(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】流体機器の取替方法及び機器取替治具
(51)【国際特許分類】
F16L 41/06 20060101AFI20230524BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20230524BHJP
E03B 7/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
F16L41/06
F16L55/00 C
E03B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2019094548
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】590002208
【氏名又は名称】横浜市
(73)【特許権者】
【識別番号】397012923
【氏名又は名称】大成機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】窪田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】田代 玄樹
(72)【発明者】
【氏名】清塚 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 大介
(72)【発明者】
【氏名】瀬藤 弘
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128349(JP,A)
【文献】特開2021-105415(JP,A)
【文献】特開2004-218757(JP,A)
【文献】特開2008-169980(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
F16L 55/00
E03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管の外面の機器設置領域に、その機器設置領域の管壁に形成されている分岐口を密封状態で囲繞する分割構造の既設流体機器が脱着自在に締結固定されている流体配管構造において、前記既設流体機器を、前記分岐口を密封囲繞可能な分割構造の新設流体機器に不断流状態で取り替える流体機器の取替方法であって、
前記
水道管の前記機器設置領域に隣接する仮設置領域に、前記新設流体機器を管軸芯方向に移動操作自在に外装する新設流体機器外装工程と、
前記既設流体機器を管軸芯方向に移動操作可能な状態にまで、該既設流体機器の締結固定を緩み操作する締結弛緩工程と、
前記既設流体機器と前記新設流体機器を、前記
水道管に対して管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作し、前記機器設置領域にある前記既設流体機器は、前記分岐口を通過して機器設置領域外に移動させ、前記仮設置領域にある前記新設流体機器は、前記分岐口を越えて前記機器設置領域に移動させる流体機器移動工程と、
前記新設流体機器を前記
水道管の前記機器設置領域に締結固定する締結固定工程と、
前記既設流体機器を前記
水道管から撤去する撤去工程と、
を備えている流体機器の取替方法。
【請求項2】
水道管の外面の機器設置領域に、その機器設置領域の管壁に形成されている分岐口を密封状態で囲繞する分割構造の既設流体機器が脱着自在に締結固定され、前記
水道管の前記分岐口に装着されている防錆コアの一部が、前記
水道管の外面と前記既設流体機器の内面との間に形成されている内部空間内に突設されている流体配管構造において、前記既設流体機器を、前記分岐口を密封囲繞可能な分割構造の新設流体機器に不断流状態で取り替える流体機器の取替方法であって、
前記
水道管の前記機器設置領域に隣接する仮設置領域に、前記新設流体機器を管軸芯方向に移動操作自在に外装する新設流体機器外装工程と、
前記既設流体機器を管軸芯方向に移動操作可能な状態にまで、該既設流体機器の締結固定を緩み操作する締結弛緩工程と、
前記既設流体機器と前記新設流体機器を、前記
水道管に対して管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作し、前記機器設置領域にある前記既設流体機器は、前記防錆コアを通過して機器設置領域外に移動させ、前記仮設置領域にある前記新設流体機器は、前記防錆コアを越えて前記機器設置領域に移動させる流体機器移動工程と、
前記新設流体機器を前記
水道管の前記機器設置領域に締結固定する締結固定工程と、
前記既設流体機器を前記
水道管から撤去する撤去工程と、
を備えている流体機器の取替方法。
【請求項3】
前記締結固定工程
では、
前記新設流体機器に一体移動状態で脱着自在に外装固定される機器取替治具を用い、当該機器取替治具に設けた仮固定部により、前記
水道管に対して
前記分岐口に対面する前記新設流体機器
の新設分割筐体を密封状態に
押圧して仮固定する仮固定工程と、
前記新設流体機器の複数の新設分割筐体同士を締結固定する本固定部により、前記仮固定部で仮固定されている前記新設流体機器
の複数の新設分割筐体を前記
水道管に密封状態
で締結固定する本固定工程と、が備えられ、
前記仮固定部の仮固定操作体の数は、前記本固定部の本固定操作体の数よりも少ない数
に設定されている請求項1又は2記載の流体機器の取替方法。
【請求項4】
前記締結弛緩工程を実行する前に、前記既設流体機器の締結固定を緩めたときに噴出する流体
が少なくとも前記既設流体機器及び前記新設流体機器に対する作業者の作業位置側に飛散
することを抑える流体飛散抑止体
を、前記水道管又は前記新設流体機器に一体移動状態で脱着自在に外装固定される機器取替治具に装着する流体飛散抑止体装着工程を実行する請求項1~3のいずれか1項に記載の流体機器の取替方法。
【請求項5】
前記流体機器移動工程を実行する前に、前記
水道管における前記既設流体機器から設定移動距離離れた位置にストッパー部を外装固定するストッパー取付け工程を実行し、前記流体機器移動工程において、前記既設流体機器が前記ストッパー部に当接する位置まで、前記既設流体機器と前記新設流体機器を移動操作する請求項1~4のいずれか1項に記載の流体機器の取替方法。
【請求項6】
前記仮固定工程での
前記仮固定部の前記仮固定操作体が一箇所に設定されている請求項3記載の流体機器の取替方法。
【請求項7】
前記流体飛散抑止体装着工程では、
前記流体飛散抑止体として、前記既設流体機器及び前記新設流体機器
を移動操作可能な状態で覆い包み、且つ、可撓性を有する内部透視可能な防水シートを用いる請求項4記載の流体機器の取替方法。
【請求項8】
前記締結弛緩工程においては、前記
水道管の外面と前記既設流体機器の内面との間における少なくとも前記防錆コアに対応する部位の空隙が、前記防錆コアの突出部の突出寸法と同一又はそれよりも大となる状態にまで、前記既設流体機器の締結固定を緩め操作する工程を含み、前記流体機器移動工程においては、前記既設流体機器を、前記防錆コアの突出先端
と非接触状態で通過して前記機器設置領域外に移動させる工程を含む請求項2記載の流体機器の取替方法。
【請求項9】
前記流体機器移動工程においては、前記既設流体機器及び前記新設流体機器を、前記新設流体機器の移動前方側
に設けた切断具で前記防錆コアの突出部を切断しながら移動させる、又は、前記新設流体機器の移動前方側に設けた折り曲げ作用部で前記防錆コアの突出部
を変形させながら移動させる工程を含む請求項2記載の流体機器の取替方法。
【請求項10】
前記新設流体機器外装工程においては、前記
水道管の外面と前記新設流体機器の内面との間における少なくとも前記防錆コアに対応する部位の空隙が、前記防錆コアの突出部の突出寸法と同一又はそれよりも大となる状態で、前記新設流体機器を前記
水道管の前記仮設置領域に外装する工程を含む請求項2又は9記載の流体機器の取替方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の流体機器の取替方法に用いられる機器取替治具であって、
前記新設流体機器
に対して一体移動状態で脱着自在に外装固定可能な取替治具本体
を備え、前記取替治具本体に
は、前記
水道管に対して
前記分岐口に対面する前記新設流体機器
の前記新設分割筐体を密封状態に
押圧して仮固定する仮固定部が設けられ、前記仮固定部
には、前記新設流体機器
の複数の新設分割筐体同士を締結固定する前記本固定部の本固定操作体の数よりも少ない数の仮固定操作体
が備え
