(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】有機デバイス用電極基板材料
(51)【国際特許分類】
H10K 50/813 20230101AFI20230524BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20230524BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20230524BHJP
【FI】
H10K50/813
H10K71/60
H10K77/10
(21)【出願番号】P 2019564615
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047578
(87)【国際公開番号】W WO2019138863
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018001062
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和栗 一
(72)【発明者】
【氏名】田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】西尾 佳高
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-054085(JP,A)
【文献】特開2014-216175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0374737(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0332148(US,A1)
【文献】特表2013-501341(JP,A)
【文献】特表2013-501342(JP,A)
【文献】特開2014-131014(JP,A)
【文献】特開2010-285480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/813
H10K 71/60
H10K 77/10
H05B 33/26
H01L 51/50 - 51/56
H05B 33/22
H05B 33/04
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された金属箔からなる導体層と、
前記導体層の周囲に設けられた平坦化層とを備え、
第1の面において、前記導体層の表面は前記平坦化層から露出し、且つ前記導体層の表面と、前記平坦化層の表面とは、連続した平坦面を形成し、
前記第1の面と反対側の第2の面において、前記導体層の表面は前記平坦化層に覆われ、
前記平坦化層の前記第2の面を覆う部分は、前記導体層のパターンに対応した凹凸を有している、有機デバイス用電極基板材料。
【請求項2】
前記導体層は、線幅が20μm以上、200μm以下のパターンを形成し、前記第1の面における単位面積当たりの前記導体層の密度は15%以下である、請求項1に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項3】
前記平坦化層は、ガスバリア層と透明樹脂層とを含み、
前記ガスバリア層の表面と前記導体層の露出した表面とは連続した平滑面を形成している、請求項1に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、アルミニウム及び酸素を主成分とする層並びにシリコンと、窒素、酸素及び炭素の少なくとも1つとを主成分とする層の少なくとも一方を含み、厚さが20nm以上である、請求項3に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項5】
前記平坦化層は、波長400nm~800nmの光の透過率が85%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項6】
前記平坦化層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素樹脂、インジウムスズオキサイド(ITO)、及びポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)のうちの1種又は2種以上である、請求項5に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項7】
前記導体層は、基盤パターンと、基盤パターンの外側に設けられ、外部装置と接続可能な周辺パターンとを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項8】
前記導体層は、厚さ6μm以上、30μm以下のアルミニウム箔である、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機デバイス用電極基板材料。
【請求項9】
金属箔を基材の表面に貼り付ける工程と、
前記基材に貼り付けられた前記金属箔をパターニングして
導体層を形成する工程と、
前記
導体層を形成した基材の表面に透明材料を塗工して平坦化層を形成する工程と、
前記平坦化層を形成する工程よりも後で前記基材を剥離する工程とを備え、
前記平坦化層は、
