(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】センサー
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20230525BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20230525BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
A61B5/0245 100A
A61B5/021
A61B5/11 100
(21)【出願番号】P 2019022177
(22)【出願日】2019-02-09
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】300078361
【氏名又は名称】株式会社齋藤創造研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲彦
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-130844(JP,A)
【文献】特表2003-532478(JP,A)
【文献】特開2018-089392(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169641(WO,A1)
【文献】特開2005-114715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体と接触させる弾性層と、前記弾性層に配置され、前記弾性層の変形に伴って変位するマーカーと、
前記弾性層の変形によって変位しない基準マーカーと、を有する弾性入力部と、
前記マーカーの変位に基づいて前記生体の状態を検出する検出部と、を有することを特徴とするセンサー。
【請求項2】
前記マーカーは、前記弾性層の厚さ方向にずれて配置された第1マーカーおよび第2マーカーを有する請求項
1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記第1マーカーおよび前記第2マーカーは、形状および色彩の少なくとも一方が互いに異なっている請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
前記マーカーは、前記弾性層の表面に露出する露出マーカーを有する請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項5】
前記弾性層は、前記生体側に向けて凸となる形状である請求項1から
4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項6】
前記検出部は、前記生体の状態として、前記生体の脈拍数を検出する請求項1から
5のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項7】
前記検出部は、前記生体の状態として、前記生体の血圧を検出する請求項1から
6のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項8】
前記生体の体温を検出する温度検出部を有する請求項1から
7のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項9】
前記生体に装着されるウェアラブル端末である請求項1から
8のいずれか一項に記載のセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者の脈拍数を取得可能な時計型ウェアラブル端末が記載され、脈波数を取得する脈拍数取得部については、公知の如何なる構成を用いてもよいとされている。脈波数を取得するセンサーとしては、例えば、血管内を流れる血液に向けて光を照射する発光素子と、血液に反射された光を受光する受光素子とを備え、ヘモグロビンが光を吸収することによる受光素子の受光量変化に基づいて脈拍数を検出するものが広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなセンサーでは、周囲の明るさや明るさの変化によって検出精度が変動し、脈拍数の検出が不安定となるおそれがある。また、脈拍数しか検出することができず、利便性に欠けるという問題もあるし、衣服等によって光が遮られると、脈拍数を検出できなくなるという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、生体情報を精度よく安定して検出することのできるセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 生体と接触させる弾性層と、前記弾性層に配置され、前記弾性層の変形に伴って変位するマーカーと、を有する弾性入力部と、
