(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】二つの前輪を備える傾斜車両用前方キャリッジおよび関連する傾斜車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20230524BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/08
(21)【出願番号】P 2020531508
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 IB2019051840
(87)【国際公開番号】W WO2019171313
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】102018000003366
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】オノリーノ・ディ・タンナ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・バルトロッツィ
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0007109(US,A1)
【文献】特開2001-010577(JP,A)
【文献】特開2016-147538(JP,A)
【文献】特開2011-042225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/10
B62K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの前輪を備える傾斜原動機付き車両(900)用前方キャリッジ(100)であって、
前記原動機付き車両(900)のフレーム(200)と接続可能な上下方向に延びる中央ブロック(2)と、
それぞれ上下方向に延び、各前輪(300’、300”)のスピンドル(11’、11”)に機械的に連結されている第1側方垂直材および第2側方垂直材(3’、3”)と、
それぞれ第1連結点(6’、6”)で前記中央ブロック(2)と、第2連結点(7’、7”)で前記側方垂直材(3’、3”)とに回転自在に連結された第1下側横アームおよび第2下側横アーム(4’、4”)と、
それぞれ第3連結点(8’、8”)で前記中央ブロック(2)と、第4連結点(9’、9”)で前記側方垂直材(3’、3”)とに回転自在に連結された第1上側横アームおよび第2上側横アーム(5’、5”)と、を備えた関節結合運動学的ローリング機構(1)を備え、
前記第1連結点(6’、6”)と前記第3連結点(8’、8”)との間の距離は、前記第2連結点(7’、7”)と前記第4連結点(9’、9”)との間の距離
と等しく、
前記第1連結点(6’、6”)と前記第2連結点(7’、7”)との間の距離は、前記第3連結点(8’、8”)と前記第4連結点(9’、9”)との間の距離
と等しく、
前記第1下側横アーム(4’)、前記第1側方垂直材(3’)、前記第1上側横アーム(5’)および前記中央ブロック(2)は、第1関節結合平行四辺形を形成し、前記第2下側横アーム(4”)、前記第2側方垂直材(3”)、前記第2上側横アーム(5”)および前記中央ブロック(2)は、第2関節結合平行四辺形を形成し、
ステアリングチューブ(10)が前記中央ブロック(2)とステアリング軸(S)中心に回転自在に連結され、前記ステアリング軸(S)は、中央上下平面(M)上にあり、
前記関節結合平行四辺形が前記関節結合運動学的ローリング機構(1)の各動作位置で互いに少なくとも一部において
交差するように、且つ前記ステアリングチューブ(10)が前記第3連結点(8’、8”)の間に配置されるように、前記第1連結点(6’、6”)は、軸方向に整列され、前記第3連結点(8’、8”)は、互いにずれて配置され、前記中央上下平面(M)に対してずれて配置されている、前方キャリッジ(100)。
【請求項2】
前記第3連結点(8’、8”)は、前記上側横アーム(5’、5”)を通じて連結されている前記側方垂直材(3’、3”)に対して前記中央上下平面(M)の反対側に配置されている、請求項1に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項3】
