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特許7284695粒子ビーム系及び粒子ビーム系を操作する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】粒子ビーム系及び粒子ビーム系を操作する方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/145 20060101AFI20230524BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20230524BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
H01J37/145
H01J37/317 D
H01J37/28 B
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019222416
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2020095958
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】10 2018 131 609.7
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512158505
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコーピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Microscopy GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ビョーン ギャム
(72)【発明者】
【氏名】マルコ マティアヴィッチ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-087455(JP,A)
【文献】特開2008-123891(JP,A)
【文献】特表2010-512628(JP,A)
【文献】特開2016-146237(JP,A)
【文献】特開2018-045811(JP,A)
【文献】特開2018-163824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0309025(US,A1)
【文献】国際公開第2014/184881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/145
H01J 37/317
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビーム系(1)を操作する方法であって、
前記粒子ビーム系(1)は、共通作業領域(53)を有する第1の粒子ビーム列(3)及び第2の粒子ビーム列(5)を含み、
前記第1の粒子ビーム列(3)は第1の粒子ビーム(21)を生成するように構成され、
前記第2の粒子ビーム列(5)は第2の粒子ビーム(51)を生成するように構成され;
前記第1の粒子ビーム列(3)は二次粒子を検出するための前記第1の粒子ビーム列(3)内に配置された検出器(39、45)を含み;
前記粒子ビーム系(1)はさらに、開口(63)が配置されたエンドキャップ(61)を含み、
前記エンドキャップ(61)は、前記粒子ビーム系(1)の第1の動作モード中、前記第1の粒子ビーム(21)のビーム経路(22)の外に配置され、
前記エンドキャップ(61)は、前記粒子ビーム系(1)の第2の動作モード中、前記第1の粒子ビーム(21)の前記ビーム経路(22)が前記エンドキャップ(61)の開口(63)を通過し得るようにそして前記作業領域(53)から来る二次粒子が前記エンドキャップ(61)の開口(63)を通過して前記検出器(39、45)へ達するように、配置され、
前記方法は第1のシーケンス及び第2のシーケンスを含み;
前記第1のシーケンスは、
-前記粒子ビーム系(1)が前記第1の動作モードにある間、前記検出器(39、45)を使用することにより、前記作業領域(53)内に配置された対象物(23)から来る前記二次粒子を検出する工程を含み;
前記第2のシーケンスは、
-前記粒子ビーム系(1)が前記第2の動作モードにある間、特に前記第1のシーケンスの過程で検出された前記二次粒子に基づき、前記第2の粒子ビーム(51)により前記対象物(23)を処理する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のシーケンスの期間中に前記第1の粒子ビーム列(3)により、前記第1の粒子ビーム(21)を減速又は加速するのに適した静電界を生成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電界を生成する電圧は前記粒子ビーム系(1)が前記第1及び第2の動作モードにある期間中ほぼ一定に保たれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電界は、前記粒子ビーム系(1)が前記第1の動作モードにある間、前記電界の少なくとも一部が出口開口(41)(前記第1の粒子ビーム(21)はこの開口を通り前記第1の粒子ビーム列(3)から出られる)と前記対象物(23)との間に位置