(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】切削工具および軸受通路の加工方法
(51)【国際特許分類】
B23B 29/034 20060101AFI20230524BHJP
B23B 39/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B23B29/034 C
B23B39/00 B
(21)【出願番号】P 2020503697
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018070397
(87)【国際公開番号】W WO2019020784
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】102017213046.6
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508064506
【氏名又は名称】ギューリング カーゲー
【氏名又は名称原語表記】GUEHRING KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘッケル,ゲルド
(72)【発明者】
【氏名】ホルフェルター,ハンスペーター
(72)【発明者】
【氏名】タナー,ユルゲン
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074056(JP,A)
【文献】米国特許第03314313(US,A)
【文献】実開昭63-035509(JP,U)
【文献】特開2002-283112(JP,A)
【文献】実開昭59-017105(JP,U)
【文献】実開平03-059109(JP,U)
【文献】特開平03-196905(JP,A)
【文献】特開2001-205506(JP,A)
【文献】特開平06-285705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0054874(US,A1)
【文献】特開昭51-111314(JP,A)
【文献】実開昭49-142513(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/034
B23B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に駆動可能な基体(12)と、前記基体(12)上に半径方向に調整可能に配置された少なくとも1つの切削刃支持体(20)と、前記基体(12)に対する前記切削刃支持体(20)の位置を調整する
調節装置(16)と、を有する切削工具であって、
前記切削刃支持体(20)は、回転軸に対して横方向に変位可能に、前記基体(12)のガイド切欠き部(14)に配置されており、
前記
調節装置
(16)は、前記基体内(12)で軸方向に変位可能に配置され、前記切削刃支持体(20)が支持されている調節ロッド(16)であって、前記調節ロッド(16)の軸方向の変位によって前記切削刃支持体(20)が前記回転軸に対して横方向に変位するように構成された前記調節ロッド(16)を有し、
前記調節ロッド(16)に対する前記切削刃支持体(20)の位置を調整するための、前記切削刃支持体(20)に組み込まれた調整装置(22)を有し、
前記調整装置(22)は、前記調節ロッド(16)に支持された調整要素(46)と、前記切削刃支持体(
20)に対して前記調整要素(46)を調整するねじ駆動部(48,50)とを有し、
前記調整要素は、前記切削刃支持体(20)が支持されている制御斜面(60)を有するねじスリーブ(46)から形成されており、前記ねじ駆動部は前記ねじスリーブでねじ止めされる、前記切削刃支持体に支承される駆動スピンドル(48)を有することを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記切削刃支持体(20)は、前記ガイド切欠き部(14)に形状接合的に収容されていることを特徴とする、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記切削刃支持体(20)は、前記ガイド切欠き部(14)に回転不能に収容されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記ガイド切欠き部(14)は貫通切欠き部として構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項5】
前記切削刃支持体(20)は、前記調節ロッド(16)が収容されている軸方向開口部(17)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
前記切削刃支持体(20)は、前記基体(12)に対して弾性的に支持されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項7】
前記調節ロッド(16)は、前記基体(12)の圧力室に配置されたピストン要素に接続されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項8】
前記ピストン要素は、前記基体(12)に対して弾性的に支持されていることを特徴とする、請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記ねじ駆動部は、前記切削刃支持体(20)において、前記ねじスリーブ(46)に間隔をおいて固定されたねじブッシュ(50)を有し、前記駆動スピンドルは、差動ねじスピンドル(48)として構成されており、前記ねじスリーブ(46)を備えた第1のねじ部(48a)、およびねじブッシュ(50)を備えた第2のねじ部(48b)とねじ止めされていることを特徴とする、請求項1に記載の切削工具。
【請求項10】
前記ねじスリーブ(46)と前記ねじブッシュ(50)との間には圧縮ばねが配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の切削工具。
【請求項11】
前記調整装置(22)は、回転可能に前記切削刃支持体(20)に保持され、前記差動ねじ(48)と回転不能に、かつ前記ねじスリーブ(46)の変位方向に変位可能に接続されている調節要素(52)を有することを特徴とする、請求項9または10に記載の切削工具。
【請求項12】
多数の前記切削刃支持体(20)は、それぞれ前記基体(12)の回転軸に対して横向きに変位可能なように、ガイド切欠き部(14)に配置され、前記調節ロッド(16)で支持されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項13】
前記切削刃支持体(20)は、前記調節ロッド(16)の変位に同期して変位可能であることを特徴とする、請求項12に記載の切削工具。
【請求項14】
前記切削工具(10)が、粗加工用の第1の切削刃支持体(20.1)と、斜角面を形成する第2の切削刃支持体(20.2)と、半仕上げ加工する第3の切削刃支持体(20.3)と、仕上げ加工する第4の切削刃支持体(20.4)とを有する工具部(10.1)を有することを特徴とする、請求項12または13に記載の切削工具。
【請求項15】
前記第4の切削刃支持体(20.4)は、前記
調節装置
(16)に対するそれぞれの前記切削刃支持体(20.3、20.4)の位置を調整する調整装置(22)を有し、前記第1の切削刃支持体(20.1)と、前記第2の切削刃支持体(20.2)とは、そのような調整装置(22)を有していないことを特徴とする、請求項14に記載の切削工具。
【請求項16】
切削工具(10)の長手方向において前記第1の切削刃支持体(20.1)と、前記第2の切削刃支持体(20.2)と、前記第4の切削刃支持体(20.4)と、前記第3の切削刃支持体(20.3)とは、その順序で連続していることを特徴とする、請求項14または15に記載の切削工具。
【請求項17】
