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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】血管内インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20230524BHJP
   A61F 2/86 20130101ALI20230524BHJP
【FI】
A61F2/915
A61F2/86
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021171433
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2019503392の分割
【原出願日】2017-03-28
(65)【公開番号】P2022009272
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】62/316,128
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518346029
【氏名又は名称】ヴェスパー メディカル、 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VESPER MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ロンゴ、マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】コークチ、クリストファー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン、ウィリアム ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】サンダー、テア ローズ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0325141(US,A1)
【文献】特表2007-500051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/915
A61F 2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張型ステントであって、
前記ステントの長手方向軸に沿って隣接して位置する複数の環であって、該環のそれぞれが、交互に頂部と谷部を形成するように相互に接続された複数のストラットを含む、複数の環;および
前記複数の環の隣接する対の間に延在し、前記頂部の少なくとも1つに接続して前記隣接する対を接続する複数の柔軟性があるブリッジ部材であって、該柔軟性があるブリッジ部材が複数の異なる形状に形成され、該柔軟性があるブリッジ部材の形状が、前記ステントの長手方向軸に沿って、接続された環の1つの対から次に隣接する接続された環の1つの対までの間で異なっている、複数の柔軟性があるブリッジ部材を含み:
前記複数の柔軟性があるブリッジ部材が、
1の環の対を接続する第1のセットのブリッジ部材であって、該第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第1の方向性とを有する、第1のセットのブリッジ部材;および
2の環の対を接続する第2のセットのブリッジ部材であって、該第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第2の方向性を有し、該第2の方向性が、前記ステントの長手方向軸に垂直に延びる横断面に対して前記第1の方向性と鏡像対称である、第2のセットのブリッジ部材;
第3の環の対を接続する第3のセットのブリッジ部材であって、前記第3のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第3の方向性を有する、第3のセットのブリッジ部材;および
第4の環の対を接続する第4のセットのブリッジ部材であって、前記第4のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第4の方向性を有し、前記第4の方向性が、前記横断面に対して前記第3の方向性と鏡像対称である、第4のセットのブリッジ部材;を含み、
前記第1のセットのブリッジ部材および前記第2のセットのブリッジ部材が、それぞれ2つの鋭角の屈曲部を有する概ねZ字型のブリッジ部材として形成され、前記第3のセットのブリッジ部材および前記第4のセットのブリッジ部材が、それぞれ丸みを帯びた2つの屈曲部を有する概ねS字型のブリッジ部材として形成されている、自己拡張型ステント。
【請求項2】
前記第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記第1の環の対の一方の少なくとも1つの頂部と、前記第1の環の対の他方の少なくとも1つの頂部とに接続され、前記第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記第2の環の対の一方の少なくとも1つの頂部と、前記第2の環の対の他方の少なくとも1つの頂部とに接続されている、請求項1に記載の自己拡張型ステント。
【請求項3】
前記第1のセットのブリッジ部材が、前記ステントの長手方向軸の周りの周方向において、接続された頂部がそれぞれ該周方向中の少なくとも1つの接続されていない頂部によって他の接続された頂部から離間するように、間隔を置いており、
前記第2のセットのブリッジ部材が、前記周方向において、接続された頂部のそれぞれが前記周方向中の少なくとも1つの接続されていない頂部によって他の接続された頂部から離間するように、間隔を置いている、請求項に記載の自己拡張型ステント。
【請求項4】
前記第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されており、前記第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されている、請求項1に記載の自己拡張型ステント。
【請求項5】
前記第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に対して平行でも垂直でもない方向に向けられた少なくとも3つのブリッジストラットを含み、前記第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向の軸に対して平行でも垂直でもない方向に向けられた少なくとも3つのブリッジストラットを含む、請求項1に記載の自己拡張型ステント。
【請求項6】
前記横断面が、前記ステントの長手方向の中間点に位置している、請求項1に記載の自己拡張型ステント。
【請求項7】
自己拡張型ステントであって、
前記ステントの長手方向軸に沿って隣接して位置する複数の環であって、該環のそれぞれが、交互に頂部と谷部を形成するように相互に接続された複数のストラットを含む、複数の環;および、
前記複数の環の隣接する対の頂部の間に延在し、前記隣接する対を接続する複数の柔軟性があるブリッジ部材であって、該柔軟性があるブリッジ部材が複数の異なる形状に形成され、該柔軟性があるブリッジ部材の形状が、前記ステントの長手方向軸に沿って、接続された環の1つの対から次の隣接する接続された環の1つの対までの間で異なっている、複数の柔軟性があるブリッジ部材を含み:
前記複数の柔軟性があるブリッジ部材が、
1の環の対を接続する第1のセットのブリッジ部材であって、該第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第1の方向性を有する、第1のセットのブリッジ部材;および
2の環の対を接続する第2のセットのブリッジ部材であって、該第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第2の方向性を有し、該第2の方向性が、前記ステントの長手方向軸に垂直に延び、前記ステントの長手方向の中間点に位置している横断面に対して前記第1の方向性と鏡像対称である、第2のセットのブリッジ部材;
第3の環の対を接続する第3のセットのブリッジ部材であって、前記第3のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第3の方向性を有する、第3のセットのブリッジ部材;および
第4の環の対を接続する第4のセットのブリッジ部材であって、前記第4のセットのブリッジ部材のそれぞれが、2つの屈曲部と、前記ステントの長手方向軸に対する第4の方向性を有し、前記第4の方向性が、前記横断面に対して前記第3の方向性と鏡像対称である、第4のセットのブリッジ部材;を含み、
前記第1のセットのブリッジ部材および前記第2のセットのブリッジ部材が、それぞれ2つの鋭角の屈曲部を有する概ねZ字型のブリッジ部材として形成され、前記第3のセットのブリッジ部材および前記第4のセットのブリッジ部材が、それぞれ丸みを帯びた2つの屈曲部を有する概ねS字型のブリッジ部材として形成されている、自己拡張型ステント。
【請求項8】
前記第1のセットのブリッジ部材が、前記ステントの長手方向軸の周りの周方向において、接続された頂部のそれぞれが該周方向中の少なくとも1つの接続されていない頂部によって他の接続された頂部から離間するように、間隔を置いており、
前記第2のセットのブリッジ部材が、前記周方向において、接続された頂部のそれぞれが前記周方向中の少なくとも1つの接続されていない頂部によって他の接続された頂部から離間するように、間隔を置いている、請求項に記載の自己拡張型ステント。
【請求項9】
前記第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されており、前記第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されている、請求項に記載の自己拡張型ステント。
【請求項10】
前記第1のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されており、前記第2のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されており、
