IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水ハウス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-笠木の取替施工方法 図1
  • 特許-笠木の取替施工方法 図2
  • 特許-笠木の取替施工方法 図3
  • 特許-笠木の取替施工方法 図4
  • 特許-笠木の取替施工方法 図5
  • 特許-笠木の取替施工方法 図6
  • 特許-笠木の取替施工方法 図7
  • 特許-笠木の取替施工方法 図8
  • 特許-笠木の取替施工方法 図9
  • 特許-笠木の取替施工方法 図10
  • 特許-笠木の取替施工方法 図11
  • 特許-笠木の取替施工方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】笠木の取替施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/15 20060101AFI20230525BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230525BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
E04D13/15 301K
E04D13/15 301E
E04D13/15 301A
E04G23/02 C
E04B1/00 501J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020009037
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116545
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】中松 保二
(72)【発明者】
【氏名】川元 將輝
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-152828(JP,U)
【文献】実開昭62-194847(JP,U)
【文献】特開平07-292902(JP,A)
【文献】実開平06-043123(JP,U)
【文献】特開平11-093357(JP,A)
【文献】実開昭57-013762(JP,U)
【文献】特開平11-013131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
E04G 23/00-23/08
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラペットの立上がり部上部に設置された既設笠木を、新設笠木へ取替える笠木の取替施工方法であって、
前記立上がり部の外周面の上端部を被覆する第1外周被覆部を有した前記既設笠木を、前記立上がり部から撤去する撤去工程と、
前記立上がり部の前記外周面の上端部を被覆する第2外周被覆部を有した前記新設笠木を、前記立上がり部の上部に設置する設置工程と、
前記立上がり部に設置された前記第2外周被覆部の下端が、撤去前の前記第1外周被覆部の下端位置よりも高い位置に配置される場合に、前記立上がり部の前記外周面のうち、前記第2外周被覆部の下端~前記第1外周被覆部の下端が位置していた高さまでの範囲を、化粧幕板材によって被覆する被覆工程と、を備えることを特徴とする笠木の取替施工方法。
【請求項2】
前記第2外周被覆部は、前記立上がり部の前記外周面の上端部を被覆する上部幕板部と、当該上部幕板部の下端を前記立上がり部の方向へ突出させた返し片と、当該返し片の立上がり部側の端縁から下方へ延びる下部幕板部と、を具備しており、
前記被覆工程は、前記化粧幕板材の上端部を、前記返し片及び前記下部幕板部によって形成される入隅部に当接するものであることを特徴とする請求項1に記載の笠木の取替施工方法。
【請求項3】
前記被覆工程は、断面視L字型状の前記化粧幕板材を設置するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の笠木の取替施工方法。
【請求項4】
前記設置工程は、前記新設笠木を水平方向へ複数設置し、
前記被覆工程は、前記化粧幕板材を水平方向へ複数設置し、