第1の面において前記導体層の表面と連続した平坦面を形成し、前記第1の面と反対側の第2の面において前記導体層の表面を覆い、前記導体層のパターンに対応した凹凸を有している、有機デバイス用電極基板材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機デバイス用電極基板材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代照明器具の光源として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が注目されている。有機EL素子は陽極と陰極の間に有機発光層を備え、有機発光層において正孔と電子とを再結合させ、この際に生じるエネルギーにより発光させる。また、次世代太陽電池デバイスとしてペロブスカイト型や色素増感型などの有機太陽電池が注目されている。有機太陽電池は陽極と陰極の間に光電変換層を備え、入射した太陽光によって励起された電子及び正孔を陽極と陰極から取り出すことによって発電する。
【0003】
これらのデバイスにおいては、有機発光層及び光電変換層等の有機機能層を製膜することができると共に、光を取り出したり、取り込んだりすることができる電極基板材料が求められている。
【0004】
電極基板材料には、有機機能層をピンホール等が生じないように製膜することができる平滑性、特に段差や突起が無いことが求められる。近年、有機EL素子及び有機太陽電池は大面積化が求められている。大面積の有機EL素子を均一に発光させるためには、デバイス全面に電力を供給できるようにすることが重要となる。大面積化した有機太陽電池においては、デバイス内で励起された電子及び正孔を効率よく輸送することが重要となる。このため、電極基板材料には低い表面抵抗が求められる。さらに、有機EL素子及び有機太陽電池は生産性を高めるためにロールツゥロールプロセスで生産されると共に、曲面に成型して使用できることが求められているため、電極基板材料には高いフレキシブル性も求められる。
【0005】
これらの要求を満たす、有機デバイス用電極基板材料の開発が進められている。例えば、ガラス基板にインジウムスズオキサイト(ITO)を積層させた有機デバイス用電極基板材料やガスバリアフィルムにインジウムスズオキサイト(ITO)を積層させた有機デバイス用電極基板材料が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
さらに、ガスバリアフィルム等の上にメッシュ形状の金属蒸着膜を積層することにより形成した有機デバイス用電極基板材料も検討されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-031496号公報
【文献】特開2001-0110574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ガラス基板にインジウムスズオキサイト(ITO)を積層させた有機デバイス用電極基板材料は、フレキシブル性が無いため曲げられずロールツーロールでの製造ができない。さらに塗布プロセスに適応するにはぬれ性を担保するための前処理に時間がかかる。
【0009】
ガスバリアフィルム等の上にインジウムスズオキサイト(ITO)を積層した有機デバイス用電極基板材料は銀、アルミニウム又は銅等の金属と比べて表面抵抗がかなり高い。さらに曲げることはできるものの、曲げの曲率半径を小さくするとITO層にクラックが入り表面抵抗が増大する。
【0010】
一方、ガスバリアフィルム等の上に金属蒸着膜により有機デバイス用電極基板材料を形成すると、メッシュ形状の配線部分が段差となってしまう。また、曲げることはできるものの曲げの曲率半径が小さいと金属蒸着膜にクラックが入り表面抵抗が増大するので十分なフレキシブル性を得ることができない。
【0011】
本開示の課題は、平滑性が高く、表面抵抗が低く、フレキシブル性が高い有機デバイス用電極基板材料を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の有機デバイス用電極基板材料の一態様は、パターン化された金属箔からなる導体層と、導体層の周囲に設けられた平坦化層とを備え、第1の面において、導体層の表面は平坦化層から露出し、且つ導体層の表面と、平坦化層の表面とは、連続した平坦面を形成している。
【0013】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、導体層は、線幅が20μm以上、200μm以下のパターンを形成し、第1の面における単位面積当たりの導体層の密度は15%以下とすることができる。
【0014】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、平坦化層はガスバリア層と透明樹脂層とを含みさ、ガスバリア層の表面と導電層の露出した表面とは連続した平滑面を形成するようにできる。
【0015】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、ガスバリア層は、アルミニウム及び酸素を主成分とする層並びにシリコンと、窒素、酸素及び炭素の少なくとも1つとを主成分とする層の少なくとも一方を含み、厚さが20nm以上とすることができる。
【0016】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、平坦化層は、波長400nm~800nmの光の透過率が85%以上とすることができる。
