(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】チャイルドシート
(51)【国際特許分類】
B62J 1/16 20060101AFI20230524BHJP
B60N 2/26 20060101ALI20230524BHJP
B62J 1/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B62J1/16 Z
B60N2/26
B62J1/00 D
(21)【出願番号】P 2020054312
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一朗
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-262863(JP,A)
【文献】特開2001-080397(JP,A)
【文献】特開2015-206391(JP,A)
【文献】特開2018-114817(JP,A)
【文献】実開昭60-105551(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 - 1/16
B60N 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに固定されるシート本体と、
前記シート本体に上下動可能に設けられたヘッドガードと、
前記シート本体に対する前記ヘッドガードの上下方向の位置を調整する調整機構と、を備え、
前記ヘッドガードは、
前記調整機構の少なくとも一部が前面に設けられた基板部と、
前記基板部の前面に設けられ、前記調整機構を覆うカバー部と、を備え、
前記カバー部に、前後方向に貫く挿通孔が、上下方向に並べられて設けられ、
上下方向で隣り合う各前記挿通孔に、シートベルトが、前記カバー部の後面と前記基板部の前面との間を通して一体に挿通され、
前記基板部の前面において、上下方向で互いに隣り合う前記挿通孔と前後方向で対向する部分に、上下方向に沿う縦断面視で、後方に向けて窪む曲線状を呈する内面を備えた窪み部が形成されている、チャイルドシート。
【請求項2】
前記カバー部の後面における前記挿通孔の開口周縁部に、面取り部が形成されている、請求項1に記載のチャイルドシート。
【請求項3】
前記調整機構および前記カバー部は、前記基板部における左右方向の中央部に設けられている、請求項1または2に記載のチャイルドシート。
【請求項4】
前記基板部の前面において、上下方向で互いに隣り合う前記挿通孔と前後方向で対向する部分に、前方に向けて突出し、前記カバー部の後面に当接、若しくは近接した突出部が形成され、
前記突出部の前面に、前記窪み部が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のチャイルドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、フレームに固定されるシート本体と、シート本体に上下動可能に設けられたヘッドガードと、シート本体に対するヘッドガードの上下方向の位置を調整する調整機構と、を備え、ヘッドガードが、調整機構の少なくとも一部が前面に設けられた基板部と、基板部の前面に設けられ、調整機構を覆うカバー部と、を備えたチャイルドシートが知られている。
この種のチャイルドシートとして、基板部において、調整機構およびカバー部から左右方向に離れた部分に、前後方向に貫く挿通孔が、上下方向に並べられて設けられ、上下方向で隣り合う各挿通孔に、シートベルトを、基板部の後面を通して一体に挿通した構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のチャイルドシートでは、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に、基板部の後面を通して挿通する際に、基板部の前面側から一方の挿通孔内にシートベルトの一端部を挿通した後に、シートベルトの持ち手を変えて、シートベルトを折返し、基板部の後面側から他方の挿通孔内にシートベルトの一端部を挿通する必要があった。
また、挿通孔が、基板部において、調整機構およびカバー部から左右方向に離れた部分に設けられているので、シートベルトのうち、上下方向で隣り合う各挿通孔に挿通されている固定端を、チャイルドシートに着座した幼児の肩の近くに位置させることが設計上困難になる場合があった。
また、シートベルトの固定端が、シート本体に対して上下動する基板部の後面に露出することとなり、例えば、シート本体が、基板部の後面に当接、若しくは近接する背もたれ部を有する場合、シート本体に対するヘッドガードの上下方向の位置を調整するときに、基板部の後面に露出したシートベルトの固定端が、背もたれ部の前面に摺接することで、この調整に大きな力が必要になるおそれがあった。
