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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】バブルリング発生玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 33/28 20060101AFI20230525BHJP
   A63H 3/00 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
A63H33/28 Z
A63H3/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023002037
(22)【出願日】2023-01-11
【審査請求日】2023-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】723000202
【氏名又は名称】奥本 浩
(72)【発明者】
【氏名】奥本 浩
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0052965(US,A1)
【文献】特開2023-002422(JP,A)
【文献】米国特許第05947784(US,A)
【文献】実開昭59-174896(JP,U)
【文献】中国実用新案第212491568(CN,U)
【文献】佐倉 美穂,やってみちゃおう!お手軽実験II,子供の科学 8月号 ,第72巻,小川 雄一 (株)誠文堂新光社,2009年08月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に噴出口円管(3)と、前記噴出口円管(3)に結合され、前記噴出口円管(3)の内径よりも大きな内径を有する拡大円管(4)と、前記拡大円管(4)に結合され、前記拡大円管(4)の内径よりも小さな内径を有し、上方へ傾斜した縮小円管(5)とを内部構造に有し、前記噴出口円管(3)と、前記拡大円管(4)と、前記縮小円管(5)とを覆うように、前部に外観形状を備えた外形本体(1)と、後部に空気を溜める外観形状を備えた柔らかい外形容器(2)とを設けた構造から成る、水平方向に移動するバブルリングを発生させる玩具。
【請求項2】
前記噴出口円管(3)と、前記拡大円管(4)と、前記縮小円管(5)が、滑らかな異径円管から成る請求項1記載のバブルリングを発生させる玩具。
【請求項3】
前記縮小円管(5)が複数に分岐し、前記噴出口円管(3)前記拡大円管(4)が複数から成る請求項1記載のバブルリングを発生させる玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で水平方向に移動するバブルリング(リング状の泡)を発生させる玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バブルリングを鉛直上方向に発生させる提案としては、「リング気泡発生装置」(特許文献1参照)、「発泡装飾水槽」(特許文献2参照)、及び 「液体中で気体の渦輪を発生させる装置」(特許文献3参照) などが提案され、公知技術となっている。
【0003】
また、バブルリングを水平方向に発生させる提案では、「バブルリング発生装置」(特許文献4参照)があり、公知技術となっている。
【0004】
「しまね海洋館アクアス」、「名古屋港水族館」、「横浜・八景島シーパラダイス」、「鴨川シーワールド」では、シロイルカのショーが人気を集め、バブルリングが注目を浴びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-141733号公報
【文献】特開2003-39896号公報
【文献】特開2005-103456号公報
【文献】特開2011-234638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、観賞用の水槽で発生させるバブルリングは、従来から提案されているが、動力を使わずに簡易的に水平方向へ移動するバブルリングを発生させる玩具は提案されていないことに着目し、水族館で人気を集めるシロイルカに模したバブルリング発生玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載のバブルリングを発生させる玩具は、前端に噴出口円管3と、前記噴出口円管3に結合され、前記噴出口円管3の内径よりも大きな内径を有する拡大円管4と、前記拡大円管4に結合され、前記拡大円管4の内径よりも小さな内径を有し、上方へ傾斜した縮小円管5とを内部構造に有し、前記噴出口円管3と、前記拡大円管4と、前記縮小円管5とを覆うように、前部に外観形状を備えた外形本体1と、後部に空気を溜める外観形状を備えた柔らかい外形容器2とを設けた構造から成り、本体を水中に沈め、空気を溜めた柔らかい外形容器2を押し込み、圧縮した空気の復元力によって、噴出口円管3から水を噴出させ、噴出口円管3近傍に形成した渦に空気が取り込まれ、水平方向に移動するバブルリングを発生させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバブルリングを発生させる玩具は、プールや風呂の入浴のとき、子供自らがバブルリングを発生させることができ、楽しく遊べる効果がある。
【0009】
容器に加える力、円管内の空気量、などの諸条件が毎回異なるため、発生するバブルリングの速度、気泡の大きさは毎回異なり、カオス的なふるまいが、飽きさせない効果を生む。
【0010】
