(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントおよびその成形品
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20230525BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20230525BHJP
B29C 64/118 20170101ALN20230525BHJP
【FI】
B29B11/16
C08J5/04 CEZ
B29C64/118
(21)【出願番号】P 2018562382
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2018041029
(87)【国際公開番号】W WO2019093277
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2017214604
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】越 政之
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 恵寛
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔馬
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105153(JP,A)
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
B29B15/08-15/14
B29C64/00-64/40
B33Y10/00-99/00
C08J5/04-5/10
C08J5/24
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した強化繊維にポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)からなる熱可塑性樹脂が含浸されてなる
断面形状が円形の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントであって、下記条件(a)~(e)のすべてを満たすことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
(a)強化繊維の体積割合が30~80%であり、熱可塑性樹脂の体積割合が70~20%である。
(b)厚みが0.01~3mmである。
(c)フィラメント長が1m以上である。
(d)曲げ剛性が1N・m
2以下である。
(e)下記手順(i)~(iv)の方法によって算出される強化繊維の分散パラメータdの平均値Dが90%以上であり、前記平均値Dの変動係数が4%以下である。
(i)前記繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの配向方向に垂直な横断面の写真を撮影する。
(ii)前記横断面の写真を下記式(1
-1)で規定される一辺の長さtを有する正方形ユニットに分割する。
(iii)下記式(2)で定義される分散パラメータdを算出する。
(iv)上記手順(i)~(iii)を複数回繰り返し、分散パラメータdの平均値Dを算出する。
式(1
-1)
t=1.5
a
a: 繊維
平均直径
t: ユニットの一辺の長さ
式(2) 分散パラメータd=100×区画内に強化繊維が含まれるユニットの個数/ユニット全体の個数
【請求項2】
ボイド率が5%以下である請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
【請求項3】
前記強化繊維が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
【請求項4】
最外層に熱可塑性樹脂層が被覆されてなる請求項1~
3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントからなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントおよびその成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させてなる繊維強化熱可塑性樹脂基材は、比強度、比剛性に優れ、軽量化効果が高い上に、耐熱性、耐薬品性が高いため、航空機、自動車等の輸送機器や、スポーツ、電気・電子部品などの各種用途へ好ましく用いられている。近年、軽量化に対する需要の高まりにより、航空機、自動車用途を中心に、金属部品から樹脂部品への代替や、部品の小型化・モジュール化が進みつつあることから、成形加工性に優れ、かつ、機械特性に優れる材料開発が求められている。
【0003】
近年、繊維強化熱可塑性樹脂基材の成形方法として3Dプリンティング法などの熱可塑性樹脂を溶融積層する成形方法が注目されている。熱可塑性樹脂を溶融積層させながら形状を作製する方式は、コスト面で有利であること等から、各方面で開発が進められている(例えば、特許文献1)。このような成形方法に、適用される繊維強化熱可塑性樹脂基材は、短繊維にカットした強化繊維を熱可塑性樹脂とともに押し出し繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを製造する方法が主流であった。しかしながら、短繊維強化熱可塑性樹脂基材は繊維含有率を向上させることが困難であり、また、繊維長が短いことから補強効果が限定的であった。
【0004】
高い補強効果を発現させる方法として、特許文献2に示す通り連続繊維強化熱可塑性樹脂基材を適用する方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-500194号公報
【文献】特開2017-128072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示す方法では、成形前の段階で内部にボイドを多く含むため、成形時にボイドを除かなければならず、成形品の品位および生産性に課題があった。
【0007】
本発明は、従来技術の背景に鑑み、ボイドや強化繊維の分散性といった品位に優れ、成形時の取り扱い性に優れた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]連続した強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントであって、下記条件(a)~(c)のすべてを満たすことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
