(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】ノンコートエアバッグ用織物およびエアバッグ
(51)【国際特許分類】
D03D 1/02 20060101AFI20230524BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230524BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
D03D1/02
D03D15/283
B60R21/235
(21)【出願番号】P 2019545634
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2018036070
(87)【国際公開番号】W WO2019065894
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2017192245
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小寺 翔太
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-090747(JP,A)
【文献】特開平07-054238(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057300(WO,A1)
【文献】特開2015-143407(JP,A)
【文献】特表2013-528719(JP,A)
【文献】特開2015-017356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
B60R21/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンコートエアバッグ用織物であって、
前記織物は、ポリエチレンテレフタレートを主原料とする繊維によって製織され、
前記織物のカバーファクターが2385以上2500以下であり、
前記織物を構成する糸の単糸繊度が、2.5dtex以上3.0dtex以下であ
り、
厚みが0.30mm以下である、
ノンコートエアバッグ用織物。
【請求項2】
前記カバーファクターが2450以上である、請求項1に記載のノンコートエアバッグ用織物。
【請求項3】
請求項1に記載のノンコートエアバッグ用織物により形成された少なくとも一枚の本体基布によって形成された、エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時の乗員保護装置として普及しているエアバッグに用いられる織物に関し、特にノンコートエアバッグ用織物およびそれから得られるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突した時の衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、車両へのエアバッグ装置搭載が普及している。従来は、インフレーターから放出されるガスがバッグ内より漏れ出さないように、樹脂材料によりコーティングされた織物が主流であった。しかしながら、燃費改善等の要求から軽量であること、ステアリングホイールデザインの流行などから、エアバッグをコンパクトに収納できることが要求されている。したがって、近年は、エアバッグ用にノンコート織物の採用が広がっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エアバッグは、折り畳まれて収容され、車両の衝突時に、インフレーターから放出されるガスによって、展開する。しかしながら、エアバッグは折り畳み状態で長期に亘って収容されるため、折り癖が付くことがある。そして、本発明者は、エアバッグによっては、このような折り癖に起因して、ガスが注入されてもスムーズに展開しない可能性があることを見出した。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、折り癖に起因した展開不良を抑制することができる、エアバッグ用基布、及び、その基布によって形成されたエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るノンコートエアバッグ用織物は、ポリエチレンテレフタレートを主原料とする繊維によって製織され、カバーファクターが2350以上であり、前記織物を構成する糸の単糸繊度が、2.0dtex以上4.0dtex以下である。
【0006】
