(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】鉄道軌道下におけるアンダーパスの構築方法
(51)【国際特許分類】
E01C 1/04 20060101AFI20230524BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
E01C1/04
E21D11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021187517
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】畠山 正光
(72)【発明者】
【氏名】白石 元幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】大竹 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 恒夫
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-270512(JP,A)
【文献】特開2002-047604(JP,A)
【文献】特開2011-246910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/04
E02D 29/045-29/055
E21D 11/00 -11/40
E21D 13/00 -13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道下にボックスカルバートを用いてアンダーパスを構築するようにしたアンダーパスの構築方法であって、以下の1)ないし
9)の工程を含むことを特徴とするアンダーパスの構築方法。
1)ボックスカルバートを上下に2分割して上部カルバートと下部カルバートを形成する工程。
2)鉄道軌道の下方に開削によって所定深さの掘削溝を掘削する第1の掘削工程。
3)第1の掘削工程において掘削された掘削溝に、鉄道軌道の両側部に沿い、かつ、鉄道軌道よりも下方に位置する一対の第1の支持梁を設置する工程。
4)一対の第1の支持梁間に、その長さ方向に間隔をおいて複数の第2の支持梁を設置する工程。
5)第2の支持梁に上部カルバートを被せるように設置する工程。
6)第1の掘削工程によって掘削された掘削溝をさらに掘り下げる第2の掘削工程。
7)第2の掘削工程によって掘り下げされた掘削溝に下部カルバートを設置して上部カルバートに対峙させた後に、上部カルバートと下部カルバートを連結する工程。
8)第1の支持梁および第2の支持梁を撤去する工程。
9)掘削溝と上部カルバートおよび下部カルバートとの隙間を埋め戻す工程。
【請求項2】
前記2)の工程に先立って、掘削すべき掘削溝の外周部に山留め杭を打設することを特徴とする請求項1に記載のアンダーパスの構築方法。
【請求項3】
前記2)の工程おいて掘削する掘削溝を、鉄道軌道の両側部のそれぞれに掘削することを特徴とする請求項1に記載のアンダーパスの構築方法。
【請求項4】
前記3)の工程において、掘削溝に第1の支持杭を打設し、この第1の支持杭に第1の支持梁を取り付けることを特徴とする請求項1に記載のアンダーパスの構築方法。
【請求項5】
前記6)の工程で掘削された掘削溝の底部に、床均しコンクリートを打設することを特徴とする請求項1に記載のアンダーパスの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーパスの構築方法に係わり、特に、鉄道軌道と交差して設けられるアンダーパスの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンダーパスの構築方法として、たとえば、特許文献1に示される技術が提案されている。
【0003】
この技術は、交差部に複数の杭を打設し、これらの杭に梁を掛け渡すとともにこの梁に支持プレートを装着し、この支持プレート上に乗り上げるようにして一方の交通路を構築することにより、この一方の交通路の下方にスペースを設け、このスペースを掘削することにより、交差する他方の交通路を構築するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来の技術では、交差する二つの交通路がそれぞれ独立して構築される。
【0006】
したがって、二つの工程を必要とするばかりでなく、二つの交通路のそれぞれについて資材が必要であるといった問題点がある。
【0007】
このような問題点は、工期の長期化や工費の高騰の原因となっており、その対策が要望されている。
【0008】
本発明は、このような要望に対処すべくなされたもので、使用する資材を極力削減して工費の高騰を抑制し、かつ、工期が長期化することを抑制することの可能なアンダーパスの構築方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンダーパスの構築方法は、前述した課題を解決するために、鉄道軌道下にボックスカルバートを用いてアンダーパスを構築するようにしたアンダーパスの構築方法であって、以下の1)ないし9)の工程を含むことを特徴とするアンダーパスの構築方法。
1)ボックスカルバートを上下に2分割して上部カルバートと下部カルバートを形成する工程。
2)鉄道軌道の下方に開削によって所定深さの掘削溝を掘削する第1の掘削工程。
3)第1の掘削工程において掘削された掘削溝に、鉄道軌道の両側部に沿い、かつ、鉄道軌道よりも下方に位置する一対の第1の支持梁を設置する工程。
4)一対の第1の支持梁間に、その長さ方向に間隔をおいて複数の第2の支持梁を設置する工程。
5)第2の支持梁に上部カルバートを被せるように設置する工程。
