(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】脳全体にわたる高均一性での腫瘍治療電場(TT電場)の発生
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20230525BHJP
A61N 1/04 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
A61N1/32
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2021520224
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2019058709
(87)【国際公開番号】W WO2020079554
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼーヴ・ボンゾン
(72)【発明者】
【氏名】アリエル・ナヴェー
(72)【発明者】
【氏名】オフィール・イェシャリム
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/057953(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/002879(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094557(US,A1)
【文献】国際公開第2017/072706(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N1/04-A61N1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
外側(76)と内側(75)を有するフレキシブルバッキング(70)であって、前記内側(75)を人間の頭部に向けて前記人間の頭部の一方の側に取り付けられるように構成され、第一方向(d1)に沿って6cm以上の長さを有する第一アーム(71)と、第二方向(d2)に沿って6cm以上の長さを有する第二アーム(72)とを有し、前記第一方向(d1)と前記第二方向(d2)との間の角度(θ)が65°から115°の間であり、前記第一アーム(71)と前記第二アーム(72)が前記人間の頭部の耳の隣に該装置を取り付けるように構成されている、フレキシブルバッキング(70)と、
前記フレキシブルバッキング(70)の第一アーム(71)の内側(75)に位置する複数の第一容量結合電極素子(81)であって、各第一容量結合電極素子(81)が、導電板(81c)と、内側に向けて該導電板上に位置する誘電体層とを有する、複数の第一容量結合電極素子(81)と、
前記フレキシブルバッキング(70)の第二アーム(72)の内側(75)に位置する複数の第二容量結合電極素子(82)であって、各第二容量結合電極素子(82)が、導電板(82c)と、内側に向けて該導電板上に位置する誘電体層とを有する、複数の第二容量結合電極素子(82)と、
各第一容量結合電極素子(81)の導電板(81c)に接続する第一組の導体(61)と、
各第二容量結合電極素子(82)の導電板(82c)に接続する第二組の導体(62)と、
前記第一容量結合電極素子(81)と前記第二容量結合電極素子(82)によって覆われていない前記フレキシブルバッキング(70)の部分を前記人間の頭部に対して保持するように位置する接着層と、を備える装置。
【請求項2】
前記複数の第一容量結合電極素子(81)が少なくとも三つの容量結合電極素子又は二個から十個の容量結合電極素子を備え、前記複数の第二容量結合電極素子(82)が少なくとも三つの容量結合電極素子又は二個から十個の容量結合電極素子を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記角度(θ)が80°から100°の間である又は前記角度(θ)が90°である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の第一容量結合電極素子(81)が全て並列で配線されている、及び/又は、前記複数の第二容量結合電極素子(82)が全て並列で配線されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年10月15日出願の米国仮出願第62/745689号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場(TT電場,tumor treating field)は、中間周波数範囲(例えば、100~300kHz)内で低強度(例えば、1~4V/cm)の交流電場であり、例えば、特許文献1(その全内容は参照として本願に組み込まれる)に記載のように、腫瘍を治療するために使用可能である。TT電場治療は、再発性の膠芽腫(GBM,glioblastoma)用に承認された単独療法であり、また、新たに診断されたGBM患者用に承認された化学療法との併用療法である。交流電場は、患者の頭部上に直接配置されたトランスデューサアレイ(つまり、容量結合電極のアレイ)によって非侵襲的に誘起され(例えば、Novocure社のOptune(登録商標)システムを用いる)、トランスデューサアレイ同士の間にAC(交流)電圧を印加する。
【0003】
膠芽腫を治療するためには、例えば、膠芽腫を有する人間について
図1A~
図1Dに示されるように、腫瘍近傍において患者の皮膚上に配置された四つのトランスデューサアレイ11~14を介して、TT電場を患者に伝える。トランスデューサアレイ11~14は二対として配置され、各トランスデューサアレイはケーブルを介してAC信号発生器に接続される。AC信号発生器は、(a)第一期間中に一対のアレイ11、12を通るAC電流を送り、腫瘍を通る第一方向の電場を誘起し、次いで、(b)第二期間中に他対のアレイ13、14を通るAC電流を送り、腫瘍を通る第二方向の電場を誘起し、次いで、治療期間にわたってステップ(a)と(b)を繰り返す。
【0004】
