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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】日射反射特性を有するコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230524BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20230524BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230524BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230524BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230524BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230524BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230524BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230524BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/33
C09D5/02
C09D133/00
C09D175/04
C09D7/62
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/20 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020550705
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056763
(87)【国際公開番号】W WO2019179974
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】62/645,920
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18166553.0
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グリーンウッド,ピーター ハリー ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】スレプスキ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ノーディン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】サンディン,オロフ
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-512217(JP,A)
【文献】特開2015-147863(JP,A)
【文献】特開2010-202728(JP,A)
【文献】特開2009-279862(JP,A)
【文献】特開2007-262350(JP,A)
【文献】特開2006-232971(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099171(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/011182(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129340(WO,A1)
【文献】特開2018-028015(JP,A)
【文献】特表2015-519442(JP,A)
【文献】特開2014-218786(JP,A)
【文献】特開2001-115025(JP,A)
【文献】特開平06-057893(JP,A)
【文献】特開2007-190732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B 27/00
C08K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機シラン官能化コロイダルシリカおよび中空マイクロスフェアを含むコーティング組成物であって、
前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、
前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備え
前記有機シラン部の1つまたは複数が、エポキシ基を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
以下の条件:
a.前記有機シラン部の少なくとも1つが、1個または複数の親水基を含む;
b.前記有機シラン官能化コロイダルシリカの修飾度(DM)が、0.5~3の範囲である;
c.前記有機シラン官能化コロイダルシリカ中の前記シリカ粒子の表面積が、20~1500m-1の範囲、または50~900m-1の範囲である;
d.前記中空マイクロスフェアが、膨張性または膨張済み高分子マイクロスフェアであって、1種または複数の揮発性流体を封入する高分子シェルを備える;
e.前記中空マイクロスフェアの体積平均径が、1~500μmの範囲である;
f.前記コーティング組成物が、水性であって、30重量%以下の有機溶媒を含む;
g.前記コーティング組成物が、少なくとも1種の樹脂またはポリマーを含む1種または複数の有機バインダーを含む;
h.前記コーティング組成物が、少なくとも1種の樹脂またはポリマーを含む天然および合成ラテックスから選択される1種または複数の有機バインダーを含む;
のうちの1つまたは複数が適用される、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
以下の条件:
a.前記有機シラン部の1つまたは複数が、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリルオキシ、アミノ、アミド、ウレイド、イソシアネート、およびイソシアヌレートから選択される少なくとも1種の官能基を含む;
b.前記有機官能化コロイダルシリカの修飾度(DM)が、0.5~2の範囲である;
c.前記有機シラン官能化コロイダルシリカ中の前記シリカ粒子の表面積が、70~600m-1の範囲、または150~500m-1の範囲である;
d.前記高分子シェルが、熱可塑性高分子シェルであり、および/またはニトリル含有モノマーを含む;
e.前記マイクロスフェアの体積平均径が、3~200μmの範囲、または5~100μmの範囲である;
f.前記有機バインダーが、アクリルおよび/またはポリウレタンバインダーを含む;
g.前記コーティング組成物が、乾燥したとき、エラストマーコーティングを形成する;
h.前記有機バインダー中の少なくとも1種の樹脂またはポリマーのTが、20℃未満、または0℃未満、または-10℃未満である;
のうちの1つまたは複数が適用される、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
エラストマーコーティング組成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物で被覆した基材。
【請求項7】
前記コーティング組成物が乾燥した、請求項6に記載の基材。
【請求項8】
日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物の保存安定性、波長範囲が280~2500nmの放射反射率、および湿潤接着性の1つまたは複数を増大させるための、有機シラン官能化コロイダルシリカおよび任意選択により中空マイクロスフェアの使用であって、
前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、
前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備え
前記有機シラン部の1つまたは複数が、エポキシ基を含む、使用。
【請求項9】
引裂抵抗、引張強度、乾燥接着性、ならびに親水性および/または疎水性材料に対する防汚性の1つまたは複数を改善するための、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物における有機シラン官能化コロイダルシリカおよび任意選択により中空マイクロスフェアの使用であって、
前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、
前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備え
前記有機シラン部の1つまたは複数が、エポキシ基を含む、使用。
【請求項10】
コーティング寿命およびエージング特性を改善するための、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物における中空マイクロスフェアおよび任意選択により有機シラン官能化コロイダルシリカの使用であって、
前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、
前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備え
前記有機シラン部の1つまたは複数が、エポキシ基を含む、使用。
【請求項11】
引張強度、280~2500nmの範囲の放射反射率、湿潤接着性、ならびに親水性および/または防汚性に対する前記改善が、ISO16474-2に準拠した少なくとも1000時間のエージング後、依然として改善されている、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記有機シラン官能化コロイダルシリカおよび前記中空マイクロスフェアが、請求項3もしくは請求項4で規定されたとおりであり、ならびに/または前記日射反射コーティング組成物もしくはクールルーフコーティング組成物が、請求項3もしくは請求項4で規定された有機バインダーをさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物が、エラストマーコーティング組成物である、請求項8~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
コーティング組成物を作製する方法であって、有機シラン官能化コロイダルシリカ、中空マイクロスフェア、ならびに任意選択により1種または複数の有機バインダーおよび/または顔料を混合するステップを含み、前記コーティング組成物が請求項1~5に記載のとおりである、方法。