【0017】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、透明樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素樹脂、インジウムスズオキサイド(ITO)、及びポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)のうちの1種又は2種以上とすることができる。
【0018】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、導体層は、厚さ6μm以上、30μm以下のアルミニウム箔とすることができる。
【0019】
有機デバイス用電極基板材料の一態様において、導体層は、基盤パターンと、基盤パターンの外側に設けられ、外部装置と接続可能な周辺パターンとを含んでいてもよい。
【0020】
有機エレクトロルミネッセンス素子用表電極材料の一態様において、第1の面と反対側の第2の面において、導体層の表面は平坦化層から露出していてもよく、第2の面において、導体層の表面は平坦化層に覆われていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示の有機デバイス用電極基板材料によれば、高い平滑性、低い表面抵抗及び高いフレキシブル性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態の有機EL素子用表電極材料を用いた有機EL素子を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る有機EL素子用表電極材料を示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線における断面図である。
【
図4】導体層のパターンの変形例を示す平面図である。
【
図5】有機EL素子用表電極材料の変形例を示す断面図である。
【
図6】有機EL素子用表電極材料の変形例を示す断面図である。
【
図7】有機EL素子用表電極材料の変形例を示す断面図である。
【
図8】有機EL素子用表電極材料の変形例を示す断面図である。
【
図9A】有機EL素子用表電極材料の製造方法の一工程を示す斜視図である。
【
図9B】有機EL素子用表電極材料の製造方法の一工程を示す斜視図である。
【
図9C】有機EL素子用表電極材料の製造方法の一工程を示す斜視図である。
【
図9D】有機EL素子用表電極材料の製造方法の一工程を示す斜視図である。
【
図10A】有機EL素子用表電極材料の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図10B】有機EL素子用表電極材料の製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態の有機デバイス用電極基板材料は、導体層101と平坦化層
102とを有し、
図1に示すような、有機EL素子200の陽極(表電極)202として用いることができる。有機EL素子200は、発光層201が陽極202と、陰極203との間に設けられている。発光層201において生じた光は、陽極202側から出力される。
【0024】
本実施形態において発光層201は、有機発光層に加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、電荷閉込め層等を含めた、陰極203と陽極202との間に蒸着又は塗布等によって形成された層全体を意味する。
【0025】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の有機デバイス用電極基板材料100は、パターン化された金属箔からなる導体層101と、導体層101の周囲に設けられた平坦化層
102とを備えている。第1の面111において、導体層101の表面は平坦化層
102から露出し、且つ導体層101の表面と、平坦化層
102の表面とは、連続した平坦面を形成している。このため、第1の面に有機機能層等を容易に成膜することができる。
【0026】
本実施形態の有機デバイス用電極基板材料は表面が金属箔からなる導体層101と平坦化層102とからなり、ITO層が存在しないため、塗れ性を容易に向上できる。従って、塗布法によって有機デバイスを製造する際、UVオゾン洗浄などの前処理の時間を短縮できるという利点も得られる。
【0027】
<導体層>
本実施形態の導体層101は、所定形状にパターン化された金属箔からなる。金属箔からなる導体層101は、金属蒸着膜等からなる導体層と異なり、折り曲げても断線しにくいために、十分なフレキシブル性を実現することができる。導体層101は、有機デバイス用電極基板材料100が有機デバイスの電極202として用いられた際に、有機EL素子の発光層201と当接し、発光層201に電圧を印加する。
【0028】
導体層101として用いる金属箔は特に限定されず、例えばアルミニウム箔、銅箔、金箔、又は銀箔等とすることができる。中でも、軽量で、深部の酸化が生じにくく、且つ光反射性が高いアルミニウム箔が好ましい。
【0029】
また、導体層101として用いる金属箔は、表面にめっき又は蒸着等により形成された、ニッケル、銅、銀、白金、及び金等の少なくとも1種からなる金属薄膜を有していてもよい。
【0030】
導体層101のパターンは、有機デバイス用電極基板材料100に必要な特性に応じて設計することができる。例えば、格子状、網目状、螺旋状、縞状、蛇行形状、及びその他の不定形状等、有機デバイスの電極として採用されている既知の表電極パターンを採用することができる。
