(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】エレベータのドア制御システム
(51)【国際特許分類】
B66B 13/26 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
B66B13/26 F
(21)【出願番号】P 2022045386
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0272493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場ドアの周辺を移動する物体について、前記物体の少なくとも進行方向を把握して、前記物体が前記乗場ドアに衝突するおそれがあるか否かを判断する衝突判断手段と、前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合に警告動作を行う警告手段と、
前記乗場ドア及びかごドアの開閉を制御する開閉制御手段と、を備え
、
前記開閉制御手段は、前記乗場ドア及び前記かごドアが閉じた状態のときに前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合に、前記乗場ドア及び前記かごドアが閉じた状態に維持する戸閉維持制御を実行するエレベータのドア制御システム。
【請求項2】
前記衝突判断手段は、前記物体の進行方向、移動速度、及び、前記乗場ドアまでの距離に関する情報を含む前記物体の移動情報を把握して、前記物体が前記乗場ドアに衝突するおそれがあるか否かを判断する請求項1に記載のエレベータのドア制御システム。
【請求項3】
前記衝突判断手段は、前記物体の移動軌跡の方向及び前記移動軌跡の接線に基づいて前記物体の進行方向を判断する請求項1又は2に記載のエレベータのドア制御システム。
【請求項4】
前記警告手段は、視覚的な手段で警告動作を行う表示警告手段と、聴覚的な手段で警告動作を行う音警告手段と、を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエレベータのドア制御システム。
【請求項5】
前記警告手段は、前記乗場ドアが設けられる壁体における前記乗場ドアの左右両方及び上方の位置にそれぞれ設けられる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエレベータのドア制御システム。
【請求項6】
前記乗場ドア及び
前記かごドアの開閉を制御する開閉制御手段を備え、
前記開閉制御手段は、
前記乗場ドア及び前記かごドアが戸閉動作をする途中で前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合には、前記乗場ドア及び前記かごドアを反転させて前記乗場ドア及び前記かごドアを開く反転戸開制御を実行し、
前記乗場ドア及び前記かごドアが開いた状態のときに
戸閉動作をすると前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合には、前記乗場ドア及び前記かごドアが開いた状態を維持する戸開維持制御を実行する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエレベータのドア制御システム。
【請求項7】
前記開閉制御手段は、かごが乗場に一致した状態で、前記戸閉維持制御が所定時間継続した場合に、前記かごの内部に対して前記物体が前記乗場ドアに接近している旨の警告をしつつ前記乗場ドア及び前記かごドアを開く警告戸開制御を実行する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエレベータのドア制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドアの開閉などを制御するエレベータのドア制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータは、乗場及びかごのそれぞれに設けられたドア装置を備える。例えば、特許文献1に記載のかごのドア装置は、ドア及びドアの先端に設けられ、且つ、障害物を検出するセーフティーシュー等を備える。ドア装置は、戸閉時にセーフティーシューが物に接触すると、ドアを反転させて戸開させる。
【0003】
上記のようなドア装置によれば、戸閉時にドアに物が接触した場合に、ドアが反転して戸開するので、ドアに物が挟まることを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなドア装置では、戸閉状態や開閉途中の乗場ドアの正面に物が当たることを抑制することができないので、乗場ドアに物が衝突し、乗場ドアが損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、エレベータの乗場ドアに物が衝突することを抑制できるエレベータのドア制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレベータのドア制御システムは、エレベータの乗場ドアの周辺を移動する物体について、前記物体の少なくとも進行方向を把握して、前記物体が前記乗場ドアに衝突するおそれがあるか否かを判断する衝突判断手段と、前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合に警告動作を行う警告手段と、を備える。
【0008】
かかる構成によれば、乗場ドアに物体が衝突するおそれがある場合に警告することができるので、物体が乗場ドアに衝突することを抑制できる。
【0009】
また、前記衝突判断手段は、前記物体の進行方向、移動速度、及び、前記乗場ドアまでの距離に関する情報を含む前記物体の移動情報を把握して、前記物体が前記乗場ドアに衝突するおそれがあるか否かを判断するように構成することもできる。
【0010】