られている機器取替治具。
【請求項12】
前記取替治具本体には、前記既設流体機器の少なくとも
作業者の作業位置側となる飛散抑止面側
に、前記既設流体機器の締結固定を緩めたときに噴出する流体が前記作業位置側に飛散することを抑える前記流体飛散抑止体が設けられている請求項11記載の機器取替治具。
【請求項13】
前記取替治具本体には、
前記本固定部の前記本固定操作体である第2連結ボルトの一端側部位が挿通される連結片と、前記第2連結ボルトの挿通突出部位に前記連結片と当接する状態で螺合される押えナットとを有する連結部
が備えられ、前記押えナットの締付けにより、前記水道管に対して前記分岐口に対面する前記新設流体機器の前記新設分割筐体を密封状態に押圧する構成にしてある請求項11又は12記載の機器取替治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の外面の機器設置領域に、その機器設置領域の管壁に形成されている分岐口を密封状態で囲繞する分割構造の既設流体機器が脱着自在に締結固定され、前記流体管の前記分岐口に装着されている防錆コアの一部が、前記流体管の外面と前記既設流体機器の内面との間に形成されている内部空間内に突設されている流体配管構造において、前記既設流体機器を、前記分岐口を密封囲繞可能な分割構造の新設流体機器に不断流状態で取り替える流体機器の取替方法、及びそれに用いられる機器取替治具に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の流体機器の取替方法として、特許文献1に示す水道管の分岐栓の取替方法が存在する。この取替方法に用いられる既設流体機器の一例であるサドル式の既設分岐栓は、流体管に上下方向から挟持装着可能な一対のサドル部と、両サドル部を流体管に固定するボルト・ナット等の締結具と、流体管の分岐口に対面する上側のサドル部に固定される分岐栓本体と、を備える。分岐栓本体は、横向き「T」字状の流路と、流路の流路交差部に配置されるボール弁と、を備える。ボール弁は、流路の下端開口である底部流入口と、流路の上端開口である作業用開口と、流路の横向き開口である分岐流出口と、を選択的に連通遮断する。分岐栓本体には、作業用開口を密封状態で閉止する蓋が脱着自在に設けられている。
【0003】
上述の分岐栓の取替方法では、分岐栓本体の作業用開口を閉止している蓋を取外し、分岐栓本体の上端部に、流路の作業用開口から底部流入口を通過して流体管の分岐口にネジ切り封水具を送り込むネジ切り封水装置を取付ける。このネジ切り封水装置のネジ切り封水具は、ネジ切り用のタップ部と、該タップ部の基端側に連続形成される雄ネジ部と、を備える。
【0004】
そして、ボール弁を開弁操作し、ネジ切り封水装置のネジ切り封水具を流体管の分岐口に送り込む。このネジ切り封水具のタップ部により、分岐口の内周面に雌ネジ部を形成する。この雌ネジ部にネジ切り封水具の雄ネジ部を螺合することにより、流体管の分岐口を仮封止する。
次に、ネジ切り封水具を流体管に残置したまま、ネジ切り封水装置におけるネジ切り封水具以外の他の封水構成部材を既設分岐栓から取外す工程と、流体管から既設分岐栓を撤去する工程と、新設流体機器の一例で、ボール弁が開弁操作されているサドル式の新設分岐栓を流体管に取付ける工程と、新設分岐栓の分岐栓本体の上端部に、ネジ切り封水装置における他の封水構成部材を取付ける工程と、流体管の分岐口を仮封止しているネジ切り封水具をネジ切り封水装置のケーシング内に回収する工程と、ボール弁を閉弁操作して、新設分岐栓の分岐栓本体からネジ切り封水装置を取外す工程と、新設分岐栓の作業用開口を蓋で閉止する工程と、を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の水道管の分岐栓の取替方法では、既設分岐栓にネジ切り封水装置を取付ける工程と、ネジ切り封水装置のネジ切り封水具を流体管の分岐口に送り込み、ネジ切り封水具のタップ部で分岐口の内周面に雌ネジ部を形成し、この形成された雌ネジ部にネジ切り封水具の雄ネジ部を螺合して仮封止する工程と、ネジ切り封水具を流体管に残置したまま、既設分岐栓からネジ切り封水装置の他の封水構成部材を取外す工程と、流体管から既設分岐栓を撤去する工程と、流体管にサドル式の新設分岐栓を取付ける工程と、新設分岐栓に、ネジ切り封水装置における他の封水構成部材を取付ける工程と、流体管の分岐口を仮封止しているネジ切り封水具をネジ切り封水装置のケーシング内に回収する工程と、新設分岐栓からネジ切り封水装置を取外す工程と、新設分岐栓の作業用開口を蓋で閉止する工程と、の多数の工程を実行する必要がある。
しかも、特許文献1には記載されていないが、流体管の分岐口に防錆コアが装着されている既設分岐栓においては、防錆コアを撤去する装置及びそれを使用したコア撤去工程が加わるため、分岐栓の取替作業に多数の機材と多数の手間を要している。
さらに、既設分岐栓のボール弁が開弁操作できない状態では、上述の水道管の分岐栓の取替方法を実行することができない。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、既設流体機器から新設流体機器への取替作業を少ない機材及び工程で能率良く容易に行うことのできる流体機器の取替方法、及びそれに用いられる有用な機器取替治具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、流体管の外面の機器設置領域に、その機器設置領域の管壁に形成されている分岐口を密封状態で囲繞する分割構造の既設流体機器が脱着自在に締結固定されている流体配管構造において、前記既設流体機器を、前記分岐口を密封囲繞可能な分割構造の新設流体機器に不断流状態で取り替える流体機器の取替方法であって、
前記流体管の前記機器設置領域に隣接する仮設置領域に、前記新設流体機器を管軸芯方向に移動操作自在に外装する新設流体機器外装工程と、
前記既設流体機器を管軸芯方向に移動操作可能な状態にまで、該既設流体機器の締結固定を緩み操作する締結弛緩工程と、
前記既設流体機器と前記新設流体機器を、前記流体管に対して管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作し、前記機器設置領域にある前記既設流体機器は、前記分岐口を通過して機器設置領域外に移動させ、前記仮設置領域にある前記新設流体機器は、前記分岐口を越えて前記機器設置領域に移動させる流体機器移動工程と、
前記新設流体機器を前記流体管の前記機器設置領域に締結固定する締結固定工程と、
前記既設流体機器を前記流体管から撤去する撤去工程と、
を備えている点にある。
【0009】
上記構成によれば、流体管の機器設置領域に隣接する仮設置領域に、新設流体機器を管軸芯方向に移動操作自在に外装し、既設流体機器の締結固定を緩み操作して、既設流体機器と新設流体機器を、流体管の管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作する。この移動操作により、流体管の機器設置領域にある既設流体機器は、分岐口を通過して機器設置領域外に移動し、仮設置領域にある新設流体機器は、分岐口を越えて機器設置領域に移動する。その後は、新設流体機器を流体管の機器設置領域に締結固定し、既設流体機器を流体管から撤去するだけで、流体機器の取替作業が完了する。
したがって、既設流体機器から新設流体機器への取替作業を少ない機材と工程で能率良く容易に行うことができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、流体管の外面の機器設置領域に、その機器設置領域の管壁に形成されている分岐口を密封状態で囲繞する分割構造の既設流体機器が脱着自在に締結固定され、前記流体管の前記分岐口に装着されている防錆コアの一部が、前記流体管の外面と前記既設流体機器の内面との間に形成されている内部空間内に突設されている流体配管構造において、前記既設流体機器を、前記分岐口を密封囲繞可能な分割構造の新設流体機器に不断流状態で取り替える流体機器の取替方法であって、
前記流体管の前記機器設置領域に隣接する仮設置領域に、前記新設流体機器を管軸芯方向に移動操作自在に外装する新設流体機器外装工程と、
前記既設流体機器を管軸芯方向に移動操作可能な状態にまで、該既設流体機器の締結固定を緩み操作する締結弛緩工程と、
前記既設流体機器と前記新設流体機器を、前記流体管に対して管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作し、前記機器設置領域にある前記既設流体機器は、前記防錆コアを通過して機器設置領域外に移動させ、前記仮設置領域にある前記新設流体機器は、前記防錆コアを越えて前記機器設置領域に移動させる流体機器移動工程と、