また、例えば、シート本体が前記背もたれ部を有する場合、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に、基板部の後面を通して挿通する際に、ヘッドガードをシート本体に対して引き上げて、挿通孔を背もたれ部より上方に位置させ、挿通孔の後端開口を開放する必要があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に容易に挿通することが可能で、かつシート本体に対するヘッドガードの上下方向の位置を調整するのに要する力を抑えることができるとともに、シートベルトの固定端を、チャイルドシートに着座した幼児の肩の近くに容易に位置させることができるチャイルドシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のチャイルドシートは、フレームに固定されるシート本体と、前記シート本体に上下動可能に設けられたヘッドガードと、前記シート本体に対する前記ヘッドガードの上下方向の位置を調整する調整機構と、を備え、前記ヘッドガードは、前記調整機構の少なくとも一部が前面に設けられた基板部と、前記基板部の前面に設けられ、前記調整機構を覆うカバー部と、を備え、前記カバー部に、前後方向に貫く挿通孔が、上下方向に並べられて設けられ、上下方向で隣り合う各前記挿通孔に、シートベルトが、前記カバー部の後面と前記基板部の前面との間を通して一体に挿通され、前記基板部の前面において、上下方向で互いに隣り合う前記挿通孔と前後方向で対向する部分に、上下方向に沿う縦断面視で、後方に向けて窪む曲線状を呈する内面を備えた窪み部が形成されている。
【0007】
この発明によれば、基板部の前面において、上下方向で互いに隣り合う挿通孔と前後方向で対向する部分に、上下方向に沿う縦断面視で、後方に向けて窪む曲線状を呈する内面を備えた窪み部が形成されている。
これにより、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に挿通する際に、カバー部の前面側から一方の挿通孔内にシートベルトの一端部を挿通した後に、継続してカバー部の前面側からシートベルトを送り込めば、シートベルトの一端部が、窪み部の内面を摺動して曲げられながら他方の挿通孔に導かれ、カバー部の後面側から他方の挿通孔内に挿通されて、カバー部の前面から突出することとなる。
したがって、例えば、シートベルトの持ち手を変えたり、挿通孔がシート本体より上方に位置するようにヘッドガードを移動させたりしなくても、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に、カバー部の後面と基板部の前面との間を通して容易に挿通することが可能になり、例えばチャイルドシートを分解等せずに、シートベルトを容易に交換することもできる。
【0008】
挿通孔が、調整機構を覆うカバー部に設けられているので、挿通孔が、基板部において、調整機構およびカバー部から左右方向に離れた部分に設けられている構成と比べて、シートベルトのうち、上下方向で隣り合う各挿通孔に挿通されている固定端を、チャイルドシートに着座した幼児の肩の近くに容易に位置させることができる。
上下方向で隣り合う各挿通孔に、シートベルトが、カバー部の後面と基板部の前面との間を通して一体に挿通されているので、例えば、シート本体が、基板部の後面に当接、若しくは近接する背もたれ部を有していても、シートベルトの固定端と背もたれ部の前面との間に、基板部を介在させることが可能になり、シート本体に対するヘッドガードの上下方向の位置を調整するときに、シートベルトの固定端が背もたれ部の前面に摺接することがなく、この調整に必要な力を抑えることができる。
【0009】
前記カバー部の後面における前記挿通孔の開口周縁部に、面取り部が形成されてもよい。
【0010】
この場合、カバー部の後面における挿通孔の開口周縁部に、面取り部が形成されているので、カバー部の後面における挿通孔の開口を広くすることができる。これにより、カバー部および基板部等の寸法誤差、並びに、カバー部および基板部の組立誤差等に起因して、上下方向で隣り合う各挿通孔と、基板部の窪み部と、が前後方向で対向しにくくなるのを防ぐことができる。
【0011】
前記調整機構および前記カバー部は、前記基板部における左右方向の中央部に設けられてもよい。
【0012】
この場合、調整機構およびカバー部が、基板部における左右方向の中央部に設けられているので、カバー部に設けられた挿通孔が、基板部における左右方向の中央部に位置することとなり、シートベルトの固定端を、チャイルドシートに着座した幼児の肩の近くに確実に位置させることができる。
【0013】
前記基板部の前面において、上下方向で互いに隣り合う前記挿通孔と前後方向で対向する部分に、前方に向けて突出し、前記カバー部の後面に当接、若しくは近接した突出部が形成され、前記突出部の前面に、前記窪み部が形成されてもよい。
【0014】
この場合、窪み部が、カバー部の後面に当接、若しくは近接した突出部の前面に形成されているので、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に挿通する際、および挿通した状態で、窪み部から外れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、シートベルトを、上下方向で隣り合う各挿通孔に容易に挿通することが可能で、かつシート本体に対するヘッドガードの上下方向の位置を調整するのに要する力を抑えることができるとともに、シートベルトの固定端を、チャイルドシートに着座した幼児の肩の近くに容易に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示したチャイルドシートの概略図である。
