(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】Tダイ、Tダイ用パッキン、側方密閉機構、およびシート・フィルム製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/305 20190101AFI20230524BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20230524BHJP
【FI】
B29C48/305
B29C48/08
(21)【出願番号】P 2019153782
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018211256
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】今堀 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】宇野 有祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 智則
(72)【発明者】
【氏名】山口 恭平
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-096370(JP,A)
【文献】特開2016-190344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記側方密閉機構は、薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、を含
み、
前記押さえ部材は、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨る広さで前記反流路面に当接する前記押圧面を有する押さえ板を含み、
前記食み出し防止部は、前記押圧面に設けられ、前記パッキンの変形部分を収容する空間が形成される凹部であるTダイ。
【請求項2】
前記凹部は、前記押さえ部材の押圧
面に形成された溝部である
請求項
1に記載のTダイ。
【請求項3】
導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記側方密閉機構は、
薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材
と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、を含み、
前記食み出し防止部は、前記パッキンの反流路面に設けられ、前記パッキンの変形部分を収容する空間が形成される凹部であ
るTダイ。
【請求項4】
導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記側方密閉機構は、
薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに、それぞれ取り付けられる一対のサイドプレート
と、を含み、
前記押さえ部材は、前記押圧面を有する押さえ板と前記一対のサイドプレートに係止される受け板とを有し、
前記受け板より止めねじをねじ込むことにより、前記押さえ板を介して、前記パッキンが前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って押し付けられ
るTダイ。
【請求項5】
導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記側方密閉機構は、
薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って取り付けられるサイドプレート
と、を含み、
前記サイドプレートは、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに当接する当接面に、前記パッキンおよび前記押さえ部材を収容する凹部を有し、
前記サイドプレートより止めねじをねじ込むことにより、前記押
さえ部材を介して、前記パッキンが前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って押し付けられ
るTダイ。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のTダイを備えたシート・フィルム製造装置。
【請求項7】
導入された溶融樹脂を、複数のマニホールド部で幅方向に拡幅し、拡幅した溶融樹脂をメインの流路に合流してリップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、少なくとも向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、メインマニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通するメインランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、少なくとも前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記Tダイ本体は、
前記第1ダイブロック内に、第1ダイブロック側マニホールド部と、前記第1ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第1ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記第2ダイブロック内に、第2ダイブロック側マニホールド部と、前記第2ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第2ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記側方密閉機構は、薄板状に形成され、前記メインランド部流路および前記リップ部流路、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路の側方および前記第2ダイブロック側ランド部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路および第2ダイブロック側ランド部流路のうち少なくとも前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、を含
み、
前記押さえ部材は、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨る広さで前記反流路面に当接する前記押圧面を有する押さえ板を含み、
前記食み出し防止部は、前記押圧面に設けられ、前記パッキンの変形部分を収容する空間が形成される凹部であるTダイ。
【請求項8】
前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド
部流路のうちの少なくとも一方は、対応するマニホールド部で拡幅された溶融樹脂を当該ダイの流通方向に所定距離流通させる平坦部を含み、
前記平坦部は、
流速調整用のチョークバーが取り付けられ、
前記側方密閉機構は、
前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド
部流路のうちの少なくとも前記平坦部に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部を含む
請求項
7に記載のTダイ。
【請求項9】
前記凹部は、前記押さえ部材の押圧
面に形成された溝部である
請求項
7又は8に記載のTダイ。
【請求項10】
導入された溶融樹脂を、複数のマニホールド部で幅方向に拡幅し、拡幅した溶融樹脂をメインの流路に合流してリップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、少なくとも向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、メインマニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通するメインランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、少なくとも前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記Tダイ本体は、
前記第1ダイブロック内に、第1ダイブロック側マニホールド部と、前記第1ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第1ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記第2ダイブロック内に、第2ダイブロック側マニホールド部と、前記第2ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第2ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記側方密閉機構は、
薄板状に形成され、前記メインランド部流路および前記リップ部流路、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路の側方および前記第2ダイブロック側ランド部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材
と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路および第2ダイブロック側ランド部流路のうち少なくとも前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、を含み、