かかる構成によれば、物体の移動速度及び乗場ドアまでの距離を含む情報に基づいて物体が乗場ドアに衝突するおそれがあるか否かを判断するので、物体が乗場ドアに衝突する可能性を適切に判断できる。
【0011】
また、前記衝突判断手段は、前記物体の移動軌跡の方向及び前記移動軌跡の接線に基づいて前記物体の進行方向を判断するよう構成することもできる。
【0012】
かかる構成によれば、物体の移動軌跡の方向及び前記移動軌跡の接線に基づいて物体の進行方向を判断するので、物体の物理的な前後を把握できない場合や、物体の前後と進行方向が一致しない場合であっても、物体の進行方向を把握することができる。
【0013】
また、前記警告手段は、視覚的な手段で警告動作を行う表示警告手段と、聴覚的な手段で警告動作を行う音警告手段と、を含むよう構成することもできる。
【0014】
かかる構成によれば、警告手段は、表示及び音で警告するので、騒音がある環境や、表示を視認しづらい環境であっても適切に警告できる。
【0015】
また、前記警告手段は、乗場ドアが設けられる壁体における前記乗場ドアの左右両方及び上方の位置にそれぞれ設けられるよう構成することができる。
【0016】
かかる構成によれば、警告手段は、壁体における乗場ドアの左右両方及び上方の位置にそれぞれ設けられるので、確実に警告することが可能になる。
【0017】
また、前記乗場ドア及びかごドアの開閉を制御する開閉制御手段を備え、前記開閉制御手段は、前記乗場ドア及び前記かごドアが戸閉動作をする途中で前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合には、前記乗場ドア及び前記かごドアを反転させて前記乗場ドア及び前記かごドアを開く反転戸開制御を実行し、前記乗場ドア及び前記かごドアが開いた状態のときに前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合には、前記乗場ドア及び前記かごドアが開いた状態を維持する戸開維持制御を実行するよう構成することもできる。
【0018】
かかる構成によれば、開閉制御手段は、物体が乗場ドアに衝突するおそれがある場合に、乗場ドア及びかごドアを開くように制御するので、物体が乗場ドアに衝突することを抑制できる。
【0019】
また、前記乗場ドア及びかごドアの開閉を制御する開閉制御手段を備え、前記開閉制御手段は、前記乗場ドア及び前記かごドアが閉じた状態のときに前記衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合に、前記乗場ドア及び前記かごドアが閉じた状態に維持する戸閉維持制御を実行するよう構成することもできる。
【0020】
かかる構成によれば、物体が乗場ドアに衝突するおそれがある場合に、乗場ドア及びかごドアを閉じた状態に維持するので、警報を発することで、物体の乗場ドアへの衝突を抑制しつつも、物体が停止しなかった場合に、かごの内部にいる人や物に物体が衝突することを抑制できる。
【0021】
また、前記開閉制御手段は、かごが乗場に一致した状態で、前記戸閉維持制御が所定時間継続した場合に、前記かごの内部に対して前記物体が前記乗場ドアに接近している旨の警告をしつつ前記乗場ドア及び前記かごドアを開く警告戸開制御を実行するよう構成することもできる。
【0022】
かかる構成によれば、戸閉維持制御を所定時間継続した場合に、かごの内部に対して警告をしつつ乗場ドア及びかごドアを開くので、かごの内部にいる人がかご外部にある物体の存在を把握できるため、人や物が物体に衝突することを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エレベータのドアに物が衝突することを抑制できるエレベータのドア制御システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータのドア制御システムの概略を示す図である。
【
図2】同エレベータのドア制御システムのブロック図である。
【
図3】同エレベータのドア制御システムにおける衝突判断手段の処理を示すフロー図である。
【
図4】同エレベータのドア制御システムにおける移動情報処理手段の処理を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係るエレベータのドア制御システム2について
図1乃至
図4を参照して説明する。はじめに、エレベータのドア制御システム2が設けられるエレベータ1の概要について説明する。
【0026】
エレベータ1は、昇降路(図示しない)と、昇降路の延伸方向に離間した複数位置に設けられる乗場11と、各昇降路内を移動する箱形のかご(図示しない)と、を備える。乗場11には、乗場11と昇降路の間を仕切る乗場ドア12が設けられ、かごには、かごの内外の間を仕切るかごドア(図示しない)が設けられる。このような乗場ドア12及びかごドアは、かごが乗場11の位置に一致した場合(乗場11に到着した場合)に開き、乗場11とかごの内部が連通する。また、乗場ドア12は、かごドアに従動して、かごドアと共に開閉方向に移動するように構成されている。さらに、乗場ドア12は、乗場11に設けられた壁体13に設けられている。
【0027】
かごドア及び乗場ドア12の開閉は、開閉制御手段24によって制御される。具体的に、開閉制御手段24は、かごドア及びかごドアに従動する乗場ドア12の開閉動作及び開閉動作の途中における反転動作について制御する。開閉制御手段24による制御の詳細は後述する。
【0028】
このようなエレベータ1で、乗場ドア12の周辺を移動する物体Fによって、かごに積み荷が搬入される。例えば、フォークリフトや台車のような物体Fに載せられた積み荷がエレベータ1のかごに搬入される。ここで、フォークリフトや台車などの物体Fに積み荷が多数載せられている場合には、物体Fの操作者(例えば、フォークリフトの運転者や台車を押す作業者)が前方を視認しづらくなる場合があり、物体Fを閉じた乗場ドア12に衝突させることがあり、衝突によって、乗場ドアや積み荷が破損するおそれがある。本エレベータのドア制御システム2は、主に上述のような状況での物体Fの乗場ドア12に対する衝突を抑制するものである。