上記ノンコートエアバッグ用織物は、前記カバーファクターを、2450以上とすることができる。
【0007】
上記ノンコートエアバッグ用織物は、前記単糸繊度を、3.0dtex以下とすることができる。
【0008】
上記ノンコートエアバッグ用織物は、厚みを0.30mm以下とすることができる。
【0009】
本発明に係るエアバッグは、上述したいずれかのノンコートエアバッグ用織物により形成された少なくとも一枚の本体基布によって形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折り癖に起因した展開不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エアバッグの取付け口側本体基布に環状布3枚を縫合した状態を示した正面図である。
【
図2】エアバッグの取付け口側本体基布に環状布4枚を縫合した状態を示した正面図である。
【
図3】エアバッグの取付け口側本体基布と乗員側本体基布の重ね方を示した正面図である。
【
図4】エアバッグの取付け口側本体基布と乗員側本体基布とを縫合した状態を示した正面図である。
【
図5】エアバッグの折り畳みの手順を示す図である。
【
図6】エアバッグの折り畳みの手順を示す図である。
【
図7】エアバッグの折り畳みの手順を示す図である。
【
図8】実施例1~8、比較例1~4の物性値及び評価試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ノンコートエアバッグ用織物の概要>
本発明のノンコートエアバッグ用織物は、主として、前記織物がポリエチレンテレフタレートにより形成され、カバーファクターが2350以上であり、前記織物を構成する糸の単糸繊度が、2.0dtex以上4.0dtex以下である。
【0013】
以下、この織物について、さらに詳細に説明する。まず、この織物は、ポリエチレンテレフタレートにより、形成されている。従来、エアバッグ用織物は、主として、ナイロンにより形成されていたが、ナイロンは伸びやすいため、エアバッグを折り畳んだときに、折り癖が付きやすく、展開するときに折り癖に起因してスムーズな展開を妨げるおそれがある。この観点から、本発明に係るエアバッグ用織物は、ポリエチレンテレフタレートにより形成されている。
【0014】
次に、カバーファクターについて説明する。本発明に係る織物のカバーファクターは2350以上であることが肝要である。カバーファクターを2350以上とすることで、織糸間の隙間が小さくなり、優れた低通気性を得ることが出来る。また、カバーファクターは、織物の密度に関するものであるため、カバーファクターが小さいと、織物の密度が小さくなる。そのため、折り癖がつきやすく、エアバッグが折り畳まれた状態から展開状態への回復が不十分になり、スムーズな展開が抑制されるおそれがある。よって、カバーファクターは、大きいことが好ましく、例えば、2400以上、2430以上、2460以上とすることもできる。一方、カバーファクターが2800より大きいと織物の柔軟性が損なわれ、かえってスムーズな展開を妨げるおそれがあったり、コンパクトに折り畳めないおそれもある。この観点から、カバーファクターは、2700以下が好ましく、2650以下がさらに好ましい。なお、本発明において、カバーファクターは以下の式で算出される値である。
カバーファクター=織物の経密度×√経糸の総繊度+織物の緯密度×√緯糸の総繊度
【0015】
織物の織密度は、経糸および緯糸がともに48~75本/2.54cmであることが、製織性および通気性等の性能面で好ましく、55~68本/2.54cmであることがより好ましい。但し、経糸と緯糸との密度差は小さいことが好ましい。
【0016】
本発明の織物の通気性は、フラジール法によって測定される通気性が0.5ml/cm2・sec以下であることが好ましく、0.3ml/cm2・sec以下であることがより好ましい。上記の値とすることで、本発明の織物でエアバッグ用の基布を形成した場合、その基布表面からのガス漏れが少なくなり、インフレーターの小型化や迅速な展開が可能となる。
【0017】
本発明の織物を構成する糸の総繊度は280dtex以上であることが好ましい。糸の総繊度が280dtex以上であると、織物の強力がエアバッグとして優れた水準となる。また、軽量な織物が得られやすい面で、総繊度は560dtex以下であることが好ましく、470dtex以下であることがより好ましい。
【0018】
