(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-23
(45)【発行日】2023-05-31
(54)【発明の名称】走行中に自動車のホイールに関する不具合を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2022516199
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2020073964
(87)【国際公開番号】W WO2021047916
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】102019124655.5
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド、ベンモクフタール
(72)【発明者】
【氏名】サルマ、ムジタヒド
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0063913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0158260(US,A1)
【文献】特開2002-274403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00,30/00-60/00
B62D 6/00,15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中に自動車のホイールに関する不具合を検出するための方法であって、
-前記自動車が実質的に直線的な車線の第1部分を走行している第1時間ウィンドウの間に連続的に適用される第1シリーズの補正ハンドル角度を自動的に決定する第1ステップ(S
1)であって、前記補正ハンドル角度が適用されることにより、前記車両は前記第1車線部分に対して平行な経路をたどる第1ステップ(S
1)と、
-前記第1シリーズの補正ハンドル角度から、前記自動車の一対の被操縦ホイールに影響を及ぼしている不具合の存在を自動的に検出するステップ(S
2)と、
選択的に、
-存在が検出された前記不具合に関する不具合タイプを推定するステップ(S
3;S
8)と、
-一対の前記ホイールのうち前記不具合の影響を受けている前記被操縦ホイールを識別するステップ(S
4;S
9)と、
-前記自動車のドライバーに注意する警告メッセージを生成するステップ(S
5)であって、前記メッセージは、推定された前記不具合タイプ、および前記不具合を有すると識別された前記ホイールを含むステップ(S
5)と、
を備える方法。
【請求項2】
前記自動検出ステップ(S
2)は、前記第1シリーズの補正ハンドル角度に関する平均値および標準偏差を計算するステップ(S
20)を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不具合の影響を受けている前記被操縦ホイールは、前記自動検出ステップ(S
2)において計算された前記平均値の符号から識別される(S
4)、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不具合タイプを推定する前記ステップ(S
3)は、前記第1シリーズの補正ハンドル角度の時間導関数を計算するステップ(S
30)を備え、前記不具合タイプは、前記時間導関数の平均値のゼロに対する比較(S
31)に基づいて推定される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記自動検出ステップ(S
2)に由来する前記不具合の存在の検出に続いて、
前記自動車が湾曲した輪郭の第2車線部分を走行している第2時間ウィンドウの間に連続的に適用される第2シリーズの補正ハンドル角度を自動的に決定する第2ステップ(S
6)であって、前記補正ハンドル角度が適用されることにより、前記車両は前記第2車線部分に対して平行な経路をたどる第2ステップ(S
6)と、
前記第2シリーズの補正ハンドル角度に関する平均値を計算するステップ(S
7)と、を備える、
ことを特徴とする請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記不具合の影響を受けている前記被操縦ホイールは、前記第2シリーズの補正角度に関して計算された(S
7)前記平均値の符号から識別される(S
