(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】干渉計及び光学機器
(51)【国際特許分類】
G01J 9/02 20060101AFI20230524BHJP
G01J 3/45 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
G01J9/02
G01J3/45
(21)【出願番号】P 2020211727
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】山田 伸秀
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-043984(JP,A)
【文献】特開平09-033368(JP,A)
【文献】特開昭59-048716(JP,A)
【文献】特表2019-526044(JP,A)
【文献】特開2010-151572(JP,A)
【文献】特開2000-146525(JP,A)
【文献】特開平07-190714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 9/00-9/04
G01J 3/00-3/52
G01B 9/02-9/029
G02B 5/04-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計であって、
前記干渉計に入射した被測定光のP波及びS波のそれぞれを第1光路及び第2光路に分波し、かつ前記第1光路及び前記第2光路に分波された前記被測定光を合波する第1光学部品と、
前記第1光路に配置される第2光学部品と、
前記第1光学部品において合波された前記被測定光の前記P波及び前記S波を分波する第3光学部品と、
前記第3光学部品で分波された前記P波及び前記S波をそれぞれ検出するP波検出器及びS波検出器と、
を備え、
前記第2光学部品は、前記被測定光の伝播方向を変化させ、かつ前記P波と前記S波との間に位相差を与える光学面を有する、
ガラス材料によって構成されるプリズムを含み、
前記第1光学部品、前記第2光学部品、及び前記第3光学部品は全て一体化されている、
干渉計。
【請求項2】
前記第2光学部品の前記光学面は反射面を含む、
請求項
1に記載の干渉計。
【請求項3】
前記反射面は、前記第1光学部品で分波された前記被測定光が全反射により反射する第1反射面と、前記第1反射面で反射した前記被測定光が前記第1光学部品に向けて全反射によりさらに反射する第2反射面と、を含む、
請求項
2に記載の干渉計。
【請求項4】
前記第1反射面及び前記第2反射面のそれぞれにおいて、前記位相差は45°である、
請求項
3に記載の干渉計。
【請求項5】
前記第1反射面及び前記第2反射面のそれぞれにおいて、前記被測定光の入射角及び反射角のそれぞれは45°である、
請求項
3又は4に記載の干渉計。
【請求項6】
前記第1光学部品は、前記P波及び前記S波のそれぞれを前記第1光路及び前記第2光路に分波する第1無偏光ビームスプリッタと、前記第1光路及び前記第2光路に分波された前記被測定光を合波する第2無偏光ビームスプリッタと、を含む、
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項7】
前記第3光学部品は、第1偏光ビームスプリッタと第2偏光ビームスプリッタとを含み、
前記P波検出器は、前記第1偏光ビームスプリッタにより分波された前記P波を検出する第1検出器と、前記第2偏光ビームスプリッタにより分波された前記P波を検出する第3検出器と、を含み、
前記S波検出器は、前記第1偏光ビームスプリッタにより分波された前記S波を検出する第2検出器と、前記第2偏光ビームスプリッタにより分波された前記S波を検出する第4検出器と、を含む、
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の干渉計。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の干渉計を備える光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、干渉計及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定光の波長測定に関する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイケルソン型干渉計を用いて入力光の波長の変動量を測定する光波長測定装置が開示されている。例えば、特許文献2には、マッハツェンダー型干渉計を用いて波長可変光源の波長変化を高確度及び高安定に検出できる波長モニタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-202203号公報
【文献】特開2004-055775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマイケルソン型干渉計及びマッハツェンダー型干渉計内では、被測定光の偏光状態を変化させる波長板と、被測定光の伝播方向を変化させるミラーとは、異なる光学素子として被測定光の光路中で互いに離間して配置されていた。このような従来の干渉計では、光学系の構成が複雑になるという問題があった。結果として、従来の干渉計では、光学系を組み立てて被測定光の干渉を確実に得るための作業負荷が大きかった。
【0006】
加えて、波長板は、水晶などの複屈折結晶によって構成される。このような場合、ゼロオーダの比較的広波長帯域の波長板であっても波長依存性が大きく、例えば100nmを超える広波長帯域で使用することは困難であった。広波長帯域で使用するためには、位相差の補正が必要であった。その結果、干渉計の誤差が大きくなったり、干渉計からの干渉信号に対する演算処理の負荷が大きくなったりしていた。
【0007】
本開示は、光学系の構成が単純化され、かつ広波長帯域で使用可能な干渉計及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係る干渉計は、前記干渉計に入射した被測定光のP波及びS波のそれぞれを第1光路及び第2光路に分波し、かつ前記第1光路及び前記第2光路に分波された前記被測定光を合波する第1光学部品と、前記第1光路に配置される第2光学部品と、前記第1光学部品において合波された前記被測定光の前記P波及び前記S波を分波する第3光学部品と、前記第3光学部品で分波された前記P波及び前記S波をそれぞれ検出するP波検出器及びS波検出器と、を備え、前記第2光学部品は、前記被測定光の伝播方向を変化させ、かつ前記P波と前記S波との間に位相差を与える光学面を有する。
【0009】