前記食み出し防止部は、前記パッキンの反流路面に設けられ、前記パッキンの変形部分を収容する空間が形成される凹部であ
るTダイ。
【請求項11】
導入された溶融樹脂を、複数のマニホールド部で幅方向に拡幅し、拡幅した溶融樹脂をメインの流路に合流してリップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、少なくとも向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、メインマニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通するメインランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、少なくとも前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記Tダイ本体は、
前記第1ダイブロック内に、第1ダイブロック側マニホールド部と、前記第1ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第1ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記第2ダイブロック内に、第2ダイブロック側マニホールド部と、前記第2ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第2ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記側方密閉機構は、
薄板状に形成され、前記メインランド部流路および前記リップ部流路、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路の側方および前記第2ダイブロック側ランド部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路および第2ダイブロック側ランド部流路のうち少なくとも前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに、それぞれ取り付けられる一対のサイドプレート
と、を含み、
前記押さえ部材は、前記押圧面を有する押さえ板と前記一対のサイドプレートに係止される受け板とを有し、
前記受け板より止めねじをねじ込むことにより、前記押さえ板を介して、前記パッキンが前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って押し付けられ
るTダイ。
【請求項12】
導入された溶融樹脂を、複数のマニホールド部で幅方向に拡幅し、拡幅した溶融樹脂をメインの流路に合流してリップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、少なくとも向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、メインマニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通するメインランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、少なくとも前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、
前記Tダイ本体は、
前記第1ダイブロック内に、第1ダイブロック側マニホールド部と、前記第1ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第1ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記第2ダイブロック内に、第2ダイブロック側マニホールド部と、前記第2ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第2ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、
前記側方密閉機構は、
薄板状に形成され、前記メインランド部流路および前記リップ部流路、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路の側方および前記第2ダイブロック側ランド部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路および第2ダイブロック側ランド部流路のうち少なくとも前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、
前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って取り付けられるサイドプレート
と、を含み、
前記サイドプレートは、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに当接する当接面に、前記パッキンおよび前記押さえ部材を収容する凹部を有し、
前記サイドプレートより止めねじをねじ込むことにより、前記押
さえ部材を介して、前記パッキンが前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って押し付けられ
るTダイ。
【請求項13】
請求項
7ないし
12のいずれか1項に記載のTダイを備えたシート・フィルム製造装置。
【請求項14】
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成され、導入された溶融樹脂をマニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイの前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成されるTダイ本体の側面に取り付けられるTダイ用パッキンであって、
薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぎ、前記反流路面に凹部が形成されたTダイ用パッキン。
【請求項15】
対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成され、導入された溶融樹脂をマニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイの前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成されるTダイ本体の側面に取り付けられる側方密閉機構であって、
薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、
前記パッキンの反流路面に当接して押し付ける押圧面を有する押さえ部材と、
前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部とを含
み、
前記押さえ部材は、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨る広さで前記反流路面に当接する前記押圧面を有する押さえ板を含み、
前記食み出し防止部は、前記押圧面に設けられ、前記パッキンの変形部分を収容する空間が形成される凹部である側方密閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機から圧送されてくる溶融樹脂を拡幅してシート状あるいはフィルム状に吐出するTダイと、このTダイに取り付けられるTダイ用パッキン並びに側方密閉機構と、このTダイを用いたシート・フィルム製造装置に関するものである。特に、Tダイからの樹脂漏れを防止しつつTダイの操作性を向上させるための改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート・フィルム製造装置は、押出機から圧送されてくる溶融樹脂を拡幅してシート状あるいはフィルム状に吐出するために、押出機の先端部にTダイを有している(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、従来のTダイ1について説明する。
図1は、従来のTダイ1の概略構成を示す図である。
なお、Tダイ1における幅方向をX方向とし、Tダイ1における溶融樹脂の流通方向をY方向とし、Tダイ1における溶融樹脂の厚み方向をZ方向として、直交座標系を設定している。
【0004】
Tダイ1は、Tダイ本体10を含んで構成されている。
Tダイ本体10において、溶融樹脂の流通方向(Y方向)の上流側には、溶融樹脂の導入口11が設けられている。そして、下流側には、幅方向(X方向)に沿ってスリット状のリップ隙間(吐出口)12が形成されている。
供給された溶融樹脂は、導入口11、流路13を経て、マニホールド部14で拡幅される。拡幅された溶融樹脂は、さらに流路15を経て、可動リップ16と固定リップ17との間のリップ隙間12からシート状あるいはフィルム状に吐出される。
【0005】
Tダイ1において、マニホールド部14で拡幅された溶融樹脂を幅方向に亘ってムラなくシート状あるいはフィルム状に吐出するためには、リップ隙間12の調整は欠くことができない作業である。そこで、幅方向に複数個設けた調整ボルト18でそれぞれ可動リップ16を押し引きすることにより、固定リップ17に対する可動リップ16の位置を幅方向に亘って調整して、溶融樹脂が均一に吐出されるようにしている。
【0006】
Tダイ本体10の内部に溶融樹脂の流路15を形成するに当たり、Tダイ本体10の側面10sには、