両方の前記下側横アーム(4’、4”)に、または両方の前記上側横アーム(5’、5”)に連結され、少なくともショックアブソーバを備えるショックアブソーバシステム(20)をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項4】
前記ショックアブソーバシステム(20)は、中央ブロック(2)に、および一対のショックアブソーバ(15’、15”)に回転自在に連結されたクロスビーム(14)をさらに備え、前記ショックアブソーバ(15’、15”)のそれぞれは、弾性部材(12’、12”)およびダンパ(13’、13”)を備え、前記下側横アーム(4’、4”)に、または前記上側横アーム(5’、5”)に下部で回転自在に連結されている、請求項3に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項5】
前記ショックアブソーバシステム(20)は、ばねおよびダンパを備えるただ一つのショックアブソーバを備え、前記ショックアブソーバは、前記下側横アーム(4’、4”)に、または前記上側横アーム(5’、5”)に回転自在に連結されている、請求項3に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項6】
前記スピンドルの一方(11’)は、前記第1側方垂直材(3’)に第1回転軸(V’)中心に回転自在に連結され、前記スピンドルの他方(11”)は、前記第2側方垂直材(3”)に第2旋回軸(V”)中心に回転自在に連結されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項7】
前記スピンドル(11’、11”)は、ヒンジを通じて前記ステアリングチューブ(10)のアーム(17)に連結されたロッド(16’、16”)に回転自在に連結されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項8】
前記スピンドル(11’、11”)を通じて前記関節結合運動学的ローリング機構(1)に回転自在に連結された二つの前輪(300’、300”)を備える、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項9】
前記第1連結点(6’、6”)、前記第2連結点(7’、7”)、前記第3連結点(8’、8”)および前記第4連結点(9’、9”)の回転軸(R1’、R1”、R2’、R2”、R3’、R3”、R4’、R4”)は、互いに平行かつ地面
に平行である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項10】
前記ステアリングチューブ(10)は、前記第3連結点(8’、8”)の前記回転軸(R3’、R3”)がある平面(X)と交わる、請求項9に記載の前方キャリッジ(100)。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(100)を備える、原動機付き車両(900)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの前輪を備える三輪または四輪の傾斜またはローリング車両に関する。
【0002】
本発明は特に、従来の二輪が一列に並んだ原動機付き車両のように、車両とともに傾斜できる二つの前輪を備えるローリングスクータまたは原動機付き車両に関する。
【背景技術】
【0003】
いわゆる関節結合されたローリング四辺形の、すなわち、二つの前輪を地面から離すことなくフレームとともにロールさせることができる揺動運動学的機構の様々な構造が知られている。
【0004】
従来、関節結合ローリング四辺形は、少なくとも一つの上側クロスビーム、少なくとも一つの下側クロスビーム、前輪に連結された二つの側方垂直材、およびフレームに対して傾斜し且つ操舵するように結合され、車両のハンドルによって制御される中央本体を有する揺動運動学的機構を備える。
【0005】
この類いのローリング四辺形の例は、特許出願の国際公開第2001/092084号に開示されている。
【0006】
当該ローリング四辺形は、互いに、および回転軸が一致する中央ブロックにヒンジ連結された二つの上側クロスビームを有する。また、二つの下側クロスビームが中央本体にヒンジ連結され、それらは同様に回転軸が一致する。
【0007】
前述の上側クロスビームおよび下側クロスビームは、垂直材、上側クロスビーム、中央ブロックおよび下側クロスビームが関節結合ローリング四辺形を形成するように、右側垂直材および左側垂直材にヒンジ連結されている。二つの右側および左側関節結合四辺形はともに、車両の運動学的ローリング機構を形成する。二つの四辺形のローリング軸は、互いに平行である。