するように、生成される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子ビーム系(1)は、前記出口開口(41)と前記対象物(23)との間に前記エンドキャップ(61)を配置することにより、前記第2の動作モードにされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子ビーム系(1)が前記第2の動作モードにある間、前記エンドキャップ(61)は、前記粒子ビーム系(1)が前記第1の動作モードにある場合と比較して前記エンドキャップ(61)が前記作業領域(53)内の前記電界の強度を低減するように、配置される、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のシーケンスはさらに、前記第1の粒子ビーム(21)の前記ビーム経路(22)の外に前記エンドキャップ(61)を配置することにより前記粒子ビーム系(1)を前記第1の動作モードにする工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のシーケンスはさらに、特に前記第1の粒子ビーム列(3)と前記作業領域(53)との間に前記エンドキャップ(61)を配置することにより前記粒子ビーム系(1)を前記第2の動作モードにする工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のシーケンスはさらに、
前記第1のシーケンス中に検出された前記二次粒子に基づき、前記対象物(23)の画像を表す画像データを生成する工程;及び/又は
前記対象物(23)から来る前記二次粒子を生成するために、前記粒子ビーム系(1)が前記第1の動作モードにある間、前記第2の粒子ビーム(51)及び/又は前記第1の粒子ビーム(21)を前記対象物(23)上へ導く工程;及び/又は
特に前記第1のシーケンスの過程で生成された前記画像データに基づき、前記粒子ビーム系(1)が前記第1の動作モードにある間に前記第2の粒子ビーム(51)により前記対象物(23)を処理する工程、を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のシーケンスはさらに、
前記粒子ビーム系(1)が前記第2の動作モードにある間に、前記対象物(23)から生じ前記エンドキャップ(61)の前記開口(63)を通過する前記二次粒子を前記検出器(39、45)を使用することにより検出する工程;及び/又は
前記対象物(23)の画像を表す画像データを、前記第2のシーケンス中に検出された前記二次粒子に基づき生成する工程;及び/又は
前記対象物(23)から来る前記二次粒子を生成するために、前記粒子ビーム系(1)が前記第2の動作モードにある間に前記エンドキャップ(61)の前記開口(63)を通過した前記第2の粒子ビーム(51)及び/又は前記第1の粒子ビーム(21)を前記対象物(23)上へ導く工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のシーケンスは前記第2のシーケンスの前、特に直前に行われる、及び/又は、前記第1のシーケンスは前記第2のシーケンスの後、特に直後に行われる、及び/又は、前記第1のシーケンスと第2のシーケンスとは終了条件が満たされるまで交互に逐次的に繰り返される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の粒子ビームは電子ビーム又はイオンビームであり、前記第2の粒子ビームは電子ビーム又はイオンビームである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象物を処理するための粒子ビーム系(1)であって、共通作業領域(53)を有する第1の粒子ビーム列(3)及び第2の粒子ビーム列(5)を含む粒子ビーム系(1)において、
前記第1の粒子ビーム列(3)は第1の粒子ビーム(21)を生成するように構成され、前記第2の粒子ビーム列(5)は第2の粒子ビーム(51)を生成するように構成され;
前記第1の粒子ビーム列(3)は、
二次粒子を検出するための前記第1の粒子ビーム列(3)内に配置された検出器(39、45)と;
開口(63)が配置されたエンドキャップ(61)であって、前記エンドキャップ(61)は、前記粒子ビーム系(1)の第1の動作モード中、前記第1の粒子ビーム(21)のビーム経路(22)の外に配置され、前記エンドキャップ(61)は、前記粒子ビーム系(1)の第2の動作モード中、前記第1の粒子ビーム(21)の前記ビーム経路(22)が前記エンドキャップ(61)の前記開口(63)を通過し得るように、そして前記作業領域(53)から来る二次粒子が前記エンドキャップ(61)の開口(63)を通過して前記検出器(39、45)へ達するように、配置される、エンドキャップ(61)と、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を行うようなやり方で前記粒子ビーム系(1)を制御するように構成されたコントローラとを含む、粒子ビーム系(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象物を処理するための粒子ビーム系と粒子ビーム系を操作する方法とに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、対象物が最大可能精度で処理され得る粒子ビーム系と粒子ビーム系を操作する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つの態様は対象物を処理するための粒子ビーム系に関する。粒子ビーム系は共通作業領域を有する第1の粒子ビーム列及び第2の粒子ビーム列を含む。第1の粒子ビーム列は第1の粒子ビームを生成するように構成され、第2の粒子ビーム列は第2の粒子ビームを生成するように構成される。処理される対象物は共通作業領域内に配置され得、その結果第1の粒子ビームと第2の粒子ビームとの両方は対象物の同じ領域上へ(同時に)導かれ得る。第1の粒子ビーム列の主軸と第2の粒子ビーム列の主軸は互いに約54°の角度で配置され得る。