【請求項15】
前記有機シラン官能化コロイダルシリカが水性であって、10重量%未満の有機溶媒を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射反射特性を有し、例えば、建物への「クールルーフ」コーティングとして使用できる組成物に関する。本発明は、日射反射コーティング組成物の特性を改善する有機シラン修飾コロイダルシリカの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
反射コーティングは、一般にエアコンユニットの負荷を低減させることによって、エネルギー効率の改善を助けるために、建物などの構造物にしばしば塗布される。よく知られたコーティングのタイプは、いわゆる「クールルーフ」コーティングであり、これは、熱の蓄積を低減させるのに役立つ高い日射反射率特性を有する。
【0003】
日射反射特性を有する組成物の例には、中国特許第102399483号明細書、中国特許第104449171号明細書、中国特許第105778689号明細書、米国特許第6214450号明細書、米国特許第8287998号明細書、および米国特許第9540803号明細書に記載されたものがある。シリカ、および/またはガラスもしくは高分子マイクロスフェアなどのマイクロスフェアも、そのようなコーティングの構成成分でもよい。
【0004】
コロイダルシリカは、コーティング組成物の構成成分としても使用されており、有機シラン基で修飾されたコロイダルシリカを含み、例えば、中国特許第107603360号明細書、国際公開第2004/035474号パンフレット、国際公開第2008/057029号パンフレット、国際公開第2011/054774号パンフレット、国際公開第2012/130763号パンフレット、および国際公開第2013/167501号パンフレットに記載されているとおりである。
【0005】
改善された特性を有する日射反射組成物が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、有機シラン官能化コロイダルシリカおよび高分子中空マイクロスフェアを含む日射反射コーティング組成物を対象とする。
【0007】
本発明は、コーティングのある種の特性を改善する日射反射またはクールルーフコーティング組成物の成分としての有機シラン官能化コロイダルシリカおよび/または高分子中空マイクロスフェアの使用も対象とする。
【0008】
一態様では、有機シラン官能化コロイダルシリカおよび/または中空マイクロスフェアは、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物の保存安定性、波長範囲が280~2500nmの放射反射率、および湿潤接着性のうち1つまたは複数の特性を増大させるために使用できる。
【0009】
別の態様では、有機シラン官能化コロイダルシリカおよび任意選択による中空マイクロスフェアは、引裂抵抗、引張強度、乾燥接着性、ならびに親水性および/または疎水性材料に対する防汚性のうち1つまたは複数の特性を改善するために、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物に使用できる。
【0010】
さらなる態様では、中空マイクロスフェアおよび任意選択により有機シラン官能化コロイダルシリカは、コーティング寿命およびエージング特性を改善するために、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物に使用できる。
【0011】
有機シラン官能化コロイダルシリカは、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、中空マイクロスフェアは、高分子シェルを備える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
日射反射コーティング組成物は、以下により詳細に記載されるように、少なくとも1種の有機シラン官能化コロイダルシリカを含む。コーティング組成物は、適切な表面、一般に建物の屋根または壁、通常は外面への塗布に適するようにする他の成分も含む。
【0013】
高分子マイクロスフェアは、日射反射コーティング組成物の構成成分であってもよい。これについて、以下により詳しく説明する。
【0014】
[有機シラン官能化コロイダルシリカ]
有機シラン官能化コロイダルシリカは、例えば国際公開第2004/035473号パンフレットに記載されているように、従来のプロセスで作製できる。
【0015】
一般には、有機シラン官能化コロイダルシリカは、通常は式T4-ySi-[Rで表し得る1種または複数の有機シラン反応物と、シリカ表面上の1個または複数のシラノール基、すなわち[SiO]-OH基との反応から形成される。その結果、表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を含むシリカ表面となる。
【0016】
有機シラン反応物では、各Tは、一般に、独立して、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、ヒドロキシ、およびハライドから選択される。他の選択は、シロキサンの使用であって、シロキサンは、例えば、式[R3-bSi{-O-SiT2-c[R-O-SiT3-b[Rで表され、式中、aは0または1以上の整数であり、一般には0~5であって、bは1~3であって、cは1~2である。他の例には、ジシラザンがあり、式{[R3-bSi}-NHで表され、式中、bは1~3である。フルオロおよびクロロは、ハロアルコキシ基のハロ置換基として好ましい。アルコキシ基およびハライドは、T種としてしばしば好ましい。クロロは、ハライドとして適切な選択である。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、またはイソプロポキシなどのC1~4アルコキシ基は、アルコキシ基として適切な選択である。実施形態では、有機シラン反応物は、例えば、Greenwood and Gevert, Pigment and Resin Technology, 2011, 40(5), pp 275-284に記載されているように、1個または複数のT基が-OHに変換される前加水分解ステップを経ることができる。
【0017】
有機シラン反応物は、表面のシラノール基と反応し、シリカ表面と有機シランのケイ素原子間に1~3個のSi-O-Si連結を形成することができる。すなわち、{[SiO]-O-}4-y-z-[T]Si-[Rであって、式中、zは一般に0~2であって、yは一般に1~3であって、4-y-zは1~3であり、通常は1~2の範囲である。その結果、対応する数のT基が、有機シランから除去される。残りのT基は、シラン化反応でさらされた条件下での反応(加水分解など)の結果、他の官能基に変換され得る。例えば、Tがアルコキシ単位またはハライドの場合、ヒドロキシ基に変換し得る。
【0018】
有機シランの少なくとも一部が、コロイダルシリカに結合する前に、ダイマー形またはオリゴマー形でさえも可能である、すなわち、2つ以上の有機シラン部が、Si-O-Si結合を介して互いに結合している。
【0019】
化学的に結合された有機シラン基は、式[{SiO}-O-]4-y-z-[Z]-Si-[Rで表すことができる。{SiO}-O-基は、シリカ表面上の酸素原子を表す。有機シランのケイ素原子は、このようなシリカ表面への結合を少なくとも1つ、任意選択により最大3つ有する。式中、4-y-zは1~3であり、通常は1~2の範囲であって、すなわち、4-y-zは、少なくとも1であり、3以下である。Z基は任意選択により存在し、zは0~2の範囲である。有機シランのケイ素原子は、1~3個の[R]基を有し、すなわち、yは1~3であり、一般に1~2である。R基が複数ある場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0020】
zが0ではないとき、有機シランのケイ素は、未反応のT基を含み、および/または例えば加水分解反応を通して、T基が除去された場合、ヒドロキシ基を含む。あるいは、またはさらに、Si-O-Si連結は、隣接する有機シラン基のケイ素原子と形成され得る。したがって、式{[SiO]-O-}4-y-z[Z]-Si-[Rでは、Z基は(出現ごとに)上記でTを定義した官能基から選択してもよく、ヒドロキシ基および-O-[SiR]’基から選択してもよく、式中、[SiR]’基は、隣接する有機シラン基である。
【0021】
は、一般に有機部であり、1~16個の炭素原子、例えば1~12個の炭素原子、または1~8個の炭素原子を含む。Rは、C-Si直接結合によって、有機シランのケイ素に結合する。
【0022】
基が複数ある場合(すなわちyが1より大きい場合)、各Rは、同じであっても、異なっていてもよい。
【0023】
は、好ましくは、アルキル、アルケニル、エポキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1~6アルキルアリール、およびC1~6アルキルヘテロアリール基から選択され、任意選択により、ER、イソシアネート、およびイソシアヌレートから選択される1種または複数の官能基で置換される。
【0024】
ERでは、Eは存在しないか、-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)OC(O)-、-N(R)-、-N(R)C(O)-、-N(R)C(O)N(R)-、および-C(O)N(R)-から選択される連結基であって、式中、Rは水素またはC1~6アルキルである。
【0025】
は、Eに連結するか、Eが存在しなければ、Rに直接連結し、ハロゲン(一般にフッ素、塩素、または臭素)、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、C1~3アルキルアリール、およびC1~3アルキルヘテロアリールから選択される。Rは、任意選択により、ヒドロキシル、ハロゲン(一般にフッ素、塩素、もしくは臭素)、エポキシ、-OR、または-N(Rから選択される1種または複数の官能基で置換してもよく、式中、各Rは上記で定義したとおりである。Eが存在する場合、Rは水素であってもよい。
【0026】
上記の定義では、アルキルおよびアルケニル基は、脂肪族、環式でもよく、または脂肪族および環式部分の両方を含んでもよい。脂肪族基またはその部分は、直鎖または分岐鎖でもよい。任意の官能基または置換基がハロゲンを含む場合、ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、および臭素から選択される。