(a)繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント中の強化繊維の体積割合が30~80%であり、熱可塑性樹脂の体積割合が70~20%である。
(b)厚みが0.01~3mmである。
(c)フィラメント長が1m以上である。
[2]ボイド率が5%以下である[1]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[3]曲げ剛性が1N・m2以下である[1]または[2]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[4]前記強化繊維が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維から選ばれる少なくとも1種である[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[5]前記熱可塑性樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、液晶ポリマー樹脂(LCP)から選ばれる少なくとも1種である[1]~[4]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[6]下記手順(i)~(iv)の方法によって算出される強化繊維の分散パラメータdの平均値Dが90%以上である[1]~[5]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
(i)前記繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの配向方向に垂直な横断面の写真を撮影する。
(ii)前記横断面の写真を下記式(1)で規定される一辺の長さtを有する正方形ユニットに分割する。
(iii)下記式(2)で定義される分散パラメータdを算出する。
(iv)上記手順(i)~(iii)を複数回繰り返し、分散パラメータdの平均値Dを算出する。
式(1) 1.5a≦t≦2.5a
a: 繊維平均直径
t: ユニットの一辺の長さ
式(2) 分散パラメータd=100×区画内に強化繊維が含まれるユニットの個数/ユニット全体の個数
[7]前記分散パラメータdの平均値Dの変動係数が4%以下である[1]~[6]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[8]断面形状が円形、四角形、楕円形、長円形、星形のいずれかの形状である[1]~[7]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[9]最外層に熱可塑性樹脂層が被覆されてなる[1]~[8]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントからなる成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、厚みが薄く、一定長以上のフィラメント長を有することから成形時の取り扱い性に優れ、繊維含有量が高くボイドや強化繊維の均一性といった品位に優れることから高い補強効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、連続した強化繊維に、熱可塑性樹脂を含浸させてなるものである。
【0011】
本発明の実施形態において、連続した強化繊維とは、繊維強化熱可塑性樹脂中で当該強化繊維が実質的に途切れのないものをいう。フィラメント内の単糸全てが途切れていないことが理想であるが、単糸数の80%以上が途切れていなければ、「途切れのない」状態であるといえる。本発明の実施形態における強化繊維の形態および配列としては、例えば、一方向に引き揃えられたもの、組み紐、トウ等が挙げられる。中でも、特定方向の機械特性を効率よく高められることから、強化繊維が一方向に配列してなることが好ましい。
【0012】
強化繊維の種類としては特に限定されず、炭素繊維、金属繊維、有機繊維、無機繊維が例示される。これらを2種以上用いてもよい。
【0013】
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系炭素繊維、炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが挙げられる。これら炭素繊維のうち、強度と弾性率のバランスに優れる点で、PAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
【0014】
金属繊維としては、例えば、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属からなる繊維が挙げられる。
【0015】
有機繊維としては、例えば、アラミド、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンなどの有機材料からなる繊維が挙げられる。アラミド繊維としては、例えば、強度や弾性率に優れるパラ系アラミド繊維と、難燃性、長期耐熱性に優れるメタ系アラミド繊維が挙げられる。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維などが挙げられ、メタ系アラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。アラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維に比べて弾性率の高いパラ系アラミド繊維が好ましく用いられる。
【0016】
無機繊維としては、例えば、ガラス、バサルト、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機材料からなる繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス繊維(電気用)、Cガラス繊維(耐食用)、Sガラス繊維、Tガラス繊維(高強度、高弾性率)などが挙げられる。バサルト繊維は、鉱物である玄武岩を繊維化した物で、耐熱性の非常に高い繊維である。玄武岩は、一般的に、鉄の化合物であるFeOまたはFeO2を9~25重量%、チタンの化合物であるTiOまたはTiO2を1~6重量%含有するが、溶融状態でこれらの成分を増量して繊維化することも可能である。
【0017】
本発明の実施形態における繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、補強材としての役目を期待されることが多いため、高い機械特性を発現することが望ましく、高い機械特性を発現するためには、強化繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。
【0018】
繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントにおいて、強化繊維は、通常、多数本の単繊維を束ねた強化繊維束を1本または複数本並べて構成される。1本または複数本の強化繊維束を並べたときの強化繊維の単繊維本数は、500~50,000本が好ましい。取扱性の観点からは、強化繊維の単繊維本数は、1,000~50,000本がより好ましく、1,000~40,000本がさらに好ましく、1,000~30,000本が特に好ましい。強化繊維の単繊維本数の上限は、ボイドや分散性といった品位や取り扱い性とのバランスも考慮して、分散性、取り扱い性を良好に保てるようであればよい。
【0019】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの断面形状としては、特に限定されるものではないが、円形断面や、楕円形断面、長円形断面、三角形断面、Y字断面、四角形断面、十字断面、中空断面、C型断面、田型断面、星型断面などいかなる異形断面も採用できる。特に、溶融積層時の接着性のために、円形断面や四角形断面、楕円形断面、長円形断面、星型断面が好ましい。
【0020】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、最外層を熱可塑性樹脂で被覆することができる。外周部を熱可塑性樹脂で被覆することにより、成形時の接着性を向上させることができる。被覆する樹脂は繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントと同じであってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
【0021】
1本の強化繊維束は、好ましくは平均直径5~10μmである強化繊維の単繊維を500~50,000本束ねて構成されたものである。
【0022】
本発明に使用される熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリブチレン樹脂等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、変性PSU樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン(PK)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。とりわけ、耐熱性、長期耐久性の観点からは、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、液晶ポリマー樹脂がより好ましい。
【0023】
前記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK)としては、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルケトンエーテルケトン(PEEKEK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、及びポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)等やこれらの共重合体、変性体、および2種以上ブレンドした樹脂などであってもよい。
【0024】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、連続した強化繊維に前述の熱可塑性樹脂を含浸させてなるものであり、必要に応じて、さらに、充填材、他種ポリマー、各種添加剤などを含有させてもよい。
【0025】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることにより得ることができる。
【0026】
含浸方法としては、例えば、フィルム状の熱可塑性樹脂を溶融し、加圧することで強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させるフィルム法、繊維状の熱可塑性樹脂と強化繊維束とを混紡した後、繊維状の熱可塑性樹脂を溶融し、加圧することで強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させるコミングル法、粉末状の熱可塑性樹脂を強化繊維束における繊維の隙間に分散させた後、粉末状の熱可塑性樹脂を溶融し、加圧することで強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる粉末法、溶融した熱可塑性樹脂中に強化繊維束を浸し、加圧することで強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる引き抜き法が挙げられる。様々な厚み、繊維体積含有率など多品種の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを作製できることから、引き抜き法が好ましい。
【0027】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの長さは1m以上が必要である。1m以上であることにより熱可塑性樹脂を連続的に成形することが可能である。
【0028】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚さは、0.01~3mmである。厚さが0.01mm以上であれば、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを用いて得られる成形品の強度を向上させることができる。0.1mm以上がより好ましい。一方、厚さが3mm以下であれば、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの柔軟性が確保でき成形時の取り扱い性が向上する。1mm以下がより好ましく、0.7mm以下がさらに好ましい。
【0029】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの曲げ剛性は1N・m2以下が好ましい。曲げ剛性が1N・m2以下であればフィラメントの柔軟性が確保でき成形時の取り扱い性が向上する。0.1N・m2以下がより好ましく、0.01N・m2以下がさらに好ましく、0.005N・m2以下が特に好ましい。
【0030】