【0029】
図1及び
図2に示すように、エレベータのドア制御システム2は、制御部21と、警告動作を行う警告手段22と、乗場ドア12の周辺を移動する物体Fの状況を把握する物体把握手段23と、ドアD(乗場ドア12及びかごドア)の開閉を制御する開閉制御手段24と、を備える。本実施形態の制御部21は、移動情報に基づいて、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがあるか否かを判断する衝突判断手段211を有する。また、乗場11には、乗場呼びをするための乗場操作盤14が設けられる。本実施形態でエレベータのドア制御システム2は、各乗場11に配置される。
【0030】
警告手段22は、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に警告する警告動作を行う。具体的に、警告手段22は、視覚的な手段で警告動作を行う表示警告手段221と、聴覚的な手段で警告動作を行う音警告手段222と、を備える。また、本実施形態の警告手段22は、乗場ドア12が設けられる壁体13に設けられている。具体的に、警告手段22は、壁体13における乗場ドア12の左右両方及び上方の位置にそれぞれに設けられており、左右両方に設けられる警告手段22のうち一方は、乗場操作盤14と一体として構成されている。このような警告手段22は、主に物体Fの操作者に対して警告をするように構成されており、また、制御部21により制御される。以上のように、表示警告手段221は、物体Fの操作者が、前方、左右、上方の何れかが視認不可能な場合であっても、物体Fの操作者に対して表示警告手段221を視認させることができるため、確実に警告することができる。また、音警告手段222が乗場ドア12の左右両方及び上方から音を発するので、例えば、乗場ドア12の左右いずれか又は両方に積載物等が載置されている場合でも、物体Fの操作者に警告動作に係る音を確実に認識させることができる。
【0031】
表示警告手段221は、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、視覚的手段で警告する。本実施形態の表示警告手段221は、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、物体Fを制止するよう促すための表示を行い、例えば、「止まれ」や「危険」、「注意」等の表示をする。また、表示警告手段221は、物体FがドアDに衝突する可能性に応じて複数種類の警告動作(本実施形態では第一警告動作及び第二警告動作)を行うことができる。
【0032】
音警告手段222は、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、聴覚的手段で警告する。本実施形態の音警告手段222は、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、物体Fを制止するよう促すための音声を発する。音警告手段222は、例えば、警報音を発したり、「停止せよ」という旨の音声言語によるアナウンスをしたりする。また、音警告手段222は、物体FがドアDに衝突する可能性に応じて複数種類の警告動作(本実施形態では第一警告動作及び第二警告動作)を行うことができ、例えば、音の大きさを変えたり、発する音の内容を変えたりできる。
【0033】
警告手段22は、表示警告手段221と音警告手段222を組み合わせて警告を行うことができる。具体的に、警告手段22は、警告動作において、表示警告手段221で表示を行いつつ、音警告手段222で音を発することができる。このような警告手段22によれば、表示及び音で警告するので、騒音がある環境や、表示を視認しづらい環境であっても適切に警告できる。
【0034】
物体把握手段23は、乗場ドア12の周辺を移動する物体Fの状況を把握し、把握した情報を制御部21に送信する。具体的に、物体把握手段23は、乗場ドア12の周辺を撮像するカメラ231と、乗場ドア12の周辺を移動する物体Fと乗場ドア12の距離を計測する距離センサ232と、乗場ドア12の周辺を移動する物体Fの移動速度を計測する速度センサ233と、を備える。
【0035】
カメラ231は、乗場11周辺を撮像可能であり、撮像した映像データを制御部21に送信する。本実施形態のカメラ231は、乗場11周辺の動画を撮像する。また、カメラ231は、乗場ドア12の近傍に複数配置されており、具体的には、乗場ドア12が設けられる壁体13における、乗場ドア12の左右両方及び上方の位置にそれぞれに設けられており、左右両方に設けられるカメラ231のうち一方は、乗場操作盤14と一体として構成されている。このように、カメラ231が複数設けられるので、カメラ231の死角を低減できる。また、カメラ231が少なくとも乗場ドア12の上方に設けられるので、かごを待つエレベータ1の利用者や乗場ドア12付近に置かれた積載物によってすべてのカメラ231が覆われることを抑制できる。
【0036】
距離センサ232は、測定対象物までの距離を測定可能なセンサであり、測定結果を制御部21に送信する。本実施形態の距離センサ232は、移動する複数の測定対象物までの距離を測定可能である。また、距離センサ232は、乗場ドア12の近傍に設けられ、乗場ドア12と乗場11を移動する物体Fとの距離を測定可能である。本実施形態で距離センサ232は、乗場ドア12の上方に設けられている。このような構成によれば、かごを待つエレベータ1の利用者や乗場ドア12付近に置かれた積載物によって距離センサ232が覆われることを抑制できる。本実施形態の距離センサ232は、電波を測定対象物(物体F)に照射し、反射した電波に基づいて測定対象物(物体F)との距離を測るように構成され、具体的には、ミリ波レーダである。
【0037】