前記切削工具(10)は、軸受通路の加工される軸受ウェブ(LS、LS1、LS2)ごとに、前記切削工具(10)の長手方向に隣接した2つの工具部(10.1、10.2)を有することを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項18】
長手方向に離間して配置された複数の軸受ウェブ(LS、LS1、LS2)を備えた軸受通路を、請求項17にかかる切削工具(10)を用いて所定の公称直径に加工する方法であって、
-切削工具(10)を軸受通路に心合わせし、直線状に後退させるステップであって、工具部(10.1)の第1の切削刃支持体(20.1)が軸受ウェブ(LS1)の加工のために位置決めされるまで、切削刃支持体(20;20.1-20.4)は後退位置にあるステップと、
-
調節装置(16)を使用して、切削刃支持体(20;20.1-20.4)を伸長位置に調整するステップと、
-基体(12)の回転運動により、第1の切削刃支持体(20.1)を使用して、軸受ウェブ(LS)を粗加工するステップと、
-工具部(10.1)の第2の切削刃支持体(20.2)が軸受ウェブ(LS1)の加工のために位置決めされるまで、切削工具(10)を直線状にさらに前進させるステップと、
-基体(12)の回転運動により、第2の切削刃支持体(20.2)を使用して、片側の斜角面を軸受ウェブ(LS1)に形成するステップと、
-
調節装置(16)を使用して切削刃支持体(20;20.1-20.4)を後退位置へ調整するステップと、
-隣接した工具部(10.2)の第3の切削刃支持体(20.3)が、軸受ウェブ(LS1)の加工のために位置決めされるまで、切削工具(10)が、直線状に移動するステップと、
-
調節装置(16)を使用して、切削刃支持体(20;20.1-20.4)を伸長位置に調整するステップと、
-基体(12)の回転運動により、隣接する工具部(10.2)の第3の切削刃支持体(20.3)を使用して、軸受ウェブ(LS1)を半仕上げ加工するステップと、
-隣接した工具部(10.2)の第4の切削刃支持体(20.4)が、軸受ウェブ(LS1)の加工のために位置決めされるまで、切削工具(10)が直線状にさらに移動するステップと、
-基体(12)の回転運動により、隣接する工具部(10.2)の第4の切削刃支持体(20.4)を使用して、軸受ウェブ(LS1)を仕上げ加工するステップと、
-隣接した工具部(10.2)の第2の切削刃支持体(20.2)が、軸受ウェブ(LS1)の加工のために位置決めされるまで、切削工具(10)が直線状にさらに移動するステップと、
-隣接した工具部(10.2)の第2の切削刃支持体(20.2)を使用して、基体(12)の回転運動によって、斜角面がまだ形成されていない、軸受ウェブ(LS)の面上に、片側の斜角面を形成するステップと、
-
調節装置(16)を使用して、切削刃支持体(20;20.1-20.4)を後退位置へ調整するステップと、
-切削工具(10)を軸受通路の外に直線状に移動させるステップと、
を特徴とする方法。
【請求項19】
前記切削刃支持体(20;20.1-20.4)は、前記切削工具の前記基体(12)に軸方向に変位可能に配置された
調節装置の調節ロッド(16)を用いて、その後退位置およびその伸長位置へ調整されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部に記載の切削工具および軸受通路の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の切削工具は、例えば特許文献1から知られている。この文献に示されている切削工具は、回転軸を中心に駆動可能な基体(ベースホルダ)と、基体を延長し、HSK(中空シャンクテーパ)胴体部を備えた工作機械側のインターフェースとを有する。切削工具の一実施形態では、インサート(工具)を備えた切削刃支持体(工具ホルダ)が、外周側で開口している基体の収容ポケットに支承され、別の実施形態では、それぞれインサートを備えた2つの切削刃支持体が、軸方向に変位されて、外周側で開口している基体の収容ポケットに支承されている。各切削刃支持体は、切削刃の摩耗を解消するために放射状に調整できる。このために設けられた調節装置は、基体内で長手方向に移動可能に配置された調節ロッド(調整マンドレル)と、第1の端部が調節ロッドの制御面で支持され、第2の端部が切削刃支持体で支持された調節要素(圧力要素)とから形成されている。調節ロッドが、端面側で作動可能な調整ねじによって軸方向に変位する場合、調節ロッドの対応付けられた制御面と、それぞれの調節要素によって形成されたくさび表面歯車とを介して、切削刃支持体が半径方向外側に押される。
【0003】
同様の機能原理に基づく1つまたは複数の切削刃支持体を備えたさらなる切削工具は、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8が知られている。
【0004】
上記の切削工具では、切削刃支持体は、切削刃の微調整または切削刃摩耗の解消のために、弾性変形によって(例えば、特許文献1、特許文献4、特許文献6、特許文献7参照)、または基体に対して旋回することによって(特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献8参照)調整可能である。この目的のために、切削刃支持体は、切削工具の基体に軸方向に変位可能に配置された調節ロッドと、基体において半径方向に移動可能な、調節ロッドのくさび面と切削刃支持体との間に配置された調節要素とを介して半径方向に制御される。
【0005】
特許文献12および特許文献13は、調節ロッド(牽引ロッド)を介して、複数の切削刃のそれぞれを個別に再調整できる多刃切削工具(ドリルロッド)を提案している。この目的のために、多数の切削刃支持体(クランプホルダ)のそれぞれの調整装置を、連結装置を介して個別に調節ロッドに接続することが提案されている。切削刃支持体の調整装置と中央調節ロッドとの間に配置された連結装置のおかげで、切削刃の摩耗を解消するために個別の切削刃の再調整が可能となる。
【0006】
しかしながら、上述の既知の解決方法では、特に調節ロッドの軸方向位置に依存しない、個々の切削刃調整を可能にするさらなる調整方法は設けられていない。
【0007】
確かに当業者は、切削刃の摩耗を解消するために、切削工具の基体に対する、切削刃支持体の個別の調整を可能にする様々な調整装置を従来技術から知っている。例えば特許文献14からは、切削工具(ドリルロッド)の基体(胴体部)に配置された差動ねじと、ねじスリーブとから形成された調整装置が知られている。しかしながら、提案された調整装置は多くのスペースを必要とし、上述の文献から知られているように、調節ロッドと組み合わせることができない。
【0008】
さらに、特許文献15から、外周側で開口した収容ポケット(recess)に配置された切削刃支持体(cartridge)を備えた切削工具が知られており、スリットによってブリッジ(bight portion)と2つの脚部(legs)とに分割され、これらのうち片方の脚部は基体(boring bar)にねじ止め固定され、もう一方の脚部はインサートを支持し、弾性変形により片方の脚部に対して半径方向に調整可能である。この目的のために、切削刃支持体の内側に配置され、差動ねじを有する調整装置は、切削刃支持体本体の相互に変形可能な脚部間で作用する。しかし、切削刃支持体をねじ止め固定することにより、基体に対する切削刃支持体全体の半径方向の調整が妨げられるため、特許文献15で提案された調整装置は、上述の文献から知られているように、調節ロッドと組み合わせることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国公開特許第10052376号
【文献】独国公開特許第4022579号
【文献】国際公開第2004/012887号
【文献】欧州特許第1402979号
【文献】国際公開第98/48964号
【文献】国際公開第2009/005804号
【文献】独国公開特許第2405694号
【文献】国際公開第2010/021284号
【文献】独国公開特許第4022579号
【文献】国際公開第2004/012887号
【文献】国際公開第98/48964号
【文献】独国公開特許第102004052211号
