低下し、微粉炭噴射時の噴射角度が狭くなり、導入外気の流速を増減調整して微粉炭噴射角度を調整することで常に微粉炭を火炎中に適正に吹き込められて、微粉炭を未燃分なく安定してガス化燃焼することができる。
また、微粉炭が湿潤状態であれば、粉塵爆発や自然発火等の微粉炭特有の問題を解消できるとともにハンドリング性を高められ、上記のように燃焼処理することができる。
【0016】
また、微粉炭バーナ装置は、請求項2に記載のように外気導入ノズルを微粉炭ノズルの両側に対して左右または上下対称状にそれぞれ接線方向から連結し、外気導入ノズルに外気の流速を調整自在に送風量調整装置を設け、バーナ燃焼量に応じて導入外気の流速を増減調整して微粉炭を安定燃焼するようにしたことによって、微粉炭ノズルの両側の左右または上下対称状の接線方向から外気導入ノズルで外気の流速を調整自在に導入して、微粉炭ノズル内の混合気を旋回流として微粉炭噴射角度を適正に調整できてバーナ燃焼量に応じて火炎中に適正に吹き込められて、微粉炭を安定して燃焼することができる。
たとえば、バーナ燃焼量の全開時では、送風量が増加して保炎板の裏面の背圧が高くなり、重油ノズルの前方に形成される火炎は保炎板側に強く吸い寄せられ、保炎板に近接する。一方、バーナ燃焼量が落ちると、前記燃焼用空気の送風量が減少して保炎板の裏面の背圧が低下し、重油ノズルの前方の火炎の位置が保炎板から離間し、このように微粉炭を火炎中に適正に吹き込められて、微粉炭を未燃分なく安定してガス化燃焼することができる。
【0017】
また、微粉炭バーナ装置は、請求項3に記載のように湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから微粉炭バーナに供給するもので、微粉炭バーナから排出される高温ガスを前記微粉炭ノズルの基端部に導入するように連結して微粉炭を加熱するようにしたことによって、微粉炭バーナから排出される高温ガスで微粉炭ノズルに供給される湿潤状態の微粉炭を加熱して乾燥させることができ、微粉炭が微粉炭ノズルに付着したり、閉塞するのを抑制できて、上記のように噴射時の分散性の向上を図れて微粉炭バーナで適正に燃焼することができる。
【0018】
またさらに、微粉炭バーナ燃焼方法は、請求項4に記載のように一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナ燃焼方法であって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記微粉炭ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを外気の流速を調整可能に連結して、微粉炭ノズル内の混合気を旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むことによって、一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭であっても、上記のように微粉炭が微粉炭ノズルに付着したり、閉塞することなく、所要の外気の流速を調整して重油ノズルの前方に形成される火炎中に分散状態で適正に吹き込められて微粉炭バーナで適正に燃焼することができる。また、微粉炭が湿潤状態であれば、粉塵爆発や自然発火等の微粉炭特有の問題を解消できるとともにハンドリング性を高められ、上記のように燃焼処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図8】同上の微粉炭ノズルの管内付着状態説明図(a)、(b)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の微粉炭バーナ装置およびその燃焼方法は、微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に設けて微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むことを特徴としている。
【0021】
微粉炭バーナ装置1は、
図1のように微粉炭バーナ2の円筒状のバーナ本体3の先端部に切頭円錐形状のスロート4を接続し、その中心部に微粉炭を噴射する所定径の微粉炭ノズル5を直管状として配設し、その両側部等に重油ノズル6を設けて所要の火力で燃焼できるようにしている。
【0022】
これらのノズル5、6の前方のスロート4内には、バーナ本体3の内径より若干大径で環状の保炎板7を備え、前記の各ノズル5、6から保炎板7の前方のスロート4内に形成される火炎領域に吹き込めるようにしている。
【0023】
前記微粉炭ノズル5の後端部には、
図1のように微粉炭を貯蔵する微粉炭貯蔵ビン8から微粉炭を切り出し可能にロータリーバルブ9を接続するとともに微粉炭圧送用の微粉炭送風機10を配設し、ロータリーバルブ9で切り出す微粉炭を前記微粉炭送風機10の送風によって
微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部4にわたって直管状とした微粉炭ノズル5に圧送して供給するようにしている。