前記マーカーの変位に基づいて前記生体の状態を検出する検出部と、を有することを特徴とするセンサー。
【0008】
(2) 前記マーカーは、前記弾性層の厚さ方向にずれて配置された第1マーカーおよび第2マーカーを有する上記(1)または(2)に記載のセンサー。
【0009】
(3) 前記第1マーカーおよび前記第2マーカーは、形状および色彩の少なくとも一方が互いに異なっている上記(2)に記載のセンサー。
【0010】
(4) 前記マーカーは、前記弾性層の表面に露出する露出マーカーを有する上記(1)から(3)のいずれかに記載のセンサー。
【0011】
(5) 前記弾性入力部は、前記弾性層の変形によって変位しない基準マーカーを有する上記(1)から(4)のいずれかに記載のセンサー。
【0012】
(6) 前記弾性層は、前記生体側に向けて凸となる形状である上記(1)から(5)のいずれかに記載のセンサー。
【0013】
(7) 前記検出部は、前記生体の状態として、前記生体の脈拍を検出する上記(1)から(6)のいずれかに記載のセンサー。
【0014】
(8) 前記検出部は、前記生体の状態として、前記生体の血圧を検出する上記(1)から(7)のいずれかに記載のセンサー。
【0015】
(9) 前記生体の体温を検出する温度検出部を有する上記(1)から(8)のいずれかに記載のセンサー。
【0016】
(10) 前記生体に装着されるウェアラブル端末である上記(1)から(9)のいずれかに記載のセンサー。
【発明の効果】
【0017】
本発明のセンサーによれば、弾性層の変形に基づいて生体情報を取得するため、従来のように周囲の環境に影響されることなく、精度よく安定して生体情報を取得することができる。また、弾性層と生体との間に衣服が挟まっていても、衣服を介して生体からの応力が弾性層に伝わるため、生体情報を取得することが可能となる。さらには、弾性層の変形に基づけば種々の生体情報を取得することができるため、利便性に優れ、かつ、コンパクトなセンサーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のセンサーを示す斜視図である。
【
図3】
図1のセンサーが有する弾性入力部を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す弾性入力部の変形例を示す断面図である。
【
図5】
図1に示すセンサーが有する検出部の構成を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態のセンサーを示す平面図である。
【
図7】医師が脈拍数を取得する際の一般的な指の配置を示す図である。
【
図8】第3実施形態のセンサーを示す平面図である。
【
図9】第4実施形態のセンサーが有する弾性入力部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のセンサーを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1にセンサー1を示す。センサー1は、使用者(生体)の手首Hに装着され、使用者の脈拍数を取得することのできる時計型のウェアラブル端末であり、本体2とベルト5とを有する。センサー1をウェアラブル端末とすることにより、センサー1の利便性が向上する。
【0021】
また、
図2に示すように、本体2は、筐体21と、筐体21の表面側に設けられた表示画面22と、筐体21の裏面側に設けられた湾曲凸状(半球状)の基体23と、基体23の外周に支持された弾性入力部3と、筐体21内に配置された検出部4と、を有する。このようなセンサー1は、使用者に装着された状態では、手首と筐体21との間に弾性入力部3が挟まれ、脈拍に伴う皮膚表面の微小な振動(以下、単に「脈拍の振動」と言う)が弾性入力部3に入力されるようになっている。そして、脈拍の振動に起因した弾性入力部3の変形を検出部4が検出し、その検出結果に基づいて脈拍数を取得し、取得した脈拍数を表示画面22に表示する。本実施形態では、ベルト5の締め付け具合を調整することにより、弾性入力部3を皮膚に押し付ける強さを調整することができ、検出精度を調整することができる。表示画面22には、脈拍数以外の上方、例えば、図示しているような時刻等が表示されるようになっていてもよい。
【0022】
なお、センサー1は、弾性入力部3が手首の裏側(掌側)に接触するように装着してもよいし、弾性入力部3が手首の表側(手の甲側)に接触するように装着してもよい。また、センサー1は、手首に装着される構成に限定されず、例えば、足首、指先、頭部、首等、生体の如何なる部位であってもよい。また、センサー1は、ウェアラブル端末に限定されず、生体に装着しない据え置き型のセンサーであってもよい。
【0023】