膠芽腫に関しては、従来の解決策(例えば、Novocure社のNovoTALソフトウェア)が、腫瘍内の電場強度を最大にするためにトランスデューサアレイ11~14を患者の頭部の何処に配置すべきなのかを決定するために利用可能である。しかしながら、従来技術の解決策は、腫瘍内の電場分布のみに関するものであるため、いずれの従来技術の解決策も、脳の他の領域における電場の均一性には対処していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7565205号明細書
【文献】米国特許第7599746号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、人間の脳に交流電場を印加する第一方法を対象としている。第一方法は、人間の頭部の右側に第一組の電極素子を取り付けることを備える。第一組の電極素子は、人間の右耳の外耳道の外開口の上方に主に水平な向きで位置する上部と、人間の右耳の外耳道の外開口の後方に主に垂直な向きで位置する後部とを有する。第一方法は、人間の頭部の左側に第二組の電極素子を取り付けることも備える。第二組の電極素子は、人間の左耳の外耳道の外開口の上方に主に水平な向きで位置する上部と、人間の左耳の外耳道の外開口の後方に主に垂直な向きで位置する後部とを有する。第一方法は、第一組の電極素子と第二組の電極素子との間に交流電圧を印加することも備える。その印加は、第一組の電極素子と第二組の電極素子を人間の頭部に取り付けた後に行われる。
【0007】
第一方法の一部実施形態では、第一組の電極素子の上部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第一組の電極素子の後部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第二組の電極素子の上部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第二組の電極素子の後部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含む。
【0008】
第一方法の一部実施形態では、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の上部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の上方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の前方1cm以上に位置する前端を有し、且つ、(d)各外耳道の外開口の後方1cm以上に位置する後端を有する。
【0009】
第一方法の一部実施形態では、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の後部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の後方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の上方1cm以上に位置する上端を有し、且つ、(d)各外耳道の外開口の下方3cm以上に位置する後端を有する。
【0010】
第一方法の一部実施形態では、第一組の電極素子の上部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第一組の電極素子の後部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第二組の電極素子の上部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第二組の電極素子の後部が少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の上部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の上方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の前方1cm以上に位置する前端を有し、且つ、(d)各外耳道の外開口の後方1cm以上に位置する後端を有し、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の後部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の後方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の上方1cm以上に位置する上端を有し、且つ、(d)各外耳道の外開口の下方3cm以上に位置する後端を有する。
【0011】
第一方法の一部実施形態は、人間の頭頂部に位置する第三重心を有する第三組の電極素子を人間の頭部に取り付けることと、人間のC2椎骨の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する第四重心を有する第四組の電極素子を人間の後頚部に取り付けることと、第三組の電極素子と第四組の電極素子との間に交流電圧を印加することと、を更に備え、その印加は、第三組の電極素子と第四組の電極素子を人間の頭部に取り付けた後に行われる。(a)第一組の電極素子と第二組の電極素子との間に交流電圧を印加するステップ及び(b)第三組の電極素子と第四組の電極素子との間の交流電圧を印加するステップが交互の順で繰り返される。こうした実施形態では、任意選択的に、第三重心が人間の頭頂部の前方1cmから3cmの間に位置するようにして第三組の電極素子が取り付けられ得る。こうした実施形態では、任意選択的に、第四重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置するようにして第四組の電極素子が取り付けられ得る。こうした実施形態では、任意選択的に、第三重心が人間の頭頂部の前方1cmから3cmの間に位置するようにして第三組の電極素子が取り付けられる一方で、第四重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置するようにして第四組の電極素子が取り付けられ得る。