【
図2】
図1のチャイルドシートの要部を前方から見た正面図である。
【
図3】
図2において、ロックレバーによる被係止部のロックを解除し、ヘッドガードをシート本体に対して上方に移動させている状態を示す図である。
【
図4】
図2において、ヘッドガードをシート本体に対して上方に移動させ、ロックレバーにより被係止部をロックした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るチャイルドシート1の一実施形態を、
図1から
図5を参照しながら説明する。
チャイルドシート1は、シート本体11、ヘッドガード12、および調整機構13を備えている。
【0018】
シート本体11は、前方が開放された有底筒状に形成され、座部11a、および座部11aの外周縁から上方に向けて立ち上がる背もたれ部11bを備えている。座部11aが、例えば自転車用フレームの荷台に固定される。シート本体11の前部には、左右方向に延び、シート本体11に座った幼児によって把持されるハンドルバー19が設けられている。ハンドルバー19は、シート本体11の前部における左右方向の全長にわたって設けられている。
【0019】
ヘッドガード12は、調整機構13の少なくとも一部が前面に設けられた基板部14と、基板部14の前面に設けられ、調整機構13を覆うカバー部15と、を備え、シート本体11に上下動可能に設けられている。
基板部14およびカバー部15それぞれの上端縁は、上下方向の同じ位置に位置している。基板部14およびカバー部15は、上下方向に直交する横断面視で、シート本体11の背もたれ部11bに沿うように湾曲している。基板部14、カバー部15、およびシート本体11それぞれの左右方向の中央部は互いに一致している。
以下、基板部14、カバー部15、およびシート本体11それぞれの左右方向の中央部に対して、左右方向に近付く側を左右方向の内側といい、左右方向に離れる側を左右方向の外側という。
【0020】
カバー部15は、基板部14の前面に固定されている。図示の例では、カバー部15は、左右方向の両側に前後方向に貫いて設けられたボトルBが、基板部14に形成されたねじ穴に螺着されることで、基板部14の前面に固定されている。カバー部15は、基板部14における左右方向の中間部分に設けられている。図示の例では、カバー部15は、基板部14における左右方向の中央部に設けられている。カバー部15の前面は、上下方向から見て、後方に向けて窪む曲線状を呈する。
【0021】
カバー部15の上端部に、前後方向から見た正面視で、左右方向に長い長方形状を呈する第1貫通孔15aが形成されている。基板部14の上端部において、第1貫通孔15aと前後方向で対向する部分に、第1貫通孔15aに対して同等の形状で、同等の大きさに形成された第2貫通孔が形成されている。第1貫通孔15aおよび第2貫通孔の各上端縁の上下方向の位置は、互いに同等になっている。
【0022】
カバー部15には、前後方向に貫く挿通孔16が、上下方向に並べられて設けられている。
図5に示されるように、上下方向で隣り合う各挿通孔16に、シートベルトSが、カバー部15の後面と基板部14の前面との間を通して一体に挿通される。挿通孔16は、2組設けられ、カバー部15における左右方向の両側に1組ずつ設けられている。挿通孔16は、カバー部15における上下方向の中央部に設けられている。挿通孔16は、前後方向から見た正面視で、左右方向に長い長方形状を呈する。挿通孔16は、左右方向の内側から外側に向かうに従い下方に向けて延びている。上下方向で互いに隣り合う挿通孔16同士の上下方向の間隔は、挿通孔16の上下方向の幅と同等になっている。なお、上下方向で互いに隣り合う挿通孔16同士の上下方向の間隔を、挿通孔16の上下方向の幅より広くしてもよいし、狭くしてもよい。
【0023】
カバー部15の後面における挿通孔16の開口周縁部に、第1面取り部(面取り部)16aが形成されている。これにより、挿通孔16の開口が、後端縁に向かうに従い広くなっている。図示の例では、カバー部15の前面における挿通孔16の開口周縁部に、第2面取り部16bが形成されている。これにより、挿通孔16の開口が、前端縁に向かうに従い広くなっている。第1面取り部16a、および第2面取り部16bはそれぞれ、カバー部15における挿通孔16の開口周縁部に、全周にわたって形成されている。なお、カバー部15に、第1面取り部16a、および第2面取り部16bを形成しなくてもよい。
【0024】
基板部14の前面において、上下方向で互いに隣り合う挿通孔16と前後方向で対向する部分に、前方に向けて突出し、カバー部15の後面に当接、若しくは近接した突出部17が形成されている。突出部17は、基板部14における左右方向の両側に1つずつ設けられている。突出部17の前面には、上下方向に沿う縦断面視で、後方に向けて窪む曲線状を呈する内面を備えた窪み部18が形成されている。なお、基板部14の前面に突出部17を形成しなくてもよい。