速度センサ233は、測定対象物の移動速度を測定可能なセンサであり、測定結果を制御部21に送信する。本実施形態の移動センサは、測定対象物の水平方向における移動速度を測定可能である。また、速度センサ233は、乗場ドア12の近傍に設けられ、乗場11を移動する物体Fの水平方向における移動速度を測定可能である。本実施形態で速度センサ233は、乗場ドア12の上方に設けられている。このような構成によれば、かごを待つエレベータ1の利用者や乗場ドア12付近に置かれた積載物によって速度センサ233が覆われることを抑制できる。本実施形態の速度センサ233は、電波を測定対象物(物体F)に照射し、反射した電波に基づいて測定対象物(物体F)の移動速度を測るように構成され、具体的には、ミリ波レーダである。
【0038】
開閉制御手段24は、乗場ドア12及びかごドアの開閉を制御する装置である。開閉制御手段24は、かごに設けられる制御マイコンであって、かごドアの開閉を制御する。具体的に、開閉制御手段24は、かごが目的位置(かご呼び又は乗場呼びがされた乗場11)に一致したときにかごドアを開閉する制御を行い、かごドアとかごドアに従動する乗場ドア12を開閉させる。また、開閉制御手段24は、かご内部又は乗場11からの操作に応じて、ドアD(乗場ドア12及びかごドア)を開閉する制御を実行する。さらに、開閉制御手段24は、閉じる途中のドアDに異物が挟まったことを検知した場合などにドアDの閉じ動作を反転させる反転戸開制御を実行する。本実施形態で、開閉制御手段24は、制御部21からの指令に応じて、反転戸開制御、ドアDを開いた状態で維持する制御である戸開維持制御、ドアDを閉じた状態に維持する制御である戸閉維持制御、及び、かごの内部に対して警告をしつつドアDを開く制御である警告戸開制御を実行する。
【0039】
制御部21は、物体把握手段23が把握した情報を処理し、かつ、処理した情報に基づいて警告手段22及び開閉制御手段24を制御する。本実施形態の制御部21は、エレベータ1におけるかごの運行について、乗場呼びに対してかごを割り当てる制御である群管理を行う、いわゆる群管理サーバである。また、制御部21は、物体把握手段23が把握した情報を処理して物体Fの移動情報を把握する移動情報処理手段212と、移動情報に基づいて物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがあるか否かを判断する衝突判断手段211と、を備える。
【0040】
図4に示すように、移動情報処理手段212は、物体把握手段23が把握した情報を処理して、物体Fの移動情報を把握する。本実施形態の移動情報処理手段212は、複数のカメラ231が撮像した映像データに基づいて、乗場11における物体Fの移動軌跡3に関する情報を抽出する。具体的に、移動情報処理手段212は、各カメラ231が撮像した映像データを統合して、1つの映像データを生成し、統合された映像データに基づいて物体Fの移動軌跡3及び移動軌跡3の向きに関する移動方向に関する情報を抽出する。また、移動情報処理手段212は、統合された映像データについて、距離センサ232及び速度センサ233が測定した情報に基づいて映像データを補正する。具体的には、統合された映像データのうち、物体Fの位置に関する情報を距離センサ232及び速度センサ233の情報に基づいて補正する。以上のように、移動情報処理手段212は、複数のカメラ231が撮像した映像データ並びに距離センサ232及び速度センサ233が測定した情報に基づいて物体Fの位置を把握するので、物体Fの位置を精度良く把握できる。
【0041】
移動情報処理手段212は、各カメラ231が撮像した映像データを統合する処理を実行する。ここで、各カメラ231が撮像した映像データを統合する際には、全てのカメラ231に撮像される固定物15を基準としてデータを統合する。また、本実施形態では、乗場ドア周辺の領域を真上から見た状態になるよう映像データを統合する処理を行うが、乗場ドア12から乗場ドア12の周辺を見た状態(斜視の状態)となるように映像データを統合して以下の処理を実行することもできる。固定物15とは、例えば柱である。次に、移動情報処理手段212は、統合した画像データに対して、水平方向における一方向に延びる第一方向線41と一方向に直交する他方向に延びる第二方向線42とを生成する。本実施形態の第一方向線41は、乗場ドア12の開閉方向と平行に延びるように設けられる。また、第一方向線41及び第二方向線42は、水平方向における等間隔に複数配置され、統合された映像データには、第一方向線41と第二方向線42によってマス43が形成される。
【0042】
また、移動情報処理手段212は、画像データに含まれる移動する物体Fが人であるか否かを判別する。具体的に、移動情報処理手段212は、移動する物体Fの輪郭を抽出し、該輪郭の形状が人の輪郭と合致するか否かを判断する。本実施形態では、人でないと判断された物体Fについて以下の処理を実行する。
【0043】
移動情報処理手段212は、移動する物体Fについて、物体Fの移動軌跡3を所定の時間間隔で抽出する。また、移動情報処理手段212は、移動軌跡3の向きである移動方向を把握する。移動情報処理手段212は、物体Fの移動軌跡3の方向及び移動軌跡3の接線に基づいて物体Fの進行方向を把握する。これは、物体Fの物理的な前後を画像認識で判断することが容易でないためである。本実施形態の移動情報処理手段212は、移動軌跡3の接線31に沿い、かつ、移動方向に向かう方向を物体Fの進行方向とみなす。具体的に、地点P1において、移動軌跡3(移動方向)は紙面右側から左側に向かって(乗場ドア12から遠ざかる方向に向かって)延びているので、移動情報処理手段212は、地点P1における移動軌跡3の接線31に沿う方向のうち、右側から左側に向かう向きを物体Fの進行方向とみなす。また、地点P2において、移動軌跡3(移動方向)は紙面上側から下側に向かって延びているので、移動情報処理手段212は、地点P2における移動軌跡3の接線31に沿う方向のうち、上側から下側に向かう向きを物体Fの進行方向とみなす。また、地点P3において、移動軌跡3(移動方向)は紙面左側から右側に向かって(乗場ドア12に近づく方向に向かって)延びているので、移動情報処理手段212は、地点P3における移動軌跡3の接線31のうち、左側から右側に向かう向きを物体Fの進行方向とみなす。