【0024】
このような先端を逆テーパ形状とした微粉炭ノズル5の前方部の噴射口付近には、微粉炭ノズル5の両側の接線方向から左右または上下対称状に旋回流を発生させるために外気導入ノズル11をそれぞれ連結し、外気の導入によって微粉炭ノズル5内の混合気を旋回状態として噴射時に分散状態で火炎に吹き込めるようにしている。12はインバータの送風量調整装置で、前記微粉炭貯蔵ビン8からの微粉炭の切り出し量に応じて前記微粉炭送風機10の送風量を調整可能にしている。
【0025】
なお、外気導入ノズル11の接続位置は、ノズル先端からの距離が遠くなると旋回力が減衰してしまい、逆に近すぎても十分な旋回効果が得られず、ノズル先端から100~200mm程度の位置が好ましい。また、外気導入ノズル11からは70~120m/s程度の外気流入速度として、微粉炭ノズル5内の混合気の流速を10~20m/s程度として旋回状態で火炎中に吹き込めるようにしている。
【0026】
微粉炭ノズル5には、外気導入ノズル11をその接線方向からこれらの内周面に段差がなく接続できるようにして連結すると、
図3のように外気が微粉炭ノズル5内をその内壁面にそってスムーズに旋回し、圧送される微粉炭を旋回流として噴射時に効果的に分散状態として噴射でき、適正な火炎にできて好ましい。なお、外気導入ノズル11は、微粉炭ノズル5の長手方向に対し、
図1、2に示すように、略直交状態に連結することで混合気に最も効率よく旋回力を付与できて好ましいが、旋回流を生じさせられる範囲で前後方向に数十度程度傾斜状態に連結することもできる。
【0027】
図4のように前記微粉炭ノズル5の両側に備えた重油ノズル6には、それぞれ重油タンクから供給される重油燃料を重油供給ポンプ13と流量調整バルブ14とで所要量を供給自在とし、上記のように各重油ノズル6前方に形成される火炎領域に前記微粉炭ノズル5から噴射する微粉炭を吹き込んでガス化して着火燃焼できるようにしている。
【0028】
前記バーナ本体3の後端部には、
図1のように送風ダクト15を介して燃焼用空気供給用の燃焼用空気送風機16を配設し、インバータの風量調整装置17を介して前記燃焼用空気送風機16の送風量を調整してバーナ燃焼量に見合った燃焼用空気量をバーナ本体3に供給できるようにしている。また、18は前記外気導入ノズル11に外気を供給する外気送風機、19はそのインバータの風量調整装置である。
【0029】
なお、バーナ燃焼量の全開時では、前記燃焼用空気送風機16からの送風量が増加して保炎板7裏面の背圧が高くなる結果、重油ノズル6の前方に形成される火炎は保炎板7側に強く吸い寄せられ、保炎板7に近接する(
図2中のf1)。一方、バーナ燃焼量が落ちると、前記燃焼用空気送風機16からの送風量が減少して保炎板7裏面の背圧が低下する結果、重油ノズル6の前方の火炎の位置が保炎板7から離間する(
図2中のf2)。
【0030】
また、外気流速が速い程微粉炭ノズル5内の混合気に旋回力が付与され、分散性が増して微粉炭噴射時の噴射角度が広がる(
図2中のα1)。逆に、外気流速が遅いと分散力が低下し、微粉炭噴射時の噴射角度が狭くなる(
図2中のα2)。このように外気流速と微粉炭噴射角度とには相関性があり、バーナ燃焼量に応じてスロート4内を前後(
図2中では左右)に移動する火炎に対し、外気導入ノズル11からの導入外気の流速を増減調整して微粉炭噴射角度を調整することで常に微粉炭を火炎中に適正に吹き込められて、微粉炭を未燃分なく安定してガス化燃焼することができる。なお、本実施例では、微粉炭噴射角度を約45~75度程度の範囲で調整可能としている。
【0031】
また、上記微粉炭バーナ装置1は、燃焼制御器20等を設けて、前記したロータリーバルブ9、微粉炭送風機10、重油供給ポンプ13、燃焼用空気送風機16、外気送風機18等の稼働及び出力を装置の運転に際して所要のバーナ燃焼に対応し、増減等を適正に調整制御可能としている。
【0032】
なお、微粉炭バーナ2から排出される高温ガスを微粉炭ノズル5の基端部に導入するようにして微粉炭を加熱するようにし、排出される高温ガスで湿潤状態の微粉炭を加熱して乾燥させることもできる。
【0033】
本発明では、特に、都市ごみ等の一般廃棄物を炭化処理した炭化物を脱塩処理し、脱水後、未乾燥の湿潤状態(例えば、含水率30%程度)の微粉炭を対象とすることができる。脱塩処理後、乾燥処理せずに、30%程度の含水状態に維持することで、粉塵爆発や自然発火等の問題が生じなく、かつハンドリング性を向上でき、その上でバーナ燃料として支障なく利用できて用途を広げられて有効である。なお、本発明は、付着しやすい湿潤状態の微粉炭に好適に適用できるが、乾燥状態の各種微粉炭に対しても適用することができる。
【実施例】
【0034】
図1以下は、本発明の実施例を示すものである。微粉炭バーナ装置1は、
図1、
図2のように微粉炭バーナ2の円筒状のバーナ本体3の先端部に切頭円錐形状のスロート4を接続し、その中心部に微粉炭を噴射する所定径の微粉炭ノズル5を