【文献】独国公開特許第102005028366号
【文献】独国公開特許第19649143号
【文献】米国特許第4428704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の従来技術に基づいて、本発明の課題は、回転軸の周りで回転駆動可能な基体と、基体上で半径方向に調整可能な少なくとも1つの切削刃支持体とを備えた切削工具であって、少なくとも1つの切削刃支持体は、一方では切削工具の基体に変位可能に配置されている調節ロッドを介して、他方では、調節ロッドの変位に依存しない調整装置によって、切削刃支持体の切削刃または切削刃要素の正確な調整が可能になるように、半径方向に調整可能であるものを提供することである。また、本発明の課題は、少なくとも1つの半径方向に調整可能な切削刃支持体を備えた切削工具であって、切削刃支持体に対応付けられた調節装置および調整装置の構成が、切削工具の長手方向(回転軸の方向)において多数の切削刃支持体が切削工具に設けられ、したがって、軸受通路の特に全ての、または少なくとも可能な限り多くの加工ステップを、このような切削工具で実行できるものを提供することである。また、本発明の課題は、本発明にかかる切削工具を用いて、軸受通路またはその軸受場所を効率的に加工する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項の特徴を備えた切削工具および軸受通路を加工する方法によって解決される。有利なまたは好ましい改善構成は、従属請求項の主題である。
【0012】
本発明にかかる切削工具は、好ましくは、穴の再加工または穴の微細加工のために、特に、いわゆる軸受通路に使用される。この種の工具は、例えば自動車産業で、軸受レーンに一列に配置された複数の軸受ウェブの穴を最終直径に加工して、シャフト、例えばクランクシャフトまたはカムシャフトを支持するために使用される。切削工具は、好ましくは、軸受通路の複数の軸受ウェブを同期して加工できるように、複数の切削刃を備えて構成されており、複数の切削刃支持体は、軸受ウェブに対応する軸方向の間隔で、好ましくは一列に、切削工具の基体に配置されている。
【0013】
本発明にかかる切削工具は、回転軸を中心に駆動可能な基体と、基体上に半径方向に調整可能に配置された少なくとも1つの切削刃支持体と、基体に対する切削刃支持体の位置を調整する調整装置と、を有する。少なくとも1つの切削刃支持体は、基体の回転軸に対して横方向に(垂直に)、好ましくは半径方向に変位可能に、基体のガイド切欠き部に配置されている。調節装置は、基体内で(すなわち、基体の長手方向に)軸方向に変位可能であり、少なくとも1つの切削刃支持体が支持されている調節ロッドを有する。本発明にかかる切削工具は、多数の切削刃支持体を有することができ、切削刃支持体は、それぞれ基体の回転軸に対して垂直に、好ましくは半径方向に変位可能なように、基体においてそれらに対応付けられたガイド切欠き部に配置され、調節ロッドで支持されており、切削刃支持体は調節ロッドを介して、好ましくは同期して変位可能である。
【0014】
特に、切削刃支持体と、ひいては(そこに配置された切削刃要素の)切削刃の半径方向の変位性により、基体と、切削加工されるワークピースに対する切削刃要素の正確な調整と設定を達成でき、特に、従来技術から知られている、切削刃支持体を旋回させることによって、または弾性変形によって切削刃支持体を設定する場合よりも、より正確な調整を達成できる。
【0015】
切削刃支持体に少なくとも1つの切削刃要素を設けることができ、切削刃要素は、そこから半径方向外側に突出する。切削刃要素は、特に、切削刃を備えたインサート、好ましくはスローアウェイインサートである。切削刃要素は、このために切削刃支持体に設けられたシート内で、例えばねじ止め、クランプなどにより位置調整可能に収容でき、または接着もしくははんだ付けにより位置固定して収容できる。当然ながら、切削刃支持体は複数の切削刃(切削刃要素)を含んでもよい。
【0016】
それぞれの切削刃支持体は、好ましくは、基体のそれに対応付けられたガイド切欠き部に形状接合的に収容されている。さらに、それぞれの切削刃支持体は、好ましくは、回転安全な方法でガイド切欠き部に収容されており、ガイド切欠き部に挿入されるドリルビットとして構成できる。ここで、ガイド切欠き部は、本発明にかかる切削工具の基体の回転軸に対して垂直に、かつ切削刃支持体の変位方向に延びている。ガイド切欠き部は、好ましくは、貫通切欠き部として、特に、基体を貫通する貫通穴として構成されている。同様に、止まり穴の意味での基部/底部を備えた基部切欠き部としてのガイド切欠き部の実施形態も可能である。
【0017】
切削刃支持体は、好ましくは軸方向の開口部、すなわち、本発明にかかる切削工具の回転軸に沿って延びる開口部を有し、この開口部には、やはり長手方向に延びる調節ロッドが収容されている。各切削刃支持体は、切削刃支持体を設定するための切削刃支持体、ひいては切削刃支持体に設けられた切削刃要素が基体に対して半径方向内側および外側に制御可能であるように、すなわち半径方向内側および外側に変位できるように、切削工具の基体に軸方向に変位可能に配置された調節ロッド上に、略半径方向に支持されている。特に、切削刃支持体は、切削刃支持体に保持された切削刃要素が、基体の回転中心軸または長手方向中心軸に対して最小の直径にある(半径方向における、例えば基体外周の外側、線上、または内側の定義された(小さい)距離での)内側制御位置と、切削刃支持体に保持された切削刃要素が最大半径にある、すなわち、基体の回転中心軸または長手方向中心軸に対して所定の公称直径の寸法にある(すなわち、基体外周を超えた(大きな)半径方向距離での)外側制御位置と、の間で半径方向に調整可能である。
【0018】
このために、調節ロッドは異なる直径の部分を有することが好ましい。例えば、調節ロッドの最大直径を規定する1つまたは複数の部分は、1つまたは複数のシリンダ部によって提供できる。切削刃支持部がそのような部分において支持されている場合、調節ロッドによって達成できる最大外径に達する。シリンダ部に続いて、調節ロッドは、好ましくは、シリンダ部に長手方向に連続する円錐部の形状の直径テーパを有する。調節ロッドを軸方向に変位させて、切削刃支持部が円錐部に支持されるようにすることにより、調節ロッドに支持された切削刃支持部が半径方向内側に制御される、すなわち、例えば、切削工具を加工される穴に挿入するために、切削刃支持体によって支持される切削刃要素が加工される穴の壁に接触することなく、半径方向内側に変位される。続いて、調節ロッドを長手方向に動かすことにより、切削刃支持体が上述のシリンダ部に達するように、切削刃支持体を再び半径方向外側に制御(すなわち半径方向外側に変位)することができ、これにより、切削刃支持体に支持された切削刃要素が以前に調整された公称直径に戻り、穴が加工できる。調節ロッドは、好ましくは、基体に設けられた圧力室に配置されたピストン要素に接続されており、それにより、基体の回転軸の方向に移動でき、基体に対して弾性的に、好ましくはばねにより支持できる。対応する圧力室および対応するピストン要素は、独国特許出願第102016217243.3号に記載されている。
【0019】
切削刃支持体は、基体に対して好ましくは弾性的に、好ましくはばねにより支持されるため、基体の回転軸に垂直に、ひいては調節ロッドに垂直に変位することができる。このために、好ましい実施形態によれば、切削刃支持体は、1つまたは複数の圧縮ばねによって基体に対して支持されているトラバースに接続され、圧縮ばねは切削刃支持体の変位方向に延びる。トラバースは、好ましくは、切削刃支持体の変位方向に垂直に、かつ基体の回転軸に垂直に延びる。
【0020】