織物を構成する糸は、同一のものを使用しても異なっていてもいずれでもよい。例えば、単糸繊度(=総繊度/フィラメント数)の異なる糸により織物を構成することができる。具体的には、例えば、2.0~4.0dtexの範囲の単糸繊度の糸を用いることが好ましく、2.0~3.0dtexがさらに好ましい。単糸繊度を4.0dtex以下にすることにより、織物の柔軟性が向上しエアバッグの折畳み性が改良され、通気性を低くすることができる。
【0019】
また、単糸繊度が高いと、折り癖が付きやすく、エアバッグのスムーズな展開を妨げるおそれがある。したがって、単糸繊度の上限は、4.0dtexであることが好ましく、3.0dtexであることがさらに好ましい。一方、単糸繊度が低すぎると、紡糸工程、製織工程などで単糸切れが起こりやすいため、2.0dtex以上であることが好ましい。
【0020】
本発明においては、上述したカバーファクターとのバランスを考慮し、単糸繊度を上述の範囲に設定することで、エアバッグの折り癖に起因した展開不良を抑制することができる。例えば、単糸繊度が3.0dtexより大きい場合には、カバーファクターは2450以下が好ましく、2400以下がさらに好ましい。一方、単糸繊度が2.5dtex以上3.0dtex以下である場合には、カバーファクターは、2350以上が好ましく、2450以上がさらに好ましく、2450以上2500以下が特に好ましい。また、単糸繊度が2.5dtexより小さい場合には、カバーファクターは、2500以上が好ましい。
【0021】
また、単糸の断面形状は、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型などから選定すればよい。必要に応じて、これらの混繊、合糸、併用、混用(経糸と緯糸で異なる)などを用いればよく、紡糸工程、織物の製造工程、あるいは織物の物性などに支障のない範囲で適宜選定すればよい。
【0022】
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、たとえば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。
【0023】
織物の組織は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。必要に応じて、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としてもよく、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
【0024】
織物の織密度は、経糸および緯糸がともに48~68本/2.54cmであることが、製織性および通気性等の性能面で好ましい。
【0025】
また、織物の厚みは、例えば、0.30mm以下であることが好ましい。これは、厚みが大きすぎると、柔軟性が低くなり、折り畳み状態からのスムーズな展開が妨げられるおそれがあることによる。なお、厚みの測定は、例えば、JIS L 1096 8.4 A法に準じて測定することができる。
【0026】
<エアバッグ>
本発明のエアバッグは、本発明の織物を所望の形状に裁断した少なくとも1枚の本体基布を接合することによって得られる。エアバッグを構成する本体基布のすべてが、前記織物からなることが好ましいが、一部であってもよい。また、エアバッグの仕様、形状および容量は、配置される部位、用途、収納スペース、乗員衝撃の吸収性能、インフレーターの出力などに応じて選定すればよい。さらに、要求性能に応じて補強布を追加しても良く、補強布に使用する基布としては、本体基布と同等のノンコート織物のほか、本体基布とは異なるノンコート織物、あるいは本体基布とは異なる樹脂のコーティングが施された織物から選択することができる。
【0027】
前記本体基布の接合、本体基布と補強布や吊り紐との接合、他の裁断基布同士の固定などは、主として縫製によって行われるが、部分的に接着や溶着などを併用したり、製織あるいは製編による接合法を用いたりしてもよい。すなわち、エアバッグとしての堅牢性、展開時の耐衝撃性、乗員の衝撃吸収性能などを満足するものであれば、接合方法は特には限定されない。
【0028】
裁断した基布同士の縫合は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い方により行えばよい。また、縫い糸の太さは、700dtex(20番手相当)~2800dtex(0番手相当)、運針数は2~10針/cmとすればよい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目針間の距離を2mm~8mm程度とした多針型ミシンを用いればよいが、縫合部の距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。エアバッグ本体として複数枚の基布を用いる場合には、複数枚を重ねて縫合してもよいし、1枚ずつ縫合してもよい。