【0025】
前後方向から見た正面視で、1つの窪み部18の内側に、上下方向で隣り合う各挿通孔16が位置している。挿通孔16の少なくとも一部は、窪み部18の内面のうち、後端に位置する頂部から上下方向に離れた部分と前後方向で対向している。図示の例では、上下方向で隣り合う各挿通孔16は、窪み部18の内面のうち、前記頂部を上下方向に挟む各部分と前後方向で各別に対向している。
【0026】
図2に示されるように、突出部17は、左右方向に長い直方体状に形成されている。窪み部18は、前後方向から見た正面視で、突出部17よりわずかに小さい、左右方向に長い長方形状を呈する。窪み部18は、左右方向および上下方向には閉じられており、前方にのみ開口している。突出部17の前面における窪み部18の開口周縁部が、全周にわたってカバー部15の後面に当接、若しくは近接している。
【0027】
調整機構13は、係止部21、ロックレバー22、および被係止部23を備え、シート本体11に対するヘッドガード12の上下方向の位置を調整する。
図2~
図4において、ロックレバー22に、ドットのハッチングを付している。
調整機構13は、基板部14における左右方向の中間部分に設けられている。図示の例では、調整機構13は、基板部14における左右方向の中央部に設けられている。
【0028】
係止部21は、シート本体11の背もたれ部11bの前面に固定されている。係止部21は、基板部14に形成された、前後方向に貫き、かつ上下方向に延びる窓孔14a内に、相対的に上下動可能に嵌合されている。これにより、ヘッドガード12は、係止部21に対して上下動可能に設けられている。係止部21は、全域にわたって前方からカバー部15に覆われている。係止部21は、背もたれ部11bにおける左右方向の中央部に設けられている。係止部21は、窪み部18より左右方向の内側に位置している。係止部21の上端部は、窪み部18より上方に位置し、係止部21の下端部は、窪み部18より下方に位置している。
【0029】
係止部21は、前後方向から見た正面視で上下方向に長い長方形状を呈する本体板部と、本体板部から前方に向けて突出した係止凸部25と、を備えている。係止凸部25における左右方向の両側面は、上方に向かうに従い、左右方向の外側に向けて延びる第1傾斜面25aと、上方に向かうに従い、左右方向の内側に向けて延びる第2傾斜面25bと、が、上下方向に交互に複数ずつ連ねられて構成されている。
図示の例では、係止凸部25は、前後方向から見た正面視で六角形状を呈する複数の枠体が、上下方向に連ねられて構成されている。なお、係止凸部25は、前後方向から見た正面視で、左右方向の両側面に、第1傾斜面25aおよび第2傾斜面25bが形成された、上下方向に長い中実の直方体状に形成されてもよい。
【0030】
ロックレバー22は、基板部14の前面とカバー部15の後面とにより前後方向に挟まれている。ロックレバー22は、基板部14の前面、およびカバー部15の後面それぞれの上端部同士の間に、前後方向に挟まれた把持部26と、把持部26の下方に設けられ、被係止部23の左右方向の外側に向けた移動を規制するロック部27と、把持部26とロック部27とを連結する連結部28と、を備え、基板部14およびカバー部15に対して上下動可能に設けられている。
【0031】
把持部26は、係止部21の上方に設けられ、係止部21を左右方向に跨いでいる。把持部26および係止部21それぞれの左右方向の中央部は、互いに一致している。把持部26の上端縁は、基板部14およびカバー部15の各上端縁より下方に位置している。把持部26に、前後方向から見た正面視で、左右方向に長い長方形状を呈する第3貫通孔26aが形成されている。第3貫通孔26aの上端縁は、第1貫通孔15aおよび第2貫通孔の各上端縁より下方で、かつ第1貫通孔15aおよび第2貫通孔の各下端縁より上方に位置している。これにより、第1貫通孔15aまたは第2貫通孔を通して第3貫通孔26a内に指を挿入し、第3貫通孔26aの上端縁を押し上げることで、ロックレバー22を、基板部14およびカバー部15に対して上方に移動させることが可能になっている。
【0032】
ロック部27、および連結部28は、係止部21を左右方向に挟む両側に設けられている。ロック部27は、連結部28の下端部に設けられている。なお、ロック部27は、連結部28における上下方向の中間部に設けられてもよい。ロック部27、および連結部28は、窪み部18より左右方向の内側に位置している。ロック部27は、窪み部18より下方に位置している。
【0033】
被係止部23は、基板部14の前面と、カバー部15の後面と、の間に、上下方向の移動が規制された状態で、左右方向に移動可能に設けられている。被係止部23が、基板部14、およびカバー部15に対して上下方向の移動が規制された状態で、ロック部27と、係止凸部25における左右方向の側面と、により左右方向に挟まれて固定されることによって、シート本体11の背もたれ部11bに固定されている係止凸部25に対して、基板部14およびカバー部15が上下方向に移動することが規制される。
【0034】
以上の構成において、