【0027】
いくつかの官能基は、コロイダルシリカ媒体中でさらされる条件下で加水分解反応を受けることができる。したがって、ハロゲン、アシルオキシ、(メタ)アクリルオキシ、およびエポキシ基などの部分を含む官能基は、加水分解し、対応するカルボキシル、ヒドロキシル、またはグリコール部を形成できる。
【0028】
実施形態では、1個または複数のR基は、C1~8アルキル、C1~8ハロアルキル、C1~8アルケニル、またはC1~8ハロアルケニルであって、一般にC1~8アルキルまたはC1~8アルケニルであって、任意選択によるハロゲン(例えばクロロ)置換基を有する。例としては、メチル、エチル、クロロプロピル、イソブチル、シクロヘキシル、オクチル、およびフェニルがある。実施形態では、これらのC1~8基は、C1~6基でもよく、またはさらなる実施形態では、C1~4基でもよい。炭素鎖が長くなると、水性系への溶解性が低下する傾向にあるため、有機シラン修飾コロイダルシリカの合成がより複雑になる。
【0029】
実施形態では、Rは、例えばプロピルイソシアネートなどのアルキルイソシアネートでもよい。Rは、イソシアヌレート部も含んでよく、例えばRは、プロピルイソシアヌレート部でも、それを含んでもよい。
【0030】
好ましい実施形態では、Rは親水部である。実施形態では、Rは、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリルオキシ、アミノ、アミド、ウレイド、イソシアネート、またはイソシアヌレートから選択される少なくとも1種の官能基を含む親水部である。さらなる実施形態では、親水部は、酸素および窒素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、共に連結された3個以下の連続するアルキレン(-CH-)基を含む。
【0031】
実施形態では、Rは、例えばC1~8アルキル基などの1~8個の炭素原子を含む官能基であって、さらに、Eが酸素であるER置換基を含み、Rは、任意選択により置換されたC1~8エポキシアルキルおよびC1~8ヒドロキシアルキルから選択される。あるいは、Rは、任意選択により置換されたアルキルイソシアヌレートでもよい。このようなER置換基の例には、3-グリシドキシプロピルおよび2,3-ジヒドロキシプロポキシプロピルがある。
【0032】
実施形態では、Rは、例えばC1~8アルキル基などの1~8個の炭素原子を含む官能基であって、さらにEが存在しないER置換基を含み、Rは、例えばエポキシシクロアルキルなどのエポキシアルキルである。そのようなR基の例は、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルである。あるいは、エポキシ基は、隣接する2個のヒドロキシ基でもよく、例えばRは、ジヒドロキシシクロアルキルなどのジヒドロキシアルキルでもよく、Rは、(3,4-ジヒドロキシシクロヘキシル)エチルでもよい。
【0033】
実施形態では、有機シランのケイ素原子に複数のR基がある場合、少なくとも1個は、C1~8アルキルまたはアルケニル基である。
【0034】
そうした官能化コロイダルシリカの作製に使用できる有機シラン反応物の例には、オクチルトリエトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;メチルトリメトキシシラン;トリス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン;3-(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(トリメトキシ[3-(オキシラニルメトキシ)プロピル]シランとしても知られる)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシランなどのエポキシ基(エポキシシラン)、グリシドキシおよび/またはグリシドキシプロピル基を含むシラン;3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシリルクロリド、ウレイドメチルトリエトキシシラン、ウレイドエチルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ならびにこれらの混合物がある。米国特許第4927749号明細書では、コロイダルシリカの修飾に使用できる、さらなる適切なシランを開示している。
【0035】
最も好ましい有機シランは、エポキシ基を含み、例えば、エポキシアルキルシランまたはエポキシアルキルオキシアルキルシランなどがある。ヒドロキシル置換基も好ましく、例えば、1個または複数のヒドロキシル基、例えば1個または2個のヒドロキシル基を含むヒドロキシアルキルおよびヒドロキシアルキルオキシアルキル基などがある。例としては、グリシドキシ、グリシドキシプロピル、ジヒドロプロポキシ、またはジヒドロプロポキシプロピル基を含む有機シランがある。これらは、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、および(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの有機シラン反応物から誘導し得る。本発明の組成物では、エポキシ基は加水分解して、対応する隣接ジオール基を形成できる。したがって、本発明は、上記のエポキシ基を含む化合物のジオール等価物も包含する。
【0036】
例えば、2種以上の有機シラン混合物をコロイダルシリカと反応させることによって、または別々に調製された2種以上の有機シラン修飾コロイダルシリカを混合することによって、有機シラン修飾シリカが生成する場合、修飾(または「官能化」)コロイダルシリカ中に複数種の異なる有機シランが存在し得る。
【0037】
シラン化合物は、シラノール基と、安定したシロキサン共有結合(Si-O-Si)を形成できる。さらに、シラン化合物は、コロイダルシリカ粒子の表面上で、例えば水素結合によって、シラノール基に連結できる。すべてのシリカ粒子が有機シランによって修飾されるとは限らない可能性がある。有機シランで官能化されるコロイダルシリカ粒子の割合は、例えば、シリカ粒子のサイズおよび利用可能な表面積、コロイダルシリカを官能化するのに使用される有機シラン反応物の、コロイダルシリカに対する相対的な量、使用される有機シラン反応物のタイプ、ならびに反応条件などの種々の要因によることになる。
【0038】
有機シランによるシリカ表面の修飾度(DM)は、シリカ表面1平方ナノメートル当たりのシラン分子数を用いて、以下の計算式(等式1)にしたがって、表すことができる。
【0039】
【数1】
【0040】
式中、
DMは、nm-2単位の表面修飾度であり、
Aは、アボガドロ定数であり、
organosilaneは、使用される有機シラン反応物のモル数であり、
silicaは、コロイダルシリカ中のシリカ表面積(m-1)であり、
silicaは、コロイダルシリカ中のシリカの質量(g)である。
【0041】
DMは、1nm当たりのシランが少なくとも0.8分子でもよく、好ましくは1nm当たり0.5~4分子の範囲である。好ましい実施形態では、DMが0.5~3、例えば1~2の範囲である。
【0042】
上記の等式では、シリカ表面積は、シアーズ滴定法によって好都合に測定される。
【0043】
本発明の組成物に使用されるコロイダルシリカは、安定化コロイドである。「安定化」とは、(通常は水性の)媒体中に分散した有機シラン官能化コロイダルシリカ粒子が、室温(20℃)での通常の保管時に、少なくとも2か月間、好ましくは少なくとも4か月間、より好ましくは少なくとも5か月間、実質的にゲル化または沈殿しないことを意味する。
【0044】
好ましくは、シラン官能化コロイダルシリカ分散体の、その調製時と調整後最大2か月の間の相対的な粘度増加は、100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは20%未満である。
【0045】
好ましくは、シラン官能化コロイダルシリカの、その調製時と調整後最大4か月の間の相対的な粘度増加は、200%未満、より好ましくは100%未満、最も好ましくは40%未満である。
【0046】
シリカゾル内のシリカ粒子は、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ホウ素などの、1種または複数の追加の酸化物で修飾されてもよい。ホウ素修飾シリカゾルは、さらに、例えば米国特許第2630410号明細書に記載されている。アルミナ修飾シリカ粒子は、適切には、Alの含有量が約0.05~約3重量%、例えば約0.1~約2重量%である。アルミナ修飾シリカゾルの調製手順は、さらに、例えば、"The Chemistry of Silica", by Iler, K. Ralph, pages 407-409, John Wiley & Sons (1979)および米国特許第5368833号明細書に記載されている。
【0047】
一般には、コロイダルシリカ中のシリカは、添加された追加酸化物を含まず、例えば、各追加酸化物の重量に対して1000ppm未満などの、微量または不純物以下の量を各場合で含む。一般には、ゾル中に存在する非シリカ酸化物の総量は、5000重量ppm未満、好ましくは、1000重量ppm未満である。
【0048】
コロイダルシリカ粒子は、適切には、平均粒子径が2~150nmの範囲であり、好ましくは約3~約50nm、最も好ましくは5~25nmである。好ましい実施形態では、平均粒子径は、6~20nmの範囲である。適切には、コロイダルシリカ粒子は、20~1500m-1の特定の表面積を有し、好ましくは50~900m-1、より好ましくは70~600m-1、例えば70~500m-1、または150~500m-1である。
【0049】
表面積は、合成に使用される「露出した」または「非官能化」コロイダルシリカの表面積としてしばしば表される。これは、シリカ表面の官能化は、表面積の測定を複雑にし得るからである。表面積は、シアーズ滴定法を用いて測定できる(G.W.Sears; Anal. Chem., 1956, 28(12) pp1981-1983)。粒子径は、"The Chemistry of Silica", by Iler, K. Ralph, page 465, John Wiley & Sons (1979)に記載された方法を用いて、滴定で測定された表面積から計算できる。シリカ粒子の密度が2.2g cm-3であり、すべての粒子が同じサイズであり、滑らかな表面積を有し、球形であるという仮定に基づき、粒子径は等式2から計算できる。
【0050】
【数2】
【0051】