【0012】
第一方法の一部実施形態では、第一組の電極素子が人間の頭部の右側に取り付けられ第二組の電極素子が人間の頭部の左側に取り付けられる具体的な箇所が、個人用に有限要素シミュレーションを行い、第一組の電極素子の位置と第二組の電極素子の位置の各組み合わせについて結果として得られる電場を計算すること、及び、最低値のΨをもたらす第一組の電極素子の位置と第二組の電極素子の位置の組み合わせを選択することによって決定され、ここで、Ψ=σT÷MEANT、σT=SD([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})、MEANT=mean([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})である。
【0013】
第一方法の一部実施形態では、交流電圧が100kHzから300kHzの間の周波数を有する。
【0014】
本発明の他の態様は、人間の体の脳に交流電場を印加する第二方法を対象としていて、その体は正中冠状面と正中矢状面を有する。第二方法は、人間の右耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の右側で人間の頭部に第一組の電極素子を取り付けることと、人間の左耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する第二重心を有する第二組の電極素子を、正中矢状面の左側であって正中冠状面の後方で人間の体に取り付けることと、人間の左耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の左側で人間の頭部に第三組の電極素子を取り付けることと、人間の右耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する第四重心を有する第四組の電極素子を、正中矢状面の右側であって正中冠状面の後方で人間の体に取り付けることとを備える。第二方法は、(a)第一組の電極素子と第二組の電極素子との間に交流電圧を印加すること及び(b)第三組の電極素子と第四組の電極素子との間に交流電圧を印加することを交互の順で繰り返すことも備える。第二方法において、その繰り返しは、第一組の電極素子と第二組の電極素子と第三組の電極素子と第四組の電極素子を取り付けた後に行われる。
【0015】
第二方法の一部実施形態では、第二重心と第四重心が人間のC2椎骨の中点の上方に位置する。第二方法の一部実施形態では、第二重心と第四重心が人間のC2椎骨の中点の下方に位置する。第二方法の一部実施形態では、第二重心と第四重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置する。
【0016】
第二方法の一部実施形態では、第一組の電極素子と第二組の電極素子と第三組の電極素子と第四組の電極素子が人間の体に取り付けられる具体的な箇所が、それぞれ、個人用に有限要素シミュレーションを行い、第一組の電極素子の位置と第二組の電極素子の位置と第三組の電極素子の位置と第四組の電極素子の位置の各組み合わせについて結果として得られる電場を計算すること、及び、最低値のΨをもたらす第一組の電極素子の位置と第二組の電極素子の位置と第三組の電極素子の位置と第四組の電極素子の位置の組み合わせを選択することによって決定され、ここで、Ψ=σT÷MEANT、σT=SD([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})、MEANT=mean([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})である。
【0017】
第二方法の一部実施形態では、交流電圧が100kHzから300kHzの間の周波数を有する。
【0018】
本発明の他の態様は第一装置を対象としている。第一装置は、外側と内側を有するフレキシブルバッキングを備え、フレキシブルバッキングは、その内側を人間の頭部に向けて人間の頭部の一方の側に取り付けられるように構成される。フレキシブルバッキングは、第一方向に沿って6cm以上の長さを有する第一アームと、第二方向に沿って6cm以上の長さを有する第二アームとを有し、第一方向は第二方向と65°から115°の間の角度を成す。第一装置は、フレキシブルバッキングの第一アームの内側に位置する複数の第一容量結合電極素子(各第一容量結合電極素子が、導電板と、内側に向けてその上に位置する誘電体層を有する)と、フレキシブルバッキングの第二アームの内側に位置する複数の第二容量結合電極素子(各第二容量結合電極素子が、導電板と、内側に向けてその上に位置する誘電体層を有する)も備える。第一装置は、各第一容量結合電極素子の導電板に接続する第一組の導体と、各第二容量結合電極素子の導電板に接続する第二組の導体も備える。第一装置は、いずれの電極素子によっても覆われていないフレキシブルバッキングの部分を人間の頭部に対して保持するように位置する接着層も備える。
【0019】
第一装置の一部実施形態では、複数の第一容量結合電極素子が少なくとも三つの容量結合電極素子を備え、複数の第二容量結合電極素子が少なくとも三つの容量結合素子を備える。第一装置の一部実施形態では、第一方向が第二方向と80°から100°の間の角度を成す。第一装置の一部実施形態では、第一方向が第二方向と90°の角度を成す。第一装置の一部実施形態では、複数の第一容量結合電極素子が全て並列で配線される。第一装置の一部実施形態では、複数の第二容量結合電極素子が全て並列で配線される。
【0020】