これにより、干渉計及び光学機器では、光学系の構成が単純化される。例えば、第2光学部品の光学面は、被測定光の伝播方向を変化させつつ、被測定光のP波とS波との間に位相差を与える。これにより、被測定光の偏光状態を変化させる機能と、被測定光の伝播方向を変化させる機能とが、異なる光学素子によって実現される従来のマイケルソン型干渉計及びマッハツェンダー型干渉計と比較して、干渉計内の光学系の構成が単純化される。例えば、干渉計内の光学系における部品点数が低減する。したがって、干渉計における光学系を安価に構成することが可能である。加えて、干渉計では、光学系を組み立てて被測定光の干渉を確実に得るための作業負荷が低減する。
【0010】
加えて、従来の干渉計のように水晶などの複屈折結晶により構成される波長板を用いずに、第2光学部品の光学面がP波とS波との間に位相差を与えることで、干渉計及び光学機器は、広波長帯域で使用可能である。すなわち、干渉計は、広い波長帯域で安定した動作を実現可能である。干渉計は、例えば100nmを超える広波長帯域でも容易に使用可能である。これにより、位相差を補正する必要性も低減する。結果として、干渉計の誤差が小さくなり、干渉計からの干渉信号に対する演算処理の負荷も小さくなる。
【0011】
一実施形態における干渉計では、前記第1光学部品、前記第2光学部品、及び前記第3光学部品は全て一体化されていてもよい。
【0012】
これにより、各光学素子が互いに離間して配置されている従来のマイケルソン型干渉計及びマッハツェンダー型干渉計と比較して干渉計の光学系の構成がさらに単純化される。加えて、被測定光が入射する第1光学部品の入射面及び被測定光が射出する第3光学部品の2つの射出面を除けば、各光学部品において周辺雰囲気との境界が存在しない。すなわち、隣接する光学部品同士の全ての接合部において、例えばガラス硝材からなる材料が互いに密着する。これにより、接合部における屈折率整合が向上し、被測定光の反射損失及び反射による迷光の影響が抑制される。例えば、多重反射による迷光の発生で干渉信号に雑音が付加されるような問題が抑制される。結果として、全ての接合部において無反射コーティング及び低反射コーティングを形成する必要がない。これにより、干渉計における光学系を安価に構成することが可能である。
【0013】
一実施形態における干渉計では、前記第2光学部品の前記光学面は反射面を含んでもよい。これにより、当該反射面における被測定光の反射によって被測定光の伝播方向を変化させつつ、被測定光のP波とS波との間に位相差を与えることができる。
【0014】
一実施形態における干渉計では、前記反射面は、前記第1光学部品で分波された前記被測定光が全反射により反射する第1反射面と、前記第1反射面で反射した前記被測定光が前記第1光学部品に向けて全反射によりさらに反射する第2反射面と、を含んでもよい。
【0015】
これにより、干渉計では、第1光路に分波された被測定光の第1反射面及び第2反射面における透過損失が略ゼロとなる。干渉計は、このような透過損失を抑制しつつ、被測定光に対する折り返しの第1光路を形成可能である。
【0016】
一実施形態における干渉計では、前記第1反射面及び前記第2反射面のそれぞれにおいて、前記位相差は45°であってもよい。
【0017】
これにより、第2光学部品において合計で90°の位相差が被測定光のP波とS波との間に生じる。結果として、光源部の出力光の波長の変化に応じて、90°位相が異なるA相及びB相の正弦波形を有する2つの干渉信号が検出器から得られる。したがって、モータの回転角を検出するための角度エンコーダと同様の信号を得ることができ、光源部の駆動機構へのフィードバック制御に基づく光源部の波長制御などを容易に実行することができる。例えば、光源部の駆動機構を構成するモータのエンコーダ信号処理回路がそのまま使用可能であり、干渉計からの干渉信号に基づいて直接的にモータが駆動可能である。
【0018】
一実施形態における干渉計では、前記第1反射面及び前記第2反射面のそれぞれにおいて、前記被測定光の入射角及び反射角のそれぞれは45°であってもよい。これにより、干渉計は、被測定光が直角に折り返す第1光路を形成可能である。
【0019】
一実施形態における干渉計では、前記第2光学部品は、ガラス材料によって構成されるプリズムを含んでもよい。これにより、被測定光の偏光状態を変化させる光学素子として従来の干渉計で用いられる、水晶などの複屈折結晶により構成される波長板と比較して、光学部品が安価になる。したがって、干渉計における光学系を安価に構成することが可能である。加えて、干渉計は、広い波長帯域で安定した動作を実現可能である。例えば、干渉計は、100nmを超える広波長帯域でも容易に使用可能である。
【0020】
一実施形態における干渉計では、前記第1光学部品は、前記P波及び前記S波のそれぞれを前記第1光路及び前記第2光路に分波する第1無偏光ビームスプリッタと、前記第1光路及び前記第2光路に分波された前記被測定光を合波する第2無偏光ビームスプリッタと、を含んでもよい。
【0021】
これにより、干渉計に入射した被測定光を例えば50:50で均等に分波して再度合波することが可能である。第1光学部品は、被測定光の偏光状態に関係なく、P波及びS波のそれぞれを例えば50:50で均等に分波して再度合成することが可能である。
【0022】
一実施形態における干渉計では、前記第3光学部品は、第1偏光ビームスプリッタと第2偏光ビームスプリッタとを含み、前記P波検出器は、前記第1偏光ビームスプリッタにより分波された前記P波を検出する第1検出器と、前記第2偏光ビームスプリッタにより分波された前記P波を検出する第3検出器と、を含み、前記S波検出器は、前記第1偏光ビームスプリッタにより分波された前記S波を検出する第2検出器と、前記第2偏光ビームスプリッタにより分波された前記S波を検出する第4検出器と、を含んでもよい。
【0023】
これにより、光学機器の制御部は、4つの干渉信号を加算することで被測定光の入射パワーを容易に算出することができる。光学機器の制御部は、被測定光の入射パワーの変化に応じて正弦波状の干渉信号に対し正規化処理を精度良く実行できる。このように、干渉計は、被測定光の入射パワーの変化に対する干渉信号の補正に利用可能である。
【0024】
幾つかの実施形態に係る光学機器は、上記のいずれかの干渉計を備える。これにより、光学機器は、上記と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、光学系の構成が単純化され、かつ広波長帯域で使用可能な干渉計及び光学機器を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の一実施形態に係る光学機器の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の光学機器の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の干渉計の第1実施形態を示す模式図である。
【
図4】
図2の検出器によって出力される干渉信号の一例を示すグラフ図である。
【
図5】
図4の2つの干渉信号に基づいて得られるリサージュ図形である。
【
図6】
図3の干渉計の効果を説明するためのグラフ図である。
【
図7】
図1の干渉計の第2実施形態を示す模式図である。
【
図8】
図1の干渉計の第3実施形態を示す模式図である。
【
図9】