図2に示すように、成形運転中に側面10sからの樹脂漏れを防止するために、パッキン19が取り付けられている。
この場合、パッキン19は、サイドプレート21に螺合しつつ貫通する止めねじ22をねじ込むことにより、押さえ板20を介して、流路15の側方が露出している側面10sに押し付けられて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
実開昭63-170120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述した従来の固定方法では、止めねじ22で押し付けた際に、パッキン19が変形して流路15に食み出してしまう(食い込んでしまう)、いわゆる食み出し(食い込み)が発生してしまう場合がある。
そのため、リップ隙間12を調整する際に、可動リップ16の幅方向の両端部の操作性が阻害されてしまうおそれがある。特に、リップ隙間12を狭める方向に調整ボルト18を操作する際に、その操作性が阻害されるおそれがある。
これは、止めねじ22の押し付け力が強いことによるところが大きいと考えられるが、止めねじ22の押し付け力が弱いと成形運転中に樹脂漏れが発生してしまう。
【0009】
本発明は、Tダイ本体の側面からの樹脂漏れを防止するとともに、リップ隙間の調整に対して、阻害要因となるパッキンの変形に伴う流路への食み出し(食い込み)を抑え、操作性を向上させることが可能なTダイ、Tダイ用パッキン、側方密閉機構、およびシート・フィルム製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点のTダイは、導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、前記側方密閉機構は、薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部とを含む。
【0011】
また、本発明の第1の観点のTダイは、導入された溶融樹脂を、複数のマニホールド部で幅方向に拡幅し、拡幅した溶融樹脂をメインの流路に合流してリップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイであって、対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、少なくとも向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、メインマニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通するメインランド部流路およびリップ部流路が形成されたTダイ本体と、前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成される前記Tダイ本体の側面に取り付けられ、少なくとも前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を密閉する側方密閉機構とを有し、前記Tダイ本体は、前記第1ダイブロック内に、第1ダイブロック側マニホールド部と、前記第1ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第1ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、前記第2ダイブロック内に、第2ダイブロック側マニホールド部と、前記第2ダイブロック側マニホールド部により拡幅した溶融樹脂を流通し、当該流通した溶融樹脂を前記メインランド部流路と前記リップ部流路の接続部に合流する第2ダイブロック側ランド部流路と、が形成され、前記側方密閉機構は、薄板状に形成され、前記メインランド部流路および前記リップ部流路、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路および前記第2ダイブロック側ランド部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記メインランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方、並びに、前記第1ダイブロック側ランド部流路の側方および前記第2ダイブロック側ランド部流路の側方を塞ぐパッキンと、前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路および第2ダイブロック側ランド部流路のうち少なくとも前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部と、を含む。
【0012】
本発明の第2の観点のシート・フィルム製造装置は、第1の観点のTダイを備えている。
【0013】
本発明の第3の観点のTダイ用パッキンは、対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成され、導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイの前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成されるTダイ本体の側面に取り付けられるTダイ用パッキンであって、薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぎ、前記反流路面に凹部が形成されている。
【0014】
本発明の第4の観点の側方密閉機構は、対向する第1ダイブロックと第2ダイブロックとを有し、向かい合う前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に、溶融樹脂が流通するランド部流路およびリップ部流路が形成され、導入された溶融樹脂を、マニホールド部で幅方向に拡幅し、リップ隙間よりシート状またはフィルム状に吐出するTダイの前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とを含んで構成されるTダイ本体の側面に取り付けられる側方密閉機構であって、薄板状に形成され、前記ランド部流路および前記リップ部流路に面する流路面と、前記流路面とは反対側の反流路面とを有し、前記流路面が前記第1ダイブロックの側面と前記第2ダイブロックの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、前記流路面が前記ランド部流路の側方および前記リップ部流路の側方を塞ぐパッキンと、前記パッキンが前記反流路面の側へ向かう変形を許容することにより、前記第1ダイブロックの内面と前記第2ダイブロックの内面との間に前記パッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Tダイ本体の側面からの樹脂漏れを防止するとともに、リップ隙間の調整に対して、阻害要因となるパッキンの変形に伴う流路への食み出し(食い込み)を抑え、Tダイの操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来のTダイの概略構成を示す側断面図である。
【
図2】従来のTダイのパッキンの取り付け構造を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るシート・フィルム製造装置の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るTダイの概略構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図5】Tダイ本体の概略構成を示す側断面図である。
【
図6】側方密閉機構を分解して示す一部切り欠き斜視図である。
【
図7】側方密閉機構におけるパッキンと押さえ板の取り付け構造を示す図である。
【
図8】側方密閉機構に配置されるパッキンの概略構成を示す図である。
【
図9】側方密閉機構に配置される押さえ板の概略構成を示す図である。
【
図10】側方密閉機構における止めねじの配置を示す図である。
【
図11】比較例としての「押さえ板に溝部なし」側方密閉機構、および本発明としての「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構をTダイに組み込んでシート製造試験を実施した際のパッキンの食み出し(食い込み)状態を模式的に示す図である。
【
図12】比較例におけるパッキンの流路面の変位の測定プロファイルを示す図である。
【
図13】本発明におけるパッキンの流路面の変位の測定プロファイルを示す図である。
【
図14】本発明におけるパッキンの反流路面の変位の測定プロファイルを示す図である。
【
図15】本発明の変形例に係るパッキンと押さえ板の取り付け構造を示す図である。
【
図16】本発明の変形例に係るパッキンの概略構成を示す図である。
【
図17】本発明の変形例に係る押さえ板の概略構成を示す図である。
【
図18】本発明の変形例に係るパッキンと押さえ板の取り付け構造を示す図である。
【
図19】本発明の変形例に係るパッキンと押さえ板の取り付け構造を示す図である。
【
図20】本発明の変形例に係る止めねじの配置を示す図である。
【
図21】本発明の変形例に係る止めねじの配置を示す図である。
【
図22】本発明の変形例に係る止めねじの配置を示す図である。
【
図23】本発明の変形例に係るサイドプレートの概略構成を示す図である。
【
図24】本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体の概略構成を示す図である。
【