【0004】
第1の粒子ビーム列は二次粒子を検出するための1つ又は複数の検出器をその内部に含む。説明を簡単にするために、検出器は以下ではその単数形式においてだけ参照される。二次粒子は、対象物と第1の粒子ビームとの相互作用と又対象物と第2の粒子ビームとの相互作用との両方により生成され得る。ここで、二次粒子は特に後方散乱電子、二次電子、又は二次イオンを指す。
【0005】
粒子ビーム系はさらに、開口が配置されたエンドキャップを含む。
【0006】
粒子ビーム系は第1の動作モードで操作され得る。第1の動作モードでは、エンドキャップが第1の粒子ビームのビーム経路の外に位置する。加えて、第1の動作モードにおけるエンドキャップは第2の粒子ビームのビーム経路の外に位置し、この結果、第1の動作モードにおけるエンドキャップは、第1の粒子ビームのビーム経路及び第2の粒子ビームのビーム経路に又は二次粒子の軌道に実質的に影響を及ぼさない。
【0007】
粒子ビーム系はさらに第2の動作モードで操作され得る。第2の動作モードでは、エンドキャップは、第1の粒子ビームのビーム経路がエンドキャップの開口を通過し得るように、そして共通作業領域から来る二次粒子がエンドキャップの開口を通過して第1の粒子ビーム列内の検出器へ達し得るように配置される。第2の動作モードにおける第1の粒子ビームが対象物上へ導かれれば、第1の粒子ビームは結果的にエンドキャップの開口を通過する。第2の動作モードでは、第1の粒子ビーム列内の検出器へ移動した二次粒子はさらにエンドキャップの開口を通過する。
【0008】
第1の粒子ビーム列は電子ビーム列であり得、このことは第1の粒子ビームが電子ビームであり得るということを意味する。代替的に、第1の粒子ビーム列はイオンビーム列であり得、このことは第1の粒子ビームがイオンビームであり得るということを意味する。
【0009】
第2の粒子ビーム列は電子ビーム列であり得、このことは第2の粒子ビームが電子ビームであり得るということを意味する。代替的に、第2の粒子ビーム列はイオンビーム列であり得、このことは第2の粒子ビームがイオンビームであり得るということを意味する。
【0010】
第1の粒子ビーム列は静電界を生成する少なくとも1つの電極を含み得、静電界は第1の粒子ビームを減速又は加速するのに適している。静電界は、粒子ビーム系が第1の動作モードにある間、電界の少なくとも一部が出口開口(第1の粒子ビームはこの開口を通り第1の粒子ビーム列から出られる)と対象物(23)との間に位置するように、生成され得る。その結果、静電界はさらに、対象物から来る二次粒子が、第1の粒子ビーム列内に配置された検出器まで加速されその結果多量の二次粒子が検出され得るという効果を有する。この結果、第1の動作モードにおける第1の粒子ビーム列は対象物の画像を記録するための極高解像度を提供する。しかし、ここでの静電界は、第2の粒子ビームに対しても作用ししたがって第2の粒子ビームのビーム経路に影響を及ぼすという不都合を有する。この理由のため、第2の粒子ビームが対象物上へ導かれ得る精度は静電界により第1の動作モードにおいて低減される。
【0011】
第2の動作モードでは、共通作業領域内の静電界の強度は、第1の粒子ビーム列と対象物との間のエンドキャップの配置により低下され、この結果、第2の動作モードにおける第2の粒子ビームに対する静電界の影響は第1の動作モードにおける影響より小さい。その結果、第2の粒子ビームは第2の動作モードではより高い精度で対象物上へ導かれ得る。たとえ共通作業領域内の静電界が第1の動作モードにおけるものより第2の動作モードにおいて弱くても、二次粒子は、第2の動作モード中にこの検出器により依然として検出され得るように十分な量で、第1の粒子ビーム列内に配置された検出器まで依然として加速される。
【0012】
この結果、粒子ビーム系は、第1の粒子ビーム列が極高精度で動作する第1の動作モードと第2の粒子ビーム列が極高精度で動作する第2の動作モードとを提供する。その結果、第1の動作モード中に検出される二次粒子は対象物の高精細画像を表す画像データを生成するために使用され得る。次に、これらの画像データは、第2の粒子ビームが極高精度で対象物上へ導かれ得る第2の動作モードにおいて第2の粒子ビーム又は第2の粒子ビーム列を制御するために使用され得る。
【0013】
粒子ビーム系における処理を制御するために、粒子ビーム系は、粒子ビーム系に本明細書に記載の方法を行わせるように構成されたコントローラを有し得る。
【0014】