微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部のスロート部4にわたって直管状として配設し、
図3、
図4のようにその両側部に重油ノズル6を設け、各ノズル5、6から保炎板7の前方のスロート4内に形成される火炎領域に吹き込めるようにしている。
【0035】
微粉炭ノズル5の先端を逆テーパ形状とし、前方部の噴射口付近のノズル先端から100~200mm程の位置に
図1~
図3のように微粉炭ノズル5の両側の接線方向から左右対称状に旋回流を発生させるための外気導入ノズル11を微粉炭ノズル5の長手方向に対してそれぞれ直交状に連結し、外気の導入によって微粉炭ノズル5内の混合気を旋回状態として、バーナ燃焼量に応じて噴射時に所要の分散状態で火炎に吹き込めるようにしている。
【0036】
上記微粉炭バーナ装置1について、
図5の試験設備で試験した。
図5中の101は本試験装置、105は微粉炭ノズル、108は微粉炭投入用の投入ホッパ、109はロータリーバルブ、110は微粉炭送風機、111は外気導入ノズル、118は外気送風機、121はスクリューコンベア、122及び123は風量センサ、124は温度センサ、125はカメラである。
【0037】
なお、本試験装置101では、微粉炭の噴射状態を確認するため、実際に燃焼までは行わず、微粉炭の噴射試験のみを行った。前記試験において、微粉炭送風機110や外気送風機118からの送風量を前記風量センサ122、123にて検出して各流速を演算し、前記温度センサ124にてノズル先端部から噴射直後(1mの地点)の出口空気温度を検出し、前記カメラ125にて微粉炭の噴射状態を撮影してその画像データを基に噴射角度を測定した。なお、微粉炭噴射角度αは
図6のように微粉炭ノズル105の先端中心部から250mmの地点での噴射域外縁部を結んだ角度とした。
【0038】
湿潤状態(含水率約31~33%)の微粉炭の炭化燃料を投入ホッパ108からスクリューコンベア121を介してロータリーバルブ109で切り出して直管状の微粉炭ノズル105内に送給し、微粉炭送風機110での所要量の圧送空気で圧送し、微粉炭を下記条件下で噴射した。
【0039】
外気導入ノズル111の連結位置はノズル先端から150mm位置、微粉炭供給量は90Kg/h、微粉炭圧送空気流速は15m/sとし、導入外気流速を50m/s(低速)または100m/s(高速)の2パターン、また微粉炭ノズル105の出口空気温度を10℃(常温)または90℃(高温)の2パターンで試験した。その結果は
図7に示す。
【0040】
微粉炭ノズル105の出口空気温度が10℃の場合、導入外気の風速が50m/sのときに微粉炭の噴射角度はおよそ38°(No.1)で、導入外気の流速が100m/sのときには微粉炭の噴射角度はおよそ61°(No.2)となり、導入外気の流速を速めるほど微粉炭の噴射角度は大きくなることが確認できた。
【0041】
また、出口空気温度が90℃の場合、導入外気の風速が50m/sのときに微粉炭の噴射角はおよそ49°(No.3)で、導入外気の風速が100m/sのときには微粉炭の噴射角はおよそ72°(No.4)となり、出口空気温度を高めることで微粉炭の噴射角が若干大きくなることも確認できた。このとき、微粉炭ノズル105から噴射した微粉炭の含水率を確認したところ、出口空気温度10℃の場合が約29~30%であるのに対し、90℃の場合では約21~23%で含水率が7~8%程度下がっており、高温の圧送空気による加熱乾燥に伴って微粉炭の分散性が向上したことによるものと予想される。
【0042】
また、
図8は微粉炭ノズル105管内での微粉炭の付着状態を表したもので、
図8(a)のように微粉炭ノズル105の出口空気温度が10℃の場合、外気導入口付近に微粉炭付着物が僅かに確認され、
図8(b)のように出口空気温度を90℃にすると、付着物は確認されなかった。これも、高温の圧送空気による加熱乾燥に伴って微粉炭の付着性が軽減したことによるものと予想される。
【0043】
また、
図9は微粉炭ノズル105から噴射直後の微粉炭の粒径の分布図であって、微粉炭ノズル105の出口空気温度が90℃(No.4)の場合、10℃(No.2)の場合と比較して500~600μmのピークが無くなる。これも、前記同様に、高温の圧送空気による加熱乾燥に伴って微粉炭同士の付着力(表面張力)が低下し、粒子径が細かくなったことによるものと予想される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、都市ごみ等の一般廃棄物を炭化処理した微粉炭、特に脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を燃料とする微粉炭バーナに対して広く利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…微粉炭バーナ装置 2…微粉炭バーナ 4…スロート 5…微粉炭ノズル11…外気導入ノズル