また、本発明にかかる切削工具は、調節ロッドに対する切削刃支持体の位置を設定/調整するために、切削刃支持体に組み込まれた調整装置を有することが好ましい。複数の切削刃支持体の場合、それぞれまたは少なくともいくつかの切削刃支持体に、それ自体のこの種の調整装置を対応付けることができる。調節ロッド、ひいては基体に対する切削刃支持体の位置は、例えば本発明にかかる切削工具の製造において、調整装置を用いて事前設定することができる。代替的に、本発明にかかる切削工具を使用する場合に、調節ロッド、ひいては基体に対する切削刃支持体の位置を再調整することが可能であり、すなわち、切削工具を工作機械のスピンドルから分離する必要がない。これにより、切削工具の交換または取り外しに起因する寸法変動を回避できる。そのような再調整は、特に、切削刃支持体の切削刃要素の切削刃が摩耗した場合に必要となり得る。
【0021】
切削刃支持体に対応付けられ、そこに組み込まれた調整装置は、好ましくは、調節ロッドに支持された調整要素と、切削刃支持体に対して調整要素を調整するねじ駆動部とを有する。ねじ駆動部は、好ましくは、断面から見た調節ロッドに対して調節要素を調節する。好ましい実施形態によれば、調節要素は、切削刃支持体が支持されている制御斜面を有するねじスリーブから形成されている。ねじスリーブは軸方向に、すなわち、基体の回転軸に対して横方向(垂直)および切削刃支持体の変位方向に対して横方向(垂直)に変位可能である。ねじ駆動部は駆動スピンドルを有し、これは切削刃支持体に支承され、ねじスリーブによってねじ止めされている。また、ねじ駆動部は、好ましくは、切削刃支持体においてねじスリーブから離間して固定されたねじブッシュ(軸受ブッシュとも呼ばれる)を有する。ねじブッシュは切削刃支持体に固定して配置されている。切削刃支持体のねじ穴の代わりに、特に製造上の理由からねじブッシュが設けられている。
【0022】
駆動スピンドルは、好ましくは、差動ねじスピンドルとして構成され、ねじスリーブを備えた第1のねじ部、およびねじブッシュを備えた第2のねじ部とねじ止めされている。ねじスリーブおよびねじブッシュは、差動ねじスピンドルに螺合している。第1のねじ部および第2のねじ部は、異なるねじピッチ(ねじ高さ)で、同じねじ方向(経路方向)を有することができる。差動ねじスピンドルが作動すると、ねじスリーブがスピンドル軸に沿って、すなわち、基体の回転軸に垂直に、差動ねじスピンドルの2つのねじ部のピッチの差に対応する距離だけ、切削刃支持体の変位方向に垂直に移動する。ねじスリーブおよびねじブッシュの間に圧縮ばねを設けて、一方では、差動ねじスピンドルの第1のねじ山部分の外ねじと、ねじスリーブの内ねじとの間のねじ間の遊びを減らし、他方では、差動ねじスピンドルの第2のねじ山部分の外ねじと、ねじブッシュの内ねじとの間のねじ間の遊びを減らすことができる。
【0023】
本発明にかかる切削工具の各調整装置には、好ましくは、回転可能に切削刃支持体に保持され、駆動スピンドルまたは差動ねじスピンドルと回転不能に、特に軸方向に移動可能に係合しており、すなわち、回転不能に、かつ特にねじスリーブの変位方向に変位可能に接続され、駆動スピンドルまたは差動ねじスピンドルの回転操作に使用される、操作要素が対応付けられている。操作要素は、好ましくは、例えば10マーク/目盛り線の目盛を有する、いわゆる目盛リングを含む。操作要素またはその目盛リングは、好ましくは、ばねリングによって本発明にかかる切削工具の基体に取り付けられ、同時に、駆動スピンドルまたは差動ねじスピンドルの長手方向の結合を表す。
【0024】
調整装置の調節要素の制御傾斜を介して切削刃支持体が調節ロッドに支持されているということにより、調節要素が、ねじ駆動装置によって切削刃支持体の変位方向に垂直に、かつ基体の回転軸に垂直に移動することで、切削刃支持体は、調節ロッドの軸方向の移動に加えて、有利には調整装置を介して半径方向に変位させることができる。
【0025】
したがって、本発明にかかる切削工具は、半径方向の切削刃調整のための互いに独立した少なくとも2つの手段を提供する。特に軸受通路の場合、軸受ウェブ全体の直径を非常に精密に、高い正確性で製造する必要がある。本発明によって作成された各切削工具は、μm範囲での切削刃の必要な個々の微調整を確実にする。切削刃支持体の半径方向の変位性、ひいてはそこに配置された切削刃、またはそこに配置された切削刃要素の半径方向の変位性により、基体および切削加工されるワークピースに対する切削刃要素の正確な調整および設定、特に、従来技術から知られている、切削刃支持体を旋回させることによって、または弾性変形によって切削刃支持体を設定する場合よりも、より正確な調整を達成できる。
【0026】
調節ロッドの軸方向変位によって生じる制御手段は、特に、調節ロッドにおいて支持された複数の切削刃支持体の場合、切削刃支持体を切削工具の基体に対して半径方向に同期して内側へ制御もしくは外側へ制御するか、または変位に使用でき、これによって、切削刃要素が加工される軸受穴に接触することなく、特に切削刃支持体を内側に制御した状態で、一直線上に、例えば心合わせされ、切削工具を加工される軸受通路へ後退させてここへ移動させ、かつ、続いて調節ロッドの軸方向変位によって、切削刃支持体を半径方向に同期して外側へ制御するか、または半径方向外側への変位に使用でき、これによって、軸受通路の軸受ウェブを所望の公称直径に加工する。
【0027】
本発明にかかる切削工具の調整装置が、基体の回転軸に対する横方向と、切削刃支持体の変位方向の横方向の両方に延びているということにより、切削刃支持体を軸方向に、すなわち切削工具の長手方向に、省スペースで配置することが可能であり、したがって、多数の切削刃支持体、ひいては多数の切削刃/切削刃要素を狭い空間で(軸方向または長手方向で見て)切削工具に設けることができ、切削刃支持体の構造的な弱体化を有利に回避できる。典型的には異なる切削刃/切削刃要素が異なる加工ステップ(例えば、粗加工、半仕上げ、仕上げ、斜角面など)に使用されるため、本発明にかかる切削工具では、比較的短い軸方向範囲の(工具)部分に、多数の加工ステップのための切削刃を収容できるため、本発明にかかる切削工具は、例えば、軸受通路の軸受箇所を加工する際に、ある加工ステップから次の加工ステップへ変更する場合、ひいてはある切削刃から別の切削刃へ変更する場合、短距離を往復移動するだけでよく、有利には、軸受通路を切削加工するために、本発明にかかる1つの切削工具のみが必要となる。すなわち、有利には、異なる加工ステップ用に構成された切削刃支持体/切削刃要素を備えた異なる切削工具を切り替える必要がない。
【0028】
本発明にかかる切削工具では、様々な切削加工ステップに対応付けられた切削刃支持体は、好ましくは1つの工具部にまとめられ、切削工具は、好ましくは、長手方向に整列し、互いに隣接して配置された複数の工具部を備える。したがって、本発明にかかる切削工具の工具部は、好ましくは、軸受通路の軸受ウェブの粗加工用の第1の切削刃支持体と、斜角面を軸受ウェブに取り付ける第2の切削刃支持体と、軸受ウェブを半仕上げ加工する第3の切削刃支持体と、軸受ウェブを仕上げ加工する第4の切削刃支持体とを含む。この時、工具部の切削刃支持体を、軸受通路の長手方向に互いに隣接して配置された2つの軸受ウェブの加工に使用できる。すなわち、軸受ウェブは、隣接する2つの工具部によって加工できる。
【0029】
仕上げ加工用に設けられた第4の切削刃支持体と、好ましくは、半仕上げ加工用に設けられた第3の切削刃支持体とには、好ましくは上記および/または以下の図面の説明に関連した調整装置が対応付けられ、それぞれがこの中に組み込まれる。これは、最終加工ステップを実行するこれらの切削刃支持体では、特に高い加工精度のために特に正確な設定が必要だからである。これに対し、粗加工、および斜角面の取り付けなどの比較的粗い作業ステップに使用される第1および第2の切削刃支持体の場合、スペースを節約するために、そのような調整装置は省いてもよい。
【0030】
1つまたは複数の軸受ウェブの効率的な加工を確実にするために、第1の切削刃支持体、第2の切削刃支持体、第4の切削刃支持体および第3の切削刃支持体は、好ましくは切削工具の長手方向に見て連続する。
【0031】
本発明にかかるこの種の切削工具を用いて、好ましくは軸方向に直列に配置された、長手方向に離間して配置された複数の軸受ウェブを備えた軸受通路を、次のステップにおいて、所定の公称直径に仕上げることができる。