基体23は、硬質な部材、具体的には手首への装着により生じる応力では実質的に変形しない程度の硬さを有する。また、基体23は、光透過性を有し、本実施形態では実質的に無色透明である。ただし、基体23の構成は、これに限定されず、腕への装着により生じる応力によって容易に変形するほど柔らかくてもよい。また、例えば、弾性入力部3が基体23に支持されなくても一定の形状を保つことができる程度に硬い場合等には、基体23を省略してもよい。
【0024】
図3に示すように、弾性入力部3は、外力が入力される弾性層31と、弾性層31に設けられ、弾性層31の変形に伴って変位するマーカーMと、を有する。弾性層31は、弾性を有する入力部であり、外力が入力される外周面31aおよび外周面31aの反対側に位置する内周面31bを有するシート状をなしている。また、弾性層31は、基体23に支持され、その外形が基体23に倣った湾曲凸状(半球状)となっている。弾性層31を湾曲凸状とすることにより、弾性層31が筐体21から生体側に突出し、弾性層31を皮膚に密着させ易くなると共に、血管を押圧することができる。そのため、脈拍の振動をより確実に十分な大きさで弾性層31に伝えることができる。ただし、弾性層31の外形としては、特に限定されず、例えば、平らなシート状等の平面状の形状であってもよく、装着部位によって適宜変更することができる。
【0025】
弾性層31に設けられたマーカーMは、検出部4で検出可能な検出対象である。マーカーMは、弾性層31の厚さ方向にずれて配置され、基体23からの距離が互いに異なる第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3を有する。これら第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3は、それぞれ、弾性層31の変形に伴って変位する。そのため、これら第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3の変位に基づいて弾性層31の変形を検出できる。特に、第1~第3マーカーM1~M3を弾性層31の厚さ方向にずらして配置することにより、弾性層31の内層、中間層、外層のそれぞれでの変形を検出することができ、弾性層31の変形をより詳細に検出することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、第1マーカーM1、第2マーカーM2および第3マーカーM3は、それぞれ、点状をなしているが、これに限定されず、例えば、線形状、面形状、立体形状等であってもよい。また、複数の第1マーカーM1は、互いに形状が同じであってもよいし、異なっていてもよい。このことは、第2、第3マーカーM2、M3についても同様である。
【0027】
また、弾性層31は、基体23の表面に積層され、第1マーカーM1を有する第1弾性層311と、第1弾性層311の表面に積層され、第2マーカーM2を有する第2弾性層312と、第2弾性層312の表面に積層され、第3マーカーM3を有する第3弾性層313と、第3弾性層313の表面に積層された保護層314と、を有する。弾性層31をこのような構成とすることにより、第1~第3マーカーM1~M3を弾性層31に配置し易くなる。なお、説明の便宜上、図では、弾性入力部3の断面からハッチングを省略している。
【0028】
第1弾性層311、第2弾性層312および第3弾性層313は、それぞれ、光透過性および弾性を有する。なお、本実施形態では、第1~第3弾性層311~313は、それぞれ、実質的に無色透明である。ただし、第1~第3弾性層311~313は、光透過性を有していれば、その少なくとも1つが、例えば、有色透明であってもよい。そして、第1弾性層311の表面に複数の第1マーカーM1が互いに離間して配置され、第2弾性層312の表面に複数の第2マーカーM2が互いに離間して配置され、第3弾性層313の表面に複数の第3マーカーM3が互いに離間して配置されている。
【0029】
第1~第3マーカーM1~M3は、それぞれ、第1~第3弾性層311~313の表面に貼着されたものであってもよいし、第1~第3弾性層311~313の表面にインク等を用いて印刷されたものであってもよいし、第1~第3弾性層311~313内に埋設されたものであってもよい。
【0030】
第1~第3マーカーM1~M3は、形状および色彩の少なくとも一方が互いに異なっており、検出部4によって識別可能である。本実施形態では、第1~第3マーカーM1~M3は、互いに色彩が異なっており、例えば、第1マーカーM1が赤色、第2マーカーM2が緑色、第3マーカーM3が青色となっている。なお、第1~第3マーカーM1~M3の色彩ではなく形状を互いに異ならせる場合には、例えば、第1マーカーM1を円形、第2マーカーM2を三角形、第3マーカーM3を四角形とすることができる。もちろん、色彩および形状を共に異ならせてもよいし、色彩や形状を異ならせる以外の方法によって第1、第2、第3マーカーM1~M3を検出部4で識別可能としてもよい。