前記第3のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されており、前記第4のセットのブリッジ部材のそれぞれが、前記ステントの長手方向軸の方向に互いに整列した一対の頂部に接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の自己拡張型ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年3月31日に提出された仮出願番号62/316,128の仮ではない出願であり、仮出願番号62/316,128の優先権を主張する。仮出願番号62/316,128は、本明細書中でその全体が示されているかのように、この言及により全ての目的についてその全体が本明細書中に組み込まれる。
[技術分野]
【0002】
体内への移植用ステント、並びに送達及び/又は展開のための方法が本明細書中で開示される。本明細書中で開示される特定の実施形態は、メイ・ターナー症候群(May-Thurner syndrome)及び/又は深部静脈血栓症、並びにそれにより生じる血栓後症候群を処置するための術式において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
メイ・ターナー症候群は腸骨静脈圧迫症候群としても知られており、左下肢の総静脈の流出路の圧迫が、不快感、腫脹、疼痛、及び/又は深部静脈血栓症(DVT)(血餅として一般的に知られている)を含むがこれらに限定されない様々な有害な作用を引き起こし得る症状である。メイ・ターナー症候群は、左総腸骨静脈に右総腸骨動脈が重なることにより圧迫された場合に起こり、鬱血につながる。これはいくつかの個体においては血餅の形成を引き起こし得る。他に、あまり一般的ではないが、右総腸骨動脈による右総腸骨静脈の圧迫のようなメイ・ターナー症候群のバリエーションが記載されている。
【0004】
メイ・ターナー症候群は、下肢静脈障害のうちの2~5パーセントを占めると考えられているが、これは頻繁に見落とされる。それにもかかわらず、メイ・ターナー症候群が、男性よりも女性において約3倍多く見られ、典型的には20歳~40歳の間の年齢で顕在化することが一般的に認識されている。凝固性亢進と左下肢の血栓症の両方を示している患者は、メイ・ターナー症候群に罹患している可能性がある。その診断を確認するためには、例えば、アンチトロンビン、プロテインC、プロテインS、第V因子ライデン、及びプロトロンビンG20210Aの濃度を評価することにより、凝固能亢進状態の他の原因を排除することが必要であり得る。
【0005】
下大静脈に並行してほぼ垂直に上方に伸びる右総腸骨静脈とは対照的に、左総腸骨静脈はより横断的な経路をとる。この経路に沿って、左総腸骨静脈は右総腸骨動脈の下に位置することになり、右総腸骨動脈が左総腸骨静脈を腰椎に対して圧迫し得る。腸骨静脈の圧迫は頻繁に起こる解剖学的変異であり、健康な人の4分の1においてほぼ50%の左腸骨静脈の内腔の圧迫が起こっていると考えられる。しかし、左総腸骨静脈の圧迫は、そのような圧迫が静脈の血流又は静脈圧にかなりの血液動態変化を生じる場合、又は、左総腸骨静脈の圧迫が急性又は慢性の深部静脈血栓症(これは以下でさらに詳細に議論される)につながる場合にのみ臨床的に有意になる。圧迫に関連する他の問題に加えて、静脈はまた、上に重なっている動脈により常にかかる脈動の圧縮力の影響により、腔内の線維性の拍車状物(spur)を生じる可能性がある。
【0006】
メイ・ターナー症候群に伴う狭窄した乱流チャネルは、おそらく、罹患患者を血栓症になりやすくする。そして、血流障害は、多くの場合は、血管側枝を生じて、最も頻繁には、水平方向に骨盤を横切る側枝を形成し、両方の内腸骨静脈をつないで、右総腸骨静脈を通るさらなる流出の可能性を生じる。時により、垂直方向の側枝(最も頻繁には、両側腰部(paralumbar)の側枝)が形成され、これは、ヒリヒリ感及びしびれのような神経症状を引き起こす可能性がある。
【0007】
メイ・ターナー症候群の処置及び/又は管理についての現在の最良の慣行は、臨床所見の重篤度に比例する。下腿の腫脹及び疼痛は、血管外科医、インターベンションナル心臓専門医、及びインターベンショナル放射線科医(極度の疼痛の原因が確実に評価されるように動脈及び静脈の疾患の診断及び処置の両方を行う)のような血管の専門医により評価されることが最良である。メイ・ターナー症候群の診断は、通常、磁気共鳴静脈造影法及び静脈造影図を含み得る1種類以上の画像診断法により確認される。つぶれた/平たくなった左総腸骨静脈(left common iliac)は従来の静脈造影法を使用してみることができない又は気づけない可能性があるので、メイ・ターナー症候群の診断は通常は、血管内超音波法を用いて確認される。左総腸骨静脈の鬱血の下流で起こる結果としての長期にわたる腫脹又は疼痛を防ぐために、下腿からの血液の流出が改善/増大されなければならない。初期段階又は合併症のない症例は、加圧ストッキングで簡単に管理することができる。後期又は重篤なメイ・ターナー症候群には、血栓症が最近発症した場合には血栓溶解が必要であり得、続いて、静脈造影図又は血管内超音波法を用いた診断の確認後に、腸骨静脈の血管形成術及びステント留置術が必要であり得る。ステントは、血管形成術後のさらなる圧迫からその領域を支えるために使用され得る。しかし、現在利用することができるステント留置術の選択は、かなりの短縮、柔軟性の欠如(血管を真っすぐにする力が過剰にかかり得る)、血管の摩耗及び最終的な穿孔、早期の疲労破損を引き起こすステントにかかる負荷の増大及びステントの変形、並びに/或いは末梢動脈疾患を引き起こす可能性がある、上に重なっている左腸骨動脈中の血流の妨害を含む、いくつかの合併症に悩まされる。メイ・ターナー症候群において存在する圧迫され、狭窄した流出路は、鬱血を引き起こす可能性があり、これは、深部静脈血栓症の重要な原因である。
【0008】
メイ・ターナー症候群に罹患している患者の一部は血栓症を示し得るが、血栓症を示さない患者も存在し得る。それでも、血栓症の症状を経験していないそれらの患者は、なおも、いつでも血栓症を経験する可能性がある。患者が広範囲に及ぶ血栓症を有している場合は、薬理学的な及び/又は機械的な(すなわち、薬理機械的な)血栓除去術が必要となり得る。メイ・ターナー症候群により生じた鬱血は、深部静脈血栓症(「DVT」)の発症率の増大と正の関係がある。
【0009】
深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)、即ち、深部静脈の血栓症(deep venous thrombosis)は、主に下腿の、深部静脈の中での血餅(血栓)の形成である。右及び左総腸骨静脈は深部静脈血栓症についての一般的な位置であるが、他の発生位置も一般的である。その状態に付随する特異的ではない症状として、疼痛、腫脹、赤み、暖かみ、及び充血した表在静脈を挙げることができる。深部静脈血栓症の生命を脅かす可能性がある合併症である肺塞栓症は、血栓が部分的又は完全に脱着し、これが肺に移動することにより起こる。深部静脈の血栓症に付随する別の長期にわたる合併症である血栓後症候群は、心臓へと戻る静脈血の減少により起こる医学的状態であり、これには、慢性的な下腿の疼痛、腫脹、赤み、及び潰瘍又はただれの症状が含まれ得る。
【0010】
深部静脈血栓症の形成は、典型的には、ふくらはぎの静脈の弁の内側で始まる。ここでは、血液は比較的酸素が枯渇した状態にあり、これによって特定の生化学的経路が活性化される。癌、精神的外傷、及び抗リン脂質抗体症候群を含むいくつかの医学的状態が、深部静脈血栓症のリスクを高める。他のリスクファクターとして、高齢、外科手術、運動抑制(例えば、ベッドでの静養、整形外科用ギプス、及び長時間の飛行の際の座位により経験するようなもの)、混合経口避妊薬、妊娠、出生後期、及び遺伝的要因が挙げられる。これらの遺伝的要因として、アンチトロンビン、プロテインC、及びプロテインSの欠損症、第V因子ライデンの突然変異、並びにO型以外の血液型を有しているという性質が挙げられる。深部静脈血栓症の新しい症例の割合は、子供から高齢者までで劇的に増大し、成人では、1000人の成人のうち約1人が、毎年症状を発症する。
【0011】
深部静脈血栓症の共通する症状として、疼痛又は圧痛、腫脹、暖かみ、赤み又は変色、及び表面の静脈の膨張が挙げられるが、深部静脈血栓症の状態にある者のうちの約半分には症状はない。兆候および症状だけでは、診断するには感度は十分ではなく、十分には特異的でないが、既知のリスクファクターと組み合わせて考えた場合には、深部静脈血栓症の可能性を決定する手助けとなり得る。深部静脈血栓症は患者の評価後の診断としてしばしば除外される。疑わしい症状は、蜂巣炎、ベーカー嚢胞、筋骨格系の外傷、又はリンパ浮腫のような他の無関係な原因に起因する場合がより多い。他の様々な診断として、血腫、腫瘍、静脈瘤又は動脈瘤、及び結合組織系の障害が挙げられる。
【0012】
さらなる凝固を防ぐが、既存の血餅には直接は作用しない抗凝固療法が、深部静脈血栓症についての標準治療である。他の可能性のある補助的な治療法/処置法として、加圧ストッキング、選択的動作及び/又はストレッチ、下大静脈フィルター、血栓溶解、並びに血栓除去術を挙げることができる。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明は、関連する分野の限界および欠点が原因である課題のうちの1つ以上を回避する血管内ステントに関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の利点は、第1の圧壊抵抗力を有している第1のセクション、及び第2の圧壊抵抗力を有している第2のセクションを含む、放射状に拡張可能な管状ステントを提供することである。ここでは、第1の圧壊抵抗力は第2の圧壊抵抗力より弱く、第1のセクションが、第1のセクションと第2のセクションの接続が管の軸方向に伸びる管を形成するように第2のセクションに対して接続されている。
【0015】
本発明の別の態様では、放射状に拡張可能な管状ステントのさらなる実施形態には、少なくとも2つの、軸方向に繰り返し存在する環が定義する、複数の周方向に隣接するクローズドセル;及び周方向に隣接するクローズドセルのそれぞれの1つずつを接続する複数の連結ストラットが含まれる。ここでは、複数の連結ストラットの数は複数の連結ストラットの数より少なく、その結果、隣接する環の中の、より少ない数の複数の周方向に隣接するクローズドセルが連結ストラットにより接続される。
【0016】
血管内ステントのさらなる実施形態、特徴、および利点、並びに血管内ステントの様々な実施形態の構造及び操作が、添付の図面を参照して以下に詳細に記載される。
さらに、本発明の実施形態として、以下を含む。
[1]
放射状に拡張可能な管状ステントであって、ここでは、
第1の圧壊抵抗力を有している第1のセクション及び第2の圧壊抵抗力を有している第2のセクションを含み、
第1の圧壊抵抗力は第2の圧壊抵抗力より弱く;