6)第1の掘削工程によって掘削された掘削溝をさらに掘り下げる第2の掘削工程。
7)第2の掘削工程によって掘り下げされた掘削溝に下部カルバートを設置して上部カルバートに対峙させた後に、上部カルバートと下部カルバートを連結する工程。
8)第1の支持梁および第2の支持梁を撤去する工程。
9)掘削溝と上部カルバートおよび下部カルバートとの隙間を埋め戻す工程。
【0010】
このように構成された本発明のアンダーパスの構築方法は、鉄道軌道の下方に掘削溝を掘削し、この掘削溝内に、鉄道軌道の両側部に沿い、かつ、鉄道軌道よりも下方に位置する一対の第1の支持梁を設置し、この支持梁間に複数の第2の支持梁を設置する。
【0011】
ついで、第2の支持梁に上部カルバートを被せるように設置することにより、この上部カルバートを鉄道軌道の下面に対峙させることができる。
【0012】
これによって、鉄道軌道下面が上部カルバート上面に当接可能となされることにより、鉄道軌道が上部カルバートによって支持される。
【0013】
これより、掘削溝を掘り下げて上部カルバートの下方を開放し、この開放された部位に下部カルバートを設置して上部カルバートに対峙させたのち、これらの上部カルバートと下部カルバートとを連結してボックスカルバートを構成する。
【0014】
ついで、第1の支持梁や第2の支持梁を撤去するとともに、ボックスカルバートの周囲を埋め戻すことにより、鉄道軌道の下方にボックスカルバートによって形成されたアンダーパスが構築される。
【0015】
このように、既設の鉄道軌道を上部カルバートによって支持した状態でアンダーパスを構築することができるので、アンダーパスの構成部材を鉄道軌道の支持構造物として兼用することができる。
【0016】
したがって、アンダーパス構築に必要な資材を少なくすることができるとともに、工費の高騰を抑制することができる。
【0017】
また、鉄道軌道を極力既設の状態でアンダーパスを構築することができるので、その工程をほぼアンダーパスの構築のための工程に集約することができ、もって、工期を短縮することができる。
【0018】
前記2)の工程に先立って、掘削すべき掘削溝の外周部に山留め杭を打設することが好ましい。
これによって、掘削溝の崩れを防止して施工を容易にする。
【0019】
前記2)の工程おいて掘削する掘削溝を、鉄道軌道の両側部のそれぞれに掘削するようにしてもよい。
【0020】
このように、掘削溝を鉄道軌道の両側部に設けることにより、鉄道軌道の下方に未掘削部分を残すことができる。
したがって、掘削溝の掘削時や掘削後において、前述した未掘削部分によって鉄道軌道の支持を行なうことができ、施工時に鉄道軌道を安定した姿勢に保持して施工を簡便なものとすることができる。
【0021】
この場合、後作業により、未掘削部分の掘削を行なって鉄道軌道の下部を開放する。
【0022】
前記3)の工程において、掘削溝に第1の支持杭を打設し、この第1の支持杭に第1の支持梁を取り付けることもできる。
【0023】
第1の支持杭に第1の支持梁を取り付けることにより、第1の支持梁を安定して保持することができる。
【0024】
また、前記6)の工程で掘削された掘削溝の底部に、床均しコンクリートを打設することができる。
これによって、下部カルバートの設置面を平滑にしてその設置作業を容易にするとともに、その設置精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明のアンダーパスの構築方法によれば、資材を極力削減して工費の高騰を抑制し、かつ、工期が長期化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンダーパスの縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の構築方法を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の構築方法を示す平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態の構築方法を示平面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態の構築方法を示す平面図である。
【
図14】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面である。
【
図15】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図17】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面である。
【
図18】本発明の一実施形態の構築方法を示す横断面図である。
【
図19】本発明の一実施形態の構築方法を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態が適用されるアンダーパスについて、
図1を参照して説明する。
図1において符号1は、本実施形態の構築方法が適用されたアンダーパスを示す。
【0028】
このアンダーパス1は、電車Tが走行する鉄道軌道Lの下方に、この鉄道軌道Lと交差するように形成されている。
【0029】
また、アンダーパス1は、ボックスカルバート2によって構成されており、このボックスカルバート2は、上部カルバート3と下部カルバート4によって構成され、さらに、下部カルバート4は、両側壁部を構成する側部カルバート4aと、中央壁を構成する中央カルバート4bとによって構成されている。
【0030】
ついで、
図2以降を参照して本発明のアンダーパスの構築方法の一実施形態について説明する。
【0031】
まず、
図2ないし
図4に示すように、アンダーパス1を構築する領域の外郭に沿うように土留め杭5を打設するとともに、鉄道軌道Lの両側部に沿うように土留め杭6を打設する。