【0031】
また、第1~第3マーカーM1~M3は、自然状態において、検出部4が有する後述するカメラ41から見て互いに重ならないように配置されていることが好ましい。すなわち、カメラ41によって撮像される画像上で、第2マーカーM2がその手前にある第1マーカーM1に隠れることなく、第3マーカーM3がその手前にある第1、第2マーカーM1、M2に隠れることなく配置されていることが好ましい。これにより、検出部4によって、より多くのマーカーMの変位を検出することができ、弾性層31の変形をより精度よく検出することができる。なお、前記「自然状態」とは、例えば、弾性層31に重力以外の外力が加わっていない状態を言う。
【0032】
保護層314は、第3弾性層313の表面に配置された第3マーカーM3を保護する機能を有している。保護層314は、第1~第3弾性層311~313と同様に、光透過性および弾性を有している。
【0033】
以上、弾性入力部3について説明したが、弾性入力部3の構成としては、これに限定されない。例えば、第1マーカーM1を有していれば、第2、第3マーカーM2、M3を省略してもよい。つまり、厚さ方向にずれて配置されたマーカーMが存在していなくてもよい。また、保護層314を省略し、
図4に示すように、第3マーカーM3が弾性層31の表面に露出していてもよい。この場合、第3マーカーM3は、弾性層31の表面から突出する部分を有することが好ましい。これにより、第3マーカーM3が皮膚表面に引っ掛かり易くなり、その分、脈拍の振動をより精度よく弾性層31に伝えることができる。
【0034】
検出部4は、センサー1が手首に装着された状態でキャリブレーションを行い、そのときの各マーカーMの位置を初期状態として記憶する。そして、検出部4は、脈拍の振動に起因した弾性層31の変形を三次元的に検出し、その検出結果に基づいて使用者の脈拍数を取得(検出)する。このような構成によれば、従来のように周囲の環境に影響されることなく使用者の脈拍数を取得することができるため、脈拍数(生体情報)を精度よく安定して検出することのできるセンサー1となる。
【0035】
ここで、弾性層31は、脈拍の振動に応じて無段階に変形するため、検出部4は、脈拍数だけではなく、収縮期から拡張期への血管の拡張の様子や、反対に、血管の拡張期から拡張期への血管の収縮の様子を検出することもできる。また、弾性層31の変形量に基づけば使用者の血圧(収縮期の血圧および拡張期の血圧)を検出することもできる。このように、弾性層31の変形に基づけば、脈拍数の他にも種々の生体情報を取得することができる。つまり、弾性層31だけで種々の生体情報を取得することができるため、センサー1の小型化、低コスト化を図ると共に、センサー1の利便性が向上する。
【0036】
検出部4は、上述の機能を発揮することができれば、特に限定されないが、本実施形態では、ステレオ写真法を用いて弾性層31の変形を三次元的に検出する。
図3および
図4に示すように、検出部4は、筐体21内に設けられた複数のカメラ41を有する。カメラ41としては、特に限定されず、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ等、レンズ系411と撮像素子412とを備えたものを用いることができる。
【0037】
複数のカメラ41は、弾性層31の方を向いて配置され、それぞれ、弾性層31を内周面31b側から撮像する。弾性層31の各部は、少なくとも2つのカメラ41で撮像され、これにより、弾性層31の各部を三次元画像認識すなわちステレオ画像認識することができる。なお、前記「弾性層31の各部」とは、弾性層31の全域を意味する場合もあれば、弾性層31の選択された一部の領域を意味する場合もある。
【0038】
また、
図5に示すように、検出部4は、各カメラ41が取得した画像情報に基づいて弾性層31の三次元画像認識を行う処理部42を有する。処理部42は、例えば、各カメラ41を制御するCPU、メインメモリー、補助メモリー等を含むコンピューターで構成され、所定のプログラムを実行することができる。
【0039】
処理部42は、脈拍の振動に伴う第1~第3マーカーM1~M3の変位(すなわち、弾性層31の変形)を三次元画像認識によって検出し、検出結果に基づいて、使用者の脈拍数を検出する。なお、脈拍は、速くなったり遅くなったり、その周期が短時間(脈拍を検出するのに十分な時間。例えば、数秒)で変動することはあっても、その強度すなわち血圧が短時間に変動することは実質的にない。したがって、検出部4は、脈拍による弾性層31の変形量を基準変形量として記憶し、例えば、弾性層31が基準変形量より大きく変形した場合には、脈拍の振動による変形ではないとして、その変形をキャンセルして脈拍の検出には使用しないように構成することも可能である。このように、脈拍の振動に起因した弾性層31の変形と脈拍の振動以外の振動に起因した弾性層31の変形とを判別し、脈拍の振動に起因した弾性層31の変形だけを脈拍数の取得に用いることにより、より精度よく脈拍数を取得することができる。