第1のセクションは、管を形成するように第2のセクションに対して接続されており、
第1のセクションと第2のセクションの接続は管の軸方向に伸びている、
放射状に拡張可能な管状ステント。
[2]
前記第1のセクションが前記第2のセクションよりも変形に対して小さい抵抗性を有している、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[3]
ステントが、管を形成するように接続された2つの第1のセクションと2つの第2のセクションを含む、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[4]
第2のセクションが第1のセクションにより互いに隔てられ、第1のセクションが第2のセクションにより互いに隔てられるように、前記第1のセクションが前記第2のセクションの間に存在している、[3]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[5]
前記第1のセクションが第1の軸に対して対称であり、前記第2のセクションが第2の軸に対して対称であり、前記第1の軸及び第2の軸が、管の軸方向に実質的に垂直な管の断面の軸である、[4]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[6]
前記第1の軸の長さが前記第2の軸の長さより長い、[5]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[7]
前記第1のセクションが第1の軸に対して両側に非対称であり、前記第2のセクションが第2の軸に対して両側に非対称であり、前記第1の軸及び第2の軸が、管の軸長に実質的に垂直な管の断面の軸である、[4]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[8]
前記第1の軸の長さが前記第2の軸の長さより長い、[0]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[9]
前記第1のセクションが少なくとも1つの弱いストラットを含み、各々の弱いストラットが部分的につぶれた状態及びつぶれた状態を有しており、各々の第2のセクションが複数の強いストラットを含み、各々の強いストラットが部分的につぶれた状態及びつぶれた状態を有しており、ここでは、各々の強いストラットをつぶすために必要な力は、各々の弱いストラットをつぶすための力より大きい、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[10]
前記弱いストラットが拘束されていない状態にある場合は、前記少なくとも1つの弱いストラットは別の弱いストラットとは接触しない、[9]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[11]
前記弱いストラットが完全に圧縮されている状態にある場合は、前記少なくとも1つの弱いストラットは別の弱いストラットとは接触しない、[9]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[12]
弱いストラットより強いストラットを多く含む、[9]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[13]
前記第1のセクションが少なくとも1つの弱いストラットを含み、各々の弱いストラットが部分的につぶれた状態及びつぶれた状態を有しており、各々の第2のセクションが複数の強いストラットを含み、各々の強いストラットが部分的につぶれた状態及びつぶれた状態を有しており、ここでは、各々の弱いストラットの個々のストラット圧壊抵抗力が、各々の強いストラットの個々のストラット圧壊抵抗力より大きい、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[14]
角度がついた遠位末端をさらに含む、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[15]
遠位末端の角度が一般的には5°~45°の範囲内である、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[16]
遠位末端の角度が一般的には10°~40°の範囲内である、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[17]
遠位末端の角度が一般的には15°~35°の範囲内である、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[18]
遠位末端の角度が一般的には20°~25°の範囲内である、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[19]
遠位末端の角度が約25°である、請求項1に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[20]
遠位末端の角度が患者の血管にフィットするために必要な角度である、[1]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[21]
放射状に拡張可能な管状ステントであって、ここでは、
少なくとも2つの軸方向に繰り返し存在する環が定義する複数の周方向に隣接するクローズドセル;及び
周方向に隣接するクローズドセルのそれぞれの1つずつを接続している複数の連結ストラットを含み、
前記複数の連結ストラットの数が複数の連結ストラットの数より少なく、その結果、隣接する環の中の複数の周方向に隣接するクローズドセルのより少ない数が連結ストラットにより接続される、
放射状に拡張可能な管状ステント。
[22]
前記連結ストラットが、それぞれの環の反対側に対になるように配置されている、[21]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[23]
前記連結ストラットの隣接するものが、それぞれの環の軸の周りの少なくとも1つの軸方向にインデックスされたセルの回転を伴うように配置され、それにより連結ストラットの螺旋の方向性が生じる、請求項21に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[24]
前記連結ストラットが、ステントの長さに沿って予め決定された柔軟性を提供するように構成されている、[21]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[25]
前記柔軟性がステントの長さに沿って変化する、[24]に記載の放射状に拡張可能な管状ステント。
[26]
インプラントであって、ここでは、
その長さ方向に沿った様々な柔軟性を有している自己拡張型ステントを含み:
前記自己拡張型ステントは、
第1の複数の個々のステントのセル;及び
柔軟性がある複数のブリッジ部材を含み、
ここでは、前記ステントのセルのうちの少なくとも1つの前記第1のセルが、ステントのセルのうちの第2のセルに対して、少なくとも1つの柔軟性があるブリッジ部材により連結されており、それによって柔軟性がある構築物が形成されており;
ここでは、第2の複数の個々のステントのセルは、柔軟性があるブリッジ部材の1つによっては任意の他のステントのセルには連結されておらず、前記第2の複数の個々のステントのセルの数は前記第1の複数の個々のステントのセルの数より少ない、
インプラント。
[27]
ステントの全長が、個々のステントのセルの長さ及び柔軟性があるブリッジ部材の長さを含む、[26]に記載のインプラント。
【0017】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明のいずれもが、例示的かつ説明のためのものにすぎず、請求されるような本発明の限定ではないことが理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書中に組み込まれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、血管内ステントを説明する。説明と一緒に、図面は、本明細書中に記載される血管内ステントの原理の説明をさらに提供し、それにより、関連技術の当業者が血管内ステントを作製し、使用することを可能にする。
【0019】
図1図1は、腹部大動脈及び下大静脈のL5腰椎及び分岐の下-後面図を示す。
【0020】
図2図2は、左総腸骨静脈の上にある右総腸骨動脈の標準的な重なりの概略図を示す。
【0021】
図3図3は、灰色の点線に沿ってとった、図2に示した動静脈系の断面の概略図を示す。
【0022】
図4A図4Aは、3つの異なる状態にある楕円形のステントの1つの実施形態を示す。図4Aは、圧縮されていない、拘束されていないステントを示す。
図4B図4Bは、3つの異なる状態にある楕円形のステントの1つの実施形態を示す。図4Bは、送達のために高度に圧縮されたステントを示す。
図4C図4Cは、3つの異なる状態にある楕円形のステントの1つの実施形態を示す。図4Cは、血管内で展開されたステントを示す。
【0023】
図5A図5Aは、両側に対称な弱いセクションと両側に対称な強いセクションを有している楕円形のステントの1つの実施形態を示す。
【0024】
図5B図5Bは、両側に非対称の弱いセクションと両側に非対称の強いセクションを有している楕円形のステントの1つの実施形態を示す。
【0025】
図6A図6Aは、図5A~5Bのステントの弱いセクションのストラットについての1つの実施形態を示す。
図6B図6Bは、図5A~5Bのステントの弱いセクションのストラットについての1つの実施形態を示す。
【0026】
図7A-B】図7A~Bは、図5A~5Bのステントの強いセクションのストラットについての1つの実施形態を示す。
【0027】
図8A図8Aは、最大基準血管径と比較して、図5Bのステントを示す。
【0028】
図8B-C】図8B~Cは、ステントが最大基準血管径の状態にある場合の、図8Aのステントの強いストラットと弱いストラットを示す。
【0029】
図9A図9Aは、最小基準血管径と比較して図5Bのステントを示す。
【0030】
図9B-C】図9B~Cは、ステントが最小基準血管径の状態にある場合の、図8Aのステントの強いストラットと弱いストラットを示す。
【0031】
図10A図10Aは、送達デバイスの管腔内に入れられた図5Bのステントを示す。
【0032】
図10B-C】図10B~Cは、ステントが送達デバイスの管腔内に入れられている場合の、図8Aのステントの強いストラットと弱いストラットを示す。
【0033】