9)、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不具合タイプを推定するステップ(S
8)は、前記第2シリーズの補正ハンドル角度の時間導関数を計算するステップ(S
80)を備え、前記不具合タイプは、前記時間導関数のゼロに対する比較(S
81)に基づいて推定される、
ことを特徴とする請求項5および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、車載ドライバー支援システム(2)を終了するステップをさらに備え、
前記車載ドライバー支援システム(2)は、当該車載ドライバー支援システム(2)の作動フェーズ中に、前記自動車(1)の前記経路の横方向制御をコマンド可能である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記終了は、推定された前記不具合タイプに基づいてトリガされる、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
適用される前記補正ハンドル角度は、前記車載ドライバー支援システム(2)の作動フェーズ中に、当該車載ドライバー支援システム(2)により送信される、
ことを特徴とする請求項8および9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自動車のホイールに関する不具合の検出に関し、より具体的には、自動車の走行中にこのような不具合を検出することを可能にする方法に関する。
【0002】
以下で明らかになるように、ホイールに関する不具合とは、ホイールの状態やその車軸に関するあらゆる不具合であると理解される。
【背景技術】
【0003】
タイヤのアラインメントや収縮の不具合等の自動車のホイールにおける不具合は、タイヤの早期摩耗の原因となり得るだけでなく、車両の走行フェーズ中の操縦システムの安定性または制御および摩耗に関する問題をも誘発し得ることが知られている。ホイールに関する不具合は、自動車の燃料の過剰消費の原因ともなり得る。
【0004】
また、部分的な自動化システムまたは高度なドライバー支援システム、特にドライバーに代わり車両の横方向制御を実施するシステムを有する自動車が増えている。特に、地面上の標識ラインを検出することにより車線を特定し、次いで、自動車が車線に応じた経路をたどることを可能とするように自動車の操縦システムに作用する、いわゆる車線維持またはガイドシステムが知られている。実際に、車両をその車線に維持する機能と目的として、このようなシステムは、車両が車線と平行な所定の経路をたどり得るように適用される補正ハンドル角度をリアルタイムで推定する。したがって、ホイールアラインメントやタイヤ収縮の不具合は、車両の横方向制御におけるこれらの支援システムの性能に、安定性、安全性、および挙動の点で悪影響を及ぼし得ることが理解されるであろう。
【0005】
しかしながら、このような不具合は、一般に、自動車の保守点検時にしか検出されず修正されない。したがって、アラインメント処置は、自動車の保守時の標準的な処置である。この処置の間に、自動車は、従来的にホイールのアライメントに関わる種々の角度を正確に測定することにより、いかなるアラインメントの不具合も検出可能とする専用装置を設けられた点検ベンチまたはプラットフォームに載置される。これらの角度は、特に以下の角度である。
-鉛直方向に対してホイールの傾きがなす角度に相当するキャンバー角度。
-車輪の方向と車両の長手方向軸との差に相当するトゥアウト/トゥイン角度。
-側面から見た、すなわち長手方向において測定された鉛直方向とホイールの旋回軸とがなす角度に相当するキャスター角度。
そして、車両のホイールが互いに対して平行となり、かつ道路面に対して垂直となるように、これらの角度が調整される。
【0006】
上記のことから、ホイールに関する不具合の存在をできるだけ早く、しかも車両の走行フェーズ中に検出して保守作業を迅速に実施する必要性をドライバーに警告できるようにする需要があることになる。
【0007】