本発明の他の態様は、電極素子の組を用いて人間の脳に交流電場を印加する前に、人間の頭部上に電極素子の組を配置する箇所を決定する第三方法を対象としている。第三方法は、(a)第一組の電極素子を複数の第一位置において人間の頭部の右側に取り付けることをシミュレーションするステップを備え、第一組の電極素子は、人間の右耳の外耳道の外開口の上方に主に水平な向きで位置する上部と、人間の右耳の外耳道の外開口の後方に主に垂直な向きで位置する後部とを有する。第三方法は、(b)第二組の電極素子を複数の第二位置において人間の頭部の左側に取り付けることをシミュレーションするステップも備え、第二組の電極素子は、人間の左耳の外耳道の外開口の上方に主に水平な向きで位置する上部と、人間の左耳の外耳道の外開口の後方に主に垂直な向きで位置する後部とを有する。第三方法は、(c)複数の第一位置の各々と複数の第二位置の各々においてそれぞれ第一組の電極素子と第二組の電極素子との間に交流電圧を印加することをシミュレーションするステップも備える。第三方法は、(d)ステップ(c)に基づいて、複数の第一位置のうちのどの第一位置と複数の第二位置のうちのどの第二位置が高均一性で人間の脳内に交流電場をもたらすのかを決定するステップも備える。第三方法は、(e)ステップ(d)の結果に基づいて、第一組の電極素子の推奨位置と、第二組の電極素子の推奨位置とを出力するステップも備える。
【0021】
第三方法の一部実施形態では、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の上部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の上方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の前方1cm以上に位置する前端を有し、且つ、(d)各外耳道の外開口の後方1cm以上に位置する後端を有する。
【0022】
第三方法の一部実施形態では、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の後部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の後方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の上方1cm以上に位置する上端を有し、且つ、(d)各外耳道の外開口の下方3cm以上に位置する後端を有する。
【0023】
第三方法の一部実施形態は、(g)人間の頭頂部に位置する第三重心を有する第三組の電極素子を複数の第三位置において人間の頭部に取り付けることをシミュレーションするステップと、(h)人間のC2椎骨の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する第四重心を有する第四組の電極素子を複数の第四位置において人間の後頚部に取り付けることをシミュレーションするステップと、(i)複数の第三位置の各々と複数の第四位置の各々においてそれぞれ第三組の電極素子と第四組の電極素子との間に交流電圧を印加することをシミュレーションするステップと、(j)複数の第三位置のうちのどの第三位置と複数の第四位置のうちのどの第四位置が高均一性で人間の脳内に交流電場をもたらすのかを決定するステップと、(k)ステップ(j)の結果に基づいて、第三組の電極素子の推奨位置と、第四組の電極素子の推奨位置とを出力するステップとを更に備える。
【0024】
ステップ(g)から(j)を含む第三方法の一部実施形態では、第三組の電極素子の取り付けのシミュレーションで第三重心が人間の頭頂部の前方1cmから3cmの間に位置する。ステップ(g)から(j)を含む第三方法の一部実施形態では、第四組の電極素子の取り付けのシミュレーションで第四重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置する。
【0025】
ステップ(g)から(j)を含む第三方法の一部実施形態では、第三組の電極素子の取り付けのシミュレーションで第三重心が人間の頭頂部の前方1cmから3cmの間に位置し、第四組の電極素子の取り付けのシミュレーションで第四重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置する。
【0026】
第三方法の一部実施形態では、ステップ(d)が、最低値のΨをもたらす第一組の電極素子の位置と第二組の電極素子の位置の組み合わせを選択することを備え、ここで、Ψ=σT÷MEANT、σT=SD([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})、MEANT=mean([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})である。
【0027】
本発明の他の態様は、電極素子の組を用いて人間の体の脳に交流電場を印加する前に、人間の体上に電極素子の組を配置する箇所を決定する第四方法を対象としている。その体は正中冠状面と正中矢状面を有する。第四方法は、(a)人間の右耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の右側で複数の第一位置において人間の頭部に第一組の電極素子を取り付けることをシミュレーションするステップを備える。第四方法は、(b)第二重心を有する第二組の電極素子を、正中矢状面の左側であって正中冠状面の後方で複数の第二位置において人間の体に取り付けることをシミュレーションするステップも備え、第二重心は人間の左耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する。第四方法は、(c)人間の左耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の左側で複数の第三位置において人間の頭部に第三組の電極素子を取り付けることをシミュレーションするステップも備える。第四方法は、(d)第四重心を有する第四組の電極素子を、正中矢状面の右側であって正中冠状面の後方で複数の第四位置において人間の体に取り付けることをシミュレーションするステップも備え、第四重心は人間の右耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する。第四方法は、(e)複数の第一位置の各々と複数の第二位置の各々においてそれぞれ第一組の電極素子と第二組の電極素子との間に交流電圧を印加することをシミュレーションするステップも備える。第四方法は、(f)複数の第三位置の各々と複数の第四位置の各々において第三組の電極素子と第四組の電極素子との間に交流電圧を印加することをシミュレーションするステップも備える。第四方法は、(g)ステップ(e)とステップ(f)に基づいて、複数の第一位置のうちのどの第一位置と、複数の第二位置のうちのどの第二位置と、複数の第三位置のうちのどの第三位置と、複数の第四位置のうちのどの第四位置が高均一性で人間の脳内に交流電場をもたらすのかを決定するステップも備える。そして、第四方法は、(h)ステップ(g)の結果に基づいて、第一組の電極素子の推奨位置と、第二組の電極素子の推奨位置と、第三組の電極素子の推奨位置と、第四組の電極素子の推奨位置を出力するステップも備える。