また本発明のバブルリングを発生させる玩具は、構造が極めて簡単であり製造コストが低廉といった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明におけるバブルリングを発生させる玩具を示す縦断面図である。
図2】本発明におけるバブルリングを発生させる玩具の全体を示す模式的斜視図である。
図3】本発明におけるバブルリングを発生させる玩具の円管を示す縦断面図である。
図4】本発明におけるバブルリングを発生させる玩具の円管にテーパーをつけた場合の縦断面図である。
図5】本発明におけるバブルリングを発生させる玩具の円管を異径円管に変えた場合の縦断面図である。
図6】本発明におけるバブルリングを発生させる玩具の噴出口を複数に増やした場合の円管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る水平方向にバブルリングを発生させる玩具の第一の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
尚、以下に示す実施例は、あくまでも例示であり、本発明に係る水平方向に移動するバブルリングを発生させる玩具の寸法、形状、材質、などは、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で変更することができるものとする。
【実施例1】
【0014】
図1に示す実施例は、バブルリングを発生させる玩具Aをシロイルカの形状に適用したものである。バブルリングを発生させる玩具Aは、シロイルカ上半身の外観形状をした本体1と、シロイルカ下半身の外観形状をした柔らかい容器2と、噴出口円管3と、拡大円管4と、上方へ傾斜した縮小円管5を備えている。
【0015】
図2はバブルリングを発生させる玩具の全体を示す模式的斜視図である。
外観形状をした本体1は、例えば汎用プラスチックを用いてシロイルカを模した形状に成形され、上面側半割部材11と下面側半割部材12を突き合わせて構成している。本体1内部は、例えば汎用プラスチックを用いて噴出口円管3と拡大円管4が結合した円管Bの後端を拡大円管4と縮小円管5が結合した円管Cの前端に挿入し、縮小円管5の前端を円管Cの後端に挿入し、前記円管先端を本体1に挿入して固定する。外観形状を備えた柔らかい容器2は、例えば柔軟性のあるポリプロピレン樹脂を用いて成形され、容器2の前端を円管C後端に挿入して固定し、気密状態を作る。
【0016】
このようにして成るバブルリングを発生させる玩具Aは、プールやお風呂の入浴時に水中に沈められる。水中で、空気を溜めた容器2を瞬間的に五指で上下から押し込むと、容器2内部の空気7は縮小円管5を通過する間に圧縮される。圧縮された空気7は、拡大円管4内で圧力から解放され、復元する力によって水6を押し出し、噴出口円管3の先端から水6を噴出することで、噴出口円管3先端の流水域と噴出口近傍の止水域との境界に生じた速度差によって、渦が形成し、形成された渦に噴出口円管3から流出した空気7が取り込まれ、水平方向に移動するバブルリングを発生させる。
容器2を挟んだ五指の力を開放し、容器2の形状が復元する時、容器2内部に負圧が生じ、拡大円管4内に押し出された空気7は縮小円管5によって吸引され、容器2に回収され、繰り返しバブルリングを発生させることができる。また、容器2に吸引されずに拡大円管4上部に溜まった空気7は、次に噴出口円管3から水6を噴出する時に、噴出口円管3先端から流出し、渦の内部へ取り込まれ、バブルリングを形成する。
【0017】
次に、本発明に係るバブルリングを発生させる玩具の寸法条件を、以下例示する。図3は寸法条件を変更する円管の縦断面図である。縮小円管内径Dをφ10mm、縮小円管長さEを150mm、噴出口円管長さGを10mmと固定した条件で、噴出口円管内径Fはφ10mm・φ15mm・φ20mmの3種類、拡大円管内径Hはφ20mm・φ25mm・φ30mmの3種類、拡大円管長さJは40mm・60mm・80mmの3種類、について行った。外径容器2の内径は、φ48mm、容積は120立方センチメートルのポリプロピレン樹脂容器を活用した。また、外径容器2から排出される流量は、容器を1回押し込み流出する流量にほぼ等しいと仮定すると、おおよそ15から30立方センチメートル毎秒の流量が瞬間的に流出していると考える。
【0018】
実験では、容器の空気をすべて使い切るまで繰り返しバブルリングの形状を視認確認して行った。なお、表の中の○・×の記号は、視認確認により視覚的に評価したものであり、バブルリングの形状について、○は良好といえるバブルリングができるもの、×は途中で崩れ十分とはいえないものである。
【0019】
【表1】
【0020】
表1は、噴出口円管内径Fをφ10mmに固定し、拡大円管内径Hと拡大円管長さJとをそれぞれ変化させた場合のバブルリングの形成状態結果である。噴出口円管内径Fがφ10mmの場合、拡大円管内径Hと拡大円管長さJを変化させても、バブルリングが形成されないことがわかる。
【0021】
【表2】
【0022】
表2は、噴出口円管内径Fをφ15mmに固定し、拡大円管内径Hと拡大円管長さJとをそれぞれ変化させた場合のバブルリングの形成状態結果である。噴出口円管内径Fがφ15mmの場合、拡大円管内径Hがφ20mmからφ25mmの間で、拡大円管長さJが60mmから80mmの場合に、バブルリングが形成されることがわかる。拡大円管内径Hがφ20mmではバブルリングの空気量は少なく、気泡が分割する傾向にあり、φ25mmではφ20mmよりバブルリングの空気量が多く、輪が明瞭に認識できる傾向にある。
【0023】
【表3】
【0024】