図11A-E】図11A~Cは、強いセクションと弱いセクションを有している楕円形のステントの1つの実施形態についての様々な図を示す。
【0034】
図12図12は、左総腸骨静脈の中で展開された環状のステントとともに、図3の解剖学的断面図を示す。
【0035】
図13図13は、左総腸骨静脈の中で展開された楕円形のステントとともに、図3の解剖学的断面図を示す。
【0036】
図14図14は、第1のセクション、第2のセクション、及び第3の遷移性のセクションを有しているハイブリッド型のステントを示す。
【0037】
図14A-C】図14A~Cは、高い半径方向力及びその長さ方向に沿った柔軟性の両方を有しているステントの1つの実施形態についての様々な図を示す。
【0038】
図15図15は、様々な位置の図14A~14Cに示したステントの「Z」ストラットを示す。
【0039】
図16図16は、ステントの1つの実施形態のセル及びセル柔軟性があるブリッジ部材を含む、個々の構成要素を示す。
【0040】
図17図17は、高い半径方向力を有しているセルの形状を示す。
【0041】
図18図18は、セル及び柔軟性があるブリッジ部材から形成されている柔軟性がある構築物のネットワークを示す。
【0042】
図19A-B】図19A~Bは、様々な柔軟性があるブリッジ部材の構造を示す。
【0043】
図20A-H】図20A~Hは、直径の範囲において選択的に調節することができる、拡張された埋め込みサイズを有しているインプラントの様々な図を示す。
【0044】
図21A-D】図21A~Dは、柔軟性を保ちつつ短縮を最小限にするように設計されたステントの1つの実施形態の様々な図を示す。
【0045】
図22A-E】図22A~Eは、複数のアンカー部材を有している血管内ステントの様々な図を示す。
【0046】
図23A-F】図23A~Fは、図22A~22Eの血管内ステントとともに使用することができるアンカーの様々な可能な形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
メイ・ターナー症候群、即ち腸骨静脈圧迫症候群は、図1に示すように、腸骨動脈が腸骨静脈を脊椎に対して圧迫している場合に、末梢静脈系において起こる。図1は、脊椎骨、腹部大動脈の分岐付近の右及び左総腸骨動脈、並びに下大静脈の分岐付近の右及び左総腸骨動脈を説明している。これらの分岐は一般的には、L5腰椎の脊椎骨付近に存在している。したがって、図1が、L5腰椎、並びに腹部大動脈及び下大静脈の分岐の下-後面図を示していることがわかる。
【0048】
図で示されるように、強い右総腸骨動脈が腸骨静脈を圧迫し、これにより腸骨静脈の狭窄が生じる。これは、典型的ではないとしても、メイ・ターナー症候群の1つの起こり得る兆候である。時間とともに、そのような狭窄は血管の瘢痕化生じ得、血管の瘢痕化は、腸骨大腿骨の静脈血流の閉塞及び/又は深部静脈血栓症を引き起こす可能性がある腔内の変化を生じ得る。上記で議論されたように、静脈不全症(すなわち、静脈を通る血液の流れが損なわれている状態)が、疼痛、腫脹、浮腫、皮膚の変化、及び潰瘍形成を含むがこれらに限定されない様々な有害な病状に最終的につながり得る。静脈不全症は、典型的には、持続的な静脈閉塞及び機能不全の(又は機能が十分ではない)静脈弁の結果として発症する静脈性高血圧によって引き起こされる。静脈血流の閉塞についての現在の処置法としては、抗凝固療法、血栓溶解、バルーン血管形成術、及びステント留置術が挙げられる。
【0049】
図2は、左総腸骨静脈の上にある右総腸骨動脈の標準的な重なりを説明している。示される動脈には、左総腸骨動脈1501と右総腸骨動脈1502に分岐している腹部大動脈1500が含まれる。示される静脈には、左総腸骨静脈1504と右総腸骨静脈1505に分岐している下大静脈1503が含まれる。図2で説明される概略図が、顔を上にして横たわっている患者を見下ろしている図(すなわち、腹部大動脈1500及び下大静脈1503の分岐の位置での患者の前後方向の図)を示すことが理解されるものとする。左総腸骨静脈1504の上に重なる、比較的強く、かつ筋肉質である右総腸骨動脈1502の重なりは、静脈1504を下に押し付け、静脈1504を脊椎に対して押しつぶし、血流を制限し、最終的には、血栓症を引き起こし、左総腸骨静脈1504及びその上流のあらゆるところ(すなわち、中でも特に、左下腿の静脈系)を部分的又は完全に凝血により遮断する可能性があることにより、メイ・ターナー症候群を引き起こし得る。
【0050】
図3は、灰色の点線に沿ってとった、図2に示される動静脈系の断面の概略図を説明している。右総腸骨動脈1600、左総腸骨静脈1601、及び脊椎の脊椎骨1602(おそらくは、腰椎のL5腰椎脊椎骨)が模式的に示されている。示されるように、右総腸骨動脈1600は、その強く、筋肉質である構造(他の可能性のある要因の中でも特に)が原因で、実施的に円筒状である。その強く、筋肉質である動脈は、左総腸骨静脈1601が開存性をほぼ完全に失うまで、すなわち、左総腸骨静脈1601がほぼ完全に挟みつぶれるまで、左総腸骨静脈1601を押し下げる。メイ・ターナー症候群に、腰椎の脊椎骨1602に対して、下に存在している左総腸骨静脈1601をこのように容赦なく挟む/押しつぶすことが、実際に含まれ得ることが理解されるであろう。しかし、メイ・ターナー症候群に、下に存在している左総腸骨静脈1601を脊椎骨1602に対してあまり挟まない/押しつぶさない場合があることもまた、理解されるであろう。実際、本明細書中で開示される複数の実施形態は、右総腸骨動脈1600により左総腸骨静脈1601が完全に押しつぶされる/挟まれることを含む、様々な程度のメイ・ターナー症候群の処置に適している。本明細書中で開示される他の複数の実施形態は、約10~95%、約15~90%、約20~85%、約25~80%、約30~75%、約35~70%、約40~65%、約45~60%、及び約50~55%の間の下に存在している左総腸骨静脈1601が押しつぶされる/挟まれることを含むが、これらに限定されない様々な程度のメイ・ターナー症候群、或いは、本明細書中で開示される1つ以上のデバイスを使用する処置を受けるに値し得る任意の他の押しつぶされる/挟まれることの処置に適している。
【0051】
いくつかの実施形態では、高い圧壊抵抗を有しているが、血管壁に対する半径方向力は低い楕円形のステントを含む、自己拡張型の楕円形のステントが提供される。したがって、楕円形のステントを含む本明細書中で開示されるステントのいくつかの実施形態が、メイ・ターナー症候群の処置に有用であり得る。図4A~4Cは、様々な状態にある楕円形のステントの1つの実施形態を説明している。図4Aは、圧縮されていない、拘束されていない(例えば、テーブル上に置かれている)ステントを示す。図4Bは、患者の中での送達のために比較的高度に圧縮された、送達デバイス(例えば、カテーテルをベースとする送達デバイス)によって拘束されたステントを示す。最後に、図4Cは、患者の左総腸骨静脈によってその中で圧縮され、拘束されたステントを示す。
【0052】
さらに具体的に説明すると、図4Aは、拘束されていない断面を有している第1の状態(例えば、圧縮されていない、拘束されていない状態)にある楕円形のステントの1つの実施形態を、第1の方向の第1の断面の直径100(即ち、楕円の短軸を横切る直径)及び第2の方向(第1の方向に直交する)の第2の断面の直径101(即ち、楕円の長軸を横切る直径)とともに示している。示されるように、圧縮されていない場合は、第1の断面の直径100は、垂直である第2の断面の直径よりもおそらく小さく、これにより楕円形の断面を実質的に定義する。
【0053】
図4Bは、押し縮められた断面を有している第2の状態(例えば、高度に圧縮された状態)の図4Aの楕円形のステントを、第1の方向の第1の断面の直径120及び垂直である第2の方向の第2の断面の直径121とともに説明している。示されるように、送達のために圧縮された場合は、楕円形のステントは、その垂直である第2の断面の直径に実質的に等しい第1の断面の直径を有し得る。すなわち、第2の高度に圧縮された状態又は送達の状態にある場合は、楕円形のステントは実質的に円形である断面の形状を有し得る。
【0054】
図4Cは、第3の状態(例えば、埋め込まれた状態または展開された状態)にある、血管(例えば、左総腸骨静脈)内で展開された又は血管内に配置された、図4A~4Bの楕円形のステントを説明している。図4Cに示されるように、ステントは血管132内に配置され得、それにより血管132の内壁により拘束又は制限され得る。容易に理解されるように、展開されると、ステントは血管132を開いた状態に保つように外側へ押して、開存性を維持する。図4Cは、本明細書中で開示される楕円形のステントの少なくともいくつかの実施形態が、展開後に、主に、血管132を、標準的な円形の断面の形状ではなく、楕円形の断面の形状で開いた状態に保つようにその楕円形の断面を維持すること、すなわち、展開後、第1の方向の第1の断面の直径130(即ち、楕円の短軸を横切る直径)は、垂直である第2の方向の第2の断面の直径131(即ち、楕円の長軸を横切る直径)より小さいことを示している。
【0055】
いくつかの実施形態では、拘束されていない第1の状態にある場合の第1の断面の直径100は、高度に圧縮された第2の状態にある場合の第1の断面の直径120より大きい、展開された第3の状態にある場合の第1の断面の直径130より大きい。さらに簡単に記載すると、楕円形のステントは、血管腔の中で展開されている場合よりも、圧縮されていない場合により大きい断面の直径を有する。血管を開いた状態に保つように使用しようと展開されている場合は、ステントがいくらか圧縮されているはずであるので、これは自然なことである。そして、ステントは、圧縮されていない場合(例えば、テーブルの上)又は血管腔の中で展開されている場合よりも、送達デバイスの中に圧縮されている場合に、より小さい断面の直径を有する。ステントは、曲がりくねった複雑な血管系を通り抜けて、その展開位置に到達することができなければならず、そして血管壁を削り、損傷することがないように、ステントが通り抜けなければならない管腔よりも小さくなければならない。
【0056】