【0008】
操舵をするために、前輪のスピンドルは、実質的に地面に垂直な軸を備える垂直材にヒンジ連結されている。スピンドルは、車両ステアリングに連結されたステアリングロッドを用いて前輪を操舵するために回転制御されている。
【0009】
車両の運動学的操舵機構が当該車両の上側クロスビームに干渉しないようにするため、ステアリングロッドおよびステアリングチューブが運動学的ローリング機構に対して後退するように(または前に進むように)配置されることが必要であり、したがって大きな縦容積を生じさせる。
【0010】
国際公開第2001/092084号の解決策に関して、上側クロスビームの中央ローリング軸およびステアリング軸は、平面上にあるため、互いに交差しており、構造上の制限を避けるために、先行技術の解決策は、運動学的ローリング機構を操舵運動学的機構の正面に常に配置していた。
【0011】
この理由のため、運動学的ローリングおよび操舵機構を有する二つの前輪を備える車両に関する先行技術で既知の解決策は、あまり小型ではなく、したがって大きな体積を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【0013】
先行技術の前述の欠点は、本発明の第1対象、すなわち、関節結合運動学的ローリング機構を備える、二つの前輪を備える傾斜原動機付き車両用前方キャリッジ、によって解決される。関節結合運動学的ローリング機構は、
上下方向に延び、原動機付き車両のフレームと接続可能な中央ブロックと、
それぞれ上下方向に延び、各前輪のスピンドルに機械的に連結されている第1および第2側方垂直材と、
それぞれ第1連結点で中央ブロックと、第2連結点で側方垂直材とに回転自在に連結された第1および第2下側横アームと、
それぞれ第3連結点で中央ブロックと、第4連結点で側方垂直材とに回転自在に連結された第1および第2上側横アームと、を備え、
第1連結点と第3連結点との間の距離は、第2連結点と第4連結点との間の距離と実質的に等しく、
第1連結点と第2連結点との間の距離は、第3連結点と第4連結点との間の距離と実質的に等しく、
第1下側横アーム、第1側方垂直材、第1上側横アームおよび中央ブロックは、第1関節結合平行四辺形を形成し、第2下側横アーム、第2側方垂直材、第2上側横アームおよび中央ブロックは、第2関節結合平行四辺形を形成し、
関節結合平行四辺形が関節結合運動学的ローリング機構の各動作位置で互いに少なくとも一部において交わるように、第1連結点は、軸方向に整列し、第3連結点は、互いにずれて配置され、中央上下平面に対してずれて配置されている。
【0014】
関節結合平行四辺形が互いに少なくとも部分的に交わるという事実は、正面から見たとき、第1関節結合平行四辺形の少なくとも一部が第2関節結合平行四辺形に重なる、したがってその内側にある、ということを意味する。
【0015】
原動機付き車両の当該類いの前方キャリッジにより、運動学的ローリング機構の体積が著しく抑えられる。
【0016】
具体的には、第3連結点は、上側横アームを通じて連結されている側方垂直材に対して中央上下平面の反対側に配置されてもよい。具体的には、ステアリングチューブは、第3連結点の両方の回転軸がある平面と交わっている。
【0017】
当該類いの前方キャリッジは、側方垂直材との上側横アームの上側連結ヒンジを車両の中央上下平面へ向けて移動させることができる。したがって、操舵ステップにおいて垂直材が前輪の一つのブレーキ自体および/またはディスクブレーキキャリパと干渉するのを避けることができる。そうすることで、体積の削減を維持し、ステアリング軸をタイヤの中心線に近づけつつ、懸架装置の全傾斜および圧縮状態下で操舵角度を増加させることができる。
【0018】
特に、ステアリングチューブは、ステアリング軸中心に回転するように中央ブロックに回転自在に連結されてもよい。これにより、上側横アームの両方のヒンジおよびステアリングチューブを収納可能な、非常に小型な中央本体を作ることができる。
【0019】
前方キャリッジは、両方の下側横アームまたは上側横アームに連結され、少なくとも一つのショックアブソーバを設けられたショックアブソーバシステムをさらに備える。
【0020】