【0044】
移動情報処理手段212は、形成されたマス43を移動するのに必要な時間に基づいて物体Fの移動速度を把握する。具体的に、移動情報処理手段212は、各マス43内での移動軌跡3の長さと各マス43を通過するのに要した時間とに基づいて移動速度を導出する。また、移動情報処理手段212は、得られた映像における物体Fと乗場ドア12との直線距離に基づいて物体Fと乗場ドア12との距離を導出する。このように、本実施形態では、カメラ231が撮像した映像データを処理して物体Fの移動情報を把握するので、物体Fが人であるか人以外であるかを判断することができ、物体Fが人以外であると判断された場合に、物体Fの移動情報を導出できる。
【0045】
以上のような手段で物体Fの移動情報(進行方向、移動速度、及び、物体Fと乗場ドア12との距離)を把握した移動情報処理手段212は、把握した移動情報を衝突判断手段211に出力する。
【0046】
衝突判断手段211は、物体Fの移動情報に基づいて、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがあるか否かを判断し、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、警告手段22に警告動作を行わせる制御を実行する。また、衝突判断手段211は、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、反転戸開制御、戸開維持制御、戸閉維持制御、又は、警告戸開制御を実行するように開閉制御手段24を制御する。具体的には、
図3に示すように、衝突判断手段211は、方向把握工程S1と、方向判断工程S2と、距離・速度把握工程S3と、可能性判断工程S4と、第一警告制御S51又は第二警告制御S52と、離脱判断工程S6と、を実行する。
【0047】
方向把握工程S1は、移動情報処理手段212から出力された移動情報に基づいて、物体Fの進行方向を把握する工程である。本実施形態の方向把握工程S1では、移動情報処理手段212が物体Fの移動方向及び移動軌跡3の接線31に基づいて導出した進行方向を把握する。
【0048】
方向判断工程S2は、物体Fの進行方向が乗場ドア12及び乗場ドア12に隣接した所定範囲を含むドアエリアDAに向いているか否かを判断する工程である。本実施形態のドアエリアDAは、乗場ドア12の範囲及び乗場ドア12が開いた際に乗場ドア12が格納される戸袋16が位置している範囲を含む(
図4参照)。なお、ドアエリアDAは、乗場ドア12以外に物体Fが通り抜けられない範囲で任意に定めることができる。方向判断工程S2では、物体Fが進行方向に沿って直進した場合の軌跡がドアエリアDAに重なるか否かを判断し、
図4に示す地点P3のように、直進した場合の軌跡がドアエリアDAに重なる場合に、物体FがドアエリアDAに向いていると判断する。衝突判断手段211は、方向判断工程S2において、物体Fの進行方向がドアエリアDAに向いていると判断された場合(方向判断工程S2においてYES)には、距離・速度把握工程S3に移行する。また、衝突判断手段211は、方向判断工程S2において、
図4に示す地点P1、P2のように、物体Fの進行方向がドアエリアDAに向いていない判断された場合(方向判断工程S2においてNO)には、離脱判断工程S6に移行する。
【0049】
距離・速度把握工程S3は、方向判断工程S2において、物体Fの進行方向がドアエリアDAに向いていると判断された場合(方向判断工程S2においてYES)に、物体Fの乗場ドア12までの距離及び移動速度を把握する工程である。本実施形態の距離・速度把握工程S3では、移動情報処理手段212がカメラ231に撮像された映像データに基づいて導出した物体Fの乗場ドア12までの距離及び移動速度を把握する。
【0050】
可能性判断工程S4は、物体Fの乗場ドア12までの距離及び移動速度に基づいて、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性の高いか否かを判断する。具体的に、可能性判断工程S4は、物体Fの乗場ドア12までの距離及び移動速度に基づいて、物体Fが進行方向に沿って直進した場合にドアエリアDAに衝突するまでの時間を導出し、該衝突するまでの時間が所定時間(例えば4.5秒)より短い場合に衝突する可能性が高いと判断する(可能性判断工程S4においてYES)。また、可能性判断工程S4は、物体Fが乗場ドア12の周辺のうち、特に乗場ドア12に近い位置である乗場ドア12の近傍(例えば乗場ドア12から1m以内の範囲)を所定速度以上(例えば分速5m以上(秒速約8.3cm以上))で移動している場合に、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高いと判断する(可能性判断工程S4においてYES)。なお、本実施形態の可能性判断工程S4では、ドアエリアDAと物体Fの距離が所定距離以下である場合に物体Fが乗場ドア12の近傍を移動していると判断する。一方、可能性判断工程S4では、物体Fが乗場ドア12の近傍を移動しておらず、かつ、進行方向に沿って直進した場合にドアエリアDAに衝突するまでに所定時間以上を要する場合には、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高くないと判断する(可能性判断工程S4においてNO)。このように、本実施形態の可能性判断工程S4では、直進した場合に衝突するまでの時間と、物体Fの位置及び移動速度と、の2つの観点で物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性を判断する。
【0051】