すぐ前で述べたように、本明細書中で開示されるステントのいくつかは、楕円形の断面を有する(すなわち、短軸を横切る第1の直径は長軸を横切る第2の垂直である直径より短い)。本明細書中で開示される楕円形の(又は他の)ステントのいくつかの実施形態では、ステントは、断面の第2の方向(例えば、図4A 101)の第2の半径方向力に実質的に等しい断面の第1の方向(例えば、図4A 100)の第1の半径方向力を生じる。本明細書中で開示される楕円形の(又は他の)ステントの他の実施形態では、ステントが、断面の第1の方向(例えば、図4A 100)の第1の半径方向力、及び異なる、垂直である断面の第2の方向(例えば、図4A 101)のより弱い第2の半径方向力を生じることができることが有利である。本明細書中で開示される楕円形の(又は他の)ステントのさらに他の実施形態では、ステントは、断面の第1の方向(例えば、図4A 100)の第1の半径方向力と、垂直である断面の第2の方向(例えば、図4A 101)に異なるより大きな第2の半径方向力を生じる。
【0057】
本明細書中で開示されるステントのいくつかの実施形態は、ステントの壁の中に1つ以上の強いセクション、及びステントの壁の中に1つ以上の弱いセクションを有し得る。これらの強いセクション及び弱いセクションを選択的に配置することにより、ステントを、選択的な圧壊抵抗を有するように調整することができる。そのような選択的な圧壊抵抗について排他的とは意図されない様々な例が以下で述べられる。
【0058】
図5Aは、ステントの壁の両側に対称な弱いセクション(例えば、ストラット又は他の構造)及びステントの壁の両側に対称な強いセクション(例えば、ストラット又は他の構造)を有している楕円形のステントの1つの実施形態を説明している。ステントは、ステントの長手方向軸(これは、展開されている場合に、その中でステントが展開されている血管の長手方向軸と一般的には同じである)に対して実質的に垂直であるその重心軸702(例えば、図4A 100)に対称である楕円形の断面の形状をその圧縮されていない状態で有し得る(しかし、これは、圧縮されていない場合、高度に圧縮されている場合、又は展開されている場合には他の断面の形状を有し得ることが理解されるはずである)。図5Aに示されるように、ステントは、2つの弱いセクション700(例えば、連結部)によって分離されている2つの強いセクション701(例えば、強化されたセクション、耐荷重性セクション等)を有している。強いセクション701が楕円のより出っ張った部分に位置するように、強いセクション701は、楕円の重心軸701に対称であるように示されている。強いセクション701及び弱いセクション700のこのような構成は、水平の断面の方向よりも垂直の断面の方向の圧壊力に対してより高い抵抗力を生み出し得る。そして、弱いセクション700は、軸から離れて作用する点ではなく、重心軸702に沿ってステントがより崩壊しやすい点を生み出し得る。
【0059】
図5Bは、ステントの壁の両側に非対称の弱いセクション(例えば、ストラット又は他の構造)及びステントの壁の両側に非対称の強いセクション(例えば、ストラット又は他の構造)を有している楕円形のステントの1つの実施形態を説明している。ステントは、ステントの縦軸(これは、展開されている場合に、その中でステントが展開されている血管の長手方向軸と一般的には同じである)に対して実質的に垂直であるその重心軸802(例えば、図4A 100と同じである)に対称である楕円形の断面の形状をその圧縮されていない状態で有し得る(しかし、圧縮されていない場合、高度に圧縮されている場合、又は展開されている場合には他の断面の形状を有し得ることが理解されるはずである)。図5Aに示されるステントと同様に、図5Bに示されるステントは、2つの弱いセクション800(例えば、連結部)によって分離されている2つの強いセクション801(例えば、強化されたセクション、耐荷重性セクション等)を有している。しかし、図5Aに示されるステントとは異なり、図5Bに示されるステントは、楕円の重心軸802に対称ではない。強いセクション801及び弱いセクション800のこの構成は、弱いセクション800の垂直方向の脆弱性を最小にしつつ、水平の断面の方向ではなく垂直の断面の方向に、圧壊力に対するより高い抵抗性を生み出し得る。
【0060】
図6A~6Bは、図5A~5Bに示されるステントの弱いセクション700、800のストラットについての1つの実施形態を説明している。弱いセクションのストラットは、図6Aの第1のストラットの状態900及び図6Bの第2のストラットの状態901を有している第1のストラットを含み得る。ステントの断面の形状の変化は以下でさらに述べられ、ステントの形状の変化を可能にする/容易にするためのストラットの状態の変化が記載される。図6Aの第1のストラットの状態900は、一部がつぶれている。対照的に、図6Bの第2のストラットの状態901は完全につぶれている。ストラットは負荷の増大によりつぶれる可能性がある。完全につぶれると、ストラットの基部が接触902する。ストラットの基部でのこのような接触は、さらに負荷が増大した際のさらなる崩壊を防ぐ可能性がある。部分的につぶれた状態から完全につぶれた状態への変形は可逆的な変形であり得る。上記弱いセクション(すなわち、弱いセクション700、800)は、連続する少なくとも1つの第1のストラット(単数又は複数)により作られる。
【0061】
図7A~7Bは、図5A~5Bに示されるステントの強いセクション701、801のストラットについての1つの実施形態を説明している。強いセクションのストラットは、図7Aの第1のストラットの状態1000及び図7Bの第2のストラットの状態1001を有している第1のストラットを含み得る。図7Aの第1のストラットの状態1000は一部がつぶれている。対照的に、図7Bの第2のストラットの状態1001はさらにつぶれている。ストラットは、図6A~6Bの弱いストラットと同様に、負荷の増大によりつぶれる可能性がある。しかし、強いセクション(例えば、図7A~7Bに示される)の崩壊には、弱いセクション(例えば、図6A~6Bに示される)の崩壊より強い力が必要である。ステントの断面の形状の変化は以下でさらに述べられ、ステントの形状の変化を可能にする/容易にするためのストラットの状態の変化が記載される。図7Aの第1のストラットの状態1000は、崩壊が皆無であるかそれに近い、実質的には拘束されていない状態が示されている。対照的に、図7Bの第2のストラットの状態1001は、一部がつぶれているが、完全にはつぶれていない状態が示されている。ストラットは負荷の増大によりつぶれる可能性がある。部分的につぶれた状態から完全につぶれた状態への変形は可逆的な変形であり得る。上記強いセクション(すなわち、強いセクション701、801)は、連続する少なくとも1つの第2のストラット(単数又は複数)により作られる。
【0062】
図6A~6B及び図7A~7Bについての記述には、特に、単により少ない材料およびより多い材料をそれぞれ使用して、弱いストラットおよび強いストラットを作ることが含まれる。その単純な解決方法が極めて有効であり得ることはわかっているが、弱いセクションと強いセクションを作る多くの他の方法が存在することが理解されるであろう。例えば、ストラットの密度(すなわち、所定の空間の中のストラットの数)を、強いセクションについては高くすることができ、一方、弱いセクションについてはストラットの密度を低くすることができる。あるいは、ストラット角(またはそれがないこと)及び角柱状の構成を、セクションの強度を高めるまたは下げるために使用することができる。様々な強度のセクションを有しているステントを作る任意の方法または手段を使用することができる。
【0063】
図8Aは、最大基準血管径1100と比較して、図5Bのステントの断面を説明している。管の基準直径1101は、一般的には、変形可能な外周を生じる。これは、ステントを含み、そしてステントを(少なくともある程度)圧縮しなければならない。この場合、ステントの外周は、かろうじて、最大血管径の外周未満である。示されるように、ステント1100は、比較的圧縮されていない状態を保っている強いセクション(図8Cに示される)及び比較的圧縮されていない状態を保っている弱いセクション(図8Bに示される)を有している。すなわち、(図6A~6B及び7A~7Bの記載を参照すると、ステント1100がその最大血管径の形状にある場合には、より強いストラットとより弱いストラットの両方が、それらの第1のストラットの状態にある。本明細書中で開示されるデバイス(例えば、ステント、血管デバイス、血管内人工器官)を使用して処置することができる血管の最大(円形)直径は、約10~23mm、約12~22mm、約14~21mm、約16~20mm、約17~19mm、及び約18mmである。
【0064】
図9Aは、最小基準血管径1201と比較して、図5Bのステント1200の断面を説明している。基準血管1201の直径は、一般的には、変形可能な外周を生じる。これは、ステントを含み、そしてステントを(ある程度)圧縮しなければならない。ここでもまた、ステントの外周は、かろうじて、最大血管径の外周未満である。しかし、図9Aのステント1200が図8Aのステント1100より圧縮されていることは容易にわかる。最大基準血管から最小基準血管のへステントの外周の変化は、第1の弱いストラットの第1のストラットの状態から第2のストラットの状態への弱いストラットの遷移により実質的に達成される(しかし、強いストラットのいくらかの変形が起こる可能性があることが理解されるはずである)。実際、強いストラット(第2のストラット)のより強い構造が原因で、強いストラットはほぼそれらの第1のストラットの状態にとどまるが、いくらかの小さな崩壊が起こる可能性がある。示されるように、ステント1100は、比較的圧縮されていない状態を保っている強いセクション(図9Cに示される)及びほぼ完全に圧縮されている弱いセクション(図9Bに示される)を有している。すなわち、(図6A~6B及び7A~7Bの記載を参照すると、ステント1100がこの最小血管径の形状にある場合には、強いストラットは実質的に、それらの第1のストラットの状態にとどまり、弱いストラットは、それらの第2のストラットの状態へと実質的につぶれる。(2以上の強度の領域が使用され得るような)この2種類の強度または多種類の強度を使用して得られた結果は、最小の半径方向力(例えば、弱いセクションの抵抗力)を持つ最大基準直径および最小基準直径でのサイズ決定である。強いセクションの高い半径方向力は、血管による押しつぶしに対する抵抗を示すが、血管に高い半径方向力をかけることはない。したがって、ステントは、その最小の管サイズではかなり円形であり得る。本明細書中で開示されるデバイス(例えば、ステント、血管デバイス、血管内人工器官)を使用して処置することができる血管の最小(円形)直径は、約7~20mm、約8~18mm、約9~16mm、約10~14mm、約11~13mm、及び約12mmである。
【0065】