水平方向へ隣り合う前記新設笠木同士を、各々の水平方向の端縁に跨る笠木ジョイントカバーによって連結するとともに、水平方向へ隣り合う前記化粧幕板材同士を、各々の水平方向の端縁に跨る幕板ジョイントカバーによって連結する連結工程をさらに備え、
前記連結工程は、前記笠木ジョイントカバー及び前記幕板ジョイントカバーのそれぞれの継ぎ目位置を整合させるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の笠木の取替施工方法。
【請求項5】
前記連結工程は、前記笠木ジョイントカバーを、隣り合う前記新設笠木のうち一方の前記新設笠木にのみビス固定するとともに、前記幕板ジョイントカバーを、隣り合う前記化粧幕板材のうち一方の前記化粧幕板材にのみビス固定するものであることを特徴とする請求項4に記載の笠木の取替施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラペットの立上がり部に設置された既設笠木を、新設笠木へ取替える笠木の取替施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、建物の陸屋根には、外周部に沿って上方へ延出するパラペットが設置される。パラペットは、陸屋根面から上方へ立上がる立上がり部及び、当該立上がり部の上部に固定される笠木からなり、建物外観の構成要素となるため美観を保持することが望まれる。そこで、立上がり部の外周面に化粧材を設置し、パラペットの意匠性を向上させる考案が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭57-13762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立上がり部に設置した笠木は、経年によって劣化すると新しい笠木へと取り替えられる。このとき、既設笠木の型番が生産中止となっていたりすると、既設笠木と同一形状の新設笠木を設置できない場合がある。このように新旧の笠木の形状が異なると、既設笠木の撤去跡が立上がり部の外周面に露出し、建物外観の美観を損なうことがある。また、既設笠木の撤去跡が露出しないよう、当該撤去跡の形状に応じて都度新設笠木を成型すると、費用が嵩んで施主の経済的な負担が大きくなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、既設笠木を新設笠木へと取り替える際に、コストを抑えつつパラペット廻りの意匠性を保持することができる笠木の取替施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の笠木の取替施工方法は、パラペットの立上がり部上部に設置された既設笠木を、新設笠木へ取替える笠木の取替施工方法であって、前記立上がり部の外周面の上端部を被覆する第1外周被覆部を有した前記既設笠木を、前記立上がり部から撤去する撤去工程と、前記立上がり部の前記外周面の上端部を被覆する第2外周被覆部を有した前記新設笠木を、前記立上がり部の上部に設置する設置工程と、前記立上がり部に設置された前記第2外周被覆部の下端が、撤去前の前記第1外周被覆部の下端位置よりも高い位置に配置される場合に、前記立上がり部の前記外周面のうち、前記第2外周被覆部の下端~前記第1外周被覆部の下端が位置していた高さまでの範囲を、化粧幕板材によって被覆する被覆工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の第2の笠木の取替施工方法は、前記第2外周被覆部が、前記立上がり部の前記外周面の上端部を被覆する上部幕板部と、当該上部幕板部の下端を前記立上がり部の方向へ突出させた返し片と、当該返し片の立上がり部側の端縁から下方へ延びる下部幕板部と、を具備しており、前記被覆工程は、前記化粧幕板材の上端部を、前記返し片及び前記下部幕板部によって形成される入隅部に当接するものであることを特徴としている。
【0008】
本発明の第3の笠木の取替施工方法は、前記被覆工程が、断面視L字型状の前記化粧幕板材を設置するものであることを特徴としている。
【0009】