ショックアブソーバシステムは、中央ブロックに、および一対のショックアブソーバに回転自在に連結されたクロスビームをさらに備えてもよい。ショックアブソーバはそれぞれ、弾性部材およびダンパを備える。ショックアブソーバは、その下側端を下側横アームまたは上側横アームに回転自在に連結されている。当該解決策により、ショックアブソーバの範囲をより広くすることができ、したがって、特に平らでない地面において、車両の動的挙動が改善する。
【0021】
代替的に、ショックアブソーバシステムは、ばねおよびダンパを有する単一のショックアブソーバを備えてもよい。ショックアブソーバは、下側横アームまたは上側横アームに回転自在に連結される。
【0022】
それによって、ダンパ付き運動学的ローリング機構は、全体として非常に小型である。
【0023】
具体的には、両方のスピンドルは、より効率的な操舵ができるように側方垂直材に各ローリング軸中心に回転自在に連結されている。垂直材は、関節結合平行四辺形の他の部材に運動学的に連結されているが、操舵はできない。スピンドルのみが、それに連結されている車輪とともに、旋回軸に対して回転し、したがって、車両を操舵するように指定された部材を軽量化できる。
【0024】
スピンドルは、ロッドに回転自在に連結され、ロッドは、二重のヒンジを通じてステアリングチューブのアームに回転自在に連結されている。これにより、過度の摩擦を発生させることなく運動学的に結合でき、連続的な動作を確保できる。
【0025】
第1、第2、第3、第4連結点の回転軸は、互いに平行であり、実質的に地面に平行であり、関節結合平行四辺形の最適なダイナミクスを可能とする。
【0026】
用語、地面に実質的に平行とは、回転自在な連結点の軸が地面に平行な方向に対して±20°以下の傾斜を有してもよいことを意味する。
【0027】
本発明のさらなる目的は、上述されているような前方キャリッジを備える原動機付き車両を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の実施形態および関連する利点のより完全な理解は、添付図面と関連して考慮されるべき詳細な開示から明らかになるであろう。
【0029】
【
図1】
図1は、前方キャリッジが静止位置にあるときの、車輪を除いた、本発明による前方キャリッジの正面図を示す。
【
図2】
図2は、前方キャリッジが地面に対して傾斜しているときの、車輪を除いた、本発明による前方キャリッジの正面図を示す。
【
図3】
図3は、地面に対して平行な、上側横アームのローリングヒンジを通る平面による断面を表す、
図1の前方キャリッジの不等角投影図を示す。
【
図5】
図5は、ステアリング軸を通る縦平面による断面を表す、
図1の前方キャリッジの不等角投影図を示す。
【
図6】
図6は、ハンドルがない、本発明による前方キャリッジを備える車両の不等角投影図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一つ以上の実施形態の以下の記載は、添付図面に関連する。図面内の同じ符号は、同一または類似の要素を識別している。図面は、必ずしも一定の縮尺で記載されているわけではない。さらに、以下の詳細な説明は、発明自体を限定するものとして考えられるべきではない。発明の目的は、特許請求の範囲によって定められる。以下に記載される解決策の技術的な詳細、構造または特徴は、任意に互いに組み合わされてもよい。
【0031】
図1、
図2、
図3、
図4および
図5は、二つの操舵および傾斜またはローリング前輪を有する原動機付き車両用前方キャリッジ100を示す。
【0032】
具体的には、
図1および
図2は、関節結合運動学的ローリング機構1を備える前方キャリッジ100を示す。関節結合運動学的ローリング機構1は、点線で表されている二つの関節結合平行四辺形を備える。これらの関節結合平行四辺形のそれぞれは、二つの第1構成部品、すなわち、同じ長さを有する平行四辺形の第1の一対の辺、および二つの第2構成部品、すなわち、同様に同じ長さを有する平行四辺形の第2の一対の辺、を備える。傾斜運動の均一性を確実にするために、関節結合平行四辺形の対向する部材は、実質的に同じ長さを有し、互いに実質的に平行である。
【0033】
具体的には、関節結合運動学的機構の構成部品は、中央ブロック2、第1側方垂直材3’、第2側方垂直材3”、第1下側横アーム4’、第2下側横アーム4”、第1上側横アーム5’、第2上側横アーム5”である。
【0034】