本発明の別の態様は粒子ビーム系を操作する(特に本明細書に記載の粒子ビーム系を操作する)方法に関する。本方法は第1のシーケンスと第2のシーケンスとを含む。第1のシーケンスの初めに、粒子ビーム系は、第1のシーケンスの過程で行われるすべてのさらなる工程が第1の動作モードにおいて行われるように第1の動作モードにされる。第2のシーケンスの初めに、粒子ビーム系は、第2のシーケンスの過程で行われるすべてのさらなる工程が第2の動作モードにおいて行われるように第2の動作モードにされる。
【0015】
例示的実施形態によると、第1のシーケンスは、粒子ビーム系が第1の動作モードにある間に、共通作業領域内に配置された対象物から来る二次粒子を第1の粒子ビーム列内に配置された少なくとも1つの検出器を使用することにより検出する工程を含む。このようにして、対象物の高精細画像が第1のシーケンス中に生成され得る。第2のシーケンスは、粒子ビーム系が第2の動作モードにある間に、第2の粒子ビームにより対象物を特に第1のシーケンスの過程で記録された二次粒子に基づき処理する工程を含む。このようにして、対象物は、特に第1のシーケンスの過程で高精度に記録された二次粒子に基づく画像に基づき、第2の粒子ビームにより高精度に処理され得る。
【0016】
別の実施態様によれば、本方法はさらに、第1及び第2のシーケンスの期間中に第1の粒子ビーム列により、第1の粒子ビームを減速又は加速するのに適した静電界を生成する工程を含む。粒子ビームを減速する静電界は2つの本質的な効果を有する。第1に、第1の粒子ビームの粒子は、第1の粒子ビーム列から出る前に高運動エネルギー(例えば10keV)で第1の粒子ビーム列を通過し得る。これは、第1の粒子ビームの粒子間のクーロン相互作用の効果を低減し、第1の粒子ビーム列の高精度をもたらす。静電界により減速された第1の粒子ビームの粒子は、第1の粒子ビームの粒子が静電界により減速されたので、対象物を損傷しない又はより少ない程度に対象物を損傷する。粒子ビームを加速する静電界は、特に正電圧が対象物に印加されれば、対象物の記録画像のコントラストの改善/変更に寄与し得る。
【0017】
静電界のさらなる本質的効果は、対象物と第1の粒子ビーム及び/又は第2の粒子ビームとの相互作用のおかげで生成された二次粒子が第1の粒子ビーム列内に配置された少なくとも1つの検出器まで加速され、その結果、多量の生成された二次粒子が検出され得、ひいては、検出された二次粒子により生成され得る対象物の画像の精度を改善する、ということである。
【0018】
静電界の生成の期間中、静電界を生成するために電極(そして対象物)へ印加される電圧又は電圧群又は電位又は電位群はほぼ一定に維持される。したがって、第1及び第2のシーケンス中に電圧又は電位を変更する必要はない。
【0019】
静電界は、粒子ビーム系が第1の動作モードにある間に電界の少なくとも一部が出口開口(第1の粒子ビームはこの開口を通り第1の粒子ビーム列から出ることができる)と対象物との間に位置するように、生成され得る。このようにして、対象物から来る二次粒子は効率的に検出され得る。
【0020】
第2の動作モードでは、エンドキャップは第1の粒子ビーム列と対象物との間に配置される。例えば、エンドキャップは、粒子ビーム系を第2の動作モードにするために第1の粒子ビーム列の出口開口と対象物との間に配置され得る。これにより、作業領域内の静電界の強度は、粒子ビーム系が第1の動作モードにある場合と比較して低減される。この結果、第2の粒子ビーム列の精度に負の影響を及ぼす静電界の強度は共通作業領域において第2の動作モードでは低下する。
【0021】
一実施形態によると、第1のシーケンスはさらに、粒子ビーム系を第1の動作モードにする工程を含む。例えば、粒子ビーム系は、エンドキャップを第1の粒子ビームのビーム経路の外に配置することにより第1の動作モードにされる。
【0022】
例示的実施形態によると、第2のシーケンスは粒子ビーム系を第2の動作モードにする工程を含む。粒子ビーム系は、例えばエンドキャップを第1の粒子ビーム列と作業領域との間に配置することにより第2の動作モードにされ得る。
【0023】
別の例示的実施形態によると、第1のシーケンスは以下のさらなる工程を含み得る:第1のシーケンス中に検出された二次粒子に基づき、対象物の画像を表す画像データを生成する工程;及び/又は粒子ビーム系が対象物から来る二次粒子を生成するために第1の動作モードにある間に第2の粒子ビーム及び/又は第1の粒子ビームを対象物上へ導く工程;及び/又は粒子ビーム系が第1の動作モードにある間に第2の粒子ビームを使用して対象物を処理する工程。これらの工程は、第1のシーケンス中に次から次へと又は同時にそして繰り返し行われ得る。
【0024】
別の例示的実施形態によると、第2のシーケンスは以下のさらなる工程を含む:粒子ビーム系が第2の動作モードにある間に、第1の粒子ビーム列内に配置された少なくとも1つの検出器を使用して、対象物から来てエンドキャップの開口を通過する二次粒子を検出する工程;及び/又は第2のシーケンス中に検出された二次粒子に基づき、対象物の画像を表す画像データを生成する工程;及び/又は対象物から来る二次粒子を生成するために粒子ビーム系が第2の動作モードにある間に、エンドキャップの開口を通過する第2の粒子ビーム及び/又は第1の粒子ビームを対象物上へ導く工程。第2のシーケンスのこれらの工程は、第2のシーケンス中に次から次へと又は同時にそして繰り返し行われ得る。
【0025】