前記新設流体機器を前記流体管の前記機器設置領域に締結固定する締結固定工程と、
前記既設流体機器を前記流体管から撤去する撤去工程と、
を備えている点にある。
【0011】
上記構成によれば、流体管の機器設置領域に隣接する仮設置領域に、新設流体機器を管軸芯方向に移動操作自在に外装し、既設流体機器の締結固定を緩み操作して、既設流体機器と新設流体機器を、流体管の管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作する。この移動操作により、流体管の機器設置領域にある既設流体機器は、分岐口に装着されている防錆コアを通過して機器設置領域外に移動し、仮設置領域にある新設流体機器は、防錆コアを越えて機器設置領域に移動する。その後は、新設流体機器を流体管の機器設置領域に締結固定し、既設流体機器を流体管から撤去するだけで、流体機器の取替作業が完了する。
したがって、既設流体機器から新設流体機器への取替作業を少ない機材と工程で能率良く容易に行うことができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記締結固定工程には、前記流体管に対して前記新設流体機器を密封状態に仮固定する仮固定工程と、仮固定されている前記新設流体機器を前記流体管に密封状態に締結固定する本固定工程と、が備えられ、前記仮固定工程には、前記本固定工程での本固定操作箇所よりも少ない数の仮固定操作箇所で仮固定操作を行う工程を含む点にある。
【0013】
上記構成によれば、仮固定工程においては、本固定工程での本固定操作箇所よりも少ない数の仮固定操作箇所で仮固定操作を実行するだけで済むので、流体管の機器設置領域に移動した新設流体機器を密封状態に迅速に仮固定することができる。これにより、流体管の分岐口から噴出する圧力流体の流出量を減少しながら、仮固定工程から本固定工程までの締結固定操作を能率良く容易に行うことができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記締結弛緩工程を実行する前に、前記既設流体機器の締結固定を緩めたときに噴出する流体の外部飛散を抑えるための流体飛散抑止体を装着する流体飛散抑止体装着工程を実行する点にある。
【0015】
上記構成によれば、既設流体機器の締結固定を緩めたときに噴出する圧力流体の外部飛散を流体飛散抑止体で抑えることができるので、既設流体機器及び新設流体機器の移動操作等を飛散流体に邪魔されることなく容易に実行することができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、前記流体機器移動工程を実行する前に、前記流体管における前記既設流体機器から設定移動距離離れた位置にストッパー部を外装固定するストッパー取付け工程を実行し、前記流体機器移動工程において、前記既設流体機器が前記ストッパー部に当接する位置まで、前記既設流体機器と前記新設流体機器を移動操作する点にある。
【0017】
上記構成によれば、流体機器移動工程の実行前のストッパー取付け工程において、流体管における既設流体機器から設定移動距離離れた位置にストッパー部を予め外装固定する。流体機器移動工程の実行時には、既設流体機器がストッパー部に当接するまで、既設流体機器と新設流体機器とを流体管に沿って移動操作する。これにより、既設流体機器と新設流体機器との移動操作を確実、容易に行うことができる。
【0018】
本発明の第6特徴構成は、前記仮固定工程での前記仮固定操作箇所が一箇所に設定されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、仮固定工程において、一箇所の仮固定操作箇所での仮固定操作を実行するだけで済むので、流体管の機器設置領域に移動した新設流体機器を密封状態により迅速に仮固定することができる。これにより、流体管の分岐口から噴出する圧力流体の流出量を一層減少しながら、仮固定工程から本固定工程までの締結固定操作をより能率良く容易に行うことができる。
【0020】
本発明の第7特徴構成は、前記流体飛散抑止体装着工程では、前記既設流体機器と前記新設流体機器とを覆う状態で前記流体飛散抑止体を装着する点にある。
【0021】
上記構成によれば、既設流体機器と新設流体機器とに装着した流体飛散抑止体により、既設流体機器の締結固定を緩めたときに噴出する圧力流体の外部飛散を抑えることができるので、既設流体機器及び新設流体機器の移動操作等を飛散流体に邪魔されることなく容易に実行することができる。
【0022】
本発明の第8特徴構成は、前記締結弛緩工程においては、前記流体管の外面と前記既設流体機器の内面との間における少なくとも前記防錆コアに対応する部位の空隙が、前記防錆コアの突出部の突出寸法と同一又はそれよりも大となる状態にまで、前記既設流体機器の締結固定を緩め操作する工程を含み、前記流体機器移動工程においては、前記既設流体機器を、前記防錆コアの突出先端と接触又は非接触状態で通過して前記機器設置領域外に移動させる工程を含む点にある。
【0023】
上記構成によれば、締結弛緩工程において、既設流体機器の締結固定を緩め操作したとき、流体管の分岐口から噴出する圧力流体によって既設流体機器が持ち上げられ、流体管の外面と既設流体機器の内面との間における少なくとも防錆コアに対応する部位の空隙が、防錆コアの突出部の突出寸法と同一又はそれよりも大となる状態に維持される。これにより、流体機器移動工程においては、機器設置領域に位置する既設流体機器を、防錆コアの突出部の先端と接触又は非接触状態で通過して機器設置領域外にスムーズに移動させることができる。
したがって、流体機器移動工程において、既設流体機器が防錆コアを通過するときの移動抵抗を小さくすることができる又は移動抵抗を無くすることができるので、既設流体機器の移動操作をより能率良く容易に行うことができる。
【0024】
本発明の第9特徴構成は、前記流体機器移動工程においては、前記既設流体機器及び前記新設流体機器を、前記新設流体機器の移動前方側で前記防錆コアの突出部を剪断又は変形させながら移動させる工程を含む点にある。
【0025】
上記構成によれば、流体機器移動工程において、流体管の外面と新設流体機器の内面との間の空隙、及び、流体管の外面と既設流体機器の内面との間の空隙をそれぞれ極力小さくして、既設流体機器及び新設流体機器をがたつきの少ない状態で移動させることができるように設定しても、新設流体機器の移動前方側で防錆コアの突出部を剪断又は変形させることができるので、新設流体機器は、防錆コアの剪断面又は防錆コアの変形突出部を超えて移動することになり、新設流体機器の移動時のシール部等の損傷を抑制することができる。
【0026】
本発明の第10特徴構成は、前記新設流体機器外装工程においては、前記流体管の外面と前記新設流体機器の内面との間における少なくとも前記防錆コアに対応する部位の空隙が、前記防錆コアの突出部の突出寸法と同一又はそれよりも大となる状態で、前記新設流体機器を前記流体管の前記仮設置領域に外装する工程を含む点にある。
【0027】
上記構成によれば、流体管の仮設置領域にある新設流体機器の一端部が流体管の機器設置領域の分岐口に移動すると、この分岐口から噴出する圧力流体によって新設流体機器が持ち上げられ、流体管の外面と新設流体機器の内面との間における少なくとも防錆コアに対応する部位の空隙が、防錆コアの突出部の突出寸法と同一又はそれよりも大となる状態に維持される。これにより、流体機器移動工程においては、新設流体機器を、防錆コアの突出先端と接触又は非接触状態で通過して機器設置領域にスムーズに移動させることができる。
したがって、流体機器移動工程において、新設流体機器が防錆コアを通過するときの移動抵抗を小さくすることができる又は移動抵抗を無くすることができるので、新設流体機器の移動操作をより能率良く容易に行うことができる。
【0028】
本発明の第11特徴構成は、第1~第10特徴構成のいずれか一つに記載の流体機器の取替方法に用いられる機器取替治具であって、前記流体管に前記新設流体機器と一体状態で外装固定可能な取替治具本体に、前記流体管に対して前記新設流体機器を密封状態に仮固定する仮固定部が設けられ、前記仮固定部は、前記新設流体機器を前記流体管に密封状態に締結固定する本固定部での本固定操作体よりも少ない数の仮固定操作体を備えている点にある。
【0029】