前述の構成部品は、具体的にはヒンジ連結され得る連結点によって互いに連結されている。ヒンジは、横アームの端部に配置されると好ましい。したがって、横アームの末端部分は、中央ブロックおよび側方垂直材との回転連結を備える。
【0035】
具体的には、第1下側横アーム4’は、その第1端を、第1連結点6’によって中央ブロック2に連結され、反対側の端を、第2連結点7’で第1側方垂直材3’に連結されている。
【0036】
同様に、第2下側横アーム4”は、その第1端を、第1連結点6”によって中央ブロック2に連結され、反対側の端を、第2連結点7”で第2側方垂直材3”に連結されている。
【0037】
また、第1上側横アーム5’は、その第1端を、第3連結点8’によって中央ブロック2に連結され、反対側の端を、第4連結点9’で第1側方垂直材3’に連結されている。
【0038】
同じように、第2上側横アーム5”は、その第1端を、第3連結点8”によって中央ブロック2に連結され、反対側の端を、第4連結点9”で第2側方垂直材3”に連結されている。
【0039】
第1連結点6’、6”と第3連結点8’、8”の間の距離は、第2連結点7’、7”と第4連結点9’、9”の間の距離と実質的に等しい。
【0040】
同様に、第1連結点6’、6”と第2連結点7’、7”の間の距離は、第3連結点8’、8”と第4連結点9’、9”の間の距離と実質的に等しい。距離は一般的に等しく、関節結合平行四辺形が本明細書では記載されている。しかしながら、前方キャリッジの特別な形態において、車両のローリング中、一方の車輪の傾斜を他方の車輪に対して変化させるために、および違いをつけて前輪の負荷を分配するために、距離が異なる場合がある。関節結合平行四辺形でない関節結合四辺形は、最後の場合において、記載されている。
【0041】
具体的には、第1下側横アーム4’、第1側方垂直材3’、第1上側横アーム5’および中央ブロック2は、第1関節結合平行四辺形を形成する。一方、第2下側横アーム4”、第2側方垂直材3”、第2上側横アーム5”および中央ブロック2は、第2関節結合平行四辺形を形成する。
【0042】
すでに上述しているように、それぞれの関節結合平行四辺形は、等しく、平行な対辺を有する。
【0043】
特に
図3を参照すると、間接結合運動学的機構1の全体的な寸法を最小化するために、第1連結点6’、6”は、軸方向に並んでいる。すなわち、その回転軸R1’,R1”が一致している。一方、第3連結点8’、8”は、互いにずれて配置されている。すなわち、その回転軸R3’、R3”は、平行であるが、一致していない。
【0044】
具体的には、第3連結点8’、8”は、中央上下平面Mに対してもずれて配置されている。すなわち、第3連結点8’、8”は中央上下平面M上にない。
【0045】
中央上下平面Mは、車両の中央を通る想像上の平面であり、車両に対して長手方向に、地面に対して垂直に置かれている。車両が実質的に対称であると仮定すると、中央上下平面Mはまた、左右の対称面を意味してもよい。
【0046】
第3連結点8’、8”が互いにおよび中央上下平面Mに対してずれて配置されていることを考慮すると、上記されている関節結合平行四辺形は、関節結合運動学的ローリング機構1の各動作位置で互いに交わっている。
【0047】
図1を参照すると、右側関節結合平行四辺形は、左側関節結合平行四辺形の外周上にある左上の頂点を有し、それらの領域は重なり合っている。逆もまた同様であり、左側関節結合平行四辺形は、右側関節結合平行四辺形の外周上にある右上の頂点を有する。
【0048】
記載されている前方キャリッジが傾斜し、右側関節結合平行四辺形の左上の頂点が左側関節結合平行四辺形の領域にある
図2で示されているように、当該交わりは、関節結合運動学的機構1の全ての動作位置で発生する。
【0049】
具体的には、第3連結点8’、8”は、上側横アーム5’、5”を通じて連結されている側方垂直材3’、3”に対して、中央上下平面Mの反対側に配置される。明確にするために記載すると、第1上側横アーム5’は、中央上下平面Mに対して第2側方垂直材3”と同じ側にある第3連結点8’で中央本体2に連結されている。同様に、第2上側横アーム5”は、中央上下平面Mに対して第1側方垂直材3’と同じ側にある第3連結点8”で中央本体2に連結されている。本質的には、
図1および
図2において右側にある第1上側横アーム5’は、中央上下平面Mの左側に中央本体2との連結ヒンジを有する。これに対して、
図1および