文書US2013/0253767は、自動車に取り付けられた横方向制御支援システムを使用することにより、車両に関して存在し得る故障を自己診断するとともに、それに応じてドライバーに警告する方法およびシステムを開示している。より具体的には、横方向制御支援システムは、従来的に、車両が車線を維持するように車両に対して所望の経路を生成することが可能な経路生成器と、操縦部材に所望の経路に従うように操縦補正を提供することが可能な操縦制御器と、を備えている。このシステムは、車両が積極的に従う経路を予測するための経路予測器と、操縦補正がもたらす車両の予想される経路をモデル化する仮想ダイナミックモジュールと、をさらに備えている。予測された経路と予想された経路とが存在し得る故障を反映した大きすぎる差を示す場合、診断システムが起動し、存在し得る故障の原因が、環境条件(例えば強風)に関するものであるか、操縦システムの部品における機械的故障(例えば、ホイールや角度センサの位置に関する故障)に関するものであるか、あるいは車線を検出するために使用されるセンサの位置に関するものであるかが識別される。しかしながら、このシステムでは、車両の一対の被操縦ホイールである2つの左右のホイールのうち、どちらが実際に故障しているかを正確に特定することができず、また、不具合タイプがタイヤの収縮に関するかホイールのアラインメントの不具合に関するかを特定することもできない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、従来技術の限界を克服することを目的とする。
【0009】
より具体的には、本発明の主題は、走行中に自動車のホイールに関する不具合を検出するための方法であって、
-前記自動車が実質的に直線的な車線の第1部分を走行している第1時間ウィンドウの間に連続的に適用される第1シリーズの補正ハンドル角度を自動的に決定する第1ステップであって、前記補正ハンドル角度が適用されることにより、前記車両は前記第1車線部分に対して平行な経路をたどる第1ステップと、
-前記第1シリーズの補正ハンドル角度から、前記自動車の一対の被操縦ホイールに影響を及ぼしている不具合の存在を自動的に検出するステップと、
選択的に、
-存在が検出された前記不具合に関する不具合タイプを推定するステップと、
-一対の前記ホイールのうち前記不具合の影響を受けている前記被操縦ホイールを識別するステップと、
-前記自動車のドライバーに注意する警告メッセージを生成するステップであって、前記メッセージは、推定された前記不具合タイプ、および前記不具合を有すると識別された前記ホイールを含むステップと、
を備える方法である。
【0010】
特定の実施形態によれば、
-前記自動検出ステップは、前記第1シリーズの補正ハンドル角度に関する平均値および標準偏差を計算するステップを備え得る;
-次いで、前記不具合の影響を受けている前記被操縦ホイールは、前記自動検出ステップにおいて計算された前記平均値の符号から識別され得る;
-好適には、不具合タイプを推定する前記ステップは、前記第1シリーズの補正ハンドル角度の時間導関数を計算するステップを備え、前記不具合タイプは、前記時間導関数の平均値のゼロに対する比較に基づいて推定される;
-他の想定可能な実施形態において、本方法は、前記自動検出ステップに由来する前記不具合の存在の検出に続いて、前記自動車が湾曲した輪郭の第2車線部分を走行している第2時間ウィンドウの間に連続的に適用される第2シリーズの補正ハンドル角度を自動的に決定する第2ステップであって、前記補正ハンドル角度が適用されることにより、前記車両が前記第2車線部分に対して平行な経路をたどる第2ステップと、前記第2シリーズの補正ハンドル角度に関する平均値を計算するステップと、を備える;
-次いで、前記不具合の影響を受けている前記被操縦ホイールは、前記第2シリーズの補正角度に関して計算された前記平均値の符号から識別される;
-不具合タイプを推定する前記ステップは、前記第2シリーズの補正ハンドル角度の時間導関数を計算するステップを備え得る、前記不具合タイプは、前記時間導関数のゼロに対する比較に基づいて推定される;
-他の実施形態において、前記方法は、車載ドライバー支援システムを終了するステップをさらに備え得て、前記車載ドライバー支援システムは、当該車載ドライバー支援システムの作動フェーズ中に、前記自動車の前記経路の横方向制御をコマンド可能である;
-前記終了は、例えば、推定された前記不具合タイプに基づいてトリガされる;
-好適には、適用される前記補正ハンドル角度は、前記車載ドライバー支援システムの作動フェーズ中に、当該車載ドライバー支援システムにより送信される。
【0011】
本発明は、添付の図面を参照してなされる以下の説明に照らしてより明瞭に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明による車両のホイールに関する不具合を検出するための方法の想定可能な実施例による、自動車に搭載されたシステムの機能ブロック図を示す。
【
図2】
図2は、ホイールに不具合のある自動車がたどる経路の例を示す。