図25】本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体の概略構成および側方密閉機構を分解して示す一部切り欠き斜視図である。
【
図26】本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体用側方密閉機構の溝付き押さえ板の構造例を示す図である。
【
図27】本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体用側方密閉機構の溝付き押さえ板の他の構造例を示す図である。
【
図28】本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体の他の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
[シート・フィルム製造装置100の概要について]
図3には、本発明の実施形態に係るシート・フィルム製造装置100の構成が示されている。
【0019】
本実施形態に係るシート・フィルム製造装置100は、押出機200と、Tダイ300と、キャスト機400と、厚さ計500と、引取機600と、巻取機700と、を含んで構成されている。
【0020】
押出機200は、樹脂を可塑化して押し出す装置であり、供給された粒状あるいは粉体状の樹脂を溶融および混練して溶融樹脂とし、先端部に配置されたTダイ300に向けて押し出していく。なお、押出機200に供給される樹脂には添加剤等が配合される場合もある。
【0021】
Tダイ300は、押出機200から圧送されてくる溶融樹脂を拡幅し、シート状あるいはフィルム状の溶融樹脂800としてキャスト機400に向けて吐出する。
【0022】
シート状あるいはフィルム状の溶融樹脂800は、キャスト機400によって冷却、固化され、シートあるいはフィルムとなる。シートあるいはフィルムは、厚さ計500で厚さが測定された後、引取機600でトリミング等の処理が行われ、最後に巻取機700によって巻き取られる。
【0023】
このような構成を有するシート・フィルム製造装置100において、Tダイ300はパッキンの取り付け構造に特徴的な構成を有し、以下に詳述するように、樹脂漏れを防止しつつ、側方密閉機構の食み出し防止部により、リップ隙間の調整に対して阻害要因となるパッキンの変形に伴う流路への食み出し(食い込み)を抑え、Tダイ300の操作性を向上させることが可能となるように構成されている。
【0024】
なお、以下では、シート・フィルム製造装置100を単にシート製造装置100と称し、シートあるいはフィルムを単にシートと称して説明するものとする。
【0025】
[Tダイ300の構成について]
図4には、本実施形態に係るTダイ300の概略構成が示されている。
なお、本実施形態では、各図面において、Tダイ300における幅方向をX方向とし、Tダイ300における溶融樹脂の流通方向をY方向とし、Tダイ300における溶融樹脂の厚み方向をZ方向として、直交座標系を設定している。
【0026】
Tダイ300は、Tダイ本体310および側方密閉機構320を含んで構成される。
なお、側方密閉機構320は、Tダイ本体310の幅方向における両端部にそれぞれ配置されるが、両機構とも同様の構成を有することから、
図4においては、一方の端部の側方密閉機構320のみ示し、他方の端部の側方密閉機構は、Tダイ本体310の一部とともに切り欠いてある。
【0027】
[Tダイ本体310の構成について]
図5には、Tダイ本体310の概略構成が示されている。
Tダイ本体310において、Y方向の後端部310REには、押出機200から圧送されてくる溶融樹脂の導入口311が設けられている。そして、Y方向の先端部310TPには、溶融樹脂を吐出するための吐出口として、可動リップ312と固定リップ313との間に、幅方向(X方向)に沿ってスリット状のリップ隙間314が設けられている。
Tダイ本体310の内部には溶融樹脂の樹脂流路RPが形成されており、導入口311より導入された溶融樹脂は、樹脂流路RPを流通して、リップ隙間314からシート状に吐出される。
【0028】
Tダイ本体310は、第1ダイブロック350と第2ダイブロック360とを有して構成されている。
第1ダイブロック350は、ブロック本体351の先端に前述の可動リップ312が設けられている。可動リップ312には、ブロック本体351との間に薄いネック部352が設けられている。言い換えれば、可動リップ312は、薄いネック部352を介してブロック本体351と一体的に連結されている。
第2ダイブロック360は、ブロック本体361の先端に前述の固定リップ313が一体的に設けられている。
【0029】
そして、Tダイ本体310は、第1ダイブロック350と第2ダイブロック360とが、対向する内面350R、360Rを介して重ね合され、図示しない複数のボルトにより互いに連結固定されて構成されている。言い換えれば、Tダイ本体310は、第1ダイブロック350と第2ダイブロック360とが、対向する内面350R、360Rを当接させて、図示しない複数のボルトにより互いに強固に締結されて構成されている。なお、第1ダイブロック350と第2ダイブロック360とは、可動リップ312と固定リップ313とが対向し、ブロック本体351とブロック本体361が対向するように重ね合わされて固定される。
【0030】
第1ダイブロック350の内面350Rと第2ダイブロック360の内面360Rとには、重ね合わされて固定された状態において、樹脂流路RPとなる隙間を形成するための凹部(凹み、窪みや溝)が設けられている。
この凹部により、Tダイ本体310の内部には、溶融樹脂の樹脂流路RPを構成する導入流路315、マニホールド部316、ランド部流路317、リップ部流路318が形成される。
【0031】
詳細には、Tダイ本体310の内部には、後端部310REの導入口311と連通する導入流路315が形成される。
導入流路315は、導入口311より送り込まれた溶融樹脂をマニホールド部316に導入するための流路である。
導入流路315の先には、導入流路315と連通するマニホールド部316が形成されている。マニホールド部316は、導入された溶融樹脂を幅方向(X方向)に拡幅する。
【0032】
さらに、マニホールド部316の先には、マニホールド部316と連通するランド部流路317が形成される。
ランド部流路317は、マニホールド部316で拡幅された溶融樹脂のZ方向の厚みを薄くするための流路である。ランド部流路317は、マニホールド部316の出口から可動リップ312手前までの範囲に形成される。
【0033】
そして、ランド部流路317の先には、ランド部流路317と連通するリップ部流路318が形成される。
リップ部流路318は、溶融樹脂の幅方向の厚みムラを調整するための流路であり、可動リップ312の範囲に形成される。リップ部流路318の先は、リップ隙間314と連通している。なお、厚みムラの調整については後述する。
【0034】
これより、Tダイ本体310の後端部310REの導入口311より送り込まれた溶融樹脂は、導入流路315を流通してマニホールド部316に導入され、マニホールド部316で拡幅された後、ランド部流路317を流通する間に薄くされ、引き続きリップ部流路318を流通する間に厚みムラが調整されて、Tダイ本体310の先端部310TPのリップ隙間314よりシート状に吐出される。
【0035】
Tダイ300において、リップ隙間314より溶融樹脂をシート状に吐出するにあたり、幅方向に亘ってムラなく吐出するためには、リップ隙間314の調整(可動リップ312の調整)は欠くことができない作業である。このリップ隙間314の調整は、Tダイ本体310の幅方向に複数個設けた調整ボルト319でそれぞれ可動リップ312を押し引きすることにより可動リップ312を移動させ、固定リップ313に対する可動リップ312の位置を幅方向に亘って調整して、溶融樹脂が均一に吐出されるようにしている。
【0036】
なお、
図4および
図5では、調整ボルト319を複数設けて、リップ隙間314を手動にて調整する場合を示しているが、熱変位もしくは電動を利用した機構を設けることにより自動で調整する場合もある。
【0037】
[側方密閉機構320の構成について]
Tダイ300において、Tダイ本体310の側面310Sには、
図6および
図7に示すように、側方密閉機構320が取り付けられる。
【0038】
Tダイ本体310の側面310Sは、第1ダイブロック350および第2ダイブロック360のX方向(幅方向)に面する側面350S、360Sを含んで構成されている。
側面350Sと側面360Sとの間には、第1ダイブロック350の内面350Rと第2ダイブロック360の内面360Rとの間に形成されるランド部流路317およびリップ部流路318の側方(X方向の側部)が開いて露出し、流路側方露出部PEを形成している。
側方密閉機構320は、成形運転中に側面310Sからの樹脂漏れを防止するために、この流路側方露出部PEを密閉する。
【0039】
側方密閉機構320は、Tダイ用パッキン321と、押さえ部材322(322-1、322-2)と、一対のサイドプレート323(323-1、323-2)と、止めねじ324および食み出し防止部330(
図7)とを含んで構成されている。なお、以下では、Tダイ用パッキン321を単にパッキン321と称して説明するものとする。
【0040】
一対のサイドプレート323-1、323-2は、それぞれ、第1ダイブロック350の側面350Sと第2ダイブロック360の側面360Sとに、流路側方露出部PEを避けるように、間隔を空けて取り付けられる。サイドプレート323-1、323-2の取り付けに当たっては、ボルト370により強固に締結されるのが好ましい。
【0041】