【0028】
第四方法の一部実施形態では、取り付けのシミュレーションで第二重心と第四重心が人間のC2椎骨の中点の上方に位置する。
【0029】
第四方法の一部実施形態では、取り付けのシミュレーションで第二重心と第四重心が人間のC2椎骨の中点の下方に位置する。
【0030】
第四方法の一部実施形態では、取り付けのシミュレーションで第二重心と第四重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置する。
【0031】
第四方法の一部実施形態では、ステップ(g)が、最低値のΨをもたらす第一組の電極素子の位置と第二組の電極素子の位置と第三組の電極素子の位置と第四組の電極素子の位置の組み合わせを選択することを備え、ここで、Ψ=σT÷MEANT、σT=SD([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})、MEANT=mean([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1A~
図1Dは、TT電場を用いて膠芽腫を治療するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための従来の配置を示す。
【
図2】
図2A~
図2Dは、TT電場を用いて転移を防止するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための改善された配置を示す。
【
図3】
図3A~
図3Dは、TT電場を用いて転移を防止するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための他の改善された配置を示す。
【
図4】
図4A~
図4Dは、TT電場を用いて転移を防止するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための更に他の改善された配置を示す。
【
図5】
図2、
図3及び
図4に示される電極素子の組にわたってAC電圧を印加するのに使用可能なシステムのブロック図を示す。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、脳がどのように五つの異なる領域α、β、γ、δ、inに分割されるのかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して多様な実施形態を詳述するが、図面において同様の参照番号は同様の要素を表すものである。
【0034】
多くの種類のがん(例えば、肺がん、乳がん、結腸がん、腎臓がん、メラノーマ)は脳に転移し得る。特許文献2に記載されているように、TT電場を用いて転移(転移がん)を治療及び防止することができる。
【0035】
転移が生じ得る脳内の正確な位置を事前に知ることはできないので、転移を防止又は治療する良好な方法は、TT電場で可能な限り脳の大部分を治療することである。脳内全体において電場強度を可能な限り均一に保つことで、トランスデューサアレイが熱くなり過ぎることを防止し、バッテリパワーを節約しながら、転移を防止又は治療するのに十分大きな電場強度を受ける脳の割合を最大にすることができる。そこで、本願は、脳全体(脳の天幕領域を含む)にわたって可能な限り均一な電場強度で脳にTT電場を印加するように人間の頭部上にトランスデューサアレイを配置するための多様な構成を開示する。
【0036】
図1A~
図1Dは、TT電場を用いて膠芽腫を治療するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための従来の配置を示す。この配置では、AC信号発生器が、まず、前後一対のトランスデューサアレイ11、12にわたってAC電圧を印加し、次いで、左右一対のトランスデューサアレイ13、14にわたってAC電圧を印加し、次いで、治療期間にわたって上記二つのステップを順に繰り返す。以下で表にまとめるように、この従来の配置の電場強度の均一性は比較的低い。低い均一性の理由の一つは、電場強度が脳の天幕領域内において極めて低いからである。
【0037】
図2A~
図2Dは、TT電場を用いて転移を防止するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための改善された一つの配置を示す。より具体的には、
図2Aは、第一組の電極素子21が、人間の右耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の右側で人間の頭部に取り付けられている様子を示す。
図2Bは、第二組の電極素子22が、正中矢状面の左側であって正中冠状面の後方で人間の頭部に取り付けられ、その重心が人間の左耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC2椎骨の中点の上方に位置している様子を示す。
図2Cは、第三組の電極素子23が、人間の左耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の左側で人間の頭部に取り付けられている様子を示す。
図2Dは、第四組の電極素子24が、正中矢状面の右側であって正中冠状面の後方で人間の頭部に取り付けられ、その重心が人間の右耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC2椎骨の中点の上方に位置している様子を示す。この配置では、AC信号発生器は、まず、第一組の電極素子21と第二組の電極素子22にわたってAC電圧を印加し、次いで、第三組の電極素子23と第四組の電極素子24にわたってAC電圧を印加するし、次いで、治療期間にわたってこれら二つのステップを順に繰り返す。以下で表にまとめるように、この代替配置の電場強度の均一性は、従来の