図10Aは、送達デバイス(例えば、送達カテーテル1301の壁)の中に入れられ、圧縮された図5Bのステント1300を説明している。最小血管径から押し縮められた直径(例えば、高度に圧縮された直径、送達直径等)への遷移は、第1のストラットの状態から第2のストラットの状態への強いストラットの遷移によりもたらされる。弱いストラットが最初に圧縮され、これにより、第2のストラットの状態でただとどまることができる。図10B及び10Cは、それぞれ、それらの第2のストラットの状態に圧縮された、弱いストラットと強いストラットを説明している。その中で本明細書中で開示されるステント、血管デバイス、及び血管内人工器官が送達され得る送達カテーテルの外径は、約7~12Fr、約8~11Fr、約9~10Frの範囲、又はデバイスの中に入れることができ、かつ目的の血管にフィットさせることも可能である任意の他の直径であり得る。
【0066】
図11A~11Eは、上記のような、強いセクションと弱いセクションを有している楕円形のステントの1つの実施形態についての様々な図を説明している。図11Aは、楕円形の形状を示している楕円形のステントの1つの実施形態の上/正面図を簡単に説明している。図11Bは、楕円形のステントの1つの実施形態について斜め前から見た図を説明している。図11は、弱いセクションがわずか1つの第1のストラット401を含み得、一方、強いセクションが連続する第2のストラット400を含み得ることを示している。1つの第1のストラット401は、連続する第2のストラットの各々の第2のストラットより強い可能性がある。あるいは、1つの第1のストラット401は、連続する第2のストラットの各々の第2のストラットより弱い可能性がある。しかし、それらの個々の強度とは無関係に、この実施形態では、弱いセクションは、強いセクションの変形に対する抵抗力よりも弱い抵抗力を有する。図11Cは、楕円形のステントの1つの実施形態の平面図(必ずしも同じ縮尺ではない)を説明している。強いセクションは、いくつかの第2のストラット500で構成されており、弱いセクションは、垂直に繰り返し存在するパターンで、1つの第1のストラット501で構成されている。示されるように、強いセクション及び弱いセクションは、それぞれが同じ数の繰り返し存在するストラットを含むことは必要ではない。少なくともいくつかの実施形態では、弱いセクションは、拘束されていない状態及び完全に圧縮された状態にある場合に、互いに接触しないように構成されている。図11Dは、楕円形のステントの1つの実施形態の見え方の側面図を説明している。図11Eは、角度がついた遠位末端を含むことを除いて、図11Dに示される楕円形のステントと同様の楕円形のステントの1つの実施形態を説明している。この角度がついた遠位末端は、左総腸骨静脈と右総腸骨静脈が合流して下大静脈になる血管の形状に適合するように構成することができる。このような構成では、角度がついた末端を有しているステントの末端が、2つの腸骨静脈の合流点(すなわち、下大静脈の分岐点)にとどまり、同時に、ステントの長さが遠位に伸びる又は左総腸骨静脈に入るように下方に伸びるように、展開され得る。これは、大静脈の分岐点で静脈(単数又は複数)にさらなる支持を提供するように有利に働き得る。もちろん、ステントは、特定の患者の生体構造に適合させるために必要なあらゆる角度を持つことができる。しかし、この角度は一般的には、約5~45°、約10~40°、約15~35°、約20~30°の範囲、又は約25°、或いは患者の血管にフィットさせるために必要な任意の他の角度である。
【0067】
図12は、左総腸骨静脈1701の中で展開された環状のステント1703を加えた、図3に示されるものと同じ解剖学的断面図を説明している。静脈の完全な充満(例えば、腔内の壁に対してステントの外表面を完全に近接して配置すること)を達成するためには、円形のステントは、右総腸骨動脈1700に対して、矢印1704によって示されるかなりの力をかけなければならない。静脈の臨床的に意味のある充満(例えば、腔内の壁に対してステントの外表面を実質的に完全に又は意味がある程度に近接して配置すること)を達成するために十分に高い力のレベルは、血管の摩耗及び最終的な穿孔、早期の疲労破損を引き起こすステントにかかる負担の増加及びステントの変形、並びに/又は末梢動脈疾患を生じる可能性がある右総腸骨動脈1700中の血流の障害を含むがこれらに限定されないいくつかの有害な作用を生じる可能性がある。皆無かそれに近いものを含み、脊椎の脊椎骨1702がずれることはなく、実質的に堅いと推測されることに留意されたい。
【0068】
図13は、左総腸骨静脈の中で展開された楕円形のステント1703を加えた、図3に示されるものと同じ解剖学的断面図を説明している。注目すべきは、図13の楕円形のステント1703が、図12の円形のステント1704と同じ外周を有しているということである。楕円形のステント1703の使用により、好都合なことに、円形のステント1703の高さが増大することにより起こる負荷の増大を大して伴わずに、左総腸骨静脈1701の開通性を生じることが可能となり得る。楕円形のステントの使用により、好都合なことに、比較的低い垂直方向の負荷が可能となり得る。円形のステントを使用して同じ低い垂直方向の負荷を達成するためには、かなり小さいステントが使用されるであろう。そして、そのようなより小さいステントは、楕円形のステントよりも著しく小さい断面積を有するであろう。負荷の減少は、メイ・ターナー症候群の処置用の円形のステント(例えば、図12に記載される)に関する上記合併症の可能性を最小にし、一方、静脈の血流を維持し、そして凝固を防ぐための同程度の断面積をなおも提供する。いくつかの実施形態では、送達カテーテルの中に予め装填された又は押し縮められた楕円形のインプラントの特定の方向は、本明細書中で開示される特定のインプラントの構造がある程度の自己アラインメントを可能にし得るように調整される。楕円形のステントは、圧迫された静脈の中での自己配向が可能であり得る。楕円形の構造の高い半径方向力対低い半径方向力は、より高い半径方向力/圧壊抵抗のセクション(長軸)が圧縮力に対して垂直であるように、インプラントが自体を回転させる/配向するよう生じさせることができる。右総腸骨動脈1700及びL5腰椎脊椎骨1702による左総腸骨静脈1701の拘束が原因で、楕円形のステントは、水平から90°を含まない90°までの角度で展開され得、水平に戻るよう自己整列することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、楕円形のステントの部分を含む少なくとも1つの第1のセクションと別の異なるステントの部分を含む少なくとも1つの第2のセクションを含むハイブリッド型のステントが提供される。図14は、第1のセクション2200、第2のセクション2202、及び第3の遷移性のセクション2201(これは、第1のセクションから第2のセクションまで遷移する)を有しているハイブリッド型のステントの概略図を説明している。いくつかの実施形態では、ハイブリッド型のステントの第1のセクション2200は、本明細書中で別の場所で開示されるような楕円形のステントである。いくつかの実施形態では、第2のセクション2202が、柔軟性がある軸長を持つ、高い半径方向力の円形のステントを有しているステントの部分を含む。他の実施形態では、第2のセクション2202は、本明細書中で開示されるものを含む任意の他のタイプのステントを含む場合がある。いくつかの実施形態では、第3のセクション2201が、患者の血管に最も合うように、第1のセクション2200のステントから第2のセクション2202のステントに静かに又は段階的に遷移する。このようなハイブリッド型のステントが、メイ・ターナー症候群及び腸骨静脈及び総大腿静脈の深部静脈血栓症のような付随する深部静脈血栓症の同時処置に有用であることが好都合なことに証明され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、高い半径方向力とそれらの長さに沿った柔軟性を有している血管内人工器官(例えば、ステント)を含む、腸骨静脈及び総大腿静脈の中の深部静脈血栓症を含む深部静脈血栓症の処置用の血管内人工器官が提供される。図14A~14Cは、高い半径方向力とその長さ方向に沿った柔軟性の両方を有しているステント(例えば、円形のステント)の1つの実施形態についての様々な図を説明している。図14Aは、その前または上(すなわち、ステントの長手方向軸に対して垂直)からのステントを説明しており、一方、図14Cは、斜めから見た透視図又は等角図によりステントを説明している。図14Bは、ステントの平坦なパターンを説明している。このパターンは、大きな「Z」セルのパターン1900と小さな「Z」セルのパターン1901からなる。互い違いの「Z」セルのパターンにより、ステントの長さに沿った柔軟性を維持しつつ、高い半径方向力が可能になる。この「Z」パターンは、ステントの(例えば、垂直方向の)長さに沿って繰り返すが、ステントの(例えば、水平方向の)直径に沿った方向では交互に存在する。この「Z」セルのパターンは、大きな「Z」ストラット1902、小さな「Z」ストラット1903、および架橋ストラット1904により定義される。
【0071】
図15は、様々な位置の図14A~14Cに示されるステントの1つの「Z」ストラットを説明している。中央の「Z」ストラットは、「Z」ストラットの弛緩した、又は拘束されていない位置2102で示されている。最も圧縮された「Z」ストラットが、「Z」ストラットの圧縮された状態2100で示されている。そして、最も拡がった「Z」ストラットが、「Z」ストラットの引き延ばされた状態2101で示されている。いくつかの実施形態では、ストラットの「Z」構造は、好都合なことに、ステントの各セグメントを、湾曲のように、負荷がかかった時に独立して関節のように繋ぐ(articulate)ことを可能にできる。ステントが湾曲している場合は、「Z」接合点の上部に張力がかかっており(例えば、引き延ばされた状態2101により吸収されている)、そしてアーチの底部は圧縮された状態である(例えば、圧縮された状態2011により吸収されている)。
【0072】
現在利用することができる静脈用のインプラントは、多くの場合が、末梢静脈系のねじれ及び生理機能を担う十分な柔軟性を提供するものの、瘢痕化した患部静脈の圧縮及び跳ね返りに抵抗するために必要な適切な半径方向力を欠いている。いくつかの実施形態では、腸骨大腿骨の静脈血流の閉塞、静脈の圧迫、及び静脈不全症疾患を処置するための静脈用インプラント、並びにそのようなインプラントを展開させるための方法が提供される。上記インプラントは、その長さ方向に沿った柔軟性とともに、高い半径方向力を提供することができ、自己拡張型のニチノール(Nitinol)から製造することができる。上記インプラントは、柔軟性及び疲労抵抗を提供しつつ、患部静脈の圧縮/跳ね返りに抵抗するために十分な半径方向力を有し得る。加えて、インプラントは、ねじれに抵抗するための柔軟性及び良好な疲労抵抗性を提供しつつ、瘢痕化した患部静脈の圧縮/跳ね返りに抵抗するために十分な半径方向力を含む。いくつかの実施形態では、血管用インプラントは自己拡張型である。