別の実施形態によると、第1のシーケンスは第2のシーケンスの前に(特に直前に)行われる。さらに又は代替的に、第1のシーケンスは第2のシーケンスの後に(特に直後に)行われ得る。その結果、第1のシーケンスは、第2のシーケンスの前に及び/又は後にそして特に第2のシーケンスと共に繰り返し行われ得る。その結果、第1及び第2のシーケンスは例えば交互に逐次的に繰り返され得る。本方法は例えば終了条件が満たされれば終了し得る。
【0026】
本発明の実施形態は添付図面を参照し以下にさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の動作モードにおける一実施形態による粒子ビーム系を示す。
図2】第2の動作モードにおける図1に示す粒子ビーム系の第1の図解を示す。
図3】第2の動作モードにおける図1に示す粒子ビーム系の第2の図解を示す。
図4図1図3に示される粒子ビーム系を操作する方法の可能な工程を示す。
図5図1図3に示される粒子ビーム系を操作する方法の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は第1の動作モードにおける一実施形態による粒子ビーム系1を示す。粒子ビーム系1は第1の粒子ビーム列を含む。本例では、第1の粒子ビーム列は走査型電子顕微鏡の形式で構成された電子ビーム列3である。粒子ビーム系1はさらに第2の粒子ビーム列を含む。本例では、第2の粒子ビーム列はイオンビーム列5である。しかし、第1の粒子ビーム列はまたイオンビーム列であり得、第2の粒子ビーム列はまた電子ビーム列であり得る。
【0029】
電子ビーム列3は、粒子源7、集光レンズ9、ブースタ11、及び対物レンズ13を含む。粒子源7は、陰極15、抑制電極17、及び引き出し電極19を含む。
【0030】
陰極15と検査又は処理される対象物23の表面との間に広がる電子ビーム21は粒子源7により生成される。
【0031】
電子ビーム21は、集光レンズ9、ブースタ11、及び対物レンズ13を通過する。電子ビーム列3(特に対物レンズ13)は、対象物23が配置される又は配置され得る対物面25に電子ビーム21の焦点が合うように構成される。
【0032】
ブースタ11は、電子ビーム21の電子が例えば10keVの運動エネルギーを有する高運動エネルギーでもってブースタ11を横断し得るように電子ビーム21の一部分を取り囲むように構成される。この結果、電子ビーム21の球面収差及び色収差が最小化され、擾乱電界の影響が低減される。
【0033】
対物レンズ13は、内側磁極片27と外側磁極片29との間のギャップ33内に磁場を生成するために内側磁極片27、外側磁極片29、及び励振器コイル31を含む。対物レンズ13はさらに、ブースタ11の対象物側端部分により形成される第1の電極35と外側磁極片29の対象物側端部分に位置する第2の電極37とを含む。この結果、対物レンズ13は合成された磁界及び静電界対物レンズである。第2の電極37は、外側磁極片29へ印加される電位とは異なる電位が第2の電極37へ印加され得るようなやり方で、外側磁極片29から電気的に絶縁され得る。
【0034】
電子ビーム列3はさらに、二次粒子(特に二次電子)を検出するための第1の検出器39を含み、第1の検出器39はブースタ11内と従って電子ビーム列3内とに配置される。第1の検出器39は、対象物23と電子ビーム21との相互作用のおかげで生成された二次粒子であって電子ビーム列3の対象物側出口開口41を通って電子ビーム列3の内部に入りそして第1の検出器39に入射する二次粒子を検出するように構成される。二次電子の例示的軌道43が破線により示される。
【0035】
電子ビーム列3は、ブースタ11内に二次粒子を検出するための第2の検出器45を含む。第2の検出器は、対象物23から出口開口41を通り対物レンズ13の内部へそして開口47を通り第1の検出器39内へ伝搬し第2の検出器45に入射する二次粒子(特に後方散乱電子)を検出するように構成される。後方散乱電子の例示的軌道49が破線により示される。
【0036】
第1の電位が第1の電極35へ印加され得、第2の電位が第2の電極37へ印加され得、第2の電位は第1の電位より小さい。このようにして、電子ビーム21は、ブースタ11を通過した後に、そして出口開口41を通って電子ビーム列3から出る前に、減速される、すなわち、粒子ビーム21の電子の運動エネルギーが低減される。代替的に、第1の電位が第1の電極35へ印加され得、第2の電位が第2の電極37へ印加され得、第2の電位は第1の電位より大きい。このようにして、電子ビーム21は、ブースタ11を通過した後に、そして出口開口41を通って電子ビーム列3から出る前に、加速される、すなわち粒子ビーム21の電子の運動エネルギーは増加される。
【0037】
加えて、第2の電極37の第2の電位未満、又は第2の電位超の第3の電位が対象物23へ印加され得る。
【0038】
前述の電位を第1の電極35及び第2の電極37(及び対象物23)へ印加することにより、対象物23と電子ビーム21との相互作用により生成される二次粒子(特に二次電子及び後方散乱電子)が出口開口41に向かって加速され、そして出口開口41を通過することにより電子ビーム列3の内部に入り、そして第1の検出器39又は第2の検出器45に入射するまで前記内部内を伝播する、という効果を有する静電界が生成される。このようにして、多量の二次粒子が第1の検出器39及び第2の検出器45へ誘導され得、対象物23が電子ビーム列3のこの構成により非常に高い空間分解能で解析され得るという結果となる。
【0039】