図1の配置よりも顕著に高い。
【0038】
図3A~
図3Dは、TT電場を用いて転移を防止するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための改善された他の配置を示す。この配置は、第二組の電極素子32と第四組の電極素子34が人体のより下方に位置決めされるという点を除いては
図2A~
図2Dの配置と同様である。より具体的には、
図3Aは、第一組の電極素子31が、人間の右耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の右側で人間の頭部に取り付けられている様子を示す。
図3Bは、第二組の電極素子32が、正中矢状面の左側であって正中冠状面の後方で人間の頭部に取り付けられ、その重心が人間のC2椎骨の中点の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置している様子を示す。
図3Cは、第三組の電極素子33が、人間の左耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の左側で人間の頭部に取り付けられている様子を示す。
図3Dは、第四組の電極素子34が、正中矢状面の右側であって正中冠状面の後方で人間の頭部に取り付けられ、その重心が人間のC2椎骨の中点の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置している様子を示す。この配置では、AC信号発生器は、まず、第一組の電極素子31と第二組の電極素子32にわたってAC電圧を印加し、次いで、第三組の電極素子33と第四組の電極素子34にわたってAC電圧を印加するし、次いで、治療期間にわたってこれら二つのステップを順に繰り返す。以下で表にまとめるように、この代替配置の電場強度の均一性も、従来の
図1の配置よりも顕著に高い。
【0039】
図4A~
図4Dは、TT電場を用いて転移を防止するために人間の頭部上にトランスデューサアレイを位置決めするための改善された更に他の配置を示す。より具体的には、
図4Aは、第一組の電極41が人間の頭部の右側に取り付けられている様子を示す。第一組の電極41は、人間の右耳の外耳道の外開口の上方に主に水平な向きで位置する上部41Hと、人間の右耳の外耳道の外開口の後方に主に垂直な向きで位置する後部41Vとを有する。
図4Bは、第二組の電極42が人間の頭部の左側に取り付けられている様子を示す。第二組の電極42は、人間の左耳の外耳道の外開口の上方に主に水平な向きで位置する上部42Hと、人間の左耳の外耳道の外開口の後方に主に垂直な向きで位置する後部42Vとを有する。
図4Cは、第三組の電極43が人間の頭部に取り付けられ、その重心が人間の頭頂部に位置する様子を示す。
図4Dは、第四組の電極44が人間の後頚部に取り付けられ、その重心が人間のC2椎骨の下方であって人間のC7椎骨の上方に位置する様子を示す。この配置では、AC信号発生器は、まず、第一組の電極素子41と第二組の電極素子42にわたってAC電圧を印加し、次いで、第三組の電極素子43と第四組の電極素子44にわたってAC電圧を印加するし、次いで、治療期間にわたってこれら二つのステップを順に繰り返す。以下で表にまとめるように、この代替配置の電場強度の均一性も、従来の
図1の配置よりも顕著に高い。
【0040】
任意選択的に、
図4A~
図4Dの配置において、第一組の電極素子の上部41Hが少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第一組の電極素子の後部41Vが少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第二組の電極素子の上部42Hが少なくとも三つの容量結合電極素子を含み、第二組の電極素子の後部42Vが少なくとも三つの容量結合電極素子を含む。代替実施形態では、これらの部分41H、41V、42H、42Vの各々が異なる数(例えば、1個から8個の間)の電極素子を含み得る。
【0041】
任意選択的に、
図4A~
図4Dの配置において、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の上部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の上方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の前方1cm以上に位置する前端を有し、(d)各外耳道の外開口の後方1cm以上に位置する後端を有する。
【0042】
任意選択的に、
図4A~
図4Dの配置において、第一組の電極素子と第二組の電極素子の各々の後部が、(a)6cm以上の長さを有し、(b)各外耳道の外開口の後方6cm未満に位置し、(c)各外耳道の外開口の上方1cm以上に位置する上端を有し、(d)各外耳道の外開口の下方3cm以上に位置する後端を有する。
【0043】
任意選択的に、
図4A~
図4Dの配置において、第三組の電極素子は、その重心が人間の頭頂部の前方1cmから3cmの間に位置するように取り付けられる。
【0044】
任意選択的に、
図4A~
図4Dの配置において、第四組の電極素子は、その重心が人間のC3椎骨の下方であって人間のC6椎骨の上方に位置するように取り付けられる。
【0045】
図5は、
図2~
図4に関して上述したように、第一組の電極素子と第二組の電極素子の間(
図2の21/22、
図3の31/32、
図4の41/42)と、第三組の電極素子と第四組の電極素子の間(
図2の23/24、
図3の33/34、
図4の43/44)とに交互の順でAC電圧を印加するのに使用可能なAC電圧発生器50を含むシステムのブロック図を示す。
【0046】
上述のトランスデューサアレイの各配置について、肩まで伸びるリアルな人間頭部モデルを用いて電場をシミュレーションした。シミュレーションでは、それぞれ直径2cmの9個のディスク状容量結合電極素子を備えるトランスデューサアレイを、