【0073】
いくつかの実施形態では、インプラントは、柔軟性があるブリッジ部材により連結される個々の周縁上のステントのフレーム/セル構造を持つ、円筒状の自己拡張型ステント(例えば、ニチノールのような形状記憶材料から作られている)を含む。そのような個々のステントのセル及び柔軟性があるブリッジ部材の反復は、ステントの最終的な直径及び全長を構成し得る。図16は、そのようなステントの作製のための例示的な「方程式」を説明している。「方程式」の左側に見られるように、1つの第1のセルが2つ(又はそれ以上)のブリッジ部材を使用して1つの第2のセルに連結され得、それにより柔軟性がある構築物が形成され得る。たとえ多くではないとしても、複数のこれらの柔軟性がある構築物をひとつに連結してネットワークを形成させることができる。あるいは、柔軟性がある構築物は全て、1つの管から切られたものであり得る。図18は、セル及び柔軟性があるブリッジ部材から形成されている柔軟性がある構築物のネットワークを説明している。図17は、得られるステントに高い半径方向力をもたらすことができるストラットの構成を説明している。柔軟性があるブリッジ部材は、交互の構成で個々のステントのフレーム/セルの構造を連結し、最終的なステントに異なる柔軟性の特徴を生じるように配置することができる。いくつかの実施形態では、ブリッジ部材が、図18に示されるように、直線状に連続する繰り返し存在するパターンで、個々のステントのフレーム/セルの形状を連結する。他の実施形態では、ブリッジ部材を、様々な間隔で、或いは螺旋状又は多重螺旋状の形状で配置することができる。図19A及び19Bは、さらに別の柔軟性があるブリッジ部材の構造を説明している。図19Aは、平らにした状態が示されていることを除いて図19Bと同じであり、一方、図19Bは、ステントがそのように見えるであろう状態として示されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、直径の範囲において選択的に調節することができる拡張された埋め込みサイズを有しているインプラントが提供される。図20A~20Hは、超弾性及び/又は形状記憶管(例えば、ニチノール)から製造され、そして一連の係合フィンガー(finger)又は歯(teeth)を持つようにレーザーカットされたインプラントの様々な図を説明している。図20Aは、インプラントの両端にインターロッキングフィンガーを持つ、平たく広げられたインプラントを説明している。図20Bは、少なくともいくつかのインターロッキングフィンガーが係合している状態のその環状の構造をインプラントの斜めから見た図を説明している。図20Cはインプラントの側面図(インプラントの長手方向軸に対して垂直である)を説明しており、インターロッキングフィンガーの拡大図を示している。図20Dは、インプラントの正面図または上面図を説明している。図20Eは、拡張、フィンガーのインターロック、および展開の前のインプラントを説明している(この図の中では、フィンガーはインターロックされていない)。図20Fはインプラントの上面図又は正面図を説明しており、拡張/展開前の直径(直径D1)を示している。図20Gは、拡張、フィンガーインターロック、及び展開後のインプラントを説明している(この図の中では、少なくともいくつかのフィンガーがインターロックされている)。図20Hはインプラントの上面図又は正面図を説明しており、拡張/展開後の直径(直径D2)を示している。図示されるように、展開/拡張/フィンガーのインターロック後のインプラントの直径(すなわち、D2)は、展開/拡張/フィンガーのインターロック前のインプラントの直径(すなわち、D1)より大きい。
【0075】
インプラントを展開させるためには、インプラントは、送達カテーテル上/内に装填するために、より小さい直径になるように放射状に圧縮され得る/押し縮められ得る。インプラントは、所望の直径にコイル状のインプラントを拡張するために後に膨らませることができる送達システムの内部コア上のバルーンを覆うように押し縮めることができる。係合フィンガーは、ステントの別々の徐々に増加する拡張を可能にするために、特定の位置に予め配置される。いくつかの実施形態では、インプラントは、0.5mmずつ拡張させることができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のインプラントが互いに連結され得る。例えば、インプラントの最終的な長さは、柔軟性があるブリッジ部材又は柔軟性に欠けるブリッジ部材により、任意の所望の数の個々の適応性のある直径のセルを連結することにより制御することができる。
【0076】
上記のようなインプラントは、有利には、下腿/骨盤の末梢静脈の動態的変動にフィットし、それにより腸骨静脈圧迫症候群及び腸骨大腿骨の静脈血流の閉塞の両方の処置を容易にする、適応性のある直径及び/又は柔軟性を提供することができる。
【0077】
ステントにより血管を真っすぐにする代わりに、静脈の既存の経路にフィットするであろうステントを有することが望ましい場合がある。押しつぶす負荷がかかっているステントの崩壊に抵抗するため、及びステントの展開位置で処置される血管の得られる直径を最大にするために、ステントの高い半径方向の剛性を有することもまた所望され得る。ほとんどのステント構造では、半径方向の剛性と軸方向の剛性との間に直接的な関係が存在している。
【0078】
一般的な市販されているバルーン拡張型ステントは、血管の中でステントを拡張させるためにバルーンが使用されると、長さが劇的に変化する。一般的な市販されている自己拡張型ステントは、長さをそれほど劇的ではないが、なおも実質的に変化し、ステントの長さが増大するに伴いその変化が増大する。送達システム内での形状と血管内で展開された場合の形状との間での長さの変化は、目的の位置に正確にステントを配置する/下ろすことに困難が生じる。ステントがその押し縮められた形状の中で展開させられ、拡張される場合には、長さの短縮が、ステントの目的の展開位置に目的の滞在位置からのオフセットを持たせなければならない原因となる。この作用の大きさは、目的の滞在位置の長さに沿った管の断面(これは、頻繁にそして想定外に、外物及び/又は外部からの力等が原因で不規則な形状である残存狭窄による影響を受ける)に依存するので、制御することは不可能であり、容易に予想できない。このことは、IVCに入る左腸骨静脈と右腸骨静脈(left and right iliac)の分岐点までの目的の病変については、下大静脈に入らない下大静脈への分岐点までのその全長に沿った腸骨静脈に完全に滞在するようにステントを配置することに困難を生じさせる。
【0079】
いくつかの実施形態では、高い半径方向力を持ち、多様な長さに沿った劇的な短縮を持たず、高い柔軟性/血管適合性を持つ静脈用のステントが提供される。短縮の最小化により、ステントを好都合なことに、正確かつ予想通りに展開させることが可能となる。そして、高い柔軟性は、屈曲下でのステントの疲労寿命を最大限に延ばす。もちろん、ステントについて、動脈系においても同様に用途が見出され得ることが理解されるであろう。
【0080】
図21A~21Dは、柔軟性を保ちつつ、短縮を最小限にするように構成されたステントの1つの実施形態についての様々な図を説明している。自己拡張型であり得るステント100は、少なくとも2つの軸方向に繰り返し存在する環301を定義する連続する周方向に隣接するクローズドセル200からなる。各々の、軸方向に繰り返し存在する環301は内径101と外径103、及び長さ203を有する。各々の環は、繰り返し存在する環102の全長を持つ連結ストラット202及びステントの長さを定義している連結ストラット202の対により接続されている。いくつかの実施形態では、クローズドセル200は閉じた外周により定義され得る。
【0081】
連結ストラット202は、環301の中の各々の隣接するクローズドセル202の取り付け部又はその近くに環301を取り付ける。この方法では、連結ストラット202が、環が圧縮又は拡張されても軸方向には決して変化しない環301の部分に接続される。これは、このステントの短縮特性を好都合なように改善する。いくつかの実施形態では、連結ストラット202は、平坦なレーザーカットパターン(図21Bに示されている)が図21Aおよび21Cのように管の中にカットされている場合には、ステント303の反対側に互いに鏡像対称になるように構成される。いくつかの実施形態では、隣接する連結ストラット202は、軸の周りに少なくとも1つの軸方向にインデックスされたセルの回転を有し、環301を接続している連結ストラット202の螺旋の方向性を生みだすように配置される。
【0082】
ステントは、第1の直径101及び第1の長さ102によって定義される、図21Aに示されている第1の拘束されていない/圧縮されていない態様を有する。ステントはまた、第2の直径401(これは第1の直径101より小さい)及び第2の長さ402により定義される、図21Dに示されている第2の押し縮められた態様も有する。連結ストラット202が軸方向には動かない環301上の点でのみ取り付けられているので、第1の長さ102及び第2の長さ402は実質的には同じである。第1の半分の後端のセルによる長さぶんだけ、ごくわずかな変化が存在する。いくつかの実施形態では、ストラットの長さは、第1の拘束されていない/圧縮されていない形状及び第2の押し縮められた形状において接触を生じることにより、軸方向に隣接する環におけるセルの接触を妨げる。いくつかの実施形態では、第1の末端104及び第2の末端105の拘束されていない状態でのセルの連結の間の間隔は、第1の末端404及び第2の末端405の押し縮められた状態でのセルの連結の間の間隔に実質的に等しい。いくつかの実施形態では、第1の末端104、404、及び第2の末端105、405のセルの連結位置に放射線不透過性のマーカーが存在する。
【0083】
図21A~21Dに示されているような本明細書中で開示されるいくつかの実施形態は、連結ストラットによって各々の環のセルの連結部で互いに固定された個々の1つのセルの長い環のそれらの形状を通じて、半径方向の剛性と軸方向の剛性との間の関係を切り離す。これにより、経路に沿って連結された環の間の連結ストラットにより管理された間隔を維持することが可能となるが、隣接する環の軸とは異なる1つの環の軸の方向性に自由度を生じる。比較的低い軸方向の柔軟性を持つ個々の環は、はるかに高い軸方向の柔軟性を特徴とする連結ストラットに沿って実質的に起こる湾曲を伴って、それらの個々の長さに沿って、自身をほぼ真っすぐに方向付ける。したがって、半径方向力は、セルのストラットの幅により制御することができ、連結ストラットの幅によって管理される軸方向の柔軟性とは無関係に維持され得る。さらに、連結ストラットの螺旋状の方向性を生じる、連結ストラットの各々の隣接する対の軸方向に回転させられたインデックスの位置は、ステントが、その軸の周りの角度方向にはかかわらず、実質的に類似する軸方向の柔軟性を有することを確実にする。