図2において左側にある第2上側横アーム5”は、中央上下平面Mの右側に中央本体2との連結ヒンジを有する。
【0050】
代替的な形態では(図示されていない)、第3連結点8’、8”は、逆に配置され得る。すなわち、それぞれが、中央上下平面Mに対して参照側方垂直材の方へ配置される。
【0051】
全ての連結点6’、6”、7’、7”、8’、8”、9’、9”は、機械的な間隙を設けることなく、実質的に互いに平行なそれら自体の回転軸R1’、R1”、R2’、R2”、R3’、R3”、R4’、R4”を有する。回転軸R1’、R1”、R2’、R2”、R3’、R3”、R4’、R4”は、さらに実質的に地面に対して平行であり、ローリングができる。上述されているように、回転軸は、地面に対して±20°以下の傾斜を有してもよい。
【0052】
図3、
図4および
図5を参照すると、中央本体2は、回転軸R1’、R1”が一致するように両方の下側横アーム4’、4”を収納するように形成されている。
【0053】
また、中央本体は、ステアリングチューブ10を収納し、ステアリング軸S中心にその関連する回転ができるように形成されている。ステアリング軸Sは、中央上下平面M上にある。
【0054】
第3連結点8’、8”が互いにずれて、中央上下平面Mの反対側に配置されているため、その両方の回転軸R3’、R3”がある平面Xは、ステアリングチューブ10と交差している。
【0055】
回転軸R3’、R3”が互いにずれていない場合、ステアリングチューブは、そのように体積を削減して、中央本体2内で第3連結点8’、8”の間に置かれ得なかっただろう。第3連結点8’、8”およびステアリングチューブ10は、直径に関して、互いに影響を与えないような大きさである。
【0056】
中央本体2はさらに、第5連結点19で回転軸R5中心に回転するクロスビーム14を収納するように形成されている。回転軸R5は、回転軸R1’、R1”、R2’、R2”、R3’、R3”、R4’、R4”と平行である。
【0057】
クロスビーム14は、クロスビーム14の端部がそれぞれ、中央上下平面Mの右側と左側にあるように、その中央領域で、中央本体2と連結されている。
【0058】
クロスビーム14の各端部は、一対のショックアブソーバ15’、15”に回転自在に連結されている。各ショックアブソーバ15’、15”は、弾性部材12’、12”(例えば金属ばね)、およびダンパ13’、13”(例えば油圧ダンパ)を備える。
【0059】
ショックアブソーバ15’、15”のそれぞれは、
図1から
図5に示すように下端で下側横アーム4’、4”に、または上側横アーム5’、5”に(この形態は示されていない)、回転自在に連結されている。下側または上側横アームとの連結は、側方垂直材3’、3”との連結点と、中央本体2との連結点との間の任意の中間位置で生じてもよい。
【0060】
ショックアブソーバ15’、15”は、モータサイクルのバランスが悪くなるのを避けるために、両方の寸法および機能的特徴が互いに実質的に一致している。
【0061】
ショックアブソーバ15’、15”は、クロスビーム14とともに、ショックアブソーバシステム20を形成している。
【0062】
図1から
図5に示されている形態において、ショックアブソーバ15’、15”は、実質的に中間位置で下側横アーム4’、4”に連結され、左右方向で互いに一直線上に並んでいる。横アーム5’、5”は、縦方向で前方キャリッジ1を小型化するため、一方が二つのショックアブソーバ15’、15”の前方に、もう一方が後方に置かれている。
【0063】
代替的に、ショックアブソーバシステム20は、一つのショックアブソーバを単独で備えてもよい(示されていない)。その端部は、下側横アーム4’、4”にまたは上側横アーム5’、5”に回転自在に連結される。当該実施形態において、下側横アーム4’、4”または上側横アーム5’、5”は、ショックアブソーバの端部がヒンジ連結される突出部を有する(示されていない)。また、この場合、ショックアブソーバは、ばねおよびダンパを備える。
【0064】
図6を参照すると、前輪300’、300”は、スピンドル11’、11”に回転自在に連結されている。スピンドル11’、11”は、
図1から
図5で最もよく示されている。本実施形態において用語、スピンドル11’、11”は、スピンドルおよびハブホルダを備えるアセンブリを意味する。
【0065】