イオンビーム列5は、対象物23を処理する(特に対象物23から材料を除去する又は処理ガスの送り込みにより対象物23から材料を切り取る)のに好適なイオンビーム51を生成するように構成される。電子ビーム列3とイオンビーム列5は、電子ビーム列3の主軸55とイオンビーム列5の主軸57とが交差する共通作業領域53を有する。イオンビーム列5は、対象物23の様々な部位を処理することができるようにイオンビーム51を偏向し得る偏向器59を含む。
【0040】
イオンビーム51は、第1の電極35及び第2の電極37により第2の電極37と対象物23との間に生成される静電界中を伝搬する。この結果、イオンビーム51は、イオンビーム列5から出た後、イオンビーム51が対象物23上へ導かれ得る精度に悪影響を及ぼす前記静電界により偏向される。
【0041】
粒子ビーム系1はさらにエンドキャップ61を含む。エンドキャップ61は、電子ビーム列3の出口開口41より小さくてもよい開口63を有する。エンドキャップ61は、エンドキャップ61が電子ビーム21のビーム経路22、イオンビーム51のビーム経路、及び出口開口41を通る二次粒子の軌道43、49を妨害しないように、エンドキャップ61を電子ビーム21のビーム経路22の外に(そしてイオンビーム51のビーム経路の外に)配置するように構成されたムーブメント装置65へ接続される。図1に示す粒子ビーム系1の状態であって、電子ビーム21及びイオンビーム51のビーム経路も出口開口41を通過する二次粒子の軌道も妨害しないようにエンドキャップ61が配置される粒子ビーム系1の状態は、粒子ビーム系1の第1の動作モードと示される。
【0042】
図2は、第2の動作モードにおける図1に示す粒子ビーム系1の詳細を示す。粒子ビーム系1の第2の動作モードでは、エンドキャップ61は、電子ビーム21のビーム経路22がエンドキャップ61の開口63を通過し得るように、そして共通作業領域53から来る二次粒子がエンドキャップ61の開口63を通過して検出器39へ達し得るように配置される。粒子ビーム系1の第2の動作モードでは、エンドキャップ61は、電子ビーム列3と対象物23との間に、特に対物レンズ13と対象物23との間に、より具体的には第2の電極37と対象物23との間に配置される。ムーブメント装置65は、エンドキャップ61をそれに応じて配置するように構成され、さらに粒子ビーム系が第1の動作モードから第2の動作モードへそして第2の動作モードから第1の動作モードへ遷移され得るようにエンドキャップ61を移動するように構成される。
【0043】
粒子ビーム系1の第2の動作モードでは、電子ビーム21は、エンドキャップ61の開口63を通って対象物23の共通作業領域53内に導きかれ続け得る。加えて、イオンビーム51は対象物23上の共通作業領域53内に導かれ続け得る。換言すれば、電子ビーム列3及びイオンビーム列5の共通作業領域53は第2の動作モードにおいてすら存在する。
【0044】
粒子ビーム系1の第2の動作モードでは、エンドキャップ61は、電極37と対象物23との間の第1の電極35及び第2の電極37により生成される静電界は粒子ビーム系1が第1の動作モードにある場合と比較して共通作業領域53内では弱い、という効果を有する。たとえエンドキャップ61が静電界を弱めても、第1の動作モードと比較して弱められた静電界は、対象物23から来る二次粒子が、それ程効率的ではないにしても、電子ビーム列3の出口開口41までそしてしたがって第1の検出器39及び第2の検出器45まで加速され続けるように、エンドキャップ61の開口63を依然として通過する。したがって、第2の動作モードにおいて実現可能な電子ビーム列3の解像度は第1の動作モードにおけるものより低い。
【0045】
他方で、第1の動作モードと比較して弱められた静電界は、第2の動作モードにおいては、イオンビーム51のビーム経路に対する効果より小さい効果を有する。このことは、イオンビームが第1の動作モードにおけるものよりも高い精度で対象物23上へ導かれ得るということを意味する。
【0046】
電子ビーム21とイオンビーム51との両方は、図1に示す粒子ビーム系1の第1の動作モードではそしてまた図2に示し粒子ビーム系1の第2の動作モードでは、第1に、対象物23の画像を表す検出された二次粒子に基づき画像データを生成するために、そして第2に、イオンビーム51により対象物23を処理するために、対象物23の同じ領域上へ次から次へと又は同時に導かれる。画像データを生成するのに使用される二次粒子は、対象物23と電子ビーム21との相互作用又は対象物23とイオンビーム51との相互作用により生成され得る、又は対象物23と、電子ビーム21とイオンビーム51との両方との相互作用により生成され得る。
【0047】
粒子ビーム系1はさらに、電子ビーム列3、イオンビーム列5、及びムーブメント装置65を制御し得るコントローラ(添付図面に示さない)を含み得る。特に、コントローラは粒子ビーム系1を第1の動作モードにするように構成される。これは、図1に一例として示すようにエンドキャップ61を電子ビーム21のビーム経路22の外に配置することにより達成される。さらに、コントローラは粒子ビーム系1を第2の動作モードにし得る。これは、エンドキャップを電子ビーム列3と共通作業領域53との間に配置することにより達成される。特に、エンドキャップ61は、電子ビーム21のビーム経路22がエンドキャップ61の開口63を通過し得るように、そして共通作業領域53から来る二次粒子がエンドキャップ61の開口63を通過し電子ビーム列3の検出器39、45のうちの1つに達し得るように、配置される。