【0029】
縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0030】
さらに、必要に応じて、外周縫合部などの縫い目からのガス抜けを防ぐために、シール材、接着剤または粘着材などを、縫い目の上部および/または下部、縫い目の間、縫い代部などに塗布、散布または積層してもよい。
【0031】
本発明のエアバッグは、各種の乗員保護用バッグ、例えば、運転席および助手席の前面衝突保護用、側面衝突保護用のサイドバッグ、センターバッグ、後部座席着座者保護用(前突、後突)、後突保護用のヘッドレストバッグ、脚部・足部保護用のニーバッグおよびフットバッグ、乳幼児保護用(チャイルドシート)のミニバッグ、エアーベルト用袋体、歩行者保護用などの乗用車、商業車、バス、二輪車などの各用途の他、機能的に満足するものであれば、船舶、列車・電車、飛行機、遊園地設備など多用途に適用することができる。
【0032】
次に、エアバッグの具体的な作製方法の一例を
図1~
図4を用いて以下に説明する。
図1は、エアバッグの取付け口側本体基布に環状布3枚を縫合した状態を示した正面図、
図2は、エアバッグの取付け口側本体基布に環状布4枚を縫合した状態を示した正面図、
図3は、エアバッグの取付け口側本体基布と乗員側本体基布の重ね方を示した正面図、
図4は、エアバッグの取付け口側本体基布と乗員側本体基布とを縫合した状態を示した正面図である。
【0033】
まず、上述した織物から、円形の第1本体基布9および第2本体基布10を裁断する。次に、
図1に示すように、第1本体基布9の中央部に円形のインフレーター取付け口11を形成するとともに、この取付け口11の上方に円形の排気口12を2箇所(左右一対)に形成する。さらに、第1本体基布9には、取付け口11を囲む4箇所にボルト固定用穴13を形成する。なお、第2本体基布10は、乗員側を向く基布であり、取付け口、排気口、及びボルト固定用穴は設けられない。
【0034】
また、補強布として、ノンコート基布と、シリコーン樹脂を塗布して得られたコート基布とを準備する。さらに、インフレーター取付け口11の補強布として、ノンコート基布から3枚の第1環状布14aを裁断し、コート基布から、第1環状布14aと同一形状の第2環状布14bを1枚裁断する。
【0035】
図1に示すように、第1及び第2環状布14a、14bには全て、第1本体基布9のボルト固定用穴13と対応する位置にボルト固定用穴を形成する。そして、3枚の第1環状布14aを、第1本体基布9に、第1本体基布9の織糸方向に対して補強布の織糸方向が45度回転するように(
図1織糸方向AB参照)、かつ、ボルト固定用穴の位置が一致するように重ね合わせる。ここで、
図1に示すAが第1本体基布9の織糸方向であり、Bが環状布の織糸方向である。そして、取付け口11を中心として、第1本体基布9と環状布14aとを円形に縫製する。さらに、その上から第2環状布14bを第1環状布14aと同様に同じ織糸方向にして重ね合わせ、合計4枚の第1及び第2環状布14a、14bを本体基布9に円形に縫い合わせる(縫製部15a~15c)。縫合後の状態を
図2に示す。縫製は特には限定されないが、例えば、ナイロン66ミシン糸を使用し上糸を1400dtex、下糸を940dtexとして、3.5針/cmの運針数で本縫いにより行うことができる。
【0036】
次に、
図3に示すように、両本体基布9、10を、環状布14a、14bを縫い付けた面が外側になるように、かつ、本体基布10の織糸方向に対して第1本体基布9の織糸方向が45度回転するように重ねる。ここで、
図3に示すAが第1本体基布9の織糸方向であり、Cが第2本体基布10の織糸方向である。そして、これらの外周部を二重環縫い2列にて縫合(縫製部15d)する。縫合した状態を
図4に示す。縫合後に取付け口11からバッグを引き出して内外を反転させ、円形エアバッグを得る。外周部縫製の縫い糸は、上記本縫いと同じ縫い糸を用いる。
【0037】
エアバッグの折り畳み方法は、特には限定されないが、例えば、
図5~
図7に示す手順にて折り畳むことができる。
図5はエアバッグを折り畳む際の手順について乗員側を正面として示した図であり、
図6はエアバッグを折り畳む前の形態16から中間形態17に折り畳む際の手順を示した