また、本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの体積含有率(Vf)は、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント全体を100体積%とした時、強化繊維を30体積%以上80体積%以下含有する。強化繊維を30体積%以上含有することにより、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを用いて得られる成形品の強度をより向上させることができる。Vfは40体積%以上がより好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。一方、強化繊維を80体積%以下含有することにより、強化繊維に熱可塑性樹脂をより含浸させやすい。繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント中の強化繊維は75体積%以下がより好ましく、70体積%以下がさらに好ましい。
【0031】
繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの体積含有率Vfは、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの質量W0(g)を測定したのち、該連続繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを空気中500℃で30分間加熱して熱可塑性樹脂成分を焼き飛ばし、残った強化繊維の質量W1(g)を測定し、式(3)により算出した。
【0032】
式(3) Vf(体積%)=100×(W1/ρf)/{W1/ρf+(W0-W1)/ρ1}
ρf:強化繊維の密度(g/cm3)
ρr:熱可塑性樹脂の密度(g/cm3)
【0033】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント中に含まれるボイド率が5%以下であることが好ましい。ボイド率が5%以下であることにより、強化繊維の機械特性を損なうことなく、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの機械特性を発現することができる。3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
【0034】
繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントのボイド率は、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み方向断面を以下のように観察して求めた。繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントをエポキシ樹脂で包埋したサンプルを用意し、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み方向断面が良好に観察できるようになるまで、前記サンプルを研磨した。研磨したサンプルを、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-950F(コントローラー部)/VH-Z100R(測定部)((株)キーエンス製)を使用して、拡大倍率400倍で撮影した。撮影範囲は、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み×幅500μmの範囲とした。撮影画像において、基材の断面積および空隙(ボイド)となっている部位の面積を求め、式(4)により含浸率を算出した。
【0035】
式(4) ボイド率(%)=100×(ボイドが占める部位の総面積)/(繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの総面積)
【0036】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは下記の方法で定義される分散パラメータの平均値Dが90%以上であることが好ましい。分散パラメータの平均値が90%以上であることにより、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの機械特性のバラつきを低減することができる。
【0037】
(分散パラメータの平均値Dの算出)
(i)繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの配向方向とほぼ垂直な横断面を撮影する。
(ii)該横断面写真を式(1)で規定された一辺の長さを有する正方形ユニットに分割する。
(iii)式(2)で定義する分散パラメータdを算出する。
(iv)(i)~(iii)の手順を繰り返し、分散パラメータdの平均値Dを算出する。
【0038】
式(1) 1.5a≦t≦2.5a
a:繊維平均直径
t:ユニットの1辺の長さ
【0039】
式(2) 分散パラメータd=100×区画内に強化繊維が含まれるユニットの個数/ユニット全体の個数
【0040】
(評価方法)
試料である繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを、ビューラー社製エポキシ樹脂「エポクイック(登録商標)」に埋め込み、室温で24時間硬化させた後、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントにおける強化繊維の配向方向にほぼ垂直な横断面を研磨し、次いで研磨面を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-950F(コントローラー部)/VH-Z100R(測定部)((株)キーエンス製)で、位置を変えながら撮影する。
【0041】
撮影された繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの横断面写真について画像解析を行い、式(1)を1辺の長さとする、相互に重なり合わない略正方形のユニットに分割した。この略正方形ユニットを順に画像解析し、略正方形ユニット内に強化繊維を含むユニットをカウントして、式(2)より分散パラメータdを算出した。
【0042】
上記の画像処理は、区画された略正方形ユニットの総数に対するユニット内に強化繊維を含むユニットの数を算出することによって求められる。2値化は原則として判別分析法を採用するが、場合によっては撮影写真と対比しつつ手動で実施することも可能である。
【0043】
また、ユニット内に含まれる強化繊維は、強化繊維の一部でも含まれていればカウントされ、二つ以上の強化繊維が含まれていてもユニットとしては1つとしてカウントされる。
【0044】
1つの研磨面について、撮影位置を変えながら20回以上の枚数にわたって撮影し、各々の横断面写真から得られる繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの分散パラメータdの平均値Dを求めればよく、その値から、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントにおける強化繊維の分布状態を定量的に評価することが可能となる。なお、横断面の撮影枚数が十分に確保できない場合には、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの異なる横断面の研磨面を複数枚撮影し、分散パラメータdを算出し、最終的に分散パラメータdの平均値Dを求めることも可能である。