図1の干渉計の第4実施形態を示す模式図である。
【
図10】
図1の干渉計の第5実施形態を示す模式図である。
【
図11】
図10の干渉計に基づいて得られる、
図5に対応するリサージュ図形である。
【
図12】
図1の干渉計の第6実施形態を示す模式図である。
【
図13】
図12の検出器によって出力される干渉信号の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0028】
例えば特許文献1に開示されているようなマイケルソン型干渉計は、被測定光としての入力光を、ビームスプリッタによって2つに分波し、同一のビームスプリッタによって再び合波する2光束干渉計により構成される。このとき、被測定光は、ビームスプリッタにより分岐する一方の光路に配置された光学素子によって偏光状態を変化させる。一方の光路を伝播し偏光状態が変化した被測定光は、他方の光路を伝播した被測定光と互いに異なる偏光状態で合波される。このような合波光の偏光状態を検出することで被測定光の波長が求められる。
【0029】
例えば、2光束干渉計の一方の光路に配置されている上記の光学素子が1/8波長板を含むとき、被測定光は、一方の光路において往復により1/8波長板を2回通過する。これにより、被測定光のP波とS波との間にλ/4の位相差が生じる。
【0030】
例えば、2光束干渉計の一方の光路に配置されている上記の光学素子が1/4波長板を含むとき、被測定光は、一方の光路において往路及び復路の一方でのみ1/4波長板を1回通過する。これにより、被測定光のP波とS波との間にλ/4の位相差が生じる。
【0031】
例えば特許文献2に開示されているようなマッハツェンダー型干渉計は、被測定光としての入力光を、一のビームスプリッタによって2つに分波し、他のビームスプリッタによって再び合波する2光束干渉計により構成される。マッハツェンダー型干渉計の構成及び機能に関する他の説明は、マイケルソン型干渉計に関する上記の説明と同様である。
【0032】
以上のようなマイケルソン型干渉計及びマッハツェンダー型干渉計では、光学系の構成が複雑になるという上記の問題点に加えて、以下のような問題点があった。
【0033】
例えば、一方の光路に配置され、被測定光の偏光状態を変化させる光学素子には、水晶などの複屈折結晶によって構成される1/8波長板、1/4波長板、又は任意の固定波長板が用いられていた。このような光学素子は高価であった。加えて、ゼロオーダの比較的広波長帯域の波長板であっても波長依存性が大きく、例えば100nmを超える広波長帯域で使用することは困難であった。例えば100nmを超える広波長帯域で使用するためには、位相差の補正が必要であった。
【0034】
特許文献1及び2に開示されているような構成では、光学部品ごとに周辺雰囲気との境界が存在していた。当該境界での反射損失及び反射による迷光の影響を低減させるために、高価な無反射コーティング又は低反射コーティングを光学部品の表面に対して行う必要があった。
【0035】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、光学系の構成が単純化される干渉計及び光学機器を提供することを目的とする。干渉計における光学系を安価に構成することが可能である干渉計及び光学機器を提供することを目的とする。例えば100nmを超える広波長帯域でも容易に使用可能な干渉計及び光学機器を提供することを目的とする。
【0036】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0037】
図1は、本開示の一実施形態に係る光学機器1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照しながら、本開示の一実施形態に係る光学機器1の構成の一部について主に説明する。光学機器1は、干渉計10と、光源部20と、駆動部30と、制御部70と、を構成の一部として有する。光学機器1の一部を構成する干渉計10の構成及び機能については、主に
図3乃至
図6を参照しながら後述する。
【0038】
光学機器1は、例えば、光源部20から出力される出力光の波長を干渉計10に基づいて制御することが可能な任意の機器を含む。例えば、光学機器1は、波長可変光源などのレーザー機器を含む。例えば、光学機器1は、光通信システム、LiDAR(Light Detection And Ranging)装置、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システム、及びOFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry)などに用いられる波長可変光源を含む。
【0039】
このとき、干渉計10は、波長モニタ又は波長ロッカーとして、光源部20からの出力光の波長をモニタ又は制御するために光学機器1に内蔵される。例えば、干渉計10は、光源部20からの出力光の波長を光学機器1において掃引するための制御にも利用可能である。
【0040】
光源部20は、例えば半導体レーザーなどの任意の光源を含む。光源部20は、駆動部30によって駆動される。例えば、光源部20が半導体レーザーを含む場合、当該半導体レーザーは、駆動部30から出力される注入電流によって駆動される。例えば、光源部20は、ミラーと当該ミラーを可動にするモータなどの駆動機構とをさらに含んでもよい。光源部20は、駆動部30による駆動機構の制御に基づいてミラーを可動にすることで波長が可変の出力光を出力してもよい。
【0041】
駆動部30は、例えば制御部70から出力される制御信号に基づいて光源部20を駆動可能な任意のモジュールを含む。例えば、光源部20が半導体レーザーを含む場合、駆動部30は、当該半導体レーザーを駆動するために注入電流を出力するレーザーコントローラを含む。
【0042】
制御部70は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部70は、光学機器1を構成する各構成部と通信可能に接続され、光学機器1全体の動作を制御する。
【0043】
光源部20からの出力光は、ビームスプリッタ1aによって2つの光路に分波される。一方の光路に分波された出力光は、光学機器1の外部に射出する。他方の光路に分波された出力光は、光学機器1の内部に配置されている干渉計10に被測定光として入射する。干渉計10は、後述する干渉の原理において示すとおり、出力光の波長の変化に応じて得られる90°位相が異なるA相及びB相の正弦波形を有する2つの干渉信号を制御部70に出力する。
【0044】
制御部70は、干渉計10から出力されるこれらの干渉信号を取得する。制御部70は、取得された干渉信号に基づいて、駆動部30に制御信号を出力する。駆動部30は、制御部70から出力される制御信号に基づいて光源部20を駆動する。このように、干渉計10は、光源部20からの出力光の波長変化を検出して光源部20をフィードバック制御するために利用することも可能である。
【0045】
図2は、
図1の光学機器1の概略構成を示すブロック図である。