上記構成によれば、締結固定工程において、流体管に新設流体機器と一体状態で外装固定される取替治具本体の仮固定部を仮固定操作する際、新設流体機器を流体管に密封状態に締結固定する本固定部での本固定操作体よりも少ない数の仮固定操作体を操作するだけで済む。これにより、流体管の機器設置領域に移動した新設流体機器を密封状態に迅速に仮固定することができるので、流体管の分岐口から噴出する圧力流体の流出量を減少しながら、仮固定工程から本固定工程までの締結固定操作を能率良く容易に行うことができる。
【0030】
本発明の第12特徴構成は、前記取替治具本体には、前記既設流体機器の少なくとも飛散抑止面側を覆う前記流体飛散抑止体が設けられている点にある。
【0031】
上記構成によれば、取替治具本体に流体飛散抑止体が設けられているため、締結弛緩工程の前工程である機器取替治具装着工程を実行すると、既設流体機器の締結固定を緩めたときに噴出する圧力流体の外部飛散を抑えるための流体飛散抑止体の装着工程も同時に実行することができる。
【0032】
本発明の第13特徴構成は、前記取替治具本体には、前記新設流体機器の両分割筐体の連結フランジに連結ボルトで連結される連結部と、前記既設流体機器を管軸芯方向から押圧する第1押圧部と、前記新設流体機器を管軸芯方向から押圧する第2押圧部と、が設けられている点にある。
【0033】
上記構成によれば、取替治具本体の第2押圧部を管軸芯方向から押圧操作すると、この押圧操作力が新設流体機器の両分割筐体に伝達される。同時に、押圧操作力が取替治具本体の第1押圧部を介して既設流体機器に伝達される。これにより、新設流体機器と既設流体機器とを管軸芯方向に沿って確実、スムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態の流体機器の取替方法における新設漏洩補修金具の外装時の側面図
【
図7】取替治具本体の平面図(a)と正面図(b)と右側面図(c)
【
図11】既設分岐栓及び新設漏洩補修金具の移動時の縦断面図
【
図12】新設漏洩補修金具が機器設置領域に移動したときの縦断面図
【
図16】既設分岐栓及び機器取替治具の撤去時の側面図
【
図17】新設漏洩補修金具の締結固定完了時の側面図
【
図18】第2実施形態の流体機器の取替方法における新設漏洩補修金具及び機器取替治具の装着時の縦断面図
【
図20】既設分岐栓及び新設漏洩補修金具の移動時の縦断面図
【
図21】第3実施形態の流体機器の取替方法における既設分岐栓の締結弛緩操作時の縦断面図
【
図22】新設漏洩補修金具が機器設置領域に移動したときの縦断面図.
【
図23】第4実施形態の流体機器の取替方法における機器取替治具の平面図(a)と正面図(b)と側面図(c)
【
図26】第5実施形態の流体機器の取替方法における機器取替治具及びストッパー部の装着時の側面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1、
図2は、水道管等の流体管1の外面の機器設置領域1Aに、その機器設置領域1Aの管壁に形成されている分岐口2を密封状態(水密状態)で囲繞する分割構造の既設流体機器の一例であるサドル式の既設分岐栓3が取付けられている流体配管構造を示す。この流体配管構造では、従来から存在する複数種類のサドル式の既設分岐栓3の一つが用いられている。
本実施形態で用いられるサドル式の既設分岐栓3は、
図1、
図2に示すように、円周方向に沿って連結される複数の分割筐体の一例で、流体管1に上下方向から挟持状態で装着可能な一対の半円筒状のサドル部31,32と、両サドル部31,32を流体管1に締結固定する第1連結ボルト33A・第1ナット33B等の第1締結具33と、流体管1の分岐口2に対面する上側のサドル部31に設けられる分岐栓本体34と、を備える。
上側のサドル部31には、流体管1の分岐口2の周囲を密封する第1ゴム輪35が装着されている。両サドル部31,32の円周方向両端部には、直径方向の外方側に突出する第1連結フランジ31A,32Aが一体形成されている。両サドル部31,32の各第1連結フランジ31A,32Aには、第1連結ボルト33Aが挿通される第1ボルト挿通孔36が形成されている。
【0036】
分岐栓本体34には、
図2に示すように、横向き「T」字状の流路34Aと、流路34Aの流路交差部に配置される開閉弁としてのボール弁34Bと、を備える。ボール弁34Bは、流路34Aの下端開口である底部流入口34aと、流路34Aの上端開口である作業用開口34bと、流路34Aの横向き開口である分岐流出口34cと、を選択的に連通遮断する。また、分岐栓本体34には、作業用開口34bを密封状態で閉止する蓋34Dが脱着自在に設けられている。この蓋34Dが装着されている状態では、流路34Aにおける底部流入口34aと分岐流出口34cとの間の「L」字状の流路部分がボール弁34Bで開閉操作される。
【0037】
流体管1の分岐口2には、これの内周面の腐蝕や錆びの発生を抑制するための耐蝕性、耐錆製に優れた円筒状の防錆コア4が装着されている。この防錆コア4の一部である径方向外方側端部は、流体管1の外面と既設分岐栓3の内面との間に形成されている内部空間である流路34Aの底部流入口34a側に突設されている。
【0038】
次に、上述の流体配管構造において、漏水が発生した交換対象の既設分岐栓3を、新設流体機器の一例で、流体管1の分岐口2を密封閉鎖状態で囲繞するサドル式の新設漏洩補修金具5(
図17参照)に不断流状態(不断水状態)で取り替える流体機器の取替方法について説明する。
この流体機器の取替方法で用いられるサドル式の新設漏洩補修金具5は、
図1、
図3、
図4に示すように、流体管1に上下方向から挟持状態で装着可能な一対の半円筒状の新設分割筐体51,52と、両新設分割筐体51,52を流体管1に締結固定する本固定操作体としての第2連結ボルト53A・第2ナット53B等の第2締結具53(本固定部の一例)と、を備える。本実施形態では、第2締結具53の第2連結ボルト53A・第2ナット53Bによる本固定操作箇所は、四箇所に設定されている。流体管1の分岐口2に対面配置される上側の新設分割筐体51の中央部には、流体管1の分岐口2に装着されている防錆コア4の突出部4aが入り込み可能な凹部51bを有する膨出突起部51Bが形成されている。上側の新設分割筐体51の内面における凹部51bの外周部位には、分岐口2及び防錆コア4の周囲を密封する第2ゴム輪54が装着されている。
両新設分割筐体51,52の円周方向両端部には、直径方向の外方側に突出する第2連結フランジ51A,52Aが一体形成されている。両新設分割筐体51,52の各第2連結フランジ51A,52Aには、
図1に示すように、第2連結ボルト53Aが挿通される第2ボルト挿通孔55が形成されている。
第2連結ボルト53Aは、
図5に示すように、流体管1に新設漏洩補修金具5と一体状態で外装された後述の機器取替治具6を脱着自在に押えナット65で固定連結可能な長さを有する。
【0039】
[新設漏洩補修金具外装工程(新設流体機器外装工程)]
図1、
図3、
図4は、流体管1の機器設置領域1Aに隣接する仮設置領域1Bに、新設漏洩補修金具5を管軸芯方向に移動操作自在に外装する工程を示す。
図1、
図3に示すように、流体管1の仮設置領域1Bに、新設漏洩補修金具5を構成する上側の新設分割筐体51と下側の新設分割筐体52を外装する。この上側の新設分割筐体51の第2連結フランジ51Aと下側の新設分割筐体52の第2連結フランジ52Aとを、第2締結具53の第2連結ボルト53A・第2ナット53Bで連結する。
この第2締結具53による両新設分割筐体51,52の連結は、新設漏洩補修金具5を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力(又は機械力)で押圧移動操作できる程度の緩みで連結する。この新設漏洩補修金具外装工程において、本実施形態では、
図4に示すように、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第1空隙S1の径方向寸法h1が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法h(
図8参照)よりも大となる状態で、新設漏洩補修金具5を構成する両新設分割筐体51,52を流体管1の仮設置領域1Bに外装連結する工程を含む。
図4では、流体管1に対して新設漏洩補修金具5が自重で下降した状態にあるため、第1空隙S1は、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5の下側の新設分割筐体52の内面との間に現れている。