サイドプレート323-1が第1ダイブロック350の側面350Sに、サイドプレート323-2が第2ダイブロック360の側面360Sに取り付けられた状態において、サイドプレート323-1、323-2は、それぞれ、離間して対向する側面323-1S、323-2Sを有している。
そして、サイドプレート323-1、323-2には、側面350Sおよび側面360Sとは反対側の位置に、側面323-1S、323-2Sから相互に接近する方向に突出する凸部323-1T、323-2Tが設けられている。
【0042】
パッキン321は、一対のサイドプレート323-1、323-2がTダイ本体310に取り付けられた状態において、サイドプレート323-1とサイドプレート323-2との間に挿入される。
詳細には、第1ダイブロック350の側面350Sおよび第2ダイブロック360の側面360Sと、サイドプレート323-1の側面323-1Sおよびサイドプレート323-2の側面323-2Sと、凸部323-1Tおよび凸部323-2Tとで囲われた空間の中に納められる。
【0043】
パッキン321は、流路側方露出部PEに面する流路面FC11と、流路面FC11とは反対側の反流路面FC12とを有している。そして、パッキン321は、流路面FC11が流路側方露出部PEを塞ぎ、第1ダイブロック350の側面350Sと第2ダイブロック360の側面360Sとに当接するように取り付けられる。言い換えると、パッキン321は、流路面FC11が側面350Sと側面360Sとに跨って当接し、流路側方露出部PEを覆うように取り付けられる。
【0044】
パッキン321は、平板状(薄板状)に形成されたアルミニウム製のパッキンや、シリコンゴム等の耐熱ゴムパッキンが用いられる。
【0045】
パッキン321は、
図8に示すように、Y方向に長く、Z方向に短く、X方向に薄く形成されている。
パッキン321において、Y方向の距離はパッキン321の長さLD1を、Z方向の距離はパッキン321の幅TD1を、X方向の距離はパッキン321の厚さTC1を表わす。たとえば、一例として、パッキン321は、長さLD1が170mm~200mm程度、幅TD1が20mm~50mm程度,厚さTC1が2~5mm程度の薄板状に形成されている。
そして、先端部321TPにおいて、Tダイ本体310の先端部310TPの形状に沿うように、幅TD1が漸減した形状とされている。
【0046】
押さえ部材322は、押さえ板322-1と受け板322-2とを有して構成されている。
押さえ板322-1と受け板322-2は、パッキン321と同様に、サイドプレート323-1とサイドプレート323-2との間に挿入される。
【0047】
押さえ板322-1は、パッキン321の反流路面FC12と当接して、パッキン321を第1ダイブロック350の側面350Sと第2ダイブロック360の側面360Sとに押し付ける押圧面FC21と、押圧面FC21とは反対側の反押圧面FC22とを有している。
そして、押さえ板322-1は、押圧面FC21とパッキン321の反流路面FC12とが当接するようにパッキン321に重ねて、一対のサイドプレート323-1、323-2の間に挿入される。
【0048】
押さえ板322-1は、平板状(板状)の炭素鋼(たとえばS45CP)等の金属にて製造されている。押さえ板322-1の材質は、パッキン321の材質よりも高剛性であることが好ましい。
【0049】
押さえ板322-1は、パッキン321に重ねて取り付けられることから、基本的にパッキン321と同様の面形状を有している。
すなわち、押さえ板322-1は、
図9に示すように、Y方向に長く、Z方向に短く形成されている。X方向については、押さえ板322-1は、パッキン321の厚さTC1よりも厚く形成されている。
押さえ板322-1において、Y方向の距離は押さえ板322-1の長さLD2を、Z方向の距離は押さえ板322-1の幅TD2を、X方向の距離は押さえ板322-1の厚さTC2を表わす。たとえば、一例として、パッキン321と同様に、長さLD2が170mm~200mm程度、幅TD2が20mm~50mm程度に形成され,厚さTC2は、パッキン321よりも厚く、5~10mm程度の板状に形成されている。
そして、先端部322TPにおいて、Tダイ本体310の先端部310TPの形状に沿うように、幅TD2が漸減した形状とされている。
【0050】
受け板322-2は、一対のサイドプレート323-1、323-2の凸部323-1T、323-2Tと押さえ板322-1との間に挿入される。
受け板322-2は、押さえ板322-1を介して、パッキン321を第1ダイブロック350の側面350Sおよび第2ダイブロック360の側面360Sに押し付けるための部材である。
【0051】
詳細には、受け板322-2には、厚さ方向(X方向)に貫通するねじ孔322-2Hが形成されている。凸部323-1T、323-2T側から押さえ板322-1側に向けて、止めねじ324をねじ孔322-2Hにねじ込むと、止めねじ324の先端は、受け板322-2を通って、押さえ板322-1の反押圧面FC22に当接する。受け板322-2は、その側縁部が凸部323-1T、323-2Tに当接して係止されるので、さらに止めねじ324をねじ込むと、止めねじ324の先端が押さえ板322-1を押し、これによりパッキン321が第1ダイブロック350の側面350Sおよび第2ダイブロック360の側面360Sに押し付けられる。
【0052】
止めねじ324は、パッキン321を第1ダイブロック350の側面350Sと第2ダイブロック360の側面360Sとに均等に押し付けるように、Z方向において、荷重中心LDCが流路側方露出部PEの中心部CTRと一致するように取り付けられている。
そして、
図10に示すように、Y方向において、複数の止めねじ324(324-1~324-6)が、間隔を空けて一列に配置されている。
【0053】
なお、本実施形態では、Tダイ本体310の側面310Sにおいて、調整ボルト319でリップ隙間314の調整(可動リップ312の調整)を行っても、マニホールド部316や導入流路315が形成されている第1ダイブロックのブロック本体351の後端部310RE側は状態が変化しない(変形しない)ので、パッキン321とは別の部材で側面310Sを密閉している。前述において、パッキン321の長さLD1および押さえ板322-1の長さLD2の数値は、パッキン321がランド部流路317およびリップ部流路318の流路側方露出部PEを塞ぐ場合の一例を示したものである。
【0054】
[食み出し防止部330の構成について]
側方密閉機構320には、食み出し防止部330(
図7、
図9)が設けられている。食み出し防止部330は、押さえ板322-1の押圧面FC21に設けられた凹部331により構成されている。
【0055】
ここで、押さえ板322-1の押圧面FC21に食み出し防止部330が形成されていない場合、止めねじ324でパッキン321を押し付けると、パッキン321の反流路面FC12が押圧面FC21に拘束されて反流路面FC12の変形が抑止されるため、パッキン321の流路面FC11がランド部流路317やリップ部流路318に食み出す(食い込む)食み出し(食い込み)が発生するおそれがある。
そのため、リップ隙間314を調整する際に、可動リップ312の幅方向(X方向)の両端部の操作性が阻害されてしまうおそれがある。特に、リップ隙間314を狭める方向に調整ボルト319を操作する際に、その操作性が阻害されるおそれがある。
パッキン321の流路面FC11の食み出し(食い込み)を抑えるために、止めねじ324の押し付け力を弱めると、成形運転中に樹脂漏れが発生するおそれがあるので、止めねじ324によりパッキン321を所定の押し付け力にて強く押し付けることが必要である。
【0056】
このため、側方密閉機構320においては、前述の如く、押さえ板322-1の押圧面FC21に凹部331を設けることにより、成形運転中に、Tダイ本体310の側面310Sからの樹脂漏れを防止するとともに、パッキン321の流路面FC11がランド部流路317およびリップ部流路318へ食み出す(食い込む)変形を抑え、Tダイの操作性を向上させている。
なお、パッキン321の流路面FC11がランド部流路317およびリップ部流路318へ食み出す(食い込む)変形とは、言い換えると、パッキン321の流路面FC11が第1ダイブロック350の内面350Rと第2ダイブロック360の内面360Rとの間へ食み出す(食い込む)変形であることを意味する。
【0057】
食み出し防止部330としての凹部331は、流路側方露出部PEの形状に合わせて、パッキン321の反流路面FC12と対向して当接する押さえ板322-1の押圧面FC21に形成される。
パッキン321の反流路面FC12に押さえ板322-1の押圧面FC21を当接させた状態において、凹部331の凹みには空間SPCが形成される。
【0058】
押圧面FC21の凹部331は、押圧面FC21の当該箇所を切削することにより設けられた溝部332により構成されている。
溝部332は、Z方向において流路側方露出部PEと中心線CTRが一致し、X方向においてパッキン321を挟んで流路側方露出部PEと対向するように配置されている。
【0059】
溝部332のY方向の長さLD21は、押さえ板322-1の先端部322TPから後端部へ向かって80mm~100mm程度で、Tダイ本体310の先端部310TPから、第1ダイブロック350に設けられた薄いネック352の基部(可動リップ312のベンディング基点部)までの距離より5mm程度余裕を持つ長さに設定されている。なおネック352の基部とは、Y方向に延びるネック352の後端部310RE側の端部であり、ブロック本体351との連結部を指す。
【0060】