図2を参照しながら、本開示の一実施形態に係る光学機器1のさらなる構成について主に説明する。光学機器1は、干渉計10、光源部20、駆動部30、及び制御部70に加えて、記憶部40と、入力部50と、出力部60と、を有する。干渉計10は、検出器11を有する。
【0046】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部40は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部40は、光学機器1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部40は、検出器11によって検出された干渉信号の情報を記憶する。例えば、記憶部40は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶する。記憶部40は、光学機器1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。
【0047】
入力部50は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部50は、物理キー、静電容量キー、出力部60のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、及び音声入力を受け付けるマイクなどを含むが、これらに限定されない。
【0048】
出力部60は、ユーザに対して情報を出力する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部60は、情報を画像で出力するディスプレイ、及び情報を音声で出力するスピーカなどを含むが、これらに限定されない。
【0049】
例えば、制御部70は、検出器11によって検出された干渉信号の情報を、記憶部40に格納する。例えば、制御部70は、取得された干渉信号の情報に基づいて被測定光の波長変化を算出する。例えば、制御部70は、算出された被測定光の波長変化に基づく光源部20からの出力光の現在の波長を、出力部60によりユーザに対して出力する。
【0050】
(干渉計10の第1実施形態)
図3は、
図1の干渉計10の第1実施形態を示す模式図である。
図3を参照しながら、第1実施形態に係る干渉計10の構成及び機能について主に説明する。干渉計10は、検出器11に加えて、第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14を有する。
図3において、被測定光は、左側から右側に向けて干渉計10に入射し、干渉計10内の光学系を伝播する。
【0051】
第1光学部品12は、干渉計10に入射した被測定光のP波及びS波のそれぞれを第1光路R1及び第2光路R2に分波する。第1光学部品12は、第1光路R1及び第2光路R2に分波された被測定光を合波する。
【0052】
例えば、第1光学部品12は、第1無偏光ビームスプリッタ12aと、第2無偏光ビームスプリッタ12bと、を含む。第1無偏光ビームスプリッタ12aは、干渉計10に入射した被測定光のP波及びS波のそれぞれを第1光路R1及び第2光路R2に分波する。第1無偏光ビームスプリッタ12aは、50:50の割合で第1光路R1及び第2光路R2に被測定光を分波する。第2無偏光ビームスプリッタ12bは、第1光路R1及び第2光路R2に分波された被測定光を合波する。
【0053】
第2光学部品13は、例えば、ガラス材料によって構成されるプリズムを含む。第2光学部品13は、例えば、周囲が真空であるとした場合、屈折率1.5538のガラス硝材で形成されている45°直角プリズムを含む。第2光学部品13は、第1光路R1に配置される。第2光学部品13は、第1無偏光ビームスプリッタ12aにおいて分波され第1光路R1に沿って伝播する被測定光のP波及びS波を第2光学部品13の内部で導いて、第2無偏光ビームスプリッタ12bに向けて射出させる。
【0054】
第2光学部品13は、被測定光の伝播方向を第1光路R1において変化させ、かつ被測定光のP波とS波との間に位相差を与える光学面を有する。例えば、第2光学部品13の光学面は反射面を含む。例えば、第2光学部品13の反射面は、第1反射面13aと第2反射面13bとを含む。第1反射面13aでは、第1無偏光ビームスプリッタ12aで分波された被測定光が全反射により反射する。第2反射面13bでは、第1反射面13aで反射した被測定光が第2無偏光ビームスプリッタ12bに向けて全反射によりさらに反射する。
【0055】
第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれにおいて、被測定光の入射角及び反射角のそれぞれは例えば45°である。第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれにおいて、被測定光のP波とS波との間に与えられる位相差は例えば45°である。すなわち、第2光学部品13は、第1光路R1において、被測定光のP波とS波との間に例えば合計で90°の位相差を与える。
【0056】
第3光学部品14は、第1光学部品12の第2無偏光ビームスプリッタ12bにおいて合波された被測定光のP波及びS波を分波する。例えば、第3光学部品14は、偏光ビームスプリッタを含む。第3光学部品14は、被測定光のP波を透過させて後述するP波検出器11aに導く。第3光学部品14は、被測定光のS波を反射させて後述するS波検出器11bに導く。
【0057】
第1実施形態では、第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14は全て一体化されている。例えば、第1無偏光ビームスプリッタ12a、第2無偏光ビームスプリッタ12b、第2光学部品13、及び第3光学部品14は、隣接する光学部品同士の接合部におけるオプティカルコンタクトにより全て一体化されている。すなわち、全ての接合部において、屈折率整合剤としての接着剤が介在しない。加えて、全ての接合部において、無反射コーティング及び低反射コーティングが形成されない。一方で、被測定光が入射する第1光学部品12の入射面及び被測定光が射出する第3光学部品14の2つの射出面には、例えば、無反射コーティング又は低反射コーティングが形成されている。
【0058】
検出器11は、第3光学部品14によって導かれた被測定光を検出する。検出器11は、第3光学部品14で分波された被測定光のP波及びS波をそれぞれ検出するP波検出器11a及びS波検出器11bを含む。検出器11は、所定の受光感度を有する検出器11の波長帯域に被測定光の波長が含まれるように構成される。例えば、検出器11はフォトダイオードを含む。検出器11は、検出された干渉信号を、電気信号処理用回路を介して制御部70に出力する。このとき、検出器11から出力された干渉信号は、例えば電気信号処理用回路に含まれる任意の増幅回路によって電気的に増幅されてもよい。
【0059】
干渉計10に入射した被測定光は、第1無偏光ビームスプリッタ12a内部の光学面に対して45°傾いた直線偏光状態で当該光学面に入射する。被測定光は、パワー比1:1で透過光と反射光とに分波される。反射光は第1光路R1を伝播し、透過光は第2光路R2を伝播する。