【0040】
尚、上述の新設漏洩補修金具外装工程において、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第1空隙S1の径方向寸法h1を、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hと同一になる状態で、新設漏洩補修金具5を構成する両新設分割筐体51,52を流体管1の仮設置領域1Bに外装連結してもよい。この場合、後述する流体機器移動工程において、流体管1の仮設置領域1Bに位置する新設漏洩補修金具5を、防錆コア4の突出部4aの先端と接触状態で通過して機器設置領域1Aに移動させることになる。
【0041】
[機器取替治具装着工程]
図5は、流体管1の仮設置領域1Bに、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力で押圧移動操作するための金属製の機器取替治具6を装着する工程を示す。
機器取替治具6は、
図6、
図7に示すように、流体管1の仮設置領域1Bに新設漏洩補修金具5と一体状態で外装固定可能な取替治具本体60を備える。この取替治具本体60には、流体管1に対して新設漏洩補修金具5の上側の新設分割筐体51を密封状態に押圧して仮固定する仮固定部61と、両新設分割筐体51,52の第2連結フランジ51A,52Aに第2連結ボルト53A及び押えナット65で連結される連結部62と、既設分岐栓3を管軸芯方向から押圧する第1押圧部63と、新設漏洩補修金具5を管軸芯方向から押圧する第2押圧部64と、が設けられている。
【0042】
取替治具本体60の仮固定部61は、
図5~
図7に示すように、仮固定操作体の一例で、水平な矩形状の連結板60Aの中央に設けられたネジ中心が上下方向に沿うナット部材61Aと、このナット部材61Aに上方から螺合される押圧ボルト61Bと、を備える。
仮固定部61の仮固定操作箇所は、本固定部の一例である第2締結具53の本固定操作箇所(四箇所)よりも少ない一箇所に設定されている。
取替治具本体60の第1押圧部63は、
図6、
図7に示すように、連結板60Aにおける管軸芯方向の一端部に固着される第1押圧板63Aから構成され、この第1押圧板63Aには、流体管1に上方から外装可能な半長円形状の第1装着凹部63Bが形成されている。第1押圧板63Aは、
図5に示すように、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5との間に配置され、既設分岐栓3の一端面と新設漏洩補修金具5の一端面とに面接触する。
取替治具本体60の第2押圧部64は、
図6、
図7に示すように、連結板60Aにおける管軸芯方向の他端部に固着される第2押圧板64Aから構成され、この第2押圧板64Aには、流体管1に上方から外装可能な半長円形状の第2装着凹部64Bが形成されている。第2押圧板64Aの一側面は、
図5に示すように、新設漏洩補修金具5の他端面に面接触する。第2押圧板64Aの他側面は、新設漏洩補修金具5を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力で押圧するための押圧操作面に構成されている。
取替治具本体60の連結部62は、
図6、
図7に示すように、連結板60Aの長辺側の両側辺における管軸芯方向の両端部の各々において、第1押圧板63A及び第2押圧板64Aと一体状態で固着される略「L」字状の連結片62Aを備える。各連結片62Aには、第2連結ボルト53Aが挿通されるボルト挿通凹部62Bが形成されている。
【0043】
そして、機器取替治具装着工程においては、
図5に示すように、各連結片62Aのボルト挿通凹部62Bに挿通された第2連結ボルト53Aの上側ネジ部に押えナット65を螺合し、流体管1に外装された機器取替治具6を新設漏洩補修金具5に固定する。
また、
図8に示すように、機器取替治具6が新設漏洩補修金具5に取付けられた状態では、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5における下側の新設分割筐体52の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位は、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大なる第1空隙S1が形成されている。
【0044】
[流体飛散抑止体装着工程]
図9は、締結弛緩工程を実行する前に、既設分岐栓3の締結固定を緩めたときに噴出する圧力流体(上水)の外部飛散を抑えるための第1流体飛散抑止体7を装着する工程を示す。具体的には、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5とに渡って、既設分岐栓3の両サドル部31,32を締結固定している第1締結具33を緩めたときに噴出する圧力流体の外部飛散を抑える第1流体飛散抑止体7を装着する工程を示す。
第1流体飛散抑止体7は、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5とを覆い包むことが可能な可撓性(柔軟性)を備えた樹脂製の内部透視可能な防水シート(例えば、透明又は半透明なポリエチレンシート)71から構成されている。本実施形態では、
図9に示すように、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5とに巻き付けた防水シート71の両端部を、紐やバンド等の締め付け具72で流体管1に止め付ける。
また、防水シート71の重ね合わせ部は、作業者の作業位置から離れた位置に配置し、第1締結具33を緩めたときに防水シート71の重ね合わせ部から噴出する圧力流体が作業者に降り掛かることを抑制する。これにより、内部透視可能な防水シート71で覆われている内部を目視で確認しながら、圧力流体の噴出による流体機器取替作業の妨げを回避することができる。
【0045】
尚、防水シート71の重ね合わせ部を面ファスナー等で閉止するとともに、防水シート71に排水ホースを接続して、第1締結具33を緩めたときに防水シート71内に噴出する圧力流体を排水ホースで所定排水箇所に排水してもよい。
【0046】
[既設分岐栓(既設流体機器)の締結弛緩工程]
図10は、既設分岐栓3を管軸芯方向に移動操作可能な状態にまで、該既設分岐栓3の締結固定を緩み操作する工程を示す。
この既設分岐栓3の締結弛緩工程では、
図10に示すように、両サドル部31,32の第1連結フランジ31A,32Aを締結固定している第1締結具33を緩み操作し、両サドル部31,32の第1連結フランジ31A,32A間の間隔W2を、
図9に示す締結固定時の間隔W1よりも拡大する。この第1締結具33の緩み操作量は、既設分岐栓3を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力で押圧移動させることのできる程度の緩みに設定する。
本実施形態では、
図11を参照して説明すると、流体管1の外面と既設分岐栓3の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第2空隙S2の径方向寸法h2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態にまで、両サドル部31,32の第1連結フランジ31A,32Aを締結固定している第1締結具33の第1連結ボルト33A・第1ナット33Bを緩み操作する。
【0047】
第1締結具33の緩み操作により、流体管1の分岐口2から噴出する圧力流体(水圧)によって既設分岐栓3が持ち上げられ、既設分岐栓3における上側のサドル部31の内面と流体管1の外面との間に、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大なる第2空隙S2が形成される。この第2空隙S2から防水シート71内に圧力流体が噴出し、その圧力流体の一部が防水シート71の重ね合わせ部から外部に噴出しても、内部透視可能な防水シート71で覆われている内部を目視で確認しながら、噴出した流体が作業者に降り掛かることを抑制することができるので、作業を妨げることはない。
【0048】