さらに、スピンドル11’、11”は、側方垂直材3’、3”に、各旋回軸V’、V”中心に、回転自在に連結されている。前方キャリッジを正面から見ると、これらの旋回軸V’、V”は、運動学的ローリング機構1の全ての動作位置でステアリング軸Sと常に平行である。それによって、スピンドル11’、11”は、車両が傾斜したときも、容易に回転される。さらに、当該前方キャリッジにより、側方垂直材3’、3”の中央上下平面Mに向かっての傾斜に起因して、先行技術の解決策に対して大きな傾斜を実現することができる。
【0066】
ステアリングチューブ10からスピンドル11’、11”への操舵の作動は、ロッド16’、16”によって生じる。ロッド16’、16”は、ステアリングチューブ10のアーム17に連結されている。
【0067】
具体的には、第1ロッド16’(
図4および
図5に示されている)は、一端をスピンドル11’の突出部に、他端を結合部22’に回転自在に連結されている。結合部22’は、ステアリングチューブ10のアーム17に回転自在に連結されている。
【0068】
同様に、第2ロッド16”は、スピンドル11”に、および結合部22’に回転自在に連結されている。結合部22’は、ステアリングチューブ10のアーム17に、または結合部22’に回転自在に連結されている。したがって、結合部22’および結合部22”は、互いに対して、および両方ともアーム17に対して、同軸上で自由に回転する。
【0069】
結合部22’と結合部22”は、互いに独立して回転してもよい。ロッド16’、16”は、二つの対となった独立した直交ヒンジでスピンドル11’、11”におよびアーム17に連結されている。ロッド16’およびロッド16”のそれぞれは、軸中心にロッドが回転できるように、すなわち、懸架装置の様々な操舵、ローリングおよび走行運動の組み合わせにおける前述のヒンジの平行度の変化を可能とするように、(
図3および
図4に示すように)スピンドル11’、11”との連結部に玉継手23’、23”を有してもよい。
【0070】
回転自在な連結、すなわち、互いに直列な二重の直交ヒンジの代わりに、玉継手(ボールジョイント)または自在継手(ユニバーサルジョイント)が設けられてもよい。
【0071】
フレーム200と一体的に連結されているヘッドチューブ21に対するステアリングチューブ10のそれぞれの回転は、アーム17によってロッド16’およびロッド16”へと伝達される。それによって、スピンドル11’、11”へ、したがって前輪300’、300”へと伝達される。
【0072】
図6を特に参照すると、上記されているものによる、二つの前輪300’、300”およびヘッドチューブ21から出ているステアリングチューブ10を包括的に含む前方キャリッジ100を備える車両900が示されている。
【0073】
ヘッドチューブ21は、フレーム200と一体である。フレーム200は、前後方向に後輪400まで実質的に延びている。
【0074】
図6において車両900は、典型的なスクータの様々な部品を有していない。しかしながら、当業者は、特別な技術的努力をすることなく、車両を完成させるために、先行技術から容易に得ることができる。例えば、ハンドル、本体、サドル、原動機などが示されていない。
【0075】
原動機付き車両900は、
図6に示されているように、二つの前輪と一つの後輪との三つの車輪を有することができる。または代替的に、二つの前輪と二つの後輪との四つの車輪を有してもよい(この形態は示されていない)。
【0076】
前述のヒンジまたは回転連結部は、ラジアル軸受または、アキシャル-ラジアル軸受を用いて作られてもよい。
【0077】
上記記載に関して、用語、前方または後方は、図面に示されているように、車両の通常の前後の延びを指す。
【0078】
本明細書において用語、傾斜およびローリングは、参照されている対象が、横方向に傾くことができることを意味する同義語として使用されている。
【0079】
最後に、本明細書に記載されている本発明の対象の実施形態が、図面に示され、詳細に上述されているが、着想された本発明が複数の改良または変形をされる余地があり、その全ては本発明に含まれるということは、当業者には明らかである。さらに、全ての詳細は、技術的に同等な要素に置き換えられてもよい。実質的に、技術的な要望に応じて、多くが変化されてもよい。したがって、本明細書に開示されている本発明の対象は、改良、置換または省略の可能性を全て含むように添付の特許請求の範囲によって広く考慮されるべきである。様々な実施形態の要素、構造および機器は、異なる方法で互いに組み合わされてもよい。