【0032】
ついで、前記土留め杭5と土留め杭6とによって囲まれる部分を開削によって掘削することにより、鉄道軌道Lの両側部に沿った掘削溝D(D1・D2)を掘削する。
【0033】
ついで、各掘削溝D1・D2に、鉄道軌道Lの長さ方向に間隔をおいて複数の支持杭7を打設して、これらの支持杭7の上端部を掘削溝D1・D2内に露出させておき、各掘削溝D1・D2において、各支持杭7の上端部間に第1の支持梁8を掛け渡して固定する。
【0034】
ここで、前述した各掘削溝D1・D2間には未掘削部Rがあり、この未掘削部分に鉄道軌道Lが載置されている。
【0035】
ついで、前記未掘削部Rの、鉄道軌道Lに沿って間隔をおいた複数の部位を横方向に掘削して、掘削溝D1・D2間を連通させる貫通溝を形成するとともに、この貫通溝を、
図5ないし
図7に示すように、発泡プラスチックからなるスペーサ9を挿入する。
【0036】
この複数のスペーサ9には、鉄道軌道Lの下面が当接させられることにより、この鉄道軌道Lが支持されるようになっている。
【0037】
ついで、前記未掘削部Rの残余の部分を掘削して除去した後に、
図8ないし
図10に示すように、両第1の支持梁8間に、第2の支持梁10を、鉄道軌道Lに沿って間隔をおいて複数掛け渡す。
【0038】
これより、本実施形態においては、
図11に示すように、鉄道軌道Lの一部を切り離して土留め杭5の内側の上方を開放するとともに、鉄道軌道Lに沿って打設された土留め杭6を撤去する。
【0039】
ついで、
図11に矢印で示すように、上部カルバート3を複数の第2の支持梁10を跨ぐように載置する。
【0040】
本実施形態においては、上部カルバート3が所定幅に形成されて、これらの複数を並列的に連結することによって一定形状の上部カルバート3を構成するようになっており、
図12および
図13に示すように、両支持杭7間を覆うように配置する。
後述するように、下部カルバート4も同様の構成となされている。
【0041】
ここで、本実施形態においては、上部カルバート3の両側部に受け材12が取り付けられており、上部カルバート3を、支持杭7間を覆うように配置した状態において、
図11に破線で示すように、上部カルバート3と土留め杭5との間に介装されてこれらの間隔を保持する簡易工事桁13が支持されるようになっている。
【0042】
ついで、
図14および
図15に示すように、掘削溝Dを所定深さに掘り下げた後に、その底部に、床均しコンクリート11を打設して水平面を形成する。
【0043】
ついで、
図17に示すように、床均しコンクリート11上に、下部カルバート4の中央カルバート4bおよび側部カルバート4aを配置するとともに、上部カルバート3に対峙させた後に、これらを相互に連結して、
図17および
図18に示すように、所定形状のボックスカルバート2を形成する。
【0044】
これより、支持杭7、第1の支持梁8、第2の支持梁10、土留め杭5、受け材12、および、簡易工事桁13等を撤去した後に、ボックスカルバート2の外周面回りの隙間を埋め戻すとともに、ボックスカルバート2の上部に、撤去していた鉄道軌道Lの一部を再設置することにより、
図19に示すように、アンダーパス1を構築することができる。
【0045】
このように、本実施形態のアンダーパス1の構築方法によれば、鉄道軌道Lに構造的な変更を加えることなくアンダーパス1を構築することができる。
【0046】
また、アンダーパス1の構築における鉄道軌道Lに対する施工を、その一部の撤去と再設置といった簡便な作業に集約することができる。
【0047】
この結果、アンダーパス1の構築に施工手順や工程の煩雑化を抑制することができ、ひいては、工期の短縮を図ることができる。
【0048】
さらに、鉄道軌道Lを既存のまま使用するものであるから、必要資材の増加を抑制して施工費の高騰を抑制することができる。
【0049】
なお、前記実施形態においては、鉄道軌道Lを一次撤去した状態でボックスカルバート2の設置を行なうようにした例を示したが、これに代えて、鉄道軌道Lを敷設した状態でボックスカルバート2を設置するようにしてもよい。
【0050】
この場合、鉄道軌道Lと土留め杭5や土留め杭6の打設位置を変更して、ボックスカルバート2を鉄道軌道Lの下方へ設置するための経路を確保する必要がある。
【符号の説明】
【0051】
1 アンダーパス
2 ボックスカルバート
3 上部カルバート
4 下部カルバート
4a 側部カルバート
4b 中央カルバート
5 土留め杭
6 土留め杭
7 支持杭
8 第1の支持梁
9 スペーサ
10 第2の支持梁
11 床均しコンクリート
12 受け材
13 簡易工事桁
D(D1・D2) 掘削溝
R 未掘削部
T 電車
L 鉄道軌道
【要約】 (修正有)
【課題】資材を削減して工費の高騰と工期の長期化を抑制するアンダーパスの構築方法を提供する。
【解決手段】ボックスカルバート2を上下に2分割して上部カルバート3と下部カルバート4を形成する工程。鉄道軌道の下方に開削によって所定深さの掘削溝を掘削する第1の掘削工程。掘削された掘削溝に、鉄道軌道の両側部に沿い、鉄道軌道よりも下方に位置する一対の第1の支持梁を設置する工程。一対の第1の支持梁間に、長さ方向に間隔をおいて複数の第2の支持梁を設置する工程。第2の支持梁に上部カルバートを被せるように設置する工程。掘削溝をさらに掘り下げる第2の掘削工程。掘削溝に下部カルバートを設置して上部カルバートに対峙させた後に、上部カルバートと下部カルバートを連結する工程。第1の支持梁および第2の支持梁を撤去する工程。掘削溝と上部カルバートおよび下部カルバートとの隙間を埋め戻す工程。を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1