尚、上述の既設分岐栓3の締結弛緩工程において、流体管1の外面と既設分岐栓3の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第2空隙S2の径方向寸法h2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hと同一となる状態にまで、両サドル部31,32の第1連結フランジ31A,32Aを締結固定している第1締結具33の第1連結ボルト33A・第1ナット33Bを緩み操作してもよい。この場合、後述する流体機器移動工程において、流体管1の機器設置領域1Aに位置する既設分岐栓3を、防錆コア4の突出部4aの先端と接触状態で通過して機器設置領域1A外に移動させることになる。
【0049】
[流体機器移動工程]
図11、
図12は、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5を、流体管1に対して管軸芯方向に沿って同一方向に移動操作し、流体管1の機器設置領域1Aにある既設分岐栓3は、防錆コア4を通過して機器設置領域外に移動させ、流体管1の仮設置領域1Bにある新設漏洩補修金具5は、防錆コア4を越えて機器設置領域1Aに移動させる工程を示す。
この流体機器移動工程においては、機器取替治具6の第2押圧板64Aを管軸芯方向から人為力で押圧操作すると、押圧操作力が新設漏洩補修金具5の両新設分割筐体51,52に伝達される。同時に、押圧操作力が機器取替治具6の第1押圧板63Aを介して既設分岐栓3に伝達される。これにより、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5とを管軸芯方向に沿って確実に移動させることができる。
【0050】
そして、流体機器移動工程においては、
図11に示すように、流体管1の分岐口2から噴出する圧力流体によって既設分岐栓3が持ち上げられ、既設分岐栓3における上側のサドル部31の内面と流体管1の外面との間における少なくとも防錆コア4に対応する部位の第2空隙S2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態に維持されている。これにより、機器設置領域1Aに位置する既設分岐栓3を、防錆コア4の突出先端と非接触状態で通過して機器設置領域外にスムーズに移動させることができる。
【0051】
さらに、流体管1の仮設置領域1Bにある新設漏洩補修金具5の一端部が機器設置領域1Aの分岐口2に移動すると、
図11に示すように、分岐口2から噴出する圧力流体によって新設漏洩補修金具5が持ち上げられ、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5における上側の新設分割筐体51の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第1空隙S1が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態に維持される。これにより、新設漏洩補修金具5を、防錆コア4の突出先端と非接触状態で通過して機器設置領域1Aにスムーズに移動させることができる。
したがって、流体機器移動工程においては、防錆コア4による移動抵抗が無くなるので、既設分岐栓3及び新設漏洩補修金具5の移動操作をより能率良く容易に行うことができる。
【0052】
[締結固定工程]
図13~
図15は、新設漏洩補修金具5を流体管1の機器設置領域1Aに締結固定する締結固定工程を示す。この締結固定工程には、流体管1に対して新設漏洩補修金具5における上側の新設分割筐体51を密封状態に仮固定する仮固定工程と、仮固定されている新設漏洩補修金具5を流体管1に密封状態に締結固定する本固定工程と、が備えられている。
仮固定工程では、
図13、
図14に示すように、機器取替治具6の仮固定部61を構成する押圧ボルト61Bを締め付け側に螺合操作し、上側の新設分割筐体51の内面における凹部51bの外周部位に装着した第2ゴム輪54を流体管1の外面に圧着して密封する。このとき、流体管1の分岐口2に装着されている防錆コア4の突出部4aの先端は、新設分割筐体51に形成されている膨出突起部51Bの凹部51b内に入り込む。
【0053】
本固定工程は、
図15に示すように、新設漏洩補修金具5と機器取替治具6とを連結している四箇所のボルト連結部のうち、先ず、一箇所のボルト連結部を構成する第2締結具53の第2連結ボルト53A・第2ナット53Bと押えナット65を取外し、新設漏洩補修金具5に用いられる正規の第3締結具8(本固定部の一例)の第3ボルト8A・第3ナット8B(本固定操作体の一例)に付け替えて締結固定する。そして、
図16、
図17に示すように、この手順で全てのボルト連結部を順番に正規の第3ボルト8A・第3ナット8Bに付け替えて締結固定する。
【0054】
[撤去工程]
図16は、機器取替治具6及び既設分岐栓3を流体管1から撤去する撤去工程を示す。
機器取替治具6の撤去工程は、上述のように、新設漏洩補修金具5と機器取替治具6とのボルト連結部を構成する第2締結具53の第2連結ボルト53A・第2ナット53Bと押えナット65を取外し、新設漏洩補修金具5に用いられる正規の第3ボルト8A・第3ナット8Bに付け替えることにより、機器取替治具6は撤去される。
また、既設分岐栓3の撤去工程は、既設分岐栓3の両サドル部31,32を締結固定している第1締結具33の第1連結ボルト33A・第1ナット33Bを取り外す。
図17は、流体管1から機器取替治具6及び既設分岐栓3が撤去され、流体管1に新設漏洩補修金具5のみが残る流体機器取替方法の完了状態を示す。
【0055】
〔第2実施形態〕
図18~
図20は、流体機器移動工程において、流体管1の仮設置領域1Bにある新設漏洩補修金具5及び機器設置領域1Aにある既設分岐栓3を、新設漏洩補修金具5の移動前方側において防錆コア4の突出部4aを通過可能な状態に変形させながら移動させる流体機器の取替方法を示す。
図18は、新設漏洩補修金具外装工程において、流体管1の機器設置領域1Aに隣接する仮設置領域1Bに、新設漏洩補修金具5を管軸芯方向に移動操作自在に外装し、機器取替治具装着工程において、流体管1の仮設置領域1Bに、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力で押圧移動操作するための機器取替治具6を装着した状態を示す。
【0056】
新設漏洩補修金具外装工程においては、
図18に示すように、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5における上側の新設分割筐体51の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第1空隙S1の径方向寸法h1が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも小となる状態で、新設漏洩補修金具5を構成する両新設分割筐体51,52を流体管1の仮設置領域1Bに移動自在に外装連結する。
【0057】
機器取替治具装着工程においては、
図18に示すように、機器取替治具6の第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面と流体管1の外面と間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第3空隙S3の径方向寸法h3が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも小に構成されている。
【0058】
図19の既設分岐栓3の締結弛緩工程では、流体管1の外面と既設分岐栓3の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第2空隙S2の径方向寸法h2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態にまで、両サドル部31,32の第1連結フランジ31A,32Aを締結固定している第1締結具33の第1連結ボルト33A・第1ナット33Bを緩み操作する。
【0059】
流体機器移動工程では、
図19に示すように、流体管1の分岐口2から噴出する圧力流体によって既設分岐栓3が持ち上げられ、既設分岐栓3における上側のサドル部31の内面と流体管1の外面との間における少なくとも防錆コア4に対応する部位の第2空隙S2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法h(
図18参照)よりも大となる状態に維持されている。これにより、機器設置領域1Aに位置する既設分岐栓3を、防錆コア4の突出先端と非接触状態で通過して機器設置領域1A外にスムーズに移動させることができる。
【0060】