溝部332のZ方向の幅TD21は、流路側方露出部PEのZ方向の基準幅WPEに対して、両側でそれぞれ0.5mm~2mmずつ広く設定されることが好ましく、両側でそれぞれ1mmずつ広く設定されていることがより好ましい。なお、流路側方露出部PEのZ方向の基準幅WPEとは、調整ボルト319によりリップ隙間314の調節が行われる前の初期状態における流路側方露出部PEのZ方向の幅を指す。
そして、溝部332のX方向の深さDP21は、0.5mm~2.0mmの範囲で設定されることが好ましい。
【0061】
[一実施形態の効果について]
本実施形態の構成によると、パッキン321を第1ダイブロック350の側面350Sおよび第2ダイブロック360の側面360Sに押し付ける押さえ板322-1の押圧面FC21に食み出し防止部330としての溝部332(凹部331)を設けたので、流路側方露出部PEにおいて、パッキン321が反流路面FC12側に変形することを許容する空間SPCが形成される。
成形運転中は、樹脂流路RPを流通する溶融樹脂の樹脂圧力により、パッキン321には反流路面FC12側へ向かう圧力が作用するが、この圧力によるパッキン321の反流路面FC12側への変形を拘束せずに空間SPCに収容することが可能となる。
したがって、Tダイ本体310の側面310Sからの樹脂漏れを防止するとともに、リップ隙間314の調整に対して、阻害要因となるパッキン321の変形に伴う流路317(318)への食み出し(食い込み)が抑えられ(防止され)、Tダイ300の操作性が向上する。
なお、溝部322(凹部331)の底面は、パッキン321が過剰に変形しないように受け止める受け面となる。
【0062】
さらに、溝部332(凹部331)の幅TD21を流路側方露出部PEの基準幅WPEより、好ましくは両側でそれぞれ0.5mm~2mmずつ、より好ましくは両側でそれぞれ1mmずつ広く設定することにより、樹脂圧力が作用したときにパッキン321を反流路側に変形し易くすることができる。言い換えると、流路側方露出部PEの基準幅WPEに対して、溝部332の余剰幅を両側でそれぞれ0.5mm~2mmずつ、より好ましくは両側でそれぞれ1mmずつ広く設定することにより、樹脂圧力が作用したときにパッキン321を反流路面FC12側に変形し易くすることができる。これにより、パッキンの変形に伴う流路への食み出し(食い込み)が確実に抑えられ、Tダイの操作性がさらに向上する。
【0063】
パッキン321の取り付け時においても、溝部332(凹部331)の余剰幅を両側でそれぞれ0.5mm~2mmずつ、より好ましくは両側でそれぞれ1mmずつ広く設定することにより、押さえ板322-1で押し付けた際に、パッキン321が反流路面FC12側に変形し易くなり、流路への食み出し(食い込み)が抑制または緩和されるので、生産運転前の調整が容易となる。
なお、余剰幅が0.5mmよりも狭い場合は、パッキン321の反流路面FC12側への変形のし易さが低下し、その分、流路面FC12側への変形が大きくなる可能性がある。
余剰幅が2.0mmよりも広い場合は、成形運転中に、溶融樹脂が、パッキン321の流路面FC11と、第1ダイブロック350の側面350Sおよび第2ダイブロック360の側面360Sとの間に入り込む可能性がある。
【0064】
[一実施形態の効果の実証試験について]
溝部332の無い押さえ板332-1をセットした側方密閉機構320と、溝部332を設けた押さえ板332-1をセットした側方密閉機構320と、を用意した。言い換えると、従来品に係る「押さえ板に溝部なし」側方密閉機構320と、本発明に係る「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320と、を用意した。次いで、この2つの側方密閉機構320を、Tダイ本体310の一方の側面310Sと他方の側面310Sに取り付けた。
そして、このTダイ300をセットしたシート製造装置100(試験用装置)により、ポリプロピレン樹脂を原料としてシート製造試験を実施した。
【0065】
溝部332を設けた押さえ板332-1の寸法は、以下の通りである。
押さえ板の長さLD2 :175mm
押さえ板の幅TD2 :30mm
押さえ板の厚さTC2 :8mm
溝部の長さLD21 :90mm
溝部の幅TD21 :6mm
溝部の余剰幅 :両側でそれぞれ1mm
溝部の深さDP21 :1mm
【0066】
シート製造試験を15時間実施したが、「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320が取り付けられた側面310Sおよび「押さえ板に溝部なし」側方密閉機構320が取り付けられた側面310Sからの樹脂漏れは発生していない。
【0067】
しかし、シート製造試験の間にリップ隙間314の調整(可動リップ312の調整)を実施し、リップ隙間314を狭くする操作を行ったところ、「押さえ板に溝部なし」側方密閉機構320の側の端部にある調整ボルト319の回転は固く、これに対して、「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320の側の端部にある調整ボルト319の回転は滑らかであった。
【0068】
さらに、シート製造試験終了後に、それぞれの側方密閉機構320にセットしたアルミニウム製のパッキンの状態を調査した。
図11(A)は、比較例としての「押さえ板に溝部なし」側方密閉機構320にセットされたパッキン321の変形状態を模式的に示す図である。そして、
図11(B)は、本発明としての「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320にセットされたパッキン321の変形状態を模式的に示す図である。
【0069】
さらに、
図12は、比較例におけるパッキン321の流路面FC11の変位を実測した測定プロファイルを示す図である。
図13は、本発明におけるパッキン321の流路面FC11の変位を実測した測定プロファイルを示す図である。
図14は、本発明におけるパッキン321の反流路面FC12の変位を実測した測定プロファイルを示す図である。
【0070】
図11(A)および
図12から、「押さえ板に溝部なし」側方密閉機構320を用いた比較例では、パッキン321の流路面FC11に、大きな食み出し(食い込み)が現れていることが確認された。
これに対して、本発明としての「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320を適用することで、
図11(B)および
図13に示すように、パッキン321の流路面FC11の食み出し(食い込み)は解消され、
図11(B)および
図13に示すように、流路面FC11に凹みが見られた。
そして、本発明を適用することで、
図11(B)および
図14に示すように、パッキン321の反流路面FC12側への変形が確認された。これは、本来流路317(318)に食み出す(食い込む)はずのパッキンの食み出し(食い込み)の抑制につながっているものと考えられる。
【0071】
以上のように、押さえ板322-1に溝部332(凹部331)を形成することにより、パッキン321が反流路面FC12側に変形し、パッキン321の流路317(318)への食み出し(食い込み)が解消され、リップ隙間314の調整の際の調整ボルト319も滑らかに回転するという結果となり、Tダイ300の操作性が向上することがわかった。
なお、シート製造試験も樹脂漏れすることなく運転することができている。
この結果、本発明に係る「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320を取り付けたTダイ300を用いることで、上記した効果を得られることが実証された。
【0072】
[食み出し防止部330の変形例]
前述した実施形態において、食み出し防止部330は、押さえ板322-1の押圧面FC21に設けたが、これに変えて、パッキン321の反流路面FC12に食み出し防止部330を設けても良い。
図15ないし
図17示すように、本変形例の食み出し防止部330はパッキン321の反流路面FC12に形成され、押さえ板322-1の押圧面FC21は平面としている。パッキン321の反流路面FC12には、食み出し防止部330として、長さLD11、幅TD11、深さDP11の溝部332(凹部331)が設けられている。なお、長さLD11、幅TD11、深さDP11は、それぞれ、前述の長さLD21、幅TD21、深さDP21と同様の寸法とされている。これにより、従来のTダイにおいても、押さえ板を交換せずに、食み出し防止部330を形成することができる。
【0073】
なお、食み出し防止部330は、
図18に示すように、押さえ板322-1とパッキン321の両方に設けてもよい。
また、前述した実施形態においては、押圧面FC21を切削することにより凹部331(溝部332)を設けたが、
図19に示すように、分割された3つの押さえ板片322-1,322-12,322-13を用い、広幅の押さえ板片322-13の両側にそれぞれ狭幅の押さえ板片322-11、322-12を重ねて凹部331を形成してもよい。
【0074】
[止めねじ324の配置の変形例]
前述した実施形態において、止めねじ324を、Z方向において、荷重中心LDCが流路側方露出部PEの中心部CTRと一致するように取り付けたが、これに変えて、止めねじ324を、Z方向において、流路側方露出部PEの中心部CTRを挟んで2箇所に取り付けてもよい。
図20に示すように、本変形例の止めねじ324は、荷重中心LDCが流路側方露出部PEの中心部CTRからZ方向にずれた位置、たとえば、溝部332の肩部周辺(いわゆる土手部周辺)にそれぞれ取り付けられる。これにより、Z方向において、2箇所で押し付け力を調整し、さらに均一に押し付けることができる。
【0075】
そして、
図21に示すように、Y方向において、複数の止めねじ324(324-21~324-112)は、間隔を空けて二列に配置されている。