【0060】
第1光路R1に分波された被測定光は、第2光学部品13の第1反射面13aで全反射により方向転換する。第1光路R1に分波された被測定光は、45°の入射角で第1反射面13aに入射する。このとき、被測定光は、第1反射面13aに対して45°傾いた直線偏光状態で第1反射面13aに入射する。被測定光は、第1反射面13aに対して偏光方向が平行であるP波と、第1反射面13aに対して偏光方向が垂直であるS波とに分けられる。被測定光のP波とS波との間のパワー比は1:1である。
【0061】
被測定光が第1反射面13aで全反射により反射するとき、被測定光のP波とS波との間に位相差が45°、すなわちπ/4=λ/8で生じる。より具体的には、被測定光のP波とS波とは第1反射面13aでの全反射により互いに異なる位相変化を受ける。第1反射面13aにおいて、被測定光のP波が受ける位相差をθp、被測定光のS波が受ける位相差をθsとすると、それらの位相変化は次式の関係を有する。
【0062】
【数1】
ここで、nは45°直角プリズム媒質の屈折率n
1と周囲の媒質の屈折率n
2との比でn=n
2/n
1である。φは第1反射面13aに対する被測定光の入射角である。上述したとおり、入射角φは45°である。このときの被測定光のP波及びS波の相対位相差θ=θ
p-θ
sは上式より次式の関係を有する。
【数2】
【0063】
相対位相差θに関するこのような関係式に基づいて、相対位相差θが45°、すなわちπ/4=λ/8となる屈折率n1の硝材が45°直角プリズムの硝材として選択される。例えば、上述したとおり、屈折率n1が1.5538であるガラス硝材が45°直角プリズムの媒質として選択される。
【0064】
45°直角プリズムの第1反射面13aで反射した被測定光は、第2反射面13bに入射する。このとき、被測定光のP波及びS波は、第1反射面13aと同一の原理によって上式による位相差を受ける。結果として、45°直角プリズムで折り返した被測定光のP波とS波との間の位相差は合計で90°、すなわちπ/2=λ/4となる。したがって、直線偏光状態で45°直角プリズムに入射した被測定光は、円偏光状態で45°直角プリズムから射出する。
【0065】
第1無偏光ビームスプリッタ12aを透過して第2光路R2を直進した被測定光は45°傾いた直線偏光の光波である。第1無偏光ビームスプリッタ12aで反射して45°直角プリズムによりP波とS波との間に90°の位相差が付与されて折り返した被測定光は円偏光の光波である。これら2つの光波は、第2無偏光ビームスプリッタ12bで合波される。
【0066】
第2無偏光ビームスプリッタ12bで合波された被測定光は、偏光ビームスプリッタとしての第3光学部品14に入射し、当該偏光ビームスプリッタによってP波とS波とに分波される。偏光ビームスプリッタによって分波されたP波は、P波検出器11aによって検出される。偏光ビームスプリッタによって分波されたS波は、S波検出器11bによって検出される。
【0067】
被測定光のP波及びS波が同位相で第2光路R2を直進してきた光波と90°の位相差を付与されて第1光路R1を伝播してきた光波とが第2無偏光ビームスプリッタ12bで混合されることで、分波されたP波及びS波に基づく干渉信号は互いに90°の位相差を有する。例えば、P波検出器11a及びS波検出器11bからそれぞれ出力される干渉信号の相対信号強度I
p及びI
sは、干渉計10に入射したときの被測定光の入射パワーを1とし、光路上の損失を無視して、次式で表される。
【数3】
これらの式は、θ
p-θ
s=π/4であるので、以下のように書き換えられる。
【0068】
【数4】
ここで、kは波数であり、k=2πn
1/λで表される。λは被測定光の波長である。dは、第1無偏光ビームスプリッタ12aにおける被測定光の反射点から45°直角プリズムにおける被測定光の反射点までのy方向に沿った距離である。第2無偏光ビームスプリッタ12bによって被測定光のパワーの半分がロスするので、相対信号強度I
p及びI
sのそれぞれにおいて干渉計10に入射したときの被測定光の入射パワー1に対し1/4の係数が乗算されている。
【0069】
反射光路である第1光路R1と直進光路である第2光路R2との間で、距離dにより被測定光の光路差2dが生じる。これにより、第1光路R1を伝播した被測定光と第2光路R2を伝播した被測定光との間で、光路差2dに基づく位相差δが生じる。検出器11は、位相差δに基づく干渉信号を出力する。位相差δは以下の式により表される。
【数5】
ここでは、2つの第1無偏光ビームスプリッタ12a及び第2無偏光ビームスプリッタ12bの構成及び媒質が互いに同一であると仮定している。
【0070】
図4は、
図2の検出器11によって出力される干渉信号の一例を示すグラフ図である。
図5は、
図4の2つの干渉信号に基づいて得られるリサージュ図形である。
【0071】
距離dが一定のまま被測定光の波長λが変化すると位相差δも変化する。したがって、P波検出器11a及びS波検出器11bのそれぞれから出力される干渉信号の強度が正弦波状に変化する。このとき、P波検出器11aからの干渉信号とS波検出器11bからの干渉信号とは、互いに90°の位相差を有する。一方で、これらの干渉信号は、互いに同一の周波数及び振幅を有している。したがって、2つの干渉信号に基づくリサージュ図形は真円となる。
【0072】
図5に示すリサージュ図形の円の角度δと被測定光の波長とを関連付けることで被測定光の波長が算出可能である。例えば、光学機器1の制御部70は、被測定光、すなわち光源部20からの出力光の波長の相対変化を算出可能である。制御部70は、出力光の初期の波長からの相対変化を算出することで、出力光の現在の波長を算出することが可能である。例えば、制御部70は、P波検出器11aからの干渉信号をA相、S波検出器11bからの干渉信号をB相として検出器11から2つの干渉信号を取得することで、モータの回転角を検出するための角度エンコーダと同様の原理で位相差δから被測定光の波長を算出することができる。このとき、干渉計10は、いわば光波長エンコーダとして実現される。
【0073】
以上のような第1実施形態に係る干渉計10及び光学機器1によれば、光学系の構成が単純化される。以下では、主に干渉計10について効果の説明を行うが、そのような干渉計10を有する光学機器1の効果についても同様の説明が当てはまる。
【0074】
例えば、第2光学部品13の光学面は、被測定光の伝播方向を変化させつつ、被測定光のP波とS波との間に位相差を与える。これにより、被測定光の偏光状態を変化させる機能と、被測定光の伝播方向を変化させる機能とが、異なる光学素子によって実現される従来のマイケルソン型干渉計及びマッハツェンダー型干渉計と比較して、干渉計10内の光学系の構成が単純化される。例えば、干渉計10内の光学系における部品点数が低減する。したがって、干渉計10における光学系を安価に構成することが可能である。加えて、干渉計10では、光学系を組み立てて被測定光の干渉を確実に得るための作業負荷が低減する。