【0045】
式(1)で求められるユニットの大きさは、観察される強化繊維の直径との関係により規定される。ユニットの大きさが式(1)の範囲より小さければ、分散パラメータは体積含有率に収斂され分散性を正確に表現できない。一方、式(1)の範囲より大きければ、分散性の良否に関わらず値は一定となり、正確ではない。従って、ユニットの大きさは式(1)の範囲であることが好ましい。
【0046】
さらに、分散パラメータdの変動係数は式(5)より求められる。変動係数が4%を超える繊維強化熱可塑性樹脂フィラメント中の各箇所により強化繊維の疎密が大きくなる。従って変動係数は4%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0047】
式(5) 変動係数=100×分散パラメータdの平均値/分散パラメータdの標準偏差
【0048】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを、任意の構成で1枚以上積層後、必要に応じて熱および/または圧力を付与しながら成形することにより成形品が得られる。
【0049】
熱および/または圧力を付与する方法としては、例えば、任意の構成で積層した成形材料を型内もしくはプレス板上に設置した後、型もしくはプレス板を閉じて加圧するプレス成形法、任意の構成で積層した成形材料をオートクレーブ内に投入して加圧・加熱するオートクレーブ成形法、任意の構成で積層した成形材料をフィルムなどで包み込み、内部を減圧にして大気圧で加圧しながらオーブン中で加熱するバッギング成形法、任意の構成で積層した連続繊維強化熱可塑性樹脂に張力をかけながらテープを巻き付け、オーブン内で加熱するラッピングテープ法、任意の構成で積層した連続繊維強化熱可塑性樹脂を型内に設置し、同じく型内に設置した中子内に気体や液体などを注入して加圧する内圧成形法、成形材料を加熱・加圧し、溶融積層しながら3次元形状を成形する3Dプリンティング法等があげられる。とりわけ、複雑形状の成形に適した3Dプリンティング法が好ましく用いられる。
【0050】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントおよびその成形品は、その優れた特性を活かし、航空機部品、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントおよびその成形品は、とりわけ、安定した機械特性が要求される航空機エンジン周辺部品、航空機用外装部品、自動車ボディー部品、車両骨格、自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品や、自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントおよびその成形品は、ファンブレードなどの航空機エンジン周辺部品、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェアリング、リブなどの航空機関連部品、各種シート、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種メンバ、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、各種レール、各種ヒンジなどの自動車ボディー部品、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オルタネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、多極ロッド、モーターケース、テレビハウジング、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギア、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクタ、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクタ、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品などに好ましく用いられる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。各実施例および比較例における特性評価は下記の方法に従って行った。
【0052】
[体積含有率(Vf)]
各実施例および比較例により得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの体積含有率Vfは、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの質量W0を測定したのち、該繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを空気中500℃で30分間加熱して熱可塑性樹脂成分を焼き飛ばし、残った強化繊維の質量W1を測定し、式(3)により算出した。
【0053】
式(3) Vf(体積%)=100×(W1/ρf)/{W1/ρf+(W0-W1)/ρ1}
ρf:強化繊維の密度(g/cm3)
ρr:熱可塑性樹脂の密度(g/cm3)
【0054】
[含浸性]
各実施例および比較例により得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み方向断面を以下のように観察した。繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントをエポキシ樹脂で包埋したサンプルを用意し、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み方向断面が良好に観察できるようになるまで、前記サンプルを研磨した。研磨したサンプルを、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-950F(コントローラー部)/VH-Z100R(測定部)((株)キーエンス製)を使用して、拡大倍率400倍で撮影した。撮影範囲は、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの厚み×幅500μmの範囲とした。撮影画像において、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの面積および空隙(ボイド)となっている部位の面積を求め、式(4)により含浸率を算出した。
【0055】