図1~
図4に関して上述した身体の箇所に配置して、200kHzの周波数でピークピーク値が2Aで一定の電流をディスクに外面に印加した。シミュレーションは、Sim4Lifeバージョン4プラットフォーム(チューリッヒのZMT社)を用いて行われた。電場の均一性を分析するため、脳を
図6A~
図6Bに示されるような五区画に分割し、即ち、天幕領域「in」(小脳と脳幹を含む)、脳上部の四区画である右前α、左前β、左後γ、右後δに分割した。脳のこれらの領域間の境界が
図6A~
図6Bに示されている。有限要素シミュレーションを用いて五つの区画の各々の各ボクセルについて電場強度を計算した。各区画について、区画の全ボクセルの平均値と中央値の電場強度を計算した。灰白質と白質についてのみデータを取った。
【0047】
上述の各配置の各対のトランスデューサアレイについて、以下のように、異なる区画の平均値間の標準偏差を異なる区間の平均値で割ったものをΨと定義した:
Ψ=σT/MEANT
ここで、σT=SD([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})、
MEANT=mean([μi]|i∈{α,β,γ、δ,in})
【0048】
これら三式において、SDは標準偏差を表し、μ
iは各区画の平均値を表し、α、β、γ及びδは脳区画を表し(
図6Aを参照)、「in」は小脳/脳幹区画を表す(
図6Bを参照)。
【0049】
各対のトランスデューサアレイについて得られたΨの値(パーセント単位)が、以下の表1に示されている。
【表1】
*図1A~
図1Bの配置の値は推定である。
【0050】
表1の結果に基づくと、一対のトランスデューサアレイのみを用いて人間の脳に電場を印加する場合、脳全体にわたる高均一性を得るようにトランスデューサを位置決めするための上位二つの良好な配置は、配置43/44(
図4C/
図4Dに示される)と、配置41/42(
図4A/
図4Bに示される)である。
【0051】
次いで、
図1~
図4に示されるトランスデューサアレイの各配置について、有限要素シミュレーションを用いて、以下の二つの場合での脳内の各ボクセルにおける電場強度を計算することによって、脳全体にわたって形成される電場の均一性を評価した:(a)第一組の電極素子と第二組の電極素子との間(
図1の11/12、
図2の21/22、
図3の31/32、
図4の41/42)にAC電圧を印加する場合;(b)第三組の電極素子と第四組の電極素子の間(
図1の13/14、
図2の23/24、
図3の33/34、
図4の43/44)にAC電圧を印加する場合。次いで、脳内の各ボクセルについて、(a)の場合の電場強度の結果と、(b)の場合の電場強度の結果を平均化した。
【0052】
脳内の各ボクセルにおける平均電場強度を得た後に、表1に関して上述したΨを計算するのに用いたのと同じ三式を用いて、Ψを計算した。しかしながら、今回は、脳内の各ボクセルについて単独の電場強度を式への入力として用いる代わりに、脳内の各ボクセルについて二つの電場強度の平均を式への入力として用いた。
【0053】
各場合の四つのトランスデューサアレイについて得られたΨの値(パーセント単位)が以下の表2に示されている。これらの値は、電場が所与の設定時間の半分において第一トランスデューサアレイと第二トランスデューサアレイとの間に印加され、所与の設定時間の残りの半分において第三トランスデューサアレイと第四トランスデューサアレイとの間に印加されるという仮定に基づくものである。
【表2】
*図1A~
図1Dの配置の結果は
図1に関する上記推定に依るものである。
【0054】
表2の結果に基づくと、二対のトランスデューサアレイを用いて、各対を交互の順で50%の時間で活性化させて人間の脳に電場を印加する場合、脳全体にわたる高均一性を得るようにトランスデューサアレイを位置決めするための上位二つの良好な配置は、(1)配置41/42と配置43/44の組み合わせ(
図4A~
図4Dに示される)と、(2)配置21/22と配置23/24の組み合わせ(
図2A~
図2Dに示される)である。
【0055】
図2~
図4に関して上述したトランスデューサアレイの配置の追加データを以下に与える。
図2A/
図2Bに示されるトランスデューサアレイ21/22の位置についてのデータが以下の表3に示されている。
【表3】
【0056】
図2C/
図2Dに示されるトランスデューサアレイ23/24の位置についてのデータが以下の表4に示されている。
【表4】
【0057】
図3A/
図3Bに示されるトランスデューサアレイ31/32の位置についてのデータが以下の表5に示されている。
【表5】
【0058】
図3C/
図3Dに示されるトランスデューサアレイ33/34の位置についてのデータが以下の表6に示されている。
【表6】
【0059】
図4A/
図4Bに示されるトランスデューサアレイ41/42の位置についてのデータが以下の表7に示されている。
【表7】
【0060】
図4C/
図4Dに示されるトランスデューサアレイ43/44の位置についてのデータが以下の表8に示されている。
【表8】
【0061】
図2、
図3、
図4C/
図4Dに示される実施形態では、各組の電極素子は、個々の電極素子ディスクの3×3アレイとして構成されている。結果として、これらの実施形態では、各組の重心は、中心ディスクの中心と一致している。しかしながら、代替実施形態では、各組の電極素子は異なる数の電極素子を含み得る。例えば、所与の組の電極素子が、個々の電極素子ディスクの2×2アレイとして構成され得る。この場合、重心は、四つの全てのディスクの間に位置する領域内にあり得る。他の代替実施形態では、所与の組の電極素子が、単一の電極素子ディスク(円形や矩形に限られず、あらゆる適切な形状となり得る)のみを含み得る。この場合、重心は、単一の電極素子の中心と一致している。
【0062】
図2~