【0084】
ストラットの取り付け部に繋がれた各々のセルを用いた場合、ステントが完全に押し縮められている時、及びそれが完全に拘束されていない時には、1つのセルの隣接するセルに対する位置に変化はない。したがって、ステントのわずかな短縮が、先頭のセルの半分および後端のセルの半分により生じるであろう。また、本発明の短縮は、セルが均等に配置されている(さらなる環を加えることにより長さが増大する)と仮定すると、長さ全体にわたりステントに関わらず同じである。本発明が腸骨の下大静脈に展開させられると(上記のように)、送達システムの中のステントの位置は、血管の中に送達システムから展開させられたステントの位置と同じになるであろう。ステントの配置および展開は、ステントの長さに関わらず同じであろう。したがって、セルの接続部/ストラットの取り付け部に配置されたマーカーは、送達システム内に存在する時及び血管内で展開させた時の、ステントの位置の優れた視覚化及び指標をもたらすことができる。
【0085】
現在利用することができるインプラントは、典型的には、押し縮められた形状で送達システムに搭載及び保持され、その後、それらが埋め込まれた形状に拡張される所望の解剖学的位置に誘導され、展開させられる。最終的な埋め込まれた形状は、物理的な拡張/作動(例えば、バルーン拡張型)又は自己拡張(例えば、ニチノール)により達成され得る。自己拡張型インプラントは、超弾性材料又は形状記憶合金材料から製造される。自己拡張型インプラントの正確かつ精密な展開は、自己拡張型インプラントに付随する多数の固有のデザイン属性が原因で困難であり得る。インプラントは、材質の蓄積された弾性エネルギーが原因で、展開の際に送達システムの遠位末端から跳ね上がる/前進する可能性がある。さらに、インプラントは、押し縮められた形状から拡張された形状まででのインプラントの直径の変化が原因で、展開の際に短くなり得る。最後に、体の管腔の分岐で、又はその近くでの配置のような、生理学的形状及び解剖学的形状は、インプラントの正確な配置に影響を及ぼす可能性がある。一旦、インプラントが体の管腔内に配置されると、不均一な拡張又は体の管腔に対する円周方向でのインプラントの完全に近接しての配置がない可能性が存在し、これは、動き、移動、又は特定の深刻な症例では、インプラントの塞栓化を生じる可能性がある。
【0086】
いくつかの実施形態では、最適な疲労抵抗、正確な配置、及び未然に防ぐためのin-vivoアンカーを提供しつつ、体の管腔の絶え間なくかかる圧縮に抵抗するために十分な半径方向力を持つように設計された自己拡張型インプラントが提供される。さらに、腸骨静脈圧迫症候群及び静脈不全症の疾患を処置するための、展開および移植の様々な方法が提供される。
【0087】
いくつかの実施形態では、インプラントは、腸骨静脈の圧迫(メイ・ターナー症候群)を局所的に処置することを目的とする、目的に合わせて設計された静脈用インプラントを含む。このインプラントは長さが比較的短くてよく(約40mm)、そして正確な配置を助けるため、及び埋め込み後の移動を抑制するために、組み込まれたアンカー機構を持つ自己拡張型のニチノールから製造され得る。インプラント及び送達システムは、右及び左総腸骨静脈への下大静脈の分岐点での精密な展開及び配置のために設計される。
【0088】
図22A~22Eは、複数のアンカー部材を有している血管内ステントの様々な図を説明している。図22Aは、実質的に円筒状の形状のステントを説明している。図22Bは、平坦なレーザーカットのパターンでステントを説明している。図22C及び22Dは、実質的には圧縮されていない状態のステントを説明している。図22Eは、下大静脈の分岐点で左総腸骨静脈に埋め込まれたステントを説明している。
【0089】
1つの実施形態では、ステントは、角度がついた形状に熱処理されステントのフレームのセルのパターンに組み込まれたアンカー機構を持ち、これにより展開させられた場合にステントの基本直径から外側へ円周方向に押し出すアンカー特性を生じる、円筒形の自己拡張型のニチノールの構造を含む。ステントのインプラントが押し縮められ、送達カテーテルに搭載されている場合は、アンカーは送達カテーテルの外側の鞘により拘束されており、したがってステントの基本直径でステントを送り込むことが可能となる。
【0090】
図22Bで示されるように、アンカー機構の第1のセットは、ステントの遠位末端からのセットバック距離DIM「A」であり得、これにより、ステントを送達システムから部分的に展開させることが可能となり、オペレーターが、目的の展開位置にインプラントの遠位末端が並ぶように必要に応じて送達システム全体を精巧に再配置することが可能となる。一旦、部分的に展開させられたステントの遠位末端が適切な展開位置に入ると、ステントの残りを展開させることができ、アンカー機構が送達カテーテルから展開された際に血管壁と係合するであろう。
【0091】
アンカー機構は、ステントの目的の埋め込み位置での正確かつ精密な展開を助け得る。例えば、血管壁の中でのアンカー機構の係合は、自己拡張型インプラントによる拡張エネルギーが原因である、送達システムからのインプラントの跳ね上がり及び目的の埋め込み位置の的をはずすことを抑制する可能性がある。さらに、展開の際の血管壁の中でのアンカー機構の遠位から近位の係合は、遠位から近位の方向のインプラントの短縮を抑制するように働き得る。インプラントの遠位末端は血管壁に最初にアンカーされるので、インプラントの遠位末端が血管壁に固定/アンカーされると、インプラントは、展開の際に近位から遠位の方向にのみ短縮され得る。そして、ステントの埋め込みの後、このアンカー機構は、インプラントの移動を抑制するのに役立ちうる。
【0092】
図23A~23Fは、図22A~22Eの血管内ステントとともに使用され得るアンカーの様々な可能性がある形状を示している。
【0093】
図22Cおよび22Dに明らかに示される別の実施形態では、アンカー機構を持つインプラントは、遠位の広がったセクションを持つ、円筒状の自己拡張型ニチノールステントからなる。遠位の広がったセクションは、半径「r」により管理される。ステントの広がった遠位末端は、図22Eに示されるように、2つの血管の分岐点でのステントの配置のために使用され得る。
【0094】
送達システムに予め装填されたステントの形状が、ステントの遠位の広がったセクションが送達システムから部分的に展開されることを可能にし、これにより、操作者が、2つの血管の分岐点にステントの広がったセクションを配置することが可能となる。送達カテーテルは、処置される血管の分岐に対して遠位(この場合は、左総腸骨静脈)に進む。インプラント上の放射線不透過性のマーカーを使用して、操作者は、ステントの部分的に展開させられた広がったセクションを分岐点に取り付けることができる。一旦、部分的に展開させられたステントの遠位の広がった末端が適切な展開位置に入り、分岐点に取り付けられると、ステントの残りを展開させることができ、アンカー機構を、送達カテーテルからの展開の際に血管壁に係合することができる。
【0095】
図22A~23Fに示されるインプラントは、有利なことに、ステントのインプラントの正確かつ精密な展開を容易にし、展開後のステントのインプラントの移動を妨げ、そして腸骨静脈圧迫症候群(メイ・ターナー症候群)を処置する場合には、下大静脈へのステントのインプラントの突出(血行動態不全を引き起こす)を抑制することができる。
【0096】
本発明は、特定の好ましい実施形態及び実施例において開示されているが、他の別の実施形態及び/又は本発明の使用、並びにその自明な変更及び等価物について、具体的に開示された実施形態を超えて本発明が及ぶことが、当業者に理解されるであろう。加えて、本発明の多数の変形例が示されており、詳細に記載されているが、本発明の範囲に含まれる他の変更は、本開示に基づいて当業者には容易に明らかであろう。実施形態についての特異的な特徴及び態様の様々な組み合わせ又はサブコンビネーションを行うことができ、これらがなおも本発明の範囲に含まれ得ることもまた考えられる。したがって、開示される実施形態の様々な特徴および態様を、開示された発明の様々な態様を構成するために、別の態様と組み合わせるまたは別の態様で置き換えることができることが理解されるものとする。このように、本明細書中で開示された本発明の範囲は、上記で記載された特定の開示された実施形態によっては限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲を正しく読むことによってのみ決定されるべきであることが意図される。
【0097】
同様に、開示されるこの方法は、任意の請求項がその請求項の中で明白に記載されている以上の特徴を必要とする発明を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映しているように、本発明の態様は、任意の1つの上記で開示された実施形態の全ての特徴より少ない組み合わせにある。したがって、詳細な説明に従う特許請求の範囲は、ここでこの詳細な説明に明白に組み込まれており、各々の請求項が別の実施形態をそのままで示している。
【0098】
本発明の様々な実施形態が上記に記載されてきたが、これらは例示の目的だけのために示されており、限定ではないことが理解されるものとする。形式及び詳細の様々な変更が本発明の精神及び範囲から逸脱することなくその中で行われ得ることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明の広がり及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されないはずであるが、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ定義されるはずである。
図1
図2
図3
図4A-C】
図5A-B】
図6A-B】
図7A-B】
図8A-C】
図9A-C】
図10A-C】
図11A-C】
図11D-E】
図12
図13
図14
図14A-C】
図15
図16
図17
図18
図19A-B】
図20A-D】
図20E-H】
図21A-B】
図21C-D】
図22A-B】
図22C-E】
図23A-F】