さらに、流体管1の仮設置領域1Bにある機器取替治具6の第1押圧板63A及び新設漏洩補修金具5の一端部が機器設置領域1Aの分岐口2に移動すると、
図20に示すように、分岐口2から噴出する圧力流体によって機器取替治具6及び新設漏洩補修金具5が持ち上げられる。しかし、機器取替治具6の第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面と流体管1の外面と間の第3空隙S3、及び、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5における上側の新設分割筐体51の内面との間の第1空隙S1は、防錆コア4の突出部4aの突出寸法h(
図18参照)よりも小に維持されている。
そのため、流体機器移動工程において、
図20に示すように、機器取替治具6の第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面の前方上側角部63bが、防錆コア4の突出部4aに当接し、防錆コア4の突出部4aを折り曲げ変形させる。新設漏洩補修金具5の上側の新設分割筐体51における内面の前方上側角部は、折り曲げ変形された防錆コア4の変形突出部4aに接触しながら通過する。新設漏洩補修金具5が流体管1の機器設置領域1Aに移動した状態では、上側の新設分割筐体51の内面に装着した第2ゴム輪54内に、折り曲げられた防錆コア4の突出部4aが位置し、この状態で締結固定工程が実行される。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0061】
尚、上述の第2実施形態では、第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面の前方上側角部63bを、防錆コア4の突出部4aに対する折り曲げ作用部に構成したが、第1押圧板63Aが存在しない場合では、新設漏洩補修金具5の上側の新設分割筐体51における内面の前方上側角部が、防錆コア4の突出部4aに対する折り曲げ作用部を構成することになる。
上述のいずれの場合も、流体機器移動工程において、新設漏洩補修金具5の移動前方側において防錆コア4の突出部4aを通過可能な状態に変形させる工程を構成する。
【0062】
上述の第2実施形態では、既設分岐栓3における上側のサドル部31の内面と流体管1の外面との間における少なくとも防錆コア4に対応する部位の第2空隙S2を、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態に設定したが、この第2空隙S2を、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも小となる状態に設定してもよい。
この場合、流体機器移動工程において、既設分岐栓3における分岐栓本体34の底部流入口34aの開口縁が、防錆コア4の突出部4aに当接し、防錆コア4の突出部4aを折り曲げ変形させながら通過する。そのため、分岐栓本体34の底部流入口34aの後方開口角部が、防錆コア4の突出部4aに対する第1番目の折り曲げ作用部になる。これに続く第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面の前方上側角部63bが、防錆コア4の突出部4aに対する第2番目の折り曲げ作用部になる。
【0063】
〔第3実施形態〕
図21、
図22は、流体機器移動工程において、流体管1の仮設置領域1Bにある新設漏洩補修金具5及び機器設置領域1Aにある既設分岐栓3を、新設漏洩補修金具5の移動前方側において防錆コア4の突出部4aを剪断しながら移動させる流体機器の取替方法を示す。
図21は、新設漏洩補修金具外装工程において、流体管1の機器設置領域1Aに隣接する仮設置領域1Bに、新設漏洩補修金具5を管軸芯方向に移動操作自在に外装し、機器取替治具装着工程において、流体管1の仮設置領域1Bに、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力で押圧移動操作するための機器取替治具6を装着した状態を示す。
【0064】
新設漏洩補修金具外装工程においては、
図21に示すように、流体管1の外面と新設漏洩補修金具5における上側の新設分割筐体51の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第1空隙S1の径方向寸法h1が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも小となる状態で、新設漏洩補修金具5を構成する両新設分割筐体51,52を流体管1の仮設置領域1Bに移動自在に外装連結する。
【0065】
機器取替治具装着工程においては、
図21に示すように、機器取替治具6の第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面と流体管1の外面と間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第3空隙S3の径方向寸法h3が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも小に構成されている。
また、機器取替治具6の第1押圧板63Aの外側面には、防錆コア4の突出部4aを剪断可能な切断刃9aを備えた切断具9が取付けられている。
【0066】
図21の既設分岐栓3の締結弛緩工程では、流体管1の外面と既設分岐栓3の内面との間で、且つ、少なくとも防錆コア4に管軸芯方向で対応する部位の第2空隙S2の径方向寸法h2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態にまで、両サドル部31,32の第1連結フランジ31A,32Aを締結固定している第1締結具33の第1連結ボルト33A・第1ナット33Bを緩み操作する。
【0067】
流体機器移動工程では、
図22に示すように、流体管1の分岐口2から噴出する圧力流体によって既設分岐栓3が持ち上げられ、既設分岐栓3における上側のサドル部31の内面と流体管1の外面との間における少なくとも防錆コア4に対応する部位の第2空隙S2が、防錆コア4の突出部4aの突出寸法hよりも大となる状態に維持されている。これにより、機器設置領域1Aに位置する既設分岐栓3を、防錆コア4の突出先端と非接触状態で通過して機器設置領域外にスムーズに移動させることができる。
【0068】
さらに、
図22に示すように、流体管1の仮設置領域1Bにある機器取替治具6の第1押圧板63Aの外側面に取付けられた切断具9の切断刃9aが、防錆コア4の突出部4aの根元側を剪断しながら通過移動する。流体管1の仮設置領域1Bにある機器取替治具6の第1押圧板63A及び新設漏洩補修金具5の一端部が剪断された防錆コア4の切断端面に移動すると、
図22に示すように、分岐口2から噴出する圧力流体によって機器取替治具6及び新設漏洩補修金具5が持ち上げられる。そのため、流体機器移動工程において、
図22に示すように、機器取替治具6の第1押圧板63Aにおける第1装着凹部63Bの内面、及び、新設漏洩補修金具5における上側の新設分割筐体51の内面は、防錆コア4の切断端面と非接触状態で通過し、新設漏洩補修金具5及び機器取替治具6を機器設置領域1Aにスムーズに移動させることができる。
そして、新設漏洩補修金具5が流体管1の機器設置領域1Aに移動した状態では、上側の新設分割筐体51の内面に装着した第2ゴム輪54内に、防錆コア4の切断端面が位置し、この状態で締結固定工程が実行される。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0069】
〔第4実施形態〕
図23~
図25は、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5を流体管1の外面に沿って管軸芯方向に人為力(又は機械力)で押圧移動操作するための機器取替治具6の変形例を示す。この第4実施形態の機器取替治具6は、第1実施形態で説明した機器取替治具6と同じ構成を備え、且つ、既設分岐栓3の少なくとも飛散抑止面側である上方と左右の側方及び押圧移動方向の上手側(
図24における左側)である新設漏洩補修金具5側を覆う金属製の第2流体飛散抑止体10が付加されている。
この第2流体飛散抑止体10は、
図23~