なお、
図22に示すように、Y方向において、複数の止めねじ324(324-21~324-112)を、間隔を空けて千鳥状(ジグザグ)に配置されていてもよい。
【0076】
[サイドプレート323の変形例]
前述した実施形態において、サイドプレート323は一対のサイドプレート323-1、323-2を用いたが、これに変えて、一体のサイドプレート323を用いてもよい。
図23に示すように、一体のサイドプレート323には、流路側方露出部PEの位置にパッキン321と押さえ部材322(押さえ板322-1)とを収容する凹部323Fが形成されている。凹部323Fが形成されることにより薄肉となったサイドプレート323の薄肉部323Gには止めねじ324が螺合するねじ孔323Hが設けられている。
【0077】
そして、薄肉部323Gより止めねじ324をねじ込むことにより、押さえ部材322(押さえ板322-1)を介して、パッキン321が第1ダイブロック350の側面350Sと第2ダイブロック360の側面360Sとに押し付けられる。
これにより、受け板322-2を用いずに、パッキン321を押し付けることができる。
【0078】
[その他の変形例]
図24には、本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体の概略構成が示されている。
図25には、本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体の概略構成および側方密閉機構を分解して示す一部切り欠き斜視図が示されている。
【0079】
前述した実施形態において、Tダイ本体310は2つのダイブロック(第1ダイブロック350と第2ダイブロック360)を重ね合せて構成された2つ割りダイとし、重ね合わせ部に一つのメインマニホールド部を形成し、第1ダイブロック350の内面350Rと第2ダイブロック360の内面530Rとの間に、メインマニホールド部316より拡幅した溶融樹脂を流通するメインランド部流路317およびリップ部流路318が形成された単層タイプのTダイ300として構成されている。
しかしながら、単層タイプのTダイに代えて、第1ダイブロック350の内面350Rと第2ダイブロック360の内面530Rとの間に形成されたメインマニホールド部316に加えて、第1ダイブロック側マニホールド部3161および第2ダイブロック側マニホールド部3162を有するマルチマニーホールドタイプのTダイとしてもよい。
【0080】
マルチマニホールドタイプのTダイ300Aにおいて、
図24に示すように、Tダイ本体310Aは、
図5の単層タイプの場合と同様に、第1ダイブロック350Aと第2ダイブロック360Aとが、対向する内面350R、360Rを介して重ね合され、図示しない複数のボルトにより互いに連結固定されて構成されている。
言い換えれば、Tダイ本体310Aは、第1ダイブロック350Aと第2ダイブロック360Aとが、対向する内面350R、360Rを当接させて、図示しない複数のボルトにより互いに強固に締結されて構成されている。なお、第1ダイブロック350Aと第2ダイブロック360Aとは、可動リップ312と固定リップ313とが対向し、ブロック本体351Aとブロック本体361Aが対向するように重ね合わされて固定される。
【0081】
第1ダイブロック350Aの内面350Rと第2ダイブロック360Aの内面360Rとには、重ね合わされて固定された状態において、メイン樹脂流路RPMとなる隙間を形成するための凹部(凹み、窪みや溝)が設けられている。
この凹部により、Tダイ本体310Aの内部には、溶融樹脂のメイン樹脂流路RPMを構成するメイン導入流路315M、メインマニホールド部316M、メインランド部流路317M、リップ部流路318が形成される。
【0082】
詳細には、Tダイ本体310Aの内部中央部には、後端部310REのメイン導入口311Mと連通するメイン導入流路315Mが形成される。
メイン導入流路315Mは、メイン導入口311Mより送り込まれた溶融樹脂をメインマニホールド部316Mに導入するための流路である。
メイン導入流路315Mの先には、メイン導入流路315Mと連通するメインマニホールド部316Mが形成されている。メインマニホールド部316Mは、導入された溶融樹脂を幅方向(X方向)に拡幅する。
【0083】
さらに、メインマニホールド部316Mの先には、メインマニホールド部316Mと連通するメインランド部流路317Mが形成される。
メインランド部流路317Mは、メインマニホールド部316Mで拡幅された溶融樹脂のZ方向の厚みを薄くするための流路である。メインランド部流路317Mは、メインマニホールド部316Mの出口からリップ部流路318との接続部CNまでの範囲に形成される。
【0084】
なお、メインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNには、第1ダイブロック側マニホールド部3161により拡幅した溶融樹脂を流通し、この流通した溶融樹脂をメインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに合流する第1ダイブロック側ランド部流路3171が接続され、第2ダイブロック側マニホールド部3162により拡幅した溶融樹脂を流通し、この流通した溶融樹脂をメインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに合流する第2ダイブロック側ランド部流路3172が接続されている。
【0085】
そして、メインランド部流路317Mの先には、接続部CNを介してメインランド部流路317Mと連通するリップ部流路318が形成される。
リップ部流路318は、溶融樹脂の幅方向の厚みムラを調整するための流路であり、可動リップ312、ネック352等の範囲に形成される。リップ部流路318の先は、リップ隙間314と連通している。
【0086】
さらに、Tダイ本体310Aにおいては、第1ダイブロック350A内に、溶融樹脂の第1ダイブロック側樹脂流路RP1を構成する第1ダイブロック側導入流路3151と、第1ダイブロック側マニホールド部3161と、第1ダイブロック側マニホールド部3161により拡幅した溶融樹脂を流通し、この流通した溶融樹脂をメインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに合流する第1ダイブロック側ランド部流路3171と、が形成されている。
【0087】
詳細には、Tダイ本体310Aの第1ダイブロック側には、後端部310REの第1ダイブロック側導入口3111と連通する第1ダイブロック側導入流路3151が形成される。
第1ダイブロック側導入流路3151は、第1ダイブロック側導入口3111より送り込まれた溶融樹脂を第1ダイブロック側マニホールド部3161に導入するための流路である。
第1ダイブロック側導入流路3151の先には、第1ダイブロック側導入流路3151と連通する第1ダイブロック側マニホールド部3161が形成されている。第1ダイブロック側マニホールド部3161は、導入された溶融樹脂を幅方向(X方向)に拡幅する。
【0088】
さらに、第1ダイブロック側マニホールド部3161の先には、第1ダイブロック側マニホールド部3161と連通する第1ダイブロック側ランド部流路3171が形成される。
第1ダイブロック側ランド部流路3171は、第1ダイブロック側マニホールド部3161で拡幅された溶融樹脂のZ方向の厚みを薄くするための流路である。
第1ダイブロック側ランド部流路3171は、第1ダイブロック側マニホールド部3161で拡幅された溶融樹脂をY方向(Tダイ本体310Aにおける溶融樹脂の流通方向)に所定距離流通させる平坦部31711と、平坦部31711の先端から、メインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに溶融樹脂を搬送して合流するために、
図24中の左斜め前方に下方向に傾斜させて形成された傾斜部31712とから構成されている。
【0089】
さらにまた、Tダイ本体310Aにおいては、第2ダイブロック360A内に、溶融樹脂の第2ダイブロック側樹脂流路RP2を構成する第2ダイブロック側導入流路3152と、第2ダイブロック側マニホールド部3162と、第2ダイブロック側マニホールド部3162により拡幅した溶融樹脂を流通し、この流通した溶融樹脂をメインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに合流する第2ダイブロック側ランド部流路3172と、が形成されている。
【0090】
詳細には、Tダイ本体310Aの第2ダイブロック側には、後端部310REの第2ダイブロック側導入口3112と連通する第2ダイブロック側導入流路3152が形成される。
第2ダイブロック側導入流路3152は、第2ダイブロック側導入口3112より送り込まれた溶融樹脂を第2ダイブロック側マニホールド部3162に導入するための流路である。
第2ダイブロック側導入流路3152の先には、第2ダイブロック側導入流路3152と連通する第2ダイブロック側マニホールド部3162が形成されている。第2ダイブロック側マニホールド部3162は、導入された溶融樹脂を幅方向(X方向)に拡幅する。
【0091】
さらに、第2ダイブロック側マニホールド部3162の先には、第2ダイブロック側マニホールド部3162と連通する第2ダイブロック側ランド部流路3172が形成される。
第2ダイブロック側ランド部流路3172は、第2ダイブロック側マニホールド部3162で拡幅された溶融樹脂のZ方向の厚みを薄くするための流路である。