表3は、噴出口円管内径Fをφ20mmに固定し、拡大円管内径Hと拡大円管長さJとをそれぞれ変化させた場合のバブルリングの形成状態結果である。噴出口円管内径Fがφ20mmの場合、拡大円管内径Hがφ25mmで、拡大円管長さJが60mmから80mmの場合に、バブルリングが形成されることがわかる。拡大円管内径Hがφ25mmで、噴出口円管内径Fがφ15mmとφ20mmとの場合を比較すると、φ20mmはバブルリングの空気量が過多の傾向にあり、φ15mmの方がバブルリングの形状は良い。
【0025】
次に、バブルリング形成状態が良好であった噴出口円管内径Fをφ15mm、噴出口円管長さGを10mm、拡大円管内径Hをφ25mm、拡大円管長さJを60mm、縮小円管長さEを150mmに固定し、縮小円管内径Dはφ8mm・φ10mm・φ12mmの3種類について行った。
【0026】
【表4】
【0027】
表4は、縮小円管の内径Dを、それぞれ変化させた場合のバブルリングの形成状態結果である。縮小円管の内径Dを変化させても、バブルリングが良好に形成されることがわかる。縮小円管の内径Dがφ12mmよりφ8mmの方が、空気を圧縮する力が高まり、バブルリングの形状はさらに良好になる。しかし、噴出口より大量に空気が流出するため、容器の空気を全て使い切るまでの繰り返し回数は減少する。
【0028】
次に、バブルリング形成状態が良好であった噴出口円管内径Fをφ15mm、噴出口円管長さGを10mm、拡大円管内径Hをφ25mm、拡大円管長さJを60mm、縮小円管内径Dをφ10mmに固定し、縮小円管長さEは120mm・150mm・180mmの3種類について行った。
【0029】
【表5】
【0030】
表5は、縮小円管長さEを、それぞれ変化させた場合のバブルリングの形成状態結果である。縮小円管長さEが120mmから180mmの間ではバブルリングの形状に大きな変化は見当たらないことがわかる。
【0031】
上記の実験で、バブルリング形成状態が良好であった縮小円管内径Dをφ10mm、縮小円管長さEを150mm、噴出口円管内径Fをφ15mm、噴出口円管長さGを10mm、拡大円管内径Hをφ25mm、拡大円管長さJを60mm、とした寸法を代表寸法とし、代表寸法の縮尺比を70%に変更して、バブルリングの形成状態を評価する。
【0032】
【表6】
【0033】
表6は、上記の代表寸法を100%としたとき、縮尺比を70%に変更した場合のバブルリングの形成状態結果である。縮尺比が変更されても同様にバブルリングは良好に形成されることが分かる。縮尺比を小さくするとバブルリングの大きさも同様に縮小する。
【0034】
上記実験より、実施例1の24パターンにおける良好なバブルリングの形成条件は、縮小円管内径Dをφ10mm、縮小円管長さEを150mm、噴出口円管長さGを10mmにおいて、噴出口円管内径Fがφ15mmの場合、拡大円管内径Hはφ20mmからφ25mmの間と、拡大円管長さJは60mmから80mmの間の範囲内と、噴出口円管内径Fがφ20mmの場合、拡大円管内径Hはφ25mm、拡大円管長さJは60mmから80mmの範囲内となるようにすればよい。また、縮小円管内径Dを小さくすることで、空気を圧縮する力が高まり、バブルリングの形状をさらに良好にする効果がある。加えて、バブルリングの大きさを変更するには、上記寸法の縮尺比を変更すればよい。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明に係る第二の実施形態を説明する。
請求項2に係るバブルリングを発生させる玩具では、噴出口円管と、拡大円管と、縮小円管の形状を滑らかな異径円管の形状に変更して、さらに良好なバブルリングを発生させる。
【0036】
具体的には、図4に示す拡大円管部にテーパーをつけた形状や、図5に示す滑らかな曲線形状に成形し、拡大部直後の剥離渦及び縮小部直前の剥離渦を発生させ難い形状を用い、圧力抵抗を減少させる。
【実施例3】
【0037】
次に、本発明に係る第三の実施形態を説明する。
請求項3に係るバブルリングを発生させる玩具では、図6に示す縮小円管を複数に分岐させ、その先に拡大円管と噴出口円管を持つ構造とし、複数のバブルリングを同時に発生させる。
【0038】
縮小円管が1本から複数に分岐する時、分岐前後の円管断面積を考慮して、噴出口円管と拡大円管の縮尺比を変更する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の玩具は、プールや風呂へ入浴する時に子供の楽しみとなり、その需要が期待される。
【符号の説明】
【0040】
1 外形本体
2 外形容器
3 噴出口円管
4 拡大円管
5 縮小円管
6 水
7 空気
【要約】
【課題】子供がプールや風呂に入浴しながら安全に遊ぶことのできる水中でバブルリングを発生させる玩具を提供する。
【解決手段】前端に噴出口円管と、前記噴出口円管3に結合され、前記噴出口円管3の内径よりも大きな内径を有する拡大円管と、前記拡大円管4に結合され、前記拡大円管4の内径よりも小さな内径を有し、上方へ傾斜した縮小円管とを内部構造に有し、前記噴出口円管3と、前記拡大円管4と、前記縮小円管5とを覆うように、前部に外観形状を備えた外形本体1と、後部に空気を溜める外観形状を備えた柔らかい外形容器2とを設けた構造から成り、本体を水中に沈め、空気を溜めた柔らかい外形容器を押し込み、圧縮した空気の復元力によって、噴出口円管3から水を噴出させ、噴出口円管3近傍に形成した渦に空気が取り込まれ、水平方向に移動するバブルリングを発生させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6