-切削工具を軸受通路に心合わせし、直線状に後退させるステップであって、粗処理のために設けられた工具部の第1の切削刃支持体が軸受ウェブの加工のために位置決めされるまで、切削刃支持体は後退位置にあるステップと、
-調節装置、特にその調節ロッドを使用して、切削刃支持体を伸長位置に調整するステップと、
-基体の回転運動により、第1の切削刃支持体を使用して、軸受ウェブを粗加工するステップと、
-斜角面の取り付けのために設けられた工具部の第2の切削刃支持体が軸受ウェブの加工のために位置決めされるまで、切削工具を直線状にさらに前進させるステップと、
-基体の回転運動により、第2の切削刃支持体を使用して、片側の斜角面を軸受ウェブに取り付けるステップと、
-調節装置を使用して切削刃支持体を後退位置へ調整するステップと、
-以前に軸受箇所の加工に使用された工具部に隣接した工具部の、半仕上げ加工のために設けられた第3の切削刃支持体が軸受ウェブの加工のために位置決めされるまで、切削工具が、特に以前の移動方向とは反対方向に直線状にさらに移動するステップと、
-調節装置、特にその調節ロッドを使用して、切削刃支持体を伸長位置に調整するステップと、
-基体の回転運動により、隣接する工具部の第3の切削刃支持体を使用して、軸受ウェブを半仕上げ加工し、切削工具を直線状にさらに移動させるステップと、
-隣接した工具部の仕上げ加工のために設けられた第4の切削刃支持体が、軸受ウェブの加工のために位置決めされるまで、切削工具が直線状にさらに移動するステップと、
-基体の回転運動により、隣接する工具部の第4の切削刃支持体を使用して、軸受ウェブを仕上げ加工し、切削工具を直線状にさらに移動させるステップと、
-隣接した工具部の第2の切削刃支持体が、軸受ウェブの加工のために位置決めされるまで、切削工具が直線状にさらに移動するステップと、
-隣接した工具部の第2の切削刃支持体を使用して、基体の回転運動によって、斜角面がまだ取り付けられていない面上の軸受ウェブに片側の斜角面を取り付けるステップと、
-調節装置、特に調節ウェブを使用して、切削刃支持体を後退位置へ調整するステップと、
-切削工具を軸受通路から直線状に伸長させるステップ。
【0032】
この時、切削刃支持体の後退および伸長位置への半径方向の調整は、好ましくは切削工具の基体に配置された調節装置の調節ロッドの軸方向への変位によって行われ、調節装置は、流体的、液圧的、空気圧的、電動的または電磁的に駆動可能であり、半径方向の調整は、特に半径方向の変位である。
【0033】
上記の軸受ウェブの切削加工に続いて、加工された軸受ウェブの穴の公称直径寸法精度について確認できる。1つまたは複数の軸受ウェブで、穴の直径が所定の公称直径からずれていると確認された場合、到達していない公称直径の軸受ウェブを加工した、特に仕上げ加工を担う第4の切削刃支持体、および好ましくは半仕上げ加工を担う第3の切削刃支持体が、それに対応付けられた調整装置によって再調整されて、続く新たな加工の際に公称直径寸法精度が与えられるようにする。
【0034】
有利には、本発明にかかる切削工具を用いて、切削工具を異なる切削刃または切削刃支持体を備えた別の切削工具に変更する必要なく、軸受通路の全ての必要な加工ステップを実行できる。本発明にかかる切削工具では、全ての必要な切削刃支持体または切削刃が、1つの切削工具に統合されている。
【0035】
以下に、本発明にかかる切削工具および本発明にかかる方法の好ましい実施形態を、添付の図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】
図1に示す切削工具の長手方向部分の縦断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、軸受通路の加工に使用することができる本発明にかかる多刃切削工具10を示している。当然ながら、切削工具10はまた、ただ1つの切削刃、ひいてはただ1つの切削刃支持体を有することができる。多刃切削工具10は、ドリルロッド、好ましくは後部(
図1の右側)に構成された不特定の回転軸または長手方向の中心軸を中心に回転駆動できる基体12(工具胴体部とも呼ばれる)を備えている、基体12に軸方向に隣接する工作機械のスピンドル側インターフェース13を有し、インターフェース13はHSK(中空シャンクテーパ)胴体部を有する。あるいは、例えば、いわゆるSK(急テーパ)胴体部などを設けることができる。インターフェース13から離れた前端(
図1の左)において、基体12は、切削工具10が加工中に支持される円筒状の軸受部を有することができる。
【0038】
図1~3から分かるように、本発明にかかる切削工具10は、基体12の中央に配置された軸方向貫通穴または切欠き部15に長手方向に移動可能に配置され、基体12に対して切削刃支持体20、20.1-20.4の位置を調整するための調整装置を有する調節ロッド16を有する。示されている実施形態では、調節ロッド16は、特に以下に説明する工具部0.1、10.2のうちの1つで構成されており、軸方向に耐引/耐圧方式で互いに接続されている部分の数に対応し、それらのうち
図2に例として隣接部分16.1、(部分的に)16.2が示されている。
【0039】
調節ロッド6は、好ましくは、そのインターフェース側の端部において、図示しないピストン(ピストン要素とも呼ばれる)に耐引/耐圧方式で接続され、ピストンは、基体12の円筒状開口部(図示せず)に密閉され、ばね力に抗してピストンと底部との間に加圧されると、図示しない圧縮ばねが配置された円筒形の開口部は、境界面13に対して軸方向に変位可能である。基体12に形成され、円筒状開口部の圧力室に動作可能に接続されるチャネルシステム(図示せず)を使用して、切削工具10の切削刃に冷却潤滑剤を供給することもできる。冷却剤供給圧力が所定のレベルを超えて増加すると、ピストンが変位して、調節ロッド16が
図1の左に移動する。その後、冷却剤供給圧力が再び所定のレベル以下に低下すると、ピストンと調節ロッド16は、ピストンと基体12との間に配置された圧縮ばねのばね力により、
図1の右側に押し戻されるか、または変位される。調節ロッド16を軸方向に変位させるための原理は、独国特許出願第102016217243.3号から基本的に知られているため、より詳細な説明は省く。
【0040】
図2では、調節ロッド16の部分16.1および16.2のそれぞれが、長手方向にシリンダ部16aおよび円錐部16bを交互に有することも分かる。各部分16.1および16.2の軸方向に連続するシリンダおよび円錐部16a、16bは、調節ロッド16のそれぞれの部分16.1および16.2に関連する制御面を形成し、それぞれは、シリンダ表面部分および円錐部で構成され、その上に以下に説明する切削刃支持体20、20.1-20.4が放射状に支持される。シリンダ部16aは、軸方向に異なる長さのものであり得る。同じことが円錐部16bにも当てはまる。特に、後述する調整装置22(
図2および3を参照)を備えた切削刃支持体20、20.3、20.4に対応付けられたシリンダ部16aおよび円錐部16bは、追加的な調整装置22を備えていない切削刃装置20、20.1、20.2に対応付けられたシリンダ部16aおよび円錐部16bよりも長い。切削工具10の長手方向のスペースを節約するために、調整装置22は、好ましくは、その切削刃が特に正確に設定されなければならない切削刃支持体20、20.3、20.4にのみ対応付けられる。これらは、特に、最終加工ステップ、特に半仕上げおよび仕上げ加工ステップ、軸受ウェブLSの前処理および軸受ウェブLSの仕上げおよび半仕上げに使用される切削刃支持体20.3、20.4の切削刃である。
【0041】
本発明にかかる切削工具10は、複数の工具部10.1、10.2を備えることが好ましく、各工具部は、それぞれの場合に必要な切削刃を備えた軸受ウェブLSの加工に必要な全ての切削刃支持体20.1-20.4を備えることが好ましい(