式(4) ボイド率(%)=100×(ボイドが占める部位の総面積)/(繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの総面積)
【0056】
[均一性]
(i)繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの配向方向とほぼ垂直な横断面を撮影する。
(ii)該横断面写真を式(1-1)で規定された一辺の長さを有する正方形ユニットに分割する。
(iii)式(2)で定義する分散パラメータdを算出する。
(iv)(i)~(iii)の手順を繰り返し、分散パラメータdの平均値Dを算出する。
【0057】
式(1-1) t=1.5a
a:繊維平均直径
t:ユニットの1辺の長さ
【0058】
式(2) 分散パラメータd=100×区画内に強化繊維が含まれるユニットの個数/ユニット全体の個数
【0059】
(評価方法)
試料である繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを、エポキシ樹脂に埋め込み、室温で24時間硬化させた後、繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントにおける強化繊維の配向方向にほぼ垂直な横断面を研磨し、次いで該研磨面を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VHX-950F(コントローラー部)/VH-Z100R(測定部)((株)キーエンス製)で撮影した。
【0060】
撮影された各繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの横断面写真を画像解析ソフトを用いて相互に重なり合わない式(1-1)を1辺の長さとする略正方形にユニットに分割した。該略正方形ユニット画像処理を行い、概略正方形ユニット内に強化繊維を含むユニットを測定し、式(2)より分散パラメータdを算出した。
【0061】
かくして得られる分散パラメータdを20枚以上の枚数にわたって撮影し、その平均値Dと変動係数を算出した。
【0062】
[曲げ剛性]
各実施例および比較例により得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの曲げ剛性は下記式(6)により算出した。
【0063】
式(6) 曲げ剛性=E×I
E:繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの曲げ弾性率
I:断面二次モーメント
【0064】
繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの曲げ弾性率はJIS K7074(2012)に準拠して測定を行った。なお、測定はフィラメントの軸方向にそって曲げ試験を行った。
【0065】
[取り扱い性]
各実施例および比較例により得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの取り扱い性は繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを内径150mmのロールに巻き付け、巻き付けた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの折れやたわみを判断基準とし、以下の2段階で評価し、〇を合格とした。
〇(良):折れ、たわみなし
×(不良):折れ、たわみあり
【0066】
[原料]
実施例および比較例において、原料は以下に示すものを用いた。
【0067】
炭素繊維束
・東レ(株)製 PAN系炭素繊維(CF)“トレカ(登録商標)”
【0068】
熱可塑性樹脂
・東レ(株)製 ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)“トレリナ(登録商標)”
・ビクトレックス・ジャパン(株)製 ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)“VICTREX(登録商標)”
・アルケマ(株)製 ポリエーテルケトンケトン(PEKK)“KEPSTAN(登録商標)”
・サビック(株)製 ポリエーテルイミド(PEI)“ULTEM(登録商標)”
【0069】
炭素繊維束が巻かれたボビンを1本準備し、それぞれボビンから連続的に糸道ガイドを通じて炭素繊維束を送り出した。連続的に送り出された炭素繊維束に、含浸ダイ内において、充填したフィーダーから定量供給された、表1に示す樹脂を含浸させた。含浸ダイ内で含浸した炭素繊維束を、引取ロールを用いて含浸ダイのノズルから1m/minの引き抜き速度で連続的に引き抜いた。引き抜かれた炭素繊維束は、冷却ロールを通過して熱可塑性樹脂が冷却固化され、連続した繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントとして巻取機に巻き取られた。得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは断面形状が円形または四角形であり、強化繊維方向は一方向に配列していた。得られた繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを前記評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
実施例1~7(但し、実施例4は参考実施例)と比較例1の比較により、ボイドが少なく、強化繊維が均一に分散した繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを得ることができた。繊維含有率が高く、曲げ剛性の小さい繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは成形時の取り扱い性に優れたものであることが把握できた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントは、プレス成形法や3Dプリンティング法など任意の方法により所望の形状に成形することができる。特に3Dプリンティング法は高い補強効果と成形時の取り扱い性を両立させる必要があり、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントの成形方法として好適である。繊維強化熱可塑性樹脂フィラメントを成形して得られる成形品は、例えば、航空機エンジン周辺部品、航空機内装部品、航空機外装部品などの航空機部品、車両骨格、自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品、自動車電装部品などの自動車部品、LEDリフレクタやSMTコネクタなどの電気・電子部品などに加工することが有効である。