【0031】
導体層101のパターンは、
図4に示すように、有機デバイスの一方の電極となる基盤パターン121だけでなく、基盤パターン121の外側に設けられた周辺パターン122を含むことができる。周辺パターン122は、基盤パターンと端子124とを接続する第1の周辺パターン122Aと有機デバイスの基盤パターン121と反対側の面に設けられた電極123と端子124とを接続する第2の周辺パターン122Bとを含むことができる。端子124は、外部装置等と接続することができる。また、端子124を介さずに、周辺パターン122を直接外部装置等と接続することもできる。外部装置は、例えば有機デバイスに電力を供給する電力供給部等とすることができる。
【0032】
導体層101の厚さは特に限定されないが、フレキシブル性を確保する観点及び表面抵抗を低減する観点から6μm以上が好ましい。また、光透過率を向上させる観点から、30μm以下が好ましい。
【0033】
導体層101の線幅は特に限定されないが、表面抵抗を低減する観点から20μm以上が好ましく、発光ムラを低減する観点から200μm以下が好ましい。光透過性を確保する観点から、第1の面111における単位面積当たりの導体層の密度は15%以下であることが好ましい。
【0034】
<平坦化層>
平坦化層102は、パターン化された導体層101の開口部を埋めるように、導体層101の周囲に設けられている。少なくとも第1の面111において、平坦化層102は導体層101を覆っておらず、導体層101の表面が露出している。
【0035】
少なくとも第1の面111において、導体層101の表面と、平坦化層102の表面とは、連続した平坦面を形成している。具体的には、導体層101の表面と、平坦化層102の表面とが、その境界部分に段差が無い連続面となっていると共に、第1の面111全体として平坦面になっている。第1の面111がこのような連続した平坦面となっているため、本実施形態の有機デバイス用電極基板材料の表面には、均一な発光層201を成膜することができる。なお、第1の面111は、発光層201の全面と密着すればよいが、導体層101の表面と、平坦化層102の表面との境界におけるレベルの差は、好ましくは300nm以下である。
【0036】
平坦化層102は目視において透明であればよいが、波長400nm~800nmの透過率が85%以上であることが好ましい。平坦化層の透過率をこの範囲とすることにより、発光効率を向上させることもできる。
【0037】
平坦化層102は透明にできれば、その組成は限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)及びフッ素樹脂等の透明な樹脂を用いることができる。これらの樹脂は単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、インジウムスズオキサイト(ITO)又はポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等の透明な導電性材料を用いることもできる。
【0038】
平坦化層102は一層であっても複数の層であってもよい。平坦化層102を屈折率が異なる複数の層とすることにより、光の拡散を制御し、全反射を少なくして、光取り出し効率を向上させることができる。
【0039】
図3に示すように、第1の面111と反対側の第2の面112においても導体層101が平坦化層102に覆われていない場合は、給電箇所の自由度が大きくなるという利点が得られる。しかし、
図5に示すように、第2の面112においては、平坦化層102が導体層101を覆っていてもよい。また、第2の面112は光取り出しの観点からは平坦面であることが好ましいが、凹凸が存在していてもよい。例えば、
図6に示すように、導体層101のパターンに対応した凹凸が第2の面112に存在している構成とすることができる。
【0040】
平坦化層102の厚さは、第2の面112においても導体層101が露出するようにする場合には、導体層101の厚さと同じ厚さとなる。第2の面において導体層101を覆うようにする場合には、導体層101よりも厚くすればよいが、フレキシブル性の観点及び光透過性の観点から60μm以下とすることが好ましい。
【0041】
図7に示すように、第2の面112側に透明支持体105を貼り合わせることもできる。透明支持体105を貼り合わせることにより、有機EL素子用表電極材料100の強度を高くすることができる。透明支持体105は、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)及びガラス等とすることができる。透明支持体は、反射防止機能を有する層とすることもできる。
【0042】
また、
図8に示すように、第2の面112側に、導体層101を隠すように黒色の保護層106を設けることもできる。導体層101の裏面に、黒色の保護層106を設けることにより、有機デバイスを表面側から見たときに導体層101のパターンが見えにくくなり、意匠性が向上する。なお、透明支持体105と保護層106との両方を設けることもできる。
【0043】
保護層106は、例えば後述のエッチング工程で使用するドライフィルムレジストに黒色のものを使用し、露光、現像して残ったドライフィルムレジストをエッチング後に剥離せずにそのまま使用することで形成できる。
【0044】