一般には、水性シリカゾルを形成するために、コロイダルシリカ粒子は、一般にK、Na、Li、NH 、有機カチオン、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、および第1級アミン、またはそれらの混合物から選択される安定化カチオンの存在下で水中に分散する。分散体は、好ましくは、水に対する体積比が20%以下で、有機溶媒、一般には例えば低級アルコール、アセトン、またはそれらの混合物などの水混和性のものも含み得る。好ましくは、コロイダルシリカまたは官能化コロイダルシリカに、溶媒は添加されない。組成物中の有機溶媒は、有機シラン反応物のシリカとの反応により、有機シラン官能化コロイダルの合成中に生じることがある。例えば、有機シラン反応物がアルコキシドである場合、対応するアルコールが生成することになる。任意の有機溶媒の量は、好ましくは20重量%未満、好ましくは10重量%未満に維持される。
【0052】
官能化シリカゾルのシリカ含有量は、好ましくは5~60重量%の範囲であり、より好ましくは10~50重量%、最も好ましくは15~45重量%である。これは非官能化シリカの重量%として表され、有機シランによる修飾前のコロイダルシリカ原料中におけるシリカの重量%から計算される。
【0053】
官能化シリカゾルのpHは、適切には1~13の範囲であり、好ましくは2~12、例えば4~12、または6~12、最も好ましくは7.5~11である。シリカがアルミニウム修飾である場合、pHは、適切には3.5~11の範囲である。
【0054】
官能化コロイダルシリカは、適切には20~100のS値を有し、好ましくは30~90、最も好ましくは60~90である。
【0055】
S値は、コロイダルシリカ粒子の凝集範囲、すなわち、凝集の程度またはミクロゲルの形成を特徴づける。S値は、Iler, R. K. & Dalton, R. L. in J. Phys. Chem., 60 (1956), 955-957で提示された式にしたがって測定および計算できる。
【0056】
S値は、コロイダルシリカのシリカ含有量、粘度、および密度に依存する。高S値は、ミクロゲルの含有量が少ないことを示す。S値は、シリカゾルの分散相中に存在するSiOの量を重量パーセントで表している。ミクロゲルの割合は、さらに例えば米国特許第5368833号明細書に記載されているとおり、製造プロセス中に制御することができる。
【0057】
表面積と同様に、有機シラン官能化コロイダルシリカのS値は、一般にシラン修飾前のコロイダルシリカのS値として表される。
【0058】
実施形態では、シラン官能化シリカゾル中のシリカに対する有機シランの重量比は、0.003~1.5であり、好ましくは0.006~0.5、最も好ましくは0.015~0.25である。
【0059】
これに関連して、分散体中の有機シランの重量は、遊離可能な有機シラン化合物および有機シラン誘導体、またはシリカ粒子に結合もしくは連結した官能基の総量として計算される。すなわち、有機シラン修飾シリカを作製するために、コロイダルシリカに最初に添加された有機シラン反応物の総量に基づいており、必ずしも、実際にシリカに化学結合した有機シランの量の直接的な測定に基づくものではない。
【0060】
有機シラン官能化コロイダルシリカは、例えばコロイダルシリカを含まない組成物と比較して、コーティング組成物の種々の特性を改善するのに役立つ。
【0061】
特に注目すべき点は、引裂抵抗、引張強度、波長範囲が280~2500nmの電磁放射反射率、疎水性および親水性材料の両方に対する防汚性、湿潤および乾燥接着性、ならびに保存安定性の改善である。
【0062】
さらに、これらの利点は、コーティング組成物が、破断伸度、弾性、ならびに吸水に関する水透過性および水膨潤性などの他の要件に依然として応じながら、達成され得る。
【0063】
組成物中の有機シラン修飾コロイダルシリカの含有量は、一般に1~20重量%の範囲であって(すなわち水性コロイドの重量)、例えば2~15重量%、または2~11重量%の範囲である。
【0064】
シリカ(または「固体」)ベースで、コーティング組成物のシリカ含有量は、一般に0.1~10重量%であって、例えば0.5~7重量%、または0.5~3重量%である。
【0065】
[マイクロスフェア]
日射反射コーティング組成物は、高分子マイクロスフェアを含む。好ましくは、マイクロスフェアは中空であって、これが、コーティング組成物の反射特性、特に、可視光線(VIS)および近赤外線(NIR)反射率の改善に役立つからである。
【0066】
適切な中空高分子マイクロスフェアには、膨張性および膨張済みマイクロスフェアがある。膨張性高分子マイクロスフェアは、高分子シェルを備え、一般に熱可塑性高分子シェルであり、1種または複数の揮発性流体を封入する。揮発性流体は、加熱されると膨張し、対応してマイクロスフェアの膨張を引き起こし、膨張済みマイクロスフェアを作製する。膨張済み高分子マイクロスフェアが好ましい。
【0067】
揮発性流体は、マイクロスフェアを膨張させられるように、高分子シェルの軟化温度を超える温度で、十分に高い蒸気圧を有するように選択され、したがって、好ましくは、高分子シェルの軟化点以下である。一般には、大気圧での揮発性流体の沸点は、-50~250℃の範囲であり、例えば-20~200℃または-20~150℃の範囲、好ましくはー20~100℃の範囲である。実施形態における揮発性流体は、高分子マイクロスフェアの総重量の5~40重量%を構成し、例えば10~30重量%または15~25重量%を構成する。
【0068】
揮発性流体の例には、C4~10の環式、直鎖、または分岐炭化水素があり、一般にC4~12アルカンまたはアルケンであって、石油エーテルを含む。例としては、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ブタン、イソブタン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカンがある。他の揮発性流体には、全フッ素置換炭化水素などのC1~12ハロアルカンまたはハロアルケン、ならびにクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、および他の全フッ素置換炭化水素などのC1~2ハロアルカンおよびハロアルケンがある。揮発性流体は、好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソオクタン、およびイソドデカンのうち1種または複数から選択される。
【0069】
高分子マイクロスフェアの高分子成分は、エチレン性不飽和モノマーの重合から得られるホモポリマーまたはコポリマーでもよい。実施形態では、モノマーには、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル、またはクロトニトリルなどのニトリル含有モノマーを含み得る。実施形態では、モノマーには、アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸エチル、またはメタクリル酸ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステルを含み得る。実施形態では、モノマーには、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、または酢酸ビニルなどのビニルエステルを含み得る。実施形態では、モノマーには、スチレンなどのスチレン類、ハロゲン化スチレン、もしくはα-メチルスチレン;ブタジエン、イソプレン、およびクロロプレンなどのジエン;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物およびその塩;またはアクリルアミドもしくはN-置換マレイミドなどの他の不飽和モノマーを含み得る。このような任意のモノマーの任意の混合物も使用できる。
【0070】
高分子シェルは、好ましくは熱可塑性高分子シェルであり、実施形態では、ニトリル含有モノマーを含み、重合して高分子シェルを形成するモノマーの、好ましくは40~100重量%を構成し、例えば60~100重量%、80~100重量%、または90~100重量%を構成する。
【0071】
好ましい実施形態では、ニトリル含有モノマーは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルから選択される。他のエチレン性不飽和モノマーが存在する場合、好ましくは、ハロゲン化ビニリデン、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルのうち1種または複数から選択される。
【0072】
高分子シェルの軟化温度は、通常、そのガラス転移温度(T)に対応し、好ましくは60~200℃の範囲内であり、好ましくは80~200℃である。
【0073】
揮発性流体が存在する場合、その沸点は、通常、高分子シェルの軟化温度以下である。
【0074】
膨張性高分子マイクロスフェアでは、Tstart温度(すなわち膨張が始まる温度)は、好ましくは60~200℃の範囲であり、例えば80~190℃、または100~180℃である。Tmax(すなわち最大膨張に達する温度)は、好ましくは130℃より高く、より好ましくは150℃より高い。Tmaxは、通常300℃を超えない。
【0075】
マイクロスフェアは、架橋多官能性モノマーを含むことができ、その例としては、1種または複数のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、3-アクリロイルオキシグリコールモノアクリレート、トリアクリルホルマル、トリアリルイソシアネート、およびトリアリルイソシアヌレートがある。
【0076】
実施形態では、高分子シェルは、高分子マイクロスフェアの60~95重量%、例えば70~85重量%を構成する。架橋多官能性モノマーは、好ましくは、高分子シェルを作製するために使用されるモノマーの総量の最大10重量%を構成し、例えば0.01~10重量%、0.1~1重量%、好ましくは0.2~0.5重量%を構成する。
【0077】