図2および4を参照)。したがって、工具部10.1、10.2はそれぞれ、粗加工用の切削刃支持体10.1、斜角面部を取り付けるための切削刃支持体20.2、半仕上げ加工用の切削刃支持体20.3、仕上げ加工用の切削刃支持体20.4を含む。切削刃支持体20.1-20.4は、好ましくはそれぞれの工具部10.1、10.2の長手方向に、軸受ウェブLS、LS1、LS2、軸受ウェブLS、LS1、LS2を好ましくは長手方向の左に配置された工具部と右に配置された工具部の両方から迅速かつ効率的に加工できる順序で配置されている。例えば、軸受ウェブLS1は、(部分的に示されている)工具部10.1と工具部10.2の両方によって加工されている。同様に、軸受ウェブLS2は、工具部10.2と、右側の工具部10.2に隣接する図示されていない工具部10.3の両方によって加工される。「左」および「右」という用語は、
図2および4中の表現を示す。好ましくは、全ての切削刃支持体20.1-20.4は、横方向の同じ方向を指し、そのため、それらの刃は長手方向に直列に配置されている。
【0042】
軸受通路を加工するために、切削工具10は、最初に、基体12の回転軸が軸受通路の中心軸と整列するように軸受通路の外側に配置されている。切削工具10は、まだ回転していないことが好ましい。切削刃支持体20.1-20.4は格納位置にある。このために、調節ロッド16は、全ての切削刃支持体20.1-20.4が調節ロッド16の円錐部16bに支持されるように長手方向に移動し、全ての切削刃支持体20.1-20.4が後退位置にあるため、軸受通路LS、LS1、LS2が後退するときに軸受ウェブを支持する軸受通路で、調節ロッド16の長手方向/軸方向の変位は、上記の圧力室(図示せず)内の圧力の増加または減少を介して行われ、その結果、上記のピストンが調節ロッド16を左または右に押圧または変位させる。インサート20.1-20.4が後退した状態にある直径寸法は、加工される軸受ウェブLS、LS1、LS2との接触を回避できる限り、基体12の外径よりも大きく、同じ、または小さくすることができる。後退位置と伸長位置との間の調節ロッド16による切削刃支持体20.1-20.4の調整、およびその逆は、全ての切削刃支持体20.1-20.4に対して同期して行われる。
【0043】
切削刃支持体20.1-20.4の後退状態では、切削工具10は、回転方向または長手方向の中心軸に沿って直線状に送り出し方向に軸受通路に挿入される。つまり、切削刃支持体20.1が、それらに対応付けられた軸受ウェブLS1、LS2を処理するための最初の加工ステップ(粗削り仕上げ)に備えられるまで特に、送り方向から見て、それぞれの軸受ウェブLS1、LS2の後方または左側に配置されている(
図2および4を参照)。切削刃支持体20.1-20.4間の距離は、第1の切削刃支持体20.1が(ウェブ部分10.2用の)軸受ウェブLS2の左側にあるように、長手方向に選択される。工具部10.2の第2、第4、および第3の切削刃支持体20.2、20.4、20.3は、第1の切削刃支持体20.1の左側および軸受ウェブLS1の右側の長手方向にこの順序で配置され、軸受ウェブLS1は左側の長手方向に続く。同じことが、工具部10.1の切削刃支持体20.1-20.4にも当てはまる。
【0044】
次に、調節ロッド16を長手方向に動かすことにより、切削刃支持体20.1-20.4がシリンダ部16a上に支持されるように、全ての切削刃支持体20.1-20.4を伸長位置に移動させる。次に、軸受ウェブLS1、LS2は、切削刃支持体20.1またはその切削刃によって、切削工具10またはその基体12が回転駆動され、切削工具10が軸方向の戻りストローク(
図2および
図4では右)まで大まかに加工される軸受ウェブLS1、LS2が切削刃支持体20.1によって完全に処理されるまで、長手方向に移動する。
【0045】
粗加工ステップの終了後、切削工具10は、斜角面の取り付けを担う第2の切削刃支持体20.2が軸受ウェブLS1、LS2を処理するまで、長手方向(
図2および4の右側)に後方に移動される。配置されている、すなわち
図2および4では、軸受ウェブLS1、LS2の左側または左隅にある。切削工具10の回転駆動により、斜角面が片側の軸受ウェブLS1、LS2に取り付けられている(
図2および
図4の左側)。工具部10.1の切削刃支持体20.2は片斜角面を軸受ウェブLS1に取り付け、右側の隣接工具部10.2の切削刃支持体20.2は片斜角面を隣接する軸受ブラケットLS2に取り付ける。必要に応じて、必要に応じて調節ロッド16を軸方向に調整することにより、切削刃支持体20.1-20.4を第1加工ステップ(粗加工)と第2加工ステップ(斜角面の片側取り付け)の間で伸縮できる。
【0046】
次の処理ステップ(半仕上げ)では、軸受ウェブLS1、LS2の下に押し込むために、切削刃支持体20.1-20.4が円錐部16bに再び支持されるまで調節ロッド16を軸方向に移動することにより、切削刃支持体20.1-20.4を後退位置に戻す。そして、切削工具10は、第3の位置まで、送り方向(
図2および
図4では左)の長手方向に直線状に移動する。
【0047】
以前に位置LS1、LS2で作業していた工具部10.1、10.2に隣接する工具部10.2、10.3(工具部10.3は示されていない)の切削刃支持体20.3は、位置LS1、LS2を加工するための切削工具10の変位方向に対して配置されている。隣接する工具部10.2、10.3は、
図2および4において、加工される軸受ウェブLS1、LS2の右側にある。つまり、例えば工具部10.1またはその切削刃支持体20.1および20.2によって以前に加工(
図2および4の左側に示されている第1の斜角面を粗くして取り付ける)された軸受ウェブLS1は、工具部10.2の切削刃支持体20.3によって処理される。軸受ウェブLS1、LS2の第1(左)斜角面の反対側にある第2斜角面を仕上げて取り付ける後続の作業ステップは、隣接する工具部10.2の切削刃支持体20.4(仕上げ)または20.2(第2斜角面を取り付ける)によっても実行される。
【0048】
半仕上げの場合、切削刃支持体20.1-20.4がシリンダ部16aに支持されるように調節ロッド16を軸方向に調整することにより切削刃支持体20.1-20.4が延長され、切削工具10の同時回転運動で切削工具10をその長手方向に前進させることにより半仕上げ加工が実行される。
【0049】
軸受ウェブLS1、LS2の仕上げ加工は、次に、隣接する工具部10.2、10.3の第4の切削刃支持体10.4(仕上げに責任がある)まで、切削工具10を長手方向(
図2および4の左側)に直線状に移動することによって実行される。後者は示されていない)はそれぞれの軸受ウェブLS1、LS2の左側に配置され、隣接する工具部10.2、10.3の切削刃支持体10.4が軸受ウェブLS1、LS2を完全に処理するまでプロセスが続行される。代替的に、必要に応じて調節ロッド6を軸方向に移動することにより、切削刃支持体20.1-20.4を半仕上げと仕上げの処理ステップ間で、再び後退および伸長することができる。
【0050】
仕上げに続いて、切削工具10は、第1の斜角面を取り付けた工具部10.1、10.2に隣接する工具部10.2、10.3の第2の切削刃支持体20.2が切削工具10の送り方向に抗するまで、長手方向に直線状に移動する。対応付けられた軸受ウェブLS1、LS2の処理が配置されている。
図2および4では、その右側またはその右隅に配置されている。切削工具10の回転運動により、第2の斜角面部が最終的に軸受ウェブLS1、LS2に取り付けられ、軸受ウェブの長手方向において第1の斜角面部の反対側にある。仕上げ後、この第2の斜角面を取り付ける前に、必要に応じて、調節ロッド16を軸方向に移動することにより、切削刃支持体20.1-20.4を任意に後退または延長することができる。
【0051】
したがって、各工具部10.1、10.2の斜角面の取り付けを担う切削刃支持体20.2は、2つの隣接する軸受ウェブLS1、LS2の加工にそれぞれ使用される。つまり、それぞれの切削刃支持体20.2の左側の軸受ウェブLS1を処理するための軸受通路の長手方向に見られるそれぞれの切削刃支持体20.2の右側への軸受ウェブLS2の加工(
図2および4を参照)または軸受ウェブLS1を送り方向に加工し、軸受ウェブLS2を戻りストローク方向に加工する。したがって、切削支持体20.2の切削刃は、切削工具10の長手方向に対向する2つの切削面を有する。切削支持体20.1、20.3、20.4のそれぞれの切削面は、それぞれの加工のために設けられた切削工具10の移動の軸方向の粗加工、半仕上げおよび仕上げ点に使用される。つまり、