【
図3】
図3は、本発明による検出方法の第1実施形態により実施可能なステップを示す。
【
図4】
図4は、本発明による検出方法の別の実施形態により実施可能なステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による自動車のホイールの不具合を検出するための方法の想定可能な実施モードを、特に機能ブロック図を示す
図1を参照して、自動車の経路の横方向制御をコマンド可能なドライバー支援システム2を設けられた自動車1についての非限定的な文脈で説明する。
【0014】
自動車1が自動車の走行する車線を維持することを目的として、横方向制御ドライバー支援システム2は、従来的に単数または複数のセンサ20を有している。センサ20の検出により、車線の幅や車両に対するその向きおよび曲率等の、当該車線のある程度の特性を特定することが可能となる。この目的は、車線のモデル(典型的には車線の中心をたどることにより形成される経路)を推定してたどることである。使用されるセンサは、例えば、カメラ、LIDARセンサ、レーダーや他の仮想センサ、または、より一般的には、地面上の標識ラインを検出可能なあらゆる種類のセンサである。仮想センサの例として、車両の他のセンサが取得したデータを読み取り、これに基づいて他車や安全レール等の物体の位置を特定し、そこから車両に対する車線の位置を推測するソフトウェアが挙げられるであろう。単数または複数のセンサ20により送信された情報から、横方向制御システム2の電子モジュール21は、例えば地面上の標識ラインを検出可能な複数のセンサが使用されている場合にはデータ融合により、地面上の標識ラインを推定する。システム2は、参照符号22としてグループ化された一定量の情報、例えば、自動車1の速度および/または加速度、ならびにGPS等の車載ナビゲーションシステムおよび/または車載高精細地図により提供される自動車の位置についての情報も有している。これら全ての情報に基づいて、電子横方向制御モジュール23は、自動車1が自動的に車線、一般的には当該車線の中心線に対して平行な経路をたどるように適用されるべき補正ハンドル角度を生成し、これを自動車1の操縦コラムを制御するためのシステム3に送る。次いで、システム3は、受信した角度補正をハンドルにそのまま適用する。換言すれば、車両の被操縦ホイールを制御する車両のハンドルは、受信した補正角度値にしたがって自動的に回動する。
【0015】
本発明の原理は、自動車の被操縦ホイールに関する不具合の主な症状は、車両が左右にドリフトする傾向であるという事実に基づいている。このドリフトは、自動車が直線的な道路部分を走行しているとき、より顕著になる。このような状況において、横方向制御支援システム2が起動されると、それはこれらのドリフトを検出し、被操縦ホイールに不具合のない車両に対して行うよりも多くの補正ハンドル角度を、被操縦ホイールに発生させるであろう。これを
図2に模式的に示す。
図2は、直線的な車線部分6を走行する自動車1の複数の一連の位置を示している。本図において、自動車1は、この直線的な車線部分6の中心7に従うことが前提とされているのに、(実線の矢印によって示されるように)右側に2回ドリフトしていることに注目されたい。この場合、電子横方向制御モジュール23は、検出されたドリフト毎に、自動車1が(点線の2つの矢印によって示されるように)道路部分上で再び中央位置を取ることができるように、補正ハンドル角度を送信するであろう。
【0016】
本発明による自動車の被操縦ホイールに関する不具合を検出するための方法は、補正ハンドル角度を分析することに基づいている。この分析により、以下で詳述するように、車両の走行中に不具合の存在を自動的に検出することができるだけでなく、不具合タイプを推定することができるとともに、左右2つの被操縦ホイールのうちのいずれが不具合の影響を受けているかを識別することができる。
【0017】
図3は、本発明による第1の想定可能な実施形態による自動車1の一対の被操縦ホイールのうちの右側および/または左側のホイールに関する不具合を検出するための方法のステップを示す。
【0018】
本発明の第1ステップS1は、第1シリーズの補正ハンドル角度を自動的に決定することからなる。第1シリーズの補正ハンドル角度は、自動車1が第1の実質的に直線的な車線部分を前進しているとき、自動車1の走行の第1時間ウィンドウの間に、自動車1が当該第1車線部分に対して平行な経路を強制的にたどるように、連続的に適用される。
【0019】