【0048】
さらに、コントローラは、本明細書に記載の方法を行うようなやり方で粒子ビーム系1を制御するように構成される。
【0049】
図1図2において、対象物23は、第1の粒子ビーム列(電子ビーム列3)に対しほぼ直交して配向されるものとして示される。しかし、粒子ビーム系1の様々なアプリケーションでは、対象物23はまた、第2の粒子ビーム列(イオンビーム列5)に対しほぼ直交して配向され得る。第1のシーケンスと第2のシーケンスとの両方は、対象物が第1の粒子ビーム列3の主軸55に対しほぼ直交して又は第2の粒子ビーム列5の主軸57に対しほぼ直交して配向されるようなやり方で対象物を移動する工程を含み得る。
【0050】
図3は、対象物23が第2の粒子ビーム列(イオンビーム列5)に対しほぼ直交して配向される第2の動作モードにおける粒子ビーム系1の詳細を示す。図1図2に示すやり方でムーブメント装置65を配置するのではなく、図3に示すように、第1の粒子ビーム列(電子ビーム列3)の主軸55に対し横断して(具体的にはほぼ直交して)そして第2の粒子ビーム列(イオンビーム列5)の主軸57に対し横断して(具体的にはほぼ直交して)配向される方向に沿ってムーブメント装置65を配置することが有利かもしれない。このようにして、対象物23とムーブメント装置65との衝突を防止することが可能である。しかし、対象物23の配向は、第1の粒子ビーム列3に対し及び/又は第2の粒子ビーム列5に対しほぼ直交配向に限定されない。むしろ、対象物23は任意の考えられる/可能な配向も有し得る。特に、第1のシーケンスにおける対象物23は、第1の粒子ビーム列3に対し及び/又は第2の粒子ビーム列5に対し1つの配向に留まり得る又は異なる配向にされ得る。さらに、対象物23はまた、第2シーケンス中、第1の粒子ビーム列3に対し及び/又は第2の粒子ビーム列5に対し1つの配向に留まり得る又は異なる配向にされ得る。特に、第1及び第2のシーケンスにおける配向は互いに異なってもよいし同じであってもよい。
【0051】
図4図5に関し、粒子ビーム系1により行われ得る方法が以下に説明される。図4は、方法の一部分であり得る工程の例示的編纂を示す。
【0052】
例示的方法は第1のシーケンスS1と第2のシーケンスS2とを含む。第1のシーケンスの工程は粒子ビーム系1が第1の動作モードにある間に行われ、第2のシーケンスの工程は粒子ビーム系1が第2の動作モードにある間に行われる。ここでの例外は動作モード間の粒子ビーム系の遷移だけである。
【0053】
第1のシーケンスS1は、第1の工程S11として、粒子ビーム系1を第1の動作モードにする工程を含み得る。第1の動作モードでは電子ビーム列3は、第2の動作モードに比較して強い、電子ビーム列3と対象物23との間の(又は共通作業領域53内の)静電界のおかげで非常に高精度で動作する。対照的に、イオンビーム列5は、強い静電界のおかげで第2の動作モードと比較し低減された精度で動作する。
【0054】
粒子ビーム系1が第1の動作モードにされた(S11)後、以下に説明される工程が第1のシーケンス中に行われ得る。例えば、電子ビーム21又はイオンビーム51又はその両方は二次粒子を生成するために対象物23上へ導かれる(S12)。二次粒子は、電子ビーム列3内に配置された検出器39、45を使用することにより検出され得る(S13)。対象物23の画像を表す画像データは、前記検出された二次粒子に基づき生成され得る(S14)。対象物23の処理の進捗が画像データに基づき評価及び制御され得る。
【0055】
その前に、その後、又は同時に、イオンビームは、対象物23を処理するように、すなわち処理ガスの添加によりそれから材料を除去する又は切り取るようにその上へ導かれ得る(S15)。
【0056】
第1のシーケンスの期間中、二次粒子の検出(S13)の改善に寄与する静電界が電子ビーム列3と対象物23との間に(又は共通作業領域53内に)生成され得るS0。
【0057】
アプリケーションに依存して、第1のシーケンスS1は前述の工程S12~S14のうちの一部だけを含む。例えば、対象物23は第1のシーケンス中にイオンビーム51により処理されなく;むしろ、対象物23の画像データだけが、電子ビーム21を使用して及び/又はイオンビーム51を使用して生成される(S12)二次粒子を検出する(S13)ことにより生成される(S14)。その結果、第1の動作モードの利点だけがここでは利用され、これにより電子ビーム列3は極高精度で動作する。
【0058】
第1のシーケンスS1の工程は、第1のシーケンス中に複数回行われ得、そして特に繰り返され得る。例えば、最初に、電子ビーム21は画像データを生成する(S14)ように対象物上へ導かれる(S12)。イオンビームによる対象物の次の処理に関し、パラメータが第1のシーケンスの画像データに基づき判断される(S15)。イオンビーム51を使用することによる第1のシーケンス中の対象物23の処理(S15)後、電子ビーム21は、イオンビーム51を使用することにより対象物が再び処理される(S15)画像データを再び生成する(S14)ために対象物上へ再び導かれ得る(S12)。したがって、第1のシーケンスS1の工程は、第1のシーケンスS1が終了され第2のシーケンスS2が発生する前に、何回も繰り返され得る。
【0059】
第2のシーケンスS2は第1のシーケンスS1後に及び/又は前に行われ得る。