有機デバイス用電極基板材料100が以上のような構成を備えることにより、従来の有機デバイス用電極基板材料よりも表面抵抗を低くできると共にフレキシブル性を高くできる。また、デバイス化したときの発光効率を向上させることもできる。
【0045】
平坦化層102をガスバリア層103と透明樹脂層104とを含む構成とすることもできる。有機デバイスの有機発光層や光電変換層は水蒸気に弱く、わずかな水蒸気でも劣化してしまう。このため、有機発光層や光電変換層はガラス、金属又はガスバリアフィルム等により封止される。しかし、電極基板側における水蒸気の阻止は十分ではない場合がある。電極基板材料が水蒸気バリア性103を有することにより、電極基板側から水蒸気が侵入しにくくして、有機機能層の劣化を抑えることがきる。
【0046】
ガスバリア層103は、透明度が高く水蒸気バリア性を有していればどのような材料により形成してもよい。例えば、原子堆積法によってアルミニウム及び酸素を主成分とする層を形成することができる。また、化学気相堆積(CVD)法によってシリコン、窒素、酸素及び炭素を主成分とする層を形成することもできる。ガスバリア層103は1層に限らず、複数の層の積層体とすることもできる。ガスバリア層103の厚さは、水蒸気を阻止する観点から好ましくは20nm以上である。
【0047】
ガスバリア層103を設ける場合は、導体層101の表面とガスバリア層103の表面とが、連続した平坦面を形成するようにできる。導体層101の表面と、ガスバリア層103の表面との境界におけるレベルの差は、好ましくは300nm以下である。なお、透明樹脂層104の厚さは、導体層101の厚さよりも薄くすることができる。
【0048】
<製造方法>
本実施形態の有機デバイス用電極基板材料100は、例えば以下のようにして形成することができる。
【0049】
まず、
図9Aに示すように、表面が平滑で、樹脂及び金属に対して難付着性を有する基材301に、導体層となる金属箔302を積層する。難付着性を有する基材とは、樹脂や金属が接触しても容易に引き離し可能な性能を有する基材をいう。基材はそのものが難付着性を有している材料により形成することも、表面に難付着性のコート層が設けられているものとすることもできる。例えば、基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリル及びポリ塩化ビニル(PVC)等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
金属箔302には先に述べた導体層101を形成できる材質及び厚さのものを用いる。金属箔302により形成する導体層101と発光層201との密着性を向上させる観点から、金属箔302の基材301と貼り合わせる面は平滑であることが好ましく、具体的には算術平均粗さ(Ra)が50nm以下であることが好ましい。基材301に金属箔302を積層する際に、基材301及び金属箔302の少なくとも一方の表面に難付着性又は微付着性の接着剤等を塗布することもできる。このようにすれば、積層を容易となる。
【0051】
次に、
図9Bに示すように、基材301の表面に積層した金属箔302をパターン化して導体層101を形成する。金属箔302のパターン化は例えば、ウエットエッチング又はドライエッチング等の既知の方法により行うことができる。エッチングにより形成するパターンは、先に述べたように有機デバイスの電極として採用されている既知の電極パターンを採用することができる。また、
図4に示すような基盤パターン121と周辺パターン122とを有しているようなパターンとすることもできる。
【0052】
次に、
図9Cに示すように、透明材料を塗工して平坦化層102を形成する。透明材料は、先に述べたような材料を用いることができ、常温で流動性を有する材料の場合、例えばコーターを用いて塗工を行うことができる。常温で流動性を有する材料は、例えば、溶剤に溶解することにより流動性を有する樹脂、特定の温度条件において流動性を有する樹脂、常温で流動性を有し熱又は光等により硬化可能な樹脂等とすることができる。
【0053】
次に、
図9Dに示すように、基材301を剥離する。基材を難付着性とすることにより、容易に剥離することが可能となる。基材301を剥離して形成した第1の面において、導体層101は平坦化層102に覆われず露出する。また、第1の面は、基材301の表面状態が転写された面となる。平滑な表面を有する基材301を用いることにより、平滑な第1の面が得られる。
【0054】
なお、平坦化層102を形成した後、基材301を剥離する前に、透明支持体105を貼り合わせる工程を設けてもよい。透明支持体105を設けることにより、平坦化層102の厚さが薄い場合にも、基材301の剥離が容易となる。なお、基材301を剥離した後で、透明支持体105を貼り合わせることもできる。
【0055】
平坦化層102をガスバリア層103と透明樹脂層104と含む構成とすることもできる。この場合、
図10Aに示すように導体層101を形成した後の基材301の表面に、金属箔302が除去された部分及び金属箔302が残存する部分の両方を覆うように、ガスバリア層103を形成する。ガスバリア層103は、水蒸気バリア性の高い材料により形成することができる。例えば原子堆積法等を用いて、アルミニウム及び酸素を主成分とする層(例えば、Al
2O
3等からなる層)を形成したり、化学気相堆積法(CVD)法を用いてシリコンと、窒素、酸素及び炭素の少なくとも1つとを主成分とする層(例えば、SiOx、SiN、SiON、又はSiONC等からなる層)を形成したりすればよい。また、これらの層を組み合わせた積層体を形成することもできる。