図3に示されるように、把持部26の第3貫通孔26aの上端縁を押し上げ、ロックレバー22を、基板部14およびカバー部15に対して上方に移動させると、ロック部27が、被係止部23から上方に離れる。
この状態で、ロックレバー22およびヘッドガード12を一体に、シート本体11に対して上昇させると、被係止部23が第1傾斜面25aを摺動することで、被係止部23が左右方向の外側に移動させられる。また、ロックレバー22およびヘッドガード12を一体に、シート本体11に対して下降させると、被係止部23が第2傾斜面25bを摺動することで、被係止部23が左右方向の外側に移動させられる。
そして、
図4に示されるように、ヘッドガード12を、シート本体11に対して所望の位置まで上下方向に移動させたときに、ロックレバー22を、基板部14およびカバー部15に対して下方に復元移動させると、ロック部27が、被係止部23を左右方向の内側に押込む。これにより、基板部14、およびカバー部15に対して上下方向の移動が規制されている被係止部23が、ロック部27と、係止凸部25における左右方向の側面と、により左右方向に挟まれて固定されることとなり、基板部14、およびカバー部15の、シート本体11に対する上下方向の位置が固定される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるチャイルドシート1によれば、基板部14の前面において、上下方向で互いに隣り合う挿通孔16と前後方向で対向する部分に、上下方向に沿う縦断面視で、後方に向けて窪む曲線状を呈する内面を備えた窪み部18が形成されている。
これにより、シートベルトSを、上下方向で隣り合う各挿通孔16に挿通する際に、カバー部15の前面側から一方の挿通孔16内にシートベルトSの一端部を挿通した後に、継続してカバー部15の前面側からシートベルトSを送り込めば、シートベルトSの一端部が、窪み部18の内面を摺動して曲げられながら他方の挿通孔16に導かれ、カバー部15の後面側から他方の挿通孔16内に挿通されて、カバー部15の前面から突出することとなる。
したがって、例えば、シートベルトSの持ち手を変えたり、挿通孔16がシート本体11より上方に位置するようにヘッドガード12を移動させたりしなくても、シートベルトSを、上下方向で隣り合う各挿通孔16に、カバー部15の後面と基板部14の前面との間を通して容易に挿通することが可能になり、例えばチャイルドシート1を分解等せずに、シートベルトSを容易に交換することもできる。
【0036】
挿通孔16が、調整機構13を覆うカバー部15に設けられているので、挿通孔16が、基板部14において、調整機構13およびカバー部15から左右方向に離れた部分に設けられている構成と比べて、シートベルトSのうち、上下方向で隣り合う各挿通孔16に挿通されている固定端を、チャイルドシート1に着座した幼児の肩の近くに容易に位置させることができる。
【0037】
上下方向で隣り合う各挿通孔16に、シートベルトSが、カバー部15の後面と基板部14の前面との間を通して一体に挿通されているので、シート本体11が、基板部14の後面に当接、若しくは近接する背もたれ部11bを有していても、シートベルトSの固定端と背もたれ部11bの前面との間に、基板部14を介在させることが可能になり、シート本体11に対するヘッドガード12の上下方向の位置を調整するときに、シートベルトSの固定端が背もたれ部11bの前面に摺接することがなく、この調整に必要な力を抑えることができる。
【0038】
カバー部15の後面における挿通孔16の開口周縁部に、第1面取り部16aが形成されているので、カバー部15の後面における挿通孔16の開口を広くすることができる。これにより、カバー部15および基板部14等の寸法誤差、並びに、カバー部15および基板部14の組立誤差等に起因して、上下方向で隣り合う各挿通孔16と、基板部14の窪み部18と、が前後方向で対向しにくくなるのを防ぐことができる。
【0039】
調整機構13およびカバー部15が、基板部14における左右方向の中央部に設けられているので、カバー部15に設けられた挿通孔16が、基板部14における左右方向の中央部に位置することとなり、シートベルトSの固定端を、チャイルドシート1に着座した幼児の肩の近くに確実に位置させることができる。
【0040】
窪み部18が、カバー部15の後面に当接、若しくは近接した突出部17の前面に形成されているので、シートベルトSを、上下方向で隣り合う各挿通孔16に挿通する際、および挿通した状態で、窪み部18から外れにくくすることができる。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
シート本体11は、背もたれ部11bを有しなくてもよい。
上下方向で隣り合う各挿通孔16は、カバー部15に、1組、若しくは3組以上設けられてもよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 チャイルドシート
11 シート本体
12 ヘッドガード
13 調整機構
14 基板部
15 カバー部
16 挿通孔
16a 面取り部(第1面取り部)
17 突出部
18 窪み部
22 ロックレバー
23 被係止部
S シートベルト