高分子マイクロスフェアは、追加の成分、例えば、その製造に使用される1種または複数の固体懸濁剤を含んでよく、それは例えば、シリカ、チョーク、ベントナイト、デンプン、架橋ポリマー、メチルセルロース、ガム寒天、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コロイド粘土、ならびに1種または複数の、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉄、亜鉛、ニッケル、およびマンガンなどの金属塩、金属酸化物、および金属水酸化物からなる群から選択される。金属塩、金属酸化物、および金属水酸化物の例には、1種または複数の、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、ならびにアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル、およびマンガンの水酸化物がある。これらの固体懸濁剤が存在する場合、通常、主に高分子シェルの外面に配置される。固体懸濁剤は、一般に、高分子マイクロスフェアの総重量に対して0~20重量%の量で存在し、例えば1~20重量%、または2~10重量%の範囲で存在する。
【0078】
本発明の組成物に使用される高分子マイクロスフェアは、一般に、1~500μmの範囲、好ましくは3~200μmの範囲、より好ましくは5~100μmの範囲、例えば10~60μmの範囲の体積平均粒子サイズ(直径)、すなわちD(0.5)値を有する。粒子サイズは、適切には、光散乱法、例えば低角度光散乱法(LALLS)などのレーザー回折法を用いて測定される。マイクロスフェアは、未膨張マイクロスフェアから膨張することができる。一般には、Tstart温度を超える温度まで未膨張マイクロスフェアを加熱すると、元の直径の2~7倍、例えば元の直径の4~7倍のサイズに膨張する。
【0079】
マイクロスフェアは、非膨張または膨張済みの形態で使用でき、膨張済みおよび非膨張マイクロスフェアの混合物を使用できる。適切なマイクロスフェアの例には、国際公開第2007/073318号パンフレットに記載されたものがあり、商標名Expancel(商標)として販売されているものもある。
【0080】
マイクロスフェアは、乾燥形態、湿潤形態、またはスラリー形態として供してよい。コーティング組成物中での望ましい分散を確実するために、湿潤形態(通常は水による湿潤)が、一般には好ましい。輸送コストは高くなるが、スラリー形態も有利である。
【0081】
コーティング組成物にマイクロスフェアを添加すると、保存安定性、コーティング寿命およびエージング特性、波長範囲が280~2500nmの反射率、ならびに湿潤接着性を改善できる。
【0082】
マイクロスフェアと有機シラン官能化コロイダルシリカの両方を添加すると、保存安定性、引張強度、波長範囲が280~2500nmの反射率、湿潤接着性、ならびに疎水性および親水性汚染物の両方に対する防汚性を改善できる。その一方で、コーティング組成物は、例えば引裂抵抗、弾性、破断伸度、および乾燥接着特性などの他の要件にも依然として確実に応じている。
【0083】
マイクロスフェアと有機シラン官能化コロイダルシリカの両方を含む組成物は、長期的性能の点で特に優れており、経時後コーティングは、比較材料と比較して、特に、著しく改善された引張強度、反射率、湿潤接着性、および防汚性を示す。
【0084】
コーティング組成物中のマイクロスフェアの重量は、特に、低密度中空マイクロスフェアが使用される場合、一般に小さい。一般には、コーティング組成物中のマイクロスフェア含有量(乾燥マイクロスフェアに基づく)は、0.05~5重量%の範囲、例えば0.1~3重量%の範囲、例えば0.2~1.5重量%の範囲である。
【0085】
[有機バインダー]
一般には、日射反射コーティング組成物は、例えば、ラテックス、水溶性樹脂、および水溶性ポリマーからなる群の1種または複数から選択される有機バインダーを含む。アルキド樹脂は、例えば有機溶剤性コーティングに使用できる。しかし、水性コーティング組成物が好ましい。
【0086】
水溶性樹脂およびポリマーの例には、ポリビニルアルコール、改質ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリアミドアミン、ポリアクリルアミド、およびポリピロールがある。他のバインダーには、カゼイン、大豆タンパク質、合成タンパク質などのタンパク質がある。バインダーのさらなる例には、多糖類があり、それには例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよび加工デンプン、キトサン、ならびにグアーガム、アラビアガム、およびキサンタンガムなどの多糖類ガムがある。
【0087】
「ラテックス」という用語は、樹脂および/またはポリマーのエマルション性合成および天然ラテックスを含み、それには例えば、スチレン-ブタジエンポリマー、ブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー、ブチルポリマー、ニトリルポリマー、酢酸ビニルホモポリマー、ビニルアクリルポリマーまたはスチレン-アクリルポリマーなどのアクリルポリマー、ポリウレタン、エポキシポリマー、マイクロセルロースなどのセルロースポリマー、メラミン樹脂、ネオプレンポリマー、フェノール系ポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリビニルブチラールポリマー、シリコンゴムおよびシリコンポリマー(例えばシリコンオイル)などのシリコン、尿素-ホルムアルデヒドポリマー、ならびにビニルポリマーなどがある。
【0088】
実施形態では、コーティングが外用(例えば建物の日射反射コーティングとしての使用)である場合、有機バインダーは、水溶性樹脂もしくはポリマーではないか、またはそれを含まない。
【0089】
実施形態では、バインダーはラテックスであるか、またはそれを含む。他の実施形態では、バインダーは、例えば、スチレン-アクリルポリマーなどのアクリルポリマーであるか、またはそれを含む。さらなる実施形態では、バインダーはポリウレタンであるか、またはそれを含む。さらに別の実施形態では、バインダーは、アクリルポリマーとポリウレタンの両方を含む。
【0090】
コーティング組成物は、好ましくは、例えば、アクリルポリマーおよび/またはポリウレタンバインダーを含むエラストマーコーティングである。
【0091】
アクリルポリマーは、しばしば、アクリル、アクリレート、ポリアクリレート、またはアクリレートポリマーとも呼ばれ、本発明における使用に適しており、一般には、例えば乳化重合によって、モノエチレン性不飽和モノマーから得られる。アクリルポリマーは、適切なアクリレートモノマーから作製してもよく、アクリレートモノマーは、アクリル酸の構造に基づき、すなわち、ビニル基およびカルボン酸末端からなる。他の典型的なアクリレートモノマーは、1個のビニル水素およびカルボン酸水素の両方がメチル基で置き換えられたメタクリル酸メチルなどのアクリル酸誘導体である。他のアクリレートモノマーの例は、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレンオキシドアクリレート、ポリプロピレンオキシドアクリレート、ポリプロピレンオキシドメタクリレート、アリルアルコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、およびTMPTAである。これらのモノマーのうち2種以上の混合物も使用できる。アクリレートは、1種のアクリレートモノマーからなる場合、ホモポリマーと呼ばれる。あるいは、2種以上のモノマーを含む場合、ヘテロポリマーと呼んでもよい。アクリレートポリマーは、ラジカル付加機構を介して得ることができる。
【0092】
好ましくは、モノマーの少なくとも1種は、アクリルアミド、アルキレンオキシド、またはヒドロキシ官能基などの極性官能基を含み、より好ましくはヒドロキシ官能基を含む。ヒドロキシ官能基を含む適切なモノマーの例には、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、およびメタクリル酸ヒドロキシプロピルがある。より好ましくは、1種または複数のモノマーは、ヒドロキシ官能基を含むモノマーと、そうしたヒドロキシ官能基を含まないモノマーの混合物であり、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸メチルを含む混合物である。
【0093】
有機バインダーは、2種以上のポリマーおよび/またはラテックスの混合物を含むことができる。他の実施形態では、モノマーまたはオリゴマー混合物の共重合に基づき、コポリマー(例えばブロックまたはランダムコポリマー)を使用することができ、あるいは、コポリマーは、ポリマー主鎖の反応基が、異なるモノマー、オリゴマー、ポリマー単位をグラフト化するために使用され得るグラフトコポリマーの形態でもよい。
【0094】
コーティング組成物中のバインダーの量は、一般に、組成物の10~70重量%の範囲である。これは総重量に基づき、例えば、ラテックス/エマルションの場合は、有機物+水の総重量である。実施形態では、その量は、20~60重量%の範囲、例えば30~55重量%の範囲である。
【0095】
バインダーの樹脂のガラス転移温度(T)は、用途に応じて選択し得るが、通常は70℃未満であり、好ましい実施形態では50℃未満、さらにより好ましくは20℃未満である。
【0096】
例えば外面に塗布されるクールルーフまたは日射反射コーティングなどの、望ましいエラストマー特性が必要とされるいくつかの用途では、日中/夜間の温度変化や、雹の大降りまたはハリケーンなどの急な天候変化によってもたらされ得る急激な温度変化にもよる高度な膨張および収縮に対応する必要があり得る。したがって、実施形態では、有機バインダーの樹脂/ポリマーのTは、0℃未満であり、例えば-10℃未満、より好ましくは-20℃未満であって、いくつかの実施形態では-35℃未満である。通常は、Tは-100℃以上であり、実施形態では-70℃以上、または-50℃以上である。
【0097】
有機バインダーが複数種の樹脂またはポリマーを含む場合、これらのT値は、1種または複数の樹脂/ポリマーに準ずる。
【0098】
は、例えば、DIN53765の方法、または国際公開第2016/012358号パンフレットに記載された方法を用いて、示差走査熱量測定(DSC)によって測定し得る。
【0099】
[溶媒]
日射反射コーティング組成物は、共溶媒を含む1種または複数の溶媒を含んでもよい。好ましくは、溶媒は水である。実施形態では、何らかの有機溶媒は存在してもよいが、水および有機溶媒の総量に対して、有機溶媒は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下、または20重量%である。
【0100】
使用できる有機溶媒の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェニル-およびC1~4アルキル-エチレングリコールエーテルなどのエチレングリコールエーテル、ならびにフェニル-およびC1~4アルキル-プロピレングリコールエーテルなどのプロピレングリコールエーテルがある。実施形態では、グリコールエーテルとアルコールの混合物が使用できる。さらなる実施形態では、1種または複数の二塩基エステルまたはエステルアルコールが使用できる。極性溶媒および水混和性溶媒が好ましい。
【0101】
適切な市販の有機溶媒の具体例には、Lusolvan(商標)FBH(ジカルボン酸混合物ジイソブチルエステル)、Lusolvan(商標)PP(ジカルボン酸混合物ジイソブチルエステル)、Loxanol(商標)EFC300(C12およびC14脂肪酸メチルエステル)、ブチルCarbitol(商標)(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルCellosolve(エチレングリコールモノブチルエーテル)、Dowanol(商標)EPh(エチレングリコールフェニルエーテル)、Dowanol(商標)PPh(プロピレングリコールフェニルエーテル)、Dowanol(商標)TPnB(トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル)、Dowanol(商標)DPnB(ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、異性体混合物)、DBE-9(商標)(精製グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルの混合物)、Eastman DB(商標)溶媒(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、Eastman EB(商標)(エチレングリコールモノブチルエーテル)、Texanol(商標)(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、Dapro(商標)FX511(2-エチルヘキサン酸)、Velate(商標)262(安息香酸イソデシル)、ならびにArcosolve(商標)DPNB(ジプロピレングリコールノルマルブチルエーテル)がある。
【0102】
水性コーティング組成物は、有機溶媒系塗料にしばしば伴う高揮発性有機化合物(VOC)の含有を回避するため、好ましい。
【0103】
一実施形態では、液体コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して、0.1~5.0重量%の範囲の量、より好ましくは0.2~3.0重量%の有機溶媒を含む。
【0104】
[顔料]
日射反射コーティング組成物は、無機増量剤または充填剤を含む、任意の適切な染料または着色顔料を含み得る。無機白色もしくは着色顔料などの高密度無機固体、および炭酸カルシウム、チョーク、もしくは粘土などの無機増量剤または充填剤の量は、好ましくは、コーティングの固形分が、固形分>30重量%の好ましい範囲内に留まるような量である。一般には、コーティング組成物の固形分は、40~75重量%の範囲であって、例えば50~70重量%の範囲である。
【0105】
顔料は、通常、二酸化チタン、酸化亜鉛、または加鉛酸化亜鉛などの不透明顔料を含むことができる。しかし、例えば、カーボンブラック、黄色酸化物、褐色酸化物、黄褐色酸化物、ローおよびバーントシェンナもしくはアンバー、酸化クロムグリーン、フタロシアニングリーン、フタロニトリルブルー、ウルトラマリンブルー、カドミウム顔料、またはクロム顔料などの着色および染色顔料は、本発明の範囲外ではない。粘土、シリカ、タルク、またはマイカなどの充填剤も添加できる。
【0106】
日射反射率およびクールルーフ効果を改善するためには、二酸化チタン顔料が、その高屈折率の観点から好ましい。
【0107】
コーティング組成物中における中空マイクロスフェアおよび有機シラン官能化コロイダルシリカの使用は、防汚性への有益な効果という観点から、高「白色度」特性を得るのに役立つ。これは、国内基準で白色度/反射率特性を強化する必要がある場合、特に重要となり得る。
【0108】
[基材]
本発明の日射反射コーティング組成物で被覆できる適切な基材には、木材、木質基材(例えば、MDF、チップボード)、金属、石、プラスチックおよびプラスチックフィルム、天然および合成繊維、ガラス、セラミック、石膏、アスファルト、コンクリート、革、紙、フォーム、石材、煉瓦、ならびに/またはボードがある。
【0109】
コーティング組成物は、刷毛塗り、浸漬塗り、流し塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、またはパッド塗りを含む任意の従来法によって、そうした基材に塗布できる。スプレー塗りの場合、適切な溶媒(さらなる水またはアセトンなど)で、組成物をさらに希釈する必要があり得る。
【0110】
[他の添加剤]
コーティング組成物は、乾燥剤、二次乾燥剤、乾燥促進錯化剤、レベリング剤、UV安定剤、分散剤、界面活性剤、抑制剤、帯電防止剤、抗酸化剤、殺生物剤、皮張り防止剤、難燃剤、潤滑剤、消泡剤、増量剤、可塑剤、凍結防止剤、ワックス、増粘剤、またはチクソトロピック剤などの、1種または複数の他の添加剤を含み得る。
【0111】
コーティング組成物中に存在し得る他の成分は、組成物の想定される用途による。例としては、沈降防止剤、タレ防止剤、および脱気剤がある。
【0112】
これらの他の添加剤の総重量は、一般に、コーティング組成物の総量の10重量%を超えず、実施形態では、その量は、5重量%を超えない。
【0113】
これらの他の添加剤のうち、いくつかの例を以下に示す。
【0114】
[酸化防止剤および皮張り防止剤]
日射反射コーティング組成物は、任意選択により、メチルエチルケトオキシム、アセトンオキシム、ブチルアルドオキシム、ジアルキルヒドロキシルアミン、シクロヘキサノンオキシム、2-ペンタノンオキシム、またはそれらの混合物などの種々の酸化防止剤および皮張り防止剤を含むことができる。酸化防止または皮張り防止化合物が存在する場合、その適用濃度は、好ましくは、組成物の重量に対して、0.001~2重量%の範囲である。
【0115】
[増粘剤]
本発明の、バインダー組成物を含むコーティング組成物は、1種または複数の増粘剤をさらに含んでもよい。
【0116】
既知の増粘剤には、レオロジー改質粘土、ならびに非会合型および会合型有機増粘剤がある。
【0117】
粘土増粘剤の例には、ベントナイト、アタパルジャイト、および他のモンモリロナイト粘土がある。
【0118】
非会合型増粘剤は、主に、そのポリマー鎖の重複および/または絡み合いによって、ならびに/またはコーティング組成物内の空間体積を広く占有することによって、粘度を増加させる水溶性(または少なくとも水膨潤性)ポリマーである。この効果は、そのポリマー鎖の分子量、剛性、および直鎖性によって促進される。
【0119】
非会合型有機増粘剤の例には、「セルロース系」として知られる長鎖、中鎖、または短鎖セルロースエーテルがあり、セルロース系による水性系の粘度増加を非常に効果的にする直線で硬いポリマー主鎖を含む。セルロース系の例には、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロースがある。
【0120】
会合型増粘剤もまた、水溶性(または少なくとも水膨潤性)ポリマーである。会合型増粘剤は、ミセル様集合体への自己会合および存在するすべてのコロイド表面上への非特異的吸着が可能である、化学的に結合した疎水基を有する。この挙動は、従来の界面活性剤の挙動に似ている。その結果、コーティング組成物のブルックフィールド粘度を増加させる、一過性ポリマー鎖ネットワークとなる。
【0121】
会合型増粘剤は、水性コーティング組成物において広範な商業的使用を見出した。異なる型を区別することができる。
【0122】
第1の型は、疎水改質アルカリ可溶性エマルション、すなわち「HASE」型である。HASE型増粘剤の市販例は、重合または共重合した不飽和カルボン酸、またはアクリル酸、メタクリル酸、もしくは無水マレイン酸などの酸無水物の塩を含む親水性主鎖を有する。ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール)などの親水部は、親水性主鎖に結合し、そして、疎水基は親水部に結合する。使用には、HASE型増粘剤溶液を、中性または弱酸性のpHで、コーティング組成物に自由流動液体として添加する。次いで、ブルックフィールド粘度の増加は、pHを弱アルカリ性条件に上げることで起こり、その結果、カルボン酸アニオンが形成される。
【0123】
第2の会合型増粘剤の型は、疎水改質ヒドロキシアルカリ(特にエチル)セルロース系、すなわち「HMHEC」型であり、非会合型増粘剤として使用される型のヒドロキシアルキルセルロースに、長鎖アルキルエポキシドを添加することにより、好都合に作製される。
【0124】
第3の会合型増粘剤の型は、通常は末端が疎水基である、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック/縮合コポリマー「HEUR」型(疎水改質エトキシレートウレタン増粘剤)である。親水性ブロックは、例えば10000Da未満、好ましくは3400~8000Daの比較的低分子量であるポリアルキレンオキシド(特にポリエチレンオキシド)部によって、もたらされ得る。親水性ブロックは、例えば、トルエンジイソシアネートなどのウレタン形成疎水性ジイソシアネートと縮合される。
【0125】
第4の会合型増粘剤の型は、疎水基がN-アルキルアクリルアミドとのラジカルコポリマーとして組み込まれた疎水改質ポリアクリルアミド型である。これは、酸性コーティング組成物として最も有用である。
【0126】
第5の会合型増粘剤の型は、疎水改質エトキシレートウレタンアルカリ膨潤性エマルション、すなわち「HEURASE」として存在する。この型は、HASEおよびHEUR型の機能性を組み合わせたものである。
【0127】
使用できる他の増粘剤には、疎水改質ポリアセタールポリエーテル(HM-PAPE)増粘剤があり、例えば、国際公開第2003/037989号パンフレット、米国特許第5574127号明細書、および米国特許第6162877号明細書に記載されている。
【実施例
【0128】
ここで本発明について、以下の非限定的な実施例によって説明する。実施例は、一般に、アクリルバインダーベースの水性組成物であり、グリシドキシプロピルシラン修飾水性コロイダルシリカ(Levasil(商標)CC301)もしくは膨張性高分子マイクロスフェア(Expancel(商標)461WE20d36)のどちらか、またはその両方を含む。
【0129】
CC301グリシドキシプロピル官能化コロイダルシリカは、水性ゾルであり、シリカ含有量が28重量%であり、pHが8であり、密度が1.2g cm-3であり、粘度が5cPであり、エタノール含有量が2.5重量%である。官能化コロイダルシリカが調製されるコロイダルシリカは、一般に、S値が60~90の範囲であり、表面積が360m-1であり、平均粒子サイズが7nmである。DM値は、一般に1.4である。
【0130】
膨張済み高分子マイクロスフェアであるExpancel(商標)461WE20d36は、水で湿った形態で提供され、一般的な「乾燥」固形分(マイクロスフェア)は、15重量%である。水は、一般に、1重量%未満の分散剤を含む。粒子の体積平均粒子サイズ、D(0.5)は、20~30μmの範囲であり(マルバーンマスターサイザー2000で測定)、球体の密度は、36kg m-3である。高分子シェルは、アクリロニトリルコポリマーであり、塩化ビニリデンおよびメタクリル酸メチルモノマーも含む。
【0131】
実施例で使用される樹脂バインダー(PRIMAL(商標)またはRhoplex(商標)EC-1791E)は、アクリルエマルションであり、APEO(アルキルフェノールエトキシレート)を含まず、固形分が55重量%である。樹脂のTは-40℃である。
【0132】
実施例は、同質量の顔料(TiOおよびZnO)を使用し、一定のPVC(顔料体積濃度)を維持するように配合された。コロイダルシリカおよび高分子マイクロスフェアを添加した場合、対応する炭酸カルシウム充填剤を減らし、水を追加した。実施例8~10では、使用した有機シラン官能化コロイダルシリカの量は、対応する実施例4~6と同じであった。
【0133】
[比較例1]
【0134】
【表1】
【0135】
[実施例2]
本実施例は、約2重量%の膨張済みExpancel(商標)高分子マイクロスフェアを含み、炭酸カルシウムの半分が、対応する体積の高分子マイクロスフェアで置き換えられたことを除いて、比較例1の配合物に基づく。高分子マイクロスフェアの密度が非常に低いため、総質量は、比較例1の総質量未満である。
【0136】
【表2】
【0137】
[実施例3]
本実施例は、約5重量%の膨張済みExpancel(商標)高分子マイクロスフェアを含み、炭酸カルシウムを使用せず、マイクロスフェアの体積が、比較例1で使用された炭酸カルシウムの体積と等しいことを除いて、比較例1の配合物に基づく。高分子マイクロスフェアの密度が非常に低いため、配合物の質量は、比較例1の質量よりも著しく低い。
【0138】
【表3】
【0139】
[実施例4]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約6重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいて添加される水をより少なく含むことを除いて、比較例1の配合物に基づく。
【0140】
【表4】
【0141】
[実施例5]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約8重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいて添加される水をより少なく含むことを除いて、比較例1の配合物に基づく。
【0142】
【表5】
【0143】
[実施例6]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約10重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいて添加される水をより少なく含むことを除いて、比較例1の配合物に基づく。
【0144】
【表6】
【0145】
[実施例7]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約12重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいて添加される水をより少なく含むことを除いて、比較例1の配合物に基づく。
【0146】
【表7】
【0147】
[実施例8]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約7重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいてより少ない量の水を使用したことを除いて、実施例2の配合物に基づく。使用したコロイダルシリカの質量は、実施例4で使用した質量と同じである。
【0148】
【表8】
【0149】
[実施例9]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約10重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいてより少ない量の水を使用したことを除いて、実施例2の配合物に基づく。使用したコロイダルシリカの質量は、実施例5で使用した質量と同じである。
【0150】
【表9】
【0151】
[実施例10]
本実施例は、配合物の総重量に対して、約12重量%の有機シラン官能化コロイダルシリカを含み、それに応じて、ミルベースにおいてより少ない量の水を使用したことを除いて、実施例2の配合物に基づく。使用したコロイダルシリカの質量は、実施例6で使用した質量と同じである。
【0152】
【表10】
【0153】
実験
以下の実験では、初期コーティングまたは新コーティングに言及する場合は、最初の湿式塗布後、23℃、相対湿度50%で、14日間乾燥させたコーティングを意味する。経時後試料とは、以下の実験3で説明する条件下で、さらに1000時間経時した試料を指す。
【0154】
実験1 動的粘度
組成物の動的粘度を、回転(ブルックフィールド型)粘度計を使用して、ASTM D2196(25℃)に準拠し、測定した。結果を表1に収載する。
【0155】
【表11】
【0156】
屋根葺き材に使用するアクリルコーティングに対する要件(ASTM D6083に準拠)は、動的粘度が12~85Pa sである。したがって、マイクロスフェアおよび/または有機シラン官能化コロイダルシリカ改質コーティング組成物は、建築用コーティングとしての使用に適した粘度を有する。
【0157】
実験2 安定性
最初に、コーティング組成物の動的粘度を測定し、室温で1か月間保存した後にも測定した。別の試料もまた、その動的粘度も測定する前に、50℃で1か月間保持した。結果を表2に示す。粘度は、1s-1のせん断速度で、上述のASTM2196と同じ方法を用いて測定し、Pa s単位で表す。括弧内の数値は、初期値と比較した変化率を%で示したものである。
【0158】
【表12】
【0159】
結果は、改質された試料が、マイクロスフェアおよび有機シラン官能化コロイダルシリカを含まない組成物と比較して、改善された長期安定性を示すことを表している。
【0160】
実験3 加速エージング試験
ISO16474-2に準拠して、試料を1000時間超、加速エージング状態にさらした。最初に、試料をアルミニウム基材に塗布し、23℃、相対湿度50%で14日間乾燥させておき、その時点でミノルタCR-200三刺激値測色計を用いて最初の測定を行った。次に、試料を再分析する前に、Q-Sun Xe 3HS耐候性試験機のフィルター使用キセノンアークランプ下で、1000時間の加速エージングにさらした。結果を表3に示す。
【0161】
ΔEは、以下の等式にしたがって、エージング前後のL値、a値、およびb値の差を表す。
【0162】
【数3】
【0163】
実験は、改質コーティング組成物の視覚的な特性は、参照試料よりも劣化が遅いことを実証している。
【0164】
【表13】
【0165】
実験4 引張特性
測定は、新コーティングおよび経時後コーティングで行った。コーティングは、2種のコートを4時間間隔で塗布することによって形成し、500±50μmの乾燥フィルムを得た。7日後にフィルムを基材から剥がし、残りの乾燥およびエージングプロセスのために基材上に置いたままにした。
【0166】
破断伸度および引張強度(最大応力)をASTM D2370の方法を用いて測定した。測定は、実験3に記載の条件下で、直ちに、または1000時間のエージング後に、基材から剥離したフィルムで行った。乾燥フィルムの厚さは、約500μmの厚さであり、試験前に7.5×1.3cmの大きさの断片に切断した。
【0167】
切断したフィルム片の両端を、クランプの間隔が25mmになるように固定した。フィルムが裂けるまで、クランプを25±0.5mm/分の速度で引き離した。移動するクランプに対する最大抵抗時点も測定した。使用した装置は、Instron(商標)3355ユニバーサル試験機であった。結果を表4に示す。
【0168】
これらの結果は、有機シラン官能化コロイダルシリカによるコーティング組成物の改質が、破断伸度の性能に有意な悪影響なく、初期および長期引張強度の両方を改善することを実証している。例えば、本発明による実施例はすべて、100%以上の破断伸度値に対するASTM D6308の要件を達成する。
【0169】
【表14】
【0170】
実験5 引裂抵抗
実験4と同じ装置を使用して、ASTM D624の試験方法にしたがって、初期乾燥コーティング(厚さ500μm)の引裂抵抗を測定した。500mm/分の速度でクランプを引き離した。結果を表5に示す。
【0171】
本実験は、有機シラン官能化コロイダルシリカが、改善された引裂抵抗をコーティングに付与することを実証している。本実験は、マイクロスフェアおよび修飾コロイダルシリカの両方を含むコーティングが、これらのいずれの成分も含まないベース材料よりも、少しも悪くないことも示している。
【0172】
【表15】
【0173】
実験6 低温柔軟性
ASTM D522に準拠して、アルミニウム基材上のコーティング柔軟性を、円錐マンドレル屈曲試験を用いて測定した。フィルムの厚さは約360μmであった。塗布後、23℃、相対湿度50%で72時間乾燥させておき、次いで、実験3に記載の条件下でエージングを行った。
【0174】
エージング後、および測定を行う前に、試料を50℃、相対湿度50%で120時間調整し、次いで、-26℃で1日調整した。試験では、マンドレルの連続して減少する直径に沿って、被覆した基材を屈曲させる。結果は、亀裂を目視できない、最小のマンドレル直径に基づく。結果を表6に示す。
【0175】
ASTM D6308の場合、13mm以上の値が必要である。試験を行ったすべての試料がこの要件を満たし、コーティングの低温柔軟性特性が、有機官能化シラン修飾コロイダルシリカまたはマイクロスフェアの使用によって、悪影響を受けないことを示している。
【0176】
【表16】
【0177】
実験7 防汚性
被覆したアルミニウム基材を、酸化鉄およびカーボンブラック水性ペーストで汚した。このペーストは、水およびカーボンブラック/酸化鉄顔料のみを含み、他の添加剤を含まない。特徴づけを行うために、濃縮汚れペーストを表面に置き、24時間乾燥させておく。最初に、乾燥ケーキを柔らかいタオルを用いて流水で除去する。第2のステップでは、雨および洗浄のシミュレーションを行うために、表面も柔らかいタオルを用いて水および石鹸で洗う。色度座標(L、a、b)を、最初に、および塗装面を汚して、洗った後に、実験3で上述の三刺激値測色計を使用して測定する。次いで、「洗浄した」コーティングと「汚れる前の」コーティング間の合計色差値であるΔE(上記参照)を計算する。低ΔE値は、高防汚性に対応する。
【0178】
新コーティング(室温で1か月乾燥後)および実験3で説明した方法でさらに1000時間経時した試料について、付着耐性を測定した。結果を表7に収載する。
【0179】
本結果は、マイクロスフェアおよび/または有機官能化コロイダルシリカによるコーティングの改質は、疎水性および親水性材料(例えば、カーボンブラックおよび酸化鉄)の付着耐性を改善することを示している。マイクロスフェアおよび有機修飾コロイダルシリカの両方で改質されたコーティング組成物の場合、長期的効果が、特に改善される。
【0180】
【表17】
【0181】
エージングによる全体的な反射率の長期変化(1%未満)は、一例では、メキシコ標準NMX-U-125-SCFI-2016で説明されるように、例えば反射率の最大許容減少が20%であることと比較すると、非常に低い。
【0182】
実験8 総日射反射率
波長範囲が280~2500nmの反射率を、室温で、湿度50%で1か月間乾燥後のアルミニウム被覆基材で測定し、実験3で上述したように、さらに1000時間経時した被覆基材でも測定した。ASTM G173を参照し、ASTM E903試験方法を用いた。使用した装置は、アジレントキャリー5000UV可視光分光器であった。
【0183】
結果は表8に、反射率の値を%で示す。乾燥フィルムの厚さは236~340μmの範囲であった。
【0184】
【表18】
【0185】
この結果は、マイクロスフェアおよび/または有機シラン官能化コロイダルシリカによる改質により、特に可視、赤外、および近赤外領域にわたるスペクトルのコーティング反射率特性が長期に渡って改善されることを実証している。
【0186】
実験9 水蒸気透過性
23℃/相対湿度50%で14日間乾燥後の新乾燥コーティングの独立フィルム(すなわち基材から除去後)において、ASTM D1653に準拠した水蒸気透過性試験を行った。結果を表9に示す。
【0187】
perm値は、メートル単位で測定し、USperm値は、変換係数1.51735を使用して計算した。本結果は、ASTM D6083の要件では、水蒸気透過性が50USperm以下であるため、改質コーティングの水蒸気透過特性は、クールルーフ用途の使用に適していることを示している。参考までに、高perm値は、高水蒸気透過性に関連する。
【0188】
【表19】
【0189】
マイクロスフェアおよび有機シラン官能化コロイダルシリカのどちらかが使用される場合、蒸気透過性が増加することに注目したい。しかし、両方が使用されると、この増加が累積せず、代わりに、この組み合わせにより、官能化コロイダルシリカのみと比較して、透過性が改善される(減少する)。これは予想外のことである。
【0190】
実験10 接着性
ASTM D903およびASTM C794の試験方法に準拠し、湿潤および乾燥接着性試験を行った。亜鉛メッキ鋼基材に、コーティングを刷毛で塗布した。次いで、2.5cm幅の布片を上に置き、続いて、別のコーティング層を塗布した。乾燥時間は、23℃/相対湿度50%で、14日間であった。総コーティング厚は、約500μmであった。
【0191】
乾燥接着試験では、布片を50mm/分の牽引速度で、180℃の角度で後方に引っ張り、そのために必要な力を測定した。
【0192】
湿潤接着試験も同様に行ったが、試料を水道水に周囲温度で168時間浸した後に行った。
【0193】
結果を表10に示す。
【0194】
【表20】
【0195】
有機シラン官能化コロイダルシリカおよび/またはマイクロスフェアを含む組成物を使用すると、湿潤および乾燥接着性、特に湿潤接着性の改善が見られた。
【0196】
実験11 水膨潤試験
ASTM D471の試験を用いて、新乾燥コーティング(23℃/相対湿度50%で14日間)の独立フィルムのへの吸水量を測定した。結果を表11に示す。
【0197】
ASTM D6083の要件では、吸水量が最大20重量%であるため、この試験は、改質コーティング組成物の吸水性が、外用コーティングとして、例えばクールルーフコーティングとしての使用において、依然として許容されることを示している。
【0198】
【表21】
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]有機シラン官能化コロイダルシリカおよび中空マイクロスフェアを含むコーティング組成物であって、前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備える、コーティング組成物。
[2]日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物である、上記[1]に記載のコーティング組成物。
[3]以下の条件:
a.前記有機シラン部の少なくとも1つが、1個または複数の親水基を含む;
b.前記有機シラン官能化コロイダルシリカの修飾度(DM)が、0.5~3の範囲である;
c.前記有機シラン官能化コロイダルシリカ中の前記シリカ粒子の表面積が、20~1500m -1 の範囲、または50~900m -1 の範囲である;
d.前記中空マイクロスフェアが、膨張性または膨張済み高分子マイクロスフェアであって、1種または複数の揮発性流体を封入する高分子シェルを備える;
e.前記中空マイクロスフェアの体積平均径が、1~500μmの範囲である;
f.前記コーティング組成物が、水性であって、30重量%以下の有機溶媒を含む;
g.前記コーティング組成物が、少なくとも1種の樹脂またはポリマーを含む1種または複数の有機バインダーを含む;
h.前記コーティング組成物が、少なくとも1種の樹脂またはポリマーを含む天然および合成ラテックスから選択される1種または複数の有機バインダーを含む;
のうちの1つまたは複数が適用される、上記[1]または[2]に記載のコーティング組成物。
[4]以下の条件:
a.前記有機シラン部の1つまたは複数が、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリルオキシ、アミノ、アミド、ウレイド、イソシアネート、およびイソシアヌレートから選択される少なくとも1種の官能基を含む;
b.前記有機官能化コロイダルシリカの修飾度(DM)が、0.5~2の範囲である;
c.前記有機シラン官能化コロイダルシリカ中の前記シリカ粒子の表面積が、70~600m -1 の範囲、または150~500m -1 の範囲である;
d.前記高分子シェルが、熱可塑性高分子シェルであり、および/またはニトリル含有モノマーを含む;
e.前記マイクロスフェアの体積平均径が、3~200μmの範囲、または5~100μmの範囲である;
f.前記有機バインダーが、アクリルおよび/またはポリウレタンバインダーを含む;
g.前記コーティング組成物が、乾燥したとき、エラストマーコーティングを形成する;
h.前記有機バインダー中の少なくとも1種の樹脂またはポリマーのT が、20℃未満、または0℃未満、または-10℃未満である;
のうちの1つまたは複数が適用される、上記[3]に記載のコーティング組成物。
[5]エラストマーコーティング組成物である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のコーティング組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のコーティング組成物で被覆した基材。
[7]前記コーティング組成物が乾燥した、上記[6]に記載の基材。
[8]日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物の保存安定性、波長範囲が280~2500nmの放射反射率、および湿潤接着性の1つまたは複数を増大させるための、有機シラン官能化コロイダルシリカおよび/または中空マイクロスフェアの使用であって、前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備える、使用。
[9]引裂抵抗、引張強度、乾燥接着性、ならびに親水性および/または疎水性材料に対する防汚性の1つまたは複数を改善するための、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物における有機シラン官能化コロイダルシリカおよび任意選択により中空マイクロスフェアの使用であって、前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備える、使用。
[10]コーティング寿命およびエージング特性を改善するための、日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物における中空マイクロスフェアおよび任意選択により有機シラン官能化コロイダルシリカの使用であって、前記有機シラン官能化コロイダルシリカが、その表面に結合した1つまたは複数の有機シラン部を有するシリカ粒子を含み、前記中空マイクロスフェアが高分子シェルを備える、使用。
[11]引張強度、280~2500nmの範囲の放射反射率、湿潤接着性、ならびに親水性および/または防汚性に対する前記改善が、ISO16474-2に準拠した少なくとも1000時間のエージング後、依然として改善されている、上記[8]~[10]のいずれかに記載の使用。
[12]前記有機シラン官能化コロイダルシリカおよび前記中空マイクロスフェアが、上記[3]もしくは上記[4]で規定されたとおりであり、ならびに/または前記日射反射コーティング組成物もしくはクールルーフコーティング組成物が、上記[3]もしくは上記[4]で規定された有機バインダーをさらに含む、上記[8]~[11]のいずれかに記載の使用。
[13]前記日射反射コーティング組成物またはクールルーフコーティング組成物が、エラストマーコーティング組成物である、上記[8]~[12]のいずれかに記載の使用。
[14]コーティング組成物を作製する方法であって、有機シラン官能化コロイダルシリカ、中空マイクロスフェア、ならびに任意選択により1種または複数の有機バインダーおよび/または顔料を混合するステップを含み、前記コーティング組成物が上記[1]~[5]に記載のとおりである、方法。
[15]前記有機シラン官能化コロイダルシリカが水性であって、10重量%未満の有機溶媒を含む、上記[14]に記載の方法。