上述のように、補正角度は、電子横方向制御モジュール23により自動的に決定され、したがってホイールに関する不具合を検出するためのモジュール4に、処理のためにそのまま送信され得る(
図1参照)。支援システム2は、電子モジュール21により送信された情報や、マップおよび車両の速度および/または加速度に関する情報22から、自動車が直線状の道路部分上にある間に、この第1シリーズの補正ハンドル角度が良好に決定されたかを識別することもできる。ステップS
1のトリガに先立つ条件は、例えば、道路の曲率半径が所定の曲率閾値を超えていないかを確認することにより、自動車1が実質的に直線的な道路部分上を走行しているかを確認すること、および、この道路部分が一連の補正角度を収集可能であるほどに十分に長い間直線状であり続けるかを確認することであり得る。例えば、具体的には、およそ15秒間の時間ウィンドウに亘って補正ハンドル角度および補正頻度における変化を観察し得るためには、道路部分は、車両が50km/h未満の速度で移動している場合にはおよそ200メーターに亘って、または車両が50~100km/hの速度で移動している場合にはおよそ400mに亘って、実質的に直線状でなければならないと考えられ得る。
【0020】
次いで、第1シリーズの補正ハンドル角度は、ステップS
2において、自動車の一対の被操縦ホイールに影響を及ぼす不具合の存在を自動的に検出するために、ホイールに関する不具合を検出するためのモジュール4により処理される。これを実施するために、モジュール4は、ステップS
20において、第1シリーズの補正ハンドル角度に関する平均値および標準偏差を計算することができる。{SW_angle
1, SW_angle
2,....SW_angle
N}を、第1シリーズに含まれる補正ハンドル角度(angle)のN個の値のセットを表すものとして使用する場合、平均値
および標準偏差
は以下の関係式に従って決定される。
【数1】
【0021】
平均値
および標準偏差
の線形結合を支援システム2の既知の不確実性εに対して比較することにより、不具合の存在は自動的に検出される。例えば、
図1のステップS
21に示すように、補正ハンドル角度がシステムの既知の不確実性よりも大きい値で平均的に逸脱しているという事実を反映する以下の関係式が満たされる場合、不具合検出モジュール4により不具合の存在が自動的に検出される。
【0022】
この段階で不具合が検出されなければ、後日、例えば1週間後に、ステップS1およびS2を自動的に繰り返すように再プログラミングすることが提供され得る。
【0023】
そうでない場合には、本方法は、ステップS
2で存在が検出された不具合に関する不具合タイプを推定するステップS
3、および、一対のホイールのうち当該不具合の影響を受けている被操縦ホイールを識別するステップS
4に続く。この段階において、
図3ではステップS
4がステップS
3に続くものとして示されているが、これら2つのステップS
3およびS
4の順序は逆としてもよいことに留意されたい。あるいは、これらのステップS
3、S
4は、並行して実施され得る。
【0024】
不具合タイプを推定するステップS
3に進むにあたり、不具合検出モジュール4は、例えば、計算ステップS
30において、第1シリーズの補正ハンドル角度の各瞬間における以下の関係式による時間導関数
を計算することにより、ステップS
1で決定された補正ハンドル角度の変動率を分析する。
【数2】
【0025】
次いで、不具合タイプは、時間導関数
の平均値
をゼロに対して比較すること(ステップS
31)に基づいて推定され得る。より正確には、時間導関数
の平均
がゼロに等しい場合(第1シリーズの補正ハンドル角度の一定変動率に相当する)、不具合検出モジュール4は、不具合タイプは被操縦ホイールのうちの1つのタイヤの収縮であると推測する(ステップS
31において実施されるテストの左側分岐)。そうでなければ、不具合検出モジュール4は、不具合タイプはアラインメントの問題、より正確には、被操縦ホイールのうちの1つに関する負のキャンバー角度(ホイールの車両側への傾き)に関すると推測する(ステップS
31において実施されるテストの右側分岐)。
【0026】
不具合の影響を受けている被操縦ホイールについては、自動検出のステップS
2において計算された平均値
の符号から識別される。より正確には、平均値
の符号が正であれば、不具合の影響を受けているホイールは、左側の被操縦ホイールである(ステップS
41において実施されるテストの右側分岐)。逆に、平均値