第2ダイブロック側ランド部流路3172は、第2ダイブロック側マニホールド部3162で拡幅された溶融樹脂をY方向に所定距離流通させる平坦部31721と、平坦部31721の先端から、メインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに溶融樹脂を搬送して合流するために、
図24中の左斜め前方に上方向に傾斜させて形成された傾斜部31722とから構成されている。
【0092】
このように、メインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNには、第1ダイブロック側マニホールド部3161により拡幅した溶融樹脂を流通し、この流通した溶融樹脂をメインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに合流する第1ダイブロック側ランド部流路3171が接続され、かつ、第2ダイブロック側マニホールド部3162により拡幅した溶融樹脂を流通し、この流通した溶融樹脂をメインランド部流路317Mとリップ部流路318の接続部CNに合流する第2ダイブロック側ランド部流路3172が接続されている。
【0093】
図26には、本発明の変形例に係る側方密閉機構に配置される押さえ板の第1の概略構成例が示されている。
図27には、本発明の変形例に係る側方密閉機構に配置される押さえ板の第2の概略構成例が示されている。
図26の構成と
図27の構成が異なる点は、第1ダイブロック側ランド部流路3171および第2ダイブロック側ランド部流路3172に対応して形成された食み出し防止部330Aとしての凹部の平坦部における端部形状のみにある。
具体的には、
図26の構成では、凹部の端部は直線状に形成されているが、
図27の構成では、凹部の端部はステップ状に形成されている。
【0094】
この変形例において、側方密閉機構320Aは、形状等は異なるが基本的に前述したパッキンおよび食み出し防止部と同様の機能を有する。
すなわち、側方密閉機構320Aは、薄板状に形成され、メインランド部流路317Mおよびリップ部流路318、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路3171および第2ダイブロック側ランド部流路3172に面する流路面(FC11)と、流路面(FC11)とは反対側の反流路面(FC12)とを有し、流路面が第1ダイブロック350Aの側面と第2ダイブロック360Aの側面とに跨って当接して押し付けられることにより、流路面(FC11)がメインランド部流路317Mの側方およびリップ部流路318の側方、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路3171の側方および第2ダイブロック側ランド部流路3172の側方を塞ぐ図示しないパッキンを有する。
さらに、側方密閉機構320Aは、パッキンが反流路面(FC12)の側へ向かう変形を許容することにより、第1ダイブロック350Aの内面と第2ダイブロック360Aの内面との間、並びに、第1ダイブロック側ランド部流路3171および第2ダイブロック側ランド部流路3172にパッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部330Aを有する。
特に、第1ダイブロック350Aの内面と第2ダイブロック360Aの内面との間、特にリップ部流路318にパッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部330Aを有する。
【0095】
このように、側方密閉機構320Aには、食み出し防止部330Aが設けられている。食み出し防止部330Aは、押さえ板322-1Aの押圧面FC21Aに設けられた凹部331Aにより構成されている。
【0096】
食み出し防止部330Aとしての凹部331Aは、流路側方露出部PE、すなわち、メインランド部流路317M、リップ部流路318、第1ダイブロック側ランド部流路3171の側方および第2ダイブロック側ランド部流路3172の形状に合わせて、パッキン(321)の反流路面(FC12)と対向して当接する押さえ板322-1Aの押圧面FC21Aに形成される。
そして、パッキンの反流路面に押さえ板322-1Aの押圧面322-1Aを当接させた状態において、凹部331Aの凹みには空間SPCが形成される。
【0097】
前述したTダイ300と同様に、本発明としての「押さえ板に溝部あり」側方密閉機構320Aを適用することで、
図11(B)および
図13に関連付けると、パッキン321の流路面FC11の食み出し(食い込み)は解消され、
図11(B)および
図13に示すように、流路面FC11に凹みが見られた。
そして、本発明の変形例を適用することで、
図11(B)および
図14に関連付けると、パッキン321の反流路面FC12側への変形が確認された。これは、前述した通り、本来リップ部流路318に食み出す(食い込む)はずのパッキンの食み出し(食い込み)の抑制につながっているものと考えられる。
【0098】
以上のように、押さえ板322-1Aに溝部としての凹部331Aを形成することにより、パッキンが反流路面FC12側に変形し、パッキンのリップ部流路318への食み出し(食い込み)が解消され、リップ隙間314の調整の際の調整ボルト319も滑らかに回転するという結果となり、Tダイ300Aの操作性が向上する。
また、パッキンの食い込みがないことから、パッキンがなかなかはずれない等の状態になることも防止でき、パッキンの交換が煩雑になることもなく、パッキンの交換が容易になるという利点がある。
【0099】
図28には、本発明の変形例に係るマルチマニホールドタイプのTダイ本体の他の概略構成の斜視図が示されている。
【0100】
これまで説明したTダイ300,300Aにおいては、リップ隙間314の調整は、Tダイ本体310の幅方向に複数個設けた調整ボルト319でそれぞれ可動リップ312を押し引きすることにより可動リップ312を移動させ、固定リップ313に対する可動リップ312の位置を幅方向に亘って調整して、溶融樹脂が均一に吐出されるようにしている。
図28の変形例では、固定リップ313に対する可動リップ312の位置を幅方向に亘って調整することに加えて、第1ダイブロック側ランド部流路3171の平坦部31711の厚みを、Tダイ本体310Bの幅方向に複数個設けた調整ボルト3191、流速調整用チョークバー381でそれぞれ幅方向に亘って調整するとともに、第2ダイブロック側ランド部流路3172の平坦部31721の厚みを、Tダイ本体310Bの幅方向に複数個設けた調整ボルト3192、流速調整用チョークバー382でそれぞれ幅方向に亘って調整するように構成されている。チョークバーには垂直式チョークバーと斜め形チョークバーがあるが、
図28では垂直式チョークバーが例示されている。
【0101】
これにより、溶融樹脂がさらに厚みムラなく流通するように調整され、溶融樹脂をさらに均一に吐出させることが可能となる。
【0102】
図28の変形例では、前述したように、第1ダイブロック側ランド部流路3171の平坦部31711および第2ダイブロック側ランド部流路3172の平坦部31721に対応して、平坦部31711,31721にパッキンが食み出す変形を防止する食み出し防止部330Aを有する。
より具体的には、押さえ板322-1Aに溝部としての凹部331Aを形成することにより、パッキンが反流路面FC12側に変形し、パッキンの平坦部31711,31721への食み出し(食い込み)が解消され、平坦部31711,31721における厚みの調整の際の調整ボルト3192も滑らかに回転するという結果となり、Tダイ300Bの操作性を向上させることが可能となる。
また、パッキンの食い込みがないことから、パッキンがなかなかはずれない等の状態になることも防止でき、パッキンの交換が煩雑になることもなく、パッキンの交換が容易になるという利点がある。
【0103】
[さらにその他の変形例]
前述した実施形態において、Tダイ本体310は2つのダイブロック(第1ダイブロック350と第2ダイブロック360)を重ね合せて構成された2つ割りダイとしたが、これに変えて、Tダイ本体310が3つの部材から構成される3つ割りダイとしてもよい。
3つ割りダイの場合、Tダイ本体310は、導入口、導入流路およびマニホールド部が形成されたダイ基部と、ダイ基部にそれぞれ取り付けられ、ランド部流路317およびリップ部流路318を形成する2つのダイブロックを有して構成される。この2つのダイブロックに、第1ダイブロック350と第2ダイブロック360を適用してもよい。
また、前述した実施形態において、Tダイ300は単層のシートを製造する単層ダイとしているが、これに変えて、Tダイ300を多層のシートを製造する多層ダイ(マルチマニホールドダイ)としてもよい。
【0104】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
100…シート・フィルム製造装置、300,300A,300B…Tダイ、310,310A,310B…Tダイ本体、
312…可動リップ、313…固定リップ、314…リップ隙間、
316…マニホールド部、317…ランド部流路、318…リップ部流路、
316M…メインマニホールド部、317M…メインランド部流路、3171…第1ダイブロック側ランド部流路、31711…平坦部、31712…傾斜部、3172…第2ダイブロック側ランド部流路、31721…平坦部、31722…傾斜部、
320,320A…側方密閉機構、321…パッキン、322…押さえ部材、
322-1,322-1A…押さえ板、322-2…受け板、323…サイドプレート、
324…止めねじ、330.330A…食み出し防止部、331,331A…凹部、
332…溝部、350,350A…第1ダイブロック、360,360A…第2ダイブロック