第一警告制御S51は、可能性判断工程S4において、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高いと判断された場合(可能性判断工程S4においてYES)に実行される処理である。第一警告制御S51は、警告手段22が、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨を警告する動作である第一警告動作をするようにする制御である。第一警告動作で、警告手段22は、視覚的な手段により表示警告手段221で警告動作をしつつ、聴覚的な手段により音警告手段222で警告動作し、具体的には、表示警告手段221及び音警告手段222で物体Fを制止するように促す。本実施形態の第一警告制御S51では、表示警告手段221が、「止まれ」と表示しつつ、音警告手段222が警告音を発することで、物体Fを制止するように促す。
【0052】
また、第一警告制御S51では、開閉制御手段24に対して、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨の情報を送信する。物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨の情報を受信した開閉制御手段24は、反転戸開制御、戸開維持制御、戸閉維持制御、又は、警告戸開制御を実行する。具体的に開閉制御手段24は、ドアD(乗場ドア12及びかごドア)が開いた状態で物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨の情報を受信した場合には、戸開維持制御を実行し、ドアDが閉じる途中で物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨の情報を受信した際には、反転戸開制御を実行する。さらに、第一警告制御S51では、開閉制御手段24が戸開維持制御を実行している間は警告手段22が警告動作をせず、例えば、表示警告手段221に物体Fが乗場ドア12に近づく方向に移動することを許容する旨の表示(例えば、進行可能と表示)させるようにすることもできる。
【0053】
開閉制御手段24は、ドアD(乗場ドア12及びかごドア)が閉じた状態で物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨の情報を受信した場合には戸閉維持制御を実行する。さらに、戸閉維持制御を実行している間は、かごが乗場11に一致したとしてもドアDを閉じたまま維持し、本実施形態では、かごの内部に対して戸閉維持制御を実行している旨の報知をする。また、戸閉維持制御を実行している間に、かごが乗場11に一致した状態で所定時間経過した場合に、開閉制御手段24は、警告戸開制御を実行する。警告戸開制御では、物体Fが接近している旨をかごの内部に対して警告しつつドアDを開き、ドアDを開く速度は、通常時における開閉と比べて低速である。また、警告戸開制御におけるかご内部への警告は、通常のドアDの開閉におけるアナウンスとは異なる音により実行され、本実施形態ではブザー音の鳴動により実行される。さらに、本実施形態では、戸閉維持制御を実行している間にかごの内部からドアDを開く操作がされた場合に、開閉制御手段24は、警告戸開制御を実行する。
【0054】
第二警告制御S52は、可能性判断工程S4において、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高くないと判断された場合(可能性判断工程S4においてNO)に実行される処理である。第二警告制御S52は、警告手段22が、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性がある旨を警告する動作である第二警告動作をするようにする制御である。第二警告動作で、警告手段22は、視覚的な手段により表示警告手段221で警告動作をしつつ、聴覚的な手段により音警告手段222で警告動作し、具体的には、表示警告手段221及び音警告手段222で物体Fが乗場ドア12に接近している旨を報知する。本実施形態の第二警告制御S52では、表示警告手段221が、「注意」と表示しつつ、音警告手段222が警告音を発することで、物体Fが乗場ドア12に接近している旨を報知する。第二警告動作における音警告手段222が発する警告音は、第一警告動作における音警告手段222が発する警告音とは異なる。具体的に、第二警告動作における警告音は、第一警告動作における警告音と異なる音であり、且つ、第一警告動作における警告音よりも音量が小さい。なお、第二警告動作では、表示警告手段221及び音警告手段222のいずれか一方のみが警告動作をするように構成することもできる。
【0055】
また、第二警告制御S52では、開閉制御手段24に対して、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある旨の情報を送信する。物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高い旨の情報を受信した開閉制御手段24は、反転戸開制御、戸開維持制御、戸閉維持制御、又は、警告戸開制御を実行する。具体的に開閉制御手段24は、ドアD(乗場ドア12及びかごドア)が開いた状態で物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある旨の情報を受信した場合には、戸開維持制御を実行し、ドアDが閉じる途中で物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある旨の情報を受信した際には、反転戸開制御を実行する。
【0056】