【0040】
また、検出部4は、基体23の内側から弾性層31を照らす光源44を有する。光源44としては、特に限定されず、例えば、LEDを用いることができる。光源44を有することにより、カメラ41は、十分な明るさの下でマーカーMを撮像することができる。そのため、検出部4は、脈拍数をより精度よく取得することができる。ただし、光源44は、例えば、外界からの光によって弾性層31を画像認識可能な程に十分に明るく保てる場合等には省略してもよい。また、筐体21内に輝度センサーを配置して、この輝度センサーにより検知された内部の明るさに基づいて、光源44の光量を制御してもよい。これにより、例えば、筐体21内をほぼ一定の明るさに保つことができるため、検出部4によるマーカーMの画像認識をより安定して行うことができる。
【0041】
ここで、処理部42による入力情報の取得方法の一例について簡単に説明する。処理部42の記憶部には予め各カメラ41の3次元座標が記憶されている。そして、処理部42は、所定マーカーMの変位を検出するのに用いられる2台のカメラ41によって同時刻における画像を取得し、両画像中の所定マーカーMの2次元座標を取得する。次に、処理部42は、両画像中の所定マーカーMの2次元座標のずれと各カメラ41の3次元座標とに基づいて所定マーカーMの3次元座標を取得し、記憶する。処理部42は、この作業をフレーム毎に連続的に行う。そして、処理部42は、前回取得した所定マーカーMの3次元座標と、今回新たに取得した所定マーカーMの3次元座標とを比較することにより、その間に生じた所定マーカーMの変位を検出することができる。処理部42は、このような作業を全マーカーMもしくは選択された幾つかのマーカーMについて行うことにより、脈拍数を取得することができる。
【0042】
以上、処理部42による脈拍数の取得方法の一例について説明したが、脈拍数の取得方法は、これに限定されない。例えば、全マーカーMについて上述の作業を行うと処理量が膨大となってしまい、処理部42の性能等によっては処理が追いつかない、つまり、脈拍数の取得に時間がかかる場合が考えられる。また、使用の用途によっては、高い精度が求められない場合も考えられる。そのため、例えば、処理部42は、予め選択した一部のマーカーMを用いて脈拍を取得してもよい。また、処理部42は、例えば、前記キャリブレーション時(初期状態)における弾性層31の各部の画像を基準画像として記憶しておき、この基準画像と、上述のように得された画像とをリアルタイムに比較して第1~第3マーカーM1~M3の変位を特定することにより、脈拍数を取得してもよい。
【0043】
図5に示すように、検出部4は、さらに、使用者の体温を検出する温度検出部としての赤外線カメラ43を少なくとも1つ有する。赤外線カメラ43を用いることで、使用者の体温を容易に計測することができる。赤外線カメラ43は、カメラ41とは異なるカメラであってもよいし、複数のカメラ41のうちの少なくとも1つが兼ねていてもよい。ただし、使用者の体温を検出することができれば、温度検出部の構成は、特に限定されない。
【0044】
<第2実施形態>
図6に示すように、第2実施形態のセンサー1は、2つの弾性入力部3A、3Bを有する。弾性入力部3A、3Bの構成は、平面視形状が異なる以外は、前述した第1実施形態の弾性入力部3と同様である。したがって、弾性入力部3A、3Bの詳細な説明は省略する。
【0045】
このように、2つの弾性入力部3A、3Bを設けることで、弾性入力部3A、3Bのそれぞれから生体情報(脈拍数、血圧、体温等)を検出することができる。そのため、例えば、検出した2つの生体情報を平均化することで生体情報の検出精度を高めることができる。また、いずれか一方が故障や装着不具合によって生体情報を検出できなくても、他方によって生体情報を検出することができるため、センサー1の信頼性が向上する。また、弾性入力部3Aと弾性入力部3Bとで異なる生体情報を検出する、すなわち、例えば、弾性入力部3Aで脈拍数を検出し、弾性入力部3Bで血圧を検出することにより、1つの弾性入力部3で脈拍数と血圧とを検出する場合と比べて、処理速度が向上する。
【0046】
また、2つの弾性入力部3A、3Bは、腕の長さ方向に並んで配置されており、それぞれ、腕の幅方向に沿って延在した長手形状となっている。特に、本実施形態では、2つの弾性入力部3A、3Bは、それぞれ、腕の幅方向を長手とし、指の形に似たオーバル状となっている。2つの弾性入力部3A、3Bをこのような構成とすることにより、2つの弾性入力部3A、3Bを、