図5のD-D断面図である。
図7は評価用エアバッグを中間形態17から折り畳み完了後の形態18に折り畳む際の手順を示したF-F断面図である。また、
図5の中間形態17におけるE-E断面図は
図6の最終形態20である。
図5の折り畳み完了後の形態18におけるG-G断面図が
図7の最終形態22である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図8に、実施例1~8及び比較例1~4に係るノンコートエアバッグ用織物の物性値及び評価結果を示す。また、以下に、物性値の測定方法及び評価方法を示す。
【0039】
<糸の総繊度>
JIS L 1013 8.3.1 B法に準じて測定した。
【0040】
<糸のフィラメント数>
JIS L 1013 8.4に準じて測定した。
【0041】
<単糸繊度>
糸の総繊度を、糸のフィラメント数で除することで得た。
【0042】
<織物の織密度>
JIS L 1096 8.6.1 A法に準じて測定した。
【0043】
<織物の厚み>
JIS L 1096 8.4 A法に準じて測定した。
【0044】
<織物の通気性>
JIS L 1096 8.26.1 A法(フラジール法)に準じて測定した。
【0045】
<折り畳み状態からの回復試験>
以下の手順で行う。
(1) 実施例及び比較例に係るサンプルを経・緯方向に5cm×30cmの大きさでカットする。
(2) カットしたサンプルを2.5cm間隔で蛇腹に折る。
(3) 蛇腹に折ったサンプル上に0.75kgの荷重を配置し、24時間放置する。
(4) 24時間後に荷重を取り去り、直後にサンプルを定規にて長さを測定する。
(5) 荷重解放後から回復率が90%(27cm)以上になるまでの時間を測定する。
(6) 90%になった時間から、回復速度を以下の式により算出する。
回復速度=(荷重解放直後の長さ-27cm)/(27cmになるまでの時間)
(7) 以下の基準によりA~Dの評価を行う。
A:回復速度が0.65mm/min以上
B:回復速度が0.50mm/min以上0.65mm/min未満
C:回復速度が0.35mm/min以上0.50mm/min未満
D:回復速度が0.35mm/min未満
なお、回復速度の評価がA(0.65mm/min以上)の実施例3により作製したエアバッグについては、展開がスムーズに行われることが確認された。これに対して、回復速度がAの評価の約75%以下の回復速度(0.50mm/min未満)の織物でエアバッグを作製すれば、展開がスムーズに行われないことが予測される。したがって、回復速度が0.50mm/min未満のものをC,Dと評価の分類を行い、0.50mm/min以上0.65mm/min未満をBとして許容されるものと判断した。
【0046】
<回復試験の評価結果>
評価結果は、
図8に示すとおりである。同図に示すように、実施例1~6は、カバーファクターと単糸繊度とのバランスがよく、回復速度が速い。この中で、実施例1のように、単糸繊度が高くてもカバーファクターが低ければ、バランスがとれて回復率は高くなっている。反対に、実施例8に示すように、カバーファクターが大きくても、単糸繊度が低ければ回復率は高くなる。また、実施例5は、この試験の中では、単糸繊度とカバーファクターとのバランスが最もよく、最も高い回復速度を示している。これに対して、実施例7に示すように、単糸繊度とカバーファクターの両方が高いと、柔軟性が損なわれ、許容範囲ではあるものの、回復速度が低下すると考えられる。
【0047】
また、通気性については、単糸繊度の影響が大きいと考えられ、単糸繊度が最も低い実施例8の通気性が最も低く、単糸繊度が最も高い比較例1の通気性が最も高い。
【0048】
一方、比較例1は、カバーファクターは低いが、単糸繊度が高すぎるため、回復速度が低くなっている。また、比較例2~4は、いずれもナイロンで形成されているため、ポリエチレンテレフタレートにより形成されている実施例1~8と比べて、折り畳んだときに繊維が伸びすぎ、折り癖が付きやすくなる。そのため、回復速度がかなり低くなっている。
【0049】
以上より、本発明に係るノンコートエアバッグ用織物は、折り畳んだ状態からの回復速度が速く、エアバッグの展開に適していると考えられる。
【符号の説明】
【0050】
9 取付け口側の第1本体基布
10 乗員側の第2本体基布
11 インフレーター取付け口
12 排気口
13 ボルト固定用穴
14a、14b 環状布
15a、15b、15c、15d 縫製部
A 第1本体基布9の織糸方向
B 環状布14aの織糸方向
C 第2本体基布10の織糸方向