図10Bに示すように、ガスバリア層103を形成した後、ガスバリア層103の表面に透明材料を塗工して透明樹脂層104を形成する。
図10Bにおいて、透明樹脂層104が凹部を完全に埋めている例を示したが、凹部が完全に埋まっていなくてもよい。また、透明樹脂層104がガスバリア層103を完全に覆うようにすることもできる。基材301を剥離すると、導体層101の表面とガスバリア層103の表面とが連続した平坦面である第1の面が露出する。
【0056】
有機デバイス用電極基板材料の製造方法は、このような方法に限らず、第1の面を平坦にできれば他の方法により形成することもできる。
【実施例】
【0057】
本開示の有機デバイス用電極基板材料について実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0058】
<平滑性の評価>
有機デバイス用電極基板材料の平滑性の評価は株式会社ニコン製超高分解能非接触三次元表面形状計測システムBW-D500を用いて2.2mm×2.2mmの視野で表面の凹凸形状を観察し、面内の最大高さSzを測定した。JIS-B0601-2001で定義されている最大高さRzを、観察された表面全体に対して適用できるように三次元に拡張して算出された値である。平滑性がSz200nm以下のものを良好(〇)、200nmを超えるものを不良(×)とした。
【0059】
<水蒸気バリア性の評価>
有機デバイス用電極基板材料の水蒸気バリア性の評価は、JIS K 7129-7:2016で定義される水蒸気透過度である。蒸着した金属カルシウム上に試料を設置し、40℃90%の環境下で100時間経過後、腐食したカルシウムの面積から計算することによって算出した。
【0060】
<表面抵抗の評価>
有機デバイス用電極基板材料の表面抵抗は、50mm×50mmの試料の対角線上にある2つの角点の間の抵抗値を抵抗計(三和電気計器株式会社製、RD701 DIGITALMULTIMETER)を用いて測定して求めた。表面抵抗が10Ω/cm以下のものを良好(〇)、10Ω/cm2を超えるものを不良(×)とした。
【0061】
<フレキシブル性の評価>
対象試料の屈曲試験前後の表面抵抗を測定し、表面抵抗の低下率を求めた。屈曲試験は、塗膜屈曲試験機を用いて、10mmφのマンドレルで50回行った。表面抵抗の低下率が5%以下のものをフレキシブル性が良好(〇)、5%を超えるものを不良(×)とした。
【0062】
(実施例1)
3cm×3cmで厚さ15μm(算術平均粗さRa:7nm)のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製、1N30)の一方の表面(主面)に難付着性の接着剤を塗布し、100℃で乾燥させた後、この接着剤側の塗布面に基材を貼り合わせ、50℃で4日間エージングした。基材は厚さ38μmのPETフィルム(帝人フィルムソリューションズ株式会社製)とした。
【0063】
次に、アルミニウム箔の裏面に、厚さ15μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジストを貼り合わせ、メッシュ形状フォトマスクを用いて紫外線(UV)により露光、現像し、ドライフィルムレジストが残っていない部分を塩化鉄(II)水溶液を用いてエッチングを行い、導体層を形成した。導体層の線幅は75μmで、ピッチが1500μmの格子状とし、配線密度は10%とした。
【0064】
次に、アルミニウム箔がエッチングにより除去された部分及び残存する部分の両方に、プラズマCVD法を用いてSiN膜を150nm製膜した後、原子堆積法によってAl2O3膜を20nm製膜してガスバリア層を形成した。
【0065】
次に、形成したガスバリア層の表面に波長400~800nmにおける透過率の平均値が90%のエポキシ樹脂を接着剤上にガスバリア層が形成されている面からの膜厚が20μmとなるように且つ導体層の凹凸が埋め込まれるように塗工し、平坦化層を形成した。平坦化層の表面には、透明支持体として厚さ30μmの市販の反射防止フィルムを貼り合わせ、100℃で乾燥させた。この後、基材を剥離し、有機デバイス用電極基板材料とした。
【0066】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz127nmであり、水蒸気バリア性は10-5g/m2/day以下であり、表面抵抗は、0.02Ω/cm2であり、屈曲試験後の表面抵抗は変化しなかった。
【0067】
対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成した。素子の形成は以下のようにして行った。まず、対象試料にポリエチレンジキシチオフェン―ポリスチレンスルホナート(PEDOT/PSS、sigma aldrich社製)をスピンコータ(ミカサ株式会社製、SpinCoater MS-A150)を用いて3000rpmでスピンコートし、大気中で乾燥させた。続いて、Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-co-(4,4′-(N-(4-sec-butylphenyl)diphenylamine)](TFB、sigma aldrich社製)をトルエンに溶解させたものを3000rpmでスピンコートし、窒素雰囲気で乾燥させた。この後、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-alt-ベンゾチアジアゾール))F8BT、sigma aldrich社製)をトルエンに溶解させたものを2000rpmでスピンコートした。次に、フッ化リチウムを真空蒸着装置(日本電子株式会社製、JEE-4X)を用いて真空蒸着し、さらに陽極としてアルミニウムを真空蒸着した。