図2および4において切削刃支持体20.1(粗加工)の場合は右側に、切削刃支持体20.3(半仕上げ)および20.4(仕上げ)の場合は左側にある。
【0052】
切削工具10に設けられた工具部10.1、10.2の数は、好ましくは、加工される軸受ウェブLS1、LS2の数よりも1つ多いため、軸受通路の両端に位置する軸受ウェブLS、LS1、LS2も完全に含まれる。切削工具10を処理することができる。切削工具10による加工作業が終了した後、その回転駆動が停止され、調節ロッド16を軸方向に変位させることにより、切削刃支持体20.1-20.4が後退し、切削刃支持体20.1-20.4が調節ロッド16の円錐部16bに支持される。その後、切削工具10は、軸受通路から長手方向に直線状に延びている。
【0053】
(それぞれの)切削刃支持体20、20.1-20.4は、基体12(
図3参照)に設けられたガイド切欠き部14に受け入れられ、ガイド切欠き部14は、基体12または切削工具10の回転軸に垂直に、好ましくは基体12が通過する、すなわち貫通切欠き部として構成されている。切削刃支持体20は、基体16の回転軸に対して横方向に、特に半径方向に変位可能となるように、ガイド切欠き部14に配置されている。ガイド切欠き部14は、円形または楕円形であるが、長方形、特に正方形の断面を有することができ、切削刃支持体20は、ガイド切欠き部14への好ましくは確実な接続のための対応する断面を有する。特に、長方形、正方形、または楕円形の断面は、切削刃支持体20がガイド切欠き部14内で回転しないように固定されることを保証する。
【0054】
各切削刃支持体20は、軸方向開口部17、すなわち、調節ロッド16を受け入れるための、切削工具10の長手方向に沿った開口部17を有し、当該開口部17を貫通して、調節ロッド16が通される。特に、以下に説明する追加の調整装置22がそれぞれの切削刃支持体20に対応付けられている場合、切削刃支持体20の開口部17の直径は、調節ロッド16が緩い、すなわち、遊び(クリアランス19)、特に切削刃支持体20の変位方向で、開口17を介して通されるので、切削刃支持体20は、たとえ調節ロッド16のシリンダ部16aに支持されていても、後述する調整装置22によって移動方向を変更できる。
【0055】
(それぞれの)切削刃支持体20は、好ましくは、基体12に対して弾性的に、特に弾性的に支持される。したがって、切削刃支持体20は、切削刃要素24の反対側の端部で、トラバース26に接続され、トラバース26は、切削刃支持体20の伸長/変位の方向に垂直に、好ましくは基体12の回転軸に垂直に延び、基体12に弾性的に取り付けられている。その切削刃支持体20は、トラバース26を介して基体12に弾性的に支持されている。トラバース26を切削刃支持体20に固定するために、溝28、特に開口部17の貫通穴としても構成可能なねじ穴が、ねじ32が通ることができる切削刃支持体20の切削刃要素24とは反対側の端部に設けることができる。基体12の外側からアクセス可能な貫通孔30、特にくぼみ28と整列する貫通孔がねじ止めされている。トラバース26は、好ましくは、切削刃支持体20から離れる方を向いた側が丸くされており、曲率半径は、好ましくは、基体12の半径に対応している。
【0056】
ガイド切欠き部14を囲む基体12の壁には、好ましくは切削刃支持体20の両側に切欠き部34が設けられ、そこに支持要素36、例えばピンが固定され、切削刃支持体20の切欠き部38は切欠き部34で互いに向かい合い、その外壁に開口している。突出している。支持要素36は、基体12の回転軸に垂直に、かつ切削刃支持体20の変位方向に垂直に延び、トラバース26の下に切削刃支持体20に設けられた切欠き部38内に突出する。そのトラバース26は、基体12の切欠き部34内および切欠き部38内の切欠き部38内の両方について、切欠き部38を横切って横方向に延びている。
【0057】
切削刃支持体20は支持要素36を備えており、切削刃支持体20は回転しないように固定されている。トラバース26、したがって切削刃支持体20を基体12に弾性的に取り付けるために、圧縮ばね40が、切削刃支持体20の両側に設けられた切欠き部に設けられ、支持要素36上のトラバース側で、切削刃支持体20の横方向の変位方向に支持される。切削刃支持体20まで延びるトラバース26、特に、切欠き部38内に横方向に突出するトラバース26の端部/端部領域を押す。圧縮ばね40は、好ましくは、トラバース26の各端部/端部領域に対応付けられる。ピン42は、切削刃支持体20の長手方向/変位方向で切欠き部38内に突出するが、特にトラバース26の外側が切削刃支持体20の変位状態にある範囲でのみ、トラバース26の端部/端部領域に設けることができる。それらは、それらに面するそれらに対応付けられた支持要素36の側面から所定の距離だけ基体12の外壁と同一平面上を走る。ピン42は、圧縮ばね40によって包囲することができる。この所定の距離は、それぞれの切削刃支持体20、したがってその切削刃要素24が切削刃支持体20の変位方向に半径方向外向きに変位できる範囲を決定する。切欠き部34は、例えば圧縮ばね40のばね力/ばね予荷重を調整または設定するために、外側から支持要素36にアクセスできるように、半径方向に連続していてもよい。
【0058】
代替実施形態によれば、トラバース26はまた、基部12の回転軸の方向に切削刃支持体20を超えて基部12内に延びることができ、基部12上の対応する切欠き部に支持される対応する圧縮ばね40を介して弾性的に支持することができる。しかしながら、基体12の長手方向において、これは、トラバース26を備えた切削刃支持体20のより長い伸長をもたらす。
【0059】
切削刃支持体20に組み込まれた調整装置22(
図2および
図3参照)は、切削刃支持体または1つの切削刃支持体20に対応付けることができる。切削刃支持体20の切削刃の使用に応じて、調整装置22は必ずしも切削刃支持体20に対応付けられる必要はない。特に、冒頭で説明したように、特に粗加工(粗加工など)に使用される切削刃、または高精度の構成(マイクロメートル範囲など)が不要な加工(斜角面の取り付け時など)、調整装置22は不要である。
【0060】
調節ロッド16に対する切削刃支持体20の位置は、調整装置22により調整することができる。切削刃支持体20は、好ましくは開口部の形態のガイド切欠き部44を有し、その中に調節装置22が好ましくは形状適合様式で配置され、その結果、切削刃支持体20の調節装置22は、基体12の回転軸に対して横方向に、かつ切削刃支持体20の変位方向に対して横方向に延びる。それに対応して、ガイド切欠き部44は、一方では基体12に設けられたガイド切欠き部14に垂直に、他方では基体12の回転軸に垂直に延びている。切削刃支持体20に設けられたガイド切欠き部44は、例えば調節装置22が回転するように長方形、特に正方形の断面を有することが好ましい。ガイド切欠き部14で防止することができる。同様に、例えば切削刃支持体12を回転に対して固定するために基体12に設けられたガイド切欠き部14にも同様に当てはまり、このガイド切欠き部14も矩形または正方形の断面を有する。
【0061】
調整装置22は、好ましくは軸方向に移動可能なねじスリーブとして構成された調整要素46と、駆動スピンドル48を備えたねじ付き駆動部とを有する。ねじスリーブ46の軸方向の変位可能性の下では、ガイド切欠き部44の長手方向軸に沿った変位可能性、すなわち、基体12の回転軸に垂直であり、切削刃支持体20の変位方向に垂直であることが理解される。好ましくは、ねじ駆動部は、固定された、すなわち好ましくは固定されたねじブッシュ50(軸受ブッシュとも呼ばれる)をさらに備える。回転不能かつ不動であり、ガイド切欠き部44内に、好ましくは、ねじスリーブから離れたガイド切欠き部44の端部に配置されている。強固に固定するために、ねじ込みブッシュ50は、例えば圧入、はんだ付け、接着などによって、回転および軸方向に固定された方法で切削刃支持体20のガイド切欠き部44に固定することができる。ねじスリーブ46およびねじスリーブ50は、好ましくは、ガイド切欠き部44に対応する長方形、特に正方形の外周を有する。