図7に示すような医師等が触診の際に手首に当てる2本の指に似せることができる。
図7に示す指の配置は、経験上、脈拍数を取得し易い配置として広く認識されており、2つの弾性入力部3A、3Bの配置を
図7に示す指の配置と似せることで、弾性入力部3A、3Bによって、より精度よく生体情報を検出することができる。
【0047】
ただし、弾性入力部3A、3Bの形状や配置は、特に限定されず、例えば、本実施形態の構成を90°回転させたような構成であってもよい。すなわち、2つの弾性入力部3A、3Bは、腕の幅方向に並んで配置されており、それぞれ、腕の長さ方向に沿って延在した長手形状となっていてもよい。また、センサー1は、さらに、1つ以上の弾性入力部を有していてもよい。
【0048】
<第3実施形態>
図8に示すように、第3実施形態のセンサー1は、4つの弾性入力部3A、3B、3C、3Dを有する。弾性入力部3A、3B、3C、3Dの構成は、平面視形状が異なる以外は、前述した第1実施形態の弾性入力部3と同様である。したがって、弾性入力部3A~3Dの詳細な説明は省略する。
【0049】
このように、4つの弾性入力部3A~3Dを設けることで、弾性入力部3A~3Dのそれぞれから生体情報(脈拍数、血圧、体温等)を検出することができる。そのため、例えば、検出した4つの生体情報を平均化することで生体情報の検出精度を高めることができる。また、いずれか1つが故障や装着不具合によって生体情報を検出できなくても、他方によって生体情報を検出することができるため、センサー1の信頼性が向上する。また、弾性入力部3A~3Dで異なる生体情報を検出することにより、1つの弾性入力部3で複数の生体情報を検出する場合と比べて、処理速度が向上する。
【0050】
また、4つの弾性入力部3A~3Dは、腕の幅方向に並んで配置されており、それぞれ、腕の長さ方向に沿って延在した長手形状となっている。特に、本実施形態では、弾性入力部3A~3Dは、それぞれ、指の形に似たオーバル状となっている。弾性入力部3A~3Dをこのような構成とすることにより、弾性入力部3A~3Dを腱や血管に沿って配置することができ、より精度よく生体情報を検出することができる。
【0051】
<第4実施形態>
図9に示すように、本実施形態のセンサー1では、弾性入力部3は、弾性層31の変形によって変位せず、検出部4によって検出可能な複数の基準マーカーM4を有する。なお、
図9の構成では、基準マーカーM4は、第1弾性層311と基体23との間であって基体23の外周面に配置されているが、基準マーカーM4の配置としては、これに限定されず、例えば、基体23の内周面に配置されていてもよい。
【0052】
基準マーカーM4は、各カメラ41との相対的位置関係が一定であり、検出部4が第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3の変位を検出する際の基準として機能する。このような構成によれば、例えば、検出部4は、基準マーカーM4に対する第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3の変位を検出することで、より精度よく生体情報を取得することができる。なお、基準マーカーM4は、検出部4が第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3のそれぞれと区別(識別)できるように、例えば、第1、第2、第3マーカーM1、M2、M3と形状および色彩の少なくとも一方が異なっていることが好ましい。
【0053】
以上、本発明のセンサーについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
例えば、前述の本実施形態では、2つのカメラ41を用いて弾性層31の各部を三次元画像認識しているが、1つのカメラ41を用いて弾性層31の各部を三次元画像認識してもよい。例えば、複数の光軸を有するレンズを用いて1つのカメラ41で複数の画像を時分割で取得し、これらの画像を用いて弾性層31の各部を三次元画像認識してもよい。このような構成によれば、カメラ41の数が減り、センサー1のコストダウンおよび小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…センサー
2…本体
21…筐体
22…表示画面
23…基体
3…弾性入力部
3A…弾性入力部
3B…弾性入力部
3C…弾性入力部
3D…弾性入力部
31…弾性層
31a…外周面
31b…内周面
311…第1弾性層
312…第2弾性層
313…第3弾性層
314…保護層
4…検出部
41…カメラ
411…レンズ系
412…撮像素子
42…処理部
43…赤外線カメラ
44…光源
5…ベルト
H…手首
M…マーカー
M1…第1マーカー
M2…第2マーカー
M3…第3マーカー
M4…基準マーカー