開閉制御手段24は、ドアD(乗場ドア12及びかごドア)が閉じた状態で物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある旨の情報を受信した場合には戸閉維持制御を実行する。さらに、戸閉維持制御を実行している間は、かごが乗場11に一致したとしてもドアDを閉じたまま維持する。また、戸閉維持制御を実行している間に、かごが乗場11に一致した状態で所定時間経過した場合に、開閉制御手段24は、警告戸開制御を実行する。さらに、本実施形態では、戸閉維持制御を実行している間にかごの内部からドアDを開く操作がされた場合に、開閉制御手段24は、警告戸開制御を実行する。なお、このような構成に限らず、開閉制御手段24は、物体FがドアDに衝突するおそれがある旨の情報を受信した場合に、戸閉維持制御を実行せず、かごが乗場11に一致した場合に、警告戸開制御を実行するようにすることもできる。さらに、第二警告制御S52では、開閉制御手段24が戸開維持制御を実行している間は警告手段22が警告動作をせず、例えば、表示警告手段221に物体Fが乗場ドア12に近づく方向に移動することを許容する旨の表示(例えば、進行可能と表示)させるようにすることもできる。
【0057】
離脱判断工程S6は、物体Fが乗場ドア12の周辺から離脱したか否かを判断する工程である。離脱判断工程S6は、第一警告制御S51若しくは第二警告制御S52が実行された後、又は、方向判断工程S2において物体Fの進行方向がドアエリアDAを向いていないと判断された場合(方向判断工程S2においてNO)に実行される。離脱判断工程S6では、移動情報処理手段212から物体Fと乗場ドア12との距離に関する情報を受信し、乗場ドア12と物体Fとが所定距離(例えば5m)以上離れている場合に、物体Fが乗場ドア12の周辺から離脱したと判断する(離脱判断工程S6においてYES)。また、離脱判断工程S6では、乗場ドア12と物体Fとが所定距離(例えば5m)未満である場合に、物体Fが乗場ドア12の周辺から離脱していないと判断する(離脱判断工程S6においてNO)。離脱判断工程S6において物体Fが乗場ドア12の周辺から離脱したと判断される(離脱判断工程S6においてYES)と、衝突判断手段211は、その物体Fに関する処理を終了し、警告手段22の警告動作も終了させる。一方、離脱判断工程S6において物体Fが乗場ドア12の周辺から離脱していないと判断される(離脱判断工程S6においてNO)と、衝突判断手段211は、その物体Fに関して上記各処理を繰り返し実行する。
【0058】
以上のような構成のエレベータ1によれば、乗場ドア12に物体Fが衝突するおそれがある場合に警告することができるので、物体Fが乗場ドア12に衝突することを抑制できる。
【0059】
また、物体Fの移動速度及び乗場ドア12までの距離を含む情報に基づいて物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがあるか否かを判断するので、物体FがドアDに衝突する可能性を適切に判断できる。
【0060】
さらに、物体Fの移動軌跡3の方向及び移動軌跡3の接線31に基づいて物体Fの進行方向を判断するので、物体Fの前後を把握できない場合や、物体Fの前後(例えばフォークリフトの場合には、フォークリフトが設けられる側が前方となり、台車の場合には、作業者が押す側が後方となる)と進行方向が一致しない場合であっても、物体Fの進行方向を把握することができる。
【0061】
また、警告手段22は、視覚的な手段及び聴覚的な手段で警告するので、騒音がある環境や、表示を視認しづらい環境であっても適切に警告できる。
【0062】
また、警告手段は、壁体における乗場ドアの左右両方及び上方の位置にそれぞれ設けられるので、確実に警告することが可能になる。
【0063】
さらに、開閉制御手段24は、ドアDが開いた状態のときに物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、ドアDを開くように制御するので、物体Fが乗場ドア12に衝突することを抑制できる。
【0064】
また、開閉制御手段24は、ドアDが開いた状態のときに物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合に、ドアDを閉じた状態に維持するので、警告を発したとしても物体Fが停止しなかった場合に、かごの内部にいる人や物に物体Fが衝突することを抑制できる。
【0065】
さらに、開閉制御手段24は、戸閉維持制御を所定時間継続した場合に、かごの内部に対して警告をしつつドアDを開くので、かごの内部にいる人が物体Fの存在を把握できるため、人や物が物体Fに衝突することを抑制できる。
【0066】
また、衝突判断手段211は、物体Fの進行方向が、乗場ドア12が位置している範囲及び乗場ドア12に隣接した所定範囲を含むドアエリアDAに向いている場合に、物体Fが乗場ドア12に向かって移動していると判断する。よって、物体Fが乗場ドア12に隣接した所定範囲に向かって移動している場合にも警告を発することができるので、物体Fが乗場ドア12に衝突することを確実に抑制できる。
【0067】
さらに、衝突判断手段211は、物体Fの進行方向がドアエリアDAに向いている場合に、物体Fの移動速度及び物体FとドアエリアDAとの距離を把握して、物体FがドアDに衝突する可能性が高いか否かを判断し、警告手段22は、衝突判断手段211が、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高いと判断した場合には、衝突する可能性が高い旨を警告する第一警告動作をし、物体Fが乗場ドア12に衝突する可能性が高くないと判断した場合には、物体Fが乗場ドア12に向かって移動している旨を警告する第二警告動作をする。よって、物体Fと乗場ドア12の衝突の可能性に応じて警告することができるので、状況に応じて適切な警告をすることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0069】