【0068】
得られた素子に7Vの電圧を印加して発光させ、電流・電圧に対する輝度を輝度計(コニカミノルタ製、色彩輝度計CS-200)を用いて測定し、1Aあたりの輝度を発光効率として求めたところ、0.9cd/Aであった。
【0069】
サンエナジー株式会社製UV/O3洗浄改質装置SKB401Y-02を用いて波長254nm、照度10.0mW/cm2で1分、5分、10分の3水準で有機デバイス用電極基板材料に対してUVオゾン洗浄を行い、それぞれについてJIS-K-6768-1999で定義されるぬれ張力試験方法で評価したところ、1分では63mN/m、5分では73mN/m、10分では73mN/mであった。
【0070】
(実施例2)
アルミニウム箔を厚さが15μmの銅箔(純度99.96%)とし、エポキシ樹脂をアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様にした。
【0071】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz72nmであり、水蒸気バリア性は10-5g/m2/day以下であり、表面抵抗は、0.01Ω/cm2であり、屈曲試験後の表面抵抗は変化しなかった。
【0072】
また、実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成し、発光効率を測定したところ、1.4cd/Aであった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では67mN/m、5分では73mN/m、10分では73mN/mであった。
【0073】
(実施例3)
導電層の線幅を100μmとし、ピッチが2000μmで配線密度を9%とした以外は実施例1と同様にした。
【0074】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz158nmであり、水蒸気バリア性は10-5g/m2/day以下であり、表面抵抗は、0.01Ω/cm2であり、屈曲試験後の表面抵抗は変化しなかった。
また、実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成し、発光効率を測定したところ、1.0cd/Aであった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では63mN/m、5分では73mN/m、10分では73mN/mであった。
【0075】
(実施例4)
ガスバリア層を形成せず、すなわちアルミニウム箔がエッチングにより除去された部分及び導体層のある面に直接エポキシ樹脂を充填した以外は実施例1と同様にして有機デバイス用電極基板材料を得た。
【0076】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz127nmであり、表面抵抗は、0.02Ω/cm2であり、屈曲試験後の表面抵抗は変化しなかった。水蒸気バリア性は5.68g/m2/dayであった。
【0077】
実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成し、発光効率を測定したところ、0.9cd/Aであった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では68mN/m、5分では68mN/m、10分では73mN/mであった。
【0078】
(実施例5)
ガスバリア層を形成せず、すなわちアルミニウム箔がエッチングにより除去された部分及び導体層のある面に直接エポキシ樹脂を充填し、透明支持体を厚さ75μmで水蒸気透過率が4×10-4g/m2/dayの市販のガスバリアフィルムとした以外は実施例1と同様にして有機デバイス用電極基板材料を得た。
【0079】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz142nmであり、表面抵抗は、0.02Ω/cm2であり、屈曲試験後の表面抵抗は変化しなかった。水蒸気バリア性は3×10-2g/m2/dayであった。
【0080】
実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成し、発光効率を測定したところ、0.5cd/Aであった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では66mN/m、5分では73mN/m、10分では73mN/mであった。
【0081】
(比較例1)
ガラス基板上にインジウムスズオキサイト(ITO)をスパッタ法で155nmの膜厚で積層させることによって有機デバイス用電極基板材料を得た。
【0082】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz:17nmであり、水蒸気バリア性は10-5g/m2/day以下であったが、表面抵抗は0.68Ω/cm2であり、わずかでも曲げるとガラス基板が割れてしまった。
【0083】