図5に示される実施形態では、四組全ての電極素子が人体に容量結合されることが好ましい。上述の各実施形態のように第一組の電極素子、第二組の電極素子、第三組の電極素子、及び第四組の電極素子を取り付けた後に、以下のステップを交互に繰り返す:(a)第一組の電極素子と第二組の電極素子との間に交流電圧を印加するステップ、(b)第三組の電極素子と第四組の電極素子との間に交流電圧を印加するステップ。一部実施形態では、交流電圧の周波数は100kHzから300kHzの間である。
【0063】
図2~
図5に関して上述した実施形態について、表1~表7に与えられている値は、四組の電極素子がそれぞれ
図2~
図4に示されるように位置決めされた場合に得られる電場をシミュレーションすることによって、得られたものである。しかしながら、各組の電極素子の位置は、上記の解剖学的な記述が変わらない程度にその移動が十分小さいものである限りにおいて、図面に示される厳密な箇所からは異なり得る点に留意されたい。例えば、
図2Aに示される第一組の電極素子21は、人間の右耳の外耳道の外開口の上方であって正中矢状面の右側で人体に取り付けられたままである限りにおいて、上下左右に移動し得る。同様に、
図2Bに示される第二組の電極素子22は、正中矢状面の左側であって正中冠状面の後方で人体に取り付けられ、その重心が人間の左耳の外耳道の外開口の下方であって人間のC2椎骨の中点の上方に位置したままである限りにおいて、上下左右に移動し得る。この限られた移動範囲内において、各個人用のシミュレーション(例えば、有限要素シミュレーション)を用いて、多様な組の電極の位置の各組み合わせについてその結果として得られる電場を計算し、最良の結果(例えば、脳全体にわたる電場の最高の均一性や、最小のΨ)を与える組み合わせを選択することによって、四組の電極素子の各々の最適な位置が決定され得る。そして、選択された組み合わせの指標を、例えば、適切なディスプレイやプリントアウトを用いて、医療従事者に出力する。医療従事者は、出力に示される位置においてそれら組の電極素子を人間に適用し、それら組の電極素子をAC信号発生器50に接続し、治療を開始する。
【0064】
図7は、人間の頭部の右側に取り付けられる第一組の電極素子41(
図4Aに示される)又は人間の頭部の左側に取り付けられる第二組の電極素子42(
図4Bに示される)のいずれかを実現するのに使用可能な装置を示す。
【0065】
この装置は、人間の脳に交流電場を印加するのに使用され、外側76(
図7では隠れている)と内側75とを有するフレキシブルバッキング70を備える。フレキシブルバッキング70は、内側75を人間の頭部に向けて、人間の頭部の一方の側に取り付けられるように構成される。フレキシブルバッキング用の適切な物質として、布、発泡体、フレキシブルプラスチック(例えば、バンドエイドで使用される対応の物質と同様のもの)が挙げられる。フレキシブルバッキングは、第一方向d1に沿って6cm以上の長さを有する第一アーム71と、第二方向d2に沿って6cm以上の長さを有する第二アーム72を有する。
【0066】
複数の第一容量結合電極素子81が、フレキシブルバッキング70の第一アーム71の内側75上に位置決めされ、各第一容量結合電極素子81は、導電板81cと、内側に向けてその上に位置する誘電体層を有する。複数の第二容量結合電極素子82が、フレキシブルバッキング70の第二アーム72の内側75上に位置決めされ、各第二容量結合電極素子82は、導電板82cと、内側に向けてその上に位置する誘電体層を有する。電極素子81、82は、Novocure社のOptune(登録商標)システムで用いられる従来の電極素子と同様のものであり得る。任意選択的に、Novocure社のOptune(登録商標)システムで用いられている従来の配置構成と同様にして、温度センサ(例えば、サーミスタ)を、電極素子81、82の一部又は全部の下方に配置し得る。
【0067】
第一組の導体61が、各第一容量結合電極素子81の導電板81cを並列に接続し、第二組の導体62が、各第二容量結合電極素子82の導電板82cを並列に接続する。導体は、例えば、個別配線を用いたり、フレキシブル回路上のトレースを用いたりして実現可能である。接着層(ドットパターンで示される)が、フレキシブルバッキング70の内側75上に位置し、その接着層は、電極素子81、82で覆われていないフレキシブルバッキング70の部分を人間の頭部に対して保持するように構成される。
【0068】
図7に示される実施形態では、複数の第一電極素子81は四個の電極素子を有し、複数の第二電極素子82は三個の電極素子を有する。しかしながら、代替実施形態では、第一電極素子と第二電極素子の各々における電極素子の数は異なり得る(例えば、2個から10個の間)。
【0069】
図7に示される実施形態では、第一方向d1と第二方向d2との間の角度θは90°である。しかしながら、代替実施形態では、その角度θは、80°から100°の間や、65°から115°の間になり得る。
【0070】
図7に示される向きでは、本装置は、
図4Bの左耳の隣に位置する第二組の電極42としての使用に適していて、
図7の第一電極素子81と第二電極素子82はそれぞれ
図4Bの上部/水平アーム42Hと後部/垂直アーム42Vに対応している。しかしながら、バッキング70を
図7に示される向きに対して時計回りに90°回転させると、同じ装置が、
図4Aの右耳の隣に位置する第一組の電極41としての使用に適したものとなる。より具体的には、時計回りの90°回転の後に、
図7の複数の第一電極素子81は
図4Aの後部/垂直アーム41Vに対応し、
図7の複数の第二電極素子82は
図4Aの上部/水平アーム41Hに対応するようになる。
【0071】
特定の実施形態を参照して本発明を開示してきたが、特許請求の範囲に定められる本発明の要旨と範囲から逸脱せずに、開示の実施形態に対する多数の修正、変更、変化が可能である。従って、本発明は開示の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の文言及びその均等物で定められる完全な範囲を有するものである。
【符号の説明】
【0072】
11、21、31、41 第一組の電極素子
12、22、32、42 第二組の電極素子
13、23、33、43 第三組の電極素子
14、24、34、44 第四組の電極素子
50 AC信号発生器