本発明の第4の笠木の取替施工方法は、前記設置工程が、前記新設笠木を水平方向へ複数設置し、前記被覆工程が、前記化粧幕板材を水平方向へ複数設置し、水平方向へ隣り合う前記新設笠木同士を、各々の水平方向の端縁に跨る笠木ジョイントカバーによって連結するとともに、水平方向へ隣り合う前記化粧幕板材同士を、各々の水平方向の端縁に跨る幕板ジョイントカバーによって連結する連結工程をさらに備え、前記連結工程は、前記笠木ジョイントカバー及び前記幕板ジョイントカバーのそれぞれの継ぎ目位置を整合させるものであることを特徴としている。
【0010】
本発明の第5の笠木の取替施工方法は、前記連結工程が、前記笠木ジョイントカバーを、隣り合う前記新設笠木のうち一方の前記新設笠木にのみビス固定するとともに、前記幕板ジョイントカバーを、隣り合う前記化粧幕板材のうち一方の前記化粧幕板材にのみビス固定するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の笠木の取替施工方法によると、立上がり部に設置された第2外周被覆部の下端が、撤去前の第1外周被覆部の下端位置よりも高い位置に配置される場合に、立上がり部の外周面のうち、第2外周被覆部の下端~第1外周被覆部の下端が位置していた高さまでの範囲を、化粧幕板材によって被覆するとされる。したがって、既設笠木及び新設笠木のそれぞれの形状が異なる場合であっても、立上がり部の既設笠木に被覆されていた部分が露出することがなく、建物外観の意匠性を保持することができる。
【0012】
本発明の第2の笠木の取替施工方法によると、被覆工程は、化粧幕板材の上端部を、返し片及び下部幕板部によって形成される入隅部に当接するものであるとされる。したがって、水が、新設笠木と化粧幕板材との境界から立上がり部内部へ侵入する可能性を効果的に抑制し、防水性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第3の笠木の取替施工方法によると、被覆工程は、単純な形状である断面視L字型状の化粧幕板材を設置するものとされる。したがって、新設笠木を既設笠木の形状に合わせて都度成型する場合と比較し、費用を抑えてパラペット廻りの意匠性を保持することができる。
【0014】
本発明の第4の笠木の取替施工方法によると、連結工程は、新設笠木同士を連結する笠木ジョイントカバーと、化粧幕板材同士を連結する幕板ジョイントカバーと、のそれぞれの継ぎ目位置を整合させるものであるとされる。したがって、建物外観に統一感を持たせることができ、意匠性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第5の笠木の取替施工方法によると、連結工程は、笠木ジョイントカバーを、隣り合う新設笠木のうち一方の新設笠木にのみビス固定するとともに、幕板ジョイントカバーを、隣り合う化粧幕板材のうち一方の化粧幕板材にのみビス固定するものであるとされる。したがって、新設笠木や化粧幕板材が、気温や湿度などの外的要因により伸縮しても、各部材が破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)建物を示す概略平面図、(b)図1(a)のA-A線断面図。
図2】(a)新設笠木を立上がり部設置する状況を示す断面図、(b)新設笠木を設置したパラペットを示す平面図。
図3図2(b)のB-B線断面図。
図4】立上がり部に新設笠木を設置した状態を示す正面図。
図5】化粧幕板材を新設笠木に固定した状態を示す断面図。
図6】化粧幕板材を示す斜視図。
図7図5のC部分拡大図。
図8】(a)笠木ジョイントカバーで新設笠木同士を連結した状況を示す平面図、(b)笠木ジョイントカバーを示す斜視図。
図9】(a)角部笠木ジョイントカバーを示す斜視図、(b)隅部笠木ジョイントカバーを示す斜視図。
図10】(a)新設笠木同士を笠木ジョイントカバーで連結した状態を示す正面図、(b)新設笠木に笠木ジョイントカバーを設置した状態を示す断面図。
図11】(a)幕板ジョイントカバーで化粧幕板材同士を連結した状況を示す正面図、(b)幕板ジョイントカバーを示す斜視図、(c)角部ジョイントカバーを示す斜視図、(d)隅部ジョイントカバーを示す斜視図。