例えば、衝突判断手段211は、カメラ231で撮像した映像データ、距離センサ232で把握した物体FとドアエリアDAとの距離、及び、速度センサ233で把握した物体Fの移動速度、に基づいて衝突の可能性を判断する場合について説明したが、このような構成に限らない。例えば、物体Fの進行方向をセンサで感知するように構成したり、物体Fが進行方向及び移動速度に関する情報を衝突判断手段211に送信するように構成したりすることができる。また、衝突判断手段は、カメラ231のみを備える構成であってもよい。
【0070】
また、物体Fの移動軌跡3を映像データに基づいて抽出する場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、レーダや衛星測位システムによって物体Fの移動軌跡3を抽出するように構成することもできる。このような構成によれば、画像処理をして物体Fの移動軌跡3を把握する場合に比べて制御部21の処理の負荷を軽減できる。また、このような構成を採用する場合には、レーダによって得られた情報に基づいて物体Fの移動速度及び物体Fと乗場ドア12との距離を導出することもできる。
【0071】
さらに、物体Fの移動速度及び物体Fと乗場ドア12との距離を映像データに基づいて導出する場合について説明したが、このような構成に限らない。例えば、物体Fの移動速度は、速度センサ233による計測に基づいて導出することもできるし、物体Fと乗場ドア12との距離は、距離センサ232による計測に基づいて導出することもできる。このような構成によれば、映像データに基づいて導出する場合に比べて精度よく距離及び速度を計測できる。
【0072】
また、制御部21は、群管理サーバである場合について説明したが、このような構成に限らず、群管理とは別のサーバを制御部21として設けることもできる。
【0073】
さらに、開閉制御手段24は、物体FがドアDに衝突するおそれがある場合に、かごが乗場11に一致したとしてもドアDを閉じた状態に維持する戸閉維持制御を実行する場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、戸閉維持制御を実行せず、かごが乗場11に一致してから速やかにドアDを開くように制御することもできる。このように構成する場合には、ドアDが開くので物体FのドアDへの衝突を抑制できる。
【0074】
また、移動情報処理工程において、移動する物体Fが人でない場合に移動情報を抽出する処理をする場合について説明したが、このような構成に限らず、物体Fが人であっても移動情報を抽出するよう構成することもできる。
【0075】
さらに、物体Fが乗場ドア12に衝突するおそれがある場合のすべてで警告手段22は警告動作をする場合について説明したが、このような構成に限らない。例えば、カメラ231が撮像した映像データに基づいて、物体Fを操作する操作者(例えばフォークリフトの運転者や台車を押す作業者)が前方を確認可能な状態か否かを判断して、操作者が前方を認識不能であると判断された場合にのみ警告動作をするように構成することもできる。このような構成によれば、操作者が前方を確認している場合には警告動作をしないので、警告動作の動作頻度を下げることができる。
【0076】
また、警告手段22は、衝突する可能性に応じて発する警告の内容を変更する場合について説明したが、このような構成に限らず、物体Fが乗場ドア12に向かって移動している場合にはすべて衝突するおそれがあると判断し、単一の警告を発するように構成することもできる。
【0077】
さらに、物体Fはフォークリフトを例に挙げて説明したが、このような場合に限らず、台車などほかの物体Fの接近に対しても警告手段22が警告を発するように構成することもできる。また、フォークリフトには運搬物が載せられ、フォークリフトの運転者が前を視認しづらい状況を例に挙げたが、このような場合に限らず、フォークリフトに運搬物が載せられていない場合や、少量の荷物のみが載せられ、運転者が前方を視認可能な場合であっても、本エレベータのドア制御システム2を運用することができる。このような場合には、ドアDが開いていると運転者が思い込んで物体Fを閉じたドアDに衝突させることを抑制できる。
【0078】
また、警告手段22は、乗場ドア12の周辺を移動する物体Fの進行方向がドアエリアDAを向いている場合には第一警告動作又は第二警告動作をする場合について説明したが、このような構成に限らず、物体Fの移動速度が乗場ドア12に衝突するおそれがない程度に遅い場合には、警告動作をしないように構成することもできる。このような構成によれば、警告動作の動作頻度を下げることができる。
【0079】
さらに、警告手段22は、把握された物体Fの移動速度が速いか遅いかに応じて、警告動作を行うタイミングを早くしたり遅くしたりすることもできる。
【0080】
また、移動情報処理手段212が物体Fの移動情報を抽出する間隔を物体Fの移動速度に応じて自動的に変更するように構成することもできるし、例えば、マス43を通過するごとに抽出するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1…エレベータ、11…乗場、12…乗場ドア、13…壁体、14…乗場操作盤、15…固定物、16…戸袋、2…エレベータのドア制御システム、21…制御部、211…衝突判断手段、212…移動情報処理手段、22…警告手段、221…表示警告手段、222…音警告手段、23…物体把握手段、231…カメラ、232…距離センサ、233…速度センサ、24…開閉制御手段、3…移動軌跡、31…接線、41…第一方向線、42…第二方向線、43…マス、D…ドア、DA…ドアエリア、F…物体
【要約】
【課題】エレベータの乗場ドアに物が衝突することを抑制できるエレベータのドア制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のエレベータのドア制御システムは、エレベータ1の乗場ドア12の周辺を移動する物体について、物体の少なくとも進行方向を把握して、物体が乗場ドアに衝突するおそれがあるか否かを判断する衝突判断手段と、衝突判断手段が衝突するおそれがあると判断した場合に警告動作を行う警告手段22と、を備えるよう構成される。
【選択図】
図1