【0060】
第2のシーケンスS2は、第1の工程として、粒子ビーム系1を第2の動作モードにする工程(S21)を含み得る。第2の動作モードでは、電子ビーム列3は、第1の動作モードに比較して弱い電子ビーム列3と対象物23との間の(又は共通作業領域53内の)静電界のおかげでより低い精度で動作する。対照的に、イオンビーム列5は、弱められた静電界のおかげで第1の動作モードと比較して非常に高い精度で動作する。
【0061】
粒子ビーム系1が第2の動作モードにされた(S21)後、以下に説明される工程が第2のシーケンスS2において行われ得る。例えば、電子ビーム21又はイオンビーム51又はその両方は二次粒子を生成するために対象物23上へ導かれる(S22)。二次粒子は、電子ビーム列3内に配置された検出器39、45を使用することにより検出され得る(S23)。対象物23の画像を表す画像データは前記検出された二次粒子に基づき生成され得る(S24)。対象物23の処理の進捗が画像データに基づき評価及び制御され得る。
【0062】
その前に、その後、又は同時に、イオンビームは、対象物23を処理するように、すなわち処理ガスの添加により対象物23から材料を除去する又は切り取るように、その上へ導かれ得る(S25)。
【0063】
第2のシーケンスS2の期間中、エンドキャップのおかげで第1の動作モードと比較して共通作業領域内で弱められるが二次粒子の検出の改善に依然として寄与する静電界が、電子ビーム列3と対象物23との間に(又は共通作業領域53内に)生成され得る(S0)。
【0064】
アプリケーションに依存して、第2のシーケンスS2は前述の工程S22~S25のうちの一部だけを含む。例えば、対象物23は第2のシーケンスS2中にイオンビーム51だけで処理され(S25)、対象物23のいかなる画像データも生成されない(S24)。その結果、第2の動作モードの利点だけが利用され、これにより、イオンビーム列5は非常に高精度で動作する。
【0065】
第2のシーケンスS2の工程は、第2のシーケンスS2中に複数回行われ得、そして特に繰り返され得る。例えば、最初に、電子ビーム21は画像データを生成するために対象物上へ導かれる(S22)。イオンビームによる対象物の次の処理に関し、パラメータが第2のシーケンスの画像データに基づき判断される(S25)。イオンビーム51を使用することによる第2のシーケンスにおける対象物23の処理(S25)後、電子ビーム21は、イオンビーム51を使用することにより対象物が再び処理される(S25)画像データを再び生成する(S24)ために対象物上へ再び導かれ得る(S22)。したがって、第2のシーケンスS2の工程は、第2のシーケンスS2が終了され第1のシーケンスS1が発生する前に何回も繰り返され得る。
【0066】
第1のシーケンスS1中に記録された(S14)画像データは、第1及び第2のシーケンス中に電子ビーム21及び/又はイオンビーム51を制御するために使用され得る(S12、S15、S22、S25)。第2のシーケンスS2中に記録された(S24)画像データは同様に、第1及び第2のシーケンス中に電子ビーム21及び/又はイオンビーム51を制御するために使用され得る(S12、S15、S22、S25)。
【0067】
図5は粒子ビーム系1を操作する別の例示的方法を示す。本方法は第1のシーケンスの工程が行われることにより始まる。第1のシーケンス後、第1の終了条件が満たされたかどうかに関する照査が行われる。第1の終了条件はどんなタイプの対象物が生成されるか又はどのように対象物が処理されるかに依存する。例えば、対象物が所望形状を有するかどうかに関する評価が、第1のシーケンス中に記録された画像データに基づき行われる。第1の終了条件はまた、対象物が所定程度まで処理され解析されるということであり得る。
【0068】
第1の終了条件が満たされれば、本方法は終了する。第1の終了条件が満たされなければ、第2のシーケンスの工程が行われる。
【0069】
第2のシーケンスの工程が行われた後、第2の終了条件が満たされたかどうかに関する照査が行われる。第2の終了条件は、第1の終了条件と同じであってもよいが、第1の終了条件と異なってもよい。
【0070】
第2の終了条件が満たされたということを第2の終了条件の照査が示せば、本方法は終了される。第2の終了条件が満たされていないということを第2の終了条件の照査が示せば、本方法は第1のシーケンスにより継続される。
【0071】
図5に示す方法の変形によると、第1又は第2の終了条件の照査は省略され得る。
【符号の説明】
【0072】
1 粒子ビーム系
3 電子ビーム列
5 イオンビーム列
7 粒子源
9 集光レンズ
11 ブースタ
13 対物レンズ
15 陰極
17 抑制電極
19 引き出し電極
21 電子ビーム
22 ビーム経路
23 対象物
25 対物面
27 内側磁極片
29 外側磁極片
31 励振器コイル
33 ギャップ
35 第1の電極
37 第2の電極
39 第1の検出器
41 出口開口
43 軌道
45 第2の検出器
47 開口
49 軌道
51 イオンビーム
53 共通作業領域
55 主軸
57 主軸
59 偏向器
61 エンドキャップ
63 開口
65 ムーブメント装置
S1 第1のシーケンス
S0, S11, S12, S13, S15, S14 工程
S2 第2のシーケンス
S21, S22, S23, S24, S25 工程
図1
図2
図3
図4
図5