【0075】
加えて、従来の干渉計のように水晶などの複屈折結晶により構成される波長板を用いずに、第2光学部品13の光学面がP波とS波との間に位相差を与えることで、干渉計10は、広波長帯域で使用可能である。すなわち、干渉計10は、広い波長帯域で安定した動作を実現可能である。例えば、干渉計10は、100nmを超える広波長帯域でも容易に使用可能である。これにより、位相差を補正する必要性も低減する。結果として、干渉計10の誤差が小さくなり、干渉計10からの干渉信号に対する演算処理の負荷も小さくなる。
【0076】
第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14が全て一体化されていることで、各光学素子が互いに離間して配置されている従来のマイケルソン型干渉計及びマッハツェンダー型干渉計と比較して干渉計10の光学系の構成がさらに単純化される。加えて、被測定光が入射する第1光学部品12の入射面及び被測定光が射出する第3光学部品14の2つの射出面を除けば、各光学部品において周辺雰囲気との境界が存在しない。すなわち、隣接する光学部品同士の全ての接合部において、例えばガラス硝材からなる材料が互いに密着する。これにより、接合部における屈折率整合が向上し、被測定光の反射損失及び反射による迷光の影響が抑制される。例えば、多重反射による迷光の発生で干渉信号に雑音が付加されるような問題が抑制される。結果として、全ての接合部において無反射コーティング及び低反射コーティングを形成する必要がない。これにより、干渉計10における光学系を安価に構成することが可能である。
【0077】
第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14がオプティカルコンタクトにより全て一体化されていることで、全ての接合部において屈折率整合剤としての接着剤を塗布する必要がなく、干渉計10の光学系の構成がさらに単純化される。加えて、このような接着剤に関するコストが削減されるので、干渉計10における光学系を安価に構成することが可能である。
【0078】
干渉計10は、第2光学部品13の光学面が反射面を含むことで、当該反射面における被測定光の反射によって被測定光の伝播方向を変化させつつ、被測定光のP波とS波との間に位相差を与えることができる。
【0079】
反射面は、第1光学部品12で分波された被測定光が全反射により反射する第1反射面13aと、第1反射面13aで反射した被測定光が第1光学部品12に向けて全反射によりさらに反射する第2反射面13bと、を含む。これにより、干渉計10では、第1光路R1に分波された被測定光の第1反射面13a及び第2反射面13bにおける透過損失が略ゼロとなる。干渉計10は、このような透過損失を抑制しつつ、被測定光に対する折り返しの第1光路R1を形成可能である。
【0080】
第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれにおいて、被測定光のP波とS波との間に与えられる位相差が45°であることで、第2光学部品13において合計で90°の位相差が被測定光のP波とS波との間に生じる。結果として、光源部20の出力光の波長の変化に応じて、90°位相が異なるA相及びB相の正弦波形を有する2つの干渉信号が検出器11から得られる。したがって、モータの回転角を検出するための角度エンコーダと同様の信号を得ることができ、光源部20の駆動機構へのフィードバック制御に基づく光源部20の波長制御などを容易に実行することができる。例えば、光源部20の駆動機構を構成するモータのエンコーダ信号処理回路がそのまま使用可能であり、干渉計10からの干渉信号に基づいて直接的にモータが駆動可能である。
【0081】
第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれにおいて、被測定光の入射角及び反射角のそれぞれが45°であることで、干渉計10は、被測定光が直角に折り返す第1光路R1を形成可能である。
【0082】
第2光学部品13がガラス材料によって構成されるプリズムを含むことで、被測定光の偏光状態を変化させる光学素子として従来の干渉計で用いられる、水晶などの複屈折結晶により構成される波長板と比較して、光学部品が安価になる。したがって、干渉計10における光学系を安価に構成することが可能である。
【0083】
図6は、
図3の干渉計10の効果を説明するためのグラフ図である。
図6は、水晶などの複屈折結晶により構成され、1550nmの波長で設計された1/4波長板とガラス材料によって構成されるプリズムを含む第2光学部品13との間で、補正なしに使用可能な波長帯域を比較したグラフ図である。
図6において、破線グラフは、水晶などの複屈折結晶により構成される1/4波長板のリタデーションを示す。実線グラフは、ガラス材料によって構成されるプリズムを含む第2光学部品13のリタデーションを示す。
【0084】
水晶による1/4波長板の波長特性では、被測定光の波長が変化すると位相差が90°から大きく変化する。一方で、第2光学部品13を用いると、波長特性が被測定光の波長の変化に対して略一定となる。例えば、第2光学部品13の波長特性では、被測定光の波長が変化しても位相差が略90°に維持される。以上のように、干渉計10において全反射を用いた折り返し用の第2光学部品13では、水晶による1/4波長板と比較して遅相量、すなわちリタデーションの波長依存性が極めて小さい。したがって、干渉計10は、広い波長帯域で安定した動作を実現可能である。例えば、干渉計10は、100nmを超える広波長帯域でも容易に使用可能である。
【0085】
第1光学部品12は、第1無偏光ビームスプリッタ12aと第2無偏光ビームスプリッタ12bとを含むことで、干渉計10に入射した被測定光を例えば50:50で均等に分波して再度合波することが可能である。第1光学部品12は、被測定光の偏光状態に関係なく、P波及びS波のそれぞれを例えば50:50で均等に分波して再度合成することが可能である。
【0086】
上記のとおり、位相差δは距離dに依存する。これにより、第1光学部品12及び第2光学部品13の大きさを適切に設計することで、リサージュの1周期、すなわち正弦波状に変化する干渉信号の1周期に対応する波長幅が容易に設計可能である。
【0087】
(干渉計10の第2実施形態)
図7は、
図1の干渉計10の第2実施形態を示す模式図である。
図7を参照しながら、第2実施形態に係る干渉計10の構成及び機能について主に説明する。
【0088】
第2実施形態に係る干渉計10は、第1光学部品12が第1無偏光ビームスプリッタ12a及び第2無偏光ビームスプリッタ12bを含まず、単一の光学部品として構成されている点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第2実施形態に係る干渉計10においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0089】