図25に示すように、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5との間に配置される第1押圧板63Aのうち、既設分岐栓3の一端面と接触する一側面63aに溶接等で一体的に固着されている。そのため、本実施形態においては、締結弛緩工程の前工程である機器取替治具装着工程を実行すると、既設分岐栓3の締結固定を緩めたときに噴出する圧力流体(上水)の外部飛散を抑えるための第2流体飛散抑止体10を装着する流体飛散抑止体工程も同時に実行することになる。
【0070】
第2流体飛散抑止体10は、
図23~
図25に示すように、既設分岐栓3よりも上方に延出される延長板部63cを有する第1押圧板63Aと、この第1押圧板63Aの上端から既設分岐栓3の上方を覆う状態で延設される天板11と、第1押圧板63Aの幅方向両端から既設分岐栓3の左右の側方を覆う状態で延設される一対の側板12と、を備える。この第1押圧板63Aと天板11と両側板12とで区画形成された既設機器収納空間14は、押圧移動方向の下手側(
図24における右側)と下方側に開口する。
そのため、機器取替治具6が流体管1の仮設置領域1Bに新設漏洩補修金具5と一体状態で外装固定された状態では、
図24、
図25に示すように、第2流体飛散抑止体10は、既設分岐栓3の少なくとも飛散抑止面側である上方と左右の側方及び押圧移動方向の上手側である新設漏洩補修金具5側を覆うことになる。これにより、既設分岐栓3の締結弛緩工程において、既設分岐栓3の両サドル部31,32を締結固定している第1締結具33を緩み操作したとき、流体管1の分岐口2から噴出する圧力流体は、第2流体飛散抑止体10の既設機器収納空間14における押圧移動方向の下手側開口及び下方側開口から外部に噴出することになる。そのため、外部に噴出した流体が作業者に降り掛かることを抑制することができるので、作業を妨げることはない。
【0071】
第2流体飛散抑止体10の両側板12には、
図23、
図24に示すように、既設分岐栓3の両サドル部31,32を締結固定している第1締結具33の第1ナット33Bを外部から緩み操作するための操作用開口15が形成されている。
また、
図23~
図25に示すように、第2流体飛散抑止体10の第1押圧板63Aの一側面63aで、且つ、第1押圧板63Aに形成されている第1装着凹部63Bの左右の両側縁部には、既設機器収納空間14内を通して押圧移動方向下手側の外部に突出する左右の一対の持ち手16が延設されている。各持ち手16の上側面16aは、上側のサドル部31の各第1連結フランジ31Aの下面に当接可能に構成されている。各持ち手16の先端部には、上側のサドル部31の各第1連結フランジ31Aにおける管軸芯方向の一側面に係合可能な突起部16bが形成されている。
【0072】
そして、流体機器移動工程において、機器取替治具6の第2流体飛散抑止体10における持ち手16を持ち上げると、第1締結具33が緩み操作されている既設分岐栓3の上側のサドル部31と、第2締結具53が緩み操作されている新設漏洩補修金具5の上側の新設分割筐体51とが傾斜姿勢で持ち上げられる。このとき、流体管1の分岐口2から噴出する圧力流体によって既設分岐栓3に持ち上げ力が作用しているので、その分だけ持ち手16の持ち上げ操作力は小さくて済む。
これにより、既設分岐栓3の上側のサドル部31及び新設漏洩補修金具5の上側の新設分割筐体51の持ち上げ操作を小さな力で容易に行うことができるとともに、既設分岐栓3及び新設漏洩補修金具5の移動操作をより能率良く容易に行うことができる。
【0073】
〔第5実施形態〕
図26、
図27は、第1実施形態で説明した流体機器の取替方法の変形例を示す。この変形例では、流体機器移動工程を実行する前に、流体管1における既設分岐栓3から既設分岐栓3及び新設漏洩補修金具5の設定移動距離Wを離れた位置にストッパー部20を外装固定するストッパー取付け工程を実行し、流体機器移動工程において、既設分岐栓3がストッパー部20に当接する位置まで、既設分岐栓3及び新設漏洩補修金具5を移動操作する。
設定移動距離Wは、
図26に示すように、新設漏洩補修金具5の上側の新設分割筐体51における膨出突起部51Bの中心から既設分岐栓3の上側のサドル部31における底部流入口34aの中心(又は分岐口2の中心)までの距離である。
【0074】
ストッパー部20を構成する止め金具は、
図26、
図27に示すように、流体管1に対して上方から外装可能な略「U」の字状の金属製のストッパー本体21を備える。このストッパー本体21には、流体管1の180度以上の範囲に亘って外装可能な長さを有する装着凹部21aが形成されている。ストッパー本体20Aの装着凹部21aが流体管1に外装された状態では、ストッパー本体20Aの管周方向中央部は、流体管1の外面の頂部に位置し、ストッパー本体20Aの管周方向両端部は、流体管1の外面の下半部側に位置する。
ストッパー本体20Aの管周方向中央部及び管周方向両端部の各々には、
図26、
図27に示すように、ネジ中心が流体管1の管軸芯に向かう円筒状の雌ネジ部22が形成され、各雌ネジ部22には、流体管1に外装されたストッパー部20を締結固定する締結ボルト23が螺合されている。
【0075】
図26に示すように、ストッパー部20の管周方向中央部の雌ネジ部22には、既設分岐栓3の上側のサドル部31における他端面31aの管周方向中央部位に管軸芯方向から当接する中央ストッパー面22aが形成されている。また、ストッパー部20の管周方向両端部の雌ネジ部22には、既設分岐栓3の下側のサドル部32における両第1連結フランジ32Aの他端面32aに管軸芯方向から当接する端部ストッパー面22bが形成されている。
そして、ストッパー取付け工程においては、
図26に示すように、管周方向中央部の雌ネジ部22の中央ストッパー面22aと上側のサドル部31の他端面31aとの管軸芯方向での対向面間が設定移動距離Wに調整されている。さらに、管周方向両端部の雌ネジ部22の端部ストッパー面22bと下側のサドル部32における両第1連結フランジ32Aの他端面32aとの管軸芯方向での対向面間も設定移動距離Wに調整されている。
また、
図27に示すように、ストッパー本体21の装着凹部21aには、機器取替治具6の両持ち手16が管軸芯方向から入り込む凹部21bが形成されている。
【0076】
そして、流体機器移動工程の実行時には、既設分岐栓3の両サドル部31、32の他端面がストッパー部20のストッパー面22a,22bに当接するまで、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5とを流体管1の外面に沿って移動操作する。これにより、既設分岐栓3と新設漏洩補修金具5との移動操作を確実、容易に行うことができる。
【0077】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、機器設置領域1Aの管壁に形成されている分岐口2を密封状態で囲繞する分割構造の既設流体機器として、サドル式の既設分岐栓3を例に挙げて説明したが、既設仕切弁や既設T字管等であってもよい。
【0078】
(2)上述の各実施形態では、新設流体機器として、流体管1の分岐口2を密封閉鎖状態で囲繞するサドル式の新設漏洩補修金具5を例に挙げて説明したが、新設分岐栓や新設仕切弁、新設T字管等であってもよい。
【0079】
(3)上述の各実施形態では、流体管1の分岐口2に装着されている防錆コア4の一端部が、流体管1の外面と既設分岐栓(既設流体機器)3の内面との間に形成されている内部空間内に突設されている流体配管構造を例に挙げて説明したが、この流体配管構造に限定されない。例えば、防錆コア4が、それの管径方向外方側の一端と流体管1の外面とが面一又は略面一になる状態で分岐口2に装着されている流体配管構造に本発明の技術を適用してもよい。さらに、分岐口2に防錆コア4が装着されていない流体配管構造に本発明の技術を適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 流体管
1A 機器設置領域
1B 仮設置領域
2 分岐口
3 既設流体機器(既設分岐栓)
4 防錆コア
4a 突出部
5 新設流体機器(新設漏洩補修金具)
6 機器取替治具
7 流体飛散抑止体(第1流体飛散抑止体)
8 本固定部(第3締結具)
8A 本固定操作体(第3ボルト)
8B 本固定操作体(第3ナット)
10 流体飛散抑止体(第2流体飛散抑止体)
20 ストッパー部
53 本固定部(第2締結具)
53A 本固定操作体(第2連結ボルト)
53B 本固定操作体(第2ナット)
60 連結板
61 仮固定部
61A 仮固定操作体(ナット部材)
61B 仮固定操作体(押圧ボルト)
62 連結部
63 第1押圧部
64 第2押圧部
S1 空隙(第1空隙)
S2 空隙(第2空隙)