の符号が正であれば、不具合の影響を受けているホイールは、右側の被操縦ホイールである(ステップS
31において実施されるテストの左側分岐)。
【0027】
ステップS
3およびS
4の終了時に、検出モジュール4は、自動車のドライバーに注意する警告メッセージを生成することができる(ステップS
5)。このメッセージは、有利には、推定された不具合タイプ、および不具合を有していると識別されたホイールを含む。このメッセージは、自動車1の車室に配置されたユーザインターフェース5での音声および/または視覚放送のために送信される(
図1参照)。
【0028】
モジュール4は、検出された不具合タイプに応じて、
図1の点線コマンドで示すように、横方向制御支援システム2を終了することも決定し得る。特に、不具合タイプが被操縦ホイールのうちの1つのタイヤの収縮である場合、横方向制御により提供される機能を終了することが望ましい場合がある。なぜならば、タイヤの収縮は、システム2が使用するセンサ20の較正、ひいては自動経路制御を不正なものとし得るからである。一方で、負のキャンバー角度に関する不具合は、横方向制御支援システム2の性能にそこまで影響を与えることがないとされるため、この場合にはシステム2を終了する必要はない。変形例として、ホイールに関する不具合の存在が検出され次第、システム2による横方向制御を終了することもできる。
【0029】
図4は、本発明による第2の想定可能な実施形態による自動車1の一対の被操縦ホイールのうちの右側および/または左側のホイールに関する不具合を検出するための方法のステップを示す。
【0030】
本方法は、
図3を参照して説明したものと同一のステップS
1およびS
2から開始する。すなわち、これらのステップにより、不具合検出モジュール4は、自動車1が第1の実質的に直線的な車線部分を移動している間に収集された第1シリーズの補正ハンドル角度から、不具合の存在を検出することができる。
【0031】
しかしながら、
図4の方法は、ステップS
2の終了時にモジュール4が不具合の存在を検出した場合、第2サイクルの測定ステップを備える点で
図3に示す方法と異なる。第2サイクルの測定ステップは、自動車1が、実質的に直線であった第1車線部分とは異なる第2湾曲車線部分を移動中に実施される。したがって、
図4は、ステップS
2に続く新たなステップS
6を示す。ステップS
6は、自動車1が湾曲した輪郭を有する車線部分を前進しているとき、自動車1を運転する第2時間ウィンドウ中に、連続的に適用される第2シリーズの補正ハンドル角度を自動的に決定する。補正ハンドル角度が適用されることにより、前記車両は当該第2湾曲車線部分に対して平行な経路をたどる。
【0032】
前述と同様に、補正角度は、電子横方向制御モジュール23により自動的に決定され、したがってホイールに関する不具合を検出するためのモジュール4(
図1参照)に、処理のためにそのまま送信され得る。支援システム2は、電子モジュール21の情報や、マップおよび車両の速度および/または加速度に関する情報22から、自動車が湾曲した道路の部分上にある間に、この第2シリーズの補正ハンドル角度が良好に決定されたかを識別することもできる。ステップS
6のトリガに先立つ条件は、自動車1が前進している道路の部分が実際に湾曲した輪郭であるか確認することであり得る。例えば、道路のこの部分の曲率半径が、例えば1000メートルに設定された所定の曲率閾値よりも大きいか、および道路のこの部分が一連の補正角度を収集可能であるほどに十分に長く湾曲したままであるかをチェックすることができる。
【0033】
次いで、不具合タイプおよび不具合を有するホイールの識別が、不具合検出モジュール4により実施される計算において第2シリーズの補正ハンドル角度が使用される点を除き、上述のステップS3およびS4と同様の態様で特定される。
【0034】
より具体的には、モジュール4は、ステップS
7において、第2シリーズの補正ハンドル角度の平均値を計算することができる。{SW_angle
1,SW_angle
2,...SW_angle
P}が第2シリーズに含まれる補正ハンドル角度(angle)のP個の値のセットを表す場合、平均値
は、以下の関係式に従って決定される。
【数3】
【0035】
本方法は、ステップS
2で存在が検出された不具合に関する不具合タイプを推定するステップS
8、および、一対のホイールのうち当該不具合の影響を受けている被操縦ホイールを識別するステップS
9に続く。ここでも、
図3においてステップS
9がステップS