第2実施形態では、第1光学部品12は、第1光学面12c及び第2光学面12dを有する単一の光学部品として構成されている。例えば、第1光学部品12は、2つの無偏光ビームスプリッタを含むのではなく、プリズムを組み合わせた単一のアセンブリとして構成されている。
【0090】
第1光学面12c及び第2光学面12dには、50:50の反射コーティング膜が形成されている。反射コーティング膜は、誘電体多層膜若しくは金属膜、又はこれらの組み合わせによるハイブリッド膜である。第1光学部品12の第1光学面12cは、干渉計10に入射した被測定光のP波及びS波のそれぞれを第1光路R1及び第2光路R2に分波する。第1光学部品12の第2光学面12dは、第1光路R1及び第2光路R2に分波された被測定光を合波する。
【0091】
第2実施形態に係る干渉計10は、第1光学部品12が単一の光学部品として構成されていることで、第1実施形態と比較して部品点数を低減可能である。したがって、第1実施形態と比較して、干渉計10内の光学系の構成がさらに単純化される。
【0092】
(干渉計10の第3実施形態)
図8は、
図1の干渉計10の第3実施形態を示す模式図である。
図8を参照しながら、第3実施形態に係る干渉計10の構成及び機能について主に説明する。
【0093】
第3実施形態に係る干渉計10は、第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14が光路に沿って互いに離間している点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第3実施形態に係る干渉計10においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0094】
第3実施形態に係る干渉計10では、第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14は、個々の独立した光学部品として構成される。第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14が光路に沿って互いに離間していることで、上述した位相差δが以下の式により表される。
【数6】
ここで、第1光学部品12と第2光学部品13との間で媒質が異なる場合、第1光学部品12の媒質の屈折率をn
a、第2光学部品13の媒質の屈折率をn
bとした。l
aは、第1光学部品12のy方向の厚さである。Lは、2つの第1無偏光ビームスプリッタ12aと第2無偏光ビームスプリッタ12bとの間の中心間隔である。l
bは、第2光学部品13のy方向の厚さである。
【0095】
第3実施形態に係る干渉計10では、各光学部品と空気、真空、及びパージされた窒素などを含む周囲雰囲気との間の境界面に無反射コーティング又は低反射コーティングが必要に応じて形成されている。
【0096】
第3実施形態に係る干渉計10では、第1実施形態と同様に第2光学部品13がガラス材料によって構成されるプリズムを含むことで、水晶などにより構成される従来の波長板と比較して、光学部品が安価になる。したがって、干渉計10における光学系を安価に構成することが可能である。加えて、第1実施形態と同様に、干渉計10は、広い波長帯域で安定した動作を実現可能である。例えば、干渉計10は、100nmを超える広波長帯域でも容易に使用可能である。
【0097】
上記のとおり、位相差δは距離d、中心間隔L、及びy方向の厚さlbに依存する。これにより、第1光学部品12及び第2光学部品13の部品間隔及び大きさを適切に設計することで、リサージュの1周期、すなわち正弦波状に変化する干渉信号の1周期に対応する波長幅が容易に設計可能である。
【0098】
(干渉計10の第4実施形態)
図9は、
図1の干渉計10の第4実施形態を示す模式図である。
図9を参照しながら、第4実施形態に係る干渉計10の構成及び機能について主に説明する。
【0099】
第4実施形態に係る干渉計10は、一体化した第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14の前段に第4光学部品15がさらに配置されている点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第4実施形態に係る干渉計10においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0100】
第4光学部品15は、干渉計10の入力側に配置されている。第4光学部品15は、例えば偏波コントローラなどの偏光制御器を含む。偏光制御器は、1/2波長板及び1/4波長板によって構成されてもよいし、45°方向に配置された偏光子によって構成されてもよい。
【0101】
第4実施形態に係る干渉計10は、第4光学部品15を付加的に有することで、例えば被測定光が光ファイバなどから射出して被測定光の偏光状態が不定の場合であっても、一体化した各光学部品に入射する前に被測定光の偏光状態を45°傾いた直線偏光状態に調整することが可能である。
【0102】
(干渉計10の第5実施形態)
図10は、
図1の干渉計10の第5実施形態を示す模式図である。
図11は、
図10の干渉計10に基づいて得られる、
図5に対応するリサージュ図形である。
図10及び
図11を参照しながら、第5実施形態に係る干渉計10の構成及び機能について主に説明する。
【0103】
第5実施形態に係る干渉計10は、第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14に加えて、その前段に第5光学部品16がさらに一体化して配置されている点と、検出器11が入射光検出器11cをさらに含む点とで第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第5実施形態に係る干渉計10においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0104】
第5光学部品16は、干渉計10の入力側に配置されている。第5光学部品16は、例えば無偏光ビームスプリッタを含む。第5光学部品16は、干渉計10に入射した被測定光を第1光学部品12及び入射光検出器11cのそれぞれに向けて分波する。例えば、第5光学部品16は、50:50の割合で被測定光を分波する。
【0105】
第5実施形態に係る干渉計10では、入射側に第5光学部品16が配置されて、入射光検出器11cにより被測定光の入射パワーがモニタされることで、
図11に示すリサージュの中心Cが算出可能である。例えば、3つの無偏光ビームスプリッタが全て50:50の分波比を有する場合、入射光検出器11cから出力される受光信号の信号強度はリサージュの中心Cの4倍となる。したがって、補正係数R=1/4としてリサージュの中心Cが算出可能である。
【0106】
第5実施形態に係る干渉計10により、光学機器1の制御部70は、被測定光の入射パワーの変化に応じて正弦波状の干渉信号に対し正規化処理を精度良く実行できる。このように、干渉計10は、被測定光の入射パワーの変化に対する干渉信号の補正に利用可能である。
【0107】