図12】化粧幕板材に幕板ジョイントカバーを設置した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る笠木の取替施工方法の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の笠木の取替施工方法は、パラペットの立上がり部上部に設置された既設笠木を、当該既設笠木とは異なる形状の新設笠木へと取替える際に用いられ施工方法であり、特に、パラペットの外周面のうち、既設笠木で被覆されていた部分を新設笠木だけでは被覆できない場合に用いられる。
【0018】
図1(a)に示すように、パラペット1は、建物Sの陸屋根R外周部に沿って設置される部分で、図示するバルコニーのほかに屋上屋根などに形成される。笠木の取替施工方法を行う前のパラペット1は、図1(b)に示すように、陸屋根面Raよりも上方へ立上がる立上がり部2と、立上がり部2の上部に固定される既設笠木3と、からなる。またパラペット1は、建物Sを見上げた際に視認できる箇所であり、建物外観の構成要素となるため美観を保持することが望まれる。
【0019】
立上がり部2は、図1(b)に示すように、陸屋根R側の側面である内周面2a、及び内周面2aと反対側の側面である外周面2bを形成する一対の外装材21と、一対の外装材21を支持する外装下地材22と、外装下地材22の上端部に設置され、既設笠木3を支持する笠木支持材23と、一対の外装材21及び笠木支持材23の上端を被覆する断面視コ字型状の下地被覆材24と、からなる。また、内周面2aには手すり25が設置されている。
【0020】
図1(b)に示す既設笠木3は、断面視略コ字型状の水平方向へ延出する部材である。既設笠木3は、立上がり部2の上部を被覆する第1上部被覆部31と、第1上部被覆部31の前記内周面2a側の端縁から垂下する第1内周被覆部32と、第1上部被覆部31の前記外周面2b側の端面から垂下する第1外周被覆部33と、を有している。既設笠木3はセラミックで形成されており、第1上部被覆部31は、モルタル材(図示せず)によって既設笠木下地材24の上面に圧着張りされている。また第1内周被覆部32は、立上がり部2の内周面2b上端部を被覆しており、一方第1外周被覆部33は、立上がり部2の外周面2b上端部を被覆している。
【0021】
この既設笠木3を、新設笠木4に取り替える笠木の取替施工方法は、図2(a)に示すように、まず既設笠木3及びモルタル材を立上がり部2から撤去し、当該立上がり部2の既設笠木3に被覆されていた部分を露出する。このとき、内周面2a及び外周面2bは、既設笠木3の第1内周被覆部32及び第1外周被覆部33に被覆されていた部分と、被覆されていなかった部分とで色褪せや経年劣化の具合が異なった状態となっている。特に、立上がり部2の外周面2bは、建物外観を構成する要素となるため、建物Sを見上げた際にその違いが目立つ。
【0022】
次に、新設笠木4の下地となる笠木下地材26を下地被覆材24の上部に設置する。図2(a)に示す笠木下地材26は、下地被覆材24を介して笠木支持材23にビス固定される固定部26aと、固定部26aの内周面2a側の端縁及び外周面2b側の端縁から下方へ延出する一対の延出部26bと、を有している。
【0023】
図3に示すように笠木下地材26を笠木支持材23にビス固定した後、続いて、新設笠木4をパラペット1の立上がり部2に設置する。既設笠木3に代わってパラペット1に設置される新設笠木4は、アルミニウムを押出し成型することによって形成される。新設笠木4は、既設笠木3と同様、断面視略コ字型状の水平方向へ延出する部材であり、立上がり部2の上部を被覆する第2上部被覆部41と、第2上部被覆部41の前記内周面2a側の端縁から垂下する第2内周被覆部42と、第2上部被覆部41の前記外周面2b側の端縁から垂下する第2外周被覆部43と、を有している。また第2内周被覆部42は、立上がり部2の内周面2a上端部を被覆する幕板部42aと、幕板部42aの下端を立上がり部2側へ折り曲げて形成した第1返し片42bを具備している。一方、第2外周被覆部43は、立上がり部2の外周面2b上端部を被覆する上部幕板部43aと、上部幕板部43aの下端部から立上がり部2の方向へ突出する第2返し片43bと、第2返し片43bの立上がり部2側の端縁から下方へ延びる下部幕板部43cと、下部幕板部43cの下端を立上がり部2側へ折り曲げた第3返し片43dと、を具備している。また、上部幕板部43aの下端は、第2返し片43bよりも下方へ延びており、上部幕板部43aの表面を流れる水が、第2返し片43b側へ伝っていかないよう、水を下方へ流れ落とすことができる。