8に続くものとして示されているが、これら2つのステップS
8およびS
9の順序は逆としてもよいことに留意されたい。あるいは、これらのステップS
8、S
9は、並行して実施され得る。
【0036】
これらのステップS
8およびS
9は、
図3の実施形態のステップS
3およびS
4と酷似している。
【0037】
したがって、不具合タイプを推定するステップS
8に進むにあたり、不具合検出モジュール4は、例えば、計算ステップS
80において、第2シリーズの補正ハンドル角度の各瞬間における以下の関係式による時間導関数
を計算することにより、ステップS
6で決定された補正ハンドル角度の変動率を分析する。
【数4】
【0038】
次いで、不具合タイプは、時間導関数
の平均値
をゼロに対して比較すること(ステップS
81)に基づいて推定され得る。より正確には、時間導関数
の平均
がゼロに等しい場合(第2シリーズの補正ハンドル角度の一定変動率に相当する)、不具合検出モジュール4は、不具合タイプは被操縦ホイールのうちの1つのタイヤの収縮であると推測する(ステップS
81において実施されるテストの左側分岐)。そうでなければ、不具合検出モジュール4は、不具合タイプはアラインメントの問題、より正確には、被操縦ホイールのうちの1つに関する正のキャンバー角度(ホイールの車両外側への傾き)に関すると推測する(ステップS
81において実施されるテストの右側分岐)。
【0039】
不具合の影響を受けている被操縦ホイールについては、ステップS
7において計算された平均値
の符号から識別される。より正確には、平均値
の符号が正であれば、不具合の影響を受けているホイールは、左側の被操縦ホイールである(ステップS
91において実施されるテストの右側分岐)。逆に、平均値
の符号が正であれば、不具合の影響を受けているホイールは、右側の被操縦ホイールである(ステップS
91において実施されるテストの左側分岐)。
【0040】
ステップS
8およびS
9の終了時に、
図3の場合と同様に、ステップS
5が行われる。ステップS
5において、検出モジュール4は、自動車のドライバーに注意する警告メッセージを生成し得る。このメッセージは、有利には、ステップS
8で推定された不具合タイプ、および不具合を有しているとステップS
9で識別されたホイールを含む。このメッセージは、自動車1の車室に配置されたユーザインターフェース5での音声および/または視覚放送のために送信される(
図1参照)。
【0041】
モジュール4は、不具合の存在が検出された場合、または、検出された不具合タイプに応じて、
図1の点線コマンドで示すように、横方向制御支援システム2を終了することも決定し得る。特に、不具合タイプが被操縦ホイールのうちの1つのタイヤの収縮である場合、横方向制御により提供される機能を終了することが望ましい場合がある。なぜならば、タイヤの収縮は、システム2が使用するセンサ20の較正、ひいては自動経路制御を不正なものとし得るからである。
【0042】
以上の2つの方法を、ステップS
1およびS
2のみを共通して有する代替的な方法として説明してきた。図示しない変形例によれば、これら2つの方法を組み合わせることも提供可能である。例えば、
図3に示す方法のステップS
2における検出に続いて、ステップS
3およびS
4も開始して、自動車1が湾曲した輪郭の車線部分を走行するのと同時に、
図4の方法に関して説明したステップS
6~S
9を実行することが提供され得る。
【0043】
図3および
図4にステップを示した2つの方法、またはそれらの組み合わせを、自動車1に横方向制御支援システム2が設けられている非限定的な例(
図1の例)について説明してきた。本例の利点は2つある。すなわち、一方では、横方向制御のために使用される補正ハンドル角度の測定値をそのまま利用することにより、車両の走行中に不具合を有するホイールを正確に識別することができる。そして他方では、例えば不具合タイプに応じて、または不具合の存在が検出され次第、横方向制御に関する機能を終了することが決定され得る。
【0044】
しかしながら、本発明の原理は、自動車がこのような横方向制御支援システムを設けられていない例についても適用され得る。この場合、ドライバーは、運転中に、例えばユーザインターフェース5を介して意図的に診断モードに入り、不具合検出モジュール4が使用する補正ハンドル角度は、直線的な車線の部分上で自動車が再び中央位置を取るように車両のハンドルにそのまま適用されるハンドル角度であって、ハンドル角度センサにより測定されるハンドル角度であることが提供され得る。