【0062】
駆動スピンドルは、好ましくは、差動ねじスピンドル48(差動ねじ付きスピンドルとも呼ばれる)として構成され、第1のねじ部48aおよび第2のねじ部48bを有する。第1のねじ部48aは、詳細は特定されないねじスリーブ46のねじ穴にねじ込まれ、第2のねじ部48bは、特定されないねじブッシュ50のねじ穴にねじ止めされる。第1のねじ部48aおよび第2のねじ部48bは、不等のねじピッチ(ピッチ高さ)を有するが、同じねじ方向(ねじ方向)を有する。したがって、差動ねじスピンドル48が回転によって作動すると、ねじスリーブ46は、差動ねじスピンドル48の2つのねじ部48a、48bのピッチの差に対応する距離だけ、差動ねじスピンドル48の不特定のスピンドル軸に沿って移動する。スピンドル軸は、切削刃支持体20の変位方向に垂直に、また基体12の回転軸に垂直に延びている。ピッチの違いのため、ねじスリーブ46は、差動ねじスピンドル48を回転させることにより非常に正確に変位できる。例えば、ねじ部48a、48bのねじピッチは、ねじスリーブ46が差動ねじスピンドル48の回転ごとに0.1mm変位するように設定することができる。そのような変位のために、ねじブッシュ50は特に5.75°の傾斜を有することができる。調整装置22またはその差動ねじスピンドル48には、図示されていない潤滑剤供給を対応付けることができる。
【0063】
回転動作のために、駆動スピンドルまたは差動ねじスピンドル48は、ねじスリーブから離れた端部で調節要素52に回転固定式に接続されるが、軸方向に変位可能である。調節要素52は、好ましくは目盛リング54(
図4を参照)を備え、好ましくはばねリング56を介してベース16のガイド切欠き部44に最初に回転可能に取り付けられる。調節要素52を収容するために、ガイド切欠き部44は、調節要素52の断面に従って拡大されることが好ましい。調節要素52は、例えば適切な工具を用いて、基体12の外側からアクセスすることができる。基体12は、外側に開いた対応する切欠き部58を有する。
図4に示されるように、目盛リング44は、例えば10個のマーク/マーキングを有することができ、その結果、例えば半径0.001mmの調整/設定精度を達成することができる。
【0064】
好ましくはねじスリーブ46として構成された調整要素は、制御傾斜面60を有し、その上に切削刃支持体20が調節ロッド16に支持されている。この課題のために、調節ロッド16の方向にガイド切欠き部44に開口部(詳細には示されていない)が設けられ、そこから制御斜面60が突出し、調節ロッド16上に載るようになる。この課題のために、好ましくはねじスリーブ46として構成されている調節要素は、半径方向に突出/突出する片持ち梁要素62を含むことができ、これは、調節要素46の残りの部分と一体に形成することができ、ガイド切欠き部44の不特定の開口を通って突出し、それとともに延びる。制御斜面60は、調節ロッド16上で支持されている。制御斜面60は、差動ねじスピンドル48の回転軸と斜角、特に鋭角を形成する。
【0065】
片持ち梁要素62を備えた調整装置22を導入するために、切削刃支持体20の変位方向に垂直に、基体12の回転軸に垂直に延び、ガイド切欠き部14に対向する切削刃支持体20の側壁に対向する切欠き部70が切削刃支持体20に設けられる。サイドはゲームルーム19に開放されている。切削刃支持体20の変位方向で見ると、切欠き部70は、特に製造中に調整装置22が切削刃支持体20に挿入されるときに、片持ち梁要素62またはねじスリーブ46を越えて突出するその部分を収容するのに十分な寸法である。
【0066】
調節要素52により差動ねじスピンドル48が回転する場合、ねじスリーブ46の形態の調整要素は、差動ねじスピンドル48の回転軸/スピンドル軸に沿って移動する。調整要素46または片持ち梁要素要素62の制御傾斜面60も差動ねじ軸48の回転軸/スピンドル軸に沿って、つまり、横方向に変位しない調整棒16上で移動する。制御傾斜面60を介して調整棒16に支持された切削刃支持体20は、ガイド切欠き部14内の切削刃支持体20の形状適合配置により、差動ねじ軸48の回転軸に沿って移動することを防止される。そして、差動ねじスピンドル48の回転軸に垂直であり、また、ガイド切欠き部14内の基体12の回転軸に垂直な弾性取り付けにより、制御傾斜面60をスピンドル軸に沿ってシフトするとき、これにより、切削刃要素24は、半径方向に、基体12から遠ざかるか(または構成に応じてこれに向かって)移動する。この半径方向の変位は、有利には、切削刃要素24またはその切削エッジを基体12の回転軸の周りで回転させることなく行われるので、切削刃要素24またはその切削エッジのより正確な調整を達成することができる。
【0067】
調整装置22は、特に、本発明にかかる切削工具10の製造において、調節ロッド16に対する(それぞれの)切削刃支持体20の位置をプリセットするために使用することができる。さらに、例えば、切削工具10が磨耗した場合、切削工具ホルダ20を切削工具10から取り外す必要なく、調整装置22によって再調整が可能である。
【0068】
調整装置22を切削刃支持体20に一体化し、調整装置22を基体12の回転軸に垂直かつ切削刃支持体20の変位方向に垂直に整列させることにより、コンパクトで調整可能な切削刃支持体20が得られ、これは特に切削工具10の長手方向に短い。本発明にかかる切削工具10は、従来技術と比較して切削工具10に有利に提供できるように特徴づけられ、特に異なる、好ましくはワークピースの加工に必要な全ての処理ステップ(例えば、粗加工、SEMI仕上げ、仕上げ、両側に斜角面を設けることができる)。
【0069】
当然ながら、特許請求の範囲によって定義される本発明の基本的な概念から逸脱することなく、上述の例示的な実施形態に対する修正が可能である。
【0070】
図示の実施形態では、好ましくはねじスリーブとして構成された調整要素は、調節ロッドに直接支持されている。あるいは、少なくとも1つのさらなる圧力伝達要素を、調整要素と調節ロッドとの間に配置することができる。
【0071】
図示の実施形態では、各切削刃支持体は、切削工具の基体内で軸方向に変位可能に案内される調節ロッド上に支持されている。しかしながら、切削工具が調節ロッドを有していない場合、調節要素は、例えば特定の丸みを帯びたベース面など、基体に設けられた制御面上で直接的または間接的に支持することができる。
【0072】
示された実施形態では、調節ロッドの軸方向の変位は、特に、切削工具の界面側の端部に位置し、圧縮ばねによって基体に支持されているピストンに冷却潤滑剤圧力を加えることにより、流体的に生じる。あるいは、調節ロッドの軸方向変位は、油圧、空気圧、電気モーター、または電磁的に開始することもできる。この課題のために、切削工具は、アクチュエータロッドを軸方向に駆動する油圧、空気圧、電動または電磁アクチュエータを備えている。
【0073】
軸受通路の加工とは別に、本発明にかかる切削工具は、所定の公称直径への穴の任意の再加工または微細加工に使用することができる。したがって、本発明にかかる切削工具は、シリンダクランクケースなどのピストンボアを加工するためにも使用することができる。この場合、切削工具に切削刃支持体が1つあれば十分である。
【0074】
さらに、示されている実施形態では、特に
図1、2および
図4に示されているように、複数の切削刃支持体または切削刃要素が、切削工具の基体に沿って所定の軸方向距離で一列に配置されている。ただし、行の配置は必須ではない。所定の軸距離に配置された切削刃支持体は、円周方向に互いにらせん状に変位することができ、いくつかの切削刃支持体に関連する調整デバイスまたは調整要素は、それらに対応付けられた切削刃支持体の変位方向に対して垂直に整列/配置されている。円周方向の変位配置により、切削工具の適用分野に応じて、切削刃支持体間の軸方向距離をさらに短くすることができるため、基体はさらに多くの切削刃支持体を配置できる。したがって、周方向に変位された配置により、構成の柔軟性が高まる。