【0024】
図2(b)に示すように、新設笠木4は、立上がり部2の長さに応じて水平方向へ複数設置され、また、角部や入隅部に設置される場合は端縁を45°に切断されて所謂出留め及び入留めを形成する。図3に示すように、新設笠木4を立上がり部2に設置する際は、第2内周被覆部42の第1返し片42b及び第2外周被覆部43の第3返し片43dを、笠木下地材26の一対の延出部26bの下端にそれぞれ引掛けて設置する。またこのとき、隣り合う新設笠木4は、図4に示すように5mm程度の隙間Y1を開けて設置される。
【0025】
図3に示すように、新設笠木4を立上がり部2の上部に設置すると、第2内周被覆部42が立上がり部2の内周面2a上端部を被覆し、また、第2外周被覆部43が立上がり部2の外周面2b上端部を被覆する。このとき、第3返し片43dの下端43eは、図1に示す第1外周被覆部33の下端33aが位置していた高さHよりも高い位置に配置されており、図4に示すように、立上がり部2の外周面2bのうち、第1外周被覆部33で被覆されていた部分の一部(範囲X)が露出した状態となっている。
【0026】
次に、図5に示すように、新設笠木4の下方に化粧幕板材5を設置する。図5及び図6に示す化粧幕板材5は、水平方向へ延びる部材であり、アルミニウム板材を断面視L字型状に曲げ加工して形成されている。また化粧幕板材5は、先述した外周面2bの範囲Xを被覆する幕板部51と、当該幕板部51の下端から立上がり部2側へ延びる返し部52と、によって構成されている。幕板部51は、水平方向の両端部に第1ビス孔51aを形成されており、また、高さ方向の距離L1が、新設笠木4の第2返し片43b下端~高さHまでの長さ距離と略同一となっている。図7に示すように、化粧幕板材5は、幕板部51の上端部を、新設笠木4の第2返し片43b及び下部幕板部43cとによって形成される入隅部43fに当接され、予め下部幕板部43cの化粧幕板材5側の面に貼られた両面テープによって貼着される。そして、ビス6で幕板部51、下部幕板部43c、及び笠木下地材26の一方の延出部26bを貫通することにより新設笠木4に固定される。このとき、先述した幕板部51の高さ方向の距離L1が、新設笠木4の第2返し片43b下端~高さHまでの長さと略同一となっているため、図4に示す範囲Xは化粧幕板材5によって被覆された状態となる。また図10に示すように、化粧幕板材5は、新設笠木4と同様、水平方向へ複数設置され、その継ぎ目位置は新設笠木4の継ぎ目位置に合わされる。このように、化粧幕板材5と新設笠木4の継ぎ目位置を整合させることにより、建物Sの外観に統一感を持たせることができ、建物外観の意匠性を向上させることができる。なお隣り合う化粧幕板材5は、新設笠木4と同様、5mm程度の隙間を開けて新設笠木4に設置される。
【0027】
続いて、図8(a)に示すように、水平方向に隣り合う新設笠木4同士を笠木ジョイントカバー7によって連結する。図8(b)に示すように、笠木ジョイントカバー7は、アルミニウム板材を断面視略コ字型状に折り曲げ加工した部材であり、細長な上部連結部71と、及び当該上部連結部71の長さ方向の両端縁を下方へ折り曲げた一対の側面連結部72と、一対の側面連結部72のそれぞれの下端を互いに近接する方向へ切曲した一対の引掛け片73と、からなる。また、一対の側面連結部72のうち、一方の側面連結部72の上端~一方の引掛け片73上面までの高さ距離L2は、図3に示す新設笠木4の幕板部42aと略同一の高さとなっており、他方の側面連結部72の上端~他方の引掛け片73上面までの高さ距離L3は、図3に示す新設笠木4の上部幕板部43aと略同一の高さとなっている。そして、一対の引掛け片73のうち一方の引掛け片73には、幅方向の一端部に板厚方向へ貫通する第2ビス孔73aが形成される。なお角部や入隅部に配置される新設笠木4同士を連結する場合は、図9(a)(b)に示すように、上部連結部71の長さ方向の両端縁に角部又は入隅部を形成した角部笠木ジョイントカバー74及び隅部笠木ジョイントカバー75を使用する。
【0028】