(干渉計10の第6実施形態)
図12は、
図1の干渉計10の第6実施形態を示す模式図である。
図13は、
図12の検出器11によって出力される干渉信号の一例を示すグラフ図である。
図12及び
図13を参照しながら、第6実施形態に係る干渉計10の構成及び機能について主に説明する。
【0108】
第6実施形態に係る干渉計10は、第3光学部品14及び検出器11の構成が異なる点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第6実施形態に係る干渉計10においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0109】
第3光学部品14は、第1偏光ビームスプリッタ14aと第2偏光ビームスプリッタ14bとを含む。加えて、P波検出器11aは、第1偏光ビームスプリッタ14aにより分波されたP波を検出する第1検出器11a1と、第2偏光ビームスプリッタ14bにより分波されたP波を検出する第3検出器11a2と、を含む。S波検出器11bは、第1偏光ビームスプリッタ14aにより分波されたS波を検出する第2検出器11b1と、第2偏光ビームスプリッタ14bにより分波されたS波を検出する第4検出器11b2と、を含む。
【0110】
第6実施形態に係る干渉計10は、第2無偏光ビームスプリッタ12bのもう一方の合波光を第2偏光ビームスプリッタ14bにより分波することで、
図4に示す一組の干渉信号に加え、90°位相が異なる干渉信号をもう一組出力することができる。
図13に示すとおり、干渉計10は、90°ずつ位相が異なる干渉信号を4つ出力することができる。例えば、被測定光の干渉計10への入射パワーを1とすると、第1検出器11a1乃至第4検出器11b2からそれぞれ出力される干渉信号の相対信号強度I
1、I
2、I
3、及びI
4は、以下のような関係を有する。
【数7】
【0111】
以上のように、第6実施形態に係る干渉計10を用いると、光学機器1の制御部70は、これら4つの干渉信号を加算することで被測定光の入射パワーを容易に算出することができる。光学機器1の制御部70は、被測定光の入射パワーの変化に応じて正弦波状の干渉信号に対し正規化処理を精度良く実行できる。このように、干渉計10は、被測定光の入射パワーの変化に対する干渉信号の補正に利用可能である。
【0112】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0113】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0114】
上記各実施形態において、第2光学部品13の光学面は反射面を含むと説明したが、これに限定されない。当該光学面は、被測定光の伝播方向を変化させ、かつ被測定光のP波とS波との間に位相差を与えることが可能な任意の面を含んでもよい。
【0115】
上記各実施形態において、反射面は、第1反射面13aと第2反射面13bとを含むと説明したが、これに限定されない。当該反射面は、干渉計10において必要となる位相差を被測定光のP波とS波との間に適切に付与し、干渉信号の出力に寄与することが可能であれば、1つの面のみを含んでもよいし、3つ以上の面を含んでもよい。
【0116】
上記各実施形態において、第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれで位相差が45°であると説明したが、これに限定されない。制御部70が、干渉計10を用いて光源部20からの出力光の波長の相対変化を算出したり、光源部20の波長制御などを実行したりすることを可能にする干渉信号が得られるのであれば、第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれにおいて位相差は任意の値であってもよい。合計で90°の位相差に限定されず、第2光学部品13は、第1光路R1において、被測定光のP波とS波との間に任意の値の位相差を与えてもよい。
【0117】
上記各実施形態において、第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれにおいて、被測定光の入射角及び反射角のそれぞれは45°であると説明したが、これに限定されない。被測定光の入射角及び反射角のそれぞれは45°でなくてもよい。
【0118】
上記各実施形態において、相対位相差θが45°となるように屈折率n1が選択されると説明したが、これに限定されない。所望の相対位相差θが得られるように、第1反射面13a及び第2反射面13bのそれぞれに対する被測定光の入射角が調整されてもよい。
【0119】
上記各実施形態において、第2光学部品13は、ガラス材料によって構成されるプリズムを含むと説明したが、これに限定されない。第2光学部品13は、光学部品として安価であり広波長帯域で使用可能な任意の光学素子を含んでもよい。
【0120】
上記各実施形態において、無偏光ビームスプリッタの分波比が50:50であると説明したが、これに限定されない。無偏光ビームスプリッタの分波比は、50:50でなくてもよい。
【0121】
第1光学部品12、第2光学部品13、及び第3光学部品14が全て一体化されている各実施形態において、光学部品間の接合部に屈折率整合剤として紫外線硬化型接着剤及び熱硬化型接着剤を含む接着剤が使用されてもよい。これにより、接合部における被測定光の低反射化が実現される。このとき、接合部において、無反射コーティング及び低反射コーティングが形成されなくてもよい。
【0122】
上記各実施形態において、被測定光が入射する第1光学部品12の入射面及び被測定光が射出する第3光学部品14の2つの射出面に無反射コーティング又は低反射コーティングが形成されていると説明したが、これに限定されない。例えばこれらの面を被測定光の光軸に対して傾斜させて被測定光の反射による影響を低減できるのであれば、無反射コーティング及び低反射コーティングが形成されていなくてもよい。
【0123】
上記各実施形態において、光学機器1は、例えば干渉計10を用いて被測定光の波長を測定可能な任意の機器を含んでもよい。例えば、光学機器1は、光波長計を含んでもよい。加えて、干渉計10は、光学機器1に内蔵されずに、光学機器1の外部に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 光学機器
1a ビームスプリッタ
10 干渉計
11 検出器
11a P波検出器
11a1 第1検出器
11a2 第3検出器
11b S波検出器
11b1 第2検出器
11b2 第4検出器
11c 入射光検出器
12 第1光学部品
12a 第1無偏光ビームスプリッタ
12b 第2無偏光ビームスプリッタ
12c 第1光学面
12d 第2光学面
13 第2光学部品
13a 第1反射面
13b 第2反射面
14 第3光学部品
14a 第1偏光ビームスプリッタ
14b 第2偏光ビームスプリッタ
15 第4光学部品
16 第5光学部品
20 光源部
30 駆動部
40 記憶部
50 入力部
60 出力部
70 制御部
R1 第1光路
R2 第2光路