また、実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成し、発光効率を測定したところ、5.2cd/Aであった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では48mN/m、5分では61mN/m、10分では67mN/mであった。
【0084】
(比較例2)
厚さ75μmで水蒸気透過率が4×10-4g/m2/dayの市販のガスバリアフィルムにインジウムスズオキサイト(ITO)をスパッタ法により120nmの膜厚で積層させることによって有機デバイス用電極基板材料を得た。
【0085】
得られた有機デバイス用電極基板材料の平滑性はRz:58nmであり、水蒸気バリア性は1×10-4g/m2/dayであったが、表面抵抗は9.40Ω/cm2であり、屈曲試験後の抵抗値は2296.00Ω/cm2と、急激に増加した。
【0086】
また、実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成したが発光しなかった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では52mN/m、5分では58mN/m、10分では62mN/mであった。
【0087】
フィルム上で製膜したITO膜の結晶性が悪く、表面抵抗が大きくなった。フィルムなので曲げることはできるが、小さい曲率半径で曲げるとITO膜にクラックが発生し抵抗が増大した。また、ぬれ張力が向上させるために、長い前処理時間が必要であった。
【0088】
(比較例3)
3cm×3cmで厚さ15μm(Ra:7nm)のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製、1N30)の一方の表面(主面)に市販のアクリル系接着剤を塗布し、この接着剤側の塗布面に厚さ75μmで水蒸気透過率が4×10-4g/m2/dayの市販のガスバリアフィルムを貼り合せた。
【0089】
次に、アルミニウム箔の裏面に、市販のドライフィルムを貼り合わせ、メッシュ形状フォトマスクを用いてUV条件下で露光、現像し、ドライフィルムが残っていない部分を塩化鉄(II)水溶液を用いてエッチングを行うことで細線を形成し、水酸化ナトリウム水溶液でドライフィルムを剥離することによって有機EL素子用表電極材料を得た。
【0090】
得られた有機デバイス用電極基板材料の水蒸気バリア性は4×10-4g/m2/dayであったが、表面抵抗は0.04Ω/cm2であり、屈曲試験後の抵抗値は変化しなかったが、平滑性はRz:1621nmであった。
【0091】
実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成したが発光しなかった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では70mN/m、5分では73mN/m、10分では73mN/mであった。
【0092】
アルミニウム箔により導体層を形成しているため、表面抵抗及びフレキシブル性等に問題は無かったが、平坦化層を形成していないため段差が生じ、平滑性が悪かった。
【0093】
(比較例4)
厚さ75μmで水蒸気透過率が4×10-4g/m2/dayの市販のガスバリアフィルムにアルミニウムを蒸着して、厚さが300nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。次に、アルミニウム蒸着膜の表面に市販のドライフィルムを貼り合わせ、メッシュ形状フォトマスクを用いてUVにより露光、現像し、ドライフィルムが残っていない部分を塩化鉄(II)水溶液を用いてエッチングを行い、パターン化した。この後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてドライフィルムを剥離することによって有機デバイス用電極基板材料を得た。
【0094】
得られた有機デバイス用電極基板材料の水蒸気バリア性は4×10-4g/m2/dayで、表面抵抗は0.42Ω/cm2であったが、屈曲試験後の抵抗値は12.6Ω/cm2と増加してしまったうえ、平滑性はRz:343nmであった。
【0095】
実施例1と同様に対象試料を陽極とする有機EL発光素子を形成したが発光しなかった。実施例1と同様にUVオゾン洗浄後のぬれ張力を評価したところ、1分では50mN/m、5分では73mN/m、10分では73mN/mであった。
【0096】
導体層をアルミニウム蒸着膜により形成しているため、50回の屈曲試験後に導体層にクラックが入っており、表面抵抗が増大した。また、導体層による段差が生じているため、平滑性が悪かった。
【0097】
表1に各実施例及び比較例の結果をまとめて示す。
【0098】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示の有機デバイス用電極基板材料は、高い平滑性、ガスバリア性、光線透過率、低い表面抵抗及び高いフレキシブル性と、塗布プロセスにおける前処理の短時間化を実現でき、有機デバイス用の電極の材料として有用である。
【符号の説明】
【0100】
100 有機デバイス用電極基板材料
101 導体層
102 平坦化層
103 ガスバリア層
104 透明樹脂層
105 透明支持体
106 保護層
111 第1の面
112 第2の面
121 基盤パターン
122 周辺パターン
122A 第1の周辺パターン
122B 第2の周辺パターン
123 電極
124 端子
200 有機EL素子
201 発光層
202 電極
203 電極
301 基材
302 金属箔