笠木ジョイントカバー7で隣り合う新設笠木4同士を連結する場合は、まず、図10(a)に示すように、隣り合う新設笠木4のそれぞれの水平方向の端縁4aに跨るように笠木ジョイントカバー7を配置する。そして、図10(b)に示すように、一方の引掛け片73を第1返し片42bに引掛けるとともに、他方の引掛け片73を上部幕板部43aの下端に引掛け、上部連結部71を隣り合う新設笠木4の第2上部被覆部41に当接する。最後に第2ビス孔73aからビス6を打設して一方の引掛け片73を一方の新設笠木4の第1返し片42bに固定する。このように、笠木ジョイントカバー7を一方の新設笠木4にのみ固定することにより、新設笠木4が、気温や湿度などの外的要因により伸縮して隣り合う新設笠木4に干渉したり、笠木ジョイントカバー7が破損したりすることを防止できる。
【0029】
次に、図11(a)に示すように、水平方向に隣り合う化粧幕板5同士を幕板ジョイントカバー8によって連結する。図11(b)に示す幕板ジョイントカバー8は、アルミニウム板材を断面視L字型状に折り曲げ加工した部材であり、化粧幕板材5に固定される短冊状の固定部81と、固定部81の長さ方向の一端から水平方向へ突出する水平部82と、からなる。固定部81は、水平部82側の面に両面テープ81aが貼着されており、また、幅方向の一端部に第3ビス孔81bが形成されている。なお、角部や入隅部に配置される化粧幕板材5同士を連結する場合は、図11(c)(d)に示すように、固定部81を幅方向の略中央で90°折曲した角部幕板ジョイントカバー83及び隅部幕板ジョイントカバー84を使用する。
【0030】
幕板ジョイントカバー8で隣り合う化粧幕板材5同士を連結する場合は、図11(a)に示すように、隣り合う化粧幕板材5のそれぞれの水平方向の端縁5aに跨るように幕板ジョイントカバー8を配置し、先述した固定部81の両面テープ81aを隣り合う化粧幕板材5に貼着する。そして図12に示すように、第3ビス孔81bからビス6を打設し、固定部81を一方の化粧幕板材5の幕板部51に固定する。このように、幕板ジョイントカバー8を、一方の化粧幕板材5のみにビス固定することによって、笠木ジョイントカバー7と同様、化粧幕板材5が気温や湿度などの外的要因により伸縮して隣り合う化粧幕板材5に干渉したり、幕板ジョイントカバー8が破損したりすることを防止できる。
【0031】
このように、本願の笠木の取替施工方法は、新設笠木4の下端位置が、既設笠木3の下端位置よりも高い場合に、立上がり部2の範囲Xを化粧幕板材5によって被覆するものである。したがって、既設笠木3の形状と新設笠木4の形状とが異なる場合であっても、立上がり部2の既設笠木3に被覆されていた部分が露出することはなく、建物外観の意匠性を保持することができる。また、外周面2bの既設笠木3に被覆されていた部分の仕上げを、被覆されていなかった部分の仕上げに合わせて補修したり、既設笠木3の下部に化粧胴差を設置していた場合に、化粧胴差を新設笠木4の下端に合わせて付け直したりする必要がなく、施工性をも向上させることができる。
【0032】
また、図4に示す範囲Xの高さ距離L4は、既設笠木3の形状によって様々であるが、化粧幕板材5の幕板部51の高さを調整することにより範囲Xを確実に被覆することができる。つまり、複雑な形状の新設笠木4を既設笠木3の形状に合わせて都度成型する必要はなく、単純な形状である化粧幕板材5を調整するだけで範囲Aを被覆することができるので、費用を抑えてパラペット廻りの意匠性を保持することができる。
【0033】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る笠木の取替施工方法は、新設笠木の下端位置が、既設笠木の下端位置よりも高い場合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 パラペット
2 立上がり部
2b (立上がり部)の外周側面
3 既設笠木
33 第1外周被覆部
33a 第1外周被覆部の下端
4 新設笠木
43 第2外周被覆部
43a 上部幕板部
43b 第2返し片(返し片)
43c 下部幕板部
43e 第3返し片の下端(第2外周被覆部の下端)
43f 入隅部
5 化粧幕板材
7 笠木ジョイントカバー
8 幕板ジョイントカバー
H 既存笠木の下端が位置していた高さ
X 第2外周被覆部の下端~第1外周被